説明

メタクロレインの製造方法

【課題】本発明は、触媒が短期間で劣化することを抑制でき、かつ原料ガスの利用効率が高いメタクロレインの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】触媒の存在下、tert−ブチルアルコールおよびイソブチレンの少なくとも一方を含む原料ガスを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレインを得る気相接触酸化工程と、気相接触酸化反応後の反応ガスからメタクロレインを捕集する捕集工程と、メタクロレインの捕集後のガス中の未反応のイソブチレンを吸着剤に吸着させて分離回収する回収工程と、回収したイソブチレンを前記吸着剤から脱離させて前記気相接触酸化工程に返送する返送工程と、を有するメタクロレインの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクロレインの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクロレインの製造方法としては、触媒の存在下、tert−ブチルアルコール及び/又はイソブチレンを分子状酸素により気相接触酸化する方法が知られており、工業的に広く利用されている。このメタクロレインの製造方法に用いられる触媒は、性能が必ずしも充分なものではなく、高い転化率を得るために高温で反応を行うと短期間で触媒が劣化する問題がある。そのため、触媒を長期間、効率的に使用するために様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、触媒の活性低下を抑え、該触媒を長期間有効に使うために、tert−ブチルアルコール及び/又はイソブチレンを含む原料ガスを気相接触酸化する反応において、その転化率を90〜97%程度に抑えることが行われている。しかし、この場合、未反応のtert−ブチルアルコールやイソブチレンが生じるため、原料ガスの利用効率が低下する。
【0004】
一方、メタクリル酸の製造方法としては、tert−ブチルアルコール及び/又はイソブチレンを含む原料ガスを、分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレインを得た後、該メタクロレインをさらに分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を得る方法が知られている。このメタクリル酸の製造方法においても、前記メタクロレインの製造方法と同様の触媒の活性低下の問題から、原料ガスの気相接触酸化反応において転化率が90〜97%程度に抑えられており、未反応の原料ガスが生じる。そこで、メタクリル酸の製造方法においては、未反応物質を含むガスを循環して再利用することや、該ガスから未反応物質を回収することが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、メタクリル酸の製造方法において、メタクロレイン及びメタクリル酸の捕集後の、未反応のイソブチレンや、反応ガスから捕集しきれなかったメタクロレイン、メタクリル酸等を含むガスを再利用することが示されている。しかし、連続プロセスにおいては、捕集後のガスを再利用する場合でも、反応器に供給されるガス量を一定に保つために、捕集後のガスの少なくとも一部は排ガスとして系外に排出する必要がある。そのため、特許文献1の方法では、系外に排出される排ガス中に含まれる未反応物質は再利用できず、原料ガスの利用効率の向上は充分なものではなかった。
【0006】
また、特許文献2、特許文献3には、メタクリル酸の製造方法において、メタクロレイン及びメタクリル酸の捕集後のガスの一部を再利用する際に、メタクリル酸の回収効率を向上させる目的で該ガスを冷却して該ガス中に含まれる凝縮性物質(水、メタクリル酸、酢酸等。)の濃度を低くする方法が示されている。しかし、これらの方法は、特許文献1に記載の方法と同様に、系外に排出される排ガスに含まれる未反応物質は再利用できない。
このように、メタクリル酸の製造方法における前記捕集後のガスの一部の再利用をメタクロレインの製造方法に適用しても、系外に排出される排ガスに含まれる未反応物質は再利用できないため、原料ガスの利用効率を充分に高められない。
【0007】
また、非特許文献1には、ガス中の有用成分を分離回収する方法として、吸収法、膜分離法等が挙げられている。しかし、吸収法の場合、ガス状のイソブチレンは溶解度が低いため、吸収量を確保するためには加圧下で操作する必要がある。そのため、吸収法による未反応物質の分離回収は、加圧に要するエネルギーが大きく、経済的に不利である。また、膜分離法の場合、有機蒸気を分離回収可能な実用化膜が少ない。さらに、膜分離法の分離は圧力差を透過駆動力とするため、圧力差を確保するために加圧または減圧を行う必要があり、加減圧に要するエネルギー、及び圧力損失の点から経済的に不利である。
【0008】
以上のように、気相接触酸化反応の転化率を高くすると短期間で触媒が劣化するのを抑制することが困難であり、気相接触酸化反応の転化率を低くすると原料ガスの利用効率が低下してしまう。そのため、メタクロレインの製造において、短期間での触媒の劣化を抑制し、かつ原料ガスを高い利用効率で使用できる方策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平6−84326号公報
【特許文献2】特許第4056429号公報
【特許文献3】特開2008−19275号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】化学工学便覧 改訂六版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、触媒が短期間で劣化することを抑制でき、かつ原料ガスの利用効率が高いメタクロレインの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]触媒の存在下、tert−ブチルアルコールおよびイソブチレンの少なくとも一方を含む原料ガスを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレインを得る気相接触酸化工程と、気相接触酸化反応後の反応ガスからメタクロレインを捕集する捕集工程と、メタクロレインの捕集後のガス中の未反応のイソブチレンを吸着剤に吸着させて分離回収する回収工程と、回収したイソブチレンを前記吸着剤から脱離させて前記気相接触酸化工程に返送する返送工程と、を有するメタクロレインの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメタクロレインの製造方法によれば、触媒の短期間での劣化の抑制と、原料ガスの利用効率の向上を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のメタクロレインの製造方法に使用できる製造システムの一実施形態を示した模式図である。
【図2】本実施例で使用したメタクロレインの製造装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のメタクロレインの製造方法は、下記の各工程を有する。
気相接触酸化工程:触媒の存在下、tert−ブチルアルコールおよびイソブチレンの少なくとも一方を含む原料ガスを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレインを得る工程。
捕集工程:気相接触酸化反応後の反応ガスからメタクロレインを捕集する工程。
回収工程:メタクロレインの捕集後のガス中の未反応のイソブチレンを吸着剤に吸着させて分離回収する工程。
返送工程:回収したイソブチレンを前記吸着剤から脱離させて前記気相接触酸化工程に返送する工程。
【0016】
以下、本発明のメタクロレインの製造方法の実施形態の一例について、図1に例示した製造システム10に基づいて詳細に説明する。製造システム10は、図1に示すように、原料ガスを気相接触酸化する反応部11と、気相接触酸化後の反応ガスからメタクロレインを捕集する捕集部12と、メタクロレインを捕集後のガスから未反応のイソブチレンを分離回収する回収部13とを有している。
【0017】
(気相接触酸化工程)
気相接触酸化工程では、触媒を備える反応部11に原料ガス1を供給し、触媒の存在下、分子状酸素により気相接触酸化させる。これにより、メタクロレインを含む反応ガス2が得られる。反応ガス2には、メタクロレインがさらに気相接触酸化した少量のメタクリル酸が含まれることもある。
【0018】
原料ガス1は、気相接触酸化されてメタクロレインとなる原料であり、イソブチレンとtert−ブチルアルコールの少なくとも一方を含むガスである。イソブチレンの気相接触酸化によりメタクロレインが得られる。また、tert−ブチルアルコールは、脱水反応によって容易にイソブチレンとなり、気相接触酸化によりメタクロレインとなる。原料ガス1としては、イソブチレンを単独で使用してもよく、tert−ブチルアルコールを単独で使用してもよく、イソブチレンとtert−ブチルアルコールを併用してもよい。
気相接触酸化反応に用いる酸素源としては、経済性の点から空気が好ましい。ただし、純酸素を使用してもよい。
【0019】
気相接触酸化反応は、公知の方法により実施できる。
気相接触酸化反応の触媒としては、公知の触媒が使用でき、例えば、モリブデン−ビスマス−鉄系複合酸化物触媒が挙げられる。
【0020】
原料ガス1は、空気等の分子状酸素含有ガス、並びに、原料ガス1のイソブチレン、tert−ブチルアルコール、及び酸素の濃度を調整するための不活性ガスと混合した混合ガスとして反応部11に供給することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。また、前記混合ガスには、水分、少量の炭化水素等が含まれていてもよい。
ただし、原料ガス1の供給方法は前記方法には限定されず、原料ガス1と分子状酸素含有ガスと不活性ガスとを別々に反応部11に供給してもよい。
【0021】
気相接触酸化反応における原料ガス1の転化率は、イソブチレンの利用効率の点から、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、原料ガス1の転化率は、触媒寿命の点から、99%以下が好ましく、97%以下がより好ましい。
原料ガス1の転化率は、反応温度を調節することにより調節できる。
【0022】
気相接触酸化反応の反応温度は、高い触媒活性が得られやすい点から、300℃以上が好ましく、触媒寿命の点から、450℃以下が好ましい。
反応圧力は、特に限定されず、常圧〜数気圧が好ましい。
気相接触酸化反応の反応形態は、固定床でも流動床でもよい。
【0023】
反応部11としては、特に限定されず、工業的には内径10〜40mmの反応管を数千〜数万本備えた固定床の多管式反応器を用いることが好ましい。前記反応管には触媒が充填されて触媒層が形成される。
【0024】
(捕集工程)
捕集工程では、反応ガス2中のメタクロレインを捕集する。メタクロレインの捕集は、公知の方法で実施できる。
この例では、捕集部12において、反応ガス2を吸収水3と接触させ、反応ガス2中のメタクロレインを吸収水3に吸収させて捕集する。これにより、反応ガス2中のメタクロレインのほとんどが吸収されたメタクロレイン水溶液4が得られる。反応ガス2に少量のメタクリル酸が含まれている場合、そのメタクリル酸はメタクロレインと共に吸収水3に吸収されて捕集される。
【0025】
捕集部12には、通常、吸収塔が用いられる。吸収塔としては、例えば、規則充填物を充填した充填塔等が挙げられる。吸収塔の形式としては、例えば、多段式、多管式等が挙げられる。
反応ガス2と吸収水3との接触方法としては、前記吸収塔に塔頂から吸収水3を供給し、塔底から反応ガス2を供給して、それらを向流接触させる方法が好ましい。
メタクロレインの捕集後のガス5は回収部13に供給する。
【0026】
(回収工程)
メタクロレインの捕集後のガス5には、未反応のイソブチレンが含まれる。回収工程では、回収部13において、ガス5中に含まれる未反応のイソブチレンを吸着剤に吸着させて分離回収する。原料ガス1がtert−ブチルアルコールを含む場合、気相接触酸化されなかったtert−ブチルアルコールはほぼ全量が脱水反応によりイソブチレンになっているため、回収工程においてイソブチレンとして回収される。
【0027】
イソブチレンの吸着回収に用いられる吸着剤としては、例えば、木炭系、果実殻系、石炭系等の活性炭;モレキュラ・シーブ等の合成ゼオライト;天然産ゼオライト;アルカリの珪酸塩溶液を酸で加水分解したシリカゲル;酸化アルミニウムに特殊な処理を施した活性アルミナ;酸性白土やベントナイト等を粉砕して酸処理した活性白土;スチレン系高分子およびメタクリル系高分子等の合成樹脂等が挙げられる。なかでも、イソブチレンの吸着効率の点から、活性炭が好ましい。
これら吸着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。吸着剤を2種以上混合して用いる場合の混合方法は、単純混合であってもよく、多層に充填する方法であってもよい。
【0028】
吸着剤の形状は、特に限定されず、粉末状、粒状、破砕状、ペレット状、繊維状、ハニカム状等が挙げられる。なかでも、ガス圧損失と吸着効率の点から、粒径1〜8mmの粒状、破砕状の吸着剤が好ましい。
【0029】
吸着剤による吸着処理時のガス5の温度は、吸着平衡の点から低いほどよく、30℃以下が好ましい。一方、吸着処理時のガス5の温度は、冷却に必要なエネルギーを考慮すると、5℃以上が好ましい。
【0030】
回収部13としては、吸着剤が充填された吸着層を有する吸着塔を用いることが好ましい。
【0031】
(返送工程)
返送工程では、回収部13において吸着剤により分離回収したイソブチレンを、該吸着剤から脱離させ、気相接触酸化工程の反応部11に返送する。これにより、気相接触反応後の未反応のイソブチレンを再利用する。具体的には、イソブチレンを吸着した吸着剤に脱離ガス8を供給することによりイソブチレンを脱離させ、吸着剤から脱離したイソブチレンを含むリサイクルガス6を気相接触酸化工程に返送する。
気相接触酸化工程では、返送したリサイクルガス6を混合した状態で、反応部11に供給される混合ガスの組成が気相接触酸化に最適な組成となるように適宜調整する。
【0032】
脱離ガス8としては、経済性の点で、ガス5からイソブチレンを回収した後の排ガス7の一部を利用することが好ましい。
ただし、脱離ガス8は、排ガス7の一部を用いずに、別途供給してもよい。この場合、脱離ガス8としては、イソブチレンの脱離後のガス組成が爆発の可能性のある組成になることを避けやすい点から、不活性ガスが好ましい。
【0033】
吸着剤からのイソブチレンの脱離時の温度は、脱離時間の点では高いほど有利であり、80℃以上が好ましい。一方、イソブチレンの脱離時の温度は、脱離ガス8の加熱に必要なエネルギーを考慮すると、150℃以下が好ましい。
【0034】
ガス5からイソブチレンを分離回収した後の排ガス7のうち、脱離ガス8として利用しなかったものは、必要に応じて後続の工程で燃焼等の無害化処理を施した後、大気中へ排出する。
【0035】
以上説明した本発明のメタクロレインの製造方法によれば、メタクロレインの捕集後のガスから未反応のイソブチレンを吸着処理により分離回収して再利用することで、排ガスと共に未反応のイソブチレンが系外に排出されることを抑制できる。そのため、触媒の劣化を抑制するために気相接触酸化反応の転化率を低くしても、原料ガスの利用効率を高くすることができる。したがって、触媒の短期間での劣化の抑制と、原料ガスの利用効率の向上とを両立できる。
本発明の製造方法は、特に気相接触酸反応の転化率が低い運転条件において特に有効である。
なお、本発明の製造方法は、前記製造システム10を用いた方法には限定されない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
メタクロレインの製造には、図2に例示した製造装置100を用いた。製造装置100は、図2に示すように、原料ガス1の気相接触酸化反応を行う反応器101と、気相接触酸化反応後の反応ガス2を吸収水3と接触させてメタクロレインを捕集する吸収塔102と、メタクロレインの捕集後のガス5から未反応のイソブチレンを吸着により分離回収する吸着塔103a及び103bと、脱離ガス8を加熱する熱交換器104とを備えている。製造装置100における吸着塔103aと吸着塔103bは、イソブチレンの吸着と脱離を随時切り替えることが可能になっている。図2は、吸着塔103aでイソブチレンを吸着し、吸着塔103bでイソブチレンを脱離することを示している。吸着塔103bから脱離されたイソブチレンを含むリサイクルガス6は、反応器101に循環されるようになっている。
吸収塔102(充填塔)としては、その内部に規則充填物が充填されており、充分な理論段を備えるとともに、液飛沫の同伴を防ぐようになっているものを用いた。
吸着塔103a及び吸着塔103bとしては、内径4mm、塔高160mm、活性炭充填層高さ80mmのものを用いた。吸着塔103a及び吸着塔103bの活性炭充填層には、吸着剤として、粒状活性炭(破砕炭(ヤシガラ製):8〜32メッシュ、ナカライテスク(株)製)を充填した。
【0037】
[実施例1]
反応器101において、イソブチレン(原料ガス1)の気相接触酸化反応を行い、反応ガス2を吸収塔102に供給した。吸収塔102では、反応ガス2を塔下部から供給し、吸収水3を塔頂から供給して向流接触させ、反応ガス2中のメタクロレインを吸収水3に吸収させた。これにより、メタクロレインを捕集したメタクロレイン水溶液4を得た。
【0038】
次いで、吸収塔102からのメタクロレインの捕集後のガス5を、37.5g/時で吸着塔103aに供給した。吸着塔103aにおけるガス空塔速度は0.66m/秒であった。吸着塔103aにおいて、ガス5を吸着剤に接触させ、ガス5中のイソブチレンを吸着させて分離回収した。吸着塔103aにおける吸着は、吸着温度約17℃、1気圧で運転した。
【0039】
吸着塔103aからの排ガス7の一部を脱離ガス8として吸着塔103bに供給し、残りを系外に排出した。脱離ガス8は熱交換器104により加熱し、温度約120℃、1気圧で吸着塔103bに供給した。また、系外に排出する排ガス7は、燃焼炉等により燃焼して無害化した。吸着塔103bからのイソブチレンを含むリサイクルガス6は、反応器101に循環させて再利用した。
吸着塔103bにおいてイソブチレンの脱離が完了した後、吸着塔103aにおいてイソブチレンが破過したところで、吸着塔103aと吸着塔103bを切り替え、吸着塔103bでイソブチレンの吸着、吸着塔103aでイソブチレンの脱離を行った。以後、同様に吸着塔の切り替えを行い、連続的に15時間イソブチレンの吸着回収を行った。
なお、イソブチレンの破過点は、吸収塔102からのガス5のイソブチレン濃度をC、吸着処理を行う吸着塔103a又は吸着塔103bからの排ガス7のイソブチレン濃度をCとして、C/C=0.1となる点とした。
【0040】
本実施例中のガスの成分分析にはガスクロマトグラフィーを使用した。
実施例1におけるイソブチレンの回収率X(単位:%)は、下記式に基づいて算出した。
X=(Y/Z)×100
ただし、前記式中、Yは吸着開始から破過するまでに吸着塔103a及び103bで吸着回収したイソブチレン量(単位:g)であり、Zは吸着開始から破過するまでに吸着塔103a及び103bに供給したイソブチレン量(単位:g)である。
【0041】
反応ガス2、メタクロレイン捕集後のガス5、リサイクルガス6、排ガス7及び脱離ガス8の各成分の流量(単位:g/時)を表1に示す。ただし、表1における無機ガスとは、窒素を主成分とし、その他酸素等の無機成分を含むガスである。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すように、排ガス7と共に系外に排出されるイソブチレン量を低減できた。また、実施例1におけるイソブチレンの回収率Xは98.7%であり、未反応のイソブチレンが生じる気相接触酸化反応を行っても、原料ガス1であるイソブチレンの利用効率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のメタクロレインの製造方法は、触媒の短期間での劣化を抑制できる条件での気相接触酸化反応でも、高い効率で原料ガスを利用できるため、経済的に非常に有利である。
【符号の説明】
【0045】
1 原料ガス 2 反応ガス 3 吸収水 4 メタクロレイン水溶液 5 メタクロレイン捕集後のガス 6 リサイクルガス 7 排ガス 8 脱離ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、tert−ブチルアルコールおよびイソブチレンの少なくとも一方を含む原料ガスを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレインを得る気相接触酸化工程と、
気相接触酸化反応後の反応ガスからメタクロレインを捕集する捕集工程と、
メタクロレインの捕集後のガス中の未反応のイソブチレンを吸着剤に吸着させて分離回収する回収工程と、
回収したイソブチレンを前記吸着剤から脱離させて前記気相接触酸化工程に返送する返送工程と、
を有するメタクロレインの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236168(P2011−236168A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110136(P2010−110136)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】