説明

メス型コネクタおよび接続具

【課題】 形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタに接続することができ、且つ、オス型コネクタへの接続作業が容易であるメス型コネクタ及び接続具を提供する。
【解決手段】 液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと接続可能である、軟質部材と硬質部材からなるメス型コネクタであって、軟質部材は可撓性及び弾性を有し、かつ一端にオス型コネクタ管状部が挿入される開口を有する筒状体であって、硬質部材は軟質部材よりも高い剛性を有し、軟質部材の外側周囲に円筒状に軟質部材と一体となるよう積層されて把持部を形成してなることを特徴とするメス型コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液状物が流出するオス型コネクタに接続されるメス型コネクタに関する。また、本発明は、オス型コネクタとメス型コネクタとからなる接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
経口によらずに患者に栄養や薬剤を投与する方法として経腸栄養療法や静脈栄養療法が知られている。経腸栄養療法では、患者の鼻腔から胃または十二指腸にまで通されたチューブを介して栄養剤、流動食、または薬剤などの液状物(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)が投与される。また、静脈栄養療法では、患者の静脈に挿入された輸液ラインを介してブドウ糖などの栄養成分や薬剤成分を含む液状物(一般に「輸液」と呼ばれる)が投与される。
【0003】
経腸栄養療法を行う際に患者に投与される液状物は医療用容器に収納される。医療用容器の下端には、液状物が流出するオス型コネクタが設けられている。医療用容器内の液状物は、一般に経腸栄養セットと呼ばれるチューブを介して患者に投与される。チューブの一端には、オス型コネクタと接続されるメス型コネクタが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
医療容器に設けられたオス型コネクタは、通常、液状物が流出する管状部を有するが。その形状や寸法に関して標準となる規格は存在せず、医療用容器やオス型コネクタのメーカーごとに異なる。図19〜図27は、各メーカーが採用している従来のオス型コネクタの管状部901A〜901Iを示した側面図である。これらに示されるように、オス型コネクタの管状部の外周面の形状、外径、長さなどに関する規格はメーカーごとに異なっている。
【0005】
経腸栄養を行なう施設(例えば医療機関)においては、従来、経腸栄養剤が充填される容器および経腸栄養セットは再利用される場合が多く、その場合には、容器と経腸栄養セットとを接続した状態で洗浄、消毒、経腸栄養剤の充填が行なわれていた。ところが、近年、感染防止の観点から、経腸栄養剤を使い捨ての容器に充填した状態で販売されるプレフィルド型栄養剤が普及しつつある。プレフィルド型栄養剤の普及に伴い、容器と経腸栄養セットとが別体として取り扱われる機会が増え、上記のように容器のオス型コネクタの管状部に関して各種の規格が存在することに起因する、容器のオス型コネクタと経腸栄養セットのメス型コネクタとの適合不良(接続不良)の問題が顕在化してきた。
【0006】
各種のオス型コネクタに接続可能な従来の汎用のメス型コネクタとしては、図28(A)に示すように、形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタの管状部901に接続できるように、チューブ903の一端に接続された弾性を有する円筒状のゴム管902が用いられていた。図28(B)に示すようにゴム管902を管状部901の外周面上に被せるように矢印910の向きに挿入し、図28(C)に示すようにゴム管902と管状部901とを接続する。ゴム管902は、管状部901の外周面のテーパ形状に応じて伸び且つ変形し、その弾性回復力により管状部901の外周面に密着する。
【0007】
【特許文献1】特開平11−28244号明細書
【特許文献2】特開2008−93211号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図28(A)に示したゴム管902からなる従来の汎用のメス型コネクタは、管状部901とゴム管902との間に発生する摩擦力のために、管状部901をゴム管902に挿入する接続作業がしづらいという問題を有していた。すなわち、接続作業では、図29(B)におけるゴム管902の領域902aを把持して管状部901との接続を行なうが、把持力によってゴム管902と管状部901が圧迫されて両者の摩擦を増大させるので、管状部901に対してゴム管902を移動させるのが困難である。そこで、図28(B)において、管状部901に被さっていないゴム管902の領域902bまたはチューブ903を把持すると、矢印910の向きの力によってゴム管902が容易に座屈変形してしまい、やはり管状部901に対してゴム管902を移動させるのが困難である。
【0009】
ゴム管902が容易に伸びるようにその柔軟性を高めると、ゴム管902がさらに座屈変形しやすくなり、接続作業は却って困難になる。また、ゴム管902の内径を大きくすると、管状部901とゴム管902との間の摩擦力を小さくすることができるので、管状部901とゴム管902との接続作業は容易になる。ところが、この場合、管状部901に装着されたゴム管902が容易に脱落してしまったり、管状部901とゴム管902との間から液状物が漏れたりするという新たな問題が発生する。
【0010】
また、オス型コネクタの管状部901の外周面の形状や寸法によっては、ゴム管902に管状部901を挿入するのに手間取る場合があるという問題がある。
【0011】
ゴム管902を把持した時に管状部901とゴム管902との間に発生する摩擦力を低減する方法としては、特許文献2に記載の技術が公知となっている。これはメス型コネクタの容器接続部よりも硬く構成された把持部を設けてメス型コネクタを把持することで、管状部とゴム管の間に発生する摩擦力を低減しようとするものである。しかし、特許文献2の内容によっても、管状部901が挿入される際にメス型コネクタの軟質部分が座屈変形を起こしやすいという問題は依然残されている。
【0012】
本発明は、上記の従来の問題を解決し、形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタに接続することができ、且つ、オス型コネクタへの接続作業が容易であるメス型コネクタ及び接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のメス型コネクタは、液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと接続可能である、軟質部材と硬質部材からなるメス型コネクタであって、軟質部材は可撓性及び弾性を有し、かつ一端にオス型コネクタ管状部が挿入される開口を有する筒状体であって、硬質部材は軟質部材よりも高い剛性を有し、軟質部材の外側周囲に円筒状に軟質部材と一体となるよう積層されて把持部を形成してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の接続具は、液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタに接続されるメス型コネクタとからなる接続具であって、前記メス型コネクタが上記の本発明のメス型コネクタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オス型コネクタの管状部が挿入されるメス型コネクタの挿入部が弾性及び可撓性を有する軟質部材で構成されているので、メス型コネクタを、形状や寸法が異なる各種のオス型コネクタに接続することができる。また、軟質部材で構成された挿入部の外方に硬質部材が積層された把持部を設け、把持部を把持してメス型コネクタとオス型コネクタとを接続させることで、メス型コネクタとオス型コネクタが互いに接近する方向の力が加えやすくなる。また、メス型コネクタを把持しても、軟質部材の外方に硬質部材が形成されているので、把持力が軟質部材に直接伝わりにくくなる。そのため、メス型コネクタを把持する力に起因する軟質部材の潰れや座屈変形を防ぐことができ、メス型コネクタとオス型コネクタとを接続する作業を容易に行なうことができる。
【0016】
(CL3に従って変更)
硬質部材は軟質部材の外表面上に一体となるよう形成されていてもよく、またその内側と外側に軟質部材が位置するよう、軟質部材の内部に埋め込まれていてもよい。オス型コネクタの管状部がメス型コネクタに挿入された際に管状部が軟質部材と接する構成であれば、上記の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の上記のメス型コネクタにおいて、前記硬質部材に、前記オス型コネクタと係合可能な係合部を備えてもよい。この構成により、オス型コネクタと接続されたメス型コネクタがオス型コネクタから意図せずに脱落することを防ぐことができる。
【0018】
(CL4に従って変更)
この場合、前記硬質部材は、前記メス型コネクタのオス型コネクタ側の端部よりもさらに前記オス型コネクタ側に突出した鍔部を備え、前記係合部は該鍔部に設けられていることが望ましい。この構成により、オス型コネクタとメス型コネクタを容易に係合させることができる。オス型コネクタとメス型コネクタとを係合させる構造としては、オス型コネクタとメス型コネクタのいずれか一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部を係合させることでオス型コネクタとメス型コネクタとを係合させる構造、オス型コネクタとメス型コネクタのいずれか一方に雄ネジを設け、他方には該雄ネジと螺合可能な雌ネジを設け、雄ネジと雌ネジとを螺合させることでオス型コネクタとメス型コネクタを接続でき、かつその接続状態を維持する構造などが考えられる。
【0019】
また、本発明の接続具は、液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタに接続されるメス型コネクタとからなる接続具であって、前記メス型コネクタが上記の本発明のメス型コネクタであることを特徴とする。本発明の接続具において、オス型コネクタとメス型コネクタのそれぞれに、相互に係合しあう係合部が設けられていることが好ましい。この構成により、オス型コネクタの管状部に接続されたメス型コネクタが管状部から意図せずに脱落するのを防止することができる。
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態を示しながら詳細に説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。本実施の形態1のメス型コネクタ100は、軟質部材110と、軟質部材に外装され、かつ一体となるよう構成された硬質部材120とを備える。一点鎖線130は軟質部材110の中心軸であり、かつ軟質部材110と硬質部材120が一体化されたメス型コネクタ100の中心軸である。本実施の形態1の説明においては、中心軸130の方向を上下方向とし、図1の紙面上側(後述するオス型コネクタに接続される側)を「上側」、紙面下側を「下側」とする。
【0022】
軟質部材110は中空の筒状体であり、その下端には可撓性を有するチューブ140が融着されている。軟質部材110の上端には開口111が形成されており、中心軸130方向において、オス型コネクタの管状部172が開口110から軟質部材110の内腔に挿入されることが予定されている。開口111の端を含む軟質部材110の領域を特に挿入部と呼ぶ。軟質部材110は可撓性及び弾性を有する材料からなり、例えば天然ゴム、合成ゴム(例えばPBD(ポリブタジエン))、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアミド樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂などを用いることができる。このような材料を用いているため、軟質部材110のうち、チューブ140が融着されている部分以外の部分は可撓性及び弾性を有している。
【0023】
硬質部材120は中空の筒状体であり、その中心軸130が軟質部材110の中心軸と一致するよう、軟質部材110の外表面に一体となるよう取り付けられる。硬質部材120は軟質部材110よりも高い剛性と硬度を有する材料からなり、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PVC、PBDなどを用いることができる。また、軟質部材110と硬質部材120が一体となるように形成する方法としては、互いの部材を接着もしくは溶着によって一体化する方法、または二色成型やインサート成形によって一体とする方法などが考えられる。
【0024】
硬質部材120は軟質部材110の上側、即ちオス型コネクタ170に近い位置に設けられる。軟質部材120と硬質部材110とが一体化されたときに、互いに層をなす構成となる部分を把持部とする。メス型コネクタ100をオス型コネクタ170と接続する際は、この把持部150を把持することで操作を行なう。このようにすることで、メス型コネクタ100を把持してもその力は硬質部材120によって軟質部材の挿入部112に伝わりにくい。よって、オス型コネクタの管状部172と挿入部112との間に発生する摩擦力を低減することができ、オス型コネクタ170とメス型コネクタ100の接続作業を容易に行なうことができる。
【0025】
図2に医療用容器及びオス型コネクタの一例の概略構成を示した分解図を示す。医療用容器910はパウチ920と、パウチ内に液状物を注入し、またはパウチ内に収容された液状物を取出すためのポート930とを備えている。パウチ920は、例えばポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック材料の中から選択される材料によって、公知の方法によって形成される。パウチ920は中身を確認するために透明もしくは半透明であることが望ましく、酸素や日光などに対してバリアの役割を果たすための層を備えていてもよい。
【0026】
パウチ920と一体化されたポート930には、オス型コネクタ170が設けられている。オス型コネクタ170は、キャップ部180と管状部172を備えている。キャップ部180の内周面には、パウチと一体化されたポート930に設けられた雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。管状部172はキャップ部180の下面の中央からさらに下方に向かって突出しており、内部には液状物が流通する貫通孔173が形成されている。管状部172の外周面は、キャップに近づくほど外径が大きくなるテーパ面(円錐台面)を有している。オス型コネクタ170の材料は特に制限はなく、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂など、公知の材料を使用することができる。
【0027】
本実施の形態1における、メス型コネクタとオス型コネクタの接続方法を説明する。図3(A)は接続前の状態を示した断面図、図3(B)は接続後の状態を示した断面図である。まず把持部150を把持し、メス型コネクタの開口111内にオス型コネクタの管状部172を挿入する。メス型コネクタの挿入部112は可撓性及び弾性を有するので、管状部172の形状に応じて拡径するなどの変形を行い、その弾性回復力によって管状部172の外周面に密着する。この状態でメス型コネクタ100に矢印160方向の力を加えると、管状部172が挿入部112の奥に侵入するに従って挿入部112が変形し、挿入部112の弾性回復力によって管状部172が保持されることで、オス型コネクタ170とメス型コネクタ100とを接続・保持することが可能となる。管状部172の形状や寸法等がメーカーや規格の違いにより異なっても、挿入部112が管状部172の外周面に応じて弾性変形するので、オス型コネクタ170とメス型コネクタ100とを液状物の漏れなく確実に接続することができる。
【0028】
この時、メス型コネクタ100を把持した力は、高い剛性を有する硬質部材120によって挿入部112に伝わることはない。そのため、挿入部112とオス型コネクタの管状部172との間の摩擦力が増大しにくくなるので、接続操作を容易に行なうことができる。このとき、図3(C)に示すメス型コネクタの開口端から把持部までの長さXがオス型コネクタの管状部の長さよりも短くなるよう設定すれば、オス型コネクタに向かう方向の力(矢印160)をメス型コネクタ100に加えてもメス型コネクタの軟質部材110が座屈変形してメス型コネクタ100とオス型コネクタ170との接続を妨げるおそれがなく、より容易に接続操作を行なうことができる。
【0029】
メス型コネクタの挿入部112の内周面は、その内径が中心軸130方向に一定である円筒面であってもよいが、図1に示すように、その内径が上端に近づくに従って大きくなるテーパ面であることが好ましい。これにより、オス型コネクタの管状部の外周面の形状や寸法等がメーカーや規格の違いによって異なっても、管状部の外周面の少なくとも一部が挿入部112の内周面の少なくとも一部と密着するので、オス型コネクタ170とメス型コネクタ100とを液状物の漏れなく確実に接続することができる。
【0030】
メス型コネクタの挿入部112の内周面には、図1に示すように、周方向に沿った(即ち、中心軸130と直行する平面と挿入部の内周面とによって形成される円に沿った)連続する環状の突起113が形成されていることが望ましい。これにより、図3(B)に示すように、メス型コネクタ100内にオス型コネクタの管状部172を挿入した時、突起113が管状部172の外周面に密着する。そのため、管状部172の形状や寸法が異なる場合でも、それに応じて突起113は管状部172の外周面と密着した状態を維持するので、オス型コネクタ170とメス型コネクタ100とを液状物の漏れなく確実に接続することが出来る。環状の突起113は、図1に示すように中心軸130方向に複数箇所に設ければより確実に管状部172と接触できるが、1つだけ設けられていてもよい。
【0031】
また、軟質部材の外表面上に一体となるよう形成された硬質部材120の外表面に、ナシジ加工やエンボス加工、また図4に示すようなフランジ115を設けてもよい。これにより、メス型コネクタをより把持しやすくなり、メス型コネクタに矢印160方向の力を加えやすくなる。
【0032】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。本実施の形態2のメス型コネクタ200は、筒状の軟質部材210と、軟質部材の内部に埋め込まれることで軟質部材と一体化された硬質部材220とを備える。実施の形態1と同様、一点鎖線230は軟質部材210の中心軸であり、かつ軟質部材210と硬質部材220が一体化されたメス型コネクタ200の中心軸である。本実施の形態2の説明においても、中心軸230の方向を上下方向とし、図5の紙面上側(オス型コネクタに接続される側)を「上側」、紙面下側を「下側」とする。なお、オス型コネクタおよびそれが接続されるパウチ等の説明は、実施の形態1と同様であるために省略する。
【0033】
軟質部材210は実施の形態1と同様、中空の筒状体であり、その下端には可撓性を有するチューブ240が融着されており、その上端にはオス型コネクタの管状部172が挿入される開口211が形成されている。本実施例においても、管状部172が挿入される軟質部材210の開口211を含む領域を特に挿入部212と呼ぶ。また、軟質部材210に使用される材料やその特性も、実施の形態1と同様である。
【0034】
本実施の形態2における硬質部材220は、中空の筒状体である点、軟質部材210よりも高い剛性と硬度を有する材料からなる点では実施の形態1と共通している。本実施の形態2においては、図5に示すように、硬質部材220の外方に軟質部材210の層を設けている点、すなわち、硬質部材220は軟質部材210の内部に埋め込まれる形で軟質部材210と一体となるよう形成されている点に特徴を有する。硬質部材220は軟質部材210の上方、即ちオス型コネクタ170に近い位置に設けられ、メス型コネクタ200の挿入部212の内周面が軟質部材となるような状態で軟質部材210の内部に埋め込まれる。軟質部材210と硬質部材220とが層をなす部分を把持部250とする。メス型コネクタ200とオス型コネクタ170を接続する際に、この把持部250を把持して接続操作を行なうことで、メス型コネクタ200を把持した時に加わる把持力は硬質部材220によって軟質部材の挿入部212に伝わりにくくなる。よって、オス型コネクタの管状部172と挿入部212の間に発生する摩擦力を低減することができ、オス型コネクタ170とメス型コネクタ200との接続操作を容易に行なうことができる。
【0035】
本実施の形態2における、メス型コネクタ200とオス型コネクタ170の接続方法を説明する。図6(A)は接続前の状態を示した断面図であり、図6(B)は接続後の状態を示した断面図である。まず、把持部250を把持してメス型コネクタの開口211内にオス型コネクタの管状部172を挿入する。実施の形態1と同様メス型コネクタの挿入部212は軟質部材で構成されているために可撓性および弾性を有する。そのため、管状部172の形状に応じて拡径するなどの変形を行い、その弾性回復力によって管状部172の外周面に密着する。この状態でメス型コネクタ200に矢印260方向の力を加えると、管状部172が挿入部212の奥に侵入するに従って挿入部212が変形し、挿入部212の弾性回復力によって管状部172が保持されることで、オス型コネクタ170とメス型コネクタ220とを接続・保持することが可能となる。管状部172の形状や寸法等がメーカーや規格の違いにより異なっても、挿入部212が管状部172の外周面に応じて弾性変形するので、オス型コネクタ170とメス型コネクタ200とを液状物の漏れなく確実に接続することができる。
【0036】
この時、メス型コネクタ200を把持した力は、軟質部材210の内部に埋め込まれた硬質部材220によって挿入部212に伝わることはない。そのため、挿入部212とオス型コネクタの管状部172との間の摩擦力が増大しにくくなるので、接続操作を容易に行なうことができる。このとき、実施の形態1と同じく、メス型コネクタ200の開口端から把持部250までの長さがオス型コネクタの管状部の長さよりも短くなるよう設定することで、オス型コネクタに向かう方向の力(矢印260)をメス型コネクタに加えてもメス型コネクタの軟質部材が座屈変形を起こすおそれがなく、より容易に接続操作を行なうことができる点は実施の形態1と同様である。
【0037】
硬質部材220を軟質部材210の内部に埋め込むという構成により、メス型コネクタの最外面は軟質部材210で構成される。そのため、その弾性および可撓性によってメス型コネクタ200を把持する力が軟質部材210によって吸収され、さらに硬質部材220の存在によって把持力がメス型コネクタの挿入部212に伝わることはない。つまり、より強固な力でメス型コネクタ200を把持しても、オス型コネクタの管状部172と挿入部212の間に発生する摩擦力を低減することができるので、オス型コネクタ170とメス型コネクタ200との接続操作をより容易に行なうことができる。なお、把持部250の表面にナシジ加工やエンボス加工、フランジ等を設けることも、把持部250をより把持しやすくなるので望ましい。
【0038】
実施の形態1と同様、本実施の形態2におけるメス型コネクタの挿入部212の内周面を、その内径が上端に近づくに従って大きくなるテーパ面としてもよく、また挿入部の内周面に、周方向に沿った連続する環状の突起を形成してもよい。さらに、これらの構成を併せて設けてもよい。これらの構成によって、オス型コネクタの管状部を挿入部に挿入した際、管状部の少なくとも一部と挿入部の内周面の少なくとも一部とが密着するので、オス型コネクタとメス型コネクタとを液状物の漏れなく確実に接続することができる。
【0039】
上記の構成に加え、オス型コネクタとメス型コネクタとを接続した際、メス型コネクタがオス型コネクタから意図せずに脱落するための係合部をメス型コネクタに設けてもよい。以下、係合部が設けられたメス型コネクタ、およびこれに対応した係合部が設けられたオス型コネクタについて説明する。
【0040】
(実施の形態3)
図7(A)は、本発明の実施の形態3に係るオス型コネクタ370の正面図、図7(B)はその下面図である。一点鎖線330はオス型コネクタ370の中心軸を示し、中心軸330の方向を上下方向、図7の紙面上側(医療用容器のポートに接続される側)を「上側」、紙面下側(メス型コネクタが接続される側)を「下側」とする。
【0041】
本実施例3におけるオス型コネクタ370は、キャップ部380、台座371、管状部372から構成される。キャップ部380の内周面には、医療用容器のポートに設けられた雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。キャップ部380の下面には、その中央の円形の領域がその周囲の環状領域374よりも下方に突出した台座371が形成されており、台座372の中央にはさらに下方に向かって突出した管状部372が設けられている。本例における管状部372の外周面には、キャップ部380に近づくほど外径が大きくなるテーパ面(円錐台面)が形成されており、管状部372には、医療用容器内の液状物が流出するための貫通孔373が形成されている。
【0042】
台座371の外周面には、中心軸330に対して対称となるよう一対の係合爪375が形成されている。係合爪375は、中心軸330に対して放射方向に突出して形成されている。台座371の下面は平面であり、この下面と係合爪375の下面とは一致している。一対の係合爪375の形状は中心軸330に対して対称であり、互いの頂部間の距離が、係合爪375が設けられていない台座371の部分の外径よりも大きくなるよう形成されている。
【0043】
図8は、本実施の形態3に係るメス型コネクタ300の断面図であり、図9(A)はその上面図、図9(B)はメス型コネクタ300の上端側の正面図、図9(C)はメス型コネクタの上端側の側面図である。また、図10(A)は図9(B)のB−B’線での矢視断面図、図10(B)は図9(C)のC−C’線での矢視断面図である。一点鎖線330はメス型コネクタ300の中心軸であり、中心軸330の方向を上下方向、オス型コネクタに接続される側を「上側」、その反対側を「下側」とする。
【0044】
本実施の形態3に係るメス型コネクタ300は、図8に示すように、円筒状の軟質部材310と、該軟質部材と一体となるように形成された硬質部材320とからなる点、軟質部材310と硬質部材320が層をなす部分が把持部350となる点等、その大部分の構成を実施の形態1または2に記載の構成と同じくする。本実施例においては、硬質部材320の上側の端部からさらに上方、即ちオス型コネクタ側に突出した鍔部321を設けている。本実施例における鍔部321は、中心軸330を中心軸とする円筒面にほぼ沿った形状の円弧状壁322と、円弧状壁322の下端と硬質部材320の上端とを繋ぐ渡り部323とから構成される。さらに円弧状壁322は、図10(A)に示すように、中心軸330に対向する内周面の形状の相違により、通過領域324、係合領域325、摺動領域326の3つの領域に大別される。通過領域324の内周面の中心軸330からの距離は、摺動領域326の内周面の中心軸330からの距離よりも大きくなるように構成される。通過領域324と摺動領域326との間に位置する係合領域325は、その上端に、通過領域324の上端と摺動領域326の上端とを繋ぐように周方向に延在する係合壁327を備える。係合壁372と渡り部322との間には、凹状に陥没し、半径方向に開口した貫通孔328を有している。
【0045】
対向する一対の通過領域324間の長さは、オス型コネクタ370に設けられた一対の係合爪375の頂部間の距離よりも大きい。また、対向する一対の摺動領域326間の長さは、一対の係合爪375の頂部間の距離よりも小さく、オス型コネクタの台座371の外径よりも大きい。
【0046】
本実施の形態3における、メス型コネクタのオス型コネクタへの接続方法を説明する。まず、実施の形態1および2と同様、メス型コネクタの把持部350を把持し、メス型コネクタの挿入部312にオス型コネクタの管状部372を挿入する。挿入部312は軟質部材から構成されているので弾性および可撓性を有し、そのため挿入された管状部372の外周面の形状に応じて変形し、その弾性回復力によって管状部372の外周面に密着する。また、メス型コネクタ300を把持することで加わる力、またメス型コネクタ300がオス型コネクタ370に向かうように加えられる力は、硬質部材320によって挿入部312の内周面に伝わることはない。そのため、挿入部312と管状部372との間の摩擦力は増大することはなく、オス型コネクタ370とメス型コネクタ300とを容易に接続することができる。また、硬質部材320はメス型コネクタ300の上端からさらに上方に鍔部321として突出する形状であるので、硬質部材320は把持部350からメス型コネクタの開口311まで存在する。そのため、把持部350のどこを把持しても、把持した部分から開口311側の領域が座屈変形を起こすことはなく、接続操作を容易に行なうことができる。
【0047】
さらに挿入部312内に管状部372を深く挿入すると、やがて鍔部321に設けられた円弧状壁322の間にオス型コネクタの台座371が嵌入する。ここで鍔部321の通過領域324とオス型コネクタの台座に設けられた係合爪375の位置が一致する状態で、さらに管状部372を挿入部312内に深く挿入すると、オス型コネクタの台座371とメス型コネクタの開口311の上端が当接する。この状態で、メス型コネクタ300をオス型コネクタ370に対して時計回りに回転させると、係合爪375は円弧状壁322の通過領域324から係合領域325へと位置を変える。一対の摺動領域326の間の長さは一対の係合爪375の頂部間距離よりも小さいので、係合爪375が貫通孔328の摺動領域326側の端部に当接すると、それ以上のメス型コネクタ300の回転は制限される。この状態であれば係合爪375と貫通孔328が係合することでオス型コネクタ370とメス型コネクタ300の接続状態を強固にすることができ、不意に上下方向の力が加わってもその接続状態が解除されることはない。
【0048】
オス型コネクタ370とメス型コネクタ300の接続状態の解除は、上記の動作を逆に行なうことで可能である。即ち、メス型コネクタ300をオス型コネクタ370に対して反時計回り方向に回転させれば、係合爪375は係合領域325から通過領域324へとその位置を変える。この状態でメス型コネクタ300をオス型コネクタ370から引き抜けば、その接続状態を解除することができる。
【0049】
オス型コネクタ370に設けられる、台座371を含む係合爪375周辺の形状が、メス型コネクタに設けられた鍔部321の形状に対応していれば、オス型コネクタとメス型コネクタを係合させることができる。即ち、オス型コネクタの管状部の形状や寸法がメーカーや規格の違いによって異なっていても、台座を含む係合爪周辺の形状が鍔部の形状に対応していれば、上記の方法に従ってオス型コネクタとメス型コネクタを係合させることができるので、接続状態をより強固に維持することができる。仮に台座を含む係合爪周辺の形状が鍔部の形状と対応していなくても、メス型コネクタの挿入部312の内周面は軟質部材から構成されているので、挿入部312の内周面はオス型コネクタの管状部の外周面に応じて弾性変形し、オス型コネクタとメス型コネクタを液状物の漏れなく接続することができる。
【0050】
係合爪375を、管状部372が設けられたオス型コネクタの台座371の面に沿って配置すれば、台座371の高さをより小さくすることができる。このことにより、メス型コネクタ300の円弧状壁322の高さも小さくできるので、部材全般をよりコンパクトに形成することができる。
【0051】
円弧状壁322の高さをオス型コネクタの台座371の高さと等しくなるようにすれば、オス型コネクタ370とメス型コネクタ300をより強固に接続することができる上、メス型コネクタ300とオス型コネクタ370との接続部を円弧状壁322で覆い隠すことができるので、衛生面で有利である。
【0052】
円弧状壁322は硬質部材320の周方向の一部に設けられる形であってもよいが、硬質部材320の全周に亘って設けられていてもよい。硬質部材320の全周に亘って設けられていれば、オス型コネクタ370とメス型コネクタ300との接続部が全周に亘って覆い隠されるので、衛生面で有利である。
【0053】
本実施の形態3において、円弧状壁322に設けられた貫通孔328は、その外側が壁で閉じられていてもよい。この構成により、オス型コネクタ370とメス型コネクタ300との接続部を円弧状壁322によって覆い隠すことができるので、衛生面で有利である。また、貫通孔328の摺動領域326側の端部の上側に、係合爪375が嵌入できる程度の凹部を設ければ、オス型コネクタ370とメス型コネクタ300とを接続させた際、係合爪375を該凹部に嵌入させることで係合爪375の移動を制限することができる。よって、不意にメス型コネクタ300を回転させるような力が加わっても、メス型コネクタ300が回転するのを防ぐことができる。
【0054】
本実施の形態には、実施の形態1および/または実施の形態2の説明をそのまま、または自明な変更を適宜追加して適応することができる。
【0055】
(実施の形態4)
図11(A)は、本発明の実施の形態4に係るオス型コネクタの正面図、図11(B)はその下面図である。一点鎖線430はオス型コネクタ470の中心軸を示し、中心軸430の方向を上下方向、図11の紙面上側(医療用容器のポートに接続される側)を「上側」、紙面下側(メス型コネクタが接続される側)を「下側」とする。
【0056】
本実施の形態4におけるオス型コネクタ470は、キャップ部480、台座471、管状部472から構成される。キャップ部480の内周面には、医療用容器のポートに設けられた雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。キャップ部480の下面には、その中央の円形の領域がその周囲の環状領域473よりも下方に突出した台座471が形成されており、台座471の中央にはさらに下方に向かって突出した管状部472が設けられている。本例における管状部472の外周面には、キャップ部480に近づくほど外径が大きくなるテーパ面(円錐台面)が形成されており、管状部472には、医療用容器内の液状物が流出するための貫通孔475が形成されている。そして、台座471の外周面には、雄ネジ474が形成されている。
【0057】
図12は、本実施の形態4に係るメス型コネクタ400の概略構成を示した断面図である。また、図13(A)は、本実施の形態4に係るメス型コネクタの正面図であり、図13(B)はその断面図である。一点鎖線430はメス型コネクタ400の中心軸であり、中心軸430の方向を上下方向、オス型コネクタに接続される側を「上側」、その反対側を「下側」とする。
【0058】
本実施の形態4に係るメス型コネクタ400は、図12に示すように、大部分が実施の形態1および/または2において説明したものと同様であり、円筒状の軟質部材410と、該軟質部材と一体となるように形成された硬質部材420とからなるものである。そして、実施の形態3と同様、硬質部材420の上側の端部からさらに上方、即ちオス型コネクタ側470に突出した鍔部421を設けている。本実施の形態4における鍔部421は、円筒状に形成されており、その内面には台座471の外周面に設けられた雄ネジ474と螺合する雌ネジ422が設けられている点に特徴を有する。
【0059】
本実施の形態4のメス型コネクタ400のオス型コネクタ470への接続方法を説明する。まず、他の実施の形態と同様、メス型コネクタの把持部450を把持し、メス型コネクタの挿入部412にオス型コネクタの管状部472を挿入する。挿入部412は軟質部材から構成されているので弾性および可撓性を有し、そのため挿入された管状部472の外周面の形状に応じて変形し、その弾性回復力によって管状部472の外周面に密着する。また、メス型コネクタ400を把持することで加わる力、またメス型コネクタ400にオス型コネクタ470に向かうように加えられる力は、硬質部材420によって挿入部412の内周面に伝わることはない。そのため、挿入部412と管状部472との間の摩擦力は増大することはなく、オス型コネクタ470とメス型コネクタ400とを容易に接続することができる。また、硬質部材420はメス型コネクタ400の上端からさらに上方に鍔部421として突出する形状である。よって、硬質部材420は把持部450からメス型コネクタの開口411まで存在する。そのため、把持部450のどこを把持しても、把持した部分から開口411側の領域が座屈変形を起こすことはなく、接続操作を容易に行なうことができる。
【0060】
さらにメス型コネクタ400にオス型コネクタに向かう方向の力を加え挿入部412内に管状部472を深く挿入しつつ、メス型コネクタ400をオス型コネクタ470に対して時計回り方向に回転させる。すると、オス型コネクタの台座471の外周面に設けられた雄ネジ474とメス型コネクタの鍔部421に設けられた雌ネジ422が噛み合う。この状態でさらにメス型コネクタ400をオス型コネクタ470に対して時計回り方向に回転させれば、台座の雄ネジ474と鍔部の雌ネジ422による螺合によってメス型コネクタ400が上昇し、ついには鍔部422の上端がオス型コネクタの環状領域473に当接し、メス型コネクタ400はそれ以上回転しない。このようにオス型コネクタ470とメス型コネクタ400が螺合することで、互いの接続をより強固なものとすることができ、不意に衝撃等が加わってもその接続状態が解除されにくくなる。
【0061】
オス型コネクタ470とメス型コネクタ400の接続状態の解除は、上記の動作を逆に行なうことで可能である。即ち、メス型コネクタ400をオス型コネクタ470に対して反時計回り方向に回転させれば、オス型コネクタ470とメス型コネクタ400の螺合は解除され、雄ネジ474と雌ネジ422が離間した時点でメス型コネクタ400をオス型コネクタ470から引き抜けば、その接続状態を解除することができる。
【0062】
オス型コネクタ470に設けられる雄ネジの形状が、メス型コネクタの鍔部421に設けられる雌ネジの形状に対応していれば、雄ネジと雌ネジを螺合させることによって、上記のようにオス型コネクタとメス型コネクタを接続することができる。即ち、オス型コネクタの管状部の形状や寸法等がメーカーや規格の違いにより異なっていても、オス型コネクタの台座の外周面にメス型コネクタの鍔部421に設けられた雌ネジと対応する雄ネジが設けられていれば、上記の方法に従ってオス型コネクタとメス型コネクタを接続することができるので、接続状態をより強固に維持することができる。仮にオス型コネクタに雌ネジ421と対応する雄ネジが設けられていなかったとしても、メス型コネクタの挿入部の内周面は軟質部材から構成されているので、挿入部の内周面は管状部の外周面に応じて弾性変形し、オス型コネクタとメス型コネクタを液状物の漏れなく接続することができる。
【0063】
本実施の形態4において、オス型コネクタ側の雄ネジ474とメス型コネクタ側の雌ネジ422を螺合させたときに、その螺合が緩まないようにするための機構を設けてもよい。該機構としては、例えばオス型コネクタの環状領域473および鍔部421の上端面に突起を設け、オス型コネクタ470とメス型コネクタ400とを螺合させたときに互いの突起同士が係合することで螺合が緩まないようにする機構、ネジ山の一部を他の部分よりも高く形成し、該部分が噛み合った時にネジ山が緩むのを防ぐ効果を発する機構などが考えられる。
【0064】
本実施の形態4における鍔部421の高さは、オス型コネクタの台座471の高さと実質的に同じであることが望ましい。このような構成にすることで、オス型コネクタ470とメス型コネクタ400を上記手順によって接続した時に、オス型コネクタの台座471は鍔部421によってほぼ全体が覆われるので、オス型コネクタ470とメス型コネクタ400の接続部位を覆い隠すことができ、衛生面で有利である。
【0065】
本実施の形態には、実施の形態1および/または実施の形態2の説明をそのまま、または自明な変更を適宜追加して適応することができる。
【0066】
(実施の形態5)
図14(A)は、本発明の実施の形態5に係るオス型コネクタの正面図、図14(B)はその下面図である。一点鎖線530はオス型コネクタ570の中心軸を示し、中心軸530の方向を上下方向、図12の紙面上側(医療用容器のポートに接続される側)を「上側」、紙面下側(メス型コネクタが接続される側)を「下側」とする。
【0067】
本実施の形態5におけるオス型コネクタ570は、キャップ部580、台座571、管状部572から構成される。キャップ部580の内周面には、医療用容器のポートに設けられた雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。キャップ部580の下面には、その中央の円形の領域がその周囲の環状領域583よりも下方に突出した台座571が形成されており、台座571の中央にはさらに下方に向かって突出した管状部572が設けられている。本例における管状部572の外周面には、キャップ部580に近づくほど外径が大きくなるテーパ面(円錐台面)が形成されており、管状部572には、医療用容器内の液状物が流出するための貫通孔574が形成されている。
【0068】
台座571の外周面には、中心軸530に対して放射方向に突出した係合突起575が台座571の全周に亘って連続して環状に形成されている。台座571の下面(即ち、管状部572が設けられた面)は平面であり、該下面と係合突起575の下面とは一致している。係合突起575と環状領域573との間には、係合突起575よりも外径が小さいアンダーカット部576が形成されている。
【0069】
図15は、本実施の形態5に係るメス型コネクタ500の概略構成を示す断面図である。また、図16(A)はその上面図、図16(B)はメス型コネクタ500の上端側の側面図、図16(C)は図16(A)のA−A’線での矢視断面図である。一点鎖線530はメス型コネクタ500の中心軸であり、中心軸530の方向を上下方向、オス型コネクタに接続される側を「上側」、その反対側を「下側」とする。
【0070】
本実施の形態5に係るメス型コネクタ500は、図15に示すように、大部分が実施の形態1および/または2において説明したものと同様であり、軟質部材510と、該軟質部材と一体となるように形成された硬質部材520とからなるものである。本実施の形態5に係るメス型コネクタ500は、硬質部材520が、メス型コネクタ500の上端からさらに上方に突出した一対のクリップ521を備えている点に特徴を有する。
【0071】
一対のクリップ521のそれぞれには、相手方のクリップに向かって突出した一対の係合爪522を備えている。係合爪522の上面には、中心軸530に対してやや下方に傾斜する傾斜面523が形成されている。一対のクリップ521の高さは、オス型コネクタの台座571の高さと実質的に同等であることが望ましい。また、メス型コネクタの開口511の上端面から係合爪522の下面までの高さは、台座571の下面から係合突起575の上面までの長さと実質的に同等であることが望ましい。
【0072】
本実施の形態5のメス型コネクタのオス型コネクタへの接続方法を説明する。まず、他の実施の形態と同様、メス型コネクタの把持部550を把持し、メス型コネクタの挿入部512にオス型コネクタの管状部572を挿入する。挿入部512は軟質部材から構成されているので弾性および可撓性を有し、そのため挿入された管状部572の外周面の形状に応じて変形し、その弾性回復力によって管状部572の外周面に密着する。また、メス型コネクタ500を把持することで加わる力、またメス型コネクタ500をオス型コネクタ570に向かうように加えられる力は、硬質部材520によって挿入部512の内周面に伝わることはない。そのため、挿入部512と管状部572との間の摩擦力は増大することはなく、オス型コネクタ570とメス型コネクタ500とを容易に接続することができる。また、硬質部材520はメス型コネクタ500の上端からさらに上方に一対のクリップ521として突出する形状であるので、硬質部材520は把持部550からメス型コネクタの開口511まで存在する。そのため、把持部550のどこを把持しても、把持した部分から開口511側の領域が座屈変形を起こすことはなく、接続操作を容易に行なうことができる。
【0073】
オス型コネクタの管状部572をメス型コネクタの挿入部512内に深く挿入すると、やがてメス型コネクタ500の上端から突出したクリップ521の傾斜面523とオス型コネクタに設けられた係合突起575の下面が接触する。この状態でさらに管状部572を挿入部512内に深く挿入すると、クリップ521は互いに離れる方向(即ちメス型コネクタ500の外方)に向かって弾性変形し、係合爪522が係合突起575を乗り越えるとクリップ521が弾性回復し、係合爪522がオス型コネクタのアンダーカット部576に嵌入する。このように係合爪522と係合突起575が係合することで、オス型コネクタ570とメス型コネクタ500との接続状態をより強固に維持することができ、不意に衝撃が加わっても、その接続状態が解除されにくくなる。オス型コネクタ570とメス型コネクタ500の接続状態を解除する時はクリップ521を外方向に弾性変形させ、係合爪522の先端同士の距離が係合突起575の直径方向の距離よりも長くなった状態でメス型コネクタ500をオス型コネクタ570から引き抜けば、接続状態を解除することができる。
【0074】
オス型コネクタ570に設けられる係合突起575の形状が、メス型コネクタ500に設けられるクリップ521の形状に対応していれば、係合突起575とクリップ521を係合させることによって、上記のようにオス型コネクタとメス型コネクタを接続することができる。即ち、オス型コネクタの管状部の形状や寸法等がメーカーや規格の違いにより異なっていても、オス型コネクタに上記の係合突起が設けられていれば、上記の方法に従ってオス型コネクタとメス型コネクタを接続することができるので、接続状態をより強固に維持することができる。仮にオス型コネクタに係合突起が設けられていなかったとしても、メス型コネクタの挿入部512の内周面は軟質部材から構成されているので、挿入部512の内周面は管状部572の外周面に応じて弾性変形し、オス型コネクタ570とメス型コネクタ500を液状物の漏れなく接続することができる。
【0075】
係合突起576は、オス型コネクタの台座571の外周面に全周に亘って設けられているが、図17に示すように、中心軸530に対して放射方向に延びるスリット577を設けた部分があってもよい。この場合、スリット577はメス型コネクタのクリップ521に対応する位置に設けられていることが好ましい。この構成によれば、クリップ521をスリット577に通してクリップの係合爪522をアンダーカット部576に到達させ、その状態で中心軸530を軸にメス型コネクタ500を回転させれば係合突起575と係合爪522を係合させることができ、上下方向に力が加わってもオス型コネクタ570とメス型コネクタ500との接続状態が解除されにくくなる。また、オス型コネクタ570とメス型コネクタ500との接続を解除させる場合には、メス型コネクタ500を回転させてクリップ521の位置とスリット577の位置を一致させ、その状態でメス型コネクタ500をオス型コネクタ570から引き抜けば、容易に接続を解除することができる。
【0076】
係合突起575は、前記台座571の管状部572が設けられた面に沿って設けられていることが望ましい。この構成によれば、オス型コネクタ570及びメス型コネクタ500のクリップ521の上下方向の長さを小さく設定することが可能となり、部材をコンパクトに形成することができる。
【0077】
また、メス型コネクタ500に設けられたクリップ521および係合爪522は一対のものとして説明してきたが、その数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0078】
本実施の形態には、実施の形態1および/または実施の形態2の説明をそのまま、または自明な変更を適宜追加して適応することができる。
【0079】
上記の実施の形態1ないし5においては、図2に示したようにオス型コネクタのキャップ部内面に設けられた雌ネジと医療用容器のポートに形成された雄ネジが螺合することでオス型コネクタが医療用容器に接続される例に従って説明をしてきたが、医療用容器のポートに雌ネジが設けられ、オス型コネクタ側に雄ネジが設けられた構成でもよい。また、図18に示すように、オス型コネクタの台座および管状部等の構成が医療用容器のポートに一体化されて形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の利用分野は特に制限はないが、例えば経腸栄養療法や静脈栄養療法を行なう際に使用される医療用容器に使用することができる。そのほか、医療用以外の食品などの液状物を取り扱い容器やチューブなどにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。
【図2】医療用容器及びオス型コネクタの概略構成を示した図である。
【図3】オス型コネクタに本発明の実施の形態1に係るメス型コネクタを接続する方法を示した断面図であり、(A)は接続前の状態、(B)は接続後の状態をそれぞれ示す。また、(C)はメス型コネクタの上端側の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るメス型コネクタのほかの実施例の概略構成を示した図であり、(A)はその側面図、(B)はその上面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るメス型コネクタの概略構成を示した図であり、(A)はその断面図、(B)はその上面図である。
【図6】オス型コネクタに本発明の実施の形態2に係るメス型コネクタを接続する方法を示した断面図であり、(A)は接続前の状態、(B)は接続後の状態をそれぞれ示す。
【図7】(A)は本発明の実施の形態3に係るオス型コネクタの側面図、(B)はその下面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。
【図9】(A)は本発明の実施の形態3に係るメス型コネクタの上面図、(B)はその正面図、(C)はその側面図である。
【図10】(A)は図9(B)のB−B’線での矢視断面図、(B)は図9(C)のC−C’線での矢視断面図である。
【図11】(A)は本発明の実施の形態4に係るオス型コネクタの側面図、(B)はその下面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。
【図13】(A)は本発明の実施の形態4に係るメス型コネクタの側面図、(B)はその断面図である。
【図14】(A)は本発明の実施の形態5に係るオス型コネクタの側面図、(B)はその下面図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係るメス型コネクタの概略構成を示した断面図である。
【図16】(A)は本発明の実施の形態5に係るメス型コネクタの上面図、(B)はその側面図、(C)は図16(A)のA−A’線での矢視断面図である。
【図17】(A)は本発明の実施の形態5に係るオス型コネクタの他の実施例を示した側面図、(B)はその下面図である。
【図18】医療用容器及びオス型コネクタのほかの実施例の概略構成を示した図である。
【図19】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図20】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図21】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図22】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図23】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図24】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図25】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図26】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図27】従来のオス型コネクタの管状部の一例を示した側面図である。
【図28】オス型コネクタに従来の汎用型のメス型コネクタを接続する方法の一例を示した断面図であり、(A)は接続前の状態、(B)は接続中の状態、(C)は接続後の状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0082】
100 メス型コネクタ
110 軟質部材
111 開口
112 挿入部
113 環状の突起
114 段差
115 フランジ
120 硬質部材
122 スリット
130 中心軸
140 チューブ
150 把持部
160 メス型コネクタがオス型コネクタに向かう方向の力
170 オス型コネクタ
172 管状部
173 貫通孔
180 キャップ部
200 メス型コネクタ
210 軟質部材
211 開口
212 挿入部
220 硬質部材
230 中心軸
240 チューブ
250 把持部
260 メス型コネクタがオス型コネクタに向かう方向の力
300 メス型コネクタ
310 軟質部材
311 開口
312 挿入部
320 硬質部材
321 鍔部
322 円弧状壁
323 渡り部
324 通過領域
325 係合領域
326 摺動領域
327 係合壁
328 貫通孔
330 中心軸
350 把持部
370 オス型コネクタ
371 台座
372 管状部
373 貫通孔
374 環状領域
375 係合爪
400 メス型コネクタ
410 軟質部材
411 開口
412 挿入部
420 硬質部材
421 鍔部
422 雌ネジ
430 中心軸
450 把持部
470 オス型コネクタ
471 台座
472 管状部
473 環状領域
474 雄ネジ
475 貫通孔
500 メス型コネクタ
510 軟質部材
511 開口
512 挿入部
520 硬質部材
521 クリップ
522 係合爪
523 傾斜部
530 中心軸
550 把持部
570 オス型コネクタ
571 台座
572 管状部
573 環状領域
574 貫通孔
575 係合突起
576 アンダーカット部
577 スリット
600 医療用容器
620 パウチ
621 シール領域
622 孔
623 ファスナー
630 オス型コネクタ(ポート)
631 管状部
901 オス型コネクタ
902 ゴム管
903 チューブ
910 ゴム管がオス型コネクタに向かう力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと接続可能である、軟質部材と硬質部材からなるメス型コネクタであって、
軟質部材は可撓性及び弾性を有し、かつ一端にオス型コネクタ管状部が挿入される開口を有する筒状体であって、
硬質部材は軟質部材よりも高い剛性を有し、軟質部材の外側周囲に円筒状に軟質部材と一体となるよう積層されて把持部を形成してなることを特徴とするメス型コネクタ。
【請求項2】
前記硬質部材の外側にさらに軟質部材が積層され、硬質部材が軟質部材の内部に埋め込まれた形態となっていることを特徴とする、請求項1に記載のメス型コネクタ。
【請求項3】
前記硬質部材は、前記オス型コネクタと係合可能な係合部を備える、請求項1または2のいずれかに記載のメス型コネクタ。
【請求項4】
前記硬質部材は、前記メス型コネクタのオス型コネクタ側接続側軟質部材端部よりも突出した鍔部を備え、前記係合形状は前記鍔部に設けられている、請求項3に記載のメス型コネクタ。
【請求項5】
液状物が流出する管状部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタに接続されるメス型コネクタとからなる接続具であって、該メス型コネクタが請求項1ないし4のいずれかに記載のメス型コネクタであることを特徴とする接続具。
【請求項6】
前記オス型コネクタと前記メス型コネクタそれぞれに、相互が係合しあう係合部が設けられている請求項5に記載の接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−126250(P2010−126250A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306788(P2008−306788)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】