説明

ミル

【課題】 粉砕原料の粒度を細かくし、粉砕効率を高める。
【解決手段】 波型枠21は、円弧形状の波型板材21aと、波型板材21aの下部の一部領域に形成され波形板材21aの両端部に連結されたスクリーン21bと、波型板材21aの前面に固定された円筒形の前枠21cと、波型板材aの後面に固定された円筒形の後枠21dと、を備えたものであり、波型部材21aは孔が形成されていなく、粉粒体が通過できない非透過型の構造であり、波型部材21aは、円周方向に谷部と山部とが交互に形成された波が規則的に形成され、旋回する粉砕原料が乱反射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化学品、医薬品等の粉粒体、例えば、小麦、蕎麦、大豆、小豆、コーヒー豆、コーン、乾麺、米菓、麺端材等を粉砕するミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2のミルの粉砕室311では、図8に示す通り、固定歯323に対して、回転盤313に固定された回転歯322が回転することにより、中心から外側に移動させながら固定歯322と回転歯323の隙間で原料Gを挟んで粉砕し、粉粒体が平滑な円筒形スクリーン210を通過し外部に排出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−66511号公報
【特許文献2】特開2005−66508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図8に示す通り、従来の普通の単なる平滑な円筒形スクリーン321では、粉砕原料Gがこの回転歯322を備えた回転盤313と一緒に共回りしてしまい、ある程度の規則性を持って外に押し出される程度であったため、粉砕能力が制限され粉砕原料Gの粒度を小さくすることには限界があった。
そこで、本発明は、粉砕能力を高めて、粉砕原料の粒度をより小さくするミルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、破砕室と、破砕歯と、破砕歯で破砕された粉粒体を篩い分けるスクリーンと、を有するミルにおいて、前記破砕室の周縁に設けられスクリーンを有する円筒形の波型枠を備え、前記粉砕歯により粉砕された粉粒体を前記スクリーンから外部に排出することを特徴とするミルである。
【0006】
前記波型枠が円筒形側面に非透過性の波型の板材を備えたことが好ましい。この場合、板材の一部にスクリーンを設け粉砕原料を通過させる必要がある。
【0007】
前記波型枠が円筒形側面に波型のスクリーンを備えたことが好ましい。この場合、波型スクリーンの全部又は一部が波型である。一部に平坦なスクリーンを設けてもよい。
【0008】
このミルはインライン、非インラインのいずれにも適用できる。インラインの場合には、粉粒体と空気の混合気の空気輸送ライン設備の途中に設置され、粉砕された原料は輸送空気によって輸送される。
【0009】
破砕装置は粉粒体を破砕できるものであれば構造は限定されるものではない。例えば、原料供給口と、原料供給口と連通し原料を受け入れ粉砕する粉砕室と、粉砕室を開閉する開閉扉と、該開閉扉の内側に固定される固定盤と、前記粉砕室の内側に配置され回転軸によって回転する回転盤と、該回転盤の表面に固定される複数の第1衝撃片と、該第1衝撃片の隙間に配置され前記固定盤に形成される複数の第2衝撃片とから構成される粉砕部と、を備えたものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、波型枠が旋回する粉砕原料を乱反射することにより、粒度を細かくでき、粉砕効果が高くなる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、粉砕原料の乱反射が確実となるので、粉砕効率が一層高まる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、粉砕原料を波型枠で乱反射させながらスクリーンを通過させることができるので、篩い効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態のミルの開閉扉が閉じた状態の斜視図である。
【図2】同ミルの開閉扉が開き波型枠を取り外した状態の外観を示す斜視図である。
【図3】同粉砕室の開閉扉を閉じた状態の内部構造を示す説明図である。
【図4】前記波型枠の斜視図である。
【図5】前記波型枠の変形例の斜視図である。
【図6】本発明実施形態の動作を示す説明図である。
【図7】本発明実施形態変形例の動作を示す説明図である。
【図8】従来例の構造と動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明実施形態のインライン型のミル1は、ラインに原料を投入するときに、原料の粉砕・解砕の機能を持たせたものである。図1〜図4の通り、粉粒体輸送ラインの初段に設置されるもので、上部に原料投入口2を備える。原料投入口2の下には安全上、ベルトコンベア3が設置されており、原料投入口2から投入された原料はベルトコンベア3で、ベルトコンベア3の下方に位置するカッター部4に運ばれ、カッター部4である程度の大きさに切断され解砕された原料は、ホッパ5に排出され、スクリューフィーダ6に供給されるようになっている。
【0015】
このスクリューフィーダ6の出口にはサイレンサを兼ねる空気取入装置7が設けられている。供給口8と排出口9を備えた本体ケーシング10の内部に粉砕室11が形成されている(図3参照)。この粉砕室11の開閉に用いられる開閉扉12が本体ケーシング10に連結されている。供給口8は開閉扉12の中央部分に形成されている。空気取入装置7は粉砕室11からの騒音を防音するものである。本体ケーシング10は方形であって、高さや幅と比較して厚みが薄く形成されている。
【0016】
その他、本体ケーシング10は、開閉扉12を開閉するロック装置25、フックを引っ掛けて吊り上げるための吊上部26、開閉扉12を回動させるヒンジ部27と、を備えている(図2参照)。
【0017】
図2及び図3に示すように、粉砕室11には閉じられた開閉扉12と平行に回転盤13が備えられ、回転盤13の中心にある回転軸14に蓋15が取り付けられている。回転軸14は本体ケーシング10の高さ方向および幅方向の中央部に配置され、先端部が粉砕室11に突出し、基端部は後方に配置されたものである。回転軸14に取り付けられた回転盤13が、回転軸14とベルト14aで連結した駆動モータ19(図1、図3参照)によって高速回転する構造であり、開閉扉12の供給口8から、カッター部4で切断された粉砕原料が、スクリューフィーダ6によって、図1の矢印Aに示す通り、図3の矢印Dに示す通り、粉砕室11の中央部分の領域16に定量的に供給される。
【0018】
ラインにおける粉砕室11は、駆動モータ19によって高速回転する回転盤13によって、吸い込み風量を発生し、送風機と同じような役目をするので、スムーズな空気の流れとともに、原料粉粒体が供給口8から領域16に供給される。つまり回転盤13は風力増幅装置として働く。
【0019】
カッター部4は、図1の矢印B、Cに示す通り原料投入口2から投入された原料をある程度の大きさに切断するものである。例えば、乾麺、乾燥海藻、パン、麺端材、固化した食品粉粒塊等を、鋭利な刃でカットしてある程度の大きさに揃えるものである。大豆や煎餅のかけら等、粉砕対象物の種類によっては、カッター部4で必ずしも切断される必要はないので、カッター部4は省略が可能である。
【0020】
図3、図6に示すように、回転盤13の表面部13aには複数の衝撃ピン22が固着され、粉砕室11の開閉扉12の内側(粉砕室側)側面に固定された固定盤18には、その衝撃ピン22に噛み合うように形成された複数の櫛歯形状の衝撃片23を円環状に配置されている。この衝撃片23は、3つの輪状歯23a〜23cが、同心円状に固着されたものである。本具体例では衝撃片23の輪状歯を3周列としたが、用途に応じて適宜数の周列の配置が可能である。
【0021】
衝撃ピン22および衝撃片23により原料の粉砕が行われる空間を粉砕部17とすると、衝撃片23の輪状歯を3周列とする本具体例の構成では、粉砕部17は3つの輪状歯23a〜23cにより4つの空間に区切られる。すなわち、領域16から輪状歯23aまでの粉砕部17aと、輪状歯23aから輪状歯23bまでの粉砕部17bと、輪状歯23bから輪状歯23cまでの粉砕部17cと、輪状歯23cから波型枠21までの粉砕部17dと、の4つの空間である。
【0022】
領域16から供給された原料は、粉砕部17aで粉砕され、粉砕室11内の遠心力によって輪状歯23aの間隙20aを通過して粉砕部17bに移動する。同様にして、原料は、粉砕部17bでも粉砕され、輪状歯23bの間隙20bを通過して粉砕部17cに移動し、さらに粉砕部17cで粉砕され、輪状歯23cの間隙20cを通過して粉砕部17dに到達する。
【0023】
本具体例では間隙20a〜20cは同一の間隔としているが、これらの間隔を変え、間隙20aを一番大きくして、間隙20b、20cと徐々に間隔を小さくする構成を採用しても好適である。このとき、原料が一番内側の輪状歯23aの間隙20aを通り抜けるくらいの大きさまで粉砕されると、原料は粉砕室11内の遠心力によって粉砕部17aから粉砕部17bに移動し、ここで二番目の輪状歯23bの間隙20bを通り抜けるくらいの大きさまで粉砕されると、原料は粉砕部17bから粉砕部17cに移動し、ここで三番目の輪状歯23cの間隙20cを通り抜けるくらいの大きさまで粉砕されると、原料は粉砕部17cから粉砕部17dに到達することになる。
【0024】
図4に示す通り、波型枠21は、下部の一部領域を切り欠いた略円筒状の概形を持ち回転軸14を中心として位置する波型板材21aと、波型板材21aの下部の一部領域に形成され波形板材21aの両端部に連結されたスクリーン21bと、波型板材21aの前面に固定された環状の前枠21cと、波型板材aの後面に固定された環状の後枠21dと、を備えたものである。前枠21cと後枠21dの主面は平行である。スクリーン21bは、円弧状に曲げられ、波型板材21aとともに略円筒状の概形を構成する形状であり、この円弧の中心軸は、波型板材21a、前枠21cおよび後枠21dの中心軸と同軸である。波型部材21aの材質は金属が好ましいが、セラミック、プラスチック等の他の材質でもよい。波型部材21aは孔が形成されていなく、粉粒体が通過できない非透過型の構造である。波型部材21aは、円周方向に谷部と山部とが交互に形成された波が規則的に形成されたものである。これにより、旋回する粉砕原料Pが乱反射されるように構成されている。スクリーン21bは設定粒径以下の粉粒体が透過する篩網、又は金属シートに孔がパンチングで形成されたパンチング・メタルシートを備えたものである。なお、波型部材21aの波は不規則的に形成されたものでもよい。
【0025】
図5に示される、波型枠21の変形例の波型枠121は、略円筒状の概形で波型のスクリーン121bと、スクリーン121bの前面に固定される前枠121cと、スクリーン121bの後面に固定された環状の後枠121dと、前枠121cと後枠121cとを連結し固定する連結部材121e、を備えたものである。スクリーン121bの強度が十分である場合には、連結部材121eがなくてもよい。
【0026】
以上説明したミル1の使用について説明する。ミル1はロック装置25を用いて開閉扉12を閉めて使用する。このとき波型枠21をセットして開閉扉12を閉めておく。なお、開閉扉12は粉砕室11をメインテナンスする際に使用するものである。まず、粉砕したい材料を原料投入口2に投入する。ここではカッター部4を設けているため、粉砕室11に供給するには若干大きな塊の原料であっても構わない。原料投入口2から投入された原料は、ベルトコンベア3によりカッター部4に運ばれ、カッター部4である程度の大きさに解砕され、ホッパ5、スクリューフィーダ6を経て領域16に供給される。以下、領域16に供給された原料を粉砕原料Pとする。
【0027】
図6に示す通り、領域16に供給された粉砕原料Pは、空気の流れと共に粉砕部17に拡散され、衝撃ピン22および衝撃片23からの衝撃を受けて細かく砕かれ、一番外側の輪状歯23cの間隙20cを抜け、粉砕室11の外周部周面に取り付けられた波型枠21のスクリーン21bを通過して所望の粒度に整粒され、図3の矢印Eに示す通り、微粉(製品)として排出口9から排出されるのである。
【0028】
本実施形態のミル1では、波型枠を使用することにより、従来の平滑な円筒形スクリーンを用いる場合と比較してスクリーンの目開きを同じとしても、明らかに粒度が細かなものを得ることができる。すなわち粉砕結果物の物性の向上を得て、粉砕効率を高めることができるものである。
【0029】
この効果は、図6に示す通り、波型枠21の波型板材21aを波状とすることで、従来のように粉砕原料Gが衝撃ピン322と共回りせず、粉砕原料Pの流れが波型板材21aにより不規則に乱れるという特有の現象が生じることによると考えられる。この特有の現象が上記効果に貢献する過程の詳細なメカニズムは詳らかではないが、発明者は次のように推察している。すなわち、平滑な円筒形スクリーンを用いる場合は粉砕室が渦巻き様のほぼ規則正しい流れの中で粉砕が行われるのに比べ(図8の粉砕原料Gを参照)、本実施形態のミル1では、波型板材21aにより乱流が生起して粉砕原料Pの移動方向がランダムになるので、粉砕原料Pが波型枠21に衝突する際に粉砕され、また、粉砕原料P同士が衝突して粉砕され、さらに、粉砕原料Pが衝撃ピン22又は衝撃片23cに衝突することになる。これにより、平滑な円筒形スクリーンの場合よりも、粉砕原料Pの粒度が一層細かくなり、粉化が一層促進される。なお、スクリーン21bも目開きを適宜変更することで、所望の粒度の粉粒体が得られる。たとえば、目開きを細かくすれば細かくなるまで粉砕されたものが得られる。本実施形態のミル1は、平滑な円筒形スクリーンを用いる場合と比べ、このスクリーンの目開きを同じとしても、一層粒度の細かな粉砕物が得られるものである。また、波型板材21aは孔が形成されておらず、粉砕原料Pが通過しないシート材質であるので、粉砕原料の乱反射が確実となるので、粉砕効率が一層高まる。
【0030】
上記波型枠21の変形例である波型枠121によれば、粉砕原料を波型のスクリーン121bで乱反射させながらスクリーン121bを通過させることができるので、同様の効果を奏する上、篩い効率が高まる。図5に示すこの波型枠121と、図4に示す波型枠21との粉砕過程は、概ね同様の動作であるが、相違点としては、波型枠21では波型枠21の下部にあるスクリーン21bのみから粉砕原料Pが通過することに比べ(図6参照)、波型枠121では、スクリーン121bが粉砕原料Pを乱反射することもあれば、粉砕原料を通過させることもある点である(図7参照)。スクリーン121bが波型となっているので、粉砕原料の旋回方向に対して斜めになる。粉砕原料Pがスクリーン121bの当たる場所によってランダムに反射され、また一方、粉砕原料Pが通過しやすい領域と、通過し難い領域が形成される。スクリーン121bは全周に波形の山と谷とが設けられているが、一部が平坦なスクリーン、例えば、図4のスクリーン21bと同様な部材を設けたものであってもよい。
【0031】
上述の通り、輪状歯23a〜23cの間隙20a〜20cを、内側を大きな間隔にして外側に向かって徐々に小さな間隔とすれば、段階的な粉砕を経ることにより、着実で効率的な粉砕を図ることができる。
【0032】
尚、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、様々な改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。例えば、波型枠21a等の波の頻度、配置等は適宜変更され得る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のミルは、小麦粉、蕎麦粉等の穀物等の製粉・粉砕等に利用される。
【符号の説明】
【0034】
1・・・ミル
2・・・原料投入口
3・・・ベルトコンベア
4・・・カッター部
5・・・ホッパ
6・・・スクリューフィーダ
7・・・空気取入装置
8・・・供給口
9・・・排出口
10・・・本体ケーシング
11・・・粉砕室
12・・・開閉扉
13・・・回転盤
13a・・・表面部
14・・・回転軸
・・・ベルト14a
15・・・蓋
16・・・領域
17・・・粉砕部
18・・・固定盤
19・・・駆動モータ
22・・・衝撃ピン
23・・・衝撃片
23a〜23c・・・輪状歯
20a〜20c・・・間隙
21・・・波型枠
25・・・ロック装置
26・・・吊上部
27・・・ヒンジ部
21a・・・波型板材
21b・・・スクリーン
21c・・・前枠
21d・・・後枠
121・・・波型枠
121b・・・スクリーン
121c・・・前枠
121d・・・後枠
121e・・・連結部材
P・・・粉砕原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕室と、破砕歯と、破砕歯で破砕された粉粒体を篩い分けるスクリーンと、を有するミルにおいて、前記破砕室の周縁に設けられスクリーンを有する円筒形の波型枠を備え、前記粉砕歯により粉砕された粉粒体を前記スクリーンから外部に排出することを特徴とするミル。
【請求項2】
前記波型枠が周方向に非透過性の波型の板材を備えた請求項1のミル。
【請求項3】
前記波型枠が周方向に波型のスクリーンを備えた請求項1のミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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