説明

ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト

ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストおよびそれらの使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンの新規誘導体、医薬組成物、それらの調製方法、ならびにMムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患の処置におけるそれらの使用に関する。
【0002】
(背景技術)
末梢および中枢神経系においてコリン作動性神経から放出されるアセチルコリンは、2つの主要な類のアセチルコリン受容体−ニコチン性およびムスカリン性アセチルコリン受容体との相互作用を介して多数の異なる生物学的過程に作用する。ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChRs)は、7回膜貫通型ドメインを有するG−蛋白質共役型受容体のスーパーファミリーに属する。mAChRsにはM−Mと呼ばれる5つのサブタイプがあり、それぞれ別個の遺伝子の産物である。これらの5つのサブタイプのそれぞれは、特有の薬理学的性質を示す。ムスカリン性アセチルコリン受容体は、脊椎動物の器官に広く分布し、そして、これらの受容体は、阻害性および興奮性の両方の作用を仲介し得る。例えば、気道、膀胱および胃腸管内に見られる平滑筋において、MmAChRsは収縮反応を仲介する。報文については、{Brown 1989 247 /id}を参照のこと。
【0003】
ムスカリン性アセチルコリン受容体の機能不全は、多種多様の病態生理学的な状態において注目されてきた。例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、炎症状態は、肺平滑筋を満たす副交感神経での阻害性Mムスカリン性アセチルコリン自己受容体機能の損失をもたらし、迷走神経の刺激後にアセチルコリンの放出増大を惹起する。このmAChRの機能不全は、MmAChRsの刺激の増大により介される気道の反応亢進をもたらす{Costello, Evans, et al. 1999 72 /id}{Minette, Lammers, et al. 1989 248 /id}。同様に、炎症性腸疾患(IBD)における胃腸管の炎症は、MmAChRが介する運動過剰をもたらす{Oprins, Meijer, et al. 2000 245 /id}。膀胱の過収縮に起因する失禁は、MmAChRsの刺激の増大により介されることも示されている{Hegde & Eglen 1999 251 /id}。故に、サブタイプ−選択的mAChRアンタゴニストの同定は、これらのmAChR介在疾患の治療として有用であるかもしれない。
【0004】
様々な疾患状態を処置するために抗−ムスカリン性受容体療法を用いることを支持する数多くの一連の証拠があるにも関わらず、臨床において用いられている抗−ムスカリン性化合物は相対的にほとんどない。故に、MmAChRsでの阻害を惹起し得る新規化合物が依然必要とされている。MmAChRsの刺激増大に関連する状態、例えば、喘息、COPD、IBDおよび尿失禁は、mAChR結合の阻害剤である化合物によって恩恵を得るだろう。
【0005】
(発明の概要)
本発明は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)介在疾患であり、アセチルコリンがMmAChRに結合する疾患の処置方法であって、有効量の式(I)もしくは式(II)の化合物またはそれらの医薬上許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0006】
本発明は、アセチルコリンとその受容体の結合を阻害する必要のある哺乳類においてアセチルコリンとその受容体の結合を阻害する方法であって、有効量の式(I)または式(II)の化合物をその哺乳類に投与することを含む方法にも関する。
【0007】
本発明は、式(I)または式(II)の新規化合物ならびに式(I)または式(II)の化合物および医薬担体または希釈剤を含む医薬組成物も提供する。
【0008】
本発明において有用な式(I)または式(II)の化合物は、構造式:
【化1】

(I) (II)
[式中:
R1は、N原子の正電荷に結合したアニオンである。R1は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、ベンゼンスルホナートおよびトルエンスルホナートであってもよいが、これらに限定されない。
【0009】
R2は、5ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6ないし10個の炭素原子を有するシクロアルキル−アルキル、5ないし6個の炭素原子およびヘテロ原子としてNまたはOを有するヘテロシクロアルキル、6ないし10個の炭素原子およびヘテロ原子としてNまたはOを有するヘテロシクロアルキル−アルキル、アリール、所望により置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールおよび所望により置換されていてもよいヘテロアリール;ならびに
Zは、単結合または(C−C)アルキルである]
で表される。
【0010】
適当な医薬上許容される塩は、当業者によく知られており、かつ無機および有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酢酸、リンゴ酸、洒石酸、クエン酸、乳酸、蓚酸、琥珀酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸の塩基性塩を含む。加えて、式(I)または式(II)の化合物の医薬上許容される塩は、医薬上許容されるカチオンを用いて形成されてもよい。適当な医薬上許容されるカチオンは、当業者によく知られており、かつアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよび第四アンモニウムカチオンを含む。
【0011】
本明細書用いるように、以下の用語:
・「ハロ」は、全てのハロゲン、すなわち、塩素、臭素およびヨウ素を言い、
・「C1−10アルキル」または「アルキル」は、鎖長を特に限定しない限り、1ないし10個の炭素原子の直鎖および分岐鎖部分の両方を言い、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソーブチル、tert−ブチル、n−フェニルなどを含むが、これらに限定されず、
【0012】
・本明細書中用いられる「シクロアルキル」は、好ましくは、3ないし8個の炭素の環状部分を意味し、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含むが、これらに限定されず、
【0013】
・本明細書中用いられる「アルケニル」は、鎖長を特に限定しない限り、全ての場合において、2−10個の炭素原子の直鎖または分岐鎖部分を意味し、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどを含むが、これらに限定されず、
【0014】
・「アリール」は、フェニルおよびナフチルを言い、
【0015】
・「ヘテロアリール」(それ自体または「ヘテロアリールオキシ」もしくは「ヘテロアリールアルキル」などの任意の組み合わせにおいて)は、5−10員芳香環系を言い、ここで、1またはそれ以上の環は、N、OまたはSからなる群より選択される1またはそれ以上のヘテロ原子を含み、例えば、ピロール、ピラゾール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、キナゾリニル、ピリジン、ピリミジン、オキサゾール、テトラゾール、チアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、イミダゾールまたはベンゾイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されず、
【0016】
・「複素環」(それ自体または「複素環アルキル」などの任意の組み合わせにおいて)は、飽和または部分的に飽和された4−10員環系を言い、ここで、1またはそれ以上の環は、N、O、またはSからなる群より選択される1またはそれ以上のヘテロ原子を含み、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、チオモルホリンまたはイミダゾリジンが挙げられるが、これらに限定されず、さらに、所望により、硫黄はスルホンまたはスルホキシドに酸化されてもよく、
【0017】
・本明細書中用いられる「アリールアルキル」または「ヘテロアリールアルキル」または「複素環アルキル」は、上記したように、別に述べない限り、本明細書中にて定義されるアリール、ヘテロアリールまたは複素環部分に結合されたC1−10−アルキルを意味する。
【0018】
本発明において有用な好ましい化合物は:
2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジ−チオフェン−2−イル−エタノール;
2−ベンジル−1−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−3−フェニル−プロパン−2−オール;
2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジフェニル−エタノール;
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
ヨウ化3−(2−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;および
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
を含む。
【0019】
本発明において有用なより好ましい化合物は:
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
ヨウ化3−(2−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;および
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
を含む。
【0020】
(調製方法)
調製
式(I)および式(II)の化合物は、幾つかの合成手順を適用することにより得られてもよく、その一部を以下のスキームで示す。これらのスキームにて提供される合成は、反応性を有する多種多様なR1およびR2を有し、本明細書中に記載の反応との適合性を達成するのに、適宜保護されている置換基を利用する、式(I)および式(II)の化合物を製造するために適用できる。これらの場合においては、その後に脱保護を行い、一般的に開示された性質の化合物を得る。幾つかのスキームは式(II)の化合物についてのみ示しているが、これは単に説明を目的としている。
【0021】
一般的な調製方法をスキーム1に示す。合成は化合物1を出発とする。当業者によく知られている適当な試薬R2−Z−M、例えば、R2−Z−MgBr、R2−Z−LiおよびR2−Z−Zn(1/2)を用いる反応により、アルコール2を得、これは、適切な反応試薬(例えば、MeIおよびMeBr)との反応により第四アンモニウムに容易に変換される。
【0022】
スキームI.
【化2】

【0023】
式(I)および式(II)の化合物をもたらす、より具体的な調製方法をスキームIIに示す。エステル1にPhCHMgBrを添加することにより、アルコール4を得、これは、MeIとの反応により対応する第四アンモニウム塩に容易に変換される。
スキームII.
【化3】

【0024】
合成実施例
以下の実施例は本発明の説明として提供されるが、これらに決して限定されない:
【0025】
実施例1
【化4】


2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジ−チオフェン−2−イル−エタノール
THF(3mL)中の(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−酢酸メチルエステル(200mg,1.02mmol)の溶液を、2−チエニルリチウム(2.02mL,THF中1.0M,2.02mmol)と混合した。混合物を一晩室温で攪拌し、飽和NHCl水溶液(20mL)で希釈し、EtOAcで抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、濃縮した。次いで、フラッシュクロマトグラフィー(90% CHCl,8% CHOH,2% NHOH)に付し、標記化合物を得た(132mg,39%):LCMS(ES)m/z332(M+H)H−NMR(MeOD)δ1.35(m,1H),1.61(m,1H),1.81(m,1H),1.95(m,1H),2.12(m,3H),2.29(s,3H),2.37(m,1H),2.68(m,1H),3.03(m,1H),3.22(m,1H),3.32(s,1H),6.15(s,1H),6.95(m,4H),7.30(m,2H).
【0026】
実施例2
【化5】

2−ベンジル−1−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−3−フェニル−プロパン−2−オール
標記化合物を、(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−酢酸メチルエステルおよび塩化ベンジルマグネシウムから、実施例1の実験手順に従って調製した(収率31%):LCMS(ES)m/z348(M+H)H−NMR(CDCl)δ 0.90(m,1H),1.25(m,1H),1.61(m,1H),1.81(m,3H),2.20(s,3H),2.40(m,1H),2.70(m,1H),2.87(m,1H),2.97(m,2H),3.08(m,1H),3.42(s,2H),5.24(s,1H),7.26(m,10H).
【0027】
実施例3
【化6】

2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジフェニル−エタノール
標記化合物を、(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−酢酸メチルエステルおよび塩化フェニルマグネシウムから、実施例1の実験手順に従って調製した(収率44%):LCMS(ES)m/z320(M+H)H−NMR(CDCl)δ 1.20(m,1H),1.54(m,1H),1.70(m,1H),1.77(m,1H),1.93(m,1H),2.04(m,1H),2.26(s,3H),2.35(m,1H),2.71(m,1H),2.97(m,1H),3.19(m,1H),6.14(s,1H),7.21(m,2H),7.30(m,4H),7.45(m,2H),7.53(m,2H).
【0028】
実施例4
【化7】

ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
CHCN(1mL)およびCHCl(0.5mL)中の2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジ−チオフェン−2−イル−エタノール(10mg,0.03mmol)の溶液を、ヨウ化メチル(0.038mL,0.6mmol)およびKCO(0.1g,0.7mmol)と混合した。混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。逆相HPLCにより分離し、標記化合物を得た(10mg,96%):LCMS(ES)m/z346(M+H)H−NMR(CDCl)δ 1.28(m,1H),2.04(m,2H),2.29(m,1H),2.51(m,2H),2.64(m,1H),3.30(s,6H),4.07(m,1H),4.38(m,1H),5.93(s,1H),6.62(m,1H),6.85(m,1H),6.98(m,1H),7.03(m,1H),7.11(m,1H),7.46(m,1H).
【0029】
実施例5
【化8】

ヨウ化3−(2−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
標記化合物を、2−ベンジル−1−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−3−フェニル−プロパン−2−オールおよびヨウ化メチルから、実施例4の実験手順に従って調製した(収率85%):LCMS(ES)m/z346(M+H)H−NMR(CDCl)δ 0.80(m,1H),1.48(m,1H),1.84(m,1H),1.99(m,1H),2.09(m,2H),2.87(m,1H),2.95(m,5H),3.16(s,3H),3.26(s,3H),4.16(m,1H),4.18(m,1H),5.42(s,1H),7.26(m,10H).
【0030】
実施例6
【化9】

ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
標記化合物を、2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジフェニル−エタノールおよびヨウ化メチルから、実施例4の手順に従って調製した(収率67%):LCMS(ES)m/z334(M+H)H−NMR(CDCl3)δ 1.50(m,1H),1.98(m,1H),2.11(m,1H),2.35(m,2H),2.87(m,1H),2.96(m,1H),3.23(m,1H),3.27(s,3H),3.56(s,3H),4.00(m,1H),4.28(m,1H),6.49(s,1H),7.35(m,8H),7.49(m,2H).
【0031】
生物学的実施例
本発明のMmAChRにおける化合物の阻害効果を、以下のインビトロおよびインビボアッセイにより決定する。
【0032】
カルシウム動員による受容体活性化の阻害分析:
CHO細胞で発現されるmAChRsの刺激を、以前記載したように10、受容体に活性化されたカルシウム動員をモニタリングすることにより分析した。安定してMmAChRsを発現するCHO細胞を、96ウェルブラックウォール/クリアーボトムプレートに蒔く。18ないし24時間後、培地を吸引し、100μlのローディング培地(Earl’s塩、0.1%のRIA−グレードBSA(Sigma,St.Louis MO)および4μMのFluo−3−アセトキシメチルエステル蛍光指示色素(Fluo−3 AM,Molecular Probes,Eugene,OR)を加えたEMEM)と交換し、37℃で1時間インキュベーションした。次いで、色素を含有する培地を吸引し、新鮮な培地(Fluo−3 AMなし)と交換し、細胞を37℃で10分間インキュベーションした。次いで、細胞を3回洗浄し、100μlのアッセイバッファー(0.1% ゼラチン(Sigma)、120mM NaCl、4.6mM KCl、1mM KHPO、25mM NaHCO、1.0mM CaCl、1.1mM MgCl、11mM グルコース、20mM HEPES(pH7.4))中、37℃で10分間インキュベーションした。50μlの化合物(アッセイ中、1×10−11−最終1×10−5M)を加え、プレートを37℃で10分間インキュベーションした。次いで、プレートを蛍光強度プレートリーダー(FLIPR,Molecular Probes)にセットし、そこで、色素をローディングした細胞を、6ワットのアルゴンレーザーからの励起光(488nm)に曝した。0.1%のBSAを含有するバッファー中で調製した50μlのアセチルコリン(0.1−最終10nM)を50μl/秒の速度で加えることにより、細胞を活性化させた。サイトゾルのカルシウム濃度における変化としてモニターされるカルシウム動員を、566nmの発光強度における変化として測定した。発光強度における変化はサイトゾルのカルシウムレベルに直接的に関連付けられる11。冷却CCDカメラを用いて、全96ウェルから放出された蛍光を同時に測定する。データポイントを毎秒集める。次いで、GraphPad PRISMソフトウェアを用いて、このデータをプロットし、解析する。
【0033】
メタコリンが誘導する気管支収縮
覚醒、無拘束のBalbCマウス(各群n=6)において、メタコリンに対する気道反応性を調べた。圧プレスチモグラフィを用いて、メタコリンでの気管支の攻撃の間に生じる気道抵抗の変化と相関関係にあることが分かっている、ポウズの増大(Penh)、すなわち、単位のない尺度を測定した12。50μlのビヒクル(10%のDMSO)中の50μlの化合物(0.003−10μg/マウス)を用いてマウスの鼻腔内を予め処置し、次いで、マウスをプレスチモグラフィチャンバー内に置いた。そのチャンバー内で、一旦、マウスを10分間平衡状態とし、その後、5分間のベースラインPenh測定を行った。次いで、メタコリン(10mg/ml)のエアロゾルを用いて2分間マウスを攻撃した。メタコリンエアロゾルの攻撃開始から7分間連続してPenhを記録し、その後5分間攻撃を続けた。GraphPad PRISMソフトウェアを用いて、各マウスについてのデータを解析し、プロットした。
【0034】
本明細書中に引用した特許、特許出願を含め全ての文献は、出典明示によりその全てを本明細書の一部となす。
【0035】
上記記載は、その好ましい実施態様を含む本発明を十分に開示する。本明細書中特に開示された実施態様の修飾および改良は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。さらなる記載がなくとも、当業者は上記記載を用いて本発明を最大限に利用し得ると考えられる。故に、本明細書中の実施例は、単なる説明と解釈されるべきであり、本発明の範囲を決して限定しない。独占的な特性または特権が主張される本発明の実施態様は添付の特許請求の範囲にて定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す構造式IまたはII:
【化1】

(I) (II)
[式中:
R1は、N原子の正電荷に結合したアニオンであり;
R2は、5ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6ないし10個の炭素原子を有するシクロアルキル−アルキル、5ないし6個の炭素原子およびヘテロ原子としてNまたはOを有するヘテロシクロアルキル、6ないし10個の炭素原子およびヘテロ原子としてNまたはOを有するヘテロシクロアルキル−アルキル、アリール、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;および
Zは、単結合または(C−C)アルキルである]
を有する化合物。
【請求項2】
R1が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、ベンゼンスルホナートおよびトルエンスルホナートからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジ−チオフェン−2−イル−エタノール;
2−ベンジル−1−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−3−フェニル−プロパン−2−オール;
2−(8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イリデン)−1,1−ジフェニル−エタノール;
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
ヨウ化3−(2−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;および
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン:
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
ヨウ化3−(2−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン;および
ヨウ化3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−エチリデン)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン:
からなる群より選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
ムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患を処置するための医薬組成物であって、請求項1記載の化合物およびそれらの医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
アセチルコリンとその受容体の結合を阻害する必要のある哺乳類においてアセチルコリンとその受容体の結合を阻害する方法であって、安全かつ有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項7】
ムスカリン性アセチルコリン受容体介在疾患であり、アセチルコリンが該受容体に結合する疾患の処置方法であって、安全かつ有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項8】
疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息、慢性呼吸器閉塞、肺線維症、肺気腫およびアレルギー性鼻炎からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
経口または経鼻吸入により投与される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
リザーバードライパウダー吸入器、複数回使用ドライパウダー吸入器または一定用量吸入器から選択される医薬用ディスペンサーを介して投与される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
化合物がヒトに投与され、かつ用量1mgにつき12時間またはそれ以上の作用時間を有する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
化合物が24時間またはそれ以上の作用時間を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
化合物が36時間またはそれ以上の作用時間を有する、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2007−509061(P2007−509061A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535384(P2006−535384)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/034234
【国際公開番号】WO2005/037224
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】