説明

メタクリル樹脂板の製造方法

【課題】見る角度によって色調が変化するという意匠性により優れたメタクリル樹脂板を製造する方法を提供すること。
【解決手段】メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体B、及び発色性複合短繊維Cの混合物Xを注型重合させることを特徴とするメタクリル樹脂板の製造方法。かかる製造方法として、メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、及びメタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体Bの混合物Yと、発色性複合短繊維Cとを混合して混合物Xを得、これを注型重合させるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル樹脂板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂板は、その透明性、耐候性、硬度の点から、例えば、携帯電話、テレビ、PCモニターのような電子機器の外枠といった部材等に用いられる。かかる部材は、これを用いて作製される完成品の需要を喚起すべく、高い意匠性が要望されている。
【0003】
一方、上述した部材の製造方法として、例えば、特開平11−241223号公報(特許文献1)や、特開2006−281522号公報(特許文献2)では、プラスティック製の基材表面に発色性複合短繊維をコーティングすることにより、見る角度によって色調が変化するという意匠性を付与した発色性構造体を製造する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−241224号公報
【特許文献2】特開2006−281522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法により得られる構造体においても、かかる意匠性の点で必ずしも満足のいくものとはいえなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、見る角度によって色調が変化するという意匠性により優れたメタクリル樹脂板を製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討の結果、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体、及び発色性複合短繊維の混合物を注型重合させることにより、上記目的を達成しうることを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体B、及び発色性複合短繊維Cの混合物Xを注型重合させることを特徴とするメタクリル樹脂板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、見る角度によって色調が変化するという意匠性により優れたメタクリル樹脂板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体B、及び発色性複合短繊維Cの混合物Xを注型重合させることを特徴とする。混合物X中では、発色性複合短繊維Cが良好に分散するため、この混合物Xを注型重合させることにより、発色性複合短繊維Cは樹脂中に包含され、メタクリル樹脂板の縦方向及び横方向に良好に分散することとなり、その結果、見る角度によって色調が変化するという意匠性に優れたメタクリル樹脂板を得ることができる。
【0011】
メタクリル酸メチルを主体とする単量体A(以下、単量体Aということがある。)は、メタクリル酸メチルのみからなるものであってもよいし、メタクリル酸メチルとメタクリル酸メチル以外の他の単量体とからなるものであってもよいが、メタクリル酸メチル以外の他の単量体をも含む場合には、メタクリル酸メチルの含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。メタクリル酸メチル以外の他の単量体をも含む場合、それらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0012】
メタクリル酸メチル以外の他の単量体としては、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば、特に制限はなく、一分子内にラジカル重合可能な二重結合を1つ有する単官能単量体であってもよいし、一分子内にラジカル重合可能な二重結合を2つ以上有する多官能単量体であってもよい。
【0013】
メタクリル酸メチル以外の他の単量体として用いることのできる単官能単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートのような、アクリル酸と脂肪族アルコール、芳香族アルコール又は脂環族アルコールとのエステル;プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートのような、メタクリル酸と脂肪族アルコール、芳香族アルコール又は脂環族アルコールとのエステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートのような、アクリル酸とヒドロキシアルコールとのエステル;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートのような、メタクリル酸とヒドロキシアルコールとのエステル;アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和酸;スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル;無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドのようなマレイン酸誘導体;酢酸ビニルのようなカルボン酸ビニル;等が挙げられる。
【0014】
メタクリル酸メチル以外の他の単量体として用いることのできる多官能単量体としては、例えば、アリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
【0015】
メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体B(以下、重合体Bということがある。)は、メタクリル酸メチルを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含む単量体の重合体であることができる。また、ここでいうメタクリル酸メチルを主体とする単量体は、前述と同様、メタクリル酸メチルのみからなるものであってもよいし、メタクリル酸メチルとメタクリル酸メチル以外の他の単量体とからなるものであってもよいが、メタクリル酸メチル以外の他の単量体をも含む場合には、メタクリル酸メチルの含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、前述と同様のものを挙げることができる。
【0016】
重合体Bの粘度平均分子量は、発色性複合短繊維Cの分散性の観点から、100万以上であるのが好ましい。尚、かかる粘度平均分子量は、下式(1)で求めることができる。
【0017】
lnM={ln[η]−ln(4.8×10-5)}/0.8 (1)
【0018】
(式中、Mは粘度平均分子量を表し、[η]はJIS Z8803に準拠してウベローデ粘度計により測定した極限粘度を表す。)
【0019】
発色性複合短繊維Cは、屈折率の異なる2種類の層状重合体が交互に重なり合った多層積層構造を有する短繊維である。このような多層積層構造を有する短繊維を樹脂中に包含させ、メタクリル樹脂板の縦方向及び横方向に良好に分散させることにより、該メタクリル樹脂板は、見る角度によって、様々な色調に見え、優れた意匠性や装飾性を有するものとなる。ここでいう屈折率の異なる2種類の層状重合体としては、屈折率の高い層状の重合体と屈折率の低い層状の重合体を交互に重ねあわせたものであり、これらの屈折率差の大きいものが好ましい。高屈折率の重合体は、通常屈折率が約1.59〜1.63程度のものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの如きポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリフェニレンサルファイド類等が挙げられる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。低屈折率の重合体は、通常屈折率が約1.40〜1.53程度のものであり、例えば、ナイロン−6の如きナイロン類、ポリメタクリル酸メチルやフッ素系ポリメタクリル酸メチルの如きポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルペンテン類等が挙げられる。中でも、ナイロン類が好ましく、ナイロン−6がより好ましい。かかる層状重合体の厚さは約0.07〜0.1μm程度であり、かかる厚みを制御することにより、紫色、青色、緑色、赤色等の色調を制御することができる。屈折率の異なる2種類の層状重合体の重量割合は、高屈折率の重合体:低屈折率の重合体=90:10〜10:90(重量比)の範囲で適宜選択することができ、好ましくは高屈折率の重合体:低屈折率の重合体=90:10〜80:20(重量比)の範囲であるのがよい。発色性複合短繊維Cの長さは通常50〜3000μm程度であり、そのガラス転移点は通常40〜150℃程度であり、その溶融温度は通常160〜280℃程度である。発色性複合短繊維(B)の具体例としては、赤色系では、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)RM100C1000」、「モルフォトーン(登録商標)RM100C3000」が挙げられ、青色系では、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)BM100C150」、「モルフォトーン(登録商標)BM100C300」、「モルフォトーン(登録商標)BM100C600」、「モルフォトーン(登録商標)BM100C1000」、「モルフォトーン(登録商標)BM100C3000」が挙げられ、緑色系では、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)GM100C1000」、「モルフォトーン(登録商標)GM100C3000」が挙げられ、紫色系では、「モルフォトーン(登録商標)VM100C75」等が挙げられる。
【0020】
単量体A、重合体B、及び発光性複合短繊維Cの混合方法は、適宜選択することができるが、予め単量体A及び重合体Bの混合物Yを調製しておき、この混合物Yと発色性複合短繊維Cとを混合して混合物Xを調製するのが操作性の点から好ましい。
【0021】
上述したように混合物Yと発色性複合短繊維Cを混合する場合、混合物Yの粘度は通常100〜800cP(センチポアズ)であり、発色性複合短繊維Cの分散性の観点から、100〜600cP(センチポアズ)が好ましい。尚、混合物Yの粘度は、JIS K7117−2に準拠して、E型粘度計により測定することができる。
【0022】
重合体Bの重量は、単量体A及び重合体Bの合計100重量部に対して、通常2.5〜7.0重量部、好ましくは2.5〜5.0重量部である。また、発色性複合短繊維Cの重量は、特に制限はないが、好ましくは単量体A及び重合体Bの合計100重量部に対して0.01〜2.0重量部であり、好ましくは0.05〜1.0重量部である。
【0023】
かくして得られる混合物Xを注型重合させることにより、所望のメタクリル樹脂板を製造することができる。注型重合は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、ガスケットと該ガスケットを介して対向する2枚の平板とからなる鋳型内で重合反応させることにより行うことができる。ガスケットには、軟質塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、クロロプレン樹脂、ネオプレン樹脂、ニトリル樹脂、フッ素樹脂の如き材質のものを使用することができる。また、平板としては、SUS製のものや、ガラス製のものを使用することができる。
【0024】
前記注型重合は、例えば、混合物Xにラジカル開始剤を加えた後、前記鋳型内に注入し、次いで該鋳型を加熱することにより行うことができる。ラジカル開始剤としては、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンテン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2−シアノ−2−プロピラゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシ−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)のようなアゾ化合物;ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイド系またはジアルキルパーオキサイド系開始剤;t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートのようなパーオキシエステル系開始剤;t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのようなパーカーボネイト系開始剤;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなパーオキシケタール系開始剤;等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
ラジカル開始剤の使用量は、通常、単量体A100重量部に対して、0.01〜5重量部程度である。
【0026】
重合温度は、通常50℃〜90℃であり、重合に要する時間は、通常1〜10時間である。さらに、重合後、重合を完結させる目的で、必要に応じて、90℃〜120℃程度に昇温してもよい。このように発色性複合短繊維Cの溶融温度よりも低い温度で重合反応を行い、あわせて板状に成形することにより、発色性複合短繊維Cを融解させることなく、その多層構造を良好に維持したままそれを包含するメタクリル樹脂板を製造することができるため、かかるメタクリル樹脂板は、良好な意匠性を有することができるのである。
【0027】
かくして、発色性複合短繊維Cが良好に分散し、見る角度によって色調が変化するという意匠性に優れたメタクリル樹脂板を製造することができる。尚、かかるメタクリル樹脂板は、これに分散している発色性複合短繊維Cの多層構造を維持しうる温度範囲内において、加熱して他の形状等に成形することができる。また、必要に応じて、着色剤、離型剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の各種添加剤を、本発明を損なわない範囲で配合してもよい。
【0028】
かかるメタクリル樹脂板は、例えば、携帯電話、テレビ、PCモニターのような電子機器の外枠といった部材等に用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0030】
尚、以下の実施例における各種物性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0031】
(1)粘度測定
JIS K7117−2に準拠して、E型粘度計(東京計器株式会社製、VISCONIC EMD)により測定した。
【0032】
(2)メタクリル樹脂板の外観
目視で観察して、メタクリル樹脂板中における発色性複合短繊維Cの濃度のムラがなく良好な意匠性を有しているものを○、若干濃度のムラがあるものの良好な意匠性を有している場合は△、濃度にムラがあり意匠性が損なわれているものを×と評価した。
【0033】
実施例1
メタクリル酸メチル100重量部に、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.001重量部を加えた後、70℃に加熱して重合させて、粘度平均分子量が150万のポリメタクリル酸メチルを4重量%含むメタクリル酸メチル溶液(混合物Yに相当、粘度;570cP)を得た。この溶液98.8重量部、発色性複合短繊維Cに相当する帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)RM100C1000」0.5重量部、カーボンブラック(山陽色素社製の「ファインコール カーボンブラックN−29」)0.7重量部を混合した後、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.08重量部、シクロヘキサン−1−メチル−4−エチリデン0.01重量部、2−(2−(ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.01重量部を加え、脱気してメタクリル酸メチル系シロップ(混合物Xに相当)を得た。
【0034】
次に、塩化ビニル樹脂製ガスケットと、このガスケットにより2mmの間隔を空けて配置された2枚の平面上ガラス板により構成されたセルに、上記メタクリル酸メチル系シロップを注入し、次いで72℃で3時間、120℃で40分加熱し厚さ約2mmのメタクリル樹脂板を得た。このメタクリル樹脂板の評価結果を表1に示す。
【0035】
実施例2〜6
実施例1で得られた粘度平均分子量が150万のポリメタクリル酸メチルを4重量%含むメタクリル酸メチル溶液に、ポリメタクリル酸メチルの濃度が表1記載の濃度になるように所定量のメタクリル酸メチルをそれぞれ加えて希釈し、これらの溶液を上記セルに注入した以外は実施例1と同様の方法でメタクリル樹脂組成物を得た。上記希釈後の溶液の粘度と、得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例7
実施例1で得られた粘度平均分子量が150万のポリメタクリル酸メチルを4重量%含むメタクリル酸メチル溶液に、メタクリル酸メチルを加えて希釈し、粘度平均分子量が150万のポリメタクリル酸メチルを2.8重量%含むメタクリル酸メチル溶液(混合物Yに相当、粘度;120cP)を得た。この溶液99.5重量部、発色性複合短繊維Cに相当する帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)RM100C1000」0.5重量部を混合した後、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.08重量部、シクロヘキサン−1−メチル−4−エチリデン0.01重量部、2−(2−(ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.01重量部を加え、脱気してメタクリル酸メチル系シロップ(混合物Xに相当)を得た。このメタクリル酸メチル系シロップの粘度は120cPであった。
【0038】
次に、塩化ビニル樹脂製ガスケットと、このガスケットにより2mmの間隔を空けて配置された2枚の平面上ガラス板により構成されたセルに、上記メタクリル酸メチル系シロップを注入し、次いで72℃で3時間、120℃で40分加熱し厚さ約2mmのメタクリル樹脂板を得た。このメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0039】
実施例8
発色性複合短繊維Cとして、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)RM100C3000」を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0040】
実施例9
発色性複合短繊維Cとして、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)GM100C1000」を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0041】
実施例10
発色性複合短繊維Cとして、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)GM100C3000」を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0042】
実施例11
発色性複合短繊維Cとして、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)BM100C1000」を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0043】
実施例12
発色性複合短繊維Cとして、帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)BM100C3000」を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたメタクリル樹脂板の評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
比較例1
ポリメタクリル酸メチルと、発色性複合短繊維Cに相当する帝人ファイバー株式会社製の「モルフォトーン(登録商標)RM100C1000」とを220℃で加熱溶融混練したところ、該短繊維Cの発色性が失われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、メタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体B、及び発色性複合短繊維Cの混合物Xを注型重合させることを特徴とするメタクリル樹脂板の製造方法。
【請求項2】
メタクリル酸メチルを主体とする単量体A、及びメタクリル酸メチルを主体とする単量体が重合してなる重合体Bの混合物Yと、発色性複合短繊維Cとを混合して混合物Xを得、これを注型重合させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
混合物Yの粘度が100〜600cPである請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
重合体Bの重量が、単量体A及び重合体Bの合計100重量部に対して2.5〜5.0重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
発光性複合短繊維Cの重量が、単量体A及び重合体Bの合計100重量部に対して0.01〜2.0重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−227830(P2009−227830A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75456(P2008−75456)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】