説明

メタボリック症候群の遺伝的リスク検出法

【課題】 メタボリック症候群のリスク検出法等を提供すること。
【解決手段】 1788名の日本人について、メタボリック症候群とコントロール者とについて、134個の候補遺伝子に関し158個の遺伝子多型をPCR、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ、およびサスペンション・アレイ・テクノロジー(SAT)を用いて検出した。その結果、APOA5の−1131T→C、GCKの−30G→A、F7の11496G→A、LPLの1595C→G、SLC26A8のA→G、APOA1の−75G→A、LIPCの−250G→A、CX3CR1の926C→T、GCLCの−129C→T、GYS1の260A→G、SREBF1の−36/3G→2G、ENGの1691C→G、AGERの268G→A、LTAの804C→A、SAHのA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差、喫煙の有無とを評価因子とすることにより、メタボリック症候群のリスク検出を行えることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリック症候群の遺伝的リスク検出法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタボリック症候群は、罹患者が非常に多い疾患であり、米国では約4人に1人の成人(全体では約4700万人の成人)が罹患していると言われている(非特許文献1:本明細書中においては、関連文献は末尾にまとめて示す)。この症候群は、肥満、血中トリグリセリド濃度の上昇、血中HDLコレステロール濃度の減少、高血圧、及び空腹時血糖値の上昇の重複として定義され、糖尿病と心臓病の危険因子とされる(非特許文献2、3)。メタボリック症候群の病因は、遺伝因子と環境因子の相互作用によって決定されるため複雑である。喫煙、高カロリー食、および運動不足を含むいくつかの環境因子(非特許文献4)はメタボリック症候群の発症に影響しているが、代謝障害の根本的な原因はインスリン抵抗性にあると考えられている(非特許文献5、6)。米国のATPIII(Adult Treatment Panel III)は、メタボリック症候群の臨床診断ガイドラインを提示し(非特許文献7)、この症候群を評価するための指針を提供した。
【0003】
ある個人がメタボリック症候群に罹りやすいかどうかに対して、遺伝的な因子が存在することが明らかとなっている(非特許文献8)。双生児と家族的集積に関する研究によれば、メタボリック症候群を構成する個々の異常については、重要な遺伝因子があることが分かった(非特許文献9)。さらに、全ゲノム研究によって、メタボリック症候群との連鎖が示唆される様々な染色体領域が特定されている(非特許文献10〜12)。虚血性心疾患を持つ対象について、110個の候補遺伝子から207個の多型を調べたところ、女性のメタボリック症候群患者において、LDL受容体関連タンパク質関連タンパク1(LDL receptor-related protein-associated protein-1)の遺伝子中のアミノ酸変異を生じない多型との関連が示唆された(非特許文献13)。更に男性において、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)遺伝子中のLeu162Val多型においてVal162対立遺伝子の頻度が増加すると、肥満、高トリグリセリド血症、高アポリポ蛋白B血症、およびHDLコレステロール濃度の低下が認められた(非特許文献14)。これらは、全てメタボリック症候群の要因である。また、PPARγ遺伝子のハプロタイプもまた、メタボリック症候群のリスク増加と関連している(非特許文献15)。
しかしながら、メタボリック症候群の遺伝要因については、未だ十分解明されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、メタボリック症候群について、遺伝的リスクを判断するための一材料を得るための遺伝子検出法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、メタボリック症候群に関し、1788名の日本人について、134遺伝子中の158カ所の遺伝子多型に関する大規模研究である。本研究の目的は、メタボリック症候群に関与する遺伝子多型を同定し、この知見に基づいて、ある者に対してメタボリック症候群を予防するための有用な情報を与えることである。
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明に係るメタボリック症候群のリスク検出法は、APOA5の−1131T→C、GCKの−30G→A、F7の11496G→A、LPLの1595C→G、SLC26A8のA→G、APOA1の−75G→A、LIPCの−250G→A、CX3CR1の926C→T、GCLCの−129C→T、GYS1の260A→G、SREBF1の−36/3G→2G、ENGの1691C→G、AGERの268G→A、LTAの804C→A、SAHのA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差、喫煙の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記15個には限られず、これら15個の多型のうちの任意の1個〜14個、或いは本明細書中で示される上記15個の他の多型を含む16個以上で実施することもできる。
【0007】
本明細書中において、多型の記載方法は、次の通りである。原則として、各遺伝子について、「多型が生じている位置、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)→多型塩基」の順で記載する。例えば、「APOA5の−1131T→C」は、APOA5遺伝子について、−1131位のTがCとなっている多型を意味している。但し、挿入あるいは欠失多型については、「多型が生じている位置/データベースに登録されている数とその塩基→塩基数及び塩基」の順で記載する。例えば、「SREBF1の−36/3G→2G」は、SREBF1遺伝子について、−36位の3個の連続するGが、2個の連続するGとなる多型を意味している。また、場所の指定がない多型(例えば、SLC26A8のA→G)については、表1〜表5に記載のdbSNPのアクセス番号から、その内容を容易に理解することができる。
なお、APOA5の−1131T→Cについては、dbSNPのrs番号(rs662799)を見ると、順方向(forward strand)に読んでA/G多型として記録されているが、逆方向(reverse strand)で読むとT/C多型となる。多くの文献について、このSNPは「−1131T/C」多型として記載されているので、本明細書においても上記の通りに記載する。
【0008】
一般に多型は、集団(例えば、日本人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なることが知られている。このため、日本人以外の集団において、脳血管障害との関係が指摘されている多型であっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、国または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人における多型およびメタボリック症候群との関連が裏付けられるわけではない。
【0009】
また、第2の発明に係るメタボリック症候群の遺伝的リスク検出法は、APOA5の−1131T→C、GCKの−30G→A、F7の11496G→A、LPLの1595C→G、SLC26A8のA→G、APOA1の−75G→A、LIPCの−250G→A、CX3CR1の926C→T、GCLCの−129C→T、GYS1の260A→G、SREBF1の−36/3G→2G、ENGの1691C→G、AGERの268G→A、LTAの804C→A、SAHのA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタボリック症候群について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法等が提供される。この発明を用いることにより、メタボリック症候群に対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0012】
<試験方法>
研究対象
研究対象は、1788名(男性1033名、女性755名)の日本人であった。彼らは、研究参加施設(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院、弘前大学病院、黎明郷リハビリテーション病院)に、2002年10月から2005年3月までに来院した者であった。メタボリック症候群の診断は、ATPIIIによって提供されたメタボリック症候群の定義(非特許文献7)を一部変更した改訂版に基づいて行った。この改訂版は、西スコットランド冠状動脈血栓症防止研究(非特許文献16)及び女性の健康研究(非特許文献17)で使用されたものであり、「腰回り長さ」に代えて「肥満指数(BMI)」が用いられている。日本人およびアジア人において肥満を評価するためのBMI基準に関する最近の改訂に基づき(非特許文献18)、BMIとして25kg/m以上を肥満と定義した。
【0013】
次の5個の因子のうち3個以上を有している者をメタボリック症候群であると定義した。5個の因子は、(1)BMIが25kg/m以上、(2)トリグリセリド(triglycerides)の血清濃度が15.5mmol/L(150mg/dL)以上、(3)HDLコレステロールの血清濃度が、男性では1.04mmol/L(40mg/dL)未満、女性では1.30mmol/L(50mg/dL)未満、(4)最高血圧が130mmHg以上であり、最低血圧が85mmHg以上、及び(5)空腹時血漿グルコース濃度が6.05mmol/L(110mg/dL)以上とした。これらの基準に基づいて、1017名の対象者(男性634名、女性383名)がメタボリック症候群であると診断された。
【0014】
コントロール者は、毎年の健康診断のために参加病院の外来を受診した者であり、771名(男性399名、女性372名)から構成されていた。コントロール者については、肥満、高脂血症、血清脂質異常、高血圧症、または糖尿病のいずれの既往歴もなく、上記5個の要因のいずれにも当てはまらない者であった。研究プロトコールはヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0015】
多型の選択
公開データベースの使用および本発明者の鋭意検討により、肥満、高脂血症、血清脂質異常、高血圧、および糖尿病に関する包括的な検討に基づき、メタボリック症候群に関連する可能性のある134個の候補遺伝子を選択した。本発明者は、これら134個の遺伝子について、158個の多型を選択した。これらの多型の多くは、プロモーター領域、エクソン、イントロンのスプライシングの供与部位或いは受容部位に多く位置しており、多型の結果として、コードされたタンパク質の機能または発現に変化を与える可能性があるものであった。これら158個の多型は、下記表1〜表5に示した。なお、表中においては、左欄から順に、座位(Locus)、遺伝子名(Gene)、簡易記載(Symbol)、多型(Polymorphism)、多型データベース登録番号(dbSNP)を示している。なお、多型データベース登録番号が無い場合には、NCBI遺伝子バンクに登録されている番号を示した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
【表5】

【0021】
遺伝子多型の検出方法
7mLの静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。164個の多型の遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT:Luminex 100)と組み合わせて使用する方法によって決定した(G&Gサイエンス株式会社)。プライマー、プローブ、その他の条件は、下表6に示した。表6は左から順に、遺伝子表記(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、センスプライマー(Sense primer)、アンチセンスプライマー(Antisense primer)、プローブ1(Probe 1)、プローブ2(Probe 2)、アニーリング温度(Annealing)、およびサイクル数(Cycles)を示した。また、詳細な方法については、既報のもの(非特許文献19)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、メタボリック症候群との関連が認められなかった多型を検出するための条件については記載を省略した。
【0022】
【表6】

【0023】
PCR−SSOP−Luminex法
方法の詳細については、非特許文献19に記載の通りである。以下には、この方法の概要について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面には、特異的な塩基配列を認識するプローブが結合されている。各ビーズには、一種類のプローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との割合を変化させることにより、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。複数種類のプローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
【0024】
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示した。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチンでラベルしたプライマーを用いた。1.5mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH8.3)、2%DMSO、0.2mM dNTPs、及び0.1μM〜10μMプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(50U/mL)と50ng〜100ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0025】
<ハイブリダイゼーション(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(3.75M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
【0026】
<ストレプトアビジン−フィコエリトリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリダイゼーション反応の後、各ウエルに100μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
【0027】
<測定(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行い、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
【0028】
統計解析
臨床データは、メタボリック症候群(metabolic syndrome)とコントロール群との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。3群間のデータの比較は、一元配置分散分析とダネットのポストホックテスト(Dunnett's post hoc test)を行った。質的データは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を使った。各常染色体上の遺伝子多型における遺伝子型分布は、メタボリック症候群とコントロール群との間でカイ二乗検定(3x2)によって比較した。X染色体上にある遺伝子多型については、対立遺伝子頻度をカイ二乗検定(2x2)によって比較した。
【0029】
メタボリック症候群と関連(P<0.07)する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:女性=0、男性=1)、喫煙状態(smoking:非喫煙者=0、喫煙者=1)、および各遺伝子型を独立変数とし、メタボリック症候群を従属変数とした。各遺伝子型は、優性、劣性、および2つの付加(付加1および2)遺伝モデルに従って評価し、P値、オッズ比、および95%信頼区間を計算した。
【0030】
各遺伝モデルは2つの群から成る。優性モデルは「変異型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」対「野生型のホモ接合体」、劣性モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」、付加1モデルは「ヘテロ接合体」対「野生型のホモ接合体」、付加2モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体」である。また、メタボリック症候群に対する遺伝子型または他の交絡因子の効果を確認するために、ステップワイズ変数増加法により解析を行った。モデルへの包含の基準レベルを0.25とし、モデルからの除外の基準レベルを0.1とした。
【0031】
メタボリック症候群と遺伝子型の多重比較の結果を得る際に、タイプIエラーを避けるために統計的有意性(P<0.001)の厳密な基準を採用した。その他の臨床的バックグラウンドデータについては、危険率5%未満(P<0.05)は統計的に有意であると見なした。統計的有意性は、両側検定によって試験した。統計解析は、JMPソフトウェア・バージョン5.1(SASインスティテュート社製)によって実行した。
【0032】
<試験結果>
1788名の研究対象に関する背景データを表7に示した。表には、左欄より順に、特徴(Characteristics)、メタボリック症候群(Metabolic syndrome)、およびコントロール者(Controls)を示している。また、特徴欄は、上より順に、者数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(男性/女性)(Sex(male/female))、現在または過去の喫煙率(Current or former smoker)、肥満指数(Body mass index)、最高血圧(Systolic blood pressure)、最低血圧(Diastolic
blood pressure)、総コレステロール(Total cholesterol)、トリグリセリド(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、及び空腹時血糖(Fasting plasma glucose)を示している。
【0033】
【表7】

【0034】
データは、平均±SDで示した。喫煙率については、一日あたり10本以上を吸った場合を喫煙とした。また表中、「*」はコントロールとの間でP<0.001を意味している。
年齢、男性の割合、及び喫煙率については、メタボリック症候群は、コントロールに比べて有意に高かった。BMI、最高血圧、最低血圧、血清総コレステロール・トリグリセリド、空腹時血糖値についても、メタボリック症候群がコントロールに比べて有意に高かった。一方、血清HDLコレステロールについては、メタボリック症候群がコントロールに比べて、有意に低値であった。
次に、メタボリック症候群のリスク診断を行うために必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・性別・喫煙について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、メタボリック症候群に関するリスク診断を行えることが分かった。
【0035】
<メタボリック症候群のリスク診断システム>
表8には、メタボリック症候群のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子(Conventional risk factors)と、今回の研究で見出された遺伝因子(Genetic risk factors)のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
【0036】
【表8】

【0037】
後述のステップワイズ変数増加法で危険率が0.05未満(P <0.05)であった遺伝子多型群および年齢・性別・喫煙を独立因子(交絡因子)とし、メタボリック症候群を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を各因子について算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な疾患発症リスクを予測することができる。多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別(男性の方が高リスク)および喫煙が、遺伝因子としては、APOA5、F7、LIPC、LPL、GCK、GYS1、CX3CR1、APOA1、LTA、ENG、SLC26A8、AGER、SREBF1、SAH、GCLCの各遺伝子多型がメタボリック症候群の発症に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が2.03、遺伝因子では最小オッズ比が0.005で最大オッズ比が8.21であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.005で最大オッズ比が16.66であり、3332倍の差が認められた。
【0038】
本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニックまたは健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と今回の遺伝因子に関する検査を行い、メタボリック症候群の発症リスクの予測を行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を3段階以上(例えば、5段階)に分ける。例えば、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。
実際に本研究において、リスク値の分布は、リスクが高い群では疾患群が88.8%でコントロール群が5.7%、リスクがやや高い群では疾患群が3.7%でコントロール群が9.9%、平均的リスクの群では疾患群が7.5%でコントロール群が84.4%、リスクがやや低い群では疾患群が0%でコントロール群が0%、リスクが低い群では疾患群が0%でコントロール群も0%であった。また、平均±0.5SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+0.5SDから平均+1.5SDをやや高リスク群、平均+1.5SD以上を高リスク群とし、平均−0.5SDから平均−1.5SDをやや低リスク群、平均−1.5SD以下を低リスク群とした場合、リスクが高い群では疾患群が90.0%でコントロール群は8.6%、リスクがやや高い群では疾患群が4.7%でコントロール群が11.8%、平均的リスクの群では疾患群が4.5%でコントロール群が35.7%、リスクがやや低い群では疾患群が0.8%でコントロール群が43.9%、リスクが低い群では疾患群が0%でコントロール群も0%であった。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。実際に本研究における疾患群の分布は、リスクが高い群は87.8%(コントロール群は4.7%)、リスクがやや高い群は8.0%(コントロール群は20.4%)、平均的リスクの群は4.0%(コントロール群は50.0%)、リスクがやや低い群は0.2%(コントロール群は20.0%)、リスクが低い群は0%(コントロール群は4.9%)であった。本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に加齢もメタボリック症候群の危険因子と考えられているので、この因子を含めることもできる。
【0039】
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけ高リスク群またはやや高リスク群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・食事療法・運動療法・肥満の軽減・ストレス解消・睡眠不足解消など)や、危険因子の早期治療(高血圧・糖尿病・高脂血症の治療など)を行うことによりメタボリック症候群の一次・二次予防を積極的に推進する。遺伝因子は変更できないが、従来の危険因子は軽減・治療可能であるため、これらの因子を治療した場合に発症リスクがどの程度減少するかについても予測し(表8から算出することができる)、クライアントに説明する。特にメタボリック症候群や肥満・高脂血症・糖尿病・高血圧の家族歴のある人への適用が有効である。本システムによりメタボリック症候群のオーダーメイド予防が可能になり、その結果、メタボリック症候群に起因する心筋梗塞や脳梗塞の罹患率を減少させ、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0040】
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、16個の遺伝子多型がメタボリック症候群との関連を示した(P<0.07)。詳細を表9示した。表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
【0041】
【表9】

【0042】
これらの多型については、メタボリック症候群との関連について更に詳細に分析した。年齢、性別、および喫煙頻度を補正した多項ロジスティック回帰分析を行ったところ、特にアポリポプロテインA−V遺伝子(APOA5)の−1131T→C多型が全てのモデルにおいてメタボリック症候群の罹患率に有意に(P<0.001)関連した。またこのとき、APOA5の−1131C対立遺伝子は、メタボリック症候群に対する危険因子となっていた。詳細を表10に示した。
【0043】
【表10】

【0044】
表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、優性モデル(Dominant)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、劣性モデル(Recessive)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加1モデル(Additive 1)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加2モデル(Additive 2)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)をそれぞれ示している。多項ロジスティック回帰分析は、年齢、性別、および喫煙の有無について補正して行った。また、表中、危険率が0.001未満(P<0.001)のデータについては、太字で示した。メタボリック症候群との関連が最も強いAPOA5の−1131T→C多型では、メタボリック症候群においては、TT遺伝子型が37.5%、TC遺伝子型が47.4%、CC遺伝子型が15.1%であり、コントロールにおいては、TT遺伝子型が48.6%、TC遺伝子型が41.7%、CC遺伝子型が9.7であった
【0045】
次に、メタボリック症候群に対する16個の多型の遺伝子型、年齢、性別、および喫煙の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表11に示した。表中には、左欄より順に、因子(Variable)、P値(P value)、寄与率(R2)を示している。
【0046】
【表11】

【0047】
統計的有意性が高い順に、APOA5遺伝子型(優性モデル)、年齢、および性別が有意であり(P<0.001)、各要因が独立してメタボリック症候群に影響を与えることが分かった。
メタボリック症候群とコントロールとにおいて、APOA5の−1131T/C遺伝子多型の各遺伝子型について、臨床的特徴を比較した。詳細を表12に示した。
【0048】
【表12】

【0049】
データは平均±SDで示した。表中、(a)はTT+TCとの間でP=0.018、(b)はTTとの間でP<0.001、TCとの間でP=0.002、(c)はTTとの間でP=0.014、(d)はTCとの間でP=0.049、CCとの間でP<0.001、(e)はTTとの間でP=0.017、(f)はTTとの間でP=0.032であったことを意味している。
メタボリック症候群では、CC遺伝子型は、血清トリグリセリド値が、他の遺伝子型(TT、またはTC)の値よりも高かった。また、TT遺伝子型は、HDL−コレステロール値が、他の遺伝子型(CCまたはTC)の値よりも高かった。TC遺伝子型は、空腹時血糖値がTT遺伝子型の値よりも高かった。
また、コントロールにおいては、血清トリグリセリドとHDL−コレステロール値について、メタボリック症候群と同様の傾向が認められたものの、APOA5の−1131T/C遺伝子多型の各遺伝子型の間で見られる差は、メタボリック症候群ほど高くなかった。
【0050】
<考察>
本発明者は、メタボリック症候群との関連が疑われる134個の候補遺伝子について、158カ所の多型を調べた。1788人の被験者について大規模研究を行ったところ、APOA5の−1131T→C多型が、日本人のメタボリック症候群の罹患率と有意に関係していた。APOA5(11q23)を含んでいる染色体領域については、これまでメタボリック症候群との関連が指摘されたことはなかった(非特許文献10〜12)。また、APOA5遺伝子についても、メタボリック症候群との関連は指摘されていない。
【0051】
APOA5は、2001年になって同定された新しいアポリポタンパク質であり、血漿トリグリセリド濃度との関連が指摘されている(非特許文献20)。APOA5遺伝子は、11q23中の良く知られたAPOA1−APOA3−APOA4遺伝子クラスターの約27kb上流に位置している(非特許文献21)。ヒトAPOA5は、4つのエクソンから構成されており、369個のアミノ酸をコードしている(アポリポタンパク質A−V)(非特許文献20)。マウスを使った機能解析によれば、APOA5発現量を変化させると、血漿トリグリセリド濃度に影響を与えることが示されている。ヒトAPOA5を過剰発現させたトランスジェニックマウスでは、血漿トリグリセリド濃度が、コントロールマウスのそれに比べると1/3となったのに対し、APOA5のノックアウトマウスでは、トリグリセリド濃度は、コントロールマウスのそれに比べ4倍となった(非特許文献20)。マウスを用い、アデノウイルスを使ってマウスAPOA5を過剰に発現させると、血漿トリグリセリド濃度が60%〜70%も減少することが示され、そのトリグリセリド濃度の減少の大部分は、VLDL画分の減少であった(非特許文献22)。
【0052】
ヒトAPOA5のプロモーター領域における−1131T→C多型は、多くの人種において血漿トリグリセリド濃度に対して独立して影響を与えること、及びこのときにはC対立遺伝子が危険因子となることが知られている(非特許文献20、23〜28)。この多型は、アジア人および白人において、トリグリセリド濃度とHDL−コレステロール濃度に影響を与えること、及びC対立遺伝子があるとHDL−コレステロール濃度が減少することが示された(非特許文献24〜28)。APOA5のコード領域に認められる56C→G(Ser19Trp)多型は、アフリカ系アメリカ人、ラテンアメリカ人、および白人において、血漿トリグリセリド濃度に影響を与えることが知られている(非特許文献29)。更に、この遺伝子の553G→T(Gly185Cys)変異は、台湾人において高トリグリセリド血症を起こすことが分かっている(非特許文献30)。これらの知見によれば、APOA5はヒトにおいて、トリグリセリドの代謝、及びおそらくHDL−コレステロールの代謝に重要な役割を持っていることが示唆される。
【0053】
APOA5の−1131T→C多型は、血漿トリグリセリド濃度を上昇させることにより、冠動脈疾患の罹患に関与していると報告されている(非特許文献31〜33)。本研究によれば、この多型は有意にメタボリック症候群に関与しており、このときC対立遺伝子が危険因子であることが分かった。また、本研究の知見として、C対立遺伝子が血清トリグリセリド濃度を上昇させ、HDL−コレステロール濃度を減少させることが分かった。この知見から、この多型がメタボリック症候群に影響を与えるのは、APOA5がトリグリセリドとHDL−コレステロール代謝に関与していることに依るものだと考えられる。これまでの報告から、この多型が血清トリグリセリドおよびHDL−コレステロール濃度に影響を与えることが分かっており(非特許文献24〜28)、これは今回の本発明者らの知見と整合するものである。メタボリック症候群が冠動脈疾患の主要な危険因子であることから、本発明者の知見は、この多型が冠動脈疾患に関与するというこれまでの報告(非特許文献31〜33)を支持している。
【0054】
アポリポタンパク質A−Vのトリグリセリド代謝に関する影響の分子機構については、依然として不明のままである。アポリポタンパク質A−Vは、疎水性の境界面に対して、高親和性、低弾性、及び遅い結合速度を示す(非特許文献34)。これらの性質は、トリグリセリドを多く含む粒子の構築を遅らせるかもしれない。APOA5トランスジェニックマウスでは、VLDL−トリグリセリドが非常に減少するという知見に加え、組換えアポリポタンパク質A−Vがリポタンパクリパーゼと結合し、その活性を上昇させるというインビトロ試験データがある(非特許文献35)。アポリポタンパク質A−Vは、肝臓でのVLDLの合成を減少させると共に、VLDLの除去を進めることにより、VLDL−トリグリセリド濃度を減少させているのかも知れない。
【0055】
APOA5のプロモーター領域における−1131T→C多型は、この遺伝子の発現を調節することによって、血清アポリポタンパクA−V濃度に影響を与えているのかも知れない。ペルオキシソーム増殖因子応答配列(peroxisome proliferator response element:PPRE)が、APOA5プロモーター領域に存在すると報告されている(非特許文献36)。APOA5の発現は、PPARαとPPREの働きによって増加するとの報告がある(非特許文献37)。APOA5の−1131T→C多型は、PPARαのPPREに対する親和性、あるいは未知の調節因子に対する転写因子の結合力を変化させることにより、遺伝子発現に影響を与えているのかも知れない。
【0056】
本発明者が得た結果は、APOA5が、日本人のメタボリック症候群に影響を与えることを示している。この多型の遺伝子型を決定することは、メタボリック症候群の遺伝的リスクを評価するために有益であり、この疾患の予防に資することになると考える。
このように本実施形態によれば、メタボリック症候群について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、メタボリック症候群の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0057】
【非特許文献1】Ford ES, Giles WH, Dietz WH. Prevalence of the metabolic syndrome among US adults: findings from the Third National Health and Nutrition Examination Survey. JAMA. 2002;287:356-359.
【非特許文献2】Haffner SM, Valdez RA, Hazuda HP, Mitchell BD, Morales PA, Stern MP. Prospective analysis of the insulin-resistance syndrome (syndrome X). Diabetes. 1992;41:715-722.
【非特許文献3】Isomaa B, Almgren P, Tuomi T, Forsen B, Lahti K, Nissen M, Taskinen M-R, Groop L. Cardiovascular morbidity and mortality associated with the metabolic syndrome. Diabetes Care. 2001;24:683-689.
【非特許文献4】Park Y-W, Zhu S, Palaniappan L, Heshka S, Carnethon MR, Heymsfield SB. The metabolic syndrome: prevalence and associated risk factor findings in the US population from the Third National Health and Nutrition Examination Survey, 1988-1994. Arch Intern Med. 2003;163:427-436.
【非特許文献5】Modan M, Halkin H, Almog S, Lusky A, Eshkol A, Shefi M, Shitrit A, Fuchs Z. Hyperinsulinemia: a link between hypertension, obesity and glucose intolerance. J Clin Invest. 1985;75:809-817.
【非特許文献6】DeFronzo RA, Ferrannini E. Insulin resistance: a multifaceted syndrome responsible for NIDDM, obesity, hypertension, dyslipidaemia and atherosclerotic cardiovascular disease. Diabetes Care. 1991;14:173-194.
【非特許文献7】Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III). JAMA. 2001;285:2486-2497.
【非特許文献8】Liese AD, Mayer-Davis EJ, Tyroler HA, Davis CE, Keil U, Schmidt MI, Brancati FL, Heiss G. Familial components of the multiple metabolic syndrome: the ARIC Study. Diabetologia. 1997;40:963-970.
【非特許文献9】Groop L. Genetics of the metabolic syndrome. Br J Nutr. 2000;83:S39-S48.
【非特許文献10】Kissebah AH, Sonnenberg GE, Myklebust J, Goldstein M, Broman K, James RG, Marks JA, Krakower GR, Jacob HJ, Weber J, Martin L, Blangero J, Comuzzie AG. Quantitative trait loci on chromosomes 3 and 17 influence phenotypes of the metabolic syndrome. Proc Natl Acad Sci USA. 2000;97:14478-14483.
【非特許文献11】Francke S, Manraj M, Lacquemant C, Lecoeur C, Lepretre F, Passa P, Hebe A, Corset L, Yan SLK, Lahmidi S, Jankee S, Gunness TK, Ramjuttun US, Balgobin V, Dina C, Froguel P. A genome-wide scan for coronary heart disease suggests in Indo-Mauritians a susceptibility locus on chromosome 16p13 and replicates linkage with the metabolic syndrome on 3q27. Hum Mol Genet. 2001;10:2751-2765.
【非特許文献12】Langefeld CD, Wagenknecht LE, Rotter JI, Williams AH, Hokanson JE, Saad MF, Bowden DW, Haffner S, Norris JM, Rich SS, Mitchell BD. Linkage of the metabolic syndrome to 1q23-q31 in Hispanic families: the Insulin Resistance Atherosclerosis Study Family Study. Diabetes. 2004;53:1170-1174.
【非特許文献13】McCarthy JJ, Meyer J, Moliterno DJ, Newby LK, Rogers WJ, Topol EJ. Evidence for substantial effect modification by gender in a large-scale genetic association study of the metabolic syndrome among coronary heart disease patients. Hum Genet. 2003;114:87-98.
【非特許文献14】Robitaille J, Brouillette C, Houde A, Lemieux S, Perusse L, Tchernof A, Gaudet D, Vohl M-C. Association between the PPAR-alpha-L162V polymorphism and components of the metabolic syndrome. J Hum Genet 2004;49:482-489.
【非特許文献15】Meirhaeghe A, Cottel D, Amouyel P, Dallongeville J. Association between peroxisome proliferator-activated receptor gamma haplotypes and the metabolic syndrome in French men and women. Diabetes. 2005;54:3043-3048.
【非特許文献16】Sattar N, Gaw A, Scherbakova O, Ford I, O'Reilly DS, Haffner SM, Isles C, Macfarlane PW, Packard CJ, Cobbe SM, Shepherd J. Metabolic syndrome with and without C-protein as a predictor of coronary heart disease and diabetes in the West of Scotland Coronary Prevention Study. Circulation. 2003;108:414-419.
【非特許文献17】Ridker PM, Buring JE, Cook NR, Rifai N. C-reactive protein, the metabolic syndrome, and risk of incident cardiovascular events: an 8-year follow-up of 14719 initially healthy American women. Circulation. 2003;107:391-397.
【非特許文献18】Kanazawa M, Yoshiike N, Osaka T, Numba Y, Zimmet P, Inoue S. Criteria and classification of obesity in Japan and Asia-Oceania. Asia Pac J Clin Nutr. 2002;11:S732-S737.
【非特許文献19】Itoh Y, Mizuki N, Shimada T, Azuma F, Itakura M, Kashiwase K, Kikkawa E, Kulski JK, Satake M, Inoko H. High-throughput DNA typing of HLA-A, -B, -C, and -DRB1 loci by a PCR-SSOP-Luminex method in the Japanese population. Immunogenetics. 2005;57:717-729.
【非特許文献20】Pennacchio LA, Olivier M, Hubacek JA, Cohen JC, Cox DR, Fruchart JC, Krauss RM, Rubin EM. An apolipoprotein influencing triglycerides in humans and mice revealed by comparative sequencing. Science. 2001;294:169-173.
【非特許文献21】Groenendijk M, Cantor RM, de Bruin TW, Dallinga-Thie GM. The apoAI-CIII-AIV gene cluster. Atherosclerosis.2001;157:1-11.
【非特許文献22】van der Vliet HN, Schaap FG, Levels JH, Ottenhoff R, Looije N, Wesseling JG, Groen AK, Chamuleau RA. Adenoviral overexpression of apolipoprotein A-V reduces serum levels of triglycerides and cholesterol in mice. Biochem Biophys Res Commun. 2002;295:1156-1159.
【非特許文献23】Nabika T, Nasreen S, Kobayashi S, Masuda J. The genetic effect of the apoprotein AV gene on the serum triglyceride level in Japanese. Atherosclerosis. 2002;165:201-204.
【非特許文献24】Endo K, Yanagi H, Araki J, Hirano C, Yamakawa-Kobayashi K, Tomura S. Association found between the promoter region polymorphism in the apolipoprotein A-V gene and the serum triglyceride level in Japanese schoolchildren. Hum Genet. 2002;111:570-572.
【非特許文献25】Lai CQ, Tai ES, Tan CE, Cutter J, Chew SK, Zhu YP, Adiconis X, Ordovas JM. The APOA5 locus is a strong determinant of plasma triglyceride concentrations across ethnic groups in Singapore. J Lipid Res. 2003;44:2365-2373.
【非特許文献26】Aouizerat BE, Kulkarni M, Heilbron D, Drown D, Raskin S, Pullinger CR, Malloy MJ, Kane JP. Genetic analysis of a polymorphism in the human apoA-V gene: effect on plasma lipids. J Lipid Res. 2003;44:1167-1173.
【非特許文献27】Evans D, Buchwald A, Beil FU. The single nucleotide polymorphism -1131T→C in the apolipoprotein A5 (APOA5) gene is associated with elevated triglycerides in patients with hyperlipidemia. J Mol Med. 2003;81:645-654.
【非特許文献28】Li GP, Wang JY, Yan SK, Chen BS, Xue H, Wu G. Genetic effect of two polymorphisms in the apolipoprotein A5 gene and apolipoprotein C3 gene on serum lipids and lipoproteins levels in a Chinese population. Clin Genet. 2004;65:470-476.
【非特許文献29】Pennacchio LA, Olivier M, Hubacek JA, Krauss RM, Rubin EM, Cohen JC. Two independent apolipoprotein A5 haplotypes influence human plasma triglyceride levels. Hum Mol Genet. 2002;11:3031-3038.
【非特許文献30】Kao JT, Wen HC, Chien KL, Hsu HC, Lin SW. A novel genetic variant in the apolipoprotein A5 gene is associated with hypertriglyceridemia. Hum Mol Genet. 2003;12:2533-2539.
【非特許文献31】Bi N, Yan SK, Li GP, Yin ZN, Chen BS. A single nucleotide polymorphism -1131T→C in the apolipoprotein A5 gene is associated with an increased risk of coronary artery disease and alters triglyceride metabolism in Chinese. Mol Genet Metab. 2004;83:280-286.
【非特許文献32】Szalai C, Keszei M, Duba J, Prohaszka Z, Kozma GT, Csaszar A, Balogh S, Almassy Z, Fust G, Czinner A. Polymorphism in the promoter region of the apolipoprotein A5 gene is associated with an increased susceptibility for coronary artery disease. Atherosclerosis. 2004;173:109-114.
【非特許文献33】Hsu LA, Ko YL, Chang CJ, Hu CF, Wu S, Teng MS, Wang CL, Ho WJ, Ko YS, Hsu TS, Lee YS. Genetic variations of apolipoprotein A5 gene is associated with the risk of coronary artery disease among Chinese in Taiwan. Atherosclerosis. 2005; [Epub ahead of print].
【非特許文献34】Weinberg RB, Cook VR, Beckstead JA, Martin DD, Gallagher JW, Shelness GS, Ryan RO. Structure and interfacial properties of human apolipoprotein A-V. J Biol Chem. 2003;278:34438-34444.
【非特許文献35】Fruchart-Najib J, Bauge E, Niculescu LS, Pham T, Thomas B, Rommens C, Majd Z, Brewer B, Pennacchio LA, Fruchart JC. Mechanism of triglyceride lowering in mice expressing human apolipoprotein A5. Biochem Biophys Res Commun. 2004;319:397-404.
【非特許文献36】Vu-Dac N, Gervois P, Jakel H, Nowak M, Bauge E, Dehondt H, Staels B, Pennacchio LA, Rubin EM, Fruchart-Najib J, Fruchart JC. Apolipoprotein A5, a crucial determinant of plasma triglyceride levels, is highly responsive to peroxisome proliferator-activated receptor α activators. J Biol Chem. 2003;278:17982-17985.
【非特許文献37】Prieur X, Coste H, Rodriguez JC. The human apolipoprotein AV gene is regulated by peroxisome proliferator-activated receptor-α and contains a novel farnesoid X-activated receptor response element. J Biol Chem. 2003;278:25468-25480.
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。
【図2】PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
APOA5の−1131T→C、GCKの−30G→A、F7の11496G→A、LPLの1595C→G、SLC26A8のA→G、APOA1の−75G→A、LIPCの−250G→A、CX3CR1の926C→T、GCLCの−129C→T、GYS1の260A→G、SREBF1の−36/3G→2G、ENGの1691C→G、AGERの268G→A、LTAの804C→A、SAHのA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差、喫煙の有無とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とするメタボリック症候群のリスク検出法。
【請求項2】
APOA5の−1131T→C、GCKの−30G→A、F7の11496G→A、LPLの1595C→G、SLC26A8のA→G、APOA1の−75G→A、LIPCの−250G→A、CX3CR1の926C→T、GCLCの−129C→T、GYS1の260A→G、SREBF1の−36/3G→2G、ENGの1691C→G、AGERの268G→A、LTAの804C→A、SAHのA→Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とするメタボリック症候群の遺伝的リスク検出法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−209297(P2007−209297A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34875(P2006−34875)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(399077674)G&Gサイエンス株式会社 (21)
【出願人】(500572649)財団法人岐阜県国際バイオ研究所 (10)
【出願人】(506023806)
【Fターム(参考)】