説明

ミョウガの養液栽培方法と装置

【課題】ヤシガラを栽培ベッドの培地に使用してミョウガを栽培しながら、ヤシガラ培地の排液をランニングコストを低減しながら清澄な水に処理する。
【解決手段】ミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10にヤシガラ培地12を使用してミョウガを植え付けし、ヤシガラ培地12に養液16を供給してミョウガを栽培する。ヤシガラ培地12には、ヤシガラ90を破砕した粉砕ヤシガラ91を洗浄工程において洗浄液95と混合して攪拌して洗浄し、含有する有機汚濁物の一部を除去して洗浄ヤシガラ92とし、この洗浄ヤシガラ92を乾燥固化工程において乾燥状態に固化し、固化された乾燥固化ヤシガラ培地93を膨潤工程で水26又は養液16に膨潤させてなる洗浄膨潤ヤシガラ培地94を使用する。養液栽培方法は、養液栽培ベッド10の洗浄膨潤ヤシガラ培地94に養液16を供給して、洗浄膨潤ヤシガラ培地94でミョウガを栽培する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミョウガをヤシガラ培地に植え付けして養液栽培する栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミョウガの養液栽培の培地としてヤシガラ培地が使用される。ヤシガラ培地に多量の養液を供給してミョウガは栽培される。たとえば、ミョウガの養液栽培は、栽培ベッドに1日に3〜4回も養液を供給する。1000平方メートルの栽培面積に対して、2〜3トンの養液が供給されて、約1.5トンの排液が排水される。栽培ベッドから排水される排液は、決して綺麗な清水でなく、ヤシガラ培地の有機汚濁物を含む極めて濃い暗色に濁っている。この排液が田畑や河川に排水されて、種々の弊害の原因となっている。栽培ベッドに供給する養液量を少なくして、排液量を少なくできる。ただ、栽培ベッドの養液の給水量を少なくすると、栽培される全てのミョウガに均一に養液を供給できなくなる。全てのミョウガに均一に養液を供給するために、排液量が多くなって、多量の排液が汚水として田畑や河川に排水されているのが実状である。
【0003】
ところで、排液に含まれる汚濁物質を凝集沈殿させて除去する栽培方法は開発さていれる(特許文献1参照)。この栽培方法は、排液に含まれる汚濁物質を凝集沈殿させて除去する。ただ、この公報に記載されるように、土壌硬化処理剤を使用して排液を処理方法は、栽培ベッドから排水される多量の排液を処理するために、多量の土壌硬化処理剤を使用する必要があってランニングコストが高くなる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−207498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、安価であるが多量の有機汚濁物を含有するヤシガラ培地を栽培ベッドの培地に使用してミョウガを栽培しながら、ヤシガラ培地の排液をランニングコストを低減しながら清澄な水に処理できるミョウガの養液栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10にヤシガラ90を破砕してなるヤシガラ培地12を使用して、このヤシガラ培地12にミョウガを植え付けし、養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12に養液16を供給してミョウガを養液栽培する。ミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12に、ヤシガラ90を破砕した粉砕ヤシガラ91を洗浄工程において洗浄液95と混合して、粉砕ヤシガラ91を攪拌して洗浄液95で洗浄して、含有する有機汚濁物の一部を除去して洗浄ヤシガラ92とし、この洗浄ヤシガラ92を乾燥固化工程において乾燥状態に固化し、固化された乾燥固化ヤシガラ培地93を膨潤工程で水26又は養液16に膨潤させてなる洗浄膨潤ヤシガラ培地94を使用する。さらに、ミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10の洗浄膨潤ヤシガラ培地94に養液16を供給して、養液栽培ベッド10の洗浄膨潤ヤシガラ培地94でミョウガを栽培する。
【0007】
以上のミョウガの養液栽培方法は、安価なヤシガラ培地を使用してミョウガを栽培し、しかもヤシガラ培地に含まれる多量の有機汚濁物でヤシガラ培地から排水される排液が汚くなる欠点を解消し、さらに有機汚濁物を除去するためのランニングコストを著しく低減して、ヤシガラ培地の排液を綺麗で清澄な排水にできるという極めて優れた特徴を実現する。それは、以上のミョウガの養液栽培方法が、養液栽培ベッドに使用するヤシガラ培地に、ヤシガラを破砕した粉砕ヤシガラを洗浄工程において洗浄液と混合し、粉砕ヤシガラと洗浄液とを一緒に攪拌して洗浄液で洗浄して、含有する有機汚濁物の一部を除去して洗浄ヤシガラとし、この洗浄ヤシガラを乾燥固化工程において乾燥状態に固化し、固化された乾燥固化ヤシガラ培地を膨潤工程で水又は養液に膨潤させてなる洗浄膨潤ヤシガラ培地を使用するからである。
【0008】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、洗浄工程において、破砕された粉砕ヤシガラ91を洗浄液95の水と混合して攪拌し、水で洗浄して有機汚濁物を除去して水洗することができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、粉砕ヤシガラの洗浄液に水を使用するので、安価な洗浄液でもって粉砕ヤシガラを効果的に洗浄して、ヤシガラ培地に含まれる有機汚濁物を効率よく除去でき、これによってヤシガラ培地の排液を綺麗にできる特徴がある。
【0009】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、洗浄液95に水を使用し、水槽81に破砕された粉砕ヤシガラ91を入れて水を攪拌してヤシガラを水洗することができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、多量の水に粉砕ヤシガラを混合し、また攪拌することで粉砕ヤシガラから有機汚濁物を効果的に分離でき、これによってヤシガラ培地の排液を綺麗にできる特徴がある。
【0010】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、洗浄液95に水を使用し、破砕された粉砕ヤシガラ91と水を、移送方向に下り勾配に傾斜する回転するトロンメル86に入れて水洗することができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、洗浄工程において、多量の粉砕ヤシガラを効率よく連続的に洗浄して、粉砕ヤシガラに含まれる有機汚濁物を効果的に除去でき、これによってヤシガラ培地の排液を綺麗にできる特徴がある。
【0011】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12に、洗浄膨潤ヤシガラ培地94に粒状炭を添加している培地を使用することができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、洗浄膨潤ヤシガラ培地に粒状炭を添加しているので、この粒状炭が有機汚濁物を吸着して、ヤシガラ培地の排液をより綺麗にできる特徴がある。
【0012】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12を、これから排出される排液の440nmの光に対する吸光度を、0.25以下とする洗浄膨潤ヤシガラ培地94とすることができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、吸光度を0.25以下とする、すなわち含有する有機汚濁物の少ない洗浄膨潤ヤシガラ培地をヤシガラ培地に使用するので、ヤシガラ培地から排水される排液に含まれる汚濁物質を除去する排液処理装置の負荷を軽くして、すなわち、ランニングコストを低減して排液を綺麗な水に処理できる特徴がある。
【0013】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12を、これから排出される排液の440nmの光に対する吸光度を、0.12以下とする洗浄膨潤ヤシガラ培地94とすることができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、ヤシガラ培地の排液を排液処理装置で処理することなく、そのままの状態で外部の田畑や河川に排水できる程度に有機汚濁物の少ない洗浄膨潤ヤシガラ培地をヤシガラ培地に使用するので、排液を排液処理装置で処理することなく、すなわちランニングコストを著しく低減して、排液を綺麗にでき、しかも田畑や河川に排水できる特徴がある。また、ヤシガラ培地の排液を紫外線殺菌して養液栽培ベッドに循環させる栽培方法にあっては、理想的な状態で排液を殺菌して循環できる特徴も実現する。
【0014】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、洗浄膨潤ヤシガラ培地94から排出される排液を、紫外線殺菌して養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12に循環させることができる。
以上のミョウガの養液栽培方法は、養液栽培ベッドから排出される排液を紫外線で効率よく殺菌してヤシガラ培地に循環できる特徴がある。それは、有機汚濁物が除去された綺麗な、すなわち紫外線透過率の大きい排液に紫外線を照射するからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例にかかるミョウガの養液栽培方法に使用する栽培装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるミョウガの養液栽培方法に使用するヤシガラ培地の製造工程を示す概略図である。
【図3】洗浄工程に使用する洗浄装置の一例を示す断面図である。
【図4】洗浄工程に使用する洗浄装置の他の一例を示す断面図である。
【図5】乾燥固化工程を示す概略図である。
【図6】乾燥固化工程を示す概略断面図である。
【図7】膨潤工程を示す概略断面図である。
【図8】図1に示す養液栽培装置の養液栽培ベッドの一例を示す断面図である。
【図9】図8に示す養液栽培ベッドの栽培トレイの一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのミョウガの養液栽培方法を例示するものであって、本発明はミョウガの養液栽培方法を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1は、本発明のミョウガの養液栽培方法に使用する栽培装置を示す。この栽培装置は、養液栽培ベッド10の培地にヤシガラ培地12を使用する。養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12には、以下の工程で処理した洗浄膨潤ヤシガラ培地94を使用する。
【0018】
[洗浄工程]
図2に示すように、ヤシガラ90を刃物で破砕し、破砕されたヤシガラ90を、網目が3mm〜5mm角である網材に透過させて大きな粒を選別して粉砕ヤシガラ91とする。この粉砕ヤシガラ91を洗浄液95と混合し、粉砕ヤシガラ91と洗浄液95とを一緒に攪拌して洗浄液95で洗浄して、含有する有機汚濁物の一部を除去して洗浄ヤシガラ92とする。洗浄工程において、粉砕ヤシガラ91の洗浄に使用される洗浄液95は、低コストで充分な洗浄力のある水が使用できる。水は河川の水、地下水などが使用できる。ただし、洗浄液95は水には限定されず、水に代わってアルコール水溶液や溶媒も使用できる。また、水に界面活性剤などを添加して洗浄作用を向上することもできる。
【0019】
図3と図4は、洗浄工程における粉砕ヤシガラ91の洗浄装置80を示している。図3の洗浄装置80は、洗浄液95の水を充填している水槽81に、破砕された粉砕ヤシガラ91を入れ、水を攪拌器82で攪拌してヤシガラ90を水洗する。攪拌器82は、モータ83で回転される回転軸84にスクリュー85を固定している。この攪拌器82は、回転軸84を上下方向を向く姿勢とし、回転軸84をモータ83で回転させて、スクリュー85で洗浄液95の水と粉砕ヤシガラ91とを攪拌する。図の攪拌器82は、回転するスクリュー85で水を上昇するように攪拌して、粉砕ヤシガラ91を水で洗浄する。粉砕ヤシガラ91は、水と一緒に攪拌されて、含有される汚濁物質の一部を除去して洗浄ヤシガラ92となる。汚濁物質の除去された洗浄ヤシガラ92は、網材でもって水から分離して取り出される。以上の洗浄装置80は、粉砕ヤシガラ91に含まれる汚濁物質を綺麗に除去できる特徴がある。
【0020】
図4の洗浄装置80は、洗浄液95に水を使用し、粉砕ヤシガラ91と水を、移送方向に下り勾配に傾斜する回転するトロンメル86に入れて水洗する。トロンメル86は、洗浄液95を透過して粉砕ヤシガラ91を透過させない無数の貫通孔のある多孔板を円筒状としたもので、回転軸が下り勾配に傾斜するように配置されて、モータ87で回転される。トロンメル86の内部には洗浄液95を噴射する散水管88を配置している。この洗浄装置80は、トロンメル86に粉砕ヤシガラ91を供給して、散水管88からトロンメル86の内部に洗浄液95を散水する。トロンメル86の供給側、すなわちトロンメル86の上端開口部に供給された粉砕ヤシガラ91は、トロンメル86の回転で、散水管88から供給される水と一緒に攪拌されながら、下り勾配に傾斜するトロンメル86内を下端の開口部に向かって移送される。洗浄液95の水と一緒に回転されながら、下端開口部に向かって移送される粉砕ヤシガラ91は、水に洗浄されて含有する汚濁物質を除去する。すなわち、粉砕ヤシガラ91に含まれる汚濁物質は、洗浄液95の水と一緒にトロンメル86の貫通孔を透過して、粉砕ヤシガラ91から除去される。したがって、トロンメル86の上端開口部に供給された粉砕ヤシガラ91は、トロンメル86を移送される途中で洗浄されて、下端開口部から洗浄ヤシガラ92として排出される。以上の洗浄装置80は、粉砕ヤシガラ91を連続的に洗浄しながら排出できる。
【0021】
[乾燥固化工程]
洗浄工程で汚濁物質の除去された洗浄ヤシガラ92は、水分を除去して乾燥状態に固化される。乾燥固化工程は、図5に示すように、ベルトコンベア75で移送される洗浄ヤシガラ92を一対のローラ76で圧搾して水分を除去してシート状とし、さらに水分率が1%〜10%となるまで乾燥した後、図6で示すプレス機77でプレスしてシート状の乾燥固化ヤシガラ培地93とする。
【0022】
ヤシガラ培地には粒状炭を添加することができる。このヤシガラ培地は、粒状炭を分散状態に混合する。ヤシガラ培地に含まれる粒状炭は、培地のpHを調整する。粒状炭を混合しているヤシガラ培地は、乾燥固化工程で洗浄ヤシガラに粒状炭を混合する。ただし、洗浄工程で粒状炭を混合することもできる。
【0023】
粒状炭は、ヤシガラ培地に添加されて、培地全体のpHをむらなく均一にミョウガの栽培に適した弱酸性とするもので、好ましくは平均粒径を2mm〜20mmとするものが使用される。粒状炭の添加量は3重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%、さらに好ましくは10重量%〜15重量%とする。粒状炭の添加量が多すぎると、養液培地のアルカリ性が粒状炭自体のアルカリ性によって強くなり過ぎてミョウガの栽培に適した弱酸性にできない。反対に、粒状炭の添加量が少なすぎると、粒状炭に生息する微生物によるpHコントロールが十分でなく、ミョウガを栽培するにしたがって養液培地がアルカリ性になって、ミョウガの栽培に最適な弱酸性に保持できなくなる。このことから、粒状炭の添加量は、養液培地の最初のpHを弱酸性とし、かつミョウガを栽培しても弱酸性に保持できるように最適値に調整される。
【0024】
さらに、ヤシガラ培地は、粒状炭に加えて、たとえば有機物や無機物を単独で、あるいはこれ等を混合する状態で添加することもできる。また、ヤシガラ培地は、粒状炭を添加しない状態でも使用できる。
【0025】
[膨潤工程]
固化された乾燥固化ヤシガラ培地93に、水や養液を供給して膨潤させて洗浄膨潤ヤシガラ培地94とする。膨潤工程は、図7に示すように、乾燥固化ヤシガラ培地93を養液栽培ベッド10に載せた状態で、水26や養液16を供給して洗浄膨潤ヤシガラ培地94とする。養液栽培ベッド10に載せた乾燥固化ヤシガラ培地93には、図に示すように、給水管21から散水して水26や養液16を供給することができる。水26や養液16が供給される乾燥固化ヤシガラ培地93は、水分を吸収することで、圧縮状態に固化された状態からもとの状態に復元する。復元したヤシガラ培地は、吸収した水分によって結合状態が解除されてミョウガを植え付けできる膨潤状態となる。養液栽培ベッド10のヤシガラ培地12は、膨潤工程で水26や養液16が供給されて膨潤する状態で全体の厚さが約10cm〜15cmとなるように調整する。さらに、膨潤状態となった洗浄膨潤ヤシガラ培地は、手でほぐして所定の厚さとすることができ、あるいは、洗浄膨潤ヤシガラ培地と粒状炭を攪拌して、粒状炭をさらに均一に分散することもできる。
【0026】
ただ、膨潤工程は、乾燥固化ヤシガラ培地を、養液栽培ベッドに載せるに先立って水に浸漬して膨潤させることもできる。この方法は、図示しないが、乾燥固化ヤシガラ培地を容器に入れて水や養液を供給して洗浄膨潤ヤシガラ培地とし、あるいは、乾燥固化ヤシガラ培地を容器に入れることなく水や養液を供給して洗浄膨潤ヤシガラ培地とし、この洗浄膨潤ヤシガラ培地を約10cm〜15cmの厚さとなるように養液栽培ベッドに載せてヤシガラ培地とする。
【0027】
養液栽培ベッド10の洗浄膨潤ヤシガラ培地94にミョウガを植え付けし、養液栽培ベッド10に養液を供給して養液栽培する。養液栽培ベッド10から排出される排液は、外部の田畑や河川に排出し、あるいは、外部に排出することなく、養液栽培ベッド10に循環して再使用する。
【0028】
ミョウガの養液栽培方法は、栽培初期においては、排液を外部の田畑や河川に排水し、その後は、排液を外部に排水することなく養液栽培ベッドに循環することもできる。このミョウガの養液栽培方法は、ミョウガを植え付けしてから1〜2ヶ月を栽培初期とする。ただし、栽培初期は3ヶ月以内とすることもでき、また1ヶ月よりも短い期間とすることもできる。栽培初期は、養液栽培ベッド10に供給する養液の肥料濃度を、生育期間よりも低くして、排液の残留肥料濃度を低くする。栽培初期における肥料濃度は、好ましくは、排液に含まれる窒素含有量を60ppm以下、リン含有量を8ppm以下とする濃度とする。栽培初期において、養液栽培ベッド10の排液の窒素含有量とリン含有量とを以上の濃度とする排液は、高知県においては、窒素成分とリン酸成分とを除去することなく、田畑や河川に排出できる。高知県の「JA土佐くろしおミョウガ部会が定めるミョウガ養液栽培にかかる排水基準」を満足するからである。ただし、栽培初期において養液栽培ベッド10に供給する養液は、排液の窒素成分の濃度を100ppm以下とし、またリン含有量を10ppm以下と少なくすることもできる。窒素含有量とリン含有量とをこの濃度とする排液は、簡単な処理装置で窒素成分とリン酸成分とを除去して外部に排水できる。ただ、窒素成分を60ppm以下、リン含有量を8ppm以下とする排液も、窒素成分とリン酸成分とを除去して排水することでより、残留肥料濃度をさらに少なくして田畑や河川の汚染をより少なくすることができる。栽培初期は、残留肥料濃度が低いので残留肥料を除去することなく排液を外部に排水できる。
【0029】
養液栽培ベッド10の排液は、吸光度によって、すなわち汚濁物質を含有する程度によって、排液処理装置60で処理して、外部の田畑や河川に排水する。また、排液を紫外線殺菌して循環するミョウガの養液栽培方法においても、吸光度によって排液処理装置60で処理する。排液は、吸光度が0.12以下であれば、排液処理装置60で処理することなく外部の田畑や河川に排水する。排液の吸光度が0.12よりも高い場合には、吸光度が0.12以下となるように排液処理装置60で処理して排水する。紫外線殺菌して養液栽培ベッド10に循環される排液は、吸光度を低くして紫外線殺菌の効果を向上できる。したがって、この栽培方法も、排液の吸光度が0.12以下であれば排液処理装置60で処理することなく、紫外線殺菌して循環し、排液の吸光度が0.12よりも高い場合には、0.12以下となるように排液処理装置60で処理して紫外線殺菌して循環させる。
ここで、排液の吸光度は、分光光度計による440nm波長の光に対する吸光度を使用している。
【0030】
図1に示す栽培装置は、排液を紫外線殺菌して養液栽培ベッド10に循環するように、排液の循環路62に紫外線殺菌装置61を設けている。この栽培装置は、排液の吸光度が0.12以下であれば排液処理装置60で処理することなく、排液を紫外線殺菌装置61で紫外線殺菌した後、養液栽培ベッド10に循環し、また、排液の吸光度が0.12よりも高い場合には、0.12以下となるように排液処理装置60で処理し、処理された排液を紫外線殺菌装置61で紫外線殺菌した後、養液栽培ベッド10に循環する。したがって、紫外線殺菌装置61に循環される排液の吸光度を低くして、紫外線殺菌装置61による殺菌効果を向上できる。
【0031】
排液処理装置60は、排液に含まれる汚濁物質を除去して排液の吸光度を低下させる。排液処理装置60は、排液に凝集剤を添加し、汚濁物質を凝集させて除去する。排液処理装置60は、排液の吸光度が0.12以下となるまで汚濁物質を除去した後、排出する。すなわち、排液処理装置60は、440nmの光に対する吸光度が0.12以下となるまで濃淡が調整された排液を排出する。排液処理装置60で処理されて吸光度が0.12以下となった排液は、外部に排水され、あるいは養液栽培ベッド10に循環される。
【0032】
図1の栽培装置は、排液貯めタンク8の排出側を3分岐して、一方には排水弁36を、他の一方には処理供給弁38を、さらに他の一方には循環弁37を連結している。排水弁36、処理供給弁38、及び循環弁37は、排液を直接外部に排水するときには排水弁36を開いて処理供給弁38と循環弁37を閉じ、排液を排液処理装置60で処理するときには処理供給弁38を開いて排水弁36と循環弁37を閉じ、排液を養液栽培ベッド10に循環させるときには処理供給弁38と排水弁36を閉じて循環弁37を開く。排水弁36が開かれる状態において、排液貯めタンク8の排液は、排液処理装置60で処理することなく外部に排水される。処理供給弁38が開かれる状態において、排液貯めタンク8の排液は、排液処理装置60で処理された後、外部に排水され、または養液栽培ベッド10に供給されて循環される。循環弁37が開かれる状態においては、排液は養液栽培ベッド10に供給されて循環される。
【0033】
栽培初期において、養液栽培ベッド10の排液を外部に排水する栽培方法は、ヤシガラ培地12を透過する養液に洗浄されて水はけが良くなり、ミョウガの生育環境が向上する。水はけの良くなったヤシガラ培地12は、ヤシガラ培地12に含まれる汚濁物質も除去されるので、栽培初期においては、時間が経過するにしたがって、いいかえると、透過する養液量が多くなるにしたがって排液の吸光度はさらに低下する。ミョウガを植え付けして、たとえば、栽培初期の1〜3ヶ月を経過すると、養液栽培ベッド10の排液の吸光度が低下して、排液に含まれる汚濁物質は極めて少なくなる。したがって、排液を排液処理装置60で処理して排水する方法においても、栽培初期を経過して排液の吸光度が0.12以下になると、排液処理装置60で処理することなく排水を外部の田畑や河川に排水できる。
【0034】
栽培初期が経過すると、ミョウガは相当に生育して、肥料濃度を高くしてより速やかに成長する状態となる。したがって、生育期間になると、養液栽培ベッド10の排液に肥料を添加し、肥料濃度を高くして養液栽培ベッド10に養液として供給して、養液栽培ベッド10に循環させる。すなわち、養液栽培ベッド10の排液を外部に排水することなく、養液として養液栽培ベッド10に循環して再利用する。この状態では、排液の汚濁物質は少なくなっているので、肥料を添加して養液栽培ベッド10に循環させても、ヤシガラ培地12の水はけが悪くなることはない。養液栽培ベッド10の排液は、ミョウガに吸収されなかった肥料が残存している。したがって、排液には肥料の添加量を少なくして、養液の肥料濃度をミョウガの生育に最適な濃度にできる。排液に添加する肥料の添加量は、残留肥料濃度を検出して調整する。残留肥料濃度が高いほど、肥料の添加量を少なくして、養液の肥料濃度を設定値にできる。生育期間において、養液栽培ベッド10に供給される養液は、肥料濃度が高くなって理想的な状態で生育する。生育期間において、養液栽培ベッド10の排液は外部に排水することなく養液栽培ベッド10に循環されるので、図1の栽培装置では、排水弁36と処理供給弁38を閉じて、循環弁37を開く状態とする。
【0035】
以上の状態で使用される図1の栽培装置は、ミョウガを養液栽培するヤシガラ培地12の養液栽培ベッド10と、この養液栽培ベッド10の排液を一時的に蓄える排液貯めタンク8と、生育期間において、排液貯めタンク8から排出される排液に肥料を添加して養液栽培ベッド10に循環させる養液溶液装置30と、栽培初期において、排液貯めタンク8から排出される排液から汚濁物質を除去して外部に排水する排液処理装置60とを備えている。
【0036】
排液処理装置60は、排液が供給される攪拌タンク1と、この攪拌タンク1に凝集剤を供給して、排液に含まれる汚濁物質を凝集させる凝集剤供給装置2と、凝集剤供給装置2で凝集剤の供給された排液を攪拌タンク1内で攪拌する攪拌機3と、攪拌タンク1の底部に連結されて攪拌タンク1の底部に凝集して沈殿された汚濁物質を流入させる廃棄容器4と、攪拌タンク1に連結されて汚濁物質の分離された排液が供給されて凝集した汚濁物質を分離する濾過タンク5とを備える。さらに、図1の栽培装置は、外部に排出する排液から残留肥料を分離する残留肥料の分離装置70を排液処理装置60の排出側に連結している。この栽培装置は、養液栽培ベッド10の排液に含まれる残留肥料濃度が設定値よりも小さい場合に限って、排液処理装置60から排出される排液を分離装置70に通過させて、残留肥料濃度を小さくして排水する。
【0037】
分離装置70は、排液処理装置60の濾過タンク5で汚濁物質の濾過された排液が供給されて、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分とを微生物で分解して除去する処理タンク6を備えている。
【0038】
以上のミョウガの養液栽培装置は、ミョウガを植え付けしてからの栽培初期においては、排液の吸光度によって、すなわち汚濁物質を含有する程度によって、排液処理装置60で処理して、外部の田畑や河川に排水する。この栽培装置は、排液の吸光度が0.12以下であれば、排水弁36を開いて、処理供給弁38と循環弁37を閉じる状態とし、養液栽培ベッド10から排出される排液を排液処理装置60で処理することなく外部に排水する。また、栽培装置は、排液の吸光度が0.12よりも高い場合には、処理供給弁38を開いて、排水弁36と循環弁37を閉じる状態とし、養液栽培ベッド10から排出される排液を排液貯めタンク8から排液処理装置60に供給し、排液処理装置60で汚濁物質を除去して吸光度が0.12以下として外部に排水する。排液処理装置60は、排液貯めタンク8から供給される排液を、攪拌タンク1に供給し、攪拌タンク1に供給される排液に含まれる汚濁物質を凝集剤で凝集沈殿させて廃棄容器4に排出し、汚濁物質の除去された排液を濾過タンク5で濾過して汚濁物質を除去する。このとき、残留肥料濃度の低い排液は、この状態で外部に排水される。また、残留肥料濃度の高い排液は、分離装置70を通過させて残留肥料濃度を低下して外部に排水する。残留肥料濃度の高い排液は、汚濁物質の除去された排液を、分離装置70の処理タンク6に供給して、処理タンク6で窒素成分とリン酸成分とを除去して外部に排出する。
【0039】
図1の養液栽培装置は、養液栽培ベッド10を透過して排水される排液を排液貯めタンク8を介して攪拌タンク1に供給している。排液貯めタンク8は、排液を一時的に蓄えて攪拌タンク1に供給する。排液貯めタンク8の排液は、排液ポンプ48で攪拌タンク1に供給される。攪拌タンク1で処理された排液は、自然に流して濾過タンク5に供給され、濾過タンク5で濾過された排液は、自然に流して処理タンク6に供給される。ただし、攪拌タンクで処理された排液を供給ポンプ(図示せず)で濾過タンクに供給し、また、濾過タンクで濾過された排液を供給ポンプ(図示せず)で処理タンクに供給することもできる。
【0040】
排液処理装置60の攪拌タンク1は、凝集剤供給装置2から供給される凝集剤を排液に混合し、凝集剤の添加された排液を攪拌機3で攪拌して、排液に含まれる汚濁物質を凝集剤で凝集、沈殿させる。凝集剤には硫酸バンドなどの無機系凝集剤を使用する。ただし、凝集剤を無機系凝集剤には特定しない。凝集剤には、有機凝集剤や脱色菌も使用でき、また、凝集剤の形態も、固体、液体、気体等の如何なる性状のものも使用できる。
【0041】
攪拌タンク1は、凝集して沈殿された汚濁物質をスムーズに外部に排出するために、底面1Aを排出口1aに向かって下り勾配に傾斜する形状としている。図1の攪拌タンク1は、底面1Aを逆円錐状として、底面1Aの中心に排出口1aを設け、この排出口1aに向かって下り勾配に傾斜する形状としている。排出口1aは、開閉弁41とホース42を介して廃棄容器4に連結され、開閉弁41を開く状態で、汚濁物質はホース42を介して廃棄容器4に排出される。
【0042】
攪拌機3は、モータ43の回転軸43Aに攪拌羽根44を固定したもので、モータ43を攪拌タンク1の上方の中心に回転軸43Aを垂直姿勢として固定している。回転軸43Aは攪拌タンク1の中心に垂直姿勢に配置されて、下端に攪拌羽根44を固定している。この攪拌機3は、凝集剤を添加する状態で運転と停止を繰り返して排液を攪拌する。運転と停止を繰り返す攪拌機3は、排液と凝集剤を均一に混合させながら、汚濁物質を速やかに凝集、沈殿できる。ただ、攪拌機3を連続的に運転して、排液に凝集剤を混合し、凝集、沈殿させることもできる。
【0043】
凝集剤供給装置2は、排液貯めタンク8から攪拌タンク1に排液を供給する状態で、排液に対して所定の割合で凝集剤を供給する。凝集剤添加装置2は、凝集剤の水溶液を蓄える凝集剤タンク2Aと、この凝集剤タンク2Aから凝集剤水溶液を吸入して攪拌タンク1に供給する添加ポンプ2Bとを備える。凝集剤添加装置2は、排液貯めタンク8から攪拌タンク1に所定量の排液を供給する状態で、所定の割合で凝集剤を攪拌タンク1に供給し、攪拌タンク1に添加する凝集剤量をコントロールして攪拌タンク1の排液の凝集剤濃度を調整する。攪拌タンク1は、攪拌機3が運転されて、凝集剤と排液とが攪拌されて、汚濁物質を凝集、沈殿させる。
【0044】
攪拌タンク1の底に沈殿された汚濁物質は、開閉弁41を開いてホース42から廃棄容器4に排出される。開閉弁41はタイマ(図示せず)に制御されて、一定の時間毎に開かれ、攪拌タンク1の底部に沈殿する汚濁物質を廃棄容器4に排出する。攪拌タンク1で汚濁物質を凝集、沈殿させて分離した排液は、濾過タンク5に移送される。図1の養液栽培装置は、濾過タンク5を攪拌タンク1よりも下方に配置して、攪拌タンク1の排液を濾過タンク5に自然に流して移送している。攪拌タンク1と濾過タンク5との間に連結している配管45には開閉弁46が連結され、この開閉弁46を開いて攪拌タンク1から濾過タンク5に排液は移送される。この開閉弁46は、攪拌タンク1に設けているレベルセンサ47で開閉される。レベルセンサ47は、攪拌タンク1の液面レベルが所定の範囲となるように、開閉弁46を開閉する。すなわち、液面レベルが最高の設定レベルよりも高くなると開閉弁46を開き、最小の設定レベルよりも低くなると開閉弁46を閉じて、攪拌タンク1の液面レベルを設定範囲に制御する。
【0045】
図1の養液栽培装置は、濾過タンク5を攪拌タンク1よりも下方に配置して、排液を自然に攪拌タンク1から濾過タンク5に移送する。この養液栽培装置はポンプを使用することなく、攪拌タンク1から濾過タンク5に排液を移送できる。ただ、攪拌タンクの排液は、ポンプで濾過タンクに移送することもできる。ポンプで移送する装置は、攪拌タンクのレベルセンサでポンプの運転を制御して、攪拌タンクの液面レベルを設定範囲にコントロールする。
【0046】
攪拌タンク1から排出される汚濁物質は、廃棄容器4に排出される。廃棄容器4は透水性のある細長い袋である。細長い透水性袋は、無数の貫通孔のあるプラスチック製の細長い筒状袋4Aである。筒状袋4Aの廃棄容器4は、細長い受け樋9に収納される。受け樋9は、田畑の畝の間に置かれて、筒状袋4Aの貫通孔4aから漏れる排液を受けて、これが田畑に排出されるのを防止する。図1の養殖装置は、筒状袋4Aから漏れる排液を攪拌タンク1に回収する。この廃棄容器4は、田畑に設置されて、汚濁物質を回収する。また、汚濁物質に含まれる液体成分を受け樋9に排出して、汚濁物質の水分率を低くする。したがって、廃棄容器4から回収される汚濁物質の水分率を低くして、廃棄を簡単にできる。受け樋9に回収される排液は、ポンプ49で攪拌タンク1に移送される。
【0047】
濾過タンク5は、水平に配置している濾過材50でもって、内部を流入室51と排出室52とに分離している。図1の濾過タンク5は、濾過材50の下側を流入室51、上側を排出室52として、流入室51を排出室52の下方に配置している。流入室51は攪拌タンク1に連結されて、攪拌タンク1で汚濁物質を除去した排液が供給される。排出室52は処理タンク6に連結されて、濾過材50でろ過された排液を処理タンク6に移送する。濾過材50は、排液に含まれる汚濁物質を濾過して分離するもので、不織布が使用される。濾過材には、不織布に代わって網材も使用できる。また、網材の上に砂利や砂を載せた濾過材も使用できる。
【0048】
図1の濾過タンク5は、流入室51の底部を沈殿戻しポンプ53を介して攪拌タンク1に連結している。沈殿戻しポンプ53は、濾過タンク5の底に堆積される汚濁物質を排液と一緒に攪拌タンク1に移送する。攪拌タンク1に移送された汚濁物質は、ふたたび攪拌タンク1から廃棄容器4に移送される。この養液栽培装置は、排液を攪拌タンク1と濾過タンク5とに循環させて、汚濁物質を攪拌タンク1で回収して廃棄容器4に移送できる。このため、濾過タンク5の底に体積する汚濁物質量を少なくして、濾過タンク5からの汚濁物質の取り除きを少なくできる。濾過タンク5で濾過された排液は、オーバーフローして排出される。
【0049】
濾過タンク5から排出される排液は、外部に排水され、あるいは養液栽培ベッド10に循環され、あるいはまた、分離装置70の処理タンク6に移送されて残留肥料濃度を低くして排水される。図の栽培装置は、濾過タンク5の排出側を分岐して、一方には開閉弁63を、他方には分離供給弁64を連結している。濾過タンク5から排出される排液の残留肥料濃度が低いときは、開閉弁63を開いて、分離供給弁64を閉じる状態として、濾過タンク5から排出される排液を貯溜タンク65に供給する。貯溜タンク65は、濾過タンク5から排出された排液を一時的に蓄える。貯溜タンク65に一時蓄えられた排液は、排水弁66を介して外部に排水され、あるいは、排液ポンプ67を介して循環路62に供給されて、養液栽培ベッド10に循環される。濾過タンク5から排出される排液の残留肥料濃度が高いときは、分離供給弁64を開いて、開閉弁63を閉じる状態として、濾過タンク5から排出される排液を分離装置70に通過させて、残留肥料濃度を低下して外部に排水する。
【0050】
残留肥料濃度を低くする分離装置70の処理タンク6は、窒素成分とリン酸成分とを分解する微生物が添加されて、供給される排液に含まれる窒素成分とリン酸成分とを除去する。処理タンク6は、供給される排液を微生物で分解して窒素成分とリン酸成分を除去し、脱色して綺麗な水として排水する。処理タンク6には、微生物タンク7から窒素成分とリン酸成分を分解して除去する微生物が供給される。
【0051】
微生物タンク7は、微生物を含む液体である微生物液を蓄えており、この微生物タンク7に蓄えている微生物液は、供給弁39を開いて処理タンク6に供給される。微生物タンク7は、枯草菌を含む微生物液を処理タンク6に供給して、処理タンク6の排液の窒素成分とリン酸成分を分解し、また退色して綺麗な水とする。処理タンク6の排液を処理する微生物液として枯草菌が使用できる。微生物タンク7は、添加された微生物を繁殖させる。したがって、微生物を添加する必要はなく、微生物を活性化するためのメチルアルコールを一定の割合で供給する。メチルアルコールの供給量は、栽培面積を1000平方メートルの養液栽培装置において1日に例えば5cc〜10ccとする。微生物タンク7に添加する枯草菌は、たとえば有限会社バイオ・リサーチ社のDM−21が使用できる。微生物タンク7は、最初に10kgのDM−21を供給して微生物を繁殖させる。その後は、微生物が繁殖するので添加する必要はなく、メチルアルコールのみを添加して微生物を繁殖させながら、処理タンク6に微生物液を供給する。微生物タンク7は、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分を分解できる全ての微生物を供給することができる。排液は、攪拌タンク1と濾過タンク5で汚濁物質が除去されて濁りが除去され、さらに処理タンク6に供給される微生物で退色されて綺麗な水となる。
【0052】
微生物タンク7から処理タンク6に供給する微生物液の添加量は、処理タンク6に供給される排液の流量と、供給弁39を開く時間とでコントロールして、処理タンク6の微生物濃度をコントロールする。処理タンク6は、濾過タンク5から供給される排液に含まれる窒素成分とリン酸成分とを所定の濃度に除去し、さらに脱色して、清澄な処理水として外部に排水できる濃度に設定される。
【0053】
処理タンクや微生物タンクは、図示しないが、ゼオライトや麦飯石などの多孔質材を収納し、この多孔質材に微生物を棲息させて排液を処理することもできる。さらに、処理タンクは、バブリング装置で底部に空気をバブリングすることもできる。バブリング装置は、空気をコンプレッサで加圧し、加圧された空気を、処理タンクの底部から微細な気泡状に噴霧する。液中に噴射される空気は、無数の気泡となって液面に浮上する。この処理タンクは、バブリングによって処理タンクの液中に噴射される無数の気泡によって速やかに排液を脱色できる。さらに、バブリングされる気泡は、枯草菌に酸素を補給して活発にリン酸成分を分解させる。
【0054】
図1の養液栽培装置は、処理タンク6の排液の一部を微生物タンク7の微生物タンク7に供給して、微生物タンク7から微生物液を処理タンク6に供給している。微生物タンク7は処理タンク6よりも高い位置に配置されて、ポンプを使用することなく、供給弁39を開いて微生物液を微生物タンク7から処理タンク6に移送している。さらに図1の養液栽培装置は、処理タンク6の排液の一部を、液戻しポンプ56で微生物タンク7に供給して、処理タンク6と微生物タンク7とに排液の一部を循環させて、微生物でより効率よく窒素成分とリン酸成分とを分解している。
【0055】
さらに、微生物タンク7は、レベル調整ポンプ57を介して地下水を供給している。レベル調整ポンプ57は、微生物タンク7に地下水を供給して、液面レベルを一定の範囲に保持している。微生物タンク7は、レベルセンサ58を備えており、このレベルセンサ58でレベル調整ポンプ57の運転を制御して、液面レベルを設定範囲にコントロールしている。処理タンク6で処理された排液は、処理タンク6をオーバーフローして排水される。
【0056】
さらに、残留肥料濃度を低くする分離装置の処理タンクは、脱リン材を添加して、供給される排液に含まれるリン酸成分を除去することもできる。この処理タンクは、例えば、脱リン材として、カルシウムを含有する石膏や石灰をタンク内の排液中に供給して、排液に含まれるリン酸成分を除去する。この処理タンクは、供給される排液を微生物で分解して窒素成分とリン酸成分を除去することに加えて、添加される脱リン材によってリン酸成分を除去して排水する。さらに、脱リン材として排液中に石灰成分を添加する方法は、酸性に偏った排液を中和してpHを調整できる特徴もある。
【0057】
以上の養液栽培装置は、ミョウガを植え付けしてからの栽培初期においては、排液の吸光度が0.12以下であれば、養液栽培ベッド10から排出される排液を外部に排水し、排液の吸光度が0.12よりも高い場合には、養液栽培ベッド10から排出される排液を排液処理装置60で処理して、排液の吸光度を0.12以下として外部に排水し、さらに、排液の残留肥料濃度が高いときは、排液処理装置60から排出される排液を分離装置70に通過させて、残留肥料濃度を低下して外部に排水する。
【0058】
ミョウガが成長して生育期間になると、排水弁36を閉じて、排液を外部に排水しない状態として、排液貯めタンク8から排出される排液を循環路62を介して養液供給装置30に供給する。このとき、図1に示すように、循環路62に紫外線殺菌装置61を備える養液栽培装置においては、好ましくは、排液の吸光度によって、すなわち汚濁物質を含有する程度によって、排液処理装置60で処理した後、養液供給装置30に循環させる。この栽培装置は、例えば、排液貯めタンク8から排出される排液の吸光度が0.12以下であれば、排水弁36と処理供給弁38を閉じ、循環弁37を開く状態として排液を排液貯めタンク8から循環路62を介して養液供給装置30に供給する。また、栽培装置は、排液貯めタンク8から排出される排液の吸光度が0.12以上であれば、排水弁36と循環弁37を閉じ、処理供給弁38を開く状態として、排液貯めタンク8から排出される排液を排液処理装置60で処理して、排液の吸光度を0.12以下として養液供給装置30に供給する。排液処理装置60で処理された排液は、貯溜タンク65に一時蓄えられた後、排液ポンプ67を介して循環路62に供給されて、養液供給装置30に供給される。以上のようにして、循環路62を介して養液供給装置30に供給される排液は、吸光度が低いので、循環路62に設けられる紫外線殺菌装置61を通過する際に効果的に紫外線殺菌される。紫外線殺菌装置61で紫外線殺菌されて養液供給装置30に供給された排液は、肥料が添加されて、養液として養液栽培ベッド10に循環される。
【0059】
ただ、養液栽培装置は、ミョウガの生育期間においては、養液供給装置に循環させる排液を、必ずしも排液の吸光度に応じて排液処理装置で処理する必要はなく、養液栽培ベッドから排出される排液の吸光度が高い状態においても、排液処理装置で処理することなく養液供給装置に供給することもできる。
【0060】
図の栽培装置は、養液供給装置30に供給される排液を紫外線殺菌しているが、養液栽培ベッド10に循環させる排液は、たとえば、オゾン殺菌し、あるいは光触媒を使用して殺菌することもできる。排液の殺菌は、養液栽培ベッド10から排出される排液を一時的に蓄える排液貯めタンク8の内部で行うことができ、あるいは、排液貯めタンク8から養液供給装置30に供給する循環路62の途中で行うことができる。このように、養液栽培ベッド10から排出される排液を殺菌して循環させることにより、病気の発生や蔓延を有効に防止できる。
【0061】
養液栽培ベッド10から排出される排液量は、養液栽培ベッド10に供給する水量よりも少なくなっている。養液栽培ベッド10に供給する養液の一部がヤシガラ培地12に吸収されるからである。このため、循環される排液には、原水が添加される。したがって、養液供給装置30は、排液貯めタンク8から供給される排液に、地下水などの原水を添加する原水供給装置32と、原水供給装置32から供給される原水に肥料を添加する肥料添加装置33とを備えている。
【0062】
原水供給装置32は、養液供給装置30の供給路35に、地下水を吸い上げて供給する原水ポンプ32Aを備える。この原水ポンプ32Aは、所定の流量で原水である地下水を供給路35に供給する。ただし、原水供給装置は、図示しないが、所定量の原水を蓄える原水タンクと、この原水タンクの原水を吸入して、肥料添加装置の供給路に供給する原水ポンプとで構成することもできる。この原水タンクは、一度に養液栽培ベッドに供給する水量の原水を蓄える。
【0063】
肥料添加装置33は、循環される排液と、原水供給装置32から供給される原水とを混合した循環水に、所定の肥料を添加する。この液肥添加装置33は、肥料の水溶液である液肥を蓄える液肥タンク33Aと、この液肥タンク33Aから液肥を吸入して循環水に添加する添加ポンプ33Bとを備える。肥料添加装置33は、養液の肥料濃度が設定値となるように液肥を添加する。肥料添加装置33は、循環水に添加する液肥量をコントロールして養液の肥料濃度を調整する。図1の肥料添加装置33は、肥料の添加された養液の肥料濃度を濃度センサ34で検出しながら肥料の添加量を制御する。この肥料添加装置33は、濃度センサ34に養液の電気伝導度を検出するセンサを使用する。濃度センサ34は養液の肥料濃度を検出し、検出された肥料濃度で添加ポンプ33Bの流量を制御して、養液の肥料濃度を所定の範囲にコントロールする。図1の養液栽培装置は、2組の肥料添加装置33を有する。2組の肥料添加装置33は、異なる液肥を循環水に添加する。各々の肥料添加装置33は、濃度センサ34の信号で添加ポンプ33Bの流量を制御して、養液の肥料濃度を設定濃度にコントロールする。各々の肥料添加装置33は、濃度センサ34で検出する養液の肥料濃度が設定値よりも低いと、添加ポンプ33Bの流量を多くするように制御して肥料濃度を高くし、反対に、濃度センサ34で検出する肥料濃度が高いと、添加ポンプ33Bの流量を少なく制御して肥料濃度を低くして、養液の肥料濃度を設定値にコントロールする。以上の肥料添加装置33は、生育期間にヤシガラ培地12に供給する養液の肥料濃度が、好ましくは、窒素含有量が60ppm〜250ppm、リン含有量が8ppm〜40ppmとなるように調整する。ただ、生育期間に供給する養液の肥料濃度は、窒素含有量を250ppm以上とし、リン含有量を40ppm以上とすることもできる。
【0064】
さらに、肥料添加装置は、図示しないが、液肥を添加した養液に、植物の栽培に必要な種々の微量成分、たとえば金属元素等を添加する微量成分添加装置を備えることもできる。この微量成分添加装置は、微量成分を含有する溶液を蓄える溶液タンクと、この溶液タンクに蓄えられる微量成分含有溶液を養液に添加する添加ポンプとを備え、養液栽培ベッドに供給される養液に、所定量の微量成分を添加する。
【0065】
図8は、ミョウガの養液栽培ベッド10を示す。この図の養液栽培ベッド10は、ミョウガの根を生育させる所定の厚さと幅を有するヤシガラ培地12と、このヤシガラ培地12を上に載せる栽培トレイ13とを備える。栽培トレイ13は、水平栽培台14の上に水平姿勢に載せられる。水平栽培台14は、所定の間隔で互いに平行に配設している3本又は4本の縦パイプ15を備える。縦パイプ15は水平に配設される。この縦パイプ15の上に栽培トレイ13が水平に載せられる。栽培トレイ13には、ヤシガラ培地12として、固化された乾燥固化ヤシガラ培地93を水や養液で膨潤させた洗浄膨潤ヤシガラ培地94が載せられ、このヤシガラ培地12に養液16を供給してミョウガを栽培する。
【0066】
さらに、図8の養液栽培ベッド10は、ヤシガラ培地12の下に積層されて、ヤシガラ培地12に植え付けされるミョウガの根が通過するのを阻止して水を通過させる根切りシート17と、この根切りシート17の下に積層されて、ヤシガラ培地12に水を供給する保水シート18と、この保水シート18の下に積層している下地フィルム19とを、ヤシガラ培地12を載せる栽培トレイ13に敷設している。これらの養液栽培ベッド10は、栽培トレイ13の上に配置しているヤシガラ培地12に養液16を供給してヤシガラ培地12でミョウガを栽培する。
【0067】
栽培トレイ13は、図8と図9に示すように、底面の両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁20を一体的に成形して設けて、断面形状を溝形としている。この側壁20は、栽培トレイ13の上に載せられるヤシガラ培地12や給水管21から供給される養液16が、栽培トレイ13の外側にこぼれ落ちるのを防止する。したがって、側壁20の高さは、ヤシガラ培地12や養液16が外にこぼれるのを防止できる高さに成形する。
【0068】
さらに、栽培トレイ13は、図8と図9に示すように、上面に3列の排水溝22を設けている。この図の栽培トレイ13は、排水溝22として、両側の側壁20に沿って設けた一対の側溝22Aと、一対の側溝22Aの間に設けた中央溝22Bを設けており、さらに、両側の側溝22Aと中央溝22Bとを連結溝(図示せず)で連結している。
【0069】
一対の側溝22Aは、一対の側壁20の内側にあって、側壁20に沿って設けている。側溝22Aは、栽培トレイ13の両端面まで延長して設けている。栽培トレイ13は、ヤシガラ培地12を透過する排液をこの側溝22Aに案内し、この側溝22Aから栽培トレイ13の外部に排液として排水する。
【0070】
養液栽培ベッド10は、栽培トレイ13の上に非透水シートの下地フィルム19を敷設する。下地フィルム19は、栽培トレイ13の上に敷設している。この下地フィルム19は、上側に配設されるヤシガラ培地12、根切りシート17及び保水シート18と、下側に配設される栽培トレイ13とを区画している。下地フィルム19は非透水シートで、ヤシガラ培地12を通過した排液がこれを透過して、栽培トレイ13まで浸透するのを防止している。下地フィルム19は、栽培トレイ13の外形よりも大きく、両側の側壁20の外側面まで延長して配設される。側壁20と下地フィルム19の間から排液が浸入するのを防止するためである。
【0071】
下地フィルム19は、栽培トレイ13の上面に沿う状態で敷設される。側溝22Aや中央溝22Bに敷設される下地フィルム19は、栽培トレイ13の内面に沿って敷設される。側溝22Aや中央溝22Bの内面に沿って敷設される下地フィルム19は、その内側に形成される溝内を排液が流れる。下地フィルム19は、プラスチックフィルムからなる非透水シートである。
【0072】
保水シート18は、栽培トレイ13の上面8に位置して、下地フィルム19の上に敷設している。保水シート18は、ヤシガラ培地12と根切りシート17を透過した排液を吸水して保水する。
【0073】
根切りシート17は、防根シートとも呼ばれるシートで、すでに市販されているものを使用する。根切りシート17は、水を透過させて植物の根が成長して通過するのを阻止できる全てのシートを使用することができる。根切りシート17は、ヤシガラ培地12の下に積層されて、ヤシガラ培地12に植え付けしている植物の根が通過するのを阻止する。
【0074】
以上の養液栽培ベッド10は、水平栽培台14の上に水平に配置される。図8に示す水平栽培台14は、地面から上に離して配置している載せ台である。このように、載せ台に載置される養液栽培ベッド10は、外部に排水される排液を自然に流下させて効率よく回収できる特長がある。
【0075】
以上の養液栽培ベッド10は、養液供給装置30から供給される養液16が給水管21から散水されて、植物を植え付けているヤシガラ培地12に養液16が供給される。養液栽培ベッド10は、定量の養液16が連続供給され、あるいは、所定量の養液16が所定の時間間隔で供給される。ミョウガに供給される養液16は、ヤシガラ培地12と根切りシート17とを透過して、一部は保水シート18に吸収され、残りは排液として側溝22Aに流入されて排液として排水される。
【0076】
ミョウガに供給される養液16は、水に肥料を添加した溶液である。ただ、栽培初期における肥料濃度は、窒素含有量とリン含有量を低くしているので、ヤシガラ培地12と根切りシート17を透過した排液の吸光度が0.12以下であると、そのまま外部に排水できる。ここで、ヤシガラ培地12には、有機汚濁物の一部が除去された洗浄膨潤ヤシガラ培地94を使用しているので、栽培初期における養液栽培ベッド10からの排液の吸光度を低くできる。したがって、栽培初期において、養液栽培ベッド10から排出される排液は、吸光度が0.12以下であると、そのまま外部に排水し、吸光度が0.12以上であると、排液処理装置60を通過して外部に排水される。さらに、生育期間においては、養液栽培ベッド10から排出される排液は、養液溶液装置30に供給されて、肥料が添加されて養液栽培ベッド10に循環される。
【0077】
栽培初期において、養液栽培ベッド10から排出される排液は、吸光度が0.12以上であると、排液貯めタンク8を介して攪拌タンク1から濾過タンク5に供給され、汚濁物質が除去され、吸光度を0.12以下として外部に排出する。排液貯めタンク8と攪拌タンク1のトータルの容積は、好ましくは1回に養液栽培ベッド10から排出される排液を蓄えることができる容積とする。たとえば、1回に1.5トンの排液を排出する装置にあっては、排液貯めタンク8と攪拌タンク1のトータル容積を1.5トン〜2トンとする。
【0078】
さらに、生育期間において、養液栽培ベッド10で栽培しているミョウガに病気が発生すると、排液の循環を停止して、ミョウガの病気の蔓延を防止する。生育期間における養液の肥料濃度は栽培初期により高くしているので、養液栽培ベッド10から排出される排液は、栽培初期に比べて残留肥料濃度が高く、そのままでは排水できない。したがって、養液栽培ベッド10から排出されて循環されない排液は、分離装置70において、含有する窒素成分とリン酸成分とを除去して残留肥料濃度を低下させた後、外部に排水する。
【0079】
以上のミョウガの養液栽培装置は、生育期間において、ミョウガに病気が発生すると、循環弁37を閉じて、排液貯めタンク8から養液供給装置30への排液の供給を停止する。さらに、処理供給弁38を開いて、養液栽培ベッド10から排出される排液を、排液貯めタンク8から排液処理装置60に供給する。排液処理装置60は、排液に含まれる汚濁物質を除去して分離装置70に供給する。ただ、生育期間において養液栽培ベッド10から排出される排液は、汚濁物質の含有量が少なくなっているので、必ずしも前述の工程で排液から汚濁物質を除去する必要がなく、排液処理装置60を通過させて分離装置70に供給することもできる。たとえば、排液処理装置60は、凝集剤供給装置2から凝集剤を供給することなく、すなわち汚濁物質を凝集、沈殿させることなく、排液を攪拌タンク1に通過させて、濾過タンク5において、濾過材50のみで汚濁物質を除去して分離装置70に排出することもできる。
【0080】
分離装置70は、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分とを分解・除去して、排液の残留肥料濃度を低くする。分離装置70は、前述のように、排液処理装置60から排出される排液が処理タンク6に供給されると共に、この処理タンク6に、微生物タンク7から窒素成分とリン酸成分とを分解する微生物を添加して、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分を分解して除去する。とくに、病気発生時においては、排液に枯草菌を添加して窒素成分とリン酸成分とを分解して除去する。分離装置70は、排液に含まれる窒素含有量が60ppm以下、リン含有量が8ppm以下となるまで、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分を分解して除去し、脱色して綺麗な水として外部に排水する。
【0081】
さらに、養液栽培ベッド10で栽培しているミョウガに病気が発生する状態では、排液を養液供給装置30に循環させないので、養液供給装置30は、原水供給装置32から供給される原水に、肥料添加装置33で肥料を添加し、所定の肥料濃度の養液16としてヤシガラ培地12に供給する。さらに、病気発生時においては、ヤシガラ培地12に供給する養液16に枯草菌を添加することもできる。
【0082】
以上のように、ミョウガの養液栽培装置は、ミョウガに病気が発生すると、排液を循環することなく、窒素成分とリン酸成分とを除去して外部に排出することで、ミョウガの病気の蔓延を効果的に防止しながら、排液の残留肥料濃度を低くして外部に排水できる。
【0083】
さらに、ミョウガの養液栽培装置は、生育期間において、養液栽培ベッド10から排出される排液の温度が設定温度よりも高くなると、排液の循環を停止して、排液を外部に排水する。排液の温度が高くなると、排液中の酸素濃度が低下して嫌気性菌が繁殖しやすくなると共に、排液の温度が高くなる環境下では、ミョウガに病気が発生しやすくなるからである。したがって、生育期間において、養液栽培ベッド10から排出される排液の温度が設定温度、例えば26℃、好ましくは28℃以上になると、排液の循環を停止して外部に排水する。ただ、前述のように、生育期間における排液の残留肥料濃度は高く、そのままでは排水できないので、分離装置において、含有する窒素成分とリン酸成分とを除去して残留肥料濃度を低下させた後、外部に排水する。この養液栽培装置は、図示しないが、養液栽培ベッドの排出側または排液貯めタンクに温度センサを配設し、この温度センサで検出する排液の温度が設定値以上であると、循環弁を閉じて、排液貯めタンクから養液供給装置への排液の供給を停止し、さらに、処理供給弁を開いて、排液を排液貯めタンクから排液処理装置に供給する。養液栽培装置は、排液処理装置で排液に含まれる汚濁物質を除去し、分離装置で排液に含まれる窒素成分とリン酸成分とを分解・除去した後、排液を外部に排出する。分離装置は、排液に含まれる窒素含有量が60ppm以下、リン含有量が8ppm以下となるまで、排液に含まれる窒素成分とリン酸成分を除去して外部に排水する。
【0084】
以上のように、ミョウガの養液栽培装置は、養液栽培ベッドから排出される排液の温度が設定温度よりも高くなると、排液を循環することなく、窒素成分とリン酸成分とを除去して外部に排出することで、ミョウガの生育環境の悪化を有効に防止しながら、排液の残留肥料濃度を低くして外部に排水する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のミョウガの養液栽培方法は、安価であるヤシガラ培地を栽培ベッドの培地に使用してミョウガを栽培しながら、多量の有機汚濁物を含有するヤシガラ培地の排液が綺麗な水となるように処理して、排液による田畑や河川の汚染を有効に防止できる。
【符号の説明】
【0086】
1…攪拌タンク 1A…底面
1a…排出口
2…凝集剤供給装置 2A…凝集剤タンク
2B…添加ポンプ
3…攪拌機
4…廃棄容器 4A…筒状袋
4a…貫通孔
5…濾過タンク
6…処理タンク
7…微生物タンク
8…排液貯めタンク
9…受け樋
10…養液栽培ベッド
12…ヤシガラ培地
13…栽培トレイ
14…水平栽培台
15…縦パイプ
16…養液
17…根切りシート
18…保水シート
19…下地フィルム
20…側壁
21…給水管
22…排水溝 22A…側溝
22B…中央溝
26…水
30…養液供給装置
32…原水供給装置 32A…原水ポンプ
33…肥料添加装置 33A…液肥タンク
33B…添加ポンプ
34…濃度センサ
35…供給路
36…排水弁
37…循環弁
38…処理供給弁
39…供給弁
41…開閉弁
42…ホース
43…モータ 43A…回転軸
44…攪拌羽根
45…配管
46…開閉弁
47…レベルセンサ
48…排液ポンプ
49…ポンプ
50…濾過材
51…流入室
52…排出室
53…沈殿戻しポンプ
56…液戻しポンプ
57…レベル調整ポンプ
58…レベルセンサ
60…排液処理装置
61…紫外線殺菌装置
62…循環路
63…開閉弁
64…分離供給弁
65…貯溜タンク
66…排水弁
67…排液ポンプ
70…分離装置
75…ベルトコンベア
76…ローラ
77…プレス機
80…洗浄装置
81…水槽
82…攪拌器
83…モータ
84…回転軸
85…スクリュー
86…トロンメル
87…モータ
88…散水管
90…ヤシガラ
91…粉砕ヤシガラ
92…洗浄ヤシガラ
93…乾燥固化ヤシガラ培地
94…洗浄膨潤ヤシガラ培地
95…洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液栽培ベッド(10)にヤシガラ(90)を破砕してなるヤシガラ培地(12)を使用して、このヤシガラ培地(12)にミョウガを植え付けし、養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)に養液(16)を供給してミョウガを養液栽培するミョウガの養液栽培方法であって、
前記養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)に、ヤシガラ(90)を破砕した粉砕ヤシガラ(91)を洗浄工程において洗浄液(95)と混合し、粉砕ヤシガラ(91)と洗浄液(95)とを一緒に攪拌して洗浄液(95)で洗浄して、含有する有機汚濁物の一部を除去して洗浄ヤシガラ(92)とし、この洗浄ヤシガラ(92)を乾燥固化工程において乾燥状態に固化し、固化された乾燥固化ヤシガラ培地(93)を膨潤工程で水(26)又は養液(16)に膨潤させてなる洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)を使用し、
前記養液栽培ベッド(10)の洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)に養液(16)を供給して、養液栽培ベッド(10)の洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)でミョウガを栽培することを特徴とするミョウガの養液栽培方法。
【請求項2】
前記洗浄工程において、破砕された粉砕ヤシガラ(91)を洗浄液(95)の水と混合して攪拌し、水で洗浄して有機汚濁物を除去して水洗する請求項1に記載されるされるミョウガの養液栽培方法。
【請求項3】
前記洗浄液(95)に水を使用し、水槽(81)に破砕された粉砕ヤシガラ(91)を入れて水を攪拌してヤシガラを水洗する請求項2に記載されるミョウガの養液栽培方法。
【請求項4】
前記洗浄液(95)に水を使用し、破砕された粉砕ヤシガラ(91)と水を、移送方向に下り勾配に傾斜する回転するトロンメル(86)に入れて水洗する請求項2に記載されるミョウガの養液栽培方法。
【請求項5】
前記養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)に、洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)に粒状炭を添加している培地を使用する請求項1ないし4のいずれかに記載されるミョウガの養液栽培方法。
【請求項6】
前記養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)が、これから排出される排液の440nmの光に対する吸光度を、0.25以下とする洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)である請求項1ないし5のいずれかに記載されるミョウガの養液栽培方法。
【請求項7】
前記養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)が、これから排出される排液の440nmの光に対する吸光度を、0.12以下とする洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)である請求項1ないし5のいずれかに記載されるミョウガの養液栽培方法。
【請求項8】
前記洗浄膨潤ヤシガラ培地(94)から排出される排液を、紫外線殺菌して養液栽培ベッド(10)のヤシガラ培地(12)に循環させる請求項1ないし7のいずれかに記載されるミョウガの養液栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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