説明

ムスカリン受容体アンタゴニストとしての第四級アンモニウム化合物

本発明は、本明細書中に記載の式(I)の第四級アンモニウム化合物、並びに、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、及び感染性鼻炎の治療におけるそれらの使用を特徴とする。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、新規クラスの第四級アンモニウム化合物、当該化合物を含有する医薬組成物、医薬品としての使用のための当該化合物、及び特定の医薬品製造における当該化合物の使用に関する。本発明はまた、その化合物の投与を含む治療法にも関する。当該新規化合物は抗ムスカリン剤として有用である。特に、当該新規化合物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれる呼吸障害群、アレルギー性鼻炎、及び感染性鼻炎の治療に有用である。
【0002】
発明の背景
“喘息”は、気道周囲の炎症(腫脹)や筋肉硬直のために気管支収縮(気道の狭窄)を起こす慢性肺疾患のことである。炎症は粘液産生の増加も起こし、これが長期間持続しうる咳の原因となる。喘息は一般的に、増悪(exacerbation)と呼ばれる息切れ、喘鳴、咳、及び胸部絞扼感(chest tightness)の再発エピソードを特徴とする。増悪の重症度は、軽症から生命の脅威に至るものまで様々である。増悪は、例えば、呼吸器感染症、ダスト、カビ、花粉、冷気、運動、ストレス、タバコの煙、及び大気汚染物質への暴露がきっかけとなり得る。
【0003】
“COPD”は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)のことであり、主として過去及び現在の喫煙に関連している。それには、主に気腫や慢性気管支炎に伴う気流妨害が含まれる。気腫は、肺内の気嚢の脆弱化及び破壊によって不可逆的な肺損傷を起こす。慢性気管支炎は炎症性疾患で、これは気道の粘液及び気管支の細菌感染を増加させ、気流を妨害する。
【0004】
“アレルギー性鼻炎”は、枯草熱を含む急性鼻炎又は鼻性鼻炎(nasal rhinitis)のことである。花粉又はダストのようなアレルゲンによって起こる。くしゃみ、鼻づまり、鼻水、及び鼻、喉、眼、耳の痒みを起こしうる。
【0005】
“感染性鼻炎”は、感染由来の急性鼻炎又は鼻性鼻炎のことである。感染性ライノウィルス、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、パラインフルエンザウィルス、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウィルス、コクサッキーウィルス、エコーウィルス、又はA群β−溶血性連鎖球菌による上気道感染によって起こり、一般には風邪と呼ばれる。くしゃみ、鼻づまり、鼻水、及び鼻、喉、眼、耳の痒みを起こしうる。
【特許文献1】米国特許出願2001/0051727A1
【0006】
発明の要旨
一側面において、本発明は、式I:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
は、C−Cアルキル、−CH−(C−Cアルケニル)、及び−CH−(C−Cアルキニル)から選ばれ、それぞれは場合により、フェニル、C−Cアルコキシ、及びヒドロキシルから選ばれる基で置換されており;
は、H又はOHから選ばれ;そして
Xは、薬学的に許容しうる酸のアニオンを表す]
の第四級アンモニウム化合物又はその任意の立体異性体を特徴とする。
【0009】
本発明のこの側面の態様には以下の一つ以上が含まれ得る。Xは、以下の酸、すなわち酒石酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、クエン酸、メタンスルホン酸、CH−(CH−COOH(nは0〜4である)、HOOC−(CH−COOH(nは1〜4である)、HOOC−CH=CH−COOH、及び安息香酸のアニオンからなる群から選ばれる。Xは、ヨウ化物、臭化物、及び塩化物からなる群から選ばれる。本化合物は、(2R)−N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)−1−メチルピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド ヨージド又は(2R)−N−[1−(6−アミノ−5−ヒドロキシピリジン−2−イルメチル)−1−メチルピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド ヨージドである。
【0010】
別の側面において、本発明は、治療的に有効な量の式Iの第四級アンモニウム化合物を含む医薬組成物を特徴とする。医薬組成物は適切な薬学的担体を含みうる。
別の側面において、本発明は、医薬品としての使用のための式Iの第四級アンモニウム化合物も提供する。本発明にはまた、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、及び感染性鼻炎の治療用医薬品の製造に式Iの第四級アンモニウム化合物を使用することも含まれる。
【0011】
さらに別の側面において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、又は感染性鼻炎の治療法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする前記哺乳動物に、治療的に有効な量の式Iの第四級アンモニウム化合物を投与することを含む。
【0012】
好都合なことに、式Iの第四級アンモニウム化合物は、その化合物の第三級アミン形態、例えば非第四級化形態と比較した場合、抗ムスカリン剤として思いがけず長期の効能を示す。
【0013】
発明の説明
好適な態様の説明にあたり、意味の明確化に役立つように、一定の専門用語を利用する。そのような専門用語は、列挙した態様だけでなく、類似の目的のために類似の様式で実施されて類似の結果を達成する全ての技術的等価物も包含することを意図している。ある薬学的に活性な化合物が開示又は特許請求されている限り、それにはインビボで産生される全ての活性な代謝産物が含まれることを明示的に意図し、また、当該化合物がその鏡像異性体、異性体又は互変異性体形態で存在することが可能な場合、全ての鏡像異性体、異性体又は互変異性体が含まれることも明示的に意図する。全ての立体異性体は有益な活性を有する。従って、本発明には、各立体異性体の別個の使用、並びにその混合物の使用も含む。
【0014】
式Iの化合物は当業者によって製造できる。式Iの第四級アンモニウム化合物は、第三級アミンから第四級アンモニウム化合物を製造するための当業者に周知の手段によって製造されうる。例えば、第四級アンモニウム化合物は、米国特許出願第2001/0051727A1(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)の第三級アミン及び他の公知化合物を出発物質として用いて、ピペリジニルの第三級窒素をアルキル化することによって製造できる。
【0015】
一般用語“第四級アンモニウム化合物”は、水酸化アンモニウム又はアンモニウム塩からNHイオンの4個全ての水素原子を有機基で置換することによって誘導されたとみなすことができる任意の化合物のことである。特定の化合物は、命名法の理由から(例えばケミカル・アブストラクツ参照)“アミニウム”化合物と命名されているが、名前の中に“アンモニウム”の用語を使用することは可能である。例えば、(3R)−3−(2−ヒドロキシ−s−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−N−メチル−3−フェニルプロパノール アミニウム ブロミドは、アンモニウム化合物:(3R)−[3−(2−ヒドロキシ−s−メチルフェニル)−3−フェニルプロピル]ジイソプロピルメチルアンモニウム ブロミドと命名することもできる。
【0016】
一例として、米国特許出願第2001/0051727A1による第三級アミン、又はその塩を適切な溶媒に溶解する。その第三級アミンを有機基質、例えば有機ハロゲン化物と反応させる。その基質は、場合によりフェニルで置換されているC−Cアルキル、好ましくはC−Cアルキルと、脱離基を含有する。脱離基の同一性は重要ではないが、脱離基は、ヨウ化物又は臭化物のようなハロゲン化物であるのが好ましい。従って、基質の例には、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルが含まれる。得られる反応生成物は第四級アンモニウム化合物で、これは当業者に公知の通り適切な溶媒中で容易に結晶化される。このようにして製造された結晶は第四級アンモニウム塩である。それらの同一性は、融点測定、核磁気共鳴(NMR)分析及び質量分析法のような標準法によって確認される。
【0017】
本発明の化合物は、好ましくは対イオンを包含する第四級アンモニウム塩として投与される。Xは、薬学的に許容しうる酸のアニオン、例えば対イオンを表す。例えば、Xは、以下のアニオン、すなわち酒石酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、リン酸(類)イオン、硝酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、2〜6個の炭素原子を有するカルボン酸イオン、2〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、及び安息香酸イオンから選ばれうる。他の許容しうる第四級アンモニウム塩については、Int.J.Pharm,33,201−217(1986)を参照のこと。特に好適なイオンは、塩化物、ヨウ化物及び臭化物、中でも臭化物及びヨウ化物イオンである。
【0018】
置換基Rは、場合により1〜2個のフェニル若しくはヒドロキシル又はその両方で置換されている直鎖又は分枝のC−Cアルキルを包含する群から選ばれる。従って、Rは独立して、場合により1〜2個のフェニル若しくはヒドロキシル又はその両方で置換されているメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、又はイソヘキシルを表す。Rは、メチル又はエチル、好ましくはメチルを表すのが特に好適である。
【0019】
本発明による化合物は抗ムスカリン剤である。“抗ムスカリン剤”はムスカリン受容体アンタゴニストのことである。公知の抗ムスカリン剤の例には、トルテロジン(tolterodine)、ヒドロキシトルテロジン、2−(ジイソプロピルアミノ)エチル−1−フェニルシクロペンタンカルボキシレート、プロピベリン(propiverine)、オキシブチニン(oxybutynin)、トロスピウム(trospium)、テミベリン(temiverine)、及びイプラトロピウム(ipratropium)が含まれる。
【0020】
プロピベリンは、1−メチル−4−ピペリジルI,I−ジフェニル−I−(n−プロポキシ)アセテートであり、東独特許第106,643号及びCAS 82−155841s(1975)に開示されている。トロスピウムは、3I−ヒドロキシスピロ[1IH,5IH−ノルトロパン−8,1’−ピロリジニウム]クロリド ベンジレートである。テミベリンは、3S−ベンゼン酢酸,I−シクロヘキシル−I−ヒドロキシ−,4−(ジエチルアミノ)−1,1−ジメチル−2−ブチニル エステルであり、米国特許第5,036,098号に開示されている。イプラトロピウムは、8−イソプロピルノルアトロピン メトブロミドであり、米国特許第3,505,337号に開示されている。
【0021】
式Iの化合物は抗コリン作用性を有しており、肺で思いがけず長期の活性を示す。従って、式Iの化合物はアセチルコリン媒介性障害の治療に有用である。特に、それら化合物は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、及び感染性鼻炎の治療に有用である。
【0022】
本発明の化合物は、ヒト及びウマを含む哺乳動物の治療に使用される。哺乳動物は、好ましくはヒトである。本発明による化合物は、遊離塩基若しくは薬学的に許容しうる酸との塩、又はそれらの溶液の形態で、認められた製薬手順に従って、経口、直腸、経皮、非経口、鼻腔又は肺経路による投与用の組成物のような適切な剤形にすることができる。特に、組成物は吸入又は吹入を通じて投与されうる。本発明によるそのような医薬組成物は、当該技術分野で周知のように、適合性のある薬学的に許容しうる担体材料又は希釈剤と共に本発明による化合物を含む。担体は、投与に適する任意の有機又は無機不活性材料、例えば、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石(タルク)、コロイド状二酸化ケイ素などである。そのような組成物は、他の薬学的活性薬剤、及び慣用的な添加剤、例えば、安定剤、湿潤剤、乳化剤、風味剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤(glidant)、抗接着剤(antiadherent)、噴射剤などを含有することもできる。担体、例えば不活性成分は、活性薬剤が非常に可溶性となるpHに調整された、ただの(無菌)水でありうる。pHは7又はその付近であることが好適である。あるいは、そして好ましくは、不活性担体剤は、pHを適正に調節された生理食塩水であるのがよい。
【0023】
本発明による新規化合物は任意の適切な方法で投与できる。本発明による化合物は、錠剤、カプセル、散剤、シロップ、エリキシルなど、エアゾール、無菌溶液、懸濁液又はエマルジョンなどのような固体又は液体の形態にすることができる。それら化合物は、吸入又は吹入によって都合よく投与される。投与形態が吸入又は吹入の場合、化合物はエアゾール又は散剤のいずれかの形態であるのが好ましい。
【0024】
“有効量”という用語は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、又は感染性鼻炎の治療に治療的に有効な量のことである。“治療”及び“治療的”という用語は、予防を含むあらゆる種類の治療を包含する。特に“治療的に有効”とは、抗コリン作用性治療に有効であることを意味する。
【0025】
説明のために、用量は、製品Atrovent(登録商標)吸入エアゾール(ベーリンガー・インゲルハイム)のようなエアゾール溶液の吸入に基づいて表す。他の吸入投与様式による投与のための用量の調整は当業者に周知である。
【0026】
一般に、抗ムスカリン薬の治療的有効量は、約1μg〜約1,000μg、例えば約10μg〜約1,000μg又は約100μg〜約1000μgである。しかしながら、本発明による特定の化合物の正確な用量は、その効力、投与様式、患者の年齢及び体重、及び治療される状態の重症度に応じて変動することになろう。1日用量は、例えば、体重1kgあたり約0.01μg〜約10μgの範囲でありうる。これを1回で又は複数回に分けて、例えば各回約1μg〜約1,000μgの用量で投与する。式Iの化合物は、1日1〜4回、例えば1日1回又は2回投与できる。
【0027】
吸入用剤形はエアゾールであり得る。エアゾール送達の最小量は約0.2ml、最大エアゾール送達量は約5mlである。本発明による化合物の濃度は、送達されるスプレーの総量が約0.2〜約5mlの量以内で、治療的有効量の式Iの化合物が送達される限り、変動してもよい。濃度が高ければより少ない用量を投与して同じ有効量を送達することは当業者には周知のことである。
【0028】
吸入用の剤形は鼻腔内スプレーによるものであってもよい。最小エアゾール送達量は鼻孔あたり約0.02ml、最大エアゾール送達量は鼻孔あたり約0.2mlである。本発明による化合物の濃度は、送達されるスプレーの総量が鼻孔あたり約0.02ml〜鼻孔あたり約0.2ml以内、例えば鼻孔あたり約0.05ml〜鼻孔あたり約0.08mlの範囲内である限り変動してもよく、治療的有効量の式Iの化合物が送達される。
【0029】
喘息治療用の多くのエアゾールを含む種々の薬剤の吸入用エアゾールが当業者には周知である。エアゾールはネブライザで発生させることができる。典型的には、ネブライザに担体溶液と、治療的有効量の抗ムスカリン化合物を有効に送達するのに足る量の式Iの化合物とを充填する。例えば、ネブライザ及びその操作条件にもよるが、約1μg〜約1000μg、例えば約10μg〜約1000μg又は約50μg〜約500μgの式Iの化合物を送達するためには、数百mgの抗ムスカリン化合物をネブライザに充填すればよい。
【0030】
吸入用の剤形は粉末の形態であってもよい。喘息治療用の多くの散剤を含む種々の薬剤の吸入用散剤が当業者には周知である。剤形が散剤の場合、本発明による化合物はそれだけで、又は不活性担体で希釈して投与できる。不活性担体を使用する場合、本発明による化合物は、送達される散剤の総量が“有効量”の本発明の化合物を送達するように配合される。活性化合物の実際の濃度は変動しうる。濃度が低ければより多量の散剤を、濃度が高ければ全材料の量をより少なくして送達して、本発明による活性化合物の有効量を提供すべきである。
【0031】
薬学的に許容しうるとは、組成、製剤、安定性、患者の受容性、及びバイオアベイラビリティに関して、薬理学的/毒性学的観点から患者にとって、及び物理的/化学的観点から薬剤製造化学者にとって許容可能である性質及び/又は物質のことをいう。
【実施例】
【0032】
当業者であれば、更に詳しく説明することなく、前述の説明を用いて本発明を十分に実施できると考える。以下の詳細な実施例は、どのように本発明の各種化合物を製造するか、及び/又は各種方法を実施するかを記載するが、それらは単に説明を目的としたものであって、決して前述の開示の限定と解釈すべきではない。当業者であればそれら操作手順から、反応物に関する、及び反応条件と技術に関する適切な変形がすぐに分かるであろう。
【0033】
温度は全て摂氏である。エーテルとはジエチルエーテルのことである。生理的食塩水は0.9%塩化ナトリウム水溶液のことである。溶媒対が使用される場合、使用される溶媒の比は体積/体積(v/v)である。固体の溶媒中での溶解度を言う場合、固体の溶媒に対する比は重量/体積(w/v)である。
【0034】
実施例I:(2R)−N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)−1−メチルピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド ヨージドの生成
(2R)−N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド(1)を、米国特許出願第2001/0051727A1に記載の手順に従って製造する。化合物(1)(トルエン中の遊離塩基)にヨウ化メチル(1ml)を加える。アセトニトリル(5ml)をその混合物に加え、20〜25℃で一晩撹拌する。乾燥窒素の吹き付けによって溶媒を除去する。アセトン(1ml)とヘキサン(2ml)を加え、その混合物を20〜25℃でろ過して標記化合物を得る。化合物の同一性は、NMR分析、質量分析、及び融点測定によってさらに立証及び特徴付けされた。
【0035】
実施例II:Balb/cマウスにおける吸入第四級アンモニウム塩の気管支拡張効果
雌のBALB/cマウス(体重19〜22g)をチャールズ・リバー・ラボラトリー(Charles River Laboratories, ノースカロライナ州キングストン)から入手する。動物には餌と水を自由に与える。これらの研究の全手順とも、動物福祉法規則9CFPのパート1及び2、Publication(NIH)85−23、1985に従って実施する。
【0036】
エアゾール投与用の化合物を Dulbecco の無菌リン酸緩衝化生理食塩水中で調製する。マウスを鼻だけのカルーセル型暴露室に入れ、ICN SPAG−2ネブライザを用いてエアゾールを5分間吸入させる。このネブライザは、平均粒径1.3ミクロンのエアゾールを約0.25ml/分の速度で発生する。
【0037】
10分及び36時間後、マウスを体プレチスモグラフ室に移す。プレチスモグラフ室に80mg/mlのメタコリン(MC)エアゾールを5分間投与することによってマウスに気管支収縮を誘導する。マウスは、DPBSビヒクル(Dulbecco のリン酸緩衝化生理食塩水)による吸入処置後に80mg/mlのメタコリンを含有するエアゾールを、又は実施例Iの標記化合物1.29mg/mlによる吸入処置後に80mg/mlのメタコリンを含有するエアゾールを吸入させられる。気流抵抗に対応する休止の増強(enhanced pause,Penh、肺抵抗)の平均を測定し、クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)の一元ANOVAを用いて統計的に分析する。ベースラインを決定するために、生理食塩水のエアゾール(メタコリンを含まず)も別にマウスに投与する。
【0038】
実施例A
慢性COPD歴を有し、FEVが1.5リットルである65歳の女性の呼吸困難症を、実施例Iの化合物のエアゾール製剤(12時間ごとに20μg)で連続的に治療する。2週間の療法後、呼吸困難耐性は改善される。
【0039】
実施例B
慢性COPD歴を有し、FEV/FVCが60%である50歳の男性の呼吸困難症を、実施例Iの化合物のエアゾール製剤(8時間ごとに50μg)で連続的に治療する。1週間の治療後、FEV/FVC比は約65%に改善される。
【0040】
実施例C
喘息歴を有し、朝のピークフローが2リットル/秒未満である25歳の女性を、実施例Iの化合物の散剤(8時間ごとに20μg)で連続的に治療する。治療によりピークフローは4〜5リットル/秒に改善される。
【0041】
実施例D
重症の喘息歴を有し、朝のピークフローが5リットル/秒である35歳の男性を、実施例Iの化合物の散剤(100μg、1日1回)で連続的に治療する。1週間の治療後、ピークフローは9リットル/秒に改善される。
【0042】
実施例E
重症の喘息歴を有し、朝のピークフローが3リットル/秒未満である45歳の女性を、実施例Iの化合物のエアゾール製剤(20μg、1日3回)で連続的に治療する。1週間の治療後、ピークフローは6リットル/秒に改善される。
【0043】
実施例F
呼吸器疾患の既往歴のない30歳の男性が、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、眼の痒み及び軽度の咽頭痛を訴えて受診する。患者の報告によれば症状は12時間前に現れた。受診時に熱はなかった。患者は風邪と診断される。患者に、[化学名]を1日2回鼻孔にスプレーするように指示する。これにより12時間ごとに鼻腔内溶液として鼻孔あたり50μlすなわち20μgが送達される。患者は、治療開始2時間以内に鼻分泌物の減少と鼻づまりの軽減を報告する。3日後、患者は症状が緩和したと報告し、治療を中止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
は、C−Cアルキル、−CH−(C−Cアルケニル)、及び−CH−(C−Cアルキニル)から選ばれ、それぞれは場合により、フェニル、C−Cアルコキシ、及びヒドロキシルから選ばれる基で置換されており;
は、H又はOHから選ばれ;そして
Xは、薬学的に許容しうる酸のアニオンを表す]
の第四級アンモニウム化合物又はその任意の立体異性体。
【請求項2】
Xが、以下の酸、すなわち酒石酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、クエン酸、メタンスルホン酸、CH−(CH−COOH(nは0〜4である)、HOOC−(CH−COOH(nは1〜4である)、HOOC−CH=CH−COOH、及び安息香酸のアニオンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、ヨウ化物、臭化物、及び塩化物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xがヨウ化物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xが臭化物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Xが塩化物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
化合物(2R)−N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)−1−メチルピペリジン−4−イル]−2−[(1R)−3,3−ジフルオロシクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド ヨージド。
【請求項9】
薬学的担体と、治療的に有効な量の式I:
【化2】

[式中、
は、C−Cアルキル、−CH−(C−Cアルケニル)、及び−CH−(C−Cアルキニル)から選ばれ、それぞれは場合により、フェニル、C−Cアルコキシ、及びヒドロキシルから選ばれる基で置換されており;
は、H又はOHから選ばれ;そして
Xは、薬学的に許容しうる酸のアニオンを表す]
の第四級アンモニウム化合物又はその任意の立体異性体とを含む医薬組成物。
【請求項10】
式Iの構造:
【化3】

[式中、
は、C−Cアルキル、−CH−(C−Cアルケニル)、及び−CH−(C−Cアルキニル)から選ばれ、それぞれは場合により、フェニル、C−Cアルコキシ、及びヒドロキシルから選ばれる基で置換されており;
は、H又はOHから選ばれ;そして
Xは、薬学的に許容しうる酸のアニオンを表す]
を有する第四級アンモニウム化合物又はその任意の立体異性体の、医薬品製造のための使用。
【請求項11】
前記医薬品が喘息の治療に使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬品が慢性閉塞性肺疾患の治療に使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬品がアレルギー性鼻炎の治療に使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬品が感染性鼻炎の治療に使用される、請求項10に記載の使用。

【公表番号】特表2006−506392(P2006−506392A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547878(P2004−547878)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004617
【国際公開番号】WO2004/039374
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】