説明

ムピロシンカルシウムの生成及び精製

本発明はムピロシンカルシウムの生成方法及び精製方法に関する。その工程は、疎水性吸着樹脂にムピロシンを吸着させる段階、結合ムピロシンをカルシウム含有溶液に暴露する段階、前記樹脂から不純物を洗い落とす段階、及び前記樹脂から精製ムピロシンカルシウムを溶出する段階からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムピロシンカルシウムの生成及び精製のための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムピロシンは、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)の発酵作用により、シュードモン酸Aとして形成される抗生物質である。これは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の感受性系統に対して活性を有し、主に局所用溶液として用いられる。ムピロシンは分子式C2644(分子量=500.63)、及び、(E)‐(2S,3R,4R,5S)‐5‐[(2S,3S,4S,5S)‐2,3‐エポキシ‐5‐ヒドロキシ‐4‐メチルヘキシル]テトラ‐ヒドロ‐3,4‐ジヒドロキシ‐(ベータ)‐メチル‐2H‐ピラン‐2‐クロトン酸の、9‐ヒドロキシノナン酸とのエステルという化学名を有する。ムピロシンの化学構造が下に示される。
【0003】
【化1】

シュードモン酸Aのカルシウム塩であるムピロシンカルシウム、すなわちカルシウム・シュードモネートは、特に結晶状態で高い熱安定性を示す(特許文献1)。この安定性は、より高い温度を伴う製法において特に好ましい。
【0004】
ムピロシン及びその派生物を精製するいくつかの方法は、当技術分野において周知である。例えば、特許文献1は、結晶カルシウム・シュードモネート又はその水和物を生成する工程を説明しており、その工程は、水性溶媒の溶液中でシュードモネートイオンをカルシウムイオンと反応させる段階、前記溶液から結晶カルシウム・シュードモネート水和物を回収する段階、及び、その後任意で結晶体の水分を除去する段階からなる。この方法は、ムピロシン酸をカルシウム塩に変換する簡単な手段を提供する。しかし、この操作の精製効果は限られており、製薬用途に適した製造物を得るために純粋な出発材料が要求される。特許文献2は、アンバーライトXAD−2ポリスチレン樹脂でのクロマトグラフィ、及び一連の低分子量の酸を用いた溶出による培養ブロスからの精製に関する。特許文献3及び特許文献4は、バリウムナトリウム及びメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いた精製工程に関する。特許文献5は、MIBK及び炭酸水素ナトリウムを用いて発酵ブロスからムピロシンを抽出する段階、及び、MIBK‐n‐ヘプタン混合物から結晶化する段階を含む工程に関する。特許文献6は、水非混和性の極性有機溶媒に抽出する段階、及び非極性溶媒に希釈して結晶化を生じさせる段階を含む工程に関する。特許文献7は、塩化脂肪族炭化水素又は酢酸イソブチルを用いた抽出工程、及び有機溶媒の蒸発乾燥に関する。
【0005】
上記の特許文献1と同様に、特許文献8は、有機カルボン酸塩を用いて水相から固体ムピロシンカルシウムを分離するか、又は、最初にC〜Cアルコールから非晶質ムピロシンカルシウムを沈殿させ、続いてその非晶質生成物を結晶状態に変換することにより、二段階形式でムピロシンからムピロシンカルシウムを生成する工程を提供する。
【0006】
ムピロシン酸を精製するいくつかの方法は、例えば(上述したように)特許文献6のように当技術分野において周知であって、これらの方法は一般に、酸性/アルカリ性の水溶液、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)や酢酸イソブチル等の水非混和性の極性有機溶媒中でのムピロシンの分離、及び、それに続くMIBK等の有機溶媒からの結晶化に関する。上記の特許文献4によれば、可溶性バリウム塩が発酵ブロスに加えられ、続いて微生物細胞が不溶性不活性物質とともに遠心分離され、最後に抗生物質がMIBKによって抽出される。前記抗生物質はアルカリ水によってメチルイソブチルケトン抽出液から除去され、結果として生じたアルカリ性の水性抽出液が、MIBKによる再抽出によって浄化される。得られた粗生成物はクロマトグラフィにかけられ、シュードモン酸抗生物質複合体からエステル誘導体が生成され、分取薄層クロマトグラフィで精製される。加水分解によって純粋抗生物質の酸性型が得られる。
【特許文献1】米国特許第5191093号明細書
【特許文献2】米国特許第3977943号明細書
【特許文献3】独国特許第2227739号明細書
【特許文献4】米国特許第4289703号明細書
【特許文献5】ベルギー国特許第870855号明細書
【特許文献6】米国特許第4222942号明細書
【特許文献7】米国特許第6254921号明細書
【特許文献8】国際公開第03/065975号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの方法は多量の有害物質を伴うため、依然として、精製及びカルシウム塩からムピロシンへの変換を組合せた新規なムピロシンカルシウムの製造方法が求められている。そのような新規な方法は製造工程をより短縮化し、商業的にも、また環境の面でもより魅力的である。
【0008】
当技術分野において、ムピロシンカルシウムのようなムピロシン誘導体の精製生成物を製造するための更に効率的な方法が求められている。以下に説明するように、そのような工程及びそれによって製造される製造物がここに提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ムピロシンカルシウムの生成方法及び精製方法に関する。一実施形態において、その工程は、ムピロシンの無細胞生成物(可溶性塩又は酸、好ましくは、シュードモネート等の可溶性塩の形態)を固体支持体に吸着させる段階、結合ムピロシンをカルシウム含有溶液に暴露する段階、前記固体支持体から不純物を洗い落とす段階、及び前記固体支持体から精製ムピロシンカルシウムを溶出する段階からなる。また、そのような方法を用いて生成及び精製されたムピロシンカルシウム生成物が提供される。
【0010】
別の実施形態において、ムピロシンの無細胞生成物が生成され、次に固体支持体へのシュードモネートの吸着が続く。結合シュードモネートは、更にカルシウム含有溶液に接触され、前記固体支持体上にムピロシンカルシウムが形成される。その後不純物が洗い落とされ、更に前記固体支持体からの標的分子の選択的溶出が続く。驚くべきことに、吸着シュードモネートにおいてカルシウムへの完全な塩交換が達成され、ムピロシンとカルシウムとの間の適正な分子当量が得られる。
【0011】
本発明は、工程中の不純物の選択的除去に由来する高い精製効率をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ムピロシンは、蛍光菌の発酵作用によってシュードモン酸Aとして産生される抗生物質である。これは黄色ブドウ球菌及び化膿連鎖球菌の感受性系統に対して活性を有し、主に局所用溶液として用いられる。ムピロシンは分子式C2644(分子量=500.63)、及び、(E)‐(2S,3R,4R,5S)‐5‐[(2S,3S,4S,5S)‐2,3‐エポキシ‐5‐ヒドロキシ‐4‐メチルヘキシル]テトラ‐ヒドロ‐3,4‐ジヒドロキシ‐(ベータ)‐メチル‐2H‐ピラン‐2‐クロトン酸の、9‐ヒドロキシノナン酸とのエステルという化学名を有する。ムピロシンの化学構造が下に示される。
【0013】
【化2】

ここで用いられる「ムピロシン」という用語は、シュードモン酸A、ムピロシン酸、ムピロシンカルシウム、シュードモネート、又はあらゆるムピロシン誘導体を指す。ここで説明される工程は、ムピロシンカルシウムの生成及び精製に特に有効である。
【0014】
この適用において、疎水性吸着樹脂を典型とする固体支持体に、ムピロシン(可溶性塩又は酸、好ましくは、シュードモン酸等の可溶性塩の形態)を吸着させる段階、結合ムピロシンをカルシウム含有溶液に暴露する段階、前記固体支持体から不純物を洗い落とす段階、及び前記固体支持体から精製ムピロシンカルシウムを溶出する段階からなるムピロシンカルシウムの生成方法が提供される。
【0015】
一つの方法は、吸着樹脂を典型とする固体支持体に、シュードモネートを吸着させる段階、結合シュードモネートをカルシウム含有溶液に接触させる段階、不純物を洗い落とす段階、及び前記固体支持体から精製ムピロシンカルシウムを溶出する段階からなる。溶出された製造物は、その後結晶化され、例えば上記の特許文献1に説明されるような当技術分野において周知の方法によって、純粋ムピロシンカルシウムが分離される。
【0016】
ムピロシンの無細胞生成物が使用される。これは、蛍光菌のムピロシン産生培養物を発酵させる段階、それらの発酵ブロスを得る段階、及び、濾過によってバイオマスを除去する段階(前記ブロスを浄化する段階)により製造される。全ムピロシンすなわちシュードモネートが確実に脱プロトン化されるように、前記溶液のpHが調整される。固体支持体への吸着の前に、分子と吸着剤との間の疎水性相互作用を増強するために、ムピロシン生成物に硫酸アンモニウムが添加されてもよく、それによって樹脂のシュードモン酸に対する結合能を高める。
【0017】
ムピロシン生成物の生成方法は上記の特許文献2に記載されている。簡単に説明すると、NCIB10586株等の適切な蛍光菌株を、基本塩類溶液中にトウモロコシ浸出液及びグルコースを含む培地で、30℃の液内培養において24時間成長させる。発酵ブロスを形成するいくつかの方法が当技術分野において周知であり、ここでの使用に適する。
【0018】
固体支持体は、ムピロシン酸に可逆的に吸着可能なあらゆる材料である。前記固体支持体は、ムピロシンの酸性基が他の物質、化合物、又はカルシウムイオン等の部分に結合できるような疎水性相互作用を介してムピロシンが結合する材料である。固体支持体の別の重要な特徴は、ムピロシンの前記支持体への結合が、熟練した技術者の自由選択において可逆的であることである。ある実施形態において、固体支持体は樹脂であり、他の実施形態においては疎水性吸着樹脂である。適切な吸着樹脂は、変性アガロース、変性シリカ、ポリスチレン系又はアクリル/メタクリル系材料を含むが、これらに限定されるものではない。吸着樹脂の例は、アクリル系吸着剤XAD7HP(登録商標)(ローム・アンド・ハース社)又はHP2MG(登録商標)(ダイヤイオン社)、及び、ポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD1600(登録商標)、XAD4(登録商標)(いずれもローム・アンド・ハース社から入手可能)又はHP40(登録商標)(ダイヤイオン社)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
適切な疎水性吸着樹脂は、変性シリカ、ポリスチレン、又はアクリル系材料を含むがこれらに限定されるものではなく、例えばアクリル系吸着剤XAD7HP(ローム・アンド・ハース社)又はHP2MG(ダイヤイオン社)、及び、ポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD1600、XAD4を含む。
【0020】
第1の方法において、ムピロシン(例えば、シュードモネート又はムピロシン酸、好ましくはシュードモネート)が固体支持体に吸着され、カルシウム含有物質に暴露されて、カラムから溶出されることにより、ムピロシンカルシウム溶液が提供される。好ましい実施形態において、前記カルシウム含有物質はカルシウム系可溶性塩である。カルシウム含有物質の例は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、及びプロピオン酸カルシウムを含むがこれらに限定されるものではない。溶出はメタノール等の有機溶媒を用いて行われてもよい。溶出は他の適切な物質を用いて行われてもよく、それらの物質はエタノール、イソプロパノール、及びアセトニトリル、又は、これらの水性混合物を含むあらゆる混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
上述した方法はまた、固体支持体への吸着に先立ち、ムピロシン生成物に硫酸アンモニウムを添加する段階を含む。硫酸アンモニウムが吸着の前に添加されて、ムピロシン分子と吸着剤との間の疎水性相互作用を増強し、それによって結合能を高める。他の実施形態において、ムピロシン酸の生成物は精製ムピロシンである。
【0022】
上述した方法は、精製ムピロシンカルシウムの生成に有効である。ある実施形態において、精製ムピロシンカルシウムは少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に精製される
ここで説明された方法を用いて精製されたムピロシンカルシウムは、当技術分野の標準的な技術を用い、哺乳類を治療する組成物として生成される。その組成物は従来の調剤方法に従って加工され、ヒト及び他の哺乳類を含む患者に投与する薬剤が製造される(すなわち、「医薬組成物」)。前記医薬組成物は、好ましくは所定量の精製ムピロシンを含む用量単位の形で、単独で又は別の活性物質と組合せて、主に薬学的に許容可能なキャリアとともに製造される。「薬学的に許容可能なキャリア」とは、医薬組成物としてのムピロシンの運搬を促進又は達成するのに適切な一つ以上の製剤材料を指す。前記医薬組成物はまた、殺菌等の従来の製薬工程に従ってもよく、かつ/又は、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤等のような従来の補助剤を含んでもよい。
【0023】
ヒト又は他の哺乳類にとって適切な1日用量は、その患者の状態及び他の要因によって大きく異なるであろうが、当業者に知られた所定の方法を用いて設定することができる。局所的な投与には、組成物の適切な局所用量が1日に1〜4回投与され、好ましくは1日に2回又は3回投与される。その用量は、用量が全く適用されない日を間に入れながら投与されてもよい。適切な組成物は、0.001%〜10%、5%未満、1〜2%、又は0.1〜1%の製剤ムピロシンからなる。局所的な投与に適した製剤は、例えば、経皮浸透に適した液体又は半液体の生成物を含む(例えば、塗布薬、ローション、軟膏、クリーム、又はペースト)。他の投与形態も当技術分野において周知であり、ここで説明される実施形態によって包含される。
【0024】
下記の例示として述べられる実施例によって、本発明の更なる理解及び本発明の多くの効果が得られるであろう。
【実施例1】
【0025】
ムピロシン酸の無細胞水溶液
ムピロシン酸を含む発酵ブロスは、本来周知の態様、すなわち、前述の特許文献2の実施例1の工程と同じ態様によって、蛍光菌のムピロシン産生培養物の発酵によって得られた。実験用発酵器から得られた5リットルのムピロシン含有全培養発酵ブロスがpH=8.3に調製され(3M NaOHの添加により)、室温で144μmの金属スクリーンを通して濾過され、その後限外濾過された(ミリポアペリコン‐2バイオマックス‐5)。発酵ブロス中に存在する約70%のムピロシンが、最終浄化ブロス中に回収された。ムピロシンを含む透過液は、任意でNF(オスモニック デサル DKメンブレン)によって濃縮された。
【実施例2】
【0026】
シュードモン酸の固体支持体への吸着及びムピロシンカルシウムへの変換
A.実施例1で得られた濾過液(363ml、ムピロシン1.3g)に(NHSO(24g)が加えられた。pHが1M NaOHの添加によりpH7.5に調整された。アクリル系吸着剤XAD7HP(登録商標)(ローム・アンド・ハース社)がクロマトグラフィカラム(24ml)に充填され、生成されたムピロシン溶液が(シュードモネート溶液として)前記カラムに加えられた(1ml/分)。カラムは0.5M(NHSOを含むpH7.5の0.1Mトリス緩衝液(120ml)で洗浄された。その後、0.1M酢酸カルシウム溶液が前記カラムに加えられ(72ml)、続いて水(48ml)が加えられた。ムピロシンカルシウムは、80%メタノールによって前記カラムから溶出された。0.9gのムピロシンカルシウムが溶出プール中に回収された(60ml、収率70%)。
【0027】
B.実施例1で得られた濾過液(293ml、ムピロシン1.5g)に(NHSO(19g)が加えられた。pHは1M NaOHの添加によりpH7.5に調整された。ポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD1600(登録商標)(ローム・アンド・ハース社)がクロマトグラフィカラム(22ml)に充填され、生成されたムピロシン溶液が(シュードモネート溶液として)前記カラムに加えられた(1ml/分)。カラムは0.5M(NHSOを含むpH7.5の0.1Mトリス緩衝液(110ml)で洗浄された。その後、0.1M酢酸カルシウム溶液が前記カラムに加えられ(66ml)、続いて水(66ml)が加えられた。ムピロシンカルシウムが80%メタノールによって前記カラムから溶出された。1.3gのムピロシンカルシウムが溶出プール中に回収された(55ml、収率87%)。
【0028】
C.実施例1で得られた濾過液(1035ml、ムピロシン5.8g)に(NHSO(68g)が加えられた。pHは1M NaOHの添加によりpH7.5に調整された。アクリル系吸着剤XAD7HP(登録商標)(ローム・アンド・ハース社)がクロマトグラフィカラム(191ml)に充填され、生成されたムピロシン溶液が(シュードモネート溶液として)前記カラムに加えられた(1.9ml/分)。カラムは0.5M(NHSOを含むpH7.5の0.1Mトリス緩衝液(958ml)で洗浄された。その後、0.1M酢酸カルシウム溶液が前記カラムに加えられ(575ml)、続いて水(573ml)が加えられた。ムピロシンカルシウムが60%メタノールによって前記カラムから溶出された。5.0gのムピロシンカルシウムが溶出プール中に回収された(216ml、収率83%)。
【0029】
溶出プールの1つのフラクション(54ml、ムピロシンカルシウム1.2g)が蒸発された(90mbar、50℃)。結果として生じたメタノールフリー溶液(15ml)が室温で混合されながら結晶化された。約20時間後、結晶物質が濾過され、結果として生じた濾過ケーキが水(10ml)で洗浄されて、真空トレー乾燥機で乾燥された(<50mbar、40℃)。91.4%の特定の活性(そのままの状態で)を有する1.1gの製造物が回収された。
【0030】
D.精製ムピロシン酸(10g、94%の活性物質を含む)が0.5M(NHSO(1L)に溶解された。溶液は1M NaOHでpH7.5に調整された。ポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD4(登録商標)(ローム・アンド・ハース社)がクロマトグラフィカラム(22ml)に充填され、生成されたムピロシン溶液が(シュードモネート溶液として)前記カラムに加えられた(88ml、2ml/分)。カラムは0.5M(NHSOを含むpH7.5の0.1Mリン酸緩衝液(33ml)で洗浄され、続いてpH7.5の0.1Mリン酸緩衝液(110ml)、最後に水(66ml)が加えられた。0.1M CaCl溶液が前記カラムに加えられた(66ml)。過剰カルシウムが水(66ml)で、その後20%メタノール(176ml)で洗い落とされた。ムピロシンカルシウムが60%メタノール(176ml)でカラムから溶出された。0.5gのムピロシンカルシウムが溶出プール中に回収された(121ml、収率51%)。
【0031】
溶出された製造物は、実験用回転蒸発器内で真空状態で蒸発された(80mbar、50℃)。濃縮されたメタノールフリー溶液(2.5ml)が、室温で混合されながら結晶化された。20時間後、結晶物質が濾過され、濾過ケーキがトレー真空乾燥機で乾燥された(<50mbar、50℃)。92%の特定の活性(そのままの状態で)及び125℃の融点を有する0.3gの製造物が回収された。前記製造物のFT−IRスペクトルは、ムピロシンカルシウムの参照スペクトルに一致している。
【0032】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されたが、他の変更例及び変形例が当業者に想到され得ることが理解される。したがって、本請求項は、請求される本発明の範囲に含まれる全ての同等の変更例を包含するように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムピロシン生成物を、好ましくは可溶性塩として疎水性固体支持体に吸着して結合ムピロシンを形成する段階と、
前記結合ムピロシンを可溶性カルシウム含有物質に暴露し、ムピロシンカルシウムを形成する段階と、
結合した前記ムピロシンカルシウムを洗浄する段階と、
前記固体支持体から精製ムピロシンカルシウムを溶出する段階と
からなるムピロシンカルシウムの精製方法。
【請求項2】
前記ムピロシン生成物が、
蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)のムピロシン産生培養物を発酵させる段階と、
それによって形成される発酵ブロスを得る段階と、
任意で濾過により前記ブロスを浄化する段階と
によって生成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体支持体が疎水性吸着樹脂である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂が、変性シリカ、ポリスチレン、及びアクリル系材料からなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂が、アクリル系吸着剤XAD7HP、及び、ポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD1600及びXAD4からなる群より選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ムピロシンカルシウムが、更に結晶化によって精製される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも50%に精製される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも65%に精製される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも90%に精製される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
硫酸アンモニウム等の塩基が前記ムピロシン生成物に添加されて前記固体支持体への吸着を助ける請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記カルシウム含有物質が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムのいずれかであり、好ましくは酢酸カルシウム又は塩化カルシウムのいずれかである請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
前記ムピロシン生成物がシュードモネートであり、前記ムピロシン生成物に硫酸アンモニウム溶液が添加されてムピロシンの前記固体支持体への吸着を助けるとともに、前記固体支持体がXAD7HP又はXAD1600であって、前記カルシウム含有物質が酢酸カルシウムであり、かつ、前記精製ムピロシンカルシウムがメタノール等の有機溶媒を用いて溶出される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ムピロシン生成物がムピロシン酸であり、前記ムピロシン生成物に硫酸アンモニウム溶液が添加されてムピロシンの前記固体支持体への吸着を助けるとともに、前記固体支持体がXAD4であって、前記カルシウム含有物質が塩化カルシウムであり、かつ、前記精製ムピロシンカルシウムがメタノール等の有機溶媒を用いて溶出される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a.精製ムピロシンを、好ましくは可溶性塩として疎水性固体支持体に吸着させる段階と、
b.吸着ムピロシンをカルシウム含有物質に暴露する段階と、
c.過剰カルシウム含有溶液を除去する段階と、
d.前記固体支持体からムピロシンカルシウムを溶出する段階と
からなるムピロシンカルシウムの生成方法。
【請求項15】
前記カルシウム含有溶液が、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、及びプロピオン酸カルシウムからなる群より選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カルシウム含有溶液が酢酸カルシウムである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルシウム含有溶液が塩化カルシウムである請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ムピロシンカルシウムが、有機溶媒を用いて前記固体支持体から溶出される請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒がメタノールを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固体支持体が疎水性吸着樹脂である請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記樹脂が、変性シリカ沈殿物、ポリスチレン、及びアクリル系材料からなる群より選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記樹脂が、アクリル系吸着剤XAD7HP、及びポリスチレンジビニルベンゼン吸着剤XAD1600及びXAD4からなる群より選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ムピロシンカルシウムが、更に結晶化によって精製される請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも50%に精製される請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも65%に精製される請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ムピロシンカルシウムが、少なくとも90%に精製される請求項14〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって生成された精製ムピロシンカルシウム。
【請求項28】
前記精製ムピロシンに硫酸アンモニウム等の塩基が添加されて前記固体支持体への吸着を助ける請求項14〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記精製ムピロシンがシュードモネートであり、前記精製ムピロシンに硫酸アンモニウム溶液が添加されてムピロシンの前記固体支持体への吸着を助けるとともに、前記固体支持体がXAD7HP又はXAD1600であり、かつ、前記ムピロシンカルシウムがメタノール等の有機溶媒を用いて溶出される請求項14に記載の方法。
【請求項30】
前記精製ムピロシンがムピロシン酸であり、前記精製ムピロシンに硫酸アンモニウム溶液が添加されてムピロシンの前記固体支持体への吸着を助けるとともに、前記固体支持体がXAD4であって、前記カルシウム含有溶液が塩化カルシウムであり、かつ、前記ムピロシンカルシウムがメタノール等の有機溶媒を用いて溶出される請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−501608(P2010−501608A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525975(P2009−525975)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007547
【国際公開番号】WO2008/025534
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505371232)アクセリア ファーマシューティカルズ エーピーエス (13)
【氏名又は名称原語表記】AXELLIA PHARMACEUTICALS ApS
【住所又は居所原語表記】11 Dalslandsgade,DK−2300 Copenhagen S,DENMARK
【Fターム(参考)】