説明

ミトコンドリア病および関連した様態の治療ならびにエネルギーバイオマーカーの調節のための酸化還元活性治療剤のテイル改変体

ミトコンドリア疾患、例えば、フリードライヒ失調症(FRDA)、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON)、ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS)、もしくはカーンズ・セイアー症候群(KSS)を治療または抑制する、本発明の方法、ならびに本発明の方法に有用な化合物が開示されている。被験体の代謝状態および治療の有効性の評価に有用なエネルギーバイオマーカーも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2005年9月15日に出願された、米国仮特許出願番号60/717,678の優先権の利益を主張する。この仮特許出願の全内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本出願は、ミトコンドリア病による疾患、例えば、フリードライヒ失調症、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー、カーンズ・セイアー症候群、およびミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS)の治療または抑制、被験体におけるエネルギーバイオマーカーの調節に有用な組成物および方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ミトコンドリアは、真核細胞の細胞小器官であり、一般に、該細胞の「パワーハウス」と呼ばれている。分子であるアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)は、該細胞において、エネルギー「通貨」またはエネルギーキャリアとして機能し、真核細胞は、ミトコンドリアによって行われる生化学的プロセスからそれらのATPの大部分を得る。これらの生化学的プロセスには、クエン酸回路(トリカルボン酸回路、またはクレブス回路)が含まれ、該回路は、酸化ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)から還元ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH+H)、および酸化的リン酸化を生じさせ、その最中に、NADH+HはNADに酸化されて元に戻る。(クエン酸回路はまた、フラビン・アデニン・ジヌクレオチド、即ち、FADをFADHに還元する;FADHは、酸化的リン酸化にも関与する。)
NADH+Hの酸化によって放出される電子は、呼吸鎖として知られている一連のタンパク質複合体(複合体I、複合体II、複合体III、および複合体IV)の下方に向かって受け渡しされる。これらの複合体は、ミトコンドリアの内膜に埋め込まれている。複合体IVは、この鎖の末端にあり、電子を酸素に移動させ、水に還元する。これらの電子が複合体を横断するときに放出されるエネルギーは、ミトコンドリアの内膜を横切って電気化学ポテンシャルを発生する、該内膜を横切るプロトン勾配を生じさせるために用いられる。別のタンパク質複合体である複合体V(複合体I、II、IIIおよびIVと直接的には関係しない)は、ADPをATPに変換するための電気化学的勾配によって貯蔵されるエネルギーを使用する。
【0004】
クエン酸回路および酸化的リン酸化は、解糖に先行し、そこでは、1分子のグルコースが、2分子のピルベートに分解され、グルコース1分子当たり正味2分子のATPが生じる。次に、ピルベート分子は、ミトコンドリアに入り、ミトコンドリアでは、該分子は、酸化的リン酸化を介してCOおよびHOに完全に酸化される(この全体のプロセスは、好気性呼吸として知られている)。グルコースを2個のピルベート分子に転換することによって生じる2分子のATPに加えて、二酸化炭素および水への2個のピルベート分子の完全な酸化により、少なくとも約28〜29分子のATPが得られる。仮に酸素を利用できないとすると、ピルベート分子は、ミトコンドリアに入らず、それどころか嫌気性呼吸のプロセスにおいてラクテートに変換される。
【0005】
したがって、グルコース1分子当たりの全体での正味の収量は、少なくとも約30〜31個のATP分子である。ATPは、細胞におけるほとんど全ての他の生化学的反応に直接的であるかまたは間接的に電力を供給するために用いられる。このようにして、好気性呼吸中の酸化的リン酸化によって提供される余分な(約)少なくとも28または29分子のATPは、細胞の適切な機能に重要である。酸素の欠如は、好気性呼吸を妨げ、結果として、ほとんど全ての好気性生物の最終的な死をもたすことになる;いくつかの生物、例えば、酵母は、好気性または嫌気性呼吸のいずれかを用いて生存可能である。
【0006】
生物における細胞に酸素を一時的に与えないと、嫌気性呼吸は、酸素が再び利用可能になるまで活用されるかまたはその細胞は死んでしまう。解糖中に生じたピルベートは、嫌気性呼吸中にラクテートに変換される。乳酸の集積は、酸素を筋細胞に供給できなくなると、激しい活動期には筋肉疲労の原因になると考えられている。酸素が再び利用可能になると、ラクテートは、酸化的リン酸化での使用のためにピルベートに変換されて元に戻る。
【0007】
呼吸鎖を作るタンパク質類における遺伝子欠損は、重篤な疾患状態へと導く。このような疾患の1つが、フリードライヒ失調症(Friedreich’s ataxia:FRDAまたはFA)である。フリードライヒ失調症は、タンパク質であるフラタキシンのレベルの減少によって引き起こされる常染色体劣性の神経変性および心臓変性異常である。フラタキシンは、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体における鉄−硫黄クラスターの集合に重要である。米国におけるFRDAの有病率は、22,000〜29,000人につき1人(非特許文献1を参照されたい)から50,000人に1人(非特許文献2を参照されたい)の範囲であると見積もられている。この疾患は、自発運動神経の進行性消失(運動失調)および心臓合併症を引き起こす。症状は、典型的には、小児期に始まり、この疾患は、患者が成長するにつれて、次第に悪化する;最終的には、患者は、運動障害により車椅子生活を強いられるようになる。
【0008】
ミトコンドリア機能不全に連結した別の疾患は、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(Leber’s Hereditary Optic Neuropathy:LHON)である。この疾患は、平均年齢が27〜34歳で発症する失明によって特徴付けられる(非特許文献3);失明は、同時にまたは順次(片方の目が失明し、平均して2ヵ月後に他方の目が失明する)、両目で発生し得る。心奇形および神経系の合併症などの他の症状も発症する場合もある。
【0009】
ミトコンドリア欠陥に起因する更に別の破壊的な症状は、ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、および発作(MELAS)である。この疾患は、幼児、小児、または若年成人において、それ自体が現れる可能性がある。嘔吐および発作を伴う発作は、最も重大な症状の1つである;脳のある領域におけるミトコンドリアの代謝機能障害は、虚血性発作において発症するような血流障害というよりはむしろ、細胞死および神経損傷に関与することが前提とされる。多くの場合、神経症状を含む他の重篤な合併症が存在し、血液における乳酸レベルの上昇が起こる。
【0010】
別のミトコンドリア疾患は、カーンズ・セイアー症候群(Kearns−Sayre Syndrome:KSS)である。KSSは、(1)年齢が20歳よりも若い人において典型的に開始すること;(2)慢性、進行性、外眼筋麻痺;(3)網膜の色素変性を含む3つの特徴によって特徴付けられる。さらに、KSSには、心臓伝導系障害、小脳性運動失調症、および脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)タンパク質レベルの上昇(例えば、>100mg/dL)が含まれ得る。KSSと関連した更なる特徴は、ミオパシー、ジストニア、内分泌異常(例えば、糖尿病、発育遅延または小人症、および副甲状腺機能低下症)、左右感音性難聴、認知症、白内障、および近位尿細管性アシドーシスを含んでもよい。このようにして、KSSは、多くの臓器系に影響を与えることができる。
【0011】
上記の4つの疾患は、呼吸鎖の複合体Iにおける欠陥によって引き起こされるようである。複合体Iから呼吸鎖の残りの複合体への電子伝達は、化合物である補酵素Q(ユビキノンとして知られている)によって媒介される。酸化型補酵素Q(CoQoxまたはユビキノン)は、複合体Iによって還元型補酵素Q(CoQredまたはユビキノール)に還元される。次に、還元型補酵素Qは、その電子を呼吸鎖の複合体IIIに(複合体IIを飛び越えて)伝達し、そこでは、CoQox(ユビキノン)に再酸化される。次に、CoQoxは、電子伝達の更なる相互作用に関与し得る。
【0012】
これらの疾患に苦しんでいる患者に利用可能な治療はほんどない。最近、化合物であるイデベノンが、フリードライヒ失調症の治療に提案されている。イデベノンの臨床効果は相対的に穏当であるが、ミトコンドリア疾患の合併症は、非常に深刻であり得るため、僅かに有用な治療でさえも、この疾患の未処理の経過よりも望ましい。別の化合物であるMitoQは、ミトコンドリア病の治療に提案されている(米国特許出願公開第2005/0043553号を参照されたい);MitoQの臨床結果はまだ報告されていない。KSSに関しては、補酵素Q10(CoQ10)およびビタミンサプルメントの投与は、個々のケースにおいて一時的な薬効だけを示している。
【0013】
したがって、ミトコンドリア病、例えば、フリードライヒ失調症、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー、MELAS、およびカーンズ・セイアー症候群の効果的な治療には、深刻であり満たされない要求がある。
【0014】
エネルギーの生物学的生成を調整する能力は、上述した疾患を超える用途を有する。種々の他の障害は、結果として、ATPレベルなどのエネルギーバイオマーカー(エネルギー機能の指標とも呼ばれることがある)の次善レベルをもたらす可能性がある。これらの障害の治療はさらに、患者の健康を改善する1以上のエネルギーバイオマーカーを調節するために必要とされる。他の用途では、疾患に苦しんでいない個体の正常値から離れているある種のエネルギーバイオマーカーを調節することが望まれる。例えば、個体が過度の激しい仕事を請け負っている場合、その個体においてATPレベルを上昇させることが望まれる。
【非特許文献1】World−Wide−Webアドレス.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/001411.htm
【非特許文献2】World−Wide−Webアドレス.umc−cares.org/health info/ADAM/Articles/001411.asp
【非特許文献3】World−Wide−Webアドレス.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=535000
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の開示)
一態様では、本化合物は、下記:
【0016】
【化3】

式中、R、R、およびRは、独立して、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、−CN、−F、−Cl、−Br、及び−Iから選択され;R20は、独立して、−C〜C20アルキル、−C〜C20アルケニル、−C〜C20アルキニル、および少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含む−C〜C20から選択される、
から成る式Iで表される基から選択される化合物、並びにその全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である。全てのR、R、およびR基は、直線状、分岐状、または環状であってもよい。R20基は、直線状または分岐状であってもよい。C〜C20アルケニルは、少なくとも1つの二重結合を含む。C〜C20アルキニルは、少なくとも1つの三重結合を含む。
【0017】
上記で引用した式Iの化合物の一態様では、R20は、Cn−アルキル、Cn−アルキル、またはC11n−アルキルではあり得ないというただし書きが加えられる。上記で引用した式Iの化合物の別の態様では、R、R、およびRが全てメチルである場合、R20は、Cn−アルキル、Cn−アルキル、またはC11n−アルキルではあり得ないというただし書きが加えられる。上記で引用された式Iの化合物の別の態様では、Rがブロモであり、RおよびRのうちの1つがメチルであり、RおよびRの他の1つがブロモである場合、R20はCn−アルキルを除くというただし書きが加えられる。これらのただし書きのいずれか1つ、いずれか2つ、または3つ全ては、本明細書中に記載されている式Iの任意の態様に加えることもできる。
【0018】
別の態様では、本発明は、上述される式Iで表される1以上の化合物の治療的有効量または有効量を投与することによって、ミトコンドリア病を治療もしくは抑制し、1以上のエネルギーバイオマーカーを調節し、1以上のバイオマーカーを正常化し、または1以上のエネルギーバイオマーカーを増進する方法を包含する。
【0019】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRは、独立して、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、−CN、−F、−Cl、−Br、および−Iから選択され、ただし、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、メチルではない、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0020】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得;Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得;Rは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得;ただし、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、メチルではない、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0021】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、およびn−ブチルから選択され、ただし、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、メチルではない、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0022】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRは、独立して、C〜Cアルキルから選択される、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0023】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRは、独立して、C〜Cn−アルキルから選択される、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0024】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、Rは、独立して、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得;Rは、独立して、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得;Rは、独立して、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、アルキル断片上の任意の位置であり得る、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0025】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRのいずれか1つは、メチルであり、その残りの基は、独立して、C〜Cアルキルから選択される、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。前記C〜Cアルキル基は、独立して、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、該C〜Cアルキル基によるこの分子の残り部分への結合点は、アルキル断片上の任意の位置であり得る。
【0026】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRのいずれか2つは、メチルであり、その残りの基は、独立して、C〜Cアルキルから選択される、式Iで表される化合物;その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。前記C〜Cアルキル基は、独立して、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、該C〜Cアルキル基によるこの分子の残り部分への結合点は、アルキル断片上の任意の位置であり得る。
【0027】
別の態様では、本発明は、式Iにおいて、R、R、およびRは、全てメチルであり、ただし、R20は、Cn−アルキル、Cn−アルキル、およびC11n−アルキルではあり得ない、式Iで表される化合物を包含する。このただし書きを含む更なる態様では、R、R、およびRのうちの1つのみは、メチルである。このただし書きを含む更なる態様では、R、R、およびRのうちの2つのみは、メチルである。このただし書きを含む更なる態様では、R、R、およびRの3つ全ては、メチルである。
【0028】
別の変形において、式Iで表される化合物の態様のいずれかでは、アルケニルは、不飽和の隣接部位(例えば、構造−C=C=C−のアレニル)を含むことができる。別の変形において、式Iで表される化合物の態様のいずれかでは、アルケニルは、アレニルなどの不飽和の隣接部位を除く。
【0029】
前述の態様のいずれかを含む他の態様では、ミトコンドリア病は、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(Myoclonic Epilepsy with Ragged Red Fibers:MERRF);ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS);レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON);リー病;カーンズ・セイアー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA);他のミオパシー;心筋症;脳ミオパシー(encephalomyopathy);尿細管性アシドーシス;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS);運動ニューロン疾患;他の神経系疾患;癲癇;遺伝病;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;加齢性疾患;黄斑変性症;糖尿病;および癌からなる群から選択される。
【0030】
前述の態様のいずれかを含む他の態様では、ミトコンドリア病は、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF);ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS);レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON);リー病;カーンズ・セイアー症候群(KSS);およびフリードライヒ失調症(FA)からなる群から選択される。
【0031】
前述の態様のいずれかを含む他の態様では、ミトコンドリア病は、フリードライヒ失調症(FRDA)である。本発明の別の態様では、ミトコンドリア病は、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON)である。本発明の別の態様では、ミトコンドリア病は、ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS)である。本発明の別の態様では、ミトコンドリア病は、カーンズ・セイアー症候群(KSS)である。本発明の別の態様では、ミトコンドリア病は、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)である。本発明の別の態様では、ミトコンドリア障害は、パーキンソン病である。
【0032】
前述の態様のいずれかを含む本発明の他の態様では、限定されないが、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおける乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるラクテート/ピルベート比;ホスホクレアチンレベル、NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQrad)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型シトクロムCレベル;還元型シトクロムCレベル;酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比;アセトアセテートレベル;β−ヒドロキシブチレートレベル;アセトアセテート/β−ヒドロキシブチレート比;8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO2)、二酸化炭素放出量(VCO2)、呼吸指数(VCO2/VO2)を含む種々のエネルギーバイオマーカーの1以上を調節するために、運動不耐性を調節する(または、運動耐性を調節する)ために、無酸素閾値を調節するために、ミトコンドリア病に苦しんでいる患者に、本明細書中に記載されている化合物が投与される。エネルギーバイオマーカーは、全血、血漿、脳脊髄液、脳室液、動脈血、静脈血、もしくは任意の他の体液、生体ガス、またはこのような測定に有用な他の生物学的試料において測定することができる。一態様では、これらのレベルは、健常被験体における値の約2の標準偏差以内の値に調節される。別の態様では、これらのレベルは、健常被験体における値の約1の標準偏差以内の値に調節される。別の態様では、被験体におけるこのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約10%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約20%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約30%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約40%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約50%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上または下の少なくとも約75%まで変化される。別の態様では、これらのレベルは、調節前の被験体におけるレベルの上の少なくとも約100%または該レベルの下の少なくとも約90%まで変化される。
【0033】
前述の態様のいずれかを含む別の態様では、ミトコンドリア病を治療もしくは抑制する方法、1以上のエネルギーバイオマーカーを調節する方法、1以上のエネルギーバイオマーカーを正常化する方法、または1以上のエネルギーバイオマーカーを増進する方法が行われる被験体または複数の被験体は、激しいかまたは長期の肉体的活動を被っている被験体;慢性エネルギー問題を有する被験体;慢性呼吸問題を有する被験体;妊婦;分娩中の妊婦;新生児;未熟児;厳しい環境に晒されている被験体;高温環境に晒されている被験体;低温環境に晒されている被験体;酸素量が平均を下回っている環境に晒されている被験体;二酸化炭素量が平均を上回っている環境に晒されている被験体;平均レベルを上回る空気汚染の環境に晒されている被験体;飛行機を利用する旅行者;客室乗務員;上昇した高度にある被験体;空気の品質が平均を下回っている都市に居住している被験体;空気品質が低下する閉ざされた環境で働く被験体;肺疾患を有する被験体;肺活量が平均を下回っている被験体;結核患者;肺癌患者;肺気腫患者;嚢胞性線維症患者:外科手術から回復中の被験体;病気から回復中の被験体;高齢被験体;エネルギー減退を経験している高齢被験体;慢性疲労に苦しんでいる被験体;慢性疲労症候群に苦しんでいる被験体;急性外傷性傷害を被っている被験体;ショック状態にある被験体;緊急酸素投与を必要としている被験体;長期酸素投与を必要としている被験体;または、エネルギーバイオマーカーの増進から利益を得ることができる、急性的に、慢性的に、または継続的にエネルギーを要求している他の被験体からなる群から選択される。
【0034】
別の態様では、本発明は、医薬として許容される賦形剤、キャリア、またはベヒクルとともに、式Iで表される1以上の化合物を包含する。
【0035】
別の態様では、本発明は、治療における式Iで表される1以上の化合物の使用を包含する。別の態様では、本発明は、ミトコンドリア疾患の治療における式Iで表される1以上の化合物の使用を包含する。別の態様では、本発明は、ミトコンドリア疾患の治療において使用する薬剤の製造における式Iで表される1以上の化合物の使用を包含する。
【0036】
上述した化合物および方法の全てに関して、キノン形態は、必要に応じて、その酸化(ヒドロキノン)形態で用いることもできる。同様に、ヒドロキノン形態は、必要に応じて、その酸化(キノン)形態で用いることもできる。「式(I)で表される化合物」という句は、他に特定されなければ、化合物の酸化形態および還元形態の両方を含むことが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(発明を実施するための形態)
本発明は、ミトコンドリア病の治療または抑制に有用な化合物、エネルギーバイオマーカーの調節のためにこのような化合物を用いる方法を包含する。本発明のミトコンドリア疾患および関連した様態の治療または抑制のための酸化還元活性療法は、より詳細には本明細書中に記載されている。
【0038】
「被験体」、「個体」、または「患者」とは、個々の生物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0039】
本明細書中で検討されている化合物および方法を用いて疾患を「治療すること」とは、疾患もしくは疾患の1以上の症状のいずれかを軽減もしくは取り除くために、または疾患もしくは疾患の1以上の症状の進行を遅延させるために、または疾患もしくは疾患の1以上の症状の重症度を軽減させるために、追加の治療薬を伴うかまたは伴わないで、本明細書中で検討されている1以上の化合物を投与するものとして定義される。本明細書中で検討される化合物および方法を用いた疾患の「抑制」とは、疾患の臨床徴候を抑制するために、または疾患の異常症状の徴候を抑制するために、追加の治療薬を伴うかまたは伴わないで、本明細書中で検討されている1以上の化合物を投与するものとして定義される。治療と抑制との間の区別では、治療は、疾患の異常症状が被験体において明確となった後に行い、抑制は、疾患の異常症状が被験体において明確となる前に行うことである。抑制は、部分的、実質的に全体的、または全体的であってもよい。ミトコンドリア病の多くは遺伝によるため、遺伝子スクリーニングを用いて、該疾患の危険性がある患者を同定することができる。次に、本明細書中に開示されている化合物、および本発明の方法は、任意の異常症状の出現を抑制するために、該疾患の臨床的症状を発症する危険性がある症状の見られない患者に投与するかまたは実施することができる。本明細書中で検討されている化合物の「治療的使用」とは、上記で定義されているように、疾患を治療するかまたは抑制するために、本明細書中で検討されている1以上の化合物を用いることとして定義される。化合物の「有効量」とは、1以上のエネルギーバイオマーカーを調節し、正常化し、または増進する(調節、正常化、および増進は下記に定義される)のに十分な化合物の量をいう。化合物の「治療的有効量」とは、被験体に投与されると、疾患もしくは疾患の1以上の症状のいずれかを軽減もしくは取り除くのに十分である、または疾患もしくは疾患の1以上の症状の進行を遅延させるのに十分である、または疾患もしくは1以上の症状の重症度を軽減させるのに十分である、または疾患の臨床徴候を抑制するのに十分である、または疾患の異常症状の徴候を抑制するのに十分である化合物の量をいう。治療的有効量は、1以上の投与で与えることができる。化合物の「有効量」には、治療的有効量、ならびに被験体における1以上のエネルギーバイオマーカーを調節し、正常化し、または増進するのに有効な量の両方が包含される。
【0040】
エネルギーバイオマーカーを「調節」または「調節する」こととは、所望の値に向けてエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させるか、または所望の方向にエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させる(例えば、増殖させるかまたは減少させる)ことを意味する。調節は、限定されないが、下記に定義されているように、正常化および増進を含むことができる。
【0041】
エネルギーバイオマーカーを「正常化」または「正常化する」こととは、病理学的な値から正常値に向けてエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させることとして定義され、この場合、エネルギーバイオマーカーの正常値は、1)健常人または被験体におけるエネルギーバイオマーカーのレベルであるか、または2)人または被験体における1以上の望ましくない症状を緩和するエネルギーバイオマーカーのレベルであり得る。即ち、疾患状態で低下しているエネルギーバイオマーカーを正常化することとは、正常(健常)値に、または望ましくない症状を緩和する値に向けてエネルギーバイオマーカーのレベルを増加させることを意味する;疾患状態で上昇しているエネルギーバイオマーカーを正常化することとは、正常(健常)値に、または望ましくない症状を緩和する値に向けてエネルギーバイオマーカーのレベルを減少させることを意味する。
【0042】
エネルギーバイオマーカーを「増進」または「増進する」こととは、有益な効果または所望の効果を達成するために、正常値、または増進前の値を超えて、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルを意図的に変化させることを意味する。例えば、多大なエネルギー要求が被験体に突き付けられている状況では、その被験体におけるATPの正常レベルを上回るレベルまで、その被験体におけるATPレベルを増加させることが望まれる場合がある。エネルギーバイオマーカーを正常化することが被験体の最適な結果に達成しない場合がある点では、増進はまた、ミトコンドリア疾患などの疾患または病変に苦しんでいる被験体において有益な効果となり得る;このような場合において、1以上のエネルギーバイオマーカーの増進は、有益な、例えば、正常を上回るATPレベルであり得るか、または正常を下回る乳酸(ラクテート)レベルは、このような被験体に有益となり得る。
【0043】
エネルギーバイオマーカーである補酵素Qを調節し、正常化し、または増進することとは、対象としている種において優勢である補酵素Qの変形体または複数の変形体を調節し、正常化し、または増進することを意味する。例えば、ヒトにおいて優勢である補酵素Qの変形体は、補酵素Q10である。種または被験体は、有意な量で存在する(即ち、調節、正常化、または増進されると、種または被験体において有利な効果を有することができる量で存在する)補酵素Qの1を超える変形体を有する場合、補酵素Qを調節し、正常化し、または増進することは、種または被験体に存在する補酵素Qの任意または全ての変形体を調節し、正常化しまたは増進することを意味し得る。
【0044】
本明細書中に記載されている化合物は、生じることができ、中和(塩ではない)化合物として使用することができ、この記載は、塩ではない化合物に加えて、本明細書中で記載されている化合物の全ての塩、ならびに該化合物のこのような塩を用いる方法を包含する。一態様では、前記化合物の塩は、医薬として許容される塩を含む。医薬として許容される塩は、ヒトおよび/または動物に薬物または製剤として投与することができる塩であり、投与時、遊離化合物(中和化合物または塩ではない化合物)の生物学的活性のうちの少なくともいくつかを保持する塩である。塩基性化合物の所望の塩は、当業者に知られている方法、酸で該化合物を処理することによって調製することができる。無機酸の例には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸が含まれる。有機酸の例には、限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸が含まれる。アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩などのアミノ酸を含む塩基性化合物の塩も調製することができる。酸性化合物の所望の塩は、当業者に知られている方法、塩基で該化合物を処理することによって調製することができる。酸性化合物の無機塩の例としては、限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などのアルカリ金属塩およびアルカリ土類塩;アンモニウム塩;およびアルミニウム塩が挙げられる。酸性化合物の有機塩の例としては、限定されないが、プロカイン塩、ジベンジルアミン塩、N−エチルピペリジン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、およびトリエチルアミン塩が挙げられる。リジン塩などのアミノ酸を含む酸性化合物の塩も調製され得る。
【0045】
本発明は、ジアステレオマーおよび鏡像異性体を含む、化合物の全ての立体異性体も含む。また、本発明は限定されないが、ラセミ混合物を含む、任意の比率の立体異性体の混合物を含む。構造において、立体化学が、明示的に指示されない限り、その構造は、表される化合物の全ての可能性のある立体異性体を包含することが意図される。立体化学が、分子の1の部分または複数の部分に対して明示的に指示され、分子の別の部分または複数の部分に対して指示されていないとすれば、その構造は、立体化学が明示的に指示されていないその部分または複数の部分に対する全ての可能性のある立体異性体を包含することが意図される。
【0046】
該化合物は、プロドラッグの形態で投与することができる。プロドラッグは、それ自体が相対的に不活性であるが、それらが用いられる被験体内に導入されると、酵素的変換などのインビボでの化学的または生物学的プロセスによって、活性な化合物へと変わる化合物の誘導体である。適したプロドラッグ製剤には、限定されないが、本明細書中に開示されている化合物のペプチド結合体、本明細書中に開示されている化合物のエステルが含まれる。適したプロドラッグの更なる検討は、H.Bundgaard,Design of Prodrugs,New York:Elsevier,1985;R.Silverman,The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action,Boston:Elsevier,2004;R.L.Juliano(ed.),Biological Approaches to the Controlled Delivery of Drugs(Annals of the New York Academy of Sciences,v.507),New York:New York Academy of Sciences,1987;およびE.B.Roche(ed.),Design of Biopharmaceutical Properties Through Prodrugs and Analogs(Symposium sponsored by Medicinal Chemistry Section,APhA Academy of Pharmaceutical Sciences,November 1976 national meeting,Orlando,Florida),Washington:The Academy,1977に提供されている。
【0047】
本明細書中に開示されている種々の化合物は、それ自体で治療薬として、または生体内で他の治療的に有効な物質もしくは効果的な物質に変わるプロドラッグとして投与され得る。
【0048】
該化合物の代謝産物もまた本発明によって包含される。しかしながら、被験体内で自然に生じる物質の代謝産物は、本発明の請求される化合物からは除外される。
【0049】
「C〜Cアルキル」は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、ブチル(Bu)、n−ブチル(nBu)、イソブチル(iBu)、sec−ブチル(sBu)、t−ブチル(tBu)、シクロプロピル(cyclPr)、シクロブチル(cyclBu)、シクロプロピル−メチル(cyclPr−Me)およびメチル−シクロプロパン(Me−cyclPr)を包含することが意図され、ここで、前記C〜Cアルキル基は、該C〜Cアルキル基の任意の価数で結合され得る。
【0050】
「ハロゲン」または「ハロ」置換基は、フルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)、およびヨード(−I)を指す。
【0051】
「C〜Cハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン置換基を有する任意のC〜Cアルキル置換基を包含することが意図される;該ハロゲンは、該C〜Cアルキル基の任意の価数で結合され得る。C〜Cハロアルキルの小集団は、−CF、−CCl、−CBr、および−CIである。C〜Cハロアルキルの別の小集団は、厳密に1つのハロゲン置換基を有する小集団である。C〜Cハロアルキルの別の小集団は、C〜Cペルハロアルキル;即ち、ハロゲンによって置換された全ての利用可能な価数を有するC〜Cアルキルの小集団である。C〜Cハロアルキルの別の小集団は、C〜Cペルフルオロアルキル;即ち、フッ素によって置換された全ての利用可能な価数を有するC〜Cアルキルの小集団である。C〜Cハロアルキルの別の小集団は、C〜Cペルクロロアルキル;即ち、塩素によって置換された全ての利用可能な価数を有するC〜Cアルキルの小集団である。
【0052】
(式Iで表される化合物の合成)
本明細書中に開示されている化合物の合成は、当業者によって容易に達成される。ベンゾキノン系化合物の合成は、米国特許第4,393,075号に開示されている。対象とする他の方法は、米国特許第5,229,385号及び米国特許第4,310,465号に見出される。
【0053】
式Iで表される化合物を合成する方法は、化合物(105):
【0054】
【化4】

に対する下記の合成を適応させることによる。その合成は下記:
【0055】
【化5】

の通りであり、3,6−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン(102)へのデュロキノン(101)の変換に関する化学は、Thomasら,Journal of Organic Chemistry 51(22):4160(1986)に記載されている;3,6−ジメトキシ−1−メチレンリチウム−2,4,5−トリメチル−1,4−シクロヘキサジエン(103)中間体への3,6−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン(102)の変換に関する化学は、Huebscherら,Helvetica Chimica Acta 73(4):1068(1990)に記載されている;2−アルキル−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(105)への3,6−ジメトキシ−1−アルキル−2,4,5−トリメチル−1,4−シクロヘキサジエン(104)の変換に関する化学は、Shiraishiら,Journal of Medicinal Chemistry 32(9):2214(1989)に記載されている。この反応は、R、R、およびRとしてメチルを用いて図示されているが、他のR、R、およびR置換基が、環上のメチル置換された位置で用いられ得ることに留意されたい。
【0056】
この合成は、容易に修飾されて、適切なブロモ化合物、即ち、103を104に変換する反応のための式Br−(CH−R20の化合物、式中、R20は、独立して、−C〜C20アルキル、−C〜C20アルケニル、−C〜C20アルキニル、ならびに少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含む−C〜C20から選択される、を用いて飽和した、飽和していない、および/または分岐した炭化水素鎖の任意の組み合わせを含む化合物を生産することができる。
【0057】
式Iで表される化合物を製造するための別の方法は、下記の合成:
【0058】
【化6】

を適合することによってなされる。ここで、1,4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(110)を2,3,5−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(111)に変換する化学は、Pelterら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,(16),1891(1993)に記載され、ベンゾキノン化合物(111)をその2−アルキル−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(105)に変換する化学は、Fieserら,Journal of the American Chemical Society 64(9):2060(1942)に記載され、塩化アルカノイル(113)をジアルカノイルペルオキシド(114)に変換する化学は、Silbertら,Journal of the American Chemistry Society 81(10):2364(1959)に記載されている。下記の化合物(115):
【0059】
【化7】

を用いて、適切な1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−置換−1,4−ベンゾキノンを用いて開始し、適切な中間体(115)を用いることによって、この経路により式Iで表される化合物を調製することができる。この場合も、この反応は、R、R、およびRとしてメチルを用いて図示されているが、他のR、R、およびR置換基が、環上のメチルで置換された位置で用いられ得る。
【0060】
式Iで表される化合物を製造する別の方法は、下記の脱炭酸カップリング合成法による。
【0061】
【化8】

ここで、1,4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(110)を2,3,5−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(111)に変換する化学は、Pelterら,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,(16),1891(1993)に記載され、ベンゾキノン化合物(111)を2−アルキル−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(105)に変換する化学は、Asin−Cayuelaら,FEBS Letters 571:9(2004)に記載されている。前述の通り、この反応は、R、R、およびRとしてメチルを用いて図示されているが、他のR、R、およびR置換基が、環上のメチル置換された位置で用いられ得る。
【0062】
式Iで表される化合物を製造する更なる別の方法は、下記の通り、Monte,W.T.およびLindbeck,A.C.,Organic Process Research & Development 5:267−269(2001)から適応される化学を用いる。R、R、R置換されたベンゼンジオールは、メチル基で保護され、次に、クロロメチル基は、水素によって占有されているベンゼン環上の価数で水素に代えて使用される。
【0063】
【化9】

次に、クロロメチル化合物は、式R20−(CH−MgX(式中、Xは、グリニャール形成前駆体、例えば、ハロゲン、またはマグネシウムと金属交換し得る金属、例えばリチウムである)で表わされるグリニャール試薬と反応して、保護されたジオールを有する式Iで表される(還元された)化合物を形成する。
【0064】
【化10】

式Iで表されるキノン化合物が得るために、この生産物は、メチルエーテルの除去と同時に酸化され得る;続いて、式Iで表されるジヒドロキノン化合物を供給するために、その化合物は、適切な試薬(例えば、亜ジチオン酸ナトリウムNa)を用いて還元され得る。
【0065】
(キノン、ジヒドロキノン形態の相互交換)
本明細書中に開示される化合物のキノンおよびジヒドロキノン形態は、適切な試薬を用いて容易に相互交換される。例えば、化合物のキノン形態は、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)などの還元剤を用いてジヒドロキノン形態に還元され得る。ヒドロキノン形態は、硝酸セリウムアンモニウムまたは塩化第二鉄などの酸化剤を用いてキノン形態に酸化され得る。キノン形態およびヒドロキノン形態はまた、当該技術分野において周知であるように、電気化学的に容易に変換される。例えば、Streitweiser & Heathcockの33.4節、Introduction to Organic Chemistry,New York:Macmillan,1976を参照されたい。
【0066】
したがって、式Iで表される化合物はまた、還元形態で調製され得る。即ち、還元形態では、「頭部基」が1,4−ベンゾキノンの代わりにベンゼン−1,4−ジオール部分である。これらの化合物は、下記の式I−Red:
【0067】
【化11】

(式中、R、R、R、およびR20は、式Iについて記載される通りである)
で表される化合物、ならびにその全ての塩、立体異性体、溶媒和物および水和物である。
【0068】
キノン形態が引用され、その後に、「その還元された対応物」または「還元形態」なる句などが続く場合、その構造および続く句は、キノンおよびヒドロキノンの両方を包含することが意図される。同様に、ヒドロキノン形態が引用され、その後に、「その酸化された対応物」または「酸化形態」なる句などが続く場合、その構造および続く句は、ヒドロキノンおよびキノンの両方を包含することが意図される。
【0069】
(本明細書中に開示されている化合物および本発明の方法を用いた治療または抑制に影響を受け易い疾患)
様々な疾患は、ミトコンドリア病および機能しなくなったエネルギープロセッシングによって引き起こされるかまたは悪化すると考えられ、本明細書中に開示されている化合物、および本発明の方法を用いて治療または抑制されることができる。このような疾患には、限定されないが、遺伝性ミトコンドリア疾患、例えば、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)、ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS)、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON、レーベル病、レーベル視神経萎縮(LOA)、またはレーベル眼性ニューロパシー(LON)とも呼ばれる)、リー病またはリー症候群、カーンズ・セイアー症候群(KSS)、フリードライヒ失調症(FA)、他のミオパシー(心筋症および脳ミオパシーを含む)、および尿細管性アシドーシス;神経変性病、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック(Lou Gehrig)病としても知られている)、運動ニューロン疾患;他の神経系疾患、例えば、癲癇;遺伝病、例えば、ハンチントン病(神経系疾患でもある);気分障害、例えば、統合失調症および双極性障害;ある種の加齢性疾患、特に、CoQ10が治療に提案される疾患、例えば、黄斑変性症、糖尿病、および癌が挙げられる。
【0070】
(ミトコンドリア機能不全および治療効果の臨床評価)
いくつかの容易に測定可能な臨床マーカーは、ミトコンドリア病を有する患者の代謝状態を評価するために用いられる。これらのマーカーは、所定の治療の効果のマーカーとしても用いることができ、これは、マーカーのレベルが病理的な値から健常値まで動くからである。これらの臨床マーカーには、限定されないが、前記で検討された1以上のエネルギーバイオマーカー、例えば、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおける乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるラクテート/ピルベート比;ホスホクレアチンレベル、NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;無酸素閾値;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型シトクロムCレベル;還元型シトクロムCレベル;酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比;アセトアセテートレベル、β−ヒドロキシブチレートレベル、アセトアセテート/β−ヒドロキシブチレート比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−hydroxy−2’−deoxyguanosine:8−OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO2)のレベル、二酸化炭素放出量(VCO2)のレベル、および呼吸指数(VCO2/VO2)が挙げられる。これらの臨床マーカーのいくつかは、運動生理学研究所で日常的に測定され、被験体の代謝状態の簡易な評価を提供する。本発明の一態様では、フリードライヒ失調症、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー、MELAS、またはKSSなどのミトコンドリア疾患に苦しんでいる患者における1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルが、健常被験体における平均レベルの2標準偏差以内に改善される。本発明の別の態様では、フリードライヒ失調症、レーベル遺伝性眼性ニューロパシー、MELAS、またはKSSなどのミトコンドリア疾患に苦しんでいる患者における1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルが、健常被験体における平均レベルの1標準偏差以内に改善される。運動不耐性は、所定の治療の有効性の指標として用いられても良く、運動耐性の改善(即ち、運動不耐性の減少)は、所定の治療の有効性を指す。
【0071】
いくつかの代謝バイオマーカーは、CoQ10の有効性を評価するためにすでに用いられており、これらの代謝バイオマーカーは、本発明の方法における使用のためのエネルギーバイオマーカーとしてモニターされ得る。ピルベートは、グルコースの嫌気的代謝の生成物であり、機能的ミトコンドリア呼吸鎖に依存している、嫌気的環境における乳酸への還元、または酸化的代謝によって取り除かれる。呼吸鎖の機能不全は、循環からラクテートおよびピルベートの不十分な除去をもたらす場合があり、ラクテート/ピルベート比の増加は、ミトコンドリア細胞症において観察されている(Scriver CR,The metabolic and molecular bases of inherited disease,7th ed.,New York:McGraw−Hill,Health Professions Division,1995;およびMunnichら,J.Inherit.Metab.Dis.15(4):448−55(1992)を参照されたい)。したがって、血中のラクテート/ピルベート比(Chariotら,Arch.Pathol.Lab.Med.118(7):695−7(1994))は、ミトコンドリア細胞症(再度、Scriver CR,The metabolic and molecular bases of inherited disease,7th ed.,New York:McGraw−Hill,Health Professions Division,1995;およびMunnichら,J.Inherit.Metab.Dis.15(4):448−55(1992)を参照されたい)および毒性ミトコンドリアミオパシー(Chariotら,Arthritis Rheum.37(4):583−6(1994))の検出のための非侵襲的試験として幅広く用いられている。肝臓ミトコンドリアの酸化還元状態の変化は、動脈血中のケトン体比(アセトアセテート/3−ヒドロキシブチレート:AKBR)(Uedaら,J.Cardiol.29(2):95−102(1997))を測定することによって調査され得る。8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の尿中排せつは、多くの場合、臨床的環境および職業的環境の両方におけるROS誘導のDNA損傷の修復の程度を評価するためのバイオマーカーとして用いられている(Erholaら,FEBS Lett.409(2):287−91(1997);Hondaら,Leuk.Res.24(6):461−8(2000);Pilgerら,Free Radic.Res.35(3):273−80(2001);Kimら,Environ Health Perspect 112(6):666−71(2004))。
【0072】
磁気共鳴分光計(magnetic resonance spectroscopy:MRS)は、プロトンMRS(1H−MRS)を用いて、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)および皮質白質ラクテートの上昇を実証することによるミトコンドリア細胞症の診断において有用である(Kaufmannら,Neurology 62(8):1297−302(2004))。リンMRS(31P−MRS)は、皮質ホスホクレアチン(phosphocreatine:PCr)の低レベル(Matthewsら,Ann.Neurol.29(4):435−8(1991)、および骨格筋の運動後のPCr回復動態の遅延(Matthewsら,Ann.Neurol.29(4):435−8(1991);Barbiroliら,J.Neurol.242(7):472−7(1995);Fabriziら,J.Neurol.Sci.137(1):20−7(1996))を実証するために用いられている。低骨格筋PCrも、直接的な生化学的測定によってミトコンドリア細胞症の患者において確認されている。
【0073】
運動試験は、ミトコンドリアミオパシーにおける評価およびスクリーニング手段として特に役立つ。ミトコンドリアミオパシーの顕著な特徴の1つは、最大全身酸素消費(VO2max)の低下である(Taivassaloら,Brain 126(Pt2):413−23(2003))。VO2maxは、心拍出量(cardiac outut:Qc)と末梢酸素抽出(動脈−静脈全酸素含有量)との差によって測定されることを考慮すれば、ある種のミトコンドリア細胞症は、送達が変更され得る心機能に影響を及ぼす;しかしながら、大部分のミトコンドリアミオパシーは、末梢酸素抽出(A−V O2差)および増大した酸素送達(運動過多性循環)における特徴的欠損を示す(Taivassaloら,Brain 126(Pt2):413−23(2003))。これは、直接的なAV均衡測定(Taivassaloら,Ann.Neurol.46(4):667−70(1990))を用いて、運動によって誘導される静脈血の脱酸素の不足によって、および近赤外分光法(Lynchら,Muscle Nerve 25(5):664−73(2002);van Beekveltら,Ann.Neurol.46(4):667−70(1999))により非侵襲的に実証することができる。
【0074】
これらのエネルギーバイオマーカーのいくつかは、より詳細には、下記の通り検討される。ある種のエネルギーバイオマーカーは本明細書中で検討され、列挙されているが、本発明は、これらの列挙されたエネルギーバイオマーカーのみの調節、正常化または増進に限定されないことは、強調されなければならない。
【0075】
乳酸(ラクテート)レベル:ミトコンドリア機能不全は、典型的には、乳酸の異常レベルをもたらし、それは、ピルベートレベルが増加し、ピルベートが解糖の能力を維持するためにラクテートに変換されるためである。ミトコンドリア機能不全はまた、NADH+H、NADPH+H、NAD、またはNADPの異常レベルをもたらす可能性があり、それは、還元ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドが、呼吸鎖によって効率的には処理されないためである。ラクテートレベルは、全血、血漿、または脳脊髄液などの適切な体液の試料を採取することによって測定され得る。磁気共鳴を用いて、ラクテートレベルは、脳などの所望の生体の実質的には任意の体積において測定され得る。
【0076】
MELSA患者における磁気共鳴を用いた脳乳酸アシドーシスの測定は、Kaufmannら,Neurology 62(8):1297(2004)に記載されている。脳の側脳室における乳酸レベルの値は、MELAS、A3243GおよびA8344Gをもたらす2つの突然変異に関して示されている。全血、血漿、および脳脊髄液のラクテートレベルは、YSI2300 STAT Plus Glucose & Lactate Analyzer(YSI Life Sciences,Ohio)などの市販されている装置によって測定することができる。
【0077】
NAD、NADP、NADHおよびNADPHレベル:NAD、NADP、NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)の測定は、様々な蛍光技術、酵素的技術、または電気化学的技術、例えば、米国特許公開公報第2005/0067303に記載されている電気化学的アッセイによって測定され得る。
【0078】
酸素消費(vOまたはVO2)、二酸化炭素放出(vCOまたはVCO2)、および呼吸指数(VCO2/VO2):vOは、通常、休息中(休息vO)または最大運動強度(vOmax)において測定される。最適には、両方の値が測定される。しかしながら、重度の障害を持つ患者に関しては、vOmaxの測定は、実行不可能な場合がある。vOの両形態の測定は、様々な製造供給元、例えば、Korr Medical Technologies,Inc.(Salt Lake City,Utah)が提供している標準的な装置を用いて容易に達成される。VCO2も容易に測定され得、同じ条件下でのVCO2とVO2との比(VCO2/VO2、休息または最大運動強度のいずれか)により呼吸指数(respiratory quotient:RQ)が提供される。
【0079】
酸化型シトクロムC、還元型シトクロムC、および酸化型シトクロムCと還元型シトクロムCとの比率:酸化型シトクロムCレベル(Cyt Cox)、還元型シトクロムCレベル(Cyt Cred)、および酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比との比(Cyt Cox)/(Cyt Cred)などのシトクロムCパラメータは、インビボでの近赤外分光法によって測定され得る。例えば、Rolfe,P.,“In vivo near−infrared spectroscopy,”Annu.Rev.Biomed.Eng.2:715−54(2000)、およびStrangmanら,“Non−invasive neuroimaging using near−infrared light”Biol.Psychiatry 52:679−93(2002)を参照されたい。
【0080】
運動耐性/運動不耐性:運動不耐性は、「呼吸困難または疲労の症状のために大骨格筋の動的変動を伴う活動を行う能力の低下」(Pinaら,Circulation 107:1210(2003))として定義されている。運動不耐性は、多くの場合、筋肉組織の破壊およびその後の尿中の筋ミオグロビンの排出に起因するミオグロビン尿症を伴う。消耗前のトレッドミルでの歩行またはランニング時間、消耗前の室内用自転車(エアロバイク)での時間などの運動不耐性の様々な測定が使用可能である。本明細書中に開示されている化合物を用いた処理および本発明の方法は、結果として、運動耐性における約10%以上の改善(例えば消耗までの時間の約10%以上の増加、例を挙げると10分〜11分)、運動耐性における約20%以上の改善、運動耐性における約30%以上の改善、運動耐性における約40%以上の改善、運動耐性における約50%以上の改善、運動耐性における約75%以上の改善、または運動耐性における約100%以上の改善をもたらすことができる。運動耐性は、厳密に言えば、エネルギーバイオマーカーではないが、本発明の目的のために、エネルギーバイオマーカーの調節、正常化、または増進は、運動耐性の調節、正常化、または増進を含む。
【0081】
同様に、正常値および異常値のピルビン酸(ピルベート)レベル、ラクテート/ピルベート比、ATPレベル、無酸素閾値、還元型補酵素Q(CoQred)レベル、酸化型補酵素Q(CoQox)レベル、全補酵素Q(CoQtot)レベル、酸化型シトクロムCレベル、還元型シトクロムCレベル、酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比、アセトアセテートレベル、β−ヒドロキシブチレートレベル、アセトアセテート/β−ヒドロキシブチレート比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル、活性酸素種のレベルは、当該技術分野において知られ、本明細書中に開示されている化合物の有効性、および本発明の方法を評価するために用いることができる。(本発明の目的のために、エネルギーバイオマーカーの調節、正常化、または増進には、無酸素閾値の調節、正常化、または増進が含まれる。)
下記の表1は、種々の機能不全が、生化学およびエネルギーバイオマーカーに与える影響を例示する。それは、身体的効果(例えば、機能不全の疾患症状または他の影響)が、典型的には、所定の機能不全を伴うことも示す。他の箇所で列挙されているエネルギーバイオマーカーに加えて、表に列挙されているエネルギーバイオマーカーのいずれかはまた、本明細書中に開示されている化合物および本発明の方法によって調節され、増進され、または正常化し得ることに留意されたい。RQ=呼吸指数;BMR(basal metabolic rate)=基礎代謝率;HR(CO)=心拍数(heart rate)(心拍出量(cardiac output));T=体温(好ましくは、中核体温として測定される);AT(anaerobic threshold)=無酸素閾値;pH=血液pH(静脈および/または動脈)。
【0082】
【表1】

本発明の方法に従う、ミトコンドリア疾患に苦しんでいる被験体の治療は、被験体における症状の軽減または緩和の誘発をもたらし、例えば障害の更なる進行を止める。
【0083】
ミトコンドリア疾患の部分的または完全な抑制は、被験体が他に悩む1以上の症状の重症度の低下をもたらすことができる。例えば、MELASの部分的な抑制は、発作様発作または痙攣発作(seizure episode)の生じる回数の減少をもたらすことができた。
【0084】
本明細書中に記載されているエネルギーバイオマーカーのいずれか1つ、またはいずれかの組み合わせは、治療または抑制療法の有効性を測定できるように簡便であって測定可能な基準を提供する。さらに、他のエネルギーバイオマーカーが当業者に知られているが、治療の効果または抑制治療の効果を評価するためにモニターすることもできる。
【0085】
(エネルギーバイオマーカーを調節するための化合物の使用)
ミトコンドリア疾患の治療または抑制の状態を評価するためにエネルギーバイオマーカーをモニターすることに加えて、本明細書中に開示されている化合物は、1以上のエネルギーバイオマーカーを調節するために、被験体または患者に用いることができる。被験体においてエネルギーバイオマーカーを正常化するかまたは被験体においてエネルギーバイオマーカーを増進するために、エネルギーバイオマーカーの調節を行うことができる。
【0086】
1以上のエネルギーバイオマーカーの正常化とは、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルが正常レベル(即ち、健常被験体におけるレベル)と比べて病理学的差異を示す被験体において、1以上のこのようなエネルギーバイオマーカーを正常または正常に近いレベルまで回復させること、または被験体において病理学的症状を緩和するために、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させることのいずれかとして定義される。このようなレベルは、エネルギーバイオマーカーの性質に依存するが、正常値より上または下であるいずれかの測定値を示せばよい。例えば、病理学的なラクテートレベルは、典型的には、正常(即ち、健常)人におけるラクテートレベルよりも高く、そのレベルの減少が望ましいものとされればよい。病理学的なATPレベルは、典型的には、正常(即ち、健常)人におけるATPレベルよりも低く、そのATPレベルの増加が望ましいものとされればよい。したがって、エネルギーバイオマーカーの正常化は、被験体における正常値の少なくとも約2の標準偏差以内に、より好ましくは被験体における正常値の少なくとも約1の標準偏差以内に、正常値の少なくとも約2分の1の標準偏差以内に、または正常値の少なくとも約4分の1の標準偏差以内にエネルギーバイオマーカーのレベルを回復させることを伴うことができる。
【0087】
1以上のこのようなエネルギーバイオマーカーを正常化するためにエネルギーバイオマーカーレベルの増加が望まれる場合、エネルギーバイオマーカーのレベルは、本発明に係る1以上の化合物の投与によって、被験体における正常値の少なくとも約2標準偏差以内に増加させ、より好ましくは、被験体における正常値の少なくとも約1標準偏差以内に増加し、正常値の少なくとも約2分の1標準偏差以内に増加し、または正常値の少なくとも約4分の1標準偏差以内に増加することができる。あるいは、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約10%まで上回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約20%まで上回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約30%まで上回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約40%まで上回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約50%まで上回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約75%まで上回って、または投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルの少なくとも約100%まで上回って増加することができる。
【0088】
1以上のエネルギーバイオマーカーを正常化するために1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの減少が望まれる場合、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、本発明に係る1以上の化合物の投与によって、被験体の正常値の少なくとも約2標準偏差以内のレベルまで減少させ、より好ましくは、被験体の正常値の少なくとも約1標準偏差以内まで減少させ、正常値の少なくとも約2分の1標準偏差以内まで減少させ、または正常値の少なくとも約4分の1標準偏差以内まで減少させることができる。あるいは、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約10%まで下回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約20%まで下回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約30%まで下回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約40%まで下回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約50%まで下回って、投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約75%まで下回って、または投与前のそれぞれの1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも約90%まで下回って減少させることができる。
【0089】
1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの増加は、被験体のために有益または所望の効果を提供するレベルに、被験体における1以上のエネルギーバイオマーカーの現存しているレベルを変化させることとして定義される。例えば、登山などの多大な努力または長期間の激しい肉体活動をしている人々の場合、ATPレベルの増加またはラクテートレベルの減少から恩恵を受けることができる。上述したように、エネルギーバイオマーカーの正常化がミトコンドリア疾患を有する被験体に対して最適状態を達成することはできないかもしれないが、このような被験体であっても、エネルギーバイオマーカーの増進から恩恵を受けることはできる。1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの増加から恩恵を受けることができる被験体の例には、限定されないが、激しいかもしくは長期間の肉体活動をしている被験体、慢性エネルギー問題を有する被験体、または慢性呼吸問題を有する患者が挙げられる。このような患者には、限定されないが、妊婦、特に、分娩中の妊婦;新生児、特に未熟児;高温環境(日常的に、1日約4時間以上、華氏約85〜86度または約30℃を超える温度)、低温環境(日常的に、1日約4時間以上、華氏約32度または約0℃を下回る温度)などの厳しい環境、または平均より低い酸素含有量、平均より高い二酸化炭素含有量、または平均より高い空気汚染レベルの環境に晒されている被験体(飛行機を利用する旅行者;客室乗務員;上昇した高度にある被験体;平均を下回る大気質にある都市に居住する被験体;大気質が低下する閉ざされた環境で働く被験体);結核患者、肺癌患者、肺気腫患者、および嚢胞性線維症患者などの肺疾患を有する被験体または平均を下回る肺活量の被験体;外科手術または病気から回復中の被験体;エネルギー低下にある高齢被験体を含む高齢被験体;慢性疲労症候群を含む慢性疲労に苦しんでいる被験体;急性外傷性傷害を受けている被験体;ショック状態にある被験体;緊急酸素投与を必要とする被験体;長期酸素投与を必要とする被験体;または、エネルギーバイオマーカーの増進から利益を得ることができる急性的に、慢性的に、または継続的にエネルギーを必要とする他の被験体が含まれる。
【0090】
したがって、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの増加が、患者に有益である場合、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの増進は、正常値の少なくとも約4分の1を超える標準偏差、正常値の少なくとも2分の1を超える標準偏差、正常値の少なくとも1を超える標準偏差、または正常値の少なくとも約2を超える標準偏差までそれぞれのエネルギーバイオマーカーまたは複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの増加を伴うことが可能である。あるいは、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約10%超えるまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約20%超えるまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約30%超えるまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約40%超えるまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約50%超えるまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約75%超えるまで、または増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体のレベルを少なくとも約100%超えるまで増加させることができる。
【0091】
1以上のエネルギーバイオマーカーを増進するために1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルの減少が望まれる場合、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、被験体における正常値の少なくとも約4分の1標準偏差量まで減少させることができ、被験体における正常値の少なくとも2分の1標準偏差まで減少させることができ、被験体における正常値の少なくとも1標準偏差まで減少させることができ、または被験体における正常値の少なくとも2標準偏差まで減少させることができる。あるいは、1以上のエネルギーバイオマーカーのレベルは、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも10%下回るまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも20%下回るまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも30%下回るまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも40%下回るまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも50%下回るまで、増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも75%下回るまで、または増進前のそれぞれ1以上のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルを少なくとも90%下回るまで減少させることができる。
【0092】
(研究用途、実験系、およびアッセイにおける化合物の使用)
本明細書中に開示されている化合物は、研究用途において用いることもできる。例えば、本明細書中に開示されている化合物は、実験系において1以上のエネルギーバイオマーカーを調節するために、インビトロ、インビボ、またはエクスビボの実験のために用いることができる。このような実験系は、細胞試料、組織試料、細胞成分もしくは細胞成分の混合物、部分的な臓器、全臓器、または生物であり得る。本明細書中に開示されている任意の1以上の化合物は、実験系または研究用途に用いることができる。このような研究用途には、限定されないが、アッセイ試薬としての使用、生化学的経路の解明、または本明細書中に開示されている1以上の化合物の有無での実験系の代謝状態における他の試薬の影響の評価が含まれる。
【0093】
さらに、これらの化合物は、生化学的試験またはアッセイにおいて用いることができる。このような試験には、1以上の化合物の投与に対する被験体の潜在的な応答(もしくは特定の小集団の被験体の応答)を評価するために、またはどの化合物が特定の被験体もしくは小集団の被験体において最適な効果を生じるのか決定するために被験体からの組織または細胞試料とともに、本明細書中に開示されている1以上の化合物をインキュベートすることができる。1つのこのような試験またはアッセイは、1)1以上のエネルギーバイオマーカーの調節がアッセイされ得る被験体由来の細胞試料または組織試料を得ること;2)本明細書中に開示されている1以上の化合物を前記細胞試料または組織試料に投与すること;3)1以上の化合物の投与前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、1以上の化合物の投与後の1以上のエネルギーバイオマーカーの調節量を測定することを伴う。別のこのような試験またはアッセイは、1)1以上のエネルギーバイオマーカーの調節がアッセイされ得る被験体由来の細胞試料または組織試料を得ること;2)本明細書中に開示されている少なくとも2つの化合物を前記細胞試料または組織試料に投与すること;3)少なくとも化合物の投与前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、少なくとも2つの化合物の投与後の1以上のエネルギーバイオマーカーの調節量を測定すること;4)工程3)で測定した調節量を基準にして、治療、抑制、または調節において使用するための化合物を選択することを伴う。
【0094】
(医薬製剤)
本明細書中に開示されている化合物は、医薬として許容される賦形剤、医薬として許容されるキャリア、医薬として許容されるベヒクルなどの添加剤とともに製剤化によって医薬組成物として調合することができる。適切な医薬として許容される賦形剤、キャリアおよびベヒクルには、加工剤および薬物送達変性剤および増強剤、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖類、二糖類、スターチ、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低融点ワックス、イオン交換樹脂など、ならびにそれらの任意の2つ以上の組み合わせが含まれる。他の適切な医薬として許容される賦形剤は、参照により本明細書中に援用される“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)および“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,第20版(2003)および第21版(2005)に記載されている。
【0095】
医薬組成物は、単位用量剤形を含むことができ、単位用量は、治療もしくは抑制効果を有するのに十分な用量であるか、またはエネルギーバイオマーカーを調節し、正常化し、もしくは増進するのに有効な量である。この単位用量は、治療もしくは抑制効果を有する単回用量として十分であるか、またはエネルギーバイオマーカーを調節し、正常化し、もしくは増進するのに有効な量であってもよい。あるいは、単位用量は、障害の治療もしくは抑制の過程で定期的に投与される用量であるか、またはエネルギーバイオマーカーを調節し、正常化し、または増進するのに有効な量であってもよい。
【0096】
本明細書中に開示されている化合物を含む医薬組成物は、例えば、溶液、懸濁液、または乳液を含む、意図された投与方法に適切な任意の形態であってもよい。液体キャリアは、典型的には、溶液、懸濁液、および乳液を調製するために用いられる。本発明の実施における使用に意図される液体キャリアには、例えば、水、生理食塩水、医薬として許容される有機溶媒(類)、医薬として許容される油類または脂肪類等、ならびにそれらの2以上の組み合わせが含まれる。液体キャリアには、他の適した医薬として許容される添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、栄養剤、緩衝剤、防腐剤、懸濁化剤、増粘剤、粘性調節剤、安定化剤などが含まれてもよい。適した有機溶媒には、例えば、エタノールなどの一価アルコール類、グリコール類などの多価アルコール類が含まれる。適した油類には、例えば、大豆油、ココナッツ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などが含まれる。非経口投与に関して、キャリアはまた、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。本明細書中に開示されている組成物はまた、微小粒子、マイクロカプセル、リポソームカプセルなど、ならびにそれらの任意の2以上の組み合わせの形態であってもよい。
【0097】
例えば、Lee,“Diffusion−Controlled Matrix Systems”,pp.155−198、RonおよびLanger,“Erodible Systems”,pp.199−224,“Treatise on Controlled Drug Delivery”,A.Kydonieus Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York 1992に記載される拡散制御マトリックスシステムまたは浸食システムなどの持続放出または制御放出送達システムを用いることができる。マトリックスは、例えば、加水分解または酵素的切断によって、例えば、プロテアーゼによってインサイチュ(in situ)およびインビボで自然に分解し得る生分解性材料であってもよい。送達システムは、例えば、ハイドロゲルの形態で、例えば、天然に存在しているかまたは合成高分子もしくは共重合体であってもよい。切断可能な連結を有する典型的な高分子には、ポリエステル類、ポリオルトエステル類、ポリ無水物類、多糖類、ポリ(リン酸エステル)類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリ(イミドカーボネート)類およびポリ(ホスファゼン)類が含まれる。
【0098】
本明細書中に開示されている化合物は、必要に応じて、従来の非毒性な医薬として許容されるキャリア、アジュバント、およびベヒクルを含む用量単位剤形で、腸内に、経口的に、非経口的に、舌下に、吸入(例えば、噴霧もしくはスプレイ)によって、直腸内に、または局所的に投与することができる。例えば、投与に適した様式には、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオン導入、静脈内、動脈内、筋内、腹腔内、鼻腔内(例えば、鼻粘膜)、硬膜下、直腸内、胃腸などによって、特定のもしくは病気に冒されている臓器または組織に直接的な投与が含まれる。中枢神経系への送達に関しては、脊髄および硬膜外投与、または脳室への投与を用いることができる。局所的投与はまた、経皮貼布またはイオン導入デバイスなどの経皮投与の使用を伴ってもよい。非経口なる用語は、本明細書中で使用するとき、皮下注射、静脈、筋内、胸骨内注射、または注入技術を含む。前記化合物は、所望の投与経路に適し医薬として許容されるキャリア、アジュバント、およびベヒクルと混合される。経口投与が好ましい投与経路であり、経口投与に適した製剤が好ましい製剤である。本明細書において使用のために記載されている化合物は、固体形態、液体形態、エアロゾル形態、または錠剤、丸薬、粉末混合物、カプセル、顆粒、注入物質、クリーム、溶液、坐剤、浣腸、結腸洗浄剤、乳剤、分散剤、食品予混合物の形態、他の形態で投与することができる。該化合物はまた、リポソーム製剤で投与することもできる。該化合物はまた、プロドラッグとして投与することもでき、該プロドラッグは、処置される被験体において、治療的に有効である形態に変形される。更なる投与方法は、当該技術分野において知られている。
【0099】
注入調製物、例えば、無菌の注入用水溶液または油性懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、知られている技術に従って調合することができる。無菌の注入用調製物また、非毒性の非経口として許容される希釈剤または溶媒に溶かした無菌の注入用溶液または懸濁液、例えば、プロピレングリコール溶液であってもよい。使用されてもよい許容されるベヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、無菌の固定油類は、溶媒または懸濁化剤として慣習的に用いられている。この目的のために、合成のモノまたはジグリセリド類を含む任意の無菌性(bland)固定油を使用してもよい。さらに、注入物質の調製においては、オレイン酸などの脂肪酸の使用もある。
【0100】
薬物の直腸投与のための坐剤は、該薬物と、室温で固体であるが、直腸内温度では液体であり、したがって、直腸内で溶解し、薬物を放出するようになるココアバターおよびポリエチレングリコールなどの適した非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。
【0101】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末剤、および顆粒が含まれてもよい。このような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはスターチなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混合されてもよい。このような剤形はまた、不活性な希釈剤以外の追加物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含むことができる。カプセル、錠剤、および丸薬の場合では、剤形はまた、緩衝剤を含むこともできる。錠剤および丸薬は、さらに、腸溶被覆剤を用いて調製することができる。
【0102】
経口投与のための液体剤形には、医薬として許容される乳剤、溶液、懸濁液、シロップ、および当該技術分野において一般的に用いられている不活性な希釈剤を含む賦形剤、例えば、水が含まれてもよい。このような組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、シクロデキストリン、および甘味剤、香味剤、および香料剤などのアジュバントを含むこともできる。
【0103】
本明細書中に開示されている化合物はまた、リポソームの形態で投与することができる。当該技術分野において知られているように、リポソームは、一般的に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中に分散する一重または多重膜水和液晶によって形成される。リポソームを形成することができる任意の非毒性の生理学的に許容されて代謝可能な脂質を用いることができる。リポソーム形態の本組成物は、本明細書中に開示されている1以上の化合物に加えて、安定化剤、防腐剤、賦形剤などを含むことができる。好ましい液体は、天然および合成の両方を含むリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当該技術分野において知られている。例えば、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.W.,p.33以下(1976)を参照されたい。
【0104】
本発明はまた、ミトコンドリア疾患の治療または抑制に有用な材料を含む製造品およびキットも提供する。製造品は、ラベルされた容器を含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。該容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。該容器は、ミトコンドリア疾患を治療または抑制するのに効果的な活性剤を有する組成物を保持している。該組成物中の活性剤は、本明細書中に開示されている1以上の化合物である。容器のラベルは、該組成物がミトコンドリア疾患を治療または抑制するために用いられることを指示し、上述されるように、インビボまたはインビトロでの使用のいずれかのための使用法も指示してもよい。
【0105】
本発明はまた、本明細書中に開示されている任意の1以上の化合物を含むキットも提供する。いくつかの態様では、本発明のキットは、上述される容器を含む。他の態様では、本発明のキットは、上述の容器、および緩衝剤を含む第2容器を含む。さらに、キットには、他の緩衝剤、希釈剤、ろ過剤、針、シリンジ、および本明細書中に開示されている任意の方法を実施するための指示の付いた添付文書など、商業的およびユーザーの観点から望まれる他のものが含まれてもよい。
【0106】
他の側面では、該キットは、例えば、ミトコンドリア病を有する個体を治療すること、または個体におけるミトコンドリア病を抑制することを含む、本明細書中に記載される任意の方法のために用いられてもよい。
【0107】
単回剤形を製造するためのキャリア材料と組み合わせられてもよい有効成分の量は、該有効成分が投与される宿主、特定の投与様式に依存して変化する。しかし、当然のことながら、任意の特別な患者に対する特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、体面積、体格指数(body mass index:BMI)、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、併合薬、および治療を受けている特定の疾患のタイプ、進行、および重症度を含む種々の因子(即ち、調節されているエネルギーバイオマーカー)に依存する。選ばれる製薬単位剤形は、通常、血液、組織、臓器、または他の標的とされる生体の領域において、薬物の所望の最終濃度を提供するために加工および投与される。所定の状況に対する治療的有効量または有効量は、日常的な実験によって容易に測定され得、通常の臨床医学者の技術および判断の範囲内である。
【0108】
用いることができる用量の例には、約0.1μg/kgから約300mg/kgの用量範囲内、または約1.0μg/kgから約40mg/kg体重の用量範囲内、または約1.0μg/kgから約20mg/kg体重の用量範囲内、または約1.0μg/kgから約10mg/kg体重の用量範囲内、または約10.0μg/kgから約10mg/kg体重の用量範囲内、または約100μg/kgから約10mg/kg体重の用量範囲内、または約1.0mg/kgから約10mg/kg体重の用量範囲内、または約10mg/kgから約100mg/kg体重の用量範囲内、または約50mg/kgから約150mg/kg体重の用量範囲内、または約100mg/kgから約200mg/kg体重の用量範囲内、または約150mg/kgから約250mg/kg体重の用量範囲内、または約200mg/kgから約300mg/kg体重の用量範囲内、または約250mg/kgから約300mg/kg体重の用量範囲内の有効量が挙げられる。用いることができる他の用量は、約0.01mg/kg体重、約0.1mg/kg体重、約1mg/kg体重、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約75mg/kg体重、約100mg/kg体重、約125mg/kg体重、約150mg/kg体重、約175mg/kg体重、約200mg/kg体重、約225mg/kg体重、約250mg/kg体重、約275mg/kg体重、または約300mg/kg体重である。本明細書中に開示されている化合物は、1日1回の用量で投与することができ、または毎日の全用量は、1日2、3または4回の分割した用量で投与することができる。
【0109】
本明細書中に開示されている化合物は、単独の活性な医薬製剤として投与することができるが、それらは、障害の治療または抑制において使用される1以上の他の薬物と併用して用いることもできる。ミトコンドリア疾患の治療または抑制のために、本明細書中に開示されている化合物と併用される有用な代表的薬物には、限定されないが、補酵素Q、ビタミンE、イデベノン、MitoQ、ビタミン類、および抗酸化化合物が挙げられる。
【0110】
付加的な活性剤は、本明細書中に開示される化合物と併用して用いられる場合、付加的な活性剤は、一般的に、参照により本明細書中に援用されるPhysicians’ Desk Reference(PDR)第53版(1999)に示される治療量、または当業者に知られているような治療的に有用な量で使用することができる。
【0111】
本明細書中に開示されている化合物、および任意の他の治療的活性剤は、推奨される最大の臨床用量であるかまたはより低い用量で投与することができる。本明細書中に開示されている組成物における活性化合物の用量レベルは、投与経路、疾患の重症度および患者の応答に依存する所望の治療応答を得るように変化させることができる。他の治療剤と併用して投与する場合、治療剤は、同じ時間もしくは異なった時間で提供される別々の組成物として調合することができ、または治療剤は、1つの組成物として提供することができる。
【0112】
本発明は、さらに、下記の実施例によって例証されるが、いずれかの方法で本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0113】
(実施例1)
【0114】
【化12】

工程1:2Lの3−Nフラスコに2,3,5−トリメチル−ベンゼン−1,4−ジオール(201;50g、0.33mol)およびMEK(750mL)を充填して、琥珀色の溶液を得た。炭酸カルシウム(210g、1.64mol)をこの溶液に充填した。室温で30分後、MeI(81.2mL、1.31mol)をこの茶色の懸濁液に添加した。反応混合物を65℃で72時間加熱した。室温まで冷却後、この反応混合物をロータリーエバポレーターによって乾燥するまで濃縮して、白色のペーストを得た。このペーストをEtOAc(3×300mL)で洗浄した。EtOAc抽出物を合わせ、ロータリーエバポレーターによって濃縮した。得られた黄褐色の油状物をクロマトグラフィー(80:20/ヘプタン:EtOAc)にかけ、1,4−ジメトキシ−2,3,5−トリメチル−ベンゼン(47.2g、80%)を得た。
【0115】
【化13】

工程2:フラスコに1,4−ジメトキシ−2,3,5−トリメチル−ベンゼン(47.2g、0.26mol)、氷酢酸(250mL)、およびパラホルムアルデヒド(39.3g、1.31mol)を充填して、黄色の懸濁液を得た。次に、無水HClガスを1.5時間、反応混合物を泡立ててゆっくり通過させて、透明な琥珀色の溶液を生じさせた。その後、反応混合物を水(300mL)で希釈し、MTBE(3×300mL)で抽出した。合わせたMTBE層をNaSO上で乾燥させ、ろ過し、ロータリーエバポレーターによって濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(95:5/ヘプタン:EtOAc)による粗生成物の精製により、1−クロロメチル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(202;48.7g、81%)を得た。
【0116】
【化14】

Kochiカップリングの典型的な手法:100mLの3−Nフラスコ(A)を1−クロロメチル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(202;3g、13.1mmol)および脱気したTHF(30mL)で不活性化し、充填した。次に、フラスコを0℃まで冷却した。別の100mL 3−Nフラスコ(B)を適切なアルキルグリニャール試薬(17.1mmol)で不活性化し、充填した。次に、フラスコBを0℃まで冷却した。3番目の50mLのフラスコ(C)を塩化(第二)銅(88mg、0.66mmol)、塩化リチウム(56mg、1.32mmol)および脱気したTHF(15mL)で不活性化し、充填した。5分後、フラスコCの錆びたようなオレンジ色の溶液をフラスコAの1−クロロメチル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼンの溶液に移した。次に、フラスコAの内容物は、シリンジを使って、フラスコBのグリニャール溶液に30分かけて滴下して移した(発熱性)。この反応物を16時間撹拌させた。この反応物をMTBE(20mL)および飽和水性NHCl(20mL)でクエンチした。10分間撹拌した後、得られた懸濁液をろ過し、二量化した副産物を除去した。水層をMTBE(3×20mL)で抽出した。合わせたMTBE層は、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、白色の残渣を得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1:1/DCM:ヘプタン)によって精製し、所望のカップリングした生成物を得た(203、204を参照されたい)。
【0117】
【化15】

n−ペンチルグリニャール試薬を用いて、1−ヘキシル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(203)を合成した(38%、透明無色の油状物);
【0118】
【化16】

n−ヘプチルグリニャール試薬を用いて、1−オクチル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(204)を合成した(57%、透明無色の油状物);
【0119】
【化17】

CAN酸化:フラスコに1−ヘキシル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(203;1.75g、7.5mmol)およびCAN(20mL)を充填し、次に、0℃まで冷却した。水(10mL)中のCAN(8.4g、15.4mmol)の溶液をフラスコに添加した。1時間後、反応が終了した。反応混合物をMTBE(3×20mL)で抽出した。合わせたMTBE層は、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮して、時間に依存して固化する黄橙色の油状物として2−ヘキシル−3,5,6−トリメチル−[1,4]ベンゾキノン(205)を得た(1.64g、88%)。
【0120】
【化18】

【0121】
【化19】

フラスコに1−オクチル−2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチル−ベンゼン(204;1.75g、7.5mmol)およびCAN(20mL)を充填し、次に、0℃まで冷却した。水(10mL)中のCAN(8.4g、15.4mmol)の溶液をフラスコに添加した。1時間後、反応が終了した。反応物を水(50mL)で希釈し、黄色の沈殿物をろ過し、水(20mL)で洗浄した。微細な黄色の針状物を高真空下で乾燥させ、純粋な2−オクチル−3,5,6−トリメチル−[1,4]ベンゾキノンを得た(206;1.69g、86%)。
【0122】
【化20】

(実施例2)
(脱炭酸化カップリング)
(実施例2A)
【0123】
【化21】

250mLの丸底フラスコに、水およびアセトニトリルの1:1の混合物(100ml)中の2,3,5−トリメチル−[1,4]ベンゾキノン(1.50g、9.98mmole)、リノレン酸(2.94g、10.4mmole)、および硝酸銀(1.83g、10.8mmole)を添加した。この溶液をアルゴン下で70℃に加熱し、Kの水溶液(50ml水中の2.55g、11.5mmole)は、シリンジポンプを用いて、2.5時間かけて、均一な溶液に滴下して添加した。反応混合物をさらに30分間、70℃で撹拌させ、次に、室温まで冷却した。この混合物に、MTBE(200ml)および水(100ml)を添加した。有機層を分離して、飽和NaHCO(100ml)、次にブライン(2×200ml)で洗浄した。MTBE溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次に、黄色の油状物に濃縮させた。粗生成物は、TLCにより残った未反応の出発物質キノンを含み、シリカゲルクロマトグラフィー(120g、0〜30% EtOAc:ヘプタン)によってさらに精製して、純粋な2−ヘプタデカ−8,11−ジエニル−3,5,6−トリメチル−[1,4]ベンゾキノン(210;0.474g、12.3%)を黄色の油状物として得た。
【0124】
【化22】

(実施例2B)
【0125】
【化23】

250mlの丸底フラスコに、水およびアセトニトリルの1:1の混合物(100ml)中の2,3,5−トリメチル−[1,4]ベンゾキノン(0.51g、3.4mmole)、オレイン酸(1.0g、3.5mmole)、および硝酸銀(0.62g、3.6mmole)を添加した。この溶液をアルゴン下で70℃に加熱し、Kの水溶液(50ml水中の0.86g、3.9mmole)は、シリンジポンプを用いて、2.5時間かけて、均一な溶液に滴下して添加した。反応混合物をさらに30分間、70℃で撹拌させ、次に、室温まで冷却させた。この混合物に、MTBE(200ml)および水(100ml)を添加した。有機層を分離して、水(2×100ml)、次にブライン(2×100ml)で洗浄した。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次に、黄色の油状物に濃縮させた。粗生成物は、シリカゲルクロマトグラフィー(120g、0〜30% EtOAc:ヘプタン)によってさらに精製して、純粋な2−ヘプタデク−8−エニル−3,5,6−トリメチル−[1,4]ベンゾキノン(211;25.2mg、2%)を黄色の油状物として得た。
【0126】
【化24】

(実施例2C)
【0127】
【化25】

工程1:撹拌子を備えた500mLの丸底フラスコに、2−tert−ブチル−6−メチル−ベンゼン−1,4−ジオール(212;18g、100mmole)、パラホルムアルデヒド(3.0g、100mmole)、SnCl(47.4g、250mmole)、DME(200ml)、および濃HCl(50ml、35%)を添加した。このフラスコに還流冷却器を取り付け、反応混合物を75℃に加熱した。24時間後、混合物を室温まで冷却した。この混合物にMTBE(300ml)を添加した。有機分画を分離し、水(3×500ml)、次にブライン(2×200ml)で洗浄した。有機分画を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、赤褐色の泡状物に濃縮した。得られた粗5−tert−ブチル−2,3−ジメチル−ベンゼン−1,4−ジオールは、さらに精製することなしに次の工程に直接利用した。
【0128】
工程2:撹拌子を備えた500mlの丸底フラスコに、溶液としてMeCN(200ml)中の5−tert−ブチル−2,3−ジメチル−ベンゼン−1,4−ジオールを添加した。室温で撹拌している溶液に、溶液として水(200ml)中のCAN(114g、220mmole)を一度に添加した。二相性反応混合物を室温で1時間、激しく撹拌し、その後、TLC分析(20% EtOAc:ヘプタン)では更なる反応は検出されなかった。反応混合物をMTBE(500ml)に注いだ。有機層を分離し、次に、水層が無色の状態になるまで水(3×200ml)で洗浄した。次に、この溶液をブライン(2×200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、赤色の油状物に濃縮した。粗生成物の一部をさらにシリカゲルクロマトグラフィー(120g、0〜20% EtOAc:ヘプタン)によって精製し、5−tert−ブチル−2,3−ジメチル−[1,4]ベンゾキノン(213)を揮発性の黄色の油状物として得た。
【0129】
【化26】

工程3:撹拌子を備えた250mlの丸底フラスコに、5−tert−ブチル−2,3−ジメチル−[1,4]ベンゾキノン(213;0.68g、3.5mmole)、ヘプタン酸(0.49、3.7mmole)、AgNO(0.64g、3.8mmole)、アセトニトリル(50ml)および水(50ml)を添加した。十分に均一な溶液をアルゴン下で70℃に加熱し、その間、Kの水溶液(30mlの水中の0.91g、4.1mmole)を2.5時間かけて、シリンジポンプを用いて滴下して添加した。この反応混合物をさらに30分間、70℃で撹拌し、次に、室温まで冷却した。この混合物にヘプタン(100ml)および水(100ml)を添加した。有機層を分離し、飽和NaHCO(1×50ml)、次にブライン(2×100ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、黄色の油状物に濃縮した。粗生成物は、調製用TLC(シリカゲル:200×200×2mm;100%ヘプタン装填;5% EtOAc:ヘプタン溶出)によってさらに精製した。最速の移動バンドは、UVによって視覚化され、切り出され、メチルtert−ブチルエーテルでシリカゲルから抽出され、この抽出物を黄色の油状物に濃縮して、黄色の油状物を得た。残渣をフラッシュクロマトグラフィー[シリカゲル:40g;0〜20% 100%ヘプタン装填;0〜20% EtOAc/ヘプタン勾配溶出]によってさらに精製し、純粋な2−tert−ブチル−3−ヘキシル−5,6−ジメチル−[1,4]ベンゾキノン(214;83mg、8.4%)を黄色の油状物として得た。
【0130】
【化27】

(実施例2D)
【0131】
【化28】

工程1:撹拌子を備えた500mlの丸底フラスコに、2,6−ジイソプロピル−ベンゼン−1,4−ジオール(215;5.0g、26mmole)、パラホルムアルデヒド(0.78g、26mmole)、SnCl(18.9g、100mmole)、ジイソプロピルエーテル(200ml)、および濃HCl(60ml、35%)を添加した。このフラスコに還流冷却器を取り付け、反応混合物を66℃に加熱した。24時間後、この混合物を室温まで冷却した(この反応物は全体を通じて二相性のままであった。この反応混合物にMTBE(200ml)を添加した。有機分画を分離して、HCl溶液(1×200ml、1N)、水(3×100ml)、およびブライン(2×100ml)で洗浄した。有機分画を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、黄色の油状物に濃縮した。得られた粗2,6−ジイソプロピル−3−ジメチル−ベンゼン−1,4−ジオールをさらに精製することなしに次の工程に直接利用した。
【0132】
工程2:撹拌子を備えた500mlの丸底フラスコに、溶液としてMeCN(100ml)中の粗2,6−ジイソプロピル−3−ジメチル−ベンゼン−1,4−ジオールを添加した。室温で撹拌している溶液に、溶液として水(100ml)中のCAN(28.5g、55.0mmole)を一度に添加した。二相性反応混合物を室温で1時間、激しく撹拌し、その後、TLC分析(20% EtOAc:ヘプタン)では更なる反応は検出されなかった。反応混合物をMTBE(200ml)に注いだ。有機層を分離し、次に、水(2×100ml)で洗浄した。次に、この溶液をブライン(2×100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、赤黄色の油状物に濃縮した。粗生成物をさらにシリカゲルクロマトグラフィー(0〜5%EtOAc:ヘプタン)によって精製し、3,5−ジイソプロピル−2−メチル−[1,4]ベンゾキノン(216)を揮発性の黄色の油状物として得た。
【0133】
【化29】

工程3:撹拌子を備えた250mlの丸底フラスコに、3,5−ジイソプロピル−2−メチル−[1,4]ベンゾキノン(216;1.03g、5.00mmol)、リノレン酸(1.63ml、1.47g、5.24mmol)、硝酸銀(I)(917mg、5.40mmol)、アセトニトリル(35ml)、および水(25ml)を添加した。この溶液を気球密閉雰囲気下で75℃に加熱し、その温度では、溶液は均一とした。次に、水(30ml)に溶かした過硫酸カリウム(1.28g、5.75mmol)を4時間かけて、シリンジポンプにより滴下して添加した。添加が終了した後、反応混合物をさらに2時間加熱し、次に、ロータリーエバポレーターで減圧下でおよそ半分まで反応容積を減らした。水(50ml)を濃縮物に添加し、混合物をMTBE(3×50ml)で抽出した。合わせた有機物をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、黄色の油状物に濃縮した。粗生成物の一部を調製用TLC(シリカゲル:200×200×2mm;100%ヘプタン装填;5%MTBE:ヘプタン溶出)によってさらに精製した。最速の移動バンドは、UVによって視覚化され、切り出され、MTBEでシリカゲルから抽出し、この抽出物を黄色の油状物に濃縮して、黄色の油状物を得た(280mg)。残渣をフラッシュクロマトグラフィー[シリカゲル:40g;0〜20% 100%ヘプタン装填;0〜20% EtOAc/ヘプタン勾配溶出]によってさらに精製し、2−ヘプタデカ−8,11−ジエニル−3,5−ジイソプロピル−6−メチル−[1,4]ベンゾキノン(217;65.6mg、2.9%質量収率)を黄色の油状物として得た。それは、逆相HPLCによって測定すると純粋であった。
【0134】
【化30】

(実施例2E)
【0135】
【化31】

撹拌子を備えた100mlの丸底フラスコに3,5−ジイソプロピル−2−メチル−[1,4]ベンゾキノン(216、実施例2Dを参照されたい;1.03g、5.00mmol)、オクタン酸(832μl、757mg、5.24mmole)、硝酸銀(I)(917mg、5.40mmol)、アセトニトリル(35ml)、および水(25ml)を添加した。この溶液を気球密閉雰囲気下で75℃に加熱し、均一とした。次に、水(30ml)に溶かした過硫酸カリウム(1.28g、5.75mmol)を4時間かけて、シリンジポンプにより滴下して添加した。添加が終了した後、反応混合物をさらに2時間加熱し、次に、ロータリーエバポレーターで減圧下でおよそ半分まで反応容積を減らした。水(50ml)を濃縮物に添加し、混合物をMTBE(3×50ml)で抽出した。合わせた有機物をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、黄色の油状物(1.2g)に濃縮した。残渣の約75%を調製用TLC[シリカゲル:200×200×2mm;100%ヘプタン装填;5%酢酸エチル/ヘプタン溶出]によって、150〜200mg部分に精製した。最速の移動バンドは、UVによって視覚化され、合わせられ、MTBEでシリカゲルから抽出され、この抽出物を黄色の油状物(約300mg)に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー[シリカゲル:120g;100%ヘプタン装填;3〜6%酢酸エチル/ヘプタン勾配溶出]によってさらに精製し、2−ヘプチル−3,5−ジイソプロピル−6−メチル−[1,4]ベンゾキノン(218)を鮮黄色の油状物として得た(288mg、21%質量収率)。
【0136】
【化32】

特定の引用例によって本明細書中に言及される全ての刊行物、特許、特許出願および公開された特許出願の開示は、全体として参照により本明細書中に援用される。
【0137】
前述の発明は、明確な理解のために、例示および実例の手段によって少し詳細に記載されるが、ある種の小さな変化および改変が実施されるようになることは当業者に明確である。したがって、前記説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリア病を治療するか、1以上のエネルギーバイオマーカーを調節するか、1以上のエネルギーバイオマーカーを正常化するか、または1以上のエネルギーバイオマーカーを増進する方法であって、治療的有効量または有効量の式:
【化1】

で表される1以上の化合物、全てのその塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を被験体に投与する工程を包含し、
式中、R、R、およびRは、独立して、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、−CN、−F、−Cl、−Br、および−Iから選択され;
20は、独立して、−C〜C20アルキル、−C〜C20アルケニル、−C〜C20アルキニル、ならびに少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含む−C〜C20から選択される、
方法。
【請求項2】
20が、Cn−アルキル、Cn−アルキル、およびC11n−アルキルを除くという条件である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得;
が、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得;
が、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得;
20が、独立して、−C〜C20アルキル、−C〜C20アルケニル、−C〜C20アルキニル、ならびに少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含む−C〜C20から選択され、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
20が、Cn−アルキル、Cn−アルキル、およびC11n−アルキルを除くという条件である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、メチルではない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、メチルではない、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、メチルではない、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、メチルではない、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記ミトコンドリア病が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF);ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS);レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON);リー病;カーンズ・セイアー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA);他のミオパシー;心筋症;脳ミオパシー;尿細管性アシドーシス;神経変性病;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);運動ニューロン疾患;他の神経系疾患;癲癇;遺伝病;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;加齢性疾患;黄斑変性症;糖尿病;および癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ミトコンドリア病が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF);ミトコンドリアミオパシー、脳症、ラクトアシドーシス、発作(MELAS);レーベル遺伝性眼性ニューロパシー(LHON);リー病;カーンズ・セイアー症候群(KSS);およびフリードライヒ失調症(FA)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エネルギーバイオマーカーが、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおける乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室液のいずれかにおけるラクテート/ピルベート比;ホスホクレアチンレベル、NADH(NADH+H)レベル;NADPH(NADPH+H)レベル;NADレベル;NADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型シトクロムCレベル;還元型シトクロムCレベル;酸化型シトクロムC/還元型シトクロムC比;アセトアセテートレベル、β−ヒドロキシブチレートレベル、アセトアセテート/β−ヒドロキシブチレート比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO2)レベル;二酸化炭素放出量(VCO2)レベル;呼吸指数(VCO2/VO2);運動耐性;および無酸素閾値からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が、ミトコンドリア疾患を有する被験体;激しいかまたは長期の肉体活動を被っている被験体;慢性エネルギー問題を有する被験体;慢性呼吸問題を有する被験体;妊婦;分娩中の妊婦;新生児;未熟児;厳しい環境に晒されている被験体;高温環境に晒されている被験体;低温環境に晒されている被験体;酸素量が平均を下回っている環境に晒されている被験体;二酸化炭素量が平均を上回っている環境に晒されている被験体;平均レベルを上回る空気汚染の環境に晒されている被験体;肺疾患を有する被験体;肺活量が平均を下回っている被験体;結核患者;肺癌患者;肺気腫患者;嚢胞性線維症患者:外科手術から回復中の被験体;病気から回復中の被験体;急性外傷性傷害を被っている被験体;ショック状態にある被験体;緊急酸素投与を必要としている被験体;長期酸素投与を必要としている被験体;高齢被験体;エネルギー低下にある高齢被験体;および慢性疲労に苦しんでいる被験体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式:
【化2】

で表される化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物であって、
式中、R、R、およびRは、独立して、−C〜Cアルキル、−C〜Cハロアルキル、−CN、−F、−Cl、−Br、および−Iから選択され;
20は、独立して、−C〜C20アルキル、−C〜C20アルケニル、−C〜C20アルキニル、ならびに少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含む−C〜C20から選択され;
ただし、R、R、およびRが全てメチルである場合、R20は、Cn−アルキル、Cn−アルキル、およびC11n−アルキルを除き、さらに、Rがブロモであり、RおよびRのうちの1つがメチルであり、RおよびRのその他の1つがブロモである場合、R20はCn−アルキルを除く、
化合物。
【請求項14】
、R、およびRのいずれの選択に対しても、R20が、Cn−アルキル、Cn−アルキル、およびC11n−アルキルを除く、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得;
が、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得;
は、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピル−メチル、およびメチル−シクロプロパンから選択され、Rによるこの分子の残り部分への結合点が、該アルキル断片上の任意の位置であり得る、請求項13に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項16】
、R、およびRのうちの少なくとも1つがメチルではない、請求項13に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項17】
、R、およびRが、独立して、C〜Cアルキルから選択される、請求項16に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項18】
、R、およびRのうちの1つのみが、メチルである、請求項13に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項19】
、R、およびRのうちの2つのみが、メチルである、請求項13に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項20】
、R、およびRの全てが、メチルである、請求項13に記載の化合物、その全ての塩、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物。
【請求項21】
医薬として許容されるキャリアをさらに含む、請求項13に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−508867(P2009−508867A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531360(P2008−531360)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/036052
【国際公開番号】WO2007/035496
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(507393285)エジソン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】