説明

ミスト集塵装置

【課題】空気中に含まれるミストの除去性能を向上し、ランニングコストを低減しつつ、ミスト集塵装置の定期的なメンテナンスを不要とすることにある。
【解決手段】ミスト集塵装置は、吸入口12が下端部に設けられ排気口14が上端部に設けられたケース体11を有し、吸入口12から排気口14に向かう気流は送風機15により生成される。ケース体11内には分離板組立体23が配置されており、分離板組立体23はそれぞれ多数の通気孔25が形成され相互に通気隙間31を隔てて配置される複数の分離板24を積み重ねることにより形成されている。気流は分離板24の通気孔25から上側の分離板24の通気孔25に向かう際に偏向され、気流中のミストは分離板24に衝突して液滴化されて気流の中から除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工設備等から排出されて空気中に含まれるオイル等の液体のミストを除去するミスト集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品を加工する際には切削液や研削液が機械部品に供給され、加工後の機械部品は洗浄液により洗浄されている。このように機械部品の加工、洗浄に供給された切削液や洗浄液等の処理液からは霧状の液滴がいわゆるミストとなって発生することになる。ミストが加工設備から外部に飛散すると、工場内の環境を悪くすることから、ミストコレクタつまりミスト集塵装置を加工設備に設けて、空気中に含まれるミストを吸引除去するようにしている。
【0003】
ミストを除去するためのミスト集塵装置としては、特許文献1に記載されるように、ケース内に固定された濾過板つまりフィルタにミストを含む空気を通過させてミストを捕集するようにしたフィルタ式、および特許文献2に記載されるように、ミストを帯電させて電極にミストを付着させて捕集するようにした電気集塵式がある。さらに、ミスト集塵装置としては、特許文献3に記載されるように、ミストを含む気流を回転円板に衝突させてこれに付着したミストを遠心力により分離除去するようにした遠心分離式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−243332号公報
【特許文献2】特開平8−52314号公報
【特許文献3】特開平9−105399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気集塵式はミストの捕捉性能に優れているが、高価なだけでなく電極に捕捉されたミストの洗浄を容易に行うことができず、電極の洗浄処理のためのランニングコストが高くなるという問題点がある。遠心分離式はミスト粒子を遠心力で分離するために、被処理空気に高速度の回転エネルギーを与える必要があり、消費電力が多いことから、ランニングコストが高くなるだけでなく、ミストの捕捉性能に課題があるという問題点がある。
【0006】
一方、フィルタ式はフィルタに捕捉されたミストが飽和状態となると、フィルタを交換しなければならないので、作業者により定期的に集塵装置からフィルタを取り外してメンテナンスする必要があり、メンテナンスフリー化は不可能である。なぜならば、フィルタに捕捉されるミストは、切削液や洗浄液の水分、潤滑油、界面活性剤液およびその他の化学物質を含んでおり、フィルタに滞留しているうちに気流により液体成分が気化して高粘度となり、高粘度となったミスト成分が重合してガム状物質となってフィルタに固着してしまうことが避けられないからである。このように、ミストが高粘度となってフィルタに付着すると、フィルタからミストが流れ落ちることができなくなり、フィルタの目詰まりが発生し、フィルタの通気抵抗が高くなるという課題がある。また、捕捉したミストの一部は気流によりフィルタメッシュを伝わって気流の下流に流されてフィルタの終端から再飛散してしまうという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、加工設備等から排出されて空気中に含まれるミストの除去性能を向上することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ランニングコストを低減しつつ、ミスト集塵装置の定期的なメンテナンスを不要とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のミスト集塵装置は、空気中に含まれる液体のミストを除去するミスト集塵装置であって、空気を吸入する吸入口が下端部に設けられ、空気を排気する排気口が上端部に設けられたケース体と、前記吸入口から前記排気口に向かう気流を前記ケース体に生成する送風機と、それぞれ多数の通気孔が形成されるとともに前記ケース体内に傾斜して上下方向を向いて相互に通気隙間を隔てて配置される複数の分離板を備え、下側の前記分離板の前記通気孔から上側の前記分離板の前記通気孔に向かう気流を前記通気隙間内で偏向させる分離板組立体と、前記ケース体に設けられ、前記分離板組立体に洗浄液を吹き付ける洗浄ノズルと、前記ケース体の下端部に設けられ、ミストが前記分離板に衝突して液滴化し落下した液体を外部に排出するドレン口とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のミスト集塵装置は、前記分離板は中央部の折り曲げ部から両端部が下方に向けて傾斜した逆V字形状であり、前記吸入口が設けられた吸入ダクトを前記折り曲げ部に対向させて前記ケース体に設けることを特徴とする。本発明のミスト集塵装置は、前記ドレン口と前記洗浄ノズルとを接続する循環流路を設け、前記分離板組立体に噴射されて前記ケース体の下端部に落下した液体を前記洗浄ノズルに循環供給することを特徴とする。本発明のミスト集塵装置は、前記通気隙間は前記通気孔の4〜5倍の幅寸法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ミストを含む気流は分離板組立体を通過するようになっており、分離板組立体はそれぞれ通気孔が形成された複数枚の分離板を通気隙間を隔てて組み合わせることにより形成されているので、下流側の分離板の通気孔から通気隙間を介して下流側の分離板の通気孔に流入する気流は偏向されることになる。通気隙間内において気流を偏向させることによって、気流中に含まれるミストは分離板に衝突して液滴化されることになる。液滴化されたミストは、分離板が傾斜して上下方向を向いているので、自重により分離板を伝って下方に落下する。これにより、気流中のミストは分離板組立体を通過する過程で、確実に除去されるので、ミストの除去効率が高められる。
【0012】
このように、気流中のミストを分離板の壁面に衝突させて気流中から捕捉し、捕捉された液滴を自重によって下方に落下させるようにしたので、空気中に含まれるミストを効率的に除去することができる。液滴が分離板に付着して気液分離され、分離板が傾斜しているため付着した液滴は自重で分離板から落下するので、液滴が気化して高粘度となった物質が分離板に付着することがない。しかも、分離板に切削粉などの異物粒子が付着しても、洗浄ノズルから洗浄液を吹き付けることにより、異物粒子を除去することができる。これにより、分離板組立体を取り外してこれを交換したり、洗浄したりする必要がなく、装置のメンテナンスが不要となる。
【0013】
ミストを通気孔と通気隙間とに蛇行させて気流を流して除去するようにしたので、気流を分離板組立体を通過させるための通気抵抗を小さくすることができる。これにより、小型の送風機によってケース体内に気流を生成することが可能となり、ミスト集塵装置のランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態であるミスト集塵装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1における矢印A方向から見たミスト集塵装置の側面図である。
【図3】図2における矢印B−B線方向の断面図である。
【図4】分離板を拡大して示す断面図である。
【図5】図4における矢印C方向から見た分離板の側面図である。
【図6】(A),(B)は、それぞれ本発明の他の実施の形態であるミスト集塵装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3に示すように、このミスト集塵装置10は、上下方向を向いて図示しない支持台により支持されるケース体11を有している。ケース体11は、正面壁11a、背面壁11bおよび左右の側壁11c,11dを有し、下端には底壁11eが取り付けられ、上端には天壁11fが取り付けられており、全体的に直方体形状となっている。
【0016】
底壁11eの中央部には、図3に示されるように、ケース体11内に開口する吸入口12が設けられた吸入ダクト13が取り付けられている。ミスト集塵装置10は切削機械や研削機械等の加工設備の近傍に設置され、切削液、研削液および洗浄液等の処理液のミストを含む空気が吸入ダクト13に供給されるようになっており、ミストを含む空気は吸入口12からケース体11内に吸入される。天壁11fの中央部には、図3に示されるように、ケース体11内に開口する排気口14が設けられている。
【0017】
天壁11fの上には送風機15が取り付けられており、送風機15のハウジング16内には図示しない多翼ファンが回転自在に組み込まれている。ハウジング16には排気口14に開口する空気流入口と、多翼ファンからの空気を吐出する空気吐出口とが形成され、空気吐出口に連通する吐出ダクト17がハウジング16に設けられている。送風機15の多翼ファンを駆動するために、ハウジング16には電動モータ18が取り付けられており、この電動モータ18により多翼ファンが駆動されると、吸入口12から排気口14に向けて下方から上方に向かう気流がケース体11内に生成される。
【0018】
ケース体11の正面壁11aには、長方形の装着用開口部21が形成されており、この装着用開口部21は正面壁11aにねじ止めされるカバー22により覆われるようになっている。図3に示されるように、ケース体11内には分離板組立体23が配置される。装着用開口部21の幅寸法は分離板組立体23の幅寸法Wよりも大きく、高さ寸法は分離板組立体23の高さ寸法Hよりも大きくなっており、分離板組立体23は装着用開口部21からケース体11内の処理空間内に装着される。
【0019】
分離板組立体23は複数枚の分離板24を隙間を隔てて積み重ねることにより形成されている。図示するミスト集塵装置10の分離板組立体23は13枚の分離板24により形成されているが、分離板24の枚数は複数枚であれば、13枚に限られない。
【0020】
図4は分離板24を拡大して示す断面図であり、図5は図4における矢印C方向から見た分離板24の側面図である。
【0021】
分離板24は複数の細孔つまり通気孔25が全体的に分散して形成された四辺形の穴明き板つまりパンチングプレートにより形成されており、分離板24はその中央部を折り曲げ部26として逆V字形状に二つ折りされている。折り曲げ部26の折り曲げ角度θは60度となっており、それぞれの分離板24は鉛直線に対して30度傾斜している。分離板24の下側となる内面にはスペーサ27が取り付けられている。スペーサ27は丸棒材により形成されており、スペーサ27は分離板24の図4における左右両端の前後にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
図3に示されるように、ケース体11の左右の側壁11c,11dには内方に突出してストッパ28が取り付けられており、分離板組立体23はストッパ28に支持されるようになっている。それぞれのストッパ28には上下方向に延びるガイド板29が取り付けられており、分離板組立体23の図3における左右方向の位置はそれぞれのガイド板29により規制されるようになっている。
【0023】
分離板組立体23をケース体11内に装着するには、最も下側の分離板24の両端部をストッパ28の上に配置し、その上に順次、他の分離板24を配置することにより、それぞれの分離板24はスペーサ27によって設定される通気隙間31を隔てて積み重ねられる。これにより、分離板組立体23が組み立てられることになる。ただし、予めケース体11の外部で分離板24を積み重ねて分離板組立体23を組み立てた状態のもとで、その分離板組立体23を装着用開口部21からケース体11内に配置するようにしても良い。
【0024】
分離板組立体23がケース体11内に装着されると、それぞれの分離板24は中央部の折り曲げ部26から両端部に向けて下方に傾斜した逆V字形状となって配置されるので、分離板24はケース体11内に傾斜して上下方向を向いた状態となる。上下に隣り合う分離板24の間には通気隙間31が形成されているので、下側の分離板24の通気孔25から通気隙間31内に流入した気流は、広がるように偏向つまり向きを変えることになる。さらに、上下方向に隣り合う分離板24の通気孔25の位置は、相互に完全に一致しておらず、図3において分離板24の一部を拡大して示すように、相互に重なり合わないようにずれているので、下側の分離板24の通気孔25から通気隙間31を通過して上側の分離板24の通気孔25に流入する気流は、通気隙間31において分離板24に沿う方向に大きく偏向つまり向きを変えることになる。
【0025】
分離板組立体23がケース体11内に装着された状態のもとでは、それぞれの分離板24の一方の端面はケース体11の背面壁11bに突き当てられ、他方の端面はカバー22に突き当てられるように、分離板24の長さ寸法Lが設定されているので、吸入口12から流入した気流は分離板組立体23とケース体11の内面との間から漏れることなく、通気孔25を通過して排気口14に流れることになる。
【0026】
気流が通気孔25を通過するときには、それぞれの通気孔25はノズルとして機能し、気流は通気孔25により絞られて速度が高められた状態となって上側の分離板24に衝突することになる。その際に、気流中に含まれるミストは慣性により通気隙間31内で偏向する気流に追随することができずに分離板24に衝突して液滴化される。また、気流が通気隙間31から上側の分離板24の通気孔25に入る際には気流は絞られて縮流となるから液滴は絞られて曲がった偏向流れに追随することができずに直進して通気孔25の周囲に衝突して液滴化される。吸入口12から排気口14に向かう気流は、分離板組立体23を通過する際に、上述した通気隙間31内での分離板24に沿う方向の偏向と、通気孔25による絞り作用による偏向とが繰り返されるので、ミストは効果的に液滴化されることになる。それぞれの分離板24に付着して液滴化されたミストは、傾斜して上下方向を向いた分離板24を滑って自重により落下することになる。それぞれの分離板24に取り付けられたスペーサ27は丸棒により形成されているので、スペーサ27に付着した液滴もスペーサ27を伝って円滑に自重で落下することになる。
【0027】
図5に示されるように、通気孔25は格子状に上下方向と横方向とに一定の間隔となって分離板24に形成されている。図5に示す分離板24においては、通気孔25の内径が1mmであり、孔ピッチが3mmとなっており、パンチングプレートつまり分離板24に占める通気孔25の総面積は約17%に設定されている。通気孔25から通気隙間31内に流入して上段側の分離板24の通気孔25に流入する際に気流を偏向させることにより、ミストを分離板24に慣性で衝突させるためには、通気隙間31の幅寸法Sを通気孔25の内径に対応させて設定することになる。つまり、通気隙間31内に流出した空気は、通気孔25から離れるに従って速度を失うから上段側の分離板24までの距離が大きくなると、ミストの衝突効果が減少することになる。通気孔25をノズルと考えた場合には、ノズル出口からある距離までには通気孔25の中心にポテンシャルコアなるものが存在し、ポテンシャルコアの内部では中心速度がノズル出口と同じ速度を保ち得る。この距離はノズル孔の内径の4〜5倍なので、通気孔25の内径を1mmとしたときには、通気流路の幅寸法Sつまり分離板24相互の間隔は、4〜5mm程度とすることが好ましい。
【0028】
図示する分離板組立体23においては、通気隙間31の幅寸法Sは、5mmに設定されている。これにより、通気孔25から通気隙間31内に流入した気流に含まれるミストを分離板24に衝突させて、確実にミストを分離板24に捕捉させて気流中からミストを除去することが可能となる。通気孔25の内径を1mm程度に設定すると、気流中に含まれる異物粒子が通気孔25に詰まることを防止できる。同様に、通気隙間31の幅寸法Sは5mmなので、通気隙間31に異物粒子が詰まることを防止できる。
【0029】
図5に示すように、通気孔25は円形の孔により形成されているが、分離板24の製造上の容易さを考慮しなければ、楕円形、長孔あるいは四角形の孔等のように任意の形状で通気孔25を形成するようにしても良い。また、通気孔25の配置形態としては、図示するような格子状に限られず、千鳥状やランダム配置の形態としても良い。図5に示すように、分離板24の一端面から最も一端面側の通気孔25までの寸法M1と、他端面から最も他端面側の通気孔25までの寸法M2を相違させると、同一の形状に加工された分離板24を用いて分離板組立体23を組み立てるようにしても、相互に上下に隣り合う分離板24の両端部が逆向きとなるようにすれば、上下に隣り合う分離板24の通気孔25は完全に一致することなく、相互にずれた状態となる。これにより、通気孔25から通気隙間31に流入した気流を、分離板24に沿う方向に大きく偏向させることができる。分離板組立体23の形態としては、上下に隣り合う分離板24については、相互に通気孔25の配置形態が相違されたものを積み重ねるようにして形成するようにしても良い。
【0030】
上述のように、傾斜面を有する分離板24にミストを衝突させて液滴化し、液滴を平滑な分離板24の表面に沿って滑らせて自重で落下させるようにしたので、分離板24に捕捉されたミストの水分が気化したり、重合したり、高密度化することなく、液滴化されたミストを確実に下方に落下させることができる。これにより、分離板組立体23を交換するためのメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って捕捉性能を維持することができる。液滴化されたミストは分離板24に付着したまま滞留することがないので、下流側の排気口14に向けて再飛散することがなく、ミストの捕捉性能が高められる。
【0031】
しかも、層状となった複数の通気隙間31においては、上下に隣接する分離板24の通気孔25に対して偏向させて気流を案内するようにし、ミストをその慣性により分離板24に衝突させるようにしたので、フィルタを使用したミスト集塵装置と比較して分離板組立体23における圧力損失を少なくすることができる。これにより、小型で消費電力が少ない送風機15を使用することができ、ミスト集塵装置10のランニングコストを低減することができる。
【0032】
分離板組立体23は図3に示されるように全体的に逆V字形状となっており、中央部分には空間32が形成されることになる。この空間32内に上端部を一部入り込ませて吸入ダクト13がケース体11に取り付けられており、分離板組立体23を図3に示す逆V字形に代えて上下を反転させたV字形とした形態に比して、ミスト集塵装置10の上下寸法を小さくすることができる。しかも、吸入ダクト13はケース体11の中央部に設けられているので、吸入口12からケース体11内に流入した気流は、図3において左右に分かれるように均一に分散して分離板組立体23を通過することになる。
【0033】
吸入ダクト13の外側は液体を溜めるドレン室33が形成されている。このドレン室33に連通するドレン口34が図2に示されるように底壁11eに取り付けられており、ドレン室33に落下した液滴はドレン口34から外部に排出される。
【0034】
吸入ダクト13からケース体11内に供給される空気の中に切粉等の微細な異物の粒子が含まれていると、分離板24に付着したままで堆積するおそれがある。ケース体11の上端部には洗浄液供給管35が設けられ、この洗浄液供給管35には複数の洗浄ノズル36が設けられている。洗浄ノズル36は洗浄液供給管35に設けられた孔により形成されている。洗浄液供給管35には、外部から工業用水やクーラント液が洗浄液して供給されるようになっており、ミスト集塵装置10の作動を停止した状態のもとで、定期的に分離板組立体23に洗浄液を噴射する。このように、洗浄液を分離板組立体23に吹き付けるだけの操作によって、分離板組立体23をケース体11から取り外すことなく、分離板24に付着した異物を除去することができ、ミスト集塵装置10に対する作業者による維持管理作業つまりメンテナンス作業が不要となる。これにより、ミスト集塵装置10はランニングコストが低減されるとともにメンテナンスフリーとなる。
【0035】
分離板組立体23の洗浄操作は、洗浄液供給管35から一定時間洗浄液を吹き付けることにより行われ、吹き付けられた洗浄液はドレン室33、ドレン口34を経由してミスト発生源である切削機械や研削機等の加工設備のクーラントタンクに溜められる。クーラントタンクに溜められた洗浄液を再度洗浄ノズル36に供給する形態のミスト集塵装置10においては、クーラントタンクと洗浄液供給管35との間に循環流路が設けられることになり、循環流路に設けられたポンプによりクーラントタンク内の洗浄液の一部が洗浄ノズル36に供給されて循環使用される。
【0036】
洗浄液供給管35は、図3に示されるように、分離板組立体23と排気口14との間に設けられているが、この洗浄液供給管35に代えるか、あるいはこれに併せて、図3において二点鎖線で示すように、分離板組立体23の下方の中央部の空間32に洗浄液供給管37を設けるようにしても良い。このように下側の洗浄液供給管37から洗浄液を分離板組立体23に吹き付ける際には、送風機15を駆動させて、ケース体11内に上方に向けて流れる気流を生成させて洗浄液を上方に移動させることになる。
【0037】
図6(A),(B)は、それぞれ本発明の他の実施の形態であるミスト集塵装置を示す概略図である。図6においては、上述したミスト集塵装置10と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0038】
図6(A)に示すミスト集塵装置10aの分離板24は、上述した分離板24が逆V字形状となっているのに対し、ほぼ逆U字形状となっている。このミスト集塵装置10aにおけるそれぞれの分離板24は、両端部が鉛直方向に延びており、中間部は半円形状となっている。図6(A)に示される分離板24は、両端部が上下方向に垂直に延びているので、分離板組立体23は相互にサイズが相違する複数の分離板24を組み合わせることにより組み立てることになるが、分離板24に衝突して液滴化したミストは、分離板24を傾斜させた場合よりも円滑に落下することになる。
【0039】
図6(A)に示すように、ドレン口34から排出された洗浄液が貯留されるクーラントタンク40にはポンプ41を介して加工装置へとクーラント液を供給するクーラント液供給流路42が接続されている。このクーラント液供給流路42は途中で分岐して流路切換弁43aを介して洗浄液供給管35に接続されている。これにより洗浄液の循環流路が形成されている。流路切換弁43aはクーラント液供給流路42を洗浄液供給管35に連通させる位置と、この連通を遮断する位置とに作動する。なお、通常クーラントタンク40には定期的に直接クーラント液が図示しない給水流路から補充されるが、図6(A)に示すように、給水流路44を流路切換弁43bを介して洗浄液供給管35に接続するようにして、クーラント液をミスト集塵装置10を介して供給するようにしても良い。
【0040】
図6(B)に示すミスト集塵装置10bの分離板24は、全体的にフラットに形成されており、それぞれの分離板24が傾斜して上下方向を向くように、分離板組立体23がケース体11の内部に装着されている。このように、フラットに形成された分離板24を傾斜させてケース体11内に配置するようにした形態においては、左右の側壁11c,11dに吸入ダクト13と排気口14とを形成するようにすると、ミスト集塵装置10bの高さ寸法を小さくすることができる。このタイプのミスト集塵装置10bにおいては、排気口14と送風機15とを連通させるために、排気ダクト45が設けられている。
【0041】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図6(B)に示すミスト集塵装置10bおよび図3に示したミスト集塵装置10についても、図6(A)に示した循環流路を形成するクーラント液供給流路42を有する形態としても良い。
【符号の説明】
【0042】
10,10a,10b ミスト集塵装置
11 ケース体
12 吸入口
13 吸入ダクト
14 排気口
15 送風機
17 吐出ダクト
18 電動モータ
23 分離板組立体
24 分離板
25 通気孔
27 スペーサ
31 通気隙間
33 ドレン室
34 ドレン口
35 洗浄液供給管
36 洗浄ノズル
40 クーラントタンク
41 ポンプ
42 クーラント液供給流路(循環流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる液体のミストを除去するミスト集塵装置であって、
空気を吸入する吸入口が下端部に設けられ、空気を排気する排気口が上端部に設けられたケース体と、
前記吸入口から前記排気口に向かう気流を前記ケース体に生成する送風機と、
それぞれ多数の通気孔が形成されるとともに前記ケース体内に傾斜して上下方向を向いて相互に通気隙間を隔てて配置される複数の分離板を備え、下側の前記分離板の前記通気孔から上側の前記分離板の前記通気孔に向かう気流を前記通気隙間内で偏向させる分離板組立体と、
前記ケース体に設けられ、前記分離板組立体に洗浄液を吹き付ける洗浄ノズルと、
前記ケース体の下端部に設けられ、ミストが前記分離板に衝突して液滴化し落下した液体を外部に排出するドレン口とを有することを特徴とするミスト集塵装置。
【請求項2】
請求項1記載のミスト集塵装置において、前記分離板は中央部の折り曲げ部から両端部が下方に向けて傾斜した逆V字形状であり、前記吸入口が設けられた吸入ダクトを前記折り曲げ部に対向させて前記ケース体に設けることを特徴とするミスト集塵装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のミスト集塵装置において、前記ドレン口と前記洗浄ノズルとを接続する循環流路を設け、前記分離板組立体に噴射されて前記ケース体の下端部に落下した液体を前記洗浄ノズルに循環供給することを特徴とするミスト集塵装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のミスト集塵装置において、前記通気隙間は前記通気孔の4〜5倍の幅寸法であることを特徴とするミスト集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−189326(P2011−189326A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60114(P2010−60114)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】