説明

メソポーラス触媒を用いた芳香族化合物及びオレフィンの水素化

不飽和成分を含有する炭化水素原料を水素化する方法であって、メソ細孔及びミクロ細孔を基準として少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔を有し、且つ少なくとも300m/gのBET表面積と、少なくとも0.3cm/gの細孔容積とを有する非晶質メソポーラス無機酸化物担体上に、少なくとも1種の第VIII族金属を含む触媒を準備する工程と、前記触媒の存在下、水素化反応条件下で前記炭化水素原料を水素と接触させる工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本願に援用される2004年7月8日出願の同時係属米国特許出願第10/886993号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、好ましくは炭化水素留出物であるが、それに限定されない炭化水素流中の芳香族化合物及びオレフィンを水素化するための方法、及び触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な炭化水素留出物(例えば、ジェット燃料、ディーゼル燃料、潤滑油ベースストック等)から芳香族化合物を除去することは、単環式及び多環式芳香族化合物が多様に混合し得ることから困難である。殆どの精製装置において、脱芳香族化には多大な資本投下が必要とされるが、それに伴う利点も得られる。留出物の芳香族化合物含有量は、ディーゼル燃料の主な品質基準であるセタン価と密接に関連している。セタン価は、パラフィン率、炭化水素分子の飽和率、及び炭化水素分子が直鎖分子であるか又は環に結合したアルキル側鎖を有するか、に高く依存する。アルキル側鎖を殆ど又は全く有さない芳香族分子が殆どである留出物流は、一般にセタン品質が低い。一方、高いパラフィン率を有する留出物流は、一般にセタン品質が高い。ジェット燃料の品質もまた、芳香族化合物/煙点の関係から、芳香族化合物の含有量がより低いか否かに依存している。殆どのジェット燃料は、規格により、芳香族化合物含有量が最大25体積パーセントに制限されている。
【0004】
パラフィン率のより高い留出物に対する要求が増大しているのは、規制環境の影響でもある。留出物の芳香族化合物及び多環式芳香族化合物の含有量の実質的な低減を義務付ける政府法案により、脱芳香族化は、ますます重要となっている。現在の米国環境保護庁によるディーゼル燃料の規格は、ディーゼル燃料の芳香族化合物含有量を、最大35体積パーセントに制限している。カリフォルニアのディーゼル燃料規格は、最大10体積パーセントである。
【0005】
世界の多くの地域において、「ディーゼライゼーション」と称される現象が起きている。これは、燃料に対する要求が一般的に増加するのに伴って、ディーゼル燃料/ガソリン燃料の要求比が上方シフトすることを表す。世界におけるディーゼル燃料に対する要求は、一部には経済成長に応じて、地球温暖化に対抗する取り組みによって、さらには燃料効率に対する一般の要求から、2000年〜2010年の間に2倍になると予想される。これらの要求を満たすアプローチの1つは、より品質が低い家庭暖房用オイルの使用を、自動車用ディーゼル燃料に移行することであろう。それにより、脱硫及び脱芳香族化の必要性が増大すると考えられる。
【0006】
しかしながら、留出物のパラフィン率がより高いと、例えばコバルト、モリブデン、ニッケル、及びタングステンのような従来の水素化金属触媒による反応条件がより厳しいものとなる。近年、担体又はゼオライト上で混合貴金属を使用することにより、高い活性を有する脱芳香族化触媒が得られることが証明されている。
【0007】
Kukes等に付与された米国特許第5151172号には、ゼオライト(すなわち、モルデナイト)担体上のパラジウム及び白金の組み合わせを含む触媒により、留出物原料を水素化する方法が開示されている。
【0008】
Kukes等に付与された米国特許第5147526号には、約1.5質量%〜約8.0質量%のナトリウムを含むY型ゼオライト担体上のパラジウム及び白金の組み合わせを含む触媒により、留出物原料を水素化する方法が開示されている。
【0009】
Kukes等に付与された米国特許第5346612号には、β型ゼオライト担体上のパラジウム及び白金の組み合わせを使用した方法が開示されている。
【0010】
Apelian等に付与された米国特許第5451312号には、メソポーラスな結晶担体であるMCM−41上の白金及びパラジウムが開示されている。メソポーラス担体を使用することは、細孔システムが著しく大きいことから、物質移動制限が抑制されるという利点がある。しかしながら、メソポーラス担体はゼオライト系と比較して分子アクセスが優れているにも関わらず、結晶性のメソポーラス物質は、細孔が相互に繋がっていないため制限がある。さらに、担体の結晶構造を壊すことなく結晶性のメソポーラス担体に使用することができる酸化物のバリエーションは非常に限られている。
【特許文献1】米国特許第5151172号
【特許文献2】米国特許第5147526号
【特許文献3】米国特許第5346612号
【特許文献4】米国特許第5451312号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、互いに高度に繋がったメソ細孔を有し、且つ細孔径を幅広い範囲から選択することができ、構造中の無機酸化物成分をより柔軟に選択することができる触媒システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願では、不飽和成分を含有する炭化水素原料を水素化する方法を提供する。この方法は、メソ細孔及びミクロ細孔を基準として少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔を有し、且つ少なくとも300m/gのBET表面積と、少なくとも0.3cm/gの細孔容積とを有する非晶質メソポーラス無機酸化物担体上に、少なくとも1種の第VIII族金属を含む触媒を準備する工程と、前記触媒の存在下、水素化反応条件下で前記炭化水素原料を水素と接触させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、互いに高度に繋がったメソ細孔を有し、且つ細孔径を幅広い範囲から調節することができ、構造中の無機酸化物成分をより柔軟に選択することができるメソポーラス触媒システムを提供する。さらに、本発明のシステムは、メソポーラスマトリクス内にゼオライトを分散させることが可能であり、それにより小結晶ゼオライトへのアクセスが著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、触媒担体上に1種以上の貴金属を含む、原料中の不飽和成分を減少させる触媒を用いて、芳香族化合物及び/又はオレフィンを含有する留出物炭化水素原料を飽和(水素化)する方法を提供する。
【0015】
他の石油流も本発明の利益を享受し得るが、本発明で処理される好ましい留出物炭化水素原料としては、約150°F(66℃)〜約700°F(371℃)、好ましくは300°F(149℃)〜約700°F(371℃)、より好ましくは約350°F(177℃)〜約700°F(371℃)の範囲内で沸騰する任意の精製流が挙げられる。
【0016】
本発明の特徴は、芳香族化合物の含有量が20質量%、50質量%、70質量%、さらには80質量%を超える炭化水素原料を処理する能力があることである。
【0017】
留出物炭化水素原料には、高硫黄及び低硫黄原油に由来する高硫黄及び低硫黄バージン留出物、コーク留出物、接触分解性ライト及びヘビー触媒サイクルオイル、ビスブレーカー留出物、並びに水素添加分解装置、FCC又はTCCフィード水素化処理機、及び残油水素化処理設備からの留出物沸点範囲の生成物が含まれる。一般に、ライト及びヘビー触媒サイクルオイルは、芳香族化合物が80質量%と高く(FIA)、最も芳香族性の高い原料成分である。サイクルオイルに含まれる芳香族化合物の大部分は単環式芳香族化合物及び二環式芳香族化合物として存在し、一部分が三環式芳香族化合物として存在する。
【0018】
例えば高硫黄及び低硫黄バージン留出物のようなバージンストックは、芳香族化合物の含有量が20質量%とより低い(FIA)。一般に、混合した水素化設備原料における芳香族化合物の含有量は、約5質量%〜約80質量%、より一般的には約10質量%〜約70質量%、最も一般的には約20質量%〜約60質量%の範囲に亘るであろう。、触媒工程は、多くの場合、生成物の芳香族化合物濃度を十分に低い空間速度で平衡化するように進行するため、留出物水素化設備においては、最も芳香性が高いものから順に処理することがより有利である。
【0019】
留出物炭化水素原料の硫黄濃度は、一般に、高硫黄及び低硫黄原油の混合物、精製所の原油容量のバレル当たりの水素化処理能力、及び留出物原料成分の代替的処理、の関数である。より硫黄分の高い留出物原料成分は、一般にコーク留出物、ビスブレーカー留出物、及び触媒サイクルオイルである。これらの留出物原料成分は、総窒素濃度が2000ppmという高濃度になることもあるが、一般には約5ppm〜約900ppmである。
【0020】
本発明にて特に好ましい原料は、沸点が150〜400℃の範囲にある、ジェット燃料及びディーゼル燃料中の炭化水素留分である。原料中に含まれる典型的な芳香族化合物としては、単環式芳香族化合物、二環式芳香族化合物、及び三環式芳香族化合物が挙げられ、特に、通常約343℃未満で沸騰するものが挙げられる。原料中に含まれる芳香族化合物の例としては、例えばアルキルベンゼン、インダン/テトラリン、及びジナフテンベンゼンのような単環式芳香族化合物、例えばナフタレン、ビフェニル、及びフルオレンのような二環式芳香族化合物、並びに、例えばフェナントレン及びナフフェナントレンのような三環式芳香族化合物が挙げられる。相当の割合の多環式芳香族化合物を含む原料が好ましいが、(すなわち、そのような原料中の全芳香族化合物の100質量パーセントまでが多環式芳香族化合物からなり得る)、通常、本発明で処理される原料は、相当の割合の単環式芳香族化合物を含み、多環式芳香族化合物の割合は比較的少ない。原料の全芳香族化合物中の単環式芳香族化合物の含有率は、通常、50質量パーセントを超える。本願において、典型的な炭化水素留出物又はその混合物は、少なくとも約10体積パーセントの芳香族炭化水素化合物を含む。本発明にて最も好ましい原料は、少なくとも10体積パーセント、多くの場合少なくとも20体積パーセント、通常30体積パーセントを超え、一般に約10〜約80体積パーセント、多くの場合約20〜50体積パーセントの範囲に亘る芳香族含有化合物を含むディーゼル燃料原料である。本発明の方法の最大の利益は、同素環式芳香族化合物が実質的に分解することなく、原料中の高濃度の芳香族化合物が飽和されるときに達成される。
【0021】
他の好ましい原料には、潤滑剤粘度の炭化水素が含まれる。鉱油潤滑剤又は合成炭化水素潤滑剤を用いることにより、処理を改善し得る。合成炭化水素潤滑剤の例としては、ポリα−オレフィン(“PAO”)材料、すなわち、フリーデル−クラフツ型触媒を使用した従来タイプのPAO、及び還元された第VIB族(Cr、Mo、W)金属酸化物触媒を用いて製造されたHVI−PAO材料の双方が挙げられる。
【0022】
鉱油潤滑剤は、一般に少なくとも650°F(343℃)の最低沸点を有するものとして特徴付けられる。また、これらは中性であり得、すなわち、95%の沸点が1050°F(566℃)以下の留出物、ストックであるが、残留潤滑油ストック、例えばブライトストックは、同一の触媒的方法によって処理され得る。この種の鉱油ストックは、歴史的には、適切な組成の原油を大気圧及び真空で蒸留し、次いで例えばフェノール、フルフラル、又はN、N−ジメチルホルムアミド(「DMF」)のような溶媒を使用した溶媒抽出により望ましくない芳香族成分を除去することを含む、従来の精製方法により製造されている。所望の製品流動点を得るための脱蝋は、溶媒脱蝋又は触媒的脱蝋技術(又はその組み合わせ)により行うことができる。触媒的脱蝋工程中に生成され得る潤滑油沸点範囲のオレフィンを飽和させるために、本発明に従った水素化処理は、任意の触媒的脱蝋処理の後に行われることが特に好ましい。
【0023】
鉱油ストックは、触媒的水素化分解によって製造することもできる。ここでは、未変換の高沸点炭化水素流が、蝋状の潤滑油ベースとして作用する。潤滑油ストックは、水素化分解工程に続いて、脱蝋化及び水素化精製されて流動性が調整され、且つオレフィンと場合によっては芳香族化合物とが低減される。通常「潤滑油水素化分解」と称されるこの方法は、多くの場合、原料が従来の潤滑油処理方法では不十分であるか、又は高VI潤滑油製品が要求される場合に使用される。
【0024】
本方法はまた、合成潤滑油、特にHVI−PAO型材料を含むポリα−オレフィン(“PAO”)の水素化処理に適用可能である。このようなタイプの潤滑油は、従来のように、例えば水、低級アルカノール、又はエステルの存在下で、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素複合体のようなフリーデル−クラフツ型触媒を使用したポリマー化又はオリゴマー化により製造することができる。HVI−PAO型オリゴマーは、米国特許第4827064号又は米国特許第4827073号に記載されている方法により、還元された第VIB族金属酸化物触媒、通常、シリカ上のクロムを用いて製造することができる。HVI−PAO材料は、米国特許第5012020号に開示されているように、オリゴマー化温度をより低温にして製造したより高分子量のものを含む。HVI−PAO材料は、オリゴマー化工程中に特殊な還元金属酸化物触媒を使用することに起因して、分岐比が0.19未満であるという特徴がある。
【0025】
潤滑剤材料は、本発明のメソポーラス材料及び任意でバインダーを伴う水素化用金属成分を含む触媒の存在下で水素化処理される。
【0026】
水素化反応は、約100〜約700°F、好ましくは150〜500°Fの範囲内の温度にて、従来の条件下で行われる。水素は超大気圧条件下が好ましく、水素分圧は約17238kPa(約2500psi)まで変動し得るが、通常は約690〜10343kPa(100〜1500psi)の範囲内である。水素循環比は、一般に、完全な飽和のために化学量論的に必要とされる量を超えて、200%〜5000%の範囲の化学量論的過剰量とされる。水素の純度を最大にするためには、ワンススルー循環が好ましい。空間速度は、一般に0.1〜10LHSV、通常1〜3LHSVの範囲内にある。水素化反応の生成物は、水素化処理に矛盾しない程度に低い不飽和度を有する。殆どの場合、臭素価が5を超える炭化水素潤滑剤原料は、本発明の方法に従って処理される結果、臭素価が3未満、多くの場合は1未満である生成物となる。
【0027】
特定の水素化処理設備が二段階処理の場合、第一段階目では脱硫及び脱窒素を行い、第二段階目では脱芳香族化を行うように構成されている場合が多い。これらの操作において、脱芳香族化段階に入る原料は、窒素及び硫黄含有量が実質的により低く、水素化処理設備に入る原料と比較して、芳香族化合物の含有量が低い可能性がある。
【0028】
本発明の水素化方法は、一般に、留出物原料予熱ステップから開始される。原料は、炉に入る前に、原料/流出液熱交換器内において加熱され、最終的に標的とする反応ゾーンの入口温度となる。原料は、予熱前、予熱中、及び/又は予熱後、水素流と接触され得る。水素含有流は、一段階水素化方法の水素化反応ゾーンに加えてもよく、二段階水素化方法の第一又は第二段階に加えてもよい。
【0029】
水素流は、純粋な水素であっても、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、水、硫黄化合物、及び同様物のような希釈剤との混合物であってもよい。水素流の純度は、最良の結果を得るためには、少なくとも水素が約50体積%、好ましくは少なくとも約65体積%、さらに好ましくは少なくとも約75体積%である必要がある。水素は、水素プラント、触媒改質設備、又は他の水素生成工程により供給され得る。
【0030】
反応ゾーンは、同一又は異なる触媒を含む、1つ又は2つ以上の固定層反応器から構成され得る。二段階方法では、脱硫及び脱窒素用の少なくとも1つの固定層反応器と、脱芳香族化用の少なくとも1つの固定層反応器とを有するよう設計することができる。固定層反応器は、多くの場合、多数の触媒層を有する。任意で、ある固定層の流出液は、続く固定層に導かれる前に冷却され得る。1つの固定層反応器内の多数の触媒層は、同一又は異なる触媒を含んでいてもよい。多層の固定層反応器内の触媒が異なる場合、最初の層(1つ又は複数)は、通常、脱硫及び脱窒素用であり、続く層は、脱芳香族化用である。多反応器システムが使用される場合、HS及びNHを除去するために、反応器間の気体は熱「揮散」を受ける。これらの第一段階における生成ガスは、反応抑制の原因となり、より重大には脱芳香族化触媒上の貴金属(1種又は複数種)を汚染してしまう。
【0031】
水素化反応は通常、発熱性であるため、水素注入を介した中間冷却を行ってもよい。中間熱移動を含む他の方法を使用してもよい。二段階方法は、反応器シェルごとに発熱の温度を低下させることができ、反応器全体の温度をより適切に制御することができる。このことは、安全性、並びに最適な触媒効率及び寿命に重要である。
【0032】
反応ゾーンの流出液は、一般に冷却され、分離装置に導かれて水素が除去される。その一例としては、アミン洗浄機が挙げられる。HSが硫黄回収ユニットに送られ、多くの場合、精製副生物としてNHが回収される。回収された水素の一部は、工程にリサイクルされ、一部は、他の負担の少ない水素化ユニット(例えば、ナフサ予備処理装置)に送られるか、又は外部システム、例えばプラント若しくは精製燃料に排出される。水素の排出率は、多くの場合、最低限の水素純度を維持し、硫化水素を除去するように制御される。リサイクルされた水素は、一般に圧縮され、「補給」水素が補充されて、さらなる水素化のために工程内に再注入される。低純度水素の好ましい廃棄戦略の1つは、水素プラントループに戻すことであり、ここで吸収装置により水素ユニットの上流で水素の多くが回収される。
【0033】
次いで、分離装置の液体流出物は、洗浄装置内で処理される。ここでは、軽質炭化水素が除去されて、より適切な炭化水素プールへと導かれる。次いで、洗浄装置の液体流出物製品は、一般に配合設備に搬送されて、完成した留出物製品が生産される。
【0034】
本発明の水素化処理ステップにおける操作条件は、最良の結果を得るために、約300°F(150℃)〜約750°F(400℃)、好ましくは約500°F(260℃)〜約650°F(343℃)、最も好ましくは約525°F(275℃)〜約625°F(330℃)の反応ゾーンの平均温度を含む。これらの範囲を下回る反応温度では、水素化の効率が低下する。温度が高すぎると、芳香族化合物の還元の熱力学的な限界に到達し、また、非選択的水素化分解、触媒の不活性化、及びエネルギーコストの上昇が生じ得る。
【0035】
本発明の方法は、最良の結果を得るために、一般に約1379kPa〜約13790kPa(約200psi〜約2000psi)、より好ましくは約3448kPa〜約10343kPa(約500psi〜約1500psi)、最も好ましくは約4137kPa〜約8274kPa(約600psi〜約1200psi)の範囲の反応ゾーンの水素分圧にて作動する。水素循環比は、最良の結果を得るために、一般に約500SCF/Bbl〜約20000SCF/Bbl、好ましくは約2000SCF/Bbl〜約15000SCF/Bbl、最も好ましくは約3000SCF/Bbl〜約13000SCF/Bblの範囲に亘る。これらを下回る反応圧力及び水素循環比では、触媒不活性化率の上昇、脱硫、脱窒素、及び脱芳香族化の効率の低下が生じ得る。反応圧力が高すぎると、エネルギー及び装置コストが増大し、差益が小さくなる。
【0036】
本発明の方法は、最良の結果を得るために、一般に約0.2時間−1〜約10.0時間−1、好ましくは約0.5時間−1〜約3.0時間−1、最も好ましくは約1.0時間−1〜約2.0時間−1の液空間速度で作動する。空間速度が高すぎると、水素化が全体的に低下し得る。
【0037】
TUD−1と表記される触媒担体は、三次元非晶質、メソポーラス無機酸化物材料であり、有機酸化物材料のミクロ細孔及びメソ細孔を基準として、少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔(すなわち、3体積パーセント未満のミクロ細孔)を含み、一般には少なくとも98体積パーセントのメソ細孔を含む。好ましい多孔質触媒担体の製造方法は、米国特許第6358486号及び2004年1月26日出願の米国特許出願第10/764797号(「Method For Making Mesoporousor Combined Mesoporous and Microporous Inorganic Oxides」)に記載されており、これら両方は参照により本願に援用される。Nポロシメーターで測定した好ましい触媒の平均メソ細孔径は、約2nm〜約25nmの範囲に亘る。一般に、メソポーラス無機酸化物は、(1)水中の無機酸化物の前駆体、及び(2)有機孔形成剤の混合物を、所定の温度で、所定の時間加熱して製造される。
【0038】
出発材料は、一般にアモルファス材料であり、例えば酸化ケイ素又は酸化アルミニウムのような1種又は2種以上の無機酸化物とすることができ、さらなる金属酸化物を有しても有さなくてもよい。ケイ素原子は、一部が、例えばアルミニウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ガリウム、マンガン、亜鉛、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、及び鉄、並びに同様物のような金属原子で置換され得る。無機酸化物は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。さらなる金属は、任意に、メソ細孔を含む構造を製造する工程を開始する前に材料中に組み込んでもよい。また、材料の準備後、システム中のカチオンは、任意に、例えばアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等)のイオン等、他のイオンで置換されてもよい。アルカリカチオンは、TUD−1、特にAl−TUD−1又はAl−Si−TUD−1形態の場合、その内部に残留する任意の酸性度を判定し得る。残留酸性は望ましくない分解反応の原因となり、それにより液体生成物の総生産量が低下する。
【0039】
メソポーラス触媒担体は、非結晶材料である(すなわち、現在利用可能なX線回折技術にて結晶性が全く観察されない)。メソ細孔のd間隔は、約3nm〜約30nmが好ましい。BET(N)で測定した触媒担体の表面積は、少なくとも約300m/gであり、好ましくは約400m/g〜約1200m/gの範囲に亘る。触媒の細孔容積は、少なくとも約0.3cm/gであり、好ましくは、約0.4cm/g〜約2.2cm/gの範囲に亘る。
【0040】
触媒担体であるTUD−1を製造する多数の方法が存在するが、これらの方法は、出発材料の無機酸化物に応じて、2つのタイプに分類され得る:(1)有機物含有前駆体、及び(2)無機前駆体。前者の場合、無機酸化物前駆体は、ケイ素、アルミニウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ガリウム、マンガン、亜鉛、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、及び鉄から選択された所望の元素を有するアルコキシド、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)のような有機シリケート、又は例えばアルミニウムイソプロポキシドのような酸化アルミニウムの有機源が好ましいであろう。TEOS及びアルミニウムイソプロポキシドは、周知の供給者より商業的に入手可能である。
【0041】
溶液のpHは、7.0を超えて保持されることが好ましい。場合により、水溶液は、例えば上記の金属イオンのような他の金属イオンを含んでもよい。攪拌後、水素結合によってシリカ(又は他の無機酸化物)種に結合する有機メソ細孔形成剤を、水溶液中に加えて混合する。有機孔形成剤は、例えばグリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、及び同様物のようなグリコール(2つ又は3つ以上のヒドロキシ基を含む化合物)、又はトリエタノールアミン、スルホラン、テトラエチレンペンタミン、及びジエチルグリコールジベンゾエートからなる群から選ばれるもの(1種又は複数)が好ましい。有機孔形成剤は、水性溶液中で分離相を形成することがないように疎水性が低い必要があり、水性無機酸化物溶液に撹拌しながら滴加することによって添加することが好ましい。時間が経過した後(例えば、約1〜2時間)、混合物は高粘度ゲルを形成する。この期間、混合物を撹拌して、成分の混合を促進することが好ましい。混合物は、アルカノールを含むことが好ましい。このアルカノールは、混合物に添加することもでき、及び/又は、無機酸化物前駆体の分解によってin−situで形成され得る。例えば、TEOSは、加熱されるとエタノールを生成する。プロパノールは、アルミニウムイソプロポキシドの分解により生成され得る。
【0042】
同じゲルを得る合成経路の第2のタイプは、出発物質として無機前駆体を使用するものである。好ましい無機前駆体は、ケイ素、アルミニウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ガリウム、マンガン、亜鉛、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、及び鉄から選択される所望の元素を有する酸化物、及び/又は水酸化物を含む。前駆体は、最初に1種又は2種以上の孔形成剤と共に混合され、無機前駆体が有機含有複合体に転換するに十分であるよう所定時間(例、2〜10時間)、120〜250℃に加熱される。次いで、複合体を水と共に混合して加水分解し、均質の高粘度ゲルを得る。
【0043】
次いで、上記の2種の方法により得られたゲルを、約5℃〜約45℃、好ましくは室温に置き(エージング)、無機酸化物源の加水分解及びポリ縮合を完了させる。エージングは、約48時間まで、一般には約2時間〜30時間、より好ましくは約10時間〜20時間行うことが好ましい。エージングステップの後、ゲルを空気中で、ゲルの水分を除去するに十分な時間(例えば、約6〜約24時間)、約90℃〜100℃で加熱する。メソ細孔の形成を補助する有機孔形成剤は、乾燥段階中、ゲル中に残留することが好ましい。したがって、好ましい有機孔形成剤は、少なくとも約150℃の沸点を有する。
【0044】
有機孔形成剤を含有する乾燥した材料を、メソ細孔が相当数形成される温度で加熱する。この孔形成ステップは、水の沸点を超え、有機孔形成剤の沸点までの温度にて実施される。一般に、メソ細孔形成は、約100℃〜約250℃、好ましくは約150℃〜約200℃の温度で実施される。孔形成ステップは、任意にて、密封容器内にて自生圧力下で熱水的に実施してもよい。最終生成物のメソ細孔の寸法及び容積は、熱水的ステップの継続時間及び温度に影響される。一般に、処理温度及び継続時間が増大すると、最終生成物のメソ細孔容積の割合が増大する。
【0045】
孔形成ステップ後、触媒材料を約300℃〜約1000℃、好ましくは約400℃〜約700℃、より好ましくは約500℃〜約600℃の温度で焼成し、材料を焼成するに十分な期間、焼成温度にて維持する。焼成ステップの継続時間は、焼成温度に一部依存するが、通常約2時間〜約40時間、好ましくは5時間〜15時間である。
【0046】
熱スポットを防止するために、温度は徐々に上昇させる必要がある。好ましくは、触媒材料の温度は、約0.1℃/分〜約25℃/分、より好ましくは約0.5℃/分〜約15℃/分、最も好ましくは約1℃/分〜約5℃/分の速度で焼成温度まで上昇する必要がある。
【0047】
焼成中、触媒材料の構造が最終的に形成される一方で、有機分子が材料から排除され、分解される。
【0048】
有機孔形成剤を除去するための焼成方法は、有機溶媒、例えばエタノールを使用した抽出で代替することができる。この場合、孔形成剤は、回収されて再利用され得る。
【0049】
同様に、本発明の触媒粉末は、シリカ及び/又はアルミナのようなバインダーと共に混合された後、射出又は他の適切な方法によって所望の形状(例えば、ペレット、環等)に成形されてもよい。
【0050】
触媒は、元素周期律表の第VIII族から選択される少なくとも1種の金属成分を含む。これには、鉄、コバルト、ニッケル、及び貴金属、すなわち白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、及びイリジウムが含まれる。特に好ましい金属としては、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、及びニッケルが挙げられる。第VIII族金属の量は、触媒の全重量を基準として、少なくとも約0.1質量%である。
【0051】
第VIII族金属は、適切な方法により、無機酸化物中に組み込むことができる。この方法としては、例えばイオン交換や、可溶な、分解可能な第VIII族金属化合物の溶液を無機酸化物に含浸した後、含浸された無機酸化物を洗浄、乾燥、及び例えば焼成のような工程にかけて第VIII金属化合物を分解して、無機酸化物の細孔内に遊離第VIII族金属を有する活性化触媒を生成することが挙げられる。適切な第VIII族金属化合物には、例えば硝酸塩、塩化物、アンモニウム複合体、及び同様物のような塩が含まれる。
【0052】
第VIII族金属を含浸した無機酸化物触媒は、任意にて水で洗浄されて、一部のアニオンが除去される。水及び/又は他の揮発性化合物を除去するための触媒の乾燥は、触媒を約50℃〜約190℃の乾燥温度に加熱することで実施され得る。触媒を活性化する焼成は、約150℃〜約600℃の温度で、十分な時間実施され得る。一般に、焼成は、少なくとも部分的には焼成温度に依存するが、2〜40時間実施され得る。
【0053】
任意にて、1種又は2種以上のゼオライトを触媒に組み込んで、メソポーラスマトリクス全体に分散させてもよい。ゼオライトは、メソポーラス構造の形成に先だって、無機酸化物前駆体−水溶液に添加することが好ましい。適切なゼオライトは、例えば、FAU、EMT、BEA、VPI、AET、及び/又はCLOを含む。ゼオライトは、触媒の全重量を基準として、0.05質量%〜50質量%の量で存在することが好ましい。
【0054】
他の好ましい水素化のタイプとして、炭化水素を含有する原料中の不純物の選択的除去が挙げられる。より詳細には、1つの二重結合を有する化合物に対する、三重結合を有する化合物、及び/又は2つ以上の二重結合を有する化合物の選択的水素化、並びに、2つの二重結合が1つ以上の単結合で分離されている化合物に対する、2つの隣接した二重結合を有する化合物の選択的水素化工程に関連する。
【0055】
そのような反応には、少なくとも1種のモノオレフィンを含有する原料中のアセチレン及び/又はジエン不純物の選択的水素化が含まれるが、これに限定されるものではない。さらなる例は、エチレン流中のアセチレンの選択的水素化、プロピレン流中のメチルアセチレン及びプロパジエンの選択的水素化、ブテン流中のブタジエンの選択的水素化、及び1,3−ブタジエンを含有する原料中のビニル及びエチルアセチレン、並びに1,2−ブタジエンの選択的水素化を含む。
【0056】
石油化学工業においては、生成物流は、1種又は2種以上のモノオレフィン、及び不純物としてアセチレン及び/又はジエン化合物を含む。アセチレン不純物には、アセチレン、メチルアセチレン、及びジアセチレンが含まれる。ジエン不純物には、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、及びプロパジエンが含まれる。
【0057】
このような生成物流は、通常、選択的水素化を受け、所望のモノオレフィンを水素化することなく、アセチレン及び/又はジエン不純物が最小化/除去される。この方法は、触媒を使用した、選択的触媒水素化により実施され得る。
【0058】
この触媒は、本発明の多孔性材料上に支持された金属、好ましくは貴金属、及び任意でバインダーを含む。この触媒は、促進剤として使用されるさらなる金属を含んでもよい。
【0059】
アセチレン及び/又はジエン不純物の選択的水素化は、上記に記載した触媒の存在下、一段階水素化により実施される。原料は液体として導入され、水素化中に一部が、又は完全に気化される。原料は選択的に水素され、水素ガス流は、約0℃〜50℃の温度で反応器内に導入される。反応器は約1379kPa〜約3448kPa(200psi〜500psi)の範囲の圧力で作動される。原料中のアセチレン及び/又はジエン不純物のレベル、入口温度、及び許容可能な出口温度に応じて、生成物の一部を反応ゾーンにリサイクルする必要があり得る。
【0060】
反応器内に導入される水素の量は、原料中の不純物の量に基づく。水素は、例えばメタンのような適切な希釈剤と共に、反応器内に導入され得る。
【0061】
適切な液空間速度を使用する必要があるが、これは当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0062】
以下の実施例に、本発明の特徴を説明する。
【0063】
<実施例1>
この実施例では、シリカ源としてケイ素アルコキシドを使用した、Si−TUD−1の合成方法を説明する。テトラエチルオルトシリケート(98%、ACROS社製)736質量部をトリエタノールアミン(TEA)(97%、ACROS社製)540部と共に、撹拌しながら混合した。30分後、上記混合物に水590部を、撹拌しながらゆっくり加えた。さらに30分後、テトラエチル水酸化アンモニウム(TEOH)(35重量%)145部を上記混合物に加えて、均質なゲルを得た。ゲルを室温に24時間置いた。次に、ゲルを約98℃で18時間乾燥し、1℃/分の加熱速度で、空気中で600℃にて10時間焼成した。
【0064】
最終材料のX線回折(XRD)パターンは、メソポーラス構造を示す2°未満の強い2Θピークを示した。窒素吸収によるBET測定の結果、表面積は683m/g、平均細孔径は約4.0nm、総細孔容積は約0.7cm/gであった
【0065】
<実施例2>
この実施例では、シリカ源としてシリカゲルを使用した、Si−TUD−1の合成方法を説明する。最初に、シリカゲル24部、TEA76部、及びエチレングリコール(EG)62部を、凝縮器を装備した反応器内に入れた。反応器内の含有物を機械的攪拌装置でよく混合した後、混合物を撹拌しながら200〜210℃に加熱した。これにより、反応中に生成した水の殆どが、EGの一部と共に凝縮器頂部から除去された。一方で、EG及びTEAの殆どは反応混合物中に残留した。約8時間後、加熱を停止し、室温に冷却した後、淡茶色の糊状複合体混合物を回収した。
【0066】
次に、水100部を撹拌条件下で、上記で得られた複合体液体125部に加えた。1時間撹拌した後、混合物は高粘度ゲルを形成し、このゲルを室温で2日間置いた。
【0067】
次に、高粘度ゲルを98℃で23時間乾燥した後、オートクレーブ内に入れ、6時間かけて180℃に加熱した。最後に、1℃/分の加熱速度で、空気中にて600℃で10時間焼成した。
【0068】
最終材料のX線回折(XRD)パターンは、メソポーラス構造を示す2°未満に強い2Θピークを示した。窒素吸収によるBET測定の結果、表面積は556m/g、平均細孔径は約8.1nm、総細孔容積は約0.92cm/gであった。
【0069】
<実施例3>
この実施例では、Al−Si−TUD−1の合成を説明する。最初に、シリカゲル250部、TEA697部、及びエチレングリコール(EG)287部を、凝縮器を備えた反応器内に入れた。反応器内の含有物を機械的攪拌装置でよく混合した後、混合物を撹拌しながら200〜210℃に加熱した。これにより、反応中に生成した水の殆どが、EGの一部と共に凝縮器頂部から除去された。一方で、EG及びTEAの殆どは反応混合物中に残留した。約3時間後、反応器を100℃に冷却し、反応器に、水酸化アルミニウム237部、EG207g、及びTEA500gを含む別の混合物を加えた。混合物を再度、200〜210℃に加熱し、4時間後、加熱を停止した。混合物を室温に冷却した後、淡茶色の糊状複合体液体を回収した。
【0070】
次に、水760部及びテトラエチル水酸化アンモニウム350部を、撹拌条件下で、上記で得られた複合体液体に加えた。1時間撹拌した後、混合物は高粘度ゲルを形成し、このゲルを室温で1日間置いた。
【0071】
次に、高粘度ゲルを98℃で23時間乾燥した後、オートクレーブ内に入れ、16時間かけて180℃に加熱した。最後に、1℃/分の加熱速度で、空気中にて600℃で10時間焼成した。
【0072】
最終材料のX線回折(XRD)パターンは、メソポーラス構造を示す2°未満に強い2Θピークを示した。窒素吸収によるBET測定の結果、表面積は606m/g、平均細孔径は約6.0nm、総細孔容積は約0.78cm/gであった
【0073】
<実施例4>
この実施例では、incipient wetness法による0.90重量%イリジウム/Si−TUD−1の触媒の製造を説明する。塩化インジウム(IU)0.134部を、脱イオン水5.2部に溶解した。この溶液を、実施例1で得られたSi−TUD−1 8部に、混合しながら加えた。粉末を25℃で乾燥した。
【0074】
次いで、CO化学吸着を使用した分散測定のために、粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。CO化学吸着は、金属の75%分散を示し、Ir:COの化学量比1が推定される。
【0075】
<実施例5>
この実施例では、incipient wetness法による0.9重量%パラジウム及び0.3重量%白金/Si−TUD−1の製造を説明する。最初に、実施例3で得られたAl−Si−TUD−1を押し出した。次いで、1/16”押出品70部を、テトラアミン硝酸白金の水性溶液0.42部、テトラアミン硝酸パラジウム(5%Pd)の水性溶液12.5部、及び水43部で含浸した。含浸Al−Si−TUD−1を、90℃で2時間乾燥するに先だって、室温で6時間置いた。最後に、乾燥した材料を、加熱速度1℃/分で、空気中にて350℃で4時間焼成した。CO化学吸着を使用して貴金属分散を測定し、次いで粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。金属の51%の分散が測定され、Pt:COの化学量比1が推定される。
【0076】
<実施例6>
この実施例では、incipient wetness法による0.46重量%白金/Si−TUD−1の製造を説明する。テトラアミン硝酸白金(II)0.046部を、脱イオン水4.1部に溶解した。この溶液を、実施例1で得られたSi−TUD−1 5部に、混合しながら加えた。粉末を25℃で乾燥した。
【0077】
次いで、CO化学吸着を使用した分散測定のために、粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。サンプルの72%の分散が測定され、Pt:COの化学量比1が推定される。
【0078】
<実施例7>
実施例1で得られたSi−TUD−1 21部を脱イオン水に懸濁させた。硝酸を加えて、溶液のpHを2.5に調整した。この交換は5時間行った。次いで、溶液を排水した。次いで、Si−TUD−1を脱イオン水で5回洗浄した。次いで、このSi−TUD−1を脱イオン水600部中に配置した。この溶液のpHを、硝酸アンモニウムを使用して9.5に調整した。この交換は、1時間行った。この交換中、pHを9.5に維持するように、必要に応じて硝酸アンモニウムを加えた。交換後、Si−TUD−1を脱イオン水で5回洗浄した。次いで、Si−TUD−1を25℃で乾燥した。この酸/塩基処理Si−TUD−1を使用して、テトラアミン硝酸白金(II)のincipient wetnessにより、0.50%パラジウム/Si−TUD−1を製造した。パラジウム塩0.071部を脱イオン水4.1部に溶解した。この溶液を、Si−TUD−1 5部に混合しながら加えた。粉末を25℃で乾燥した。次いで、触媒粉末を1℃/分の加熱速度で、空気中にて350℃で2時間焼成した。
【0079】
次いで、CO化学吸着を使用した分散測定のために、粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。サンプルの96%の分散が測定され、Pd:COの化学量比1が推定される
【0080】
<実施例8>
この実施例では、酸/塩基処理TUD−1(実施例7)を使用した、テトラアミン硝酸パラジウム(II)のincipient wetness法による0.25%パラジウム/Si−TUD−1の製造を説明する。パラジウム塩0.035部を脱イオン水3.9部に溶解した。この溶液を、Si−TUD−1 5部に混合しながら加えた。粉末を25℃で乾燥した。次いで、触媒粉末を1℃/分の加熱速度で、空気中にて350℃で2時間焼成した。
【0081】
CO化学吸着を使用して貴金属分散を測定し、次いで粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。サンプルの90%の分散が測定され、Pt:COの化学量比1が推定される
【0082】
<実施例9>
0.38重量%パラジウム/0.23重量%白金/Si−TUD−1触媒を以下のように製造した。酸/塩基処理Si−TUD−1(実施例7)を使用して、テトラアミン硝酸パラジウム(II)のincipient wetnessにより0.38%パラジウムTUD−1を製造した。パラジウム塩0.053部を脱イオン水3.75部に溶解した。この溶液を、混合しながらSi−TUD−1 5部に加えた。粉末を25℃で乾燥した。次いで、触媒粉末を1℃/分の加熱速度で空気中にて350℃で2時間焼成した。
【0083】
この触媒上の0.23重量%白金含浸物を、テトラアミン硝酸白金(II)のincipient wetnessにより製造した。白金塩0.018部を脱イオン水3.25部に溶解した。この溶液を、撹拌しながら0.38重量%Pd/Si−TUD−1 4.02部に加えた。粉末を25℃で乾燥した。
【0084】
次に、CO化学吸着を使用した分散測定のために、粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。サンプルの81%の分散が測定され、Pd:CO及びPt:COの化学量比1が推定される
【0085】
<実施例10>
以下のように、0.19重量%パラジウム/0.11重量%白金/Si−TUD−1触媒を製造した。酸/塩基処理Si−TUD−1(実施例7)を使用して、テトラアミン硝酸パラジウム(II)のincipient wetnessにより、0.19重量%パラジウム/Si−TUD−1を製造した。パラジウム塩0.027部を脱イオン水3.5部中に溶解した。この溶液を、混合しながらSi−TUD−1 5部に加えた。粉末を25℃で乾燥した。次いで、触媒粉末を、1℃/分の加熱速度で、空気中にて350℃で2時間焼成した。
【0086】
この触媒上の0.11重量%白金含浸物を、テトラアミン硝酸白金(II)のincipient wetnessにより製造した。白金塩0.009部を脱イオン水3.27部に溶解した。この溶液を、0.19%Pd/Si−TUD−1 4.05部に、混合しながら加えた。粉末を25℃で乾燥した。
【0087】
次いで、CO化学吸着を使用した分散測定のために、粉末を水素流中で100℃にて1時間還元した後、5℃/分で350℃に加熱し、この温度で2時間保持した。サンプルの54%の分散が測定され、Pd:CO及びPt:COの化学量比1が推定される。
【0088】
<実施例11>
TUD−1触媒を、1”反応器内で実際の連続的フィードにより評価し、市販触媒と比較した。表1に、処理条件を纏めた。表2に、原料及び流出液の特性、最終生成物の収量を示す。TUD−1触媒では、芳香族化合物が僅か5%である最終生成物が得られ、市販用触媒では、高い空間速度下で、芳香族化合物10%を含む生成物が得られたことが明らかである。TUD−1触媒は、より高い芳香族化合物飽和活性を示した。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
<実施例12>
この実施例では、アルミニウムベースのTUD−1を製造した。イソプロパノール65重量部及びエタノール85部を、アルミニウムイソプロポキシド53部を含む容器に加えた。50℃で約4時間撹拌した後、テトラエチレングリコール(TEG)50部を、撹拌しながら滴加した。さらに4時間撹拌した後、水10部をイソプロパノール20部及びエタノール18部と共に、撹拌下で加えた。30分間撹拌した後、混合物は白色懸濁液となり、次いでこれを室温で48時間置き、続いて空気中で70℃にて20時間乾燥して固体ゲルを得た。この固体ゲルをオートクレーブ内で160℃にて2.5時間加熱し、最後に空気中で600℃にて6時間焼成して、メソポーラス酸化アルミニウムを生成した。
【0092】
得られた焼成メソポーラス酸化アルミニウムのXRDパターンでは、メソ構造材料に特徴的な1.6°の強い2Θピークが存在した。Nポロシメーターの結果、細孔の寸法分布が4.6nm付近に集中していた。27Al NMR分光計測の結果、75、35及び0ppmに、各々4、5及び6配位アルミニウムに対応する3つのピークが観察された。すなわち、これは4、5及び6配位アルミニウムを有する本発明の典型的なメソポーラス材料であった。
【0093】
<実施例13>
この実施例では、本発明の組成物の、水素化のための触媒担体としての使用を説明する。最初に、実施例12(“サンプル12”)のAl−TUD−13.13部を、incipient wetness法により、3.1重量%Pt(NH(NO水溶液2部で含浸した。乾燥し、空気中で350℃にて2時間焼成した後、含浸したサンプル1250部を反応器内に充填し、次いで水素で300℃にて2時間還元した。
【0094】
プローブ反応として、全圧600kPa(6bar)下、水素中に2.2モル%のメシチレン濃度のフィードを有する固定層反応器内で、メシチレンの水素化を実施した。触媒の速度定数を測定するために、反応温度を10℃の増分で100〜130℃の範囲内で変動させた。触媒質量に基づいた修正接触時間を、0.6gcat.*分*l−1にて一定に維持した。触媒質量に基づいた一次反応速度定数は、100℃で0.15gcat.−1*分−1*lであった。
【0095】
<実施例14>
この実施例では、アセチレン及びジエンの選択的水素化を説明する。Pd−AgAl−TUD−1触媒を1/16”押出品の形態で製造し、実験室性能試験のために24/36メッシュの粒子に粉砕した。0.75”ODの管状反応器内で、選択的水素化を実施した。原料は、0.8%メチルアセチレン、0.3%プロパジエン、22%プロピレン、及びバランス量のイソブタンから構成されていた。水素をこの炭化水素流中に溶解させた。水素/(メチルアセチレン+プロパジエン)のモル比は、約0.75であった。次いで、この混合物を他の反応器に移した。LHSVは、約367に維持された。反応の終わりに、転換及び選択性を測定した。選択性は、生成したプロピレン/[転換した(メチルアセチレン+プロパジエン)]×100として定義した。49℃及び約2758kPaG(400psig)にて、(メチルアセチレン+プロパジエン)転換は29%であり、選択性は71%であった。
【0096】
以上の説明は多数の細部を含むが、これら細部は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の好ましい実施態様の単なる例示として解釈されるべきである。当業者は、本願に添付された特許請求の範囲により定義される本発明の範囲及び思想内で、他の多数の可能性が想定できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和成分を含有する炭化水素原料を水素化する方法であって、
a)メソ細孔及びミクロ細孔を基準として少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔を有し、且つ少なくとも300m/gのBET表面積と、少なくとも0.3cm/gの細孔容積とを有する非晶質メソポーラス無機酸化物担体上に、少なくとも1種の第VIII族金属を含む触媒を準備する工程と、
b)前記触媒の存在下、水素化反応条件下で前記炭化水素原料を水素化反応ゾーン内の水素と接触させて、不飽和成分の含有量が低下された生成物を得る工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記第VIII族金属が貴金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貴金属がパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、及びイリジウムからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第VIII族金属がニッケルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第VIII族金属が、触媒の全質量を基準として、少なくとも約0.1質量パーセントの百分率組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メソポーラス無機酸化物担体が、約400m/g〜約1、200m/gのBET表面積と、約0.4cm/g〜約2.2cm/gの細孔容積とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素原料の不飽和成分が、芳香族化合物及び/又はオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が脱芳香族化である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化反応条件が、約150℃〜約400℃の温度、約1379kPa〜約13790kPa(約200psi〜約2、000psi)の水素分圧、約0.2時間−1〜約10.0時間−1のLHSV、及び約500SCF/Bbl〜約20、000SCF/Bblの水素循環比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化反応条件が、約260℃〜約650℃の温度、約3448kPa〜約10343kPa(約500psi〜約1、500psi)の水素分圧、約0.5時間−1〜約3.0時間−1のLHSV、及び約2、000SCF/Bbl〜約15、000SCF/Bblの水素循環比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水素化反応条件が、約275℃〜約330℃の温度、約4137kPa〜約8274kPa(約600psi〜約1、200psi)の水素分圧、約1.0時間−1〜約2.0時間−1のLHSV、及び約3、000SCF/Bbl〜約13、000SCF/Bblの水素循環比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒がさらにゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ゼオライトが、FAU、EMT、BEA、VFI、AET、CLO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼオライトの量が、触媒の全質量を基準として、約0.05質量%〜約50.0質量%である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素原料が、潤滑油ベースストックからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素原料が、約70質量%を超える芳香族化合物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記炭化水素原料が、約50質量%を超える芳香族化合物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記水素化反応ゾーンが少なくとも1つの触媒固定層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記水素化反応ゾーンが少なくとも第1及び第2の互いに離間した触媒固定層を含み、前記第1の固定層の流出液が前記第2の固定層内に導かれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の固定層の流出液が前記第2の固定層に入る前に、該流出液を冷却するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記原料を原料/流出液熱交換器内で予め加熱した後、炉内で該原料を反応温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、芳香族化合物を含有する炭化水素原料の脱芳香族化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、超大気圧水素の存在下、臭素価が5を超える炭化水素潤滑油ベースストック原料を水素化して、臭素価が3未満の潤滑油製品を製造することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、少なくとも1種のモノオレフィンを含有する原料中のアセチレン及び/又はジエン不純物の選択的水素化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、少なくとも1種の芳香族化合物を含有する原料中のオレフィン及び/又はジエン不純物の選択的水素化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記不純物が、アセチレン、及び隣接する二重結合を有する1種又は2種以上の化合物を含み、前記炭化水素原料が、少なくとも1つの単結合により分離された2つ以上の二重結合を有する化合物を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
不飽和成分を含有する潤滑油を安定化する方法であって、
(a)水素化分解ゾーン内で潤滑剤粘度の炭化水素原料を水素化分解して流出液を得る工程と、
(b)前記水素化分解ゾーンの流出液の少なくとも一部を、触媒的水素化ゾーン内で、超大気圧水素圧下、メソ細孔及びミクロ細孔を基準として少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔を有し、且つ少なくとも300m/gのBET表面積と、少なくとも0.4cm/gの細孔容積とを有する非晶質メソポーラス無機酸化物担体上に少なくとも1種の第VIII族金属を含む触媒と接触させることにより、前記水素化分解ゾーンの流出液の少なくとも一部を触媒的に水素化して、不飽和成分の含有量が低下された潤滑剤製品を得る工程と、を含む方法。
【請求項28】
不飽和成分を含有する潤滑油を安定化する方法であって、
(a)水素化分解ゾーン内で潤滑剤粘度の炭化水素原料を水素化分解して流出液を得る工程と、
(b)前記水素化分解ゾーンの流出液の少なくとも一部を、触媒的水素化ゾーン内で、超大気圧水素圧下、メソ細孔及びミクロ細孔を基準として少なくとも97体積パーセントの互いに繋がったメソ細孔を有し、且つ少なくとも300m/gのBET表面積と、少なくとも0.4cm/gの細孔容積とを有する非晶質メソポーラス無機酸化物担体上にニッケルを含む触媒と接触させることにより、前記水素化分解ゾーンの流出液の少なくとも一部を触媒的に水素化して、不飽和成分の含有量が低下された潤滑剤製品を得る工程と、を含む方法。

【公表番号】特表2008−506004(P2008−506004A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520320(P2007−520320)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021152
【国際公開番号】WO2006/016967
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500443589)エイビービー ラマス グローバル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】