説明

メタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法

【課題】大きな表面積を有し、触媒界面が改質され、メタクロレインからのメタクリル酸の生産性に優れたメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法を目的とする。
【解決手段】気相接触酸化によるメタクリル酸の製造に使用されるヘテロポリ酸系触媒の製造方法において、該ヘテロポリ酸系触媒の調製に活性汚泥を用いることを特徴とするヘテロポリ酸系触媒の製造方法。本発明のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法によると、大きな表面積を有し、触媒界面が改質され、メタクロレインからメタクリル酸の生産性が高いヘテロポリ酸系触媒を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相接触酸化によるメタクリル酸の製造に使用されるヘテロポリ酸系触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸はメタクロレインに分子酸素を気相接触酸化して製造される。メタクリル酸製造に使用される触媒(メタクリル酸製造用触媒)の性能は、メタクロレインの転化率、生成するメタクリル酸の選択率などで評価され、それらの性能は触媒の細孔構造の影響を大きく受けることが知られている。一般に、適度な平均細孔径や細孔径分布を有し、触媒表面に多くの細孔を有する(表面積が大きい)触媒ほど、高い性能(優れた生産性)を示す。そのため、従来から、平均細孔径、細孔径分布などを制御した触媒や、その製造方法が提案され、触媒表面の細孔容積や成型性などの物性の改良に関する特許が多数出願されている。
【0003】
例えば、触媒原料の混合物に、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよびゼラチンからなる群から選択された一種以上の有機物を添加する方法(特許文献1)、炭素数1〜6のアルコール、アルデヒド、有機酸を添加する方法(特許文献2)、合成高分子としてシリコーンゴム、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン66を添加する方法(特許文献3)、精製デンプンを添加する方法(特許文献4)などが提案されている。これらの提案はいずれも、有機物が添加された触媒前駆体を焼成することで、それらの有機物が焼失して生ずる空間(細孔)の制御や、触媒の表面積の制御を目的としている。
【特許文献1】特公昭59−27217号公報
【特許文献2】特開平6−15178号公報
【特許文献3】特開平11−226410号公報
【特許文献4】特開平11−226411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来の方法では、添加した有機物の焼失によって細孔を形成し、触媒の表面積を大きくすることができても、触媒界面の改質は望めず、触媒の性能が充分に発揮されにくかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、大きな表面積を有し、触媒界面が改質され、メタクロレインからのメタクリル酸の生産性に優れたヘテロポリ酸系触媒の製造方法を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下の構成を見出した。
気相接触酸化によるメタクリル酸の製造に使用されるヘテロポリ酸系触媒の製造方法において、該ヘテロポリ酸系触媒の調製に活性汚泥を用いることを特徴とするヘテロポリ酸系触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法によると、大きな表面積を有し、触媒界面が改質され、メタクロレインからのメタクリル酸の生産性に優れたヘテロポリ酸系触媒を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒は、気相接触酸化によるメタクリル酸の製造に使用されるヘテロポリ酸系触媒の製造方法において、該ヘテロポリ酸系触媒の調製に活性汚泥を用いることを特徴とする。
前記触媒の調製は、水などに原料を加えてスラリーを得る混合工程、該スラリーを乾燥させて触媒前駆体の乾燥物を得る乾燥工程、該触媒前駆体の乾燥物を成型して成型物を得る成型工程、該成型物を焼成する焼成工程に分けられる。
【0008】
(触媒の原料)
本発明では、下記式(1)で表される組成を有するヘテロポリ酸系触媒が得られるように、各種の原料を混合するのが好ましい。
MoCu (1)
(式中のMo、V、CuおよびOは、それぞれがモリブデン、バナジウム、銅および酸素を示し、Aはリン、ヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Dはアンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、珪素、タングステン、およびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、マンガン、コバルト、バリウム、ガリウム、セリウム、およびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。a,b,c,d,e,f,g,およびhは各元素の原子比率を表し、b=12のときa=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)
【0009】
ヘテロポリ酸系触媒の原料は特に限定されないが、例えば、前記式(1)の組成を得るために混合される触媒の原料には、前記に挙げた各元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩などを適宜選択して使用することができる。
前記式(1)におけるMoの原料としては、モリブデン酸や三酸化モリブデンが好ましいが、パラモリブデン酸アンモニウムなども使用できる。
前記式(1)におけるVの原料としては、メタバナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化二バナジウムなどを使用できる。
前記式(1)におけるCuの原料としては、硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅などを使用できる。
前記式(1)におけるAの原料としては、正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム、ヒ酸などを使用できる。
前記式(1)におけるDの原料としては、三酸化アンチモンなどを使用できる。
前記式(1)におけるYの原料としては、鉄、亜鉛を含む化合物などを使用できる。
前記式(1)におけるZの原料としては、硝酸セシウムなどの金属化合物などを使用できる。
【0010】
(活性汚泥)
活性汚泥とは、微生物(酵素、有機物)の混合種を含有する汚泥であり、従来、排水の浄化手段として、排水処理場などの排水工程で広く利用されている。
活性汚泥は、水中に存在する微生物に対して、有機物や酸素の供給を行い、該微生物を人為的に繁殖させることにより得られる。排水処理場などでは、活性汚泥を曝気槽に発生させ、活性汚泥に含有される前記微生物が、有機物(水中の有機性汚濁物質)を分解・吸収し、繁殖することを利用して、排水の浄化を行っている。
前記微生物の混合種は、細菌、真菌、原生動物などであり、その大きさは数10〜数100μmである。これら微生物の学名としては、Opercula、Zoothamnium、Epistyles、Chilodonella、Rotaria、Philodinaなどが挙げられる。
活性汚泥の固形分中の炭素は43〜45質量%程度、窒素量が9〜12質量%程度、リン量は1〜2質量%程度を示す。
本発明で用いられる活性汚泥は特に限定されないが、活性汚泥に含まれる微生物種のサイズおよび/または形状(胞子状や鞭毛虫や繊毛虫など)の違いを鑑み、これらが焼成されて得られる触媒表面の細孔が、好ましい大きさとなるような微生物種を多く含む活性汚泥を選択することが好ましい。
【0011】
活性汚泥に含有される元素のうち、リンは、微生物に含まれるポリリン酸類のATP(アデノシン3リン酸)、ADP(アデノシン2リン酸)に由来すると考えられる。これらのリンは、強熱しても残存しやすい。
活性汚泥は、自然沈降または遠心分離による沈降部の回収を行い、湿粉状態にしてから、触媒原料へ添加するのが好ましい。
活性汚泥は、焼成する前の原料に対して添加される。例えば、後述する触媒の原料のスラリーに活性汚泥を添加してから、成型、焼成してもよいし、該スラリーを乾燥させた後に活性汚泥を添加し、成型、焼成してもよい。
これにより、活性汚泥に含まれるリンが焼成によって触媒界面に付着し、リン酸塩やヘテロ原子としてヘテロポリ酸(以下、HPAともいう。)に作用し、触媒界面の改質効果を発揮する。
触媒界面の改質効果の確認方法としては、例えば、水に対する触媒の溶解性の違いで判断する方法がある。活性汚泥の添加により、水溶解性の酸点が多いプロトン型へテロポリ酸と、水難溶解性で酸点が少ないアルカリ型(例えば、アンモニアやアルカリ金属元素)へテロポリ酸塩の存在量比が変化する。活性汚泥を添加した場合、水難溶解性であるアルカリ型へテロポリ酸塩が減少するという改質効果がある。リンに関しては、活性汚泥の添加によって、水溶解性であるプロトン型へテロポリ酸中のリンが増加することから、活性汚泥の添加による改質効果が示唆される。
また、活性汚泥に含まれるリンは、触媒の表面形状の改質効果も発揮する。このように、活性汚泥に含有されるリンが触媒の改質効果を発揮することで、本発明のヘテロポリ酸系触媒は、従来のヘテロポリ酸系触媒に比べて、優れたメタクリル酸の生産性を有する。
【0012】
また、活性汚泥の添加によって、活性汚泥が存在していた空間が焼成工程で消失して細孔構造を形成し、大きな表面積を有したヘテロポリ酸系触媒を得ることができる。
さらに、活性汚泥は不溶体のため、他の沈殿粒子である水難溶解成分とともに共存することによって、アルカリ型ヘテロポリ酸系触媒の還元効果を発揮し、その適度の還元状態によって、酸素が供給し難い触媒種と、酸素が供給しやすい酸化状態の触媒種との配置調整が円滑に進められる。これにより、メタクロレインがメタクリル酸以外(例えば二酸化炭素)の物質に酸化されることを抑制でき、以って収率向上に寄与できる。
また、排水処理場などの排水工程で余剰に発生し、従来は焼却処分されていた活性汚泥を利用することで、触媒製造の低コスト化が期待できる。
活性汚泥の添加量は、原料中のモリブデン100質量部に対して、乾燥活性汚泥換算で
好ましくは0.1質量部〜4質量部、より好ましくは1質量部〜2質量部である。
【0013】
(混合工程)
触媒の原料は、均一な分散性を得るために、水などの水性媒体に混合してスラリー化するのが好ましい。水としては、純水が好ましい。また、アルカリ型へテロポリ酸塩やプロトン型へテロポリ酸をより均一化し、各種元素の再編成を促すため、アンモニア水を添加することもある。
【0014】
(乾燥工程)
混合工程で得られたスラリーは、次いで乾燥され、触媒前駆体の乾燥物となる。乾燥方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法などが挙げられる。乾燥に使用する乾燥機の機種や乾燥時の温度、雰囲気などは特に限定されず、乾燥条件を適宜変えることによって、目的に応じた触媒前駆体の乾燥物を得ることができる。
【0015】
(成型工程)
この触媒前駆体の乾燥物は、そのまま焼成を行ってもよく、なんらかの成型を行ってから焼成を行ってもよい。
成型の方法は特に限定されず、公知の乾式または湿式の成型の方法が適用できるが、担体などを含めず、触媒成分のみで成型する方法が好ましい。具体的な成型の方法としては、例えば、打錠成型、プレス成型、押出成型、造粒成型などが挙げられる。成型品の形状についても特に限定されず、例えば円柱状、リング状、球状などの形状に成型することができる。
【0016】
(焼成工程)
この触媒前駆体の乾燥物またはその成型品を焼成する方法、およびその焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、用いる触媒の原料、触媒の組成、調製方法によって異なるが、通常、空気などの酸素含有ガス流通下および/または不活性ガス流通下で200〜500℃、0.2時間〜30時間が好ましい。より好ましくは250〜450℃で0.5時間〜20時間、特に好ましくは280〜390℃で1〜10時間行われる。ここで不活性ガスとは、触媒活性を低下させないような気体を示し、例えば、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。
この焼成工程により、活性汚泥が焼失し、触媒に細孔が形成される。該細孔の多くは、その形状が短い線状として観察され、該細孔の大きさは数10〜数100μmである。
【0017】
このように、活性汚泥を用いることにより、大きな表面積を有し、かつ触媒界面が改質され、メタクロレインからのメタクリル酸の生産性に優れたヘテロポリ酸系触媒を得ることができる。
本発明のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法は、触媒の調製のスケールを問わず実施可能である。メタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の主原料であるモリブデン化合物の1回の使用量の目安は、その化合物に含まれるモリブデンの質量部換算で100g〜10tが好ましく、1kg〜1tがより好ましい。
【0018】
(触媒としての使用方法)
メタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒に、メタクロレインと分子状酸素を含む原料ガスを接触させ、気相接触酸化することで、メタクリル酸が製造される。原料ガス中のメタクロレイン濃度は広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が好ましく、特に3〜10容量%が好ましい。原料ガス中における分子状酸素濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.5〜4モル、特に1〜3モルが好ましい。原料ガスに窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスを加えて希釈してもよく、また原料ガスに水蒸気を加えてもよい。反応圧力は、常圧1〜5気圧が好ましい。反応温度は230〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の製造方法について、実施例を用いて、さらに詳細に説明する。
ここで、実施例における「部」は質量部である。
<活性汚泥>
広島県大竹市の三菱レイヨン株式会社大竹事業所中央排水処理場から採取した活性汚泥を使用した。この活性汚泥はなんら特殊ではない、ごく一般的な活性汚泥であった。光学顕微鏡観察および排水水質指標から、その活性汚泥種はOpercula、Zoothamnium、Epistyles、Chilodonella、Rotaria、Philodinaなどで、特に繊毛虫類であるOperculaのような微生物が多く観察された。また、これらの微生物の大きさは、数10〜数100μmであった。この活性汚泥中の固形分は、活性汚泥中の約22質量%であった(活性汚泥を105℃で2時間乾燥して、残留した固形分を計量した。)。この活性汚泥は、その固形分中の炭素量が48質量%、窒素量が11質量%、リン量は1.4質量%を示した。活性汚泥に含まれる微生物の量は、活性汚泥の固形物のほぼ全量に近かった。
そして、採取した活性汚泥を遠心分離機により遠心分離(条件:5,000rpm、5分間)して、活性汚泥の沈降部を回収した。この沈降部は、湿り気のある湿粉状態を呈していた。
<分析方法>
製造された触媒中に含まれる含有元素の組成分析は、ICP発光分析法、原子吸光分析法により行った。
触媒の性能評価で用いられるメタクロレインと、得られるメタクリル酸の定量分析は、ガスクロマトグラフィにより行った。
触媒の表面積はBET法により測定した。BET法は、多分子層吸着に基づいて導かれる吸着等温式(BET式)を用いて、単分子層吸着量と吸着質の分子断面積とから固体の表面積を算出する方法であり、周知の方法である。
アルカリ型HPA塩(%)の存在量は次のようにして求めた。触媒0.2g(A)を正確に秤量後、100mlの水に分散させてから超音波洗浄器で30分間処理し、次いで遠心分離器(条件:16,000rpm、5分間)で処理後、上澄み液(プロトン型HPA)と沈殿部(アルカリ型HPA塩)を分離し、沈殿部を60℃に設定した真空乾燥器で一晩乾燥させて質量(B)を求め、(B)÷(A)×100の計算式によりアルカリ型HPA塩(%)の存在量を求めた。
一方、遠心分離後の上澄み液について、ICP発光分析法でリンの定量を行い、プロトン型HPA中のリン(%)を求めた。
<メタクリル酸製造用触媒の性能評価方法>
メタクリル酸製造用触媒の性能評価は、メタクロレインの転化率、生成するメタクリル酸の選択率、および単流収率から行った。これらは以下のように定義される。
メタクロレインの転化率(%)=(B/A)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(C/B)×100
メタクリル酸の単流収率(%)=(C/A)×100
ここで、Aは供給したメタクロレインのモル数、Bは反応したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0020】
[実施例1]
純水800部に、三酸化モリブデン200部、メタバナジン酸6.77部、およびリン酸16.0部を投入してスラリーとした。このスラリーを加温し、100℃で2時間保持した。その後、このスラリーの温度を50℃に下げ、三酸化アンチモン6.66部および純水145部を15秒間かけて投入した。
次いで、このスラリーに、前述した湿粉状態の活性汚泥5g(モリブデン100部に対して乾燥活性汚泥換算1.1部である。)を投入して約10分間攪拌保持した。さらに、このスラリーに、硝酸セシウム24.8部および純水47部を約3分間かけて投入し、15分間攪拌保持した。その後、スラリーの温度を70℃に一端上げてから、28%アンモニア水98部を除熱しながら約20分間かけて投入した。そして、このスラリーを約90分間攪拌保持した。
【0021】
次いで、スラリーの温度を再び50℃に下げてから、このスラリーに硝酸銅3.3部および硝酸鉄1.8部を投入した。そして、このスラリーの温度を100℃まで上昇して、スラリーを濃縮した。さらに、この濃縮したスラリーを、150℃の乾燥器内で一晩(約16時間)乾燥させて、乾燥粉体(触媒前駆体の乾燥物)を得た。
この乾燥粉体を、油圧式加圧成型器を用いて圧力20Mpa(200kg/cm)で1分間保持して破砕し、7.5メッシュ(目開き2.36mm)〜20メッシュ(目開き0.71mm)の破砕品を得た(造粒成型)。
この破砕品を焼成炉に充填して、空気雰囲気下に400℃で一晩焼成することにより、実施例1のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。
このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の金属成分の組成は、Mo120.51.2Sb0.4Cs1.1Cu0.12Fe0.04であった。
このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の混合ガスを反応温度270℃、接触時間3.6秒の反応条件で通じ、メタクロレインの気相接触酸化反応によるメタクリル酸の製造を行った。この触媒の性能評価結果を表1に示す。
【0022】
[実施例2]
湿粉状態の活性汚泥の添加量を10部(モリブデン100部に対して乾燥活性汚泥換算で2.2部)とした以外は、実施例1と同様に触媒の調製を行って、実施例2のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。そして、このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を用い、実施例1と同様の方法でメタクリル酸の製造を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0023】
[比較例1]
活性汚泥を添加しない以外は、実施例1と同様に触媒の調製を行って、比較例1のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。そして、このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を用い、実施例1と同様の方法でメタクリル酸の製造を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0024】
[実施例3]
実施例1で用いた三酸化アンチモン6.66部の代わりに、60%ヒ酸10.9部を用いた以外は、実施例1と同様に触媒の調製を行って、実施例4のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒の金属成分の組成は、Mo120.51.2As0.4Cs1.1Cu0.12Fe0.04であった。そして、このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を用い、実施例1と同様の方法でメタクリル酸の製造を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0025】
[実施例4]
湿粉状態の活性汚泥の添加量を10部(モリブデン100部に対して乾燥活性汚泥換算で2.2部)とした以外は、実施例3と同様に触媒の調製を行って、実施例4のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。そして、このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を用い、実施例1と同様の方法でメタクリル酸の製造を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0026】
[比較例2]
活性汚泥を添加しない以外は、実施例3と同様に触媒の調製を行って、比較例2のメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を得た。そして、このメタクリル酸製造用ヘテロポリ酸系触媒を用い、実施例1と同様の方法でメタクリル酸の製造を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1、2、3、4はいずれも良好な性能のバランスを示した。
その中でも、実施例1、3はメタクロレインの転化率、メタクリル酸の単流収率に特に優れており、触媒の表面積も大きかった。
実施例2、4は、メタクリル酸の選択率に特に優れていた。
一方、比較例1、2は総じて劣っていた。
また、アルカリ型HPAの量は、各比較例に比べて各実施例の方が少なく、プロトン型HPA中のリンの量は、各比較例に比べて各実施例の方が多く、触媒界面の改質効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相接触酸化によるメタクリル酸の製造に使用されるヘテロポリ酸系触媒の製造方法において、該ヘテロポリ酸系触媒の調製に活性汚泥を用いることを特徴とするヘテロポリ酸系触媒の製造方法。

【公開番号】特開2009−66582(P2009−66582A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241026(P2007−241026)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】