説明

ミラー支持体、及び、ミラーの向きを調整する装置

【課題】車両のドア・ミラーで使用されるミラー支持体、及び、ミラーの向きを調整する装置を提供すること。
【解決手段】ミラー支持体は、十字形を形成する第1のアーム及び第2のアームである2つの直交するアームの第1の端部に取り付けられた2つのギア・ニーにより安定性をもたらし、力を一様に分散させる。ミラーの向きを調整する装置はクラッチ機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性をもたらし、力を一様に分散させる、車両のドア・ミラーで使用されるミラー支持体に関するものである。
【0002】
また、本発明は、上述のミラー支持体を有する、ミラーの向きを調整する装置に関するものである。
【0003】
この装置は、2つの直交するアーム、すなわち第1のアーム及び第2のアームの第1の端部に取り付けられた2つのギア・ニー(gear knee)を有する。2つの直交するアームは、安定性をもたらし、ミラー支持体への力を一様に分散させる十字形を形成する。
【背景技術】
【0004】
車両のドア・ミラーでは、ミラーの向きを調整する装置が使用される。これらの装置は電気モータを有する。電気モータのシャフトは、伝達手段を介してミラーに接続される。
【0005】
これらの装置は、第1及び第2の電気モータと、前記第1及び第2の電気モータによってそれぞれ駆動される第1及び第2の歯車とを収容するハウジングを有する。ミラー支持体が、2つの枢動軸に対してハウジングに枢着される。2つのギア・ニーが前記歯車に係合されて構成される。第1のギア・ニーは、ミラー支持体を第1の枢動軸の周りで枢動させるように第1の歯車に係合されており、第2のギア・ニーは、ミラー支持体を第2の枢動軸の周りで枢動させるように第2の歯車に係合されている。
【0006】
各ギア・ニーは、ミラー支持体に直接固定されて構成され、それにより、ミラー支持体の中心を基準として90°をなすミラー支持体の2点のみに、ミラー支持体の向きを設定するのに必要となる力が加えられる。ミラー支持体の270°の円周上の円弧において、第1及び第2の歯車から力を受ける点は他にはない。
【0007】
この構成は、ミラー支持体に対して力を非対称に分散する。したがって、ミラー支持体の特定の領域に加えられる力が増大し、その結果、前記ミラー支持体内で振動が引き起こされる。
【0008】
上記構成の別の結果としては、加えられる力がミラー支持体の2点のみに吸収されるので、ドア・ミラーを手動で動かすことによってギア・ニーの歯が擦れて滑らかになるということがある。
【0009】
別の既知の構成では、歯車からの力がミラー支持体の4点に加えられ、それらのうちの3点は90°の円弧内で等距離に配置され、他の1点は3つの等距離の点の中心の点の反対側にある。
【0010】
また、この構成では、各ギア・ニーの固定点が他の2点に接続されていないので、ミラー支持体に対して力が非対称に分散される。したがって、3つの等距離の点の特定の領域に加えられる力が増大し、その結果、動作が何度も繰り返されるとミラー支持体が凸状になる。
【0011】
文献欧州特許第1630040号明細書は、歯車に対してボール・ソケット継手式で構成されたミラー支持体を開示している。ここでは、静止状態においてミラーによって画定される平面に対して垂直な平面内で作用する2つのギア・ニーによって動きが駆動され、その結果、非等距離の3つの支持点のみが存在する。
【0012】
上記のすべて欠点は、以下で説明される本発明によって克服される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1630040号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、安定性をもたらし、力を一様に分散させる、車両のドア・ミラーで使用されるミラー支持体に関するものである。
【0015】
また、本発明は、上述のミラー支持体を有する、ミラーの向きを調整する装置に関するものである。
【0016】
ミラーの向きを調整するこの装置は、第1及び第2の電気モータと、第1及び第2の電気モータのそれぞれによって駆動される第1及び第2の歯車とを収容するハウジングを有する。
【0017】
第1及び第2の歯車は、それぞれ第1及び第2のトレイン・ギアの一部である。第1及び第2のトレイン・ギアは、第1及び第2のクラッチ機構をさらに有する。
【0018】
上記装置は、2つの枢動軸に対してハウジングに枢着されるミラー支持体をさらに有する。2つのギア・ニーが、前記トレイン・ギアに係合されて構成されている。第1のギア・ニーは、ミラー支持体を第1の枢動軸の周りで枢動させるように第1のトレイン・ギアに係合されており、第2のギア・ニーは、ミラー支持体を第2の枢動軸の周りで枢動させるように第2のトレイン・ギアに係合されている。
【0019】
ミラーの向きを調整するこの装置は、ハウジング内に収容されて入力コネクタに接続されたマザーボード(PCB)をさらに有する。この入力コネクタはマザーボードに電流を伝達し、マザーボードはさらに電気モータに電流を伝達する。
【0020】
ミラー支持体は、ミラー・フレームを有する。ミラー・フレームにおいては、2つの直交するアームの端部がミラー・フレームに4つの等距離の点で固定されて十字形を形成するように、2つの直交するアームが固定される。
【0021】
ギア・ニーからの作動力が、直交するアームに加えられ、各アームは、交差する中心点周りで独立して枢動する。
【0022】
アームが直交する構成の結果として、ミラーの向きはミラー・フレームによって確立される。そして、十字形によって安定性がもたらされ、力が一様に分散される。
【0023】
要約すると、本発明のミラー支持体は、2つのギア・ニーから作動力を受けてミラーの向きを調整するミラー・フレームを有しており、2つの直交するアームの端部がミラー・フレームに対して4つの等距離の点で固定されて十字形を形成するようにミラー・フレームに固定された2つの直交するアームに、これらの2つのギア・ニーが取り付けられている。
【0024】
次に、例示的で非限定的な実施例として示された添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の好適な実施例による、ミラーの向きを調整する本発明装置を示す分解図である。
【図2】ミラーの向きを調整する本発明装置のトレイン・ギア、電気モータ及びギア・ニーを示す概略図である。
【図3】図1に示された第1の好適な実施例を示す三点透視図である。
【図4】本発明の第2の好適な実施例を示す三点透視図である。
【実施例】
【0026】
車両のミラーの向きを調整する装置(1)が図1及び図2に示されている。
【0027】
装置(1)は、第1のDC電気モータ(3)及び第2のDC電気モータ(4)と、前記第1のDC電気モータ(3)及び第2のDC電気モータ(4)のそれぞれによって駆動される第1のはすば歯車(5)及び第2のはすば歯車(6)とを収容するハウジング(2)を有する。
【0028】
第1のはすば歯車(5)及び第2のはすば歯車(6)は、それぞれ第1のトレイン・ギア(10)及び第2のトレイン・ギア(11)の一部分である。これらの第1のトレイン・ギア(10)及び第2のトレイン・ギア(11)は、第1のクラッチ機構(20)及び第2のクラッチ機構(21)をさらに有する。
【0029】
前記装置(1)は、2つの枢動軸に対してハウジング(2)に枢着されたミラー支持体をさらに有する。2つの円弧形状のギア・ニー(8、9)が、前記トレイン・ギア(10、11)に係合されて構成配置されている。
【0030】
第1のギア・ニー(8)は、ミラー支持体(7)を第1の枢動軸の周りで枢動させるように第1のトレイン・ギア(10)に係合されている。第2のギア・ニー(9)は、ミラー支持体(7)を第2の枢動軸の周りで枢動させるように第2のトレイン・ギア(11)に係合されている。
【0031】
カバー(12)が、ミラー支持体(7)とハウジング(2)との間に配置され、機械部品及び電気部品を覆う。これにより、ギア・ニー(8、9)だけが、カバー(12)にある2つの孔(12.1)を通り、ミラー支持体に係合されることができるようになっている。
【0032】
ミラー支持体上に配置された裏板が、ヒータ又は接着剤によりミラーを支持する(図示せず)。
【0033】
マザーボード(13)が、ハウジング(2)にある窓(14)上に収容される。それにより、下側ピン(13.1)を介して車両の電気接続部と接続することが可能となり、マザーボード(13)は上側ピン(13.2)によりDCモータ(3、4)に接続される。
【0034】
図1及び図3によれば、好適なミラー支持体は、ミラー・フレーム(7)を有する。ミラー・フレーム(7)において、2つの直交するアーム(30、31)、すなわち第1のアーム(30)及び第2のアーム(31)が十字形を形成して固定される。換言すれば、2つの直交するアーム(30、31)の端部(30.1、30.2、31.1、31.2)、すなわち第1の端部(30.1、31.1)及び第2の端部(30.2、31.2)が、ミラー・フレーム(7)に4つの等距離の点で固定されるようになっている。
【0035】
ギア・ニー(8、9)からの作動力が直交するアーム(30、31)の第1の端部(30.1、31.1)に加えられるように、ギア・ニー(8、9)の各々は、ボール・ソケット継手により2つの直交するアーム(30、31)の第1の端部(30.1、31.1)に取り付けられている。各アーム(30、31)は、それらが交差する中心点周りで独立して枢動する。
【0036】
この第1の好適な実施例では、2つの直交するアーム(30、31)の中心点はボール・ソケット継手(30.3、31.3)式に構成されている。ここで、第1のアーム(30)の中心(30.3)はボールであり、第1のアーム(30)の中心(31.3)はソケットとなっている。ここで、各アームが独立して枢動することが維持される他の実施例に限定されない。
【0037】
直交するアーム(30、31)の第1の端部(30.1、31.1)及び第2の端部(30.2、31.2)の配置の結果として、ミラーの向きが、ミラー・フレーム(7)によって確立される。その結果、十字形によって、安定性がもたされ、力が一様に分散される。
【0038】
図4に示された第2の好適な実施例では、第1のアームとミラー・フレームとが単一の部材(70)である。このようにしてミラー支持体にさらに剛性が付加される。
【0039】
この第2の実施例では、第1のギア・ニー(8)のボール形状の端部(8.1)が、ソケット(70.1)により単一の部材(70)に取り付けられ、第1の実施例に対して追加の自由度を有する。第1の実施例においては、この自由度は、十字形を形成してミラー・フレーム(7)に固定された2つの直交するアーム(30、31)の動きに関連している。
【0040】
本発明をより良く理解できるよう好適な実施例により本発明を説明してきたが、本発明の原理から逸脱することなく種々の修正を加えることができることを理解されたい。したがって、本発明はその範囲内にそのようなすべての修正を含むものとして理解されるべきである。
【符号の説明】
【0041】
1 車両のミラーの向きを調整する装置
2 ハウジング
3 第1のDC電気モータ
4 第2のDC電気モータ
5 第1のはすば歯車
6 第2のはすば歯車
7 ミラー支持体
8 第1のギア・ニー
8.1 第1のギア・ニーのボール形状の端部
9 第2のギア・ニー
10 第1のトレイン・ギア
11 第2のトレイン・ギア
12 カバー
12.1 孔
13 マザーボード
13.1 下側ピン
13.2 上側ピン
14 窓
30 第1のアーム
30.1、31.1 直交するアームの第1の端部
30.2、31.2 直交するアームの第2の端部
30.3、31.3 ボール・ソケット継手
31 第2のアーム
70 単一の部材
70.1 ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーの向きを調整するために2つのギア・ニー(8、9)から作動力を受けるミラー・フレーム(7)を含むミラー支持体において、2つの直交するアーム(30、31)の端部(30.1、30.2、31.1、31.2)が前記ミラー・フレーム(7)に4つの等距離の点で固定されて十字形を形成するように前記ミラー・フレーム(7)に固定された2つの直交するアーム(30、31)に、前記2つのギア・ニー(8、9)が取り付けられていることを特徴とするミラー支持体。
【請求項2】
各アーム(30、31)が、それらが交差する中心点周りで独立して枢動することを特徴とする、請求項1に記載されたミラー支持体。
【請求項3】
前記ギア・ニー(8、9)の各々が、前記2つの直交するアーム(30、31)の第1の端部(30.1、31.1)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたミラー支持体。
【請求項4】
前記2つの直交するアーム(30、31)の前記中心点が、ボール・ソケット継手(30.3、31.3)式で構成され、前記第1のアーム(30)の中心(30.3)がボールであり、前記第1のアーム(30)の中心(31.3)がソケットであることを特徴とする、請求項2に記載されたミラー支持体。
【請求項5】
前記直交するアームのうちの1つと前記ミラー・フレームとが単一の部材(70)であることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載されたミラー支持体。
【請求項6】
第1の電気モータ(3)及び第2の電気モータ(4)と、前記第1のモータ(3)及び前記第2のモータ(4)のそれぞれによって駆動される第1の歯車(5)及び第2の歯車(6)とを収容するハウジング(2)を含み、前記第1の歯車(5)及び前記第2の歯車(6)がそれぞれ第1のトレイン・ギア(10)及び第2のトレイン・ギア(11)の一部分であり、さらに請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載されたミラー支持体を有することを特徴とする、ミラーの向きを調整する装置。
【請求項7】
2つの枢動軸に対して前記ハウジング(2)に枢着されるミラー支持体(7)をさらに含み、2つのギア・ニー(8、9)が前記トレイン・ギア(10、11)に係合されて構成され、第1のギア・ニー(8)は、前記ミラー支持体(7)を第1の枢動軸の周りで枢動させるように前記第1のトレイン・ギア(10)に係合されており、第2のギア・ニー(9)は、前記ミラー支持体(7)を第2の枢動軸の周りで枢動させるように前記第2のトレイン・ギア(11)に係合されていることを特徴とする、請求項6に記載された、ミラーの向きを調整する装置。
【請求項8】
前記ハウジング(2)の窓(14)上に収容されて入力コネクタに接続されるマザーボード(13)をさらに含み、前記入力コネクタが前記マザーボード(13)に電流を伝達し、前記マザーボード(13)がさらに前記電気モータ(3、4)に電流を伝達することを特徴とする、請求項7に記載された、ミラーの向きを調整する装置。
【請求項9】
カバー(12)が、機械部品及び電気部品を覆っており、前記ギア・ニー(8、9)だけが、前記カバー(12)にある2つの孔(12.1)を通り、前記ミラー支持体(7)に係合されることができるようになっていることを特徴とする、請求項8に記載された、ミラーの向きを調整する装置。
【請求項10】
前記ミラー支持体(7)上に配置された裏板が、ヒータ又は接着剤により前記ミラーを支持することを特徴とする、請求項9に記載された、ミラーの向きを調整する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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