説明

メタマテリアル構造に基づくデバイス

【課題】アンテナ及びアンテナアレーの異なる信号チャネル間の干渉の低減、ビーム形成及びヌル形成の改善などを行う。
【解決手段】一つ又は複数の右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造に基づき、アンテナ、アンテナアレー、及び他のRFデバイスをCRLH上に形成する。CRLHメタマテリアル構造は、無線通信RFフロントエンド及びアンテナサブシステムで使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張と関連出願
本出願は、下記の米国仮特許出願の利益を主張するものである。
【0002】
1. 2006年4月27日に出願された「Compact Multiple Input Multiple Output (MIMO) A
ntenna Systems Using Metamaterials」という表題の米国仮特許出願第60/795,845号。
【0003】
2. 2006年8月25日に出願された「Broadband and Compact Multiband Metamaterial St
ructures and Antennas」という表題の米国仮特許出願第60/840,181号。
【0004】
3. 2006年9月22日に出願された「Advanced Metamaterial Antenna Sub-Systems」とい
う表題の米国仮特許出願第60/826,670号。
【0005】
上記の出願の開示は、参照により本出願の明細書の一部として組み込まれる。
【0006】
本出願は、メタマテリアル(MTM)構造及びその応用に関する。
【背景技術】
【0007】
大半の物質中の電磁波の伝搬は、Eを電場、Hを磁場、βを波数ベクトルとする(E,H,β)
ベクトル場に対する右手の法則に従う。位相速度方向は、信号エネルギー伝搬の方向と同
じであり(群速度)、屈折率は、正の数である。このような物質は、「右手系」(RH)の物質
である。大半の天然材料は、RH物質である。人工物質も、RHの物質としてよい。
【0008】
メタマテリアルは、人工構造である。構造平均ユニットセルサイズpをメタマテリアル
により誘導される電磁エネルギーの波長よりもかなり小さいものとして設計した場合、メ
タマテリアルは、誘導される電磁エネルギーに対し均質媒質のように振る舞う可能性があ
る。RH物質と異なるメタマテリアルは、位相速度方向が信号エネルギー伝搬の方向と反対
であり、(E,H,β)ベクトル場の相対的方向が左手の法則に従う負の屈折率を示しうる。負
の屈折率のみをサポートするするメタマテリアルは、「左手系」(LH)メタマテリアルであ
る。
【0009】
多くのメタマテリアルは、LHメタマテリアルとRH物質の混合物であり、したがって、右
手/左手系複合(CRLH)メタマテリアルである。CRLHメタマテリアルは、低い周波数ではLH
メタマテリアルと似た挙動を示し、高い周波数ではRHメタマテリアルと似た挙動を示す。
さまざまなCRLHメタマテリアルの設計及び特性が、カロズ(Caloz)及びイトウ(Itoh)、「E
lectromagnetic Metamaterials: Transmission Line Theory and Microwave Application
s」、John Wiley & Sons (2006)において説明されている。CRLHメタマテリアル及びアン
テナにおけるその応用は、タツオ・イトウ(Tatsuo Itoh)により「Invited paper: Prospe
cts for Metamaterials」Electronics Letters, Vol.40, No.16 (August, 2004)において
説明されている。
【0010】
CRLHメタマテリアルは、特定の用途に合わせて手直しされた電磁的特性を示すように構
造化及び設計され、また他の材料では使用するのが難しいか、又は非実用的であるか、又
は実行不可能でありうる用途に使用できる。それに加えて、CRLHメタマテリアルは、新し
い応用製品を開発したり、RHメタマテリアルでは実現できそうもない新しいデバイスを製
作するために使用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願では、とりわけ、電磁波信号を処理し取り扱う際に一つ又は複数の右手/左手系
複合(CRLH)メタマテリアル構造を使用する技術、装置、及びシステムを説明する。CRLHメ
タマテリアル構造に基づき、アンテナ、アンテナアレー、及び他のRFデバイスをCRLHに基
づいて形成することができる。例えば、説明されているCRLHメタマテリアル構造は、無線
通信RFフロントエンド及びアンテナサブシステムで使用されうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実装では、互いに間隔をあけて配置され、右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構
造を形成するように構造化されたアンテナ素子を備えるデバイスが説明される。それぞれ
のアンテナ素子は、CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/10の寸法を有し、
二つの隣接するアンテナ素子は、互いに波長の1/4又はそれ以下の間隔をあけて配置され
る。
【0013】
他の実装では、デバイスは、基板上に形成され、右手/左手系複合(CRLH)メタマテリア
ル構造を形成するように構造化されたユニットセルを備えるアンテナと、第2のCRLHメタ
マテリアル構造内の基板上に形成され、アンテナに結合されたRF回路素子とを備える。
【0014】
他の実装では、デバイスは、基板上に形成され、アンテナ素子を含むアンテナアレーを
備える。それぞれのアンテナ素子は、右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成
するユニットセルを備えるように構造化される。信号フィルタは、基板上に形成され、信
号フィルタは、アンテナアレーのそれぞれのアンテナ素子の信号経路に結合される。この
デバイスは、さらに、それぞれの信号増幅器がアンテナアレーのそれぞれのアンテナ素子
の信号経路に結合されている基板上に形成された複数の信号増幅器を備える。アナログ信
号処理回路が基板上に形成され、信号フィルタ及び信号増幅器を介してアンテナアレーに
結合される。アナログ信号処理回路は、アンテナアレーに向けて送られるか、又はアンテ
ナアレーから受信される信号を処理するように動作可能である。
【0015】
他の実装では、デバイスは、第1の側に第1の表面を有し、第1の側の反対側の第2の側に
第2の表面を有する誘電体基板と、第1の表面上に形成され、互いに隔てられている導電性
パッチと、第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、導電性パッチをグラウン
ド導電層に接続して、それぞれのユニットセルが第1の表面上にそれぞれの導電性パッチ
を有する体積とそれぞれの導電性経路をグラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネ
クタとを備える複数のユニットセルをそれぞれ形成するために基板内に形成された複数の
導電性ビアコネクタと、遠位端が複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチの近く
に配置され、電磁結合される導電性給電路とを備える。このデバイスは、ユニットセルか
ら右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成するように構造化され、それぞれの
ユニットセルは、CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/6以下の寸法を有す
る。
【0016】
他の実装では、デバイスは、第1の側に第1の表面を有し、第1の側の反対側の第2の側に
第2の表面を有する誘電体基板と、第1の表面上に形成され、互いに隔てられている導電性
パッチと、第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、導電性パッチをグラウン
ド導電層に接続してそれぞれ複数のユニットセルを形成するように基板上に形成される導
電性ビアコネクタとを備える。それぞれのユニットセルは、第1の表面上にそれぞれの導
電性パッチを有する体積、及びそれぞれの導電性経路をグラウンド導電層に接続するそれ
ぞれのビアコネクタを備える。このデバイスは、ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH
)メタマテリアル構造を形成するように構造化され、グラウンド導電層は、それぞれの導
電性パッチの下の寸法がそれぞれの導電性パッチの寸法よりも小さくなるようにパターン
形成される。
【0017】
他の実装では、デバイスは、第1の側に第1の表面を有し、第1の側の反対側の第2の側に
第2の表面を有する誘電体基板と、第1の表面上に形成され、互いに隔てられて二次元アレ
ーを形成する導電性パッチと、第1の表面上に形成され、前記複数の導電性パッチのうち
の一つの導電性パッチに電磁結合される導電性給電路と、第2の表面上に形成されている
グラウンド導電層と、導電性パッチをグラウンド導電層に接続してそれぞれ空間異方性を
示す二次元アレーとしてユニットセルを形成するように基板上に形成される導電性ビアコ
ネクタとを備える。それぞれのユニットセルは、第1の表面上にそれぞれの導電性パッチ
を有する体積、及びそれぞれの導電性経路をグラウンド導電層に接続するそれぞれのビア
コネクタを備える。このデバイスは、ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテ
リアル構造を形成するように構造化され、導電性給電路は、二つの異なる周波数で二つの
モードを励起するように二次元アレーの対称位置からずれているユニットセルに結合され
る。
【0018】
他の実装では、デバイスは、第1の側に第1の表面を有し、第1の側の反対側の第2の側に
第2の表面を有する誘電体基板と、第1の表面上に形成され、互いに隔てられて二次元アレ
ーを形成する導電性パッチと、第1の表面上に形成され、第1の方向にそった二次元アレー
の中心対称線にそっている前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチに電磁結
合される第1の導電性給電路と、第1の表面上に形成され、第2の方向にそった二次元アレ
ーの中心対称線にそっている前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチに電磁
結合される第2の導電性給電路と、第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、導
電性パッチをグラウンド導電層に接続してそれぞれ二次元アレーとしてユニットセルを形
成するように基板上に形成される導電性ビアコネクタとを備える。それぞれのユニットセ
ルは、第1の表面上にそれぞれの導電性パッチを有する体積、及びそれぞれの導電性経路
をグラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネクタを備える。このデバイスは、ユニ
ットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成するように構造化され、
ユニットセルにより形成されたCRLHメタマテリアル構造は、それぞれ第1の給電路及び第2
の給電路内にある二つの異なる周波数における二つのモードをサポートするように空間異
方性を有する。
【0019】
他の実装では、デバイスは、誘電体基板、誘電体基板の片側に形成された共通導電層、
誘導体基板の他方の側で互いに間隔をあけて配置され、誘電体基板と接触する導電性パッ
ドのアレー、及び導電性パッドを共通導電層にそれぞれ接続する導電性ビアコネクタとを
備えるメタマテリアルアンテナを具備する。金属素材のアンテナは、第1の周波数ではメ
タマテリアルアンテナの第1の方向にそって第1の共振を、第2の異なる周波数ではメタマ
テリアルアンテナの第2の方向にそって第2の共振を示すように構造化される。このデバイ
スは、さらに、第1の周波数で信号を誘導するようにメタマテリアルアンテナに結合され
た第1の導電性給電路と、第2の周波数で信号を誘導するようにメタマテリアルアンテナに
結合された第2の導電性給電路と、第1の周波数の信号を受信するように第1の導電性給電
路に接続された受信ポートを備え、送信のためメタマテリアルアンテナに向けられた第2
の周波数の伝送信号を発生するように第2の導電性給電路に接続された送信ポートを備え
る周波数分割複信(FDD)回路も具備する。メタマテリアルアンテナとFDD回路との間に結合
された独立した周波数デュプレクサはない。
【0020】
他の実装では、基板の片側に形成された分離された導電性パッチ、基板の他方の側に形
成されたグラウンド導電層、及び基板内に形成され、それぞれ導電性パッチをグラウンド
導電層にそれぞれ接続する複数の導電性ビアコネクタにより誘電体基板上に形成されたユ
ニットセルを備える右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を実現する方法が説明さ
れる。この方法は、導電性給電路をCRLHメタマテリアル構造に結合して、右手系TEMモー
ドと左手系TEMモードの混合であるTEモードを励起し、複数のTEMモードのそれぞれのモー
ドにおける帯域幅よりも広い、それぞれのTEモードにおけるより広範な帯域幅を実現する
ことを含む。
【0021】
他の実装では、デバイスは、アンテナアレー、アンテナアレーに電磁結合されたRF回路
素子、及びRF回路素子に結合されたアナログRF回路を備える。RF回路素子は、右手/左手
系複合(CRLH)メタマテリアル構造を備える。
【0022】
さらに他の実装では、デバイスは、RF信号を送受信するRFトランシーバモジュールを備
える。RFトランシーバモジュールは、互いに間隔をあけて配置されている、右手/左手系
複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成するように構造化されたアンテナ素子を備えるアン
テナアレーを具備する。それぞれのアンテナ素子は、CRLHメタマテリアル構造と共振する
信号の波長の1/10よりも大きな寸法を有する。二つの隣接するアンテナ素子は、互いに、
波長の1/6以上の間隔をあけて配置されている。RFトランシーバモジュールは、無線アク
セスポイント又は基地局とすることができる。
【0023】
説明されているCRLHメタマテリアル構造は、異なる信号チャネル間の干渉の低減、ビー
ム形成及びヌル形成の改善、アンテナ及びアンテナアレーのフォームファクタの低減、RF
回路素子及びデバイスの設計柔軟性、並びに製造原価の低減を含む、一つ又は複数の利点
を実現するために使用できる。
【0024】
これら及び他の実装は、図面、説明、及び請求項においてさらに詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
純粋なLH物質は、三つの要素からなるベクトル(E,H,β)に対する左手の法則に従い、位
相速度方向は、信号エネルギー伝搬の方向と反対である。誘電率と透磁率は両方とも負で
ある。CRLHメタマテリアルは、動作領域/周波数に応じて左手系と右手系の両方の電磁波
伝搬モードを示す。いくつかの状況の下で、これは、波数ベクトルがゼロの場合に非ゼロ
の群速度を示しうる。この状況は、左手系と右手系の両方のモードが平衡したときに生じ
る。不平衡モードでは、ωがゼロと異なる群速度と交差するのを禁止するバンドギャップ
がある。つまり、β(ω0)=0は、左手系モードと右手系モードとの間の遷移点であり、誘
導波長は、無限大λg=2π/|β|→∞となるが、群速度は正
【数1】

である。
【0026】
この状態は、左手系領域内の伝送路(TL)の実装における0次モードm=0に対応する。CRHL
構造は、近接場放射パターンを操作し、制御する独自の機能を有する電気的に大きな物理
的に小さいデバイスを組み立てることを可能にする負のβ放物型領域に従う分散関係を有
する低周波の微細スペクトルをサポートする。このTLが、0次共振器(ZOR)として使用され
る場合、これにより、共振器全体にわたる一定の振幅及び位相の共振が可能になる。ZOR
モードは、MTMベースの電力結合器/スプリッタ、指向性カプラー、マッチング回路網、及
び漏れ波アンテナを製作するために使用できる。
【0027】
RH TL共振器において、共振周波数は、lをTLの長さとし、m=1,2,3...とする電気的長さ
θmml=mπに対応する。TL長は、共振周波数の低く、幅の広いスペクトルに到達するく
らい長いものであるべきである。純粋なLH物質の動作周波数は、低い周波数である。CRLH
メタマテリアル構造は、RH及びLH物質と非常に異なり、RH及びLH物質のRFスペクトル範囲
の高位と低位の両方のスペクトル領域に到達するために使用できる。
【0028】
図1は、平衡しているCRLHメタマテリアルの分散図である。CRLH構造は、低周波数の微
細スペクトルをサポートすることができ、また無限大の波長に対応するm=0である遷移点
を含むより高い周波数を発生する。これにより、CRLHアンテナ素子と指向性カプラー、マ
ッチング回路網、増幅器、フィルタ、並びに電力結合器及びスプリッタとの継ぎ目のない
統合が可能になる。いくつかの実装では、RF又はマイクロ波回路及びデバイスは、指向性
カプラー、マッチング回路網、増幅器、フィルタ、並びに電力結合器及びスプリッタなど
のCRLH MTM構造から作ることができる。CRLHベースのメタマテリアルを使用することで、
電子制御漏洩波アンテナを漏洩波が伝搬する単一の大型アンテナ素子として製作すること
ができる。この単一の大型アンテナ素子は、向きを制御できる細いビームを発生するよう
に相隔てて並ぶ複数のセルを備える。
【0029】
図2は、MTMユニットセルの一次元アレーを備えるCRLH MTMデバイス200の一実施例を示
す。誘電体基板201は、MTMユニットセルをサポートするために使用される。四つの導電性
パッチ211は、基板201の上面に形成され、直接接触することなく互いに離して並べられる
。二つの隣接するパッチ211の間の間隙220は、それらの間を静電結合できるように設定さ
れる。隣接するパッチ211は、さまざまな幾何学的形状で互いにインターフェースするこ
とができる。例えば、それぞれのパッチ211のエッジは、パッチとパッチとの間の結合を
高めるように他のパッチ211のそれぞれの相互にかみ合うエッジと交互配置になる相互に
かみ合う形状を取りうる。基板201の底面には、グラウンド導電層202が形成され、異なる
ユニットセルに対する共通電気的接触部を構成する。グラウンド導電層202は、デバイス2
00の所望の特性又は性能が達成されるようにパターン形成されうる。導電性ビアコネクタ
212が基板201内に形成され、それぞれ導電性パッチ211をグラウンド導電層202に接続する
。この設計では、それぞれのMTMユニットセルは、上面上にそれぞれの導電性パッチ211を
有する体積、及びそれぞれの導電性パッチ211をグラウンド導電層202に接続するそれぞれ
のビアコネクタ212を備える。この実施例では、導電性給電路230は、上面上に形成され、
ユニットセルの一次元アレーの一端においてユニットセルの導電性パッチ211の近くに、
ただし隔てられて配置されている遠位端を有する。
【0030】
ユニットセルの付近に導電性ランチパッドが形成され、給電路230は、そのランチパッ
ドに接続され、ユニットセルに電磁結合される。このデバイス200は、ユニットセルから
右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成するように構造化される。このデバイ
ス200は、パッチ211を介して信号を送信又は受信するCRLH MTMアンテナとすることができ
る。CRLH MTM伝送路は、さらに、MTMセルの一次元アレーの他端上に第2の給電路を結合す
ることによりこの構造から構成することもできる。
【0031】
図2A、2B、及び2Cは、図2のそれぞれのMTMユニットセル、及びそれぞれの等価回路の電
磁波特性及び機能を例示している。図2Aは、それぞれのパッチ211とグラウンド導電層202
との間の静電結合、及び上部パッチ211にそった伝搬による誘導を示している。図2Bは、
二つの隣接するパッチ211の間の静電結合を示している。図2Cは、ビアコネクタ212による
誘導結合を示している。
【0032】
図3は、MTMユニットセル310の二次元アレーに基づくCRLH MTMデバイス300の他の実施例
を示している。それぞれのユニットセル310は、図2のユニットセルとして構成することが
できる。この実施例では、ユニットセル310は、異なるセル構造を有し、金属絶縁体金属(
MIM)構造内の上側パッチ211の下に他の導電層350を備え、これにより、二つの隣接するユ
ニットセル310の間の左手系静電容量CLの静電結合を高める。このセル設計は、二つの基
板と三つの金属層を使用することにより実装されうる。例示されているように、導電層35
0は、ビアコネクタ212を対称的に囲み、ビアコネクタ212から隔てられる導電性キャップ
を有する。二つの給電路331及び332は、基板201の上面に形成され、それぞれアレーの二
つの直交方向にそってCRLHアレーに結合する。給電ランチパッド341及び342は、基板201
の上面に形成され、給電路331及び332がそれぞれ結合されるセルのそれぞれのパッチ211
から相隔てて並ぶ。この二次元アレーは、デュアルバンドアンテナを含む、さまざまな用
途向けのCRLH MTMアンテナとして使用できる。
【0033】
図4は、サポート基板401上の一次元及び/又は二次元アレー内に形成されたアンテナ素
子410を含むアンテナアレー400の一実施例を示す。それぞれのアンテナ素子410は、CRLH
MTM素子であり、それぞれ特定のセル構造内にある一つ又は複数のCRLH MTMユニットセル4
12を備える(例えば、図2又は3のセル)。それぞれのアンテナ素子410内のCRLH MTMユニッ
トセル412は、アンテナアレー400の基板401上に直接形成されるか、又は基板401に係合さ
れている別の誘電体基板411上に形成できる。それぞれのアンテナ素子内の二つ又はそれ
以上のCRLH MTMユニットセル412は、一次元アレー又は二次元アレーを含む、さまざまな
構成で配列されうる。それぞれのセルに対する等価回路も、図4に示されている。CRLH MT
Mアンテナ素子は、アンテナアレー400の所望の機能又は特性、例えば、広帯域動作、多帯
域動作、又は超広帯域動作をサポートするように設計されうる。
【0034】
複数の送信機/受信機により使用可能にされる複数の無相関通信経路を使用することに
より同じ周波数帯域上で同じ時刻及び場所において複数のストリームが送信され、及び/
又は受信される技術。この方法は、多入力多出力(MIMO)と呼ばれるもので、スマートアン
テナの一種である。
【0035】
図5は、図4のCRLH MTMアンテナ素子410を有するアンテナアレー400に基づくMIMOアンテ
ナサブシステム500を例示している。それぞれのアンテナ素子410は、フィルタ510及び増
幅器520に接続され、これにより信号チェーンを形成することができる。フィルタ510及び
増幅器520は、CRLH MTMデバイスであってもよい。アナログ信号処理デバイス530は、アン
テナ素子410とMIMOデジタル信号処理ユニットとの間のインターフェースとして備えられ
る。このMIMOアンテナサブシステム500は、WiFiルーターなどの無線アクセスポイント(AP
)、無線ネットワーク内のBS、並びにコンピュータ及び多のデバイス用の無線通信USBドン
グル又はカード(例えば、PCI Expressカード若しくはPCMCIAカード)を含む、さまざまな
用途において使用できる。
【0036】
図6Aは、CRLH MTMアンテナ610に基づく無線加入者局601を示している。加入者局601は
、PDA、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、又は無線通
信ネットワークに加入し、通信する他の無線通信デバイスとすることができる。CRLH MTM
アンテナ610は、CRLH MTM構造を使用してコンパクトな設計とすることができる。例えば
、それぞれのMTMユニットセルは、CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/6又
は1/10よりも小さい寸法を有し、二つの隣接するMTMユニットセルは、互いに波長の1/4又
はそれ以下の間隔をあけて配置される。一実装では、CRLH MTMアンテナ610は、MIMOアン
テナとしてよい。本出願のCRLH MTM設計及び技術の実装では、MIMO技術とCRLH MTM技術と
を組み合わせて複数のチャネル、例えば、二つ若しくは四つのチャネルを小さなデバイス
601内に形成することができる。
【0037】
図6Bは、無線通信システム内のBS又はAP 602で使用されるCRLH MTMアンテナ620を示し
ている。図6Aの実施例とは異なり、比較的大きなCRLH MTMアンテナアレーをアンテナ620
として使用することができる。例えば、図5のアンテナサブシステムは、BS又はAP 602に
おいて使用することができる。他の実施例では、複数のCRLH MTMユニットセルを有するCR
LH MTM漏洩波アンテナをアンテナ620として使用することができる。
【0038】
図7は、図6A及び6Bの設計を実装する無線通信システムを示している。図7の無線通信シ
ステムでは、空中電磁波を使用してさまざまな通信サービスを提供する。新しい広帯域用
途をサポートするために必要な通信速度の高速化が、スペクトルの利用、ビット/秒/Hz数
を最適化し、RFスペクトルの不足を解消し、高コスト問題を解決し、その一方で電力効率
を最適化するという形で無線通信技術を「最後の辺境」へと押しやっている。無線通信シ
ステムのデジタル信号処理サブシステムでは、必要なビット誤り率(BER)及び信号対雑音
比(SNR)パラメータにより示される「シャノン容量」限界に到達することで最適化が達成
される。さまざまな用途及びターゲット展開シナリオに合わせてチャネル容量を改善する
最適な圧縮、符号化、及び変調技術が見つかっている。これらの高度なデジタル技術は、
手の届きうる最後の数分の1 dBの利得をプッシュし、エンジニアたちにはもはや、最後の
無線通信の未開拓分野である「エアーインターフェース」、つまりアナログ空間を征服す
る以外の選択肢は残されていなかった。そこで、複数の送信機/受信機により使用可能に
される複数の無相関通信経路を使用することにより同じ周波数帯域上で同じ時刻及び場所
において複数のデータのストリームを送信し、及び/又は受信するというアイデア。この
技術は、MIMOと呼ばれるもので、SAの特別な例である。エアーインターフェースサブシス
テムと呼ばれるスマートアンテナは、最適な見通し内(LOS)方向にビームを整形し、その
方向を制御することができる。受信側では、これらのアンテナは、単純な方向探知技術及
び高度な方向探知技術を実行することによりTx-Rx通信経路にそってRxアンテナ利得を最
大化することができる。さらに、これらの技術は、無用な干渉信号を最小にするか、或い
はさらには除去するヌル形成重みを付けて、TX-RX SNRを改善することもできた。
【0039】
SAは、素子毎に、「重み」で参照される、TX信号位相、振幅、又はその両方を動的に調
節するさまざまな給電回路網により駆動されるアンテナ素子のアレーで構成された。これ
らのフェーズドアレーアンテナは、アパーチャの幾何学的形状及び対称性に応じて、細い
ビーム、広帯域、又は周波数独立とすることができる。1990年代に、SAコンセプトは拡張
され、マルチパス干渉を、除去する代わりに利用する追加のデジタル信号処理技術を取り
込んだ。この異なるクラスのアルゴリズムでは、従来のLOS SAとともに初期SA焦点を見通
し外(NLOS)リンクに拡張した。Tx及びRxアンテナのアレー、素子、RFチェーン、及び並列
符号化デジタル信号処理アルゴリズムをリンクの両側で使用してより多くのビット/秒/Hz
をプッシュする二つのクラスのアルゴリズムが定義された。
【0040】
無線システムは、入力及び出力用に複数のアンテナを備えるトランシーバを使用するよ
うに設計することができ、これらのシステムはMIMOシステムと呼ばれる。MIMOアンテナは
、SAデバイスであり、MIMOシステム内の送信機と受信機の両方でアンテナを使用すること
で、NLOSマルチパス伝搬を利用し、容量及びスペクトル効率の増大、ダイバーシティによ
るフェージングの低減、並びに干渉に対する抵抗性の改善を含む、数多くの利点をもたら
す。
【0041】
エンドツーエンドシステムモデルは、信号を空中に送り込む仕方、例えば、偏波、パタ
ーン、又は空間ダイバーシティなどのアンテナ/アンテナシステム特性を含むべきである
。このことは、設計が三つの異なる無線通信技術の境界、つまりデジタル-RF、RF-アンテ
ナ、及びアンテナ-エアーインターフェースをカバーするものであるため、システムエン
ジニアにとって大きな課題となる。それぞれのステップ全体を通して、最適なMIMO性能を
保証するためにチャネル間のカップリングが最小にされなければならない。三つの完全直
交偏波のみが利用可能で(ただし、実用上の制限から、典型的には二つだけが使用される
垂直/水平又は左旋円偏波及び右旋円偏波)、信号がNLOS通信経路にそって反射されたとき
に歪みがあると、MIMOを効果的に実装するのに偏波ダイバーシティだけに頼ることは難し
い場合がある。信号が異なるマルチパス方向にそって伝搬するように無指向性MIMOアンテ
ナが離れた間隔で配置されている空間ダイバーシティを使用する必要があるが、これは大
型のアンテナアレーを意味する。その一方、パターンダイバーシティは、MIMOアレー内の
アンテナ素子の直交に近い(無相関)放射パターンに依存し、したがって、それぞれのアン
テナ素子が小型化されるとすればコンパクトなMIMOアレー用途に適したものとなる。
【0042】
MIMOシステムモデルを簡素化するために、何人かの通信システムエンジニアたちは、通
信チャネル「H」の従来の定義、チャネル=RF+アンテナ+空中伝搬から、単純な関係式r(t)
=H(t)Ds(t)を導いたが、ただし、rは受信したデジタル信号、sは送信デジタル信号、Hは
間のチャネル、D演算はTx及びRxシステムアーキテクチャに依存する。例えば、NT×NRの
システムはr(t)をNR×1のベクトルとして、s(t)をNT×1のベクトルとして、HをNR×NTの
行列として、Dを行列乗算として持つ。
【0043】
第1のMIMOアルゴリズムでは、それぞれのアンテナ素子/チャネルにそってNT個の異なる
データストリームを送信し、NR個の受信アンテナ/チャネルのそれぞれがNT個のすべての
信号を受信できるようにする。受信された信号の逆相関を求めてNT個の送信データストリ
ームを復元するために、受信アルゴリズムに応じて、NRをNTよりも低いか、等しいか、又
は高いものとすることができる。これは、チャネルパラメータをNR個の受信信号及び最初
に処理されたNT個のTxデータに適用することにより達成される。NT個のTxデータストリー
ムを正常に復元する上で重要な要求条件は、NT通信経路全体にわたって信号が「無相関」
のままであることである。これは、「チャネルダイバーシティ(ChDiv)」と呼ばれる。
【0044】
空間多重化(SM)は、NT個のTxチャネル上で異なるデータストリームを送信する手段であ
り、これは、NT個のすべてのチャネルが無相関であり、それぞれのチャネル上で得られる
利得が最大である場合にピークスペクトル効率に達する。無相関チャネルは、MIMOアンテ
ナ素子間のカップリングが最小であり、通信環境に、典型的にはNLOS状況に関連する、隣
接する構造による反射と回折により引き起こされるマルチパスがたくさんある場合に出現
する。マルチパスがない場合、つまり、LOSの場合、SM受信信号は無相関であることを止
めて、受信機がNT個のTxデータストリームの逆相関を求めるのを防ぐ。したがって、Tx及
びRxノードが固定されている場合にマルチパス信号を最大にする場所にノードを常に置く
ことができる場合、通信リンクはSMの有利な点を全面的に利用する。ユーザーは、マルチ
パスリンクを最適化しようにも専門家でないのがふつうなので、エンドユーザー側の専門
技術知識及び利用のすべてのシナリオに適応できるシステムを定義すると有益である。
【0045】
移動性とともに、チャネル、チャネル行列Hを常に特徴付ける必要があるという事実は
、伝送される情報を受信機側で復元できるためには非常に重要なものとなっている。これ
は、プリアンブル/パイロットビット又は他の技術を使用する「チャネルサウンディング
」により実行される。Hの必要更新速度は、移動体ノードの速度に依存する。頻繁なチャ
ネル更新は、結局は、過剰な「チャネルサウンディング」が指定された通信時間の一部を
消費するのでビット/秒/Hzの「実効」数を急減させることになる。
【0046】
この問題を緩和するために、第2のタイプのMIMOアルゴリズム、時空間ブロック符号化(
STBC)が使用される。STBCは、正確なチャネルパラメータ化の影響を受けにくい、つまり
、誤差に強く、したがって、頻繁なチャネルサウンディングを必要としない。さらに、前
のほうで説明されているように、他の要求条件として、通信システムはNLOS/LOS混合環境
内で動作することができる、つまり、Rx信号は直接Tx-Rx LOS経路さらにはマルチパス軌
跡の数分の1を含む。時空間ブロック符号化(STBC)では、SMの場合のようにNT個の異なる
データストリームを送信するのではなく、同じTxデータストリームがNT回複製されるが、
ただしそれぞれのストリームは異なる形で符号化される。送信機は、空間(アンテナ空間
ダイバーシティ-SpDivを参照する)と時間(ビット遅延線を参照する)の符号化を送信に先
立って実行する。
【0047】
スペクトル効率を上げる少なくとも二つの異なるクラスのSA及び三つの技術がある、つ
まり、(1)フェーズドアレーアンテナ又は周波数独立マルチアームアンテナに基づくビー
ム形成(BF)及びビーム形成/ヌル形成(BFN)と(2)MIMO及び高度信号処理機能とであり、こ
の機能は(i)複数のチャネル(SM)(NLOS、正確なチャネル特徴付け、無相関性の高いチャネ
ル)上で異なるデータストリームを、(ii)複数のチャネル(STBC)(NLOS、NLOS+LOS、チャネ
ル特徴付けの誤差及びそれらのチャネル間の小さな相関に耐える)上で同じデータストリ
ームを、並びに(iii)BF及びBFNを送信することができるが、ただし、チャネル特徴付けの
あるLOSはビームパターン及び正確なチャネル特徴付けに依存し1)異なるビームパターン
間でアナログスイッチングを行い、2)ビームを適応整形し、ビームの方向を制御し、3)ア
ナログビームスイッチング及び成形に加えてデジタルBF及びBFNを使用して性能を最適化
する。
【0048】
それに加えて、従来のBF及びBFNも、移相器、遅延線、又は他の指向性カプラー及び及
びマッチング回路網を必要とすることなく、デジタル領域においてMIMOシステムにより達
成できる。デジタルBF及びBFNは、実装するのが非実用的になるほどの膨大な信号処理量
を要する。より適したアプローチは、デジタル/アナログ複合BF/BFNアプローチである。
【0049】
既存の、及び将来の広帯域アプリケーションサービスに対応できるより高い通信速度を
キャリアに持たせるMIMOを含む二つの無線通信商業規格が承認されている。第1の規格、I
EEE 802.11nは、ローカルエリアネットワーク(LAN)を対象とするが、第2の規格、IEEE 80
2.16eは、移動体ワイドエリアネットワーク(WAN)を対象とするものであり、LANにも適用
可能である。IEEE802.20及び将来の4G UMTSシステムなどのMIMO技術を必要とする他の規
格が進行中である。これらの規格の大半は、最大4×4のMIMOを推奨している。これは、ク
ライアント側とAP/BS側の両方において、四つのTxアンテナ及び四つのRxアンテナが使用
されることを意味する。
【0050】
今までのところ、承認された商業規格は、SM、STBC、及びBFアルゴリズムを含んでおり
、開発者には、無線通信USBドングル、PCMCIA/PCI Expressカード、及びハンドヘルドコ
ンピューティング/マルチメディアデバイスなどの小型クライアントデバイス上に無相関M
IMO経路コンセプトを最初に実装することと、次にLOS、NLOS、固定、及び動的チャネル条
件に応じて適切なアプローチを適応選択することという難題が課せられている。
【0051】
本出願における設計及び技術は、かなり高いビット/秒/Hzスペクトル効率を必要とする
広帯域エンドユーザーアプリケーションを対象とする完全な商業規格を実装する固定及び
移動体無線通信業界が直面している最も困難な課題の一つを解決するために応用される。
この実現技術は、以下に基づく。
【0052】
複数のアンテナ及び無線トランシーバをスモールフォームファクタに収めるのは、性能
及びスループットを損なうことなく低消費電力にする必要もあり、携帯電話事業者、無線
通信カード開発会社(例えば、PCMCIA及びPCI Expressカード並びに無線通信USBドングル)
、PDAメーカー、さらには小型ラップトップ設計会社にとっては大きな難題である。本出
願における設計及び技術の実装は、フォームファクタ又は消費電力の要求条件に関係なく
、携帯型又は固定デバイスへの複数の並列チャネルを可能にする総合的MIMOサブシステム
を実現するために使用できる。
【0053】
多くのMIMOシステムは、電磁波の電場及び磁場の特性が右手の法則に従うMIMOアンテナ
に従来の右手系(RH)材料を使用する。RHアンテナ材料を使用することで、それぞれのアン
テナのサイズ(典型的には、信号の1波長の1/2)及びアンテナアレー内の二つの隣接するア
ンテナの間隔(例えば、信号の1波長の1/2超)に低い限界を設定する。このような限界は、
携帯電話、PDA、及び無線通信機能を有する他のハンドヘルドデバイスなどのさまざまな
コンパクトな無線通信デバイスにおけるMIMOシステムの応用を妨げている。
【0054】
本出願で説明されているアンテナアレー設計、無線システム、及び関連する通信技術で
は、右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を使用して、MIMOシステムを実装するた
めのコンパクトなアンテナアレーを製作する。CRLHメタマテリアルから作られるアンテナ
を使用するこのようなMIMOシステムは、従来のMIMOシステムの利点を保持しつつ、従来の
MIMOシステムでは実現できない、又は実現困難なさらなる利点をもたらすように設計され
うる。
【0055】
本出願における設計及び技術は、以下の特徴のうちの一つ又は複数を取り込むように実
装できる。
【0056】
1.近接距離が小さく(例えば、1/4波長、λ/4のオーダー、又はより小さなアンテナ間隔
)、アンテナ素子間のカップリングは最小になるようにしたサイズがλ/6を超える小型プ
リントアンテナ素子。このコンパクトなMIMOアンテナ設計は、SM、時空間ブロック符号に
適しており、かなり大きな基地局BS又はアクセスポイントが備えるBS及びヌル形成機能を
サポートする。サイズ縮小は、CRLH高度メタマテリアルを使用して達成される。
【0057】
2.近接場(NF)及び遠隔場(FF)カップリングをさらに低減するためのプリントMTM指向性
カプラー及びマッチング回路網の使用。
【0058】
3.ビーム整形、スイッチング、及びMIMOアルゴリズムを使用した場合と使用しない場合
の方向制御を可能にする単一MIMOアンテナを製作するための複数のMTMアンテナの使用。
【0059】
4.プリントMTMベースの1対N電力結合器/スプリッタが、複数のMTMアンテナを組み合わ
せて単一のサブMIMOアレーアンテナを形成するために使用される。
【0060】
5.単一のMTM漏洩波アンテナが、ビーム整形、スイッチング、及びMIMOアルゴリズムの
ある場合とない場合の方向制御を可能にするために使用される。
【0061】
6.MTMベースのフィルタ及びダイプレクサ/デュプレクサも、製作され、アンテナ及び電
力結合器、指向性カプラー、並びに存在している場合にRFチェーンを形成するためのマッ
チング回路網と集積化されうる。RFICに直接接続されている外部ポートのみが、50Ωのレ
ギュレーションに従えばよい。アンテナ、フィルタ、ダイプレクサ、デュプレクサ、電力
結合器、指向性カプラー、及びマッチング回路網間のすべての内部ポートは、これらのRF
素子間のマッチングを最適化するために50Ωと異なることがある。
【0062】
7.アンテナ給電回路網及び四つ又はそれ以上のチャネルを駆動するRF回路設計。CRLH M
TM設計では、これらの小型のアンテナにその給電回路網、増幅器、フィルタ、及び電力分
配器/結合器を組み込んで結合損失を低減しつつRF回路全体を最適化するという単純な集
積化が可能になる。この全体的な集積化構造は、能動アンテナ(AA)と呼ばれる。
【0063】
8.1番目と2番目の特徴により、図5に示されているように集積化される通信デバイスに
適合する二次元膜表面内に集積化される小型アンテナ素子を有する「MIMO膜」が可能にな
る。
【0064】
9.a)非対称及び対称リンク(BS-クライアント、クライアント-クライアント、モデル-空
間ダイバーシティ、...)、b)動的チャネル、c)商業規格に準拠するシステムに合わせて通
信リンク性能を最適化する後(Tx側)及び前(Rx側)デジタル信号処理。
【0065】
技術的難題の一つは、依然として、商業規格に準拠しつつ四つ又はそれ以上のMIMOチャ
ネル(アンテナ及びRFチェーン)をハンドヘルドデバイス、無線USBドングル又はカード(例
えば、PCMCIA又はPCI Express)、無線通信USBドングル、薄型ラップトップコンピュータ
、携帯型BS、コンパクトなAP、及び他の応用可能な製品などのコンパクトなフォームファ
クタに収め、SM、STBC、並びにBF及びヌル形成をサポートし、典型的には数十から数百MH
zまでの範囲の複数の帯域上で動作し、該当する場合には消費電力に適合する能力を有す
ることである。
【0066】
本出願における設計及び技術の実装を用いることにより、以下の三つの技術的課題を解
決することができる。
【0067】
1.最小のカップリングでごく近くに集積化できる十分に小さなサイズの小型アンテナ素
子。この高度なコンパクトMIMOアンテナ設計は、SM、時空間ブロック符号に適しており、
かなり大きな構造のBS(BS)又はアクセスポイント(AP)が備えるBS及びヌル形成機能をサポ
ートする。サイズ縮小及び集積化は、CRLH高度メタマテリアルを使用して達成される。
【0068】
2.アンテナ給電回路網及び四つのチャネルを駆動するRF回路設計。CRLHでは、これらの
小型のアンテナにその給電回路網、増幅器、フィルタ、及び電力分配器/結合器を組み込
んで結合損失を低減しつつRFサブコンポーネント全体を最適化するという単純な集積化が
可能になる。この全体的な集積化構造は、AAと呼ばれる。これらのラインにそって、二次
元MIMOアンテナをデバイス幾何学的形状に適合させることができる「MIMO膜」の新規性の
あるコンセプトが導入される。
【0069】
3.MIMO商業規格に準拠し、コンパクトMIMOアンテナ(例えば、ハンドセット)、大型MIMO
アンテナシステム(ex BS)リンク、さらには二つのコンパクトアンテナシステムの間のリ
ンク(ピアツーピア)に対応できる後(Tx側)及び前(Rx側)信号処理。
【0070】
MIMOダイバーシティは、無線通信において望ましいものである。空間ダイバーシティ(S
pDiv)又はSpVivと偏波ダイバーシティ(PoDiv)の組合せを、BSなどの大型MIMOシステムに
おいて使用できる。コンパクトMIMOシステムは、パターンダイバーシティ(PaDiv)を利用
することができる。このパターンダイバーシティは、エンドツーエンド通信システムがチ
ャネルを空中伝搬部分のみとみなす、つまり、アンテナ及びRF回路を従来のH行列から抽
出するときにもたらされ、通信モジュールに割り当てられうる。
【0071】
PaDivは、放射ビームの角度分布及び偏波特性に対応するので、ビームを修正又は傾斜
させる手段が必要であることは明らかである。しかし、メタマテリアルを使用する場合、
近接場放射を操作することで、近くのアンテナ素子間の近接場カップリングを除去するだ
けでなく、ビームを整形し、切り換え、方向を制御し、マルチパスの豊富な環境内でパタ
ーンダイバーシティ効果を及ぼすことができる。これらのメタマテリアルアンテナは、パ
ターンと偏波ダイバーシティの組合せを容易にサポートすることができる。
【0072】
PaDivを使用して、OFDM-MIMO(OFDM:直交周波数分割多重)、FH-MIMO(FH:周波数ホッピン
グ)、及びDSS-MIMO(DSS:直接拡散スペクトル)通信システム、及びその組合せをサポート
することができる。PaDivは、MIMOデジタル変調をサポートするために使用できる。
【0073】
本出願の設計及び技術の一実装は、多帯域、及び/又は広帯域、及び/又は超広帯域RFス
ペクトルをカバーする無線通信システムであるが、PDA、携帯電話、及び無線通信USBドン
グル又はカード(例えば、PCMCIA及びPCI Express)などのコンパクトな通信デバイス内に
収められる革新的なエアーインターフェース、アナログ、及びデジタルMIMO処理機能を使
用することによりOFDM又はDSS実装におけるマルチパス効果を利用する。MIMOは、複数の
チャネル上に送信デジタル信号に対するデジタル信号処理を展開するSAアレーシステムを
備える。これは、NLOS、LOSで動作する固定及び移動体シナリオに対するSM、STBC、及びB
M/BFNを含み、NLOS及びLOS環境を組み合わせたものである。
【0074】
図8Aは、LOSリンクを備える二つの地理的に分離された直線状Tx及びRxアンテナアレー
を示している。図8Bは、LOS及びNLOSリンクを備える二つの地理的に分離された直線状Tx
及びRxアンテナアレーを示している。
【0075】
図9Aは、BF及び/又はヌル形成に対するフェーズドアレーアンテナシステムを示してい
る。
【0076】
図9Bは、SMアルゴリズムに基づくMIMOシステムを示している。
【0077】
図9Cは、STBCアルゴリズムに基づくMIMOシステムを示している。
【0078】
前MIMO時代には、SAは、ビームを整形又は方向制御するため振幅、位相遅延時間線だけ
シフトされた同一信号を送信するフェーズドアレーアンテナを備えている(図9A)。受信機
側では、さらに類似のアナログタップ遅延線も使用して、スキャンし、送信方向の受信機
利得を増加し、不要信号をゼロにする。これらのフェーズドアレー技術は、大部分は、ア
ナログ領域にあり、信号エネルギーを受信機方向に集中させ、したがって、その制限をLO
S環境に絞ることによりSNRを高める。
【0079】
反射及び/又は回折プロセスにより障害物(図8B)から跳ね返る送信信号は、異なる大き
さを有し、また「マルチパス干渉」及び「NLOS信号の注入」と呼ばれるものを引き起こす
全体的SNRを下げる異なる遅延時間を有する信号の集合体として受信機に到達する。フェ
ーズドアレーアンテナも従来のSISOシステムも、マルチパス干渉を解消し、これらの信号
を雑音として処理するということはできない。
【0080】
マルチパスの豊富な環境では、送信信号は、同じデータストリーム(図9C)又は異なるデ
ータストリーム(図9B)を送信機から受信機に伝えることができる無相関チャネルを形成す
る形で非常に多くの障害物から跳ね返る。これらの仮想的チャネルは、空間的に分離され
た放射線源及び受信素子(空間ダイバーシティ-SpDiv)、直交偏波(偏波ダイバーシティ-Po
Div)、異なる放射線パターン(パターンダイバーシティ-PaDiv)により引き起こされる。MI
MOチャネルは、式
【数2】

により特徴付けられる。
ap:経路利得/振幅。
Ω(ψ,θ):p番目の経路にそったTx及びRxアンテナ平面に関するTx及びRxビームの角度方
向。
e(ψ,θ):Tx及びRxビームの配向及び偏波。
【0081】
式(1)は、それぞれのノードから見えるチャネルを識別する。固定座標系ですべての項
を書く作業は、複雑さに関して大変な難題であることは明らかである。このような理由か
ら、通信技術者は、SpDivである最も単純なチャネルダイバーシティ(ChDiv)アプローチを
取り、信号対雑音比(SNR)を高めるためにマルチパス干渉を利用するデジタルアルゴリズ
ムを重視しているのである。
【0082】
デジタル送信及び受信信号では、チャネルに対し異なる見方をする。Tx及びRx信号の式
は、
【数3】

【0083】
又は
【数4】

【0084】
と定式化されうるが、ただし、行列Hの成分はhijであり、H=UΛV*と分解される。行列V及
びUの要素は、送信X及び受信Yベクトルを再配向し、最大NT個までの「仮想的」無相関並
列チャネルを形成するのに必要な重みである。図9Aのフェーズドアレーの実施例を見直す
と、デジタルU及びV重みは、移相器を駆動するアナログ重みに対し類似の効果を有してい
る。したがって、デジタル領域とアナログ領域との間の信号処理の複雑さのバランスをと
る新しいコンセプトが、プリファレンスを最適化してシステム複雑度を下げるだけでなく
、システム効率を高めるためにも必要である。
【0085】
以下では、チャネルダイバーシティについて説明する。
【0086】
アンテナ間距離がΔλcで表される場合、λcを自由空間搬送波波長とし、Δを搬送波波
長λcに対する正規化されたアンテナ間距離とすると、一次近似で、直線アレーに対するL
OS経路(図8A)は、式(2)
dik=d-(i-1)ΔRxλccos(φRx)+(k-1)ΔTxλccos(φTx) i=1....NT及びk=1...NR (2)
に示されているように、送信機と受信機との間の広い距離で平行であるとみなすことがで
きるが、ただし、dは第1のTx及びRxアンテナからの距離であり、φTx及びφRxはそれぞれ
Tx及びRXアレー平面上へのLOSの入射角である。この直線というコンセプトは、限定はし
ないが、図7及び5に示されている膜構成を含む、二次元アレーに拡張することができる。
【0087】
この場合、LOSチャネル行列の要素は、
【数5】

に比例し、第2及び第3の項は、同一の偏波を有する無指向性アンテナ素子に対する正規化
されたTx及びRxビームフォーマーを表す。Tx及びRx重みは、それぞれwi及びwkにより示さ
れ、Txビーム及びRx利得の方向付けを行う役割を持つ。それぞれのアンテナ素子が、異な
る角度方向及び偏波により特徴付けられる場合、これらの項は、アンテナパターンの三次
元ベクトルeiii)及びekkk)を乗算され(式(1)と同じ)、方位角と仰角は、そ
れぞれi番目とk番目のアンテナ素子に関するものである。図9Aは、Tx及びRx重みがそれぞ
れの素子に適用されたBSシステムの一実施例を示している。
【0088】
アンテナの全体サイズLTx=(NT-1)ΔTxλc及びLRx=(NR-1)ΔRxλcがλcに比べて小さい
場合、Tx及びRx複合システムは、角距離がλc/LRx又はλc/LRxよりもかなり小さい到達す
る信号を解決することができない。言い換えると、アンテナの相反定理を使用することに
より、小さなサイズのアンテナは、幅の広いビーム放射を有し、すべての方向からの信号
が見える。したがって、コンパクトなMIMOアンテナの場合、2人のユーザー加入者ユニッ
ト間のSNRを高めようとしてもBS単独では達成しにくい可能性のあることは明らかである
。しかし、ノードの一つがBS/APである場合には達成可能である。ここで、非対称通信シ
ナリオにおいて、伝送される情報をユーザーからBS/APに「アップリンク」し、逆方向に
「ダウンリンク」すると言うことにする。したがって、BS/APは、送信又は受信をしてい
る場合にBSを実行し、分布密度の高いセルにおける干渉を最小に抑えることにより単一リ
ンクベースのスループットではなくネットワークスループットを高めることができる。加
入者アンテナ素子は、まとめると、BS/APの方向にかなり広い放射ビームを有する。
【0089】
TxノードとRxノードとの間のリンクがNLOSコンポーネントを備える場合、式(2)は、NLO
S経路を反映する項を含むように修正される。図8Bは、LOS、マルチパス1(P1)、及びマル
チパス2(P2)の三つの経路を伴う実施例を示している。表面S1及びS2で反射された信号は
、その伝搬方向を変化させ、場合によっては、その偏波、及び/若しくは強度、又はその
両方を変化させる。これらの変化は、それらの表面の場所、屈折率、及びきめ/配向(φP1
及びφP2)により決定される。アンテナ素子が密集して配置されているときに、反射障害
物がTxとRxの両方のアンテナから離れた場所に配置されている場合、距離lP111,ik及びlP
211,ikはゼロに近づくが、dik、dP1ik、及びdP2ik経路内の差により、受信機はそれらの
経路にそって三つの信号の逆相関を求めることができる。ノードの一つがBS/APである場
合、アンテナ素子は、大きく間隔をあけて配置されるか、又は0と異なる距離lP111,ik
びlP211,ikに対しビーム整形、方向制御、切り換えの技術を使用して、チャネルダイバー
シティに余次元を与える。
【0090】
CRLH MTMアンテナは、アンテナ素子のサイズを縮小し、それらの素子間の間隔を密にす
る一方で、同時に、それらの間のカップリングを低減/最小化し、またその対応するRFチ
ェーンを形成するように設計されうる。そのようなアンテナを使用することで、1)アンテ
ナサイズの縮小、2)最適なマッチング、3)指向性カプラー及びマッチング回路網を使用す
ることにより隣接するアンテナ間のカップリングを低減し、それらの間のパターン直交性
を復元する手段、並びに4)フィルタ、ダイプレクサ/デュプレクサ、及び増幅器の潜在的
集積化のうちの一つ又は複数を達成することができる。項目4を含むアンテナは、AAによ
り参照される。
【0091】
無線通信用のさまざまな無線デバイスは、アナログ/デジタルコンバータ、オシレータ(
直接変換には単一、多段RF変換には複数)、マッチング回路網、カプラー、フィルタ、ダ
イプレクサ、デュプレクサ、移相器、及び増幅器を備える。これらのコンポーネントは、
その傾向として、高価な要素であり、密集させて集積化することが困難であり、多くの場
合、信号電力の著しい損失を示す。また、MTMベースのフィルタ及びダイプレクサ/デュプ
レクサも、製作され、アンテナ及び電力結合器、指向性カプラー、並びに存在している場
合にRFチェーンを形成するためのマッチング回路網と集積化されうる。RFICに直接接続さ
れている外部ポートのみが、50Ωのレギュレーションに従えばよい。アンテナ、フィルタ
、ダイプレクサ、デュプレクサ、電力結合器、指向性カプラー、及びマッチング回路網間
のすべての内部ポートは、これらのRF素子間のマッチングを最適化するために50Ωと異な
ることがある。したがって、MTM構造を使用してこれらのコンポーネントを効率的に、ま
た高い費用効果をもたらすように集積化できることが重要である。
【0092】
CRLHメタマテリアル技術を使用することで、MIMOアンテナを小型化し、給電装置、増幅
器、及び電力結合器/分配器とともに潜在的に集積化することができる。このような小型
化されたMIMOアンテナは、密集配置された、末端デバイスに応じて異なる幾何学的形状を
とるアンテナ素子の二次元アレーに適用されうる。例えば、いくつかの実装では、図7に
例示されているように、携帯電話の上、又はハンドヘルドPDA及びラップトップのエッジ
にそって膜を取り付けることができる。この構造を、「MIMO膜」と呼ぶが、これは、典型
的には、ユーザーの手が邪魔しない領域に置かれる。MIMOモードは、高スループットアプ
リケーションに使用されるので、ユーザーが、マルチメディア又はデータアプリケーショ
ンにアクセスするため頭部の近くにデバイスを配置する可能性はほとんどない。さらに、
この革新的なエアーインターフェースは、チャネルダイバーシティの節で説明されている
ような従来のSpDiv/PoDiv技術を使用してBS/APと通信することができる。
【0093】
この膜は、ある点では集積されている多くのRF素子で構成され、これにより、出力され
るM個の信号は、重み調整及びM個のRF信号とNT/NR個のデータストリームとの間のマッピ
ングを介してMIMOデータチャネルから供給されるか、又はMIMOデータチャネルにフィード
バックされる。重み調整及びマッパーの一実施例は、上述の移相器及びカプラーである。
図5は、MIMO膜の機能ブロック図を示している。
【0094】
図9B及び9Cに示されているMIMOシステムでは、SM及びSTBC MIMOアルゴリズムを記述し
ている。CRLH MTMベースのコンパクトなMIMOエアーインターフェースを使用することで、
これら両方のアルゴリズムをサポートすることができ、またそれらのアルゴリズムとBS/A
P BF及びBFNアルゴリズムとの間の動的調節を行って、動的チャネル及びさまざまなユー
ザーのアプリケーションのリンクスループットを最適化することができる。ハイブリッド
型デジタル/アナログアルゴリズムは、デジタル信号処理重み調節(規格準拠)とアナログ
重み(規格非準拠)との間のバランスをとる図9B及び9Cの「チャネル制御」機能を通じて実
行される。制御アルゴリズムの高水準機能は、図10に例示されている。デジタルプロセッ
サは、MIMOシステム内に、制御アルゴリズムを実行するための通信デバイスの一部として
備えられる。デジタルプロセッサとMIMOシステムのアナログ回路との間にアナログ-デジ
タルインターフェースが結合される。
【0095】
現在のMIMOベースの規格及び、場合によっては将来の規格も、OFDM信号トーンに加えて
チャネルサウンディングを含み、チャネルダイバーシティの状態の特徴付けを行って、ス
ループットを最適化するために対応するSM、STBC、又はBF/BFN重みを導出する。これらの
規格は、この機能専用のパケットを含み、これは典型的には「チャネルフィードバック行
列」によって参照される。したがって、このアルゴリズムは、MIMO規格に違反することな
く実装できる。時分割二重(TDD)のシナリオでは、同じ周波数帯域上で双方向通信が実行
され、したがって、チャネルサウンディングをアップリンクで実行して、BS/APの大エネ
ルギー容量を利用することができる。アップリンク及びダウンリンクが、二つの周波数帯
域で実行される場合、両方向でチャネルサウンディングが必要である。
【0096】
PCMCIAカード及びハンドヘルドデバイスなどの小さな無線通信デバイスは、消費電力が
限られているので、チャネル更新の要件を緩和するためにチャネル適応はデジタル領域と
アナログ領域の両方で行われる。したがって、処理の複雑さを減らしつつスループットを
維持することができ、結果としてエネルギー節約につながる。この特徴があるため、それ
ぞれの加入者ユニットはそれ独自のチャネル調整を実行することができ、したがってハン
ドヘルド-ハンドヘルドMIMOリンクをサポートすることができる。
【0097】
図10では、チャネルサウンディングは、最初に、アナログ領域内で実行され、図8A及び
8Bに例示されているように信号がLOS又はNLOSであるかを判定する。この一次推定により
、チャネルの性質に関するチャネル制御予備情報が得られる。チャネルが完全にLOS(又は
LOS>>NLOS)コンポーネントである場合、BS/APは、加入者ユニットにより送られる到来角(
AoA)、離脱角(AoD)、又はビーム形成器の重みに関する計算結果に基づきBSアルゴリズム
を使用して開始することが伝えられる。この機能は、BS/AP機能にのみ依存し、加入者ユ
ニットが実行するのは、出力電力を上げるために単一のアンテナがあったかのようにすべ
てのアンテナ素子をまとめて使用することである。アンテナ素子からの複合信号は、単一
の大型アンテナであるかのような挙動を示す。ここでは、この機能を、個々のビームチル
ティング機能を含む集合単一アンテナアレー(CSAA)と呼ぶ。加入者ユニットは、BS又はヌ
ル形成機能をサポートすることができない。それでもLOSの場合、チャネルが非常に動的
であれば、つまり、重みの値が絶えず激しく変化するのであれば、STBCを選択し、そうで
なければ、BF/BFN及びCSAAを維持する。
【0098】
前の段落で説明されているハイブリッドデジタル/アナログ領域のビーム形成は、純粋
なアナログビーム形成、ビーム方向制御、及びビーム切り換えで置き換えることができる
。信号がNLOSとLOSとの間でバランス状態にある場合、STBCアルゴリズムがサポートされ
る。この場合、NLOSコンポーネントが優勢となり、SMは、チャネルがあまり動的でなけれ
ば使用され、動的であれば、より安全なアルゴリズムSTBCに復帰する。
【0099】
動的チャネルの項は、ノルム||H(t+τ)-H(t)||>遮断パラメータにより定量化されるが
、ただし、Hはチャネルを記述するNT×NRの行列である。LOS及びNLOSコンポーネントの定
量化は、二つの段階にわけて実行されうる。第1に、アナログレベルで、リンクの粗い識
別、確実にLOS、又は組合せを与える。アナログ領域単独では、NLOSのレベルを決定でき
ない。この係数の粗測定を行うのが、チャネル制御デジタル信号処理の役目である。
【0100】
MTM技術は、既存のサイズの数分の1、例えば、λ/40程度のアンテナサイズ縮小で、従
来のRF構造に似た、又はそれを超える性能を伴う無線周波(RF)コンポーネント及びサブシ
ステムを設計し、開発するために使用できる。さまざまなMTMアンテナ(及び一般に共振器
)の制限の一つは、単一帯域又は多帯域アンテナでは共振周波数を中心とする帯域幅が狭
いことである。
【0101】
この点に関して、本出願では、アンテナなどのRFコンポーネント及びサブシステムで使
用されるMTMベースの広帯域、多帯域、又は超広帯域伝送路(TL)構造を設計する技術につ
いて説明している。これらの技術は、低コストで、製造しやすい、しかも高い効率、利得
、及びコンパクトなサイズを維持する好適な構造を識別するために使用できる。HFSSなど
の全波シミュレーションツールを使用するこのような構造の実施例も提示される。
【0102】
一実装では、設計アルゴリズムは、(1)構造共振周波数を識別することと、(2)帯域幅を
分析するために共振の付近の分散曲線勾配を決定することとを含む。このアプローチは、
TL及び他のMTM構造についてだけでなく、その共振周波数で放射するMTMアンテナについて
も帯域幅拡張の本質をとらえ、指針を与える。このアルゴリズムは、さらに、(3)BWサイ
ズが実現可能なものであると判定された後、給電路及びエッジ終端(存在する場合)に対す
る好適なマッチングメカニズムを見つけることも含み、これは、共振を中心とする広い周
波数帯域にわたる一定のマッチング負荷インピーダンスZL(又はマッチング回路網)を提示
する。このメカニズムを使用するBB、MB、及び/又はUWB MTM設計は、伝送路(TL)分析を用
いて最適化され、次いで、HFSSなどの全波シミュレーションツールを使用することにより
アンテナ設計に採用される。
【0103】
MTM構造は、RFコンポーネント、回路、及びサブシステムの設計及び能力を増強し、拡
張するために使用できる。RH及びLHの両方の共振が発生しうる、右手/左手系複合(CRLH)T
L構造は、所望の対称性を示し、設計の柔軟性をもたらし、動作周波数及び動作帯域幅な
どの特定アプリケーション要件に対応することができる。
【0104】
さまざまなMTM一次元及び二次元伝送路は、狭帯域共振に悩まされる。本発明の設計を
用いることで、アンテナ内に実装することが可能な一次元及び二次元広帯域、多帯域、及
び超広帯域TL構造が実現される。一設計実装では、周波数帯域及びその対応する帯域幅を
設定するために、Nセル分散関係及び入出力インピーダンスが解決される。一実施例では
、二次元MTMアレーは、二次元異方性パターンを含むように設計され、アレーの二つの異
なる方向にそって二つのTLポートを使用し、それらのセルの残りが終端されている間に異
なる共振を励起する。
【0105】
入力及び1出力のTLに対し二次元異方性分析が実行されたが、ただし、行列表記は式II-
1-1で表されている。顕著なのは、中心外れTL給電解析を実施し、x及びy方向にそった複
数の共振を集約し、周波数帯域を広げていることである。
【数6】

【0106】
広帯域共振を有するCRLH MTMアレーに対する例示的な一設計は、特徴として(1)構造の
下のグラウンド面(GND)が縮小されている一次元及び二次元構造、(2)構造の下に全GNDが
あるオフセット給電を有する二次元異方性構造、(3)改善された終端及び給電インピーダ
ンスマッチングを含む。
【0107】
広帯域、多帯域、及び超広帯域で利用できる一次元及び二次元CRLH MTM TL構造に対す
るさまざまな設計及びアンテナ設計が説明されている。このような設計は、以下の特徴の
うちの一つ又は複数を含みうる。
【0108】
一次元構造は、シャント(LL、CR)と直列(LR、CL)パラメータを有するN個の同一セルか
らなる。これら五つのパラメータは、N個の共振周波数、対応する帯域幅、及びこれらの
共振を中心とする入出力TLインピーダンス変動を決定する。
【0109】
これら五つのパラメータは、さらに、構造/アンテナのサイズも決定する。したがって
、ターゲットのコンパクト設計は、λを自由空間内の伝搬波長として、λ/40ほどの寸法
となるように慎重に考察される。
【0110】
TLとアンテナの両方の場合において、共振上の帯域幅は、それらの共振の近くの分散曲
線の勾配が急峻である場合に拡大される。一次元の場合、勾配方程式は、セルの個数Nに
無関係であり、したがって帯域幅を拡張するさまざまな方法が得られることが実証されて
いる。
【0111】
RH周波数ωRが高い(つまり、シャント容量CR及び直列インダクタンスLRが低い)構造は
、より広い帯域幅を有することがわかった。これは、CRの値が低いと周波数帯域の高くな
ることを意味するので直観に反するが、ほとんど常に好適なLH共振がシャント共振ωSH
近くで生じるからであり、したがって、LH共振が低いと、CRの値は高くなるのである。
【0112】
ビアを通してGNDに接続されているパッチの下のGND領域を切り詰めることにより、CR値
を低くすることができる。
【0113】
周波数帯域、帯域幅、及びサイズが、指定された後、次のステップは、ターゲットの周
波数帯域及び帯域幅に到達するように構造をエッジセルの給電路及び適切な終端にマッチ
ングさせることを考察する段である。
【0114】
給電路の幅を広げ、所望の周波数でマッチング値に近い値を持つ終端キャパシタを追加
することでBWが増大した具体的な実施例を示す。
【0115】
適切な給電/終端マッチングインピーダンスを識別する際の最大の問題は、所望の帯域
上で周波数独立にすることである。このような理由から、共振を中心として類似のインピ
ーダンス値を持つ構造を選択する完全な解析を実施した。
【0116】
これらの解析を実施し、FEMシミュレータを実行する過程で、周波数ギャップに異なる
モードの存在することに気づいた。典型的なLH(n≦0)及びRH(n≧0)は、TEMモードである
が、LHとRHとの間のモードは、TEモードであり、RH/LH混合モードであると考えられる。
【0117】
これらのTEモードは、純粋なLHモードと比べて高いBWを有し、同じ構造に対しより低い
周波数に到達するように操作できる。本出願では、いくつかの実施例を提示する。
【0118】
二次元構造がかなり複雑な解析と類似している。二次元の利点は、一次元の構造の上に
有する自由度が加わることである。
【0119】
二次元構造では、帯域幅が一次元の場合と同様のステップに従って拡張されるだけでな
く、後述のようにx及びy方向にそって複数の共振を結合して帯域幅を拡張する。
【0120】
二次元構造は、Nx個の列とNy個の行からなり、全部でNy×Nx個のセルを形成する。それ
ぞれのセルは、それぞれx及びy軸にそったその直列インピーダンスZx(LRx,CLx)及びZy(LR
y,CLy)並びにシャントアドミッタンスY(LL,CR)により特徴付けられる。
【0121】
それぞれのセルは、4本のブランチを持つRF回路網により表されるが、ただし、2本のブ
ランチはx軸にそっており、残り2本のブランチはy軸にそっている。一次元構造では、ユ
ニットセルは、解析するのに二次元構造よりも複雑さの少ない2本のブランチを持つRF回
路網により表される。
【0122】
これらのセルは、4本の内部ブランチを通してレゴ構造のように相互接続される。一次
元では、セルは、2本のブランチのみにより相互接続される。
【0123】
その外部ブランチは、エッジとも呼ばれ、外部ソース(入力ポート)により励起されるか
、又は出力ポートとして使用されるか、又は「終端インピーダンス」により終端される。
二次元構造内にはNy×Nxのエッジブランチがある。一次元構造では、入力、出力、入出力
、又は終端ポートとして使用されうるエッジブランチが二つしかない。例えば、アンテナ
設計で使用される一次元TL構造は、一端が入出力ポートとして使用され、他端がZtインピ
ーダンスで終端され、ほとんどの場合、拡張アンテナ基板を表し、無限大である。したが
って、二次元構造は、解析しようにもかなり複雑な構造である。
【0124】
最も一般的な場合は、それぞれのセルが、集中素子Zx(nx,ny)、Zy(nx,ny)、及びY(nx,n
y)並びにすべての終端Ztx(1,ny)、Ztx(Nx,ny)、Zt(nx,1)、及びZt(nx,Ny)の異なる値によ
り特徴付けられ、給電が不均一である場合である。このような構造は、ある種のアプリケ
ーションに適した固有の特性を持つことがあるけれども、その解析は、非常に複雑であり
、実装は、対称性の高い構造に比べて実用性を大きく欠いている。これは、もちろん、共
振周波数を中心とする帯域幅拡張を利用することに加えてなされる。
【0125】
本発明の二次元部分では、それぞれx方向、y方向にそって、またシャントを通して、等
しいZx、Zy、及びYを持つセルに絞ることにする。しかし、CRの異なる値を持つ構造も一
般的である。
【0126】
構造は、入力及び出力ポートにそってインピーダンスマッチングを最適化するインピー
ダンスZtx及びZtyにより終端されうるが、簡単のため、ここでは無限大のZtx及びZtyを考
える。無限大のインピーダンスは、これらの終端されたエッジにそった無限大の基板/グ
ラウンド面に対応する。
【0127】
Ztx及びZtyの値が非無限大である場合は、代替えマッチング制約条件を持つ本発明の同
じ手順に従う。このような非無限大の終端の一実施例では、表面電流を操作して、電磁(E
M)波を二次元構造内に封じ込め、干渉を引き起こすことなく他の隣接する二次元構造を利
用できるようにする。
【0128】
他の興味深い事例は、入力給電部がx又はy方向にそったエッジセルの一つの中心からオ
フセット位置に置かれる場合である。これにより、x及びyの両方向に非対称的に伝搬する
EM波が生じるが、給電部がそれらの方向の一つにしかそっていない場合であってもそうで
ある。
【0129】
一般的なNx×Nyの事例の概略を述べ、一実施例として1×2の構造について完全に解く。
簡単のため、対称セル構造を使用する。
【0130】
Nx=1、Ny=2の場合(1×2で示されている)、入力を(1,1)セルにそわせ、出力を(2,1)セル
にそわせることができる。次いで、伝送[A B C D]行列について解き、散乱係数S11及びS1
2を計算する。
【0131】
E電場GNDの代わりに、切り詰められたGND、混合RH/LH TEモード、及び完全なHについて
類似の計算を行う。
【0132】
一次元と二次元の両方の設計が、間にあるビアとともに基板の両側(2層)にプリントさ
れるか、又は上部金属化層と底部金属化層との間にサンドイッチ状に挟まれた追加の金属
化層を持つ多層構造上にプリントされる。
【0133】
広帯域(BB)、多帯域(MB)、及び超広帯域(UWB)特性を持つ一次元MTM TL及びアンテナ
図11は、四つのユニットセルに基づく一次元CRLH材料TLの一実施例を示している。四つ
のパッチが、誘電体基板の上に置かれ、センタリングされたビアがグラウンドに接続され
る。図11Aは、図11のデバイスの類似している等価回路網を示している。ZLin'及びZLout'
は、それぞれ入力及び出力負荷インピーダンスに対応し、それぞれの端部のTLカップリン
グによるものである。これは、プリントされた2層構造の一実施例である。図2A〜2Cを参
照すると、図11と図11Aとの対応関係が例示されており、(1)ではRH直列インダクタンス及
びシャントキャパシタは、パッチとグラウンド面との間に誘電体がサンドイッチ状に挟ま
れていることによるものである。(2)では、直列LHキャパシタンスは、二つの隣接するパ
ッチが存在することによるものであり、ビアは、シャントLHインダクタンスを誘導する。
【0134】
個々の内部セルは、直列インピーダンスZ及びシャントアドミッタンスYに対応する二つ
の共振ωSE及びωSHを有する。これらの値は、関係式
【数7】

により与えられる。
【0135】
図11Aの二つの入出力エッジセルはCLキャパシタの一部を含まないが、それは、このキ
ャパシタンスがこれらの入出力ポートに欠けている二つの隣接するMTMセルの間のキャパ
シタンスを表すからである。エッジセルのCL部分が存在していないため、ωSE周波数は共
振周波数とならない。したがって、ωSHのみがn=0共振周波数として現れる。
【0136】
計算解析を簡単にするため、ZLin'とZLout'の直列キャパシタの一部を含めて、図12Aに
示されているように欠落しているCL部分を補正する。このようにして、N個のセルすべて
が、同一パラメータを持つ。
【0137】
図11B及び図12Bは、負荷インピーダンスのない図11A及び図12Aの2ポート回路網行列を
それぞれ示しており、図11C及び図12Cは、TL設計がアンテナとして使用される場合の類似
のアンテナ回路を示している。式II-1-1と似た行列表記により、図12Bは関係式
【数8】

を表している。
【0138】
ただし、図12A内のCRLH回路は、Vin端とVout端から見たときに対称的であるため、AN=D
Nと設定した。GRは、放射抵抗に対応する構造であり、ZTは、終端インピーダンスである
。ZTは、基本的に、2CL直列キャパシタを加えた図11bの構造の望ましい終端であることに
留意されたい。同じことが、ZLin'とZLout'についても言える、つまり、
【数9】

となる。
【0139】
GRは、アンテナを組み立てるか、又はそれをHFSSでシミュレートすることにより導出さ
れるので、設計を最適化するためにアンテナ構造を操作するのは難しい。したがって、TL
アプローチを採用して、さまざまな終端ZTを使って対応するアンテナをシミュレートする
のが好ましい。式II-1-2の表記は、二つのエッジセルのところで欠けているCL部分を反映
する修正された値AN'、BN'、及びCN'を含む図11Aの回路についても成り立つ。
【0140】
<一次元CRLH周波数帯域>
周波数帯域は、N個のCRLHセル構造を、n=0、±1、±2、...±Nに対するnπの伝搬位相
長で共振させることにより導出された分散式から決定される。ここで、N個のCRLHセルは
それぞれ、式II-1-2においてZ及びYにより表され、CLが末端セルから欠落している図11A
に示されている構造と異なる。したがって、これら二つの構造に関連する共振は異なるも
のと予想できるであろう。しかし、大量の計算の結果から、すべての共振はn=0の場合を
除き同じであり、ωSEとωSHは両方とも、第1の構造で共振し、ωSHのみが、第2の構造で
共振することが示される(図11A)。正の位相オフセット(n>0)は、RH領域共振に対応し、負
の値(n<0)は、LH領域に関連する。
【0141】
式II-1-2で定義されている、Z及びYパラメータを含むN個の同一のセルの分散関係式は
、関係式
【数10】

により与えられる。
【0142】
ただし、Z及びYは、式II-1-2により与えられ、ANは、N個の同一のCRLH回路の直線的カ
スケード又は図12Aに示されている回路から導出され、pはセルサイズである。奇数n=(2m+
1)及び偶数n=2mの共振は、AN=-1及びAN=1にそれぞれ関連付けられている。図11A及び図11
BのAN'では、末端セルにおいてCLが欠落しているため、セルの個数に関係なく、n=0モー
ドは、ω0SHでのみ共振し、ωSEとωSHの両方では共振しない。より高い周波数は、表
1で指定されているχの異なる値に対する式
【数11】

により与えられる。
【0143】
表1は、N=1、2、3、及び4に対するχの値をまとめたものである。興味深いことに、よ
り高い共振|n|>0は、完全なCLがエッジセルに存在しようが(図12A)しまいが(図11A)同じ
である。さらに、n=0に近い共振は、χ値が小さいが(χの下限0に近い)、より高い共振は
、式II-1-5に示されているようにχ上限4に到達する傾向がある。
【表1】

【0144】
図12には、ωSESHでバランス状態(図12A)とωSE≠ωSH非バランス状態(図11B)の両
方の場合について、分散曲線βがωの関数として示されている。後者の場合、min(ωSE,
ωSH)とmax(ωSESH)との間に周波数ギャップがある。制限周波数ωmin及びωmax値は
、式
【数12】

に示されているようにχが上限χ=4に到達する式II-1-6の同じ共振方程式により与えられ
る。
【0145】
図13A及び13Bは、β曲線にそった共振位置の実施例を示している。図13Aは、LR CL=LL
CRであるバランス状態の場合を示し、図13Bは、LH領域とRH領域との間にギャップがある
非バランス状態の場合を示している。
【0146】
RH領域(n>0)では、pをセルサイズとする構造サイズl=Npは、周波数が低くなると増加す
る。しかし、LH領域と比べると、Npの値が小さい場合により低い周波数に到達し、したが
って、サイズが縮小する。β曲線は、これらの共振を中心とする帯域幅の何らかの指標と
なる。例えば、β曲線がほとんど平坦であるためLH共振の帯域幅が狭くなるのは明らかで
ある。RH領域では、β曲線が急峻であるため帯域幅が高くなるであろう、つまり、言い換
えると
【数13】

となる。
【0147】
ただし、χは、式II-1-5で与えられ、ωRは、式II-1-2で定義される。式II-1-5の分散
関係式から、共振は、|AN|=1のときに発生し、その結果、式II-1-8の第1のBB条件(COND1)
の中の分母が0になる。注意しなければならないのは、ANは、N個の同一のセルの最初の伝
送行列要素である(図12A及び図12B)。計算の結果、COND1は、実際にはNと無関係であり、
式II-1-8の第2の式で与えられることがわかる。分散曲線の勾配、したがって可能な帯域
幅を定義するのは、共振における分子とχの値であり、これらは表1で定義されている。
ターゲット構造は、サイズが高々Np=λ/40であり、BWは4%を超えている。小さなセルサイ
ズpを有する構造では、式II-1-8は、明らかに、高いωR値はCOND1、つまり、低いCR及びL
R値という条件を満たすことを示しているが、これは、n<0について、共振が表1の4の近く
のχ値で生じる、言い換えると(1-χ/4→0)となるからである。
【0148】
<一次元CRLH TLマッチング>
すでに示されているように、分散曲線勾配が急勾配値になると、次のステップは、好適
なマッチングを識別することである。理想的なマッチングインピーダンスは、固定値を有
し、マッチング回路網に広いフットプリントを必要としない。ここで、「マッチングイン
ピーダンス」という語句は、アンテナなどの片側給電の場合の給電路及び終端を指す。入
出力マッチング回路網を解析するために、図12BのTL回路についてZin及びZoutを計算する
必要がある。図12Aの回路網は対称的なので、Zin=Zoutを証明するのは簡単である。また
、Zinは、式
【数14】

に示されているようにNと無関係であることも証明された。
【0149】
B1/C1が0よりも大きい理由は、式II-1-5における|AN|<1の条件によるものであり、その
結果、0≦ZY=χ≦4というインピーダンス条件が得られる。
【0150】
第2のBB条件は、一定のマッチングを維持するようにZinが共振に近い周波数でわずかに
変動することである。実マッチングZin'は、式II-1-4に示されているようにCL直列キャパ
シタンスの一部を含むことに留意されたい。
【数15】

【0151】
<アンテナインピーダンスマッチング>
図11及び図11BのTLの実施例とは異なり、アンテナ設計は、典型的には構造エッジイン
ピーダンスとのマッチングがよくない無限大のインピーダンスを持つ終端開放側面を有す
る。キャパシタンス終端は、式
【数16】

により与えられる。
【0152】
LH共振は典型的にはRH共振よりも狭いので、選択されたマッチング値は、n>0の場合よ
りもn<0の場合に導き出される値に近い。
【0153】
GNDが切り詰められた一次元CRLH構造
LH共振の帯域幅を増大するために、シャントキャパシタCRを低減することができる。こ
の低減により、式II-1-8に説明されているようにより急な勾配を持つβ曲線のωR値が高
くなる。CRを下げるさまざまな方法があり、1)基板厚さを増す、2)上部セルパッチ領域を
減らす、又は3)上部セルパッチの下のGNDを減らす方法を含む。デバイスを設計する際に
、これら三つの方法のうちのどれか一つを組み合わせて最終設計を行うことができる。
【0154】
図14Aは、切り詰められたGNDの一実施例を示しており、GNDは上部セルパッチの下の一
方向にそって上部パッチよりも小さい寸法を有する。グラウンド導電層は、ユニットセル
の少なくとも一部の導電性ビアコネクタに接続され、ユニットセルの部分の導電性パッチ
の下を通るストリップ線路1410を備える。ストリップ線路1410は、それぞれのユニットセ
ルの導電経路の寸法よりも狭い幅を有する。切り詰められたGNDの使用は、基板厚さが小
さく、アンテナ効率が低いため上部パッチ領域を縮小できない市販のデバイスで実装する
他の方法よりも実用的と思われる。底部GNDが切り詰められた場合、他のインダクタLp(図
14B)は、図14Aに示されているようにビアを主GNDに接続する金属化ストリップから現れる

【0155】
図15A及び15Bは、切り詰められたGND設計のもう一つの実施例を示している。この実施
例では、グラウンド導電層は、共通グラウンド導電性領域1501及びストリップ線路1510の
第1の遠位端のところで共通グラウンド導電性領域1501に接続され、ストリップ線路1510
の第2の遠位端がユニットセルの一部の導電性パッチの下のユニットセルの少なくとも一
部の導電性ビアコネクタに接続されているストリップ線路1510を備える。ストリップ線路
は、それぞれのユニットセルの導電経路の寸法よりも狭い幅を有する。
【0156】
切り詰められたGNDに対する式を導くことができる。共振は、以下で説明されるように
式II-1-6及び表1のと同じ式に従う。
【表2】

【0157】
式II-1-12のインピーダンスの式から、二つの共振ω及びω'は、それぞれ低いインピー
ダンスと高いインピーダンスを有することは明らかである。したがって、ωの共振の近く
に同調させることは常に容易である。
【表3】

【0158】
第2のアプローチの場合、複合シャント誘導(LL+Lp)は増大するが、シャントキャパシタ
は減少し、その結果、LH周波数が低くなる。
【0159】
アンテナの実施例
以下の実施例で説明されているアンテナは、以下のように構成される。
【0160】
50ΩのCPW(共平面導波路)給電路(最上層)
CPW給電路(最上層)の周りの上部グラウンド(GND)
ランチパッド(最上層)
単一セル:上部金属化セルパッチ(最上層)、最上層と最下層を接続するビア、及びビ
アを主底部GND(最下層)に接続する細いストリップ。
【0161】
アンテナは、HFSS EMシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレートされた。
それに加えて、設計のいくつかは、加工され、測定により特徴付けられた。
【0162】
<アンテナ素子部分>
【表4】

【0163】
これらの実施例は、さまざまな幾何学的形状の切り詰められたグラウンド導電層を特徴
とする。
【実施例1】
【0164】
<USBドングルに対するλ/48×λ/20 2×2のWiFi>
MIMOアンテナ設計及びHFSSシミュレーションの結果が、図16A、16B、及び16Cに例示さ
れている。これは、2.4GHz及び5GHz帯域で動作する2×2のMIMO USBドングルである。アン
テナのサイズは、2.5GHzの周波数でλ/48×λ/20である。
【0165】
基板は、誘電率ε=4.4、幅21mm、L=31mm、及び厚さh=0.787mmのFR4である。
【0166】
GNDサイズは、21×20mmである。
【0167】
セルサイズは、2.5×5.8mmであり、上部GNDでは14mm離れている。
【0168】
図16aに示されているように、CPWトレース幅は、0.3mmであり、ギャップは上部GNDから
0.15mmである。
【0169】
-10dBで、帯域は2.44〜2.55及び4.23〜5.47である。
【0170】
シミュレートされる最大利得は、2.49GHzで1.4dBi、5.0GHzで3.4dBiであり、これは、
極端に小さなサイズであればこのアンテナは十分な効率を有するという指標となっている
。帯域幅は、2.4GHzで5%に近い。
【実施例2】
【0171】
<USBドングルに対する小さな2×2 WiFi(整形セル)>
他のMIMOアンテナ設計及びHFSSシミュレーションの結果が、図17A、17B、及び17Cに例
示されている。図16のアンテナと比較すると、このアンテナは、2.4GHzで絶縁に優れ、最
大利得は2dBiであり、性能のよいことの指標となっている。このアンテナは、ビアが存在
するとしてセルパッチの幾何学的形状が任意の形状を取りうることを示す一例である。
【0172】
基板は、誘電率ε=4.4、幅21mm、L=31mm、及び厚さh=0.787mmのFR4である。
【0173】
GNDサイズは、21×20mmである。
【0174】
図15aに示されているように、CPWトレース幅は、0.3mmであり、ギャップは上部GNDから
0.15mmである。
【0175】
-10dBで、帯域は2.39〜2.50である。
【実施例3】
【0176】
<890MHzの小型アンテナ>
図18Aに例示されているようにビアを底部GNDに接続するストリップ線路がより長い距離
にわたって延びるときに周波数を低い値にどのように同調させ得るかを示す一実施例であ
り、インダクションLpのより高い値に対応する。アンテナのサイズは、890MHzの周波数で
λ/28×λ/28である。
【0177】
基板は、誘電率ε=4.4、幅30mm、L=37mm、及び厚さh=0.787mmのFR4である。GNDサイズ
は、20×30mmである。セルサイズは、12×5mmであり、上部GNDでは14mm離れている。図16
aに示されているように、CPWトレース幅は、1.3mmであり、ギャップは上部GNDから1mmで
ある。
【0178】
-6dBで、帯域は780〜830MHzである(測定結果から得られる)。
【0179】
-10dBにおける追加のより高い周波数帯域は、3.90〜4.20GHz及び4.46〜5.31GHzである(
測定結果から得られる)。
【0180】
シミュレートされる最大利得は、890MHzで-2dBi、5.0GHzで2.8dBiであり、これは、極
端に小さなサイズであればこのアンテナは十分な効率を有するという指標となっている。
効率及び放射パターンは、Satimo 64の室内で検証され、効率の範囲が890MHz及び4.5GHz
帯域において55〜60%であることがわかった。帯域幅は、890MHzで3.5%に近い。
【実施例4】
【0181】
<UWBアンテナ>
このアンテナでは、Lpを操作する代わりに、ランチパッドとセルとの間のより高い結合
容量CLを使用して、マッチング状態を改善する。設計及び結果は、それぞれ図19A、19B、
及び19Cに例示されている。アンテナのサイズは、1.6GHzの周波数でλ/56×λ/12、3.2GH
zの周波数でλ/23×λ/6である。
【0182】
基板は、誘電率ε=4.4、幅20mm、L=35mm、及び厚さh=0.787mmのFR4である。
【0183】
GNDサイズは、20×20mmである。
【0184】
セルサイズは、14×4mmであり、上部GNDでは14mm離れている。
【0185】
図16aに示されているように、CPWトレース幅は、1.3mmであり、ギャップは上部GNDから
1mmである。
【0186】
より高い結合キャパシタンスは、0.3mmの指2本及び0.1mmのギャップを有するインター
デジタル型キャパシタを使用して設計される。-6dBで、帯域は1.63〜2.34GHzである(測定
結果から得られる)。-10dBにおける追加のより高い周波数帯域は、3.20〜4.54GHz及び5.1
7〜5.56GHzである(測定結果から得られる)。シミュレートされる最大利得は、3.3GHzで3.
5dBiであり、1.6GHzと3.2GHzの両方の帯域で測定された効率は、60〜70%であり、これは
、このサイズ及びその広い帯域幅のアンテナに対しては非常に高い値である。
【0187】
二次元CRLHメタマテリアル構造を使用することで、ユニットセルアレーの非対称設計又
は少なくとも一つの給電路のカップリング位置に基づき二つの異なる方向にそって構造の
等方的空間分布を形成することができる。以下の節では、x及びy方向にそって異なるポー
トを利用することで、特定の放射パターンをもたらすNx×NyのセルにそったEM場強度の分
布に関する情報が得られるMTM膜を設計するための二次元構造の解析について説明する。
【0188】
x及びy方向にそって異なる共振励起が生じるので、これらの二次元構造を使用すること
で、デュアルバンドアンテナも実現可能である。これら二つの共振を組み合わせて、帯域
幅を広げることができる。これらの二次元構造は、さらに、単向二路通信機能及び二重通
信機能も可能にする。
【0189】
<二次元異方性CRLH TL構造>
一次元の一般化形式は、直接的ではあるが、今度はセルが二つではなく四つのブランチ
を通して相互接続するので、解析の複雑さが増す。以下の表記は、本明細書の二次元解析
で使用される。
【0190】
Nx列とNy行がある。それぞれのセルは、アレー構造に関するその位置、nxを列位置、ny
を行位置とする(nx,ny)で表される。
【0191】
一次元の場合のように、x軸にそってビアのそれぞれの側にZx/2のインピーダンス、y軸
にそってビアのそれぞれの側にZy/2インピーダンスを持つ対称セルを使用する。対称表記
は、計算を簡素化するだけでなく、最終的実装の実現可能な表現ももたらす。
【0192】
エッジセルは、nx=1又はNx及びny=1又はNyに対応する。入力ポートは、(1,nyin)に配置
され、出力ポートは、(Nx,nyout)に配置される。入力及び出力セルを除き、エッジセルの
残りは、nx=1又はNxに対しては「Ztx」により、ny=1又はNyに対しては「Zty」により終端
される。nx=1にそった電圧は、Vin=VX(1,nyin)、Iin=IX(1, nyin)、Vout=VX(Nx+1, nyout
)、及びIout=IX(Nx+1,nyout)として、Vx(1,ny)により表され、nx=Nxにそった電圧は、Vx(
Nx+1,ny)及びその関連する電流Ix(1,ny)及びIX(Nx+1,ny)により表される。
【0193】
一次元の場合に使用されるものと類似の表記が、Vout=VX(Nx+1,nyout)とともに二次元
解析で使用され、(Nx+1,nyout)のインデックスは、二次元解析で、一次元解析の(Nx,nyou
t)のインデックスを置き換えるために使用される。
【0194】
RF回路網行列を使用して、すべての境界及び終了条件を解いて式
【数17】

から式II-1-1のA、B、C、及びD係数を抽出するが、ただし、
【数18】

である。
【0195】
ただし、V及びIは、Vin=VX(1,nyin)、Iin=IX(1,nyin)、Vout=VX(Nx+1,nyout)、Iout=IX
(Nx+1,nyout)となり、終端エッジセルが、VX(1,ny)=Ztx IX(1,ny)、及びVX(Nx+1,ny)=Ztx
IX(Nx+1,ny)となるようにNy個の要素を含む列である。
【0196】
すべての角かっこ[..]は、Ny×Nyの行列に対応し、[1]は単位行列であり、[0]はすべて
の0の行列を表す。行列[X]は、カロズ(Caloz)及びイトウ(Itoh)、「Electromagnetic Met
amaterials: Transmission Line Theory and Microwave Applications」、John Wiley &
Sons (2006)で導かれている。
【0197】
式II-2-1内の2Ny×2Nyの行列は、その相互接続と終端の制約条件により、式II-1-1で表
される一次元構造に簡約される。このプロセスは、Nx=1及びNy=2を有する構成に対する具
体的な実施例において以下で例示される。
【0198】
ここでは、特性インピーダンスZc(ω)=Vin/Iinを導くが、これは、さらに、nyin=nyout
とした場合の本明細書の対称セル構造内のZc(ω)=Vout/Ioutにも等しい。四つのポートを
持つ1セルに対する分散関係式(二次元構造の基本ブロック)は、
【数19】

により与えられる。
【0199】
式(II-2-1)は、
Py又はβy→0
Zy→∞
の場合に、式(II-1-5)で与えられる一次元の場合に簡約される。
【0200】
一次元の場合と同様に、χx及びχyに対する可能な値は、
【数20】

である。
【0201】
一次元の場合と異なり、χ値が、0と4との間に制限され、低い周波数については値4に
達する傾向がある場合、二次元構造は、類似の一次元構造(式II-2-3の場合a)及びx及びy
方向にそった独立の伝搬(式II-2-3の場合c)だけでなく、場合bとcのような結合伝搬をも
もたらすことに関してかなり込み入っている。
【0202】
近共振nx及びnyを有する結合伝搬では、複数の共振を組み合わせて帯域幅を拡大するこ
とができる。他の方法も、場合bに示されているとおりであり、Zxは、急峻な勾配を持つ
、従ってより大きなBWを持つようにy方向にそった分散関係(βy)を微調整する追加の項を
与える。
【0203】
<Nx=1及びNy=2の実施例>
この実施例では、Ztx→∞及びZty→∞及びnyin=nyout=1となる特別な場合について考察
する。この場合、電流成分IX(1,2)=IX(2,2)=0である。式II-1-2にこれらの値を代入する
と、四つの未知数Vin=VX(1,1)、Iin=IX(1,1)、VX(1,2)、及びVX(2,2)を含む四つの式が一
組得られ、これをVout=VX(2,1)及びlout=IX(2,1)に関して計算する。式II-2-1を使用し、
またRef[1]で導かれた[X]行列を使用して簡単な計算を行った後、[A B C D]行列について

【数21】

が求められるが、ただし、
【数22】

とする。
【0204】
上記の式の中で、Zty→∞の条件は、y軸にそってエッジのところの開回路を反映するよ
うに適用される。これらのA B C D値に基づき、この1×2の二次元の実施例及びマッチン
グ条件に関する対応する分散曲線が得られ得る。式II-1-8に示されているように、Aの値
により、共振及びBWが設定される。一次元の場合と異なり、二次元構造は、Zyに二つの追
加の設計パラメータを有し、x及びy方向に異なる値を持つようにYgにおけるCRを選択した
場合の第3のパラメータを有する。
【0205】
Nx=1なので、nx=0となる共振が発生しうるが、しかし、y方向にそって二つのセルがあ
るため、表1に示されているように|ny|=1の共振に対応するχy=2の場合にA=1も満たされ
る。これら二つの可能性の組合せにより、共振を組み合わせるいくつかの方法を実現する

【0206】
マッチングインピーダンスZcは、共振周波数上で入出力インピーダンスを整合させるよ
うに設定することができる。Zin=Zoutは、いずれかの側から見たときに回路網が完全対称
であるという事実によるものである。次に、
【数23】

のようにZcを計算して、所望の周波数帯域にわたってZcの定数値で動作する構造を決定す
る。
【0207】
以下の節では、一部はユニットセルの一次元アレーに関する解析に基づき、ユニットセ
ルが二次元アレーに配列されたCRLM MTM構造を説明する。ユニットセルのこのような二次
元アレーは、さまざまな用途に対し一つ又は複数のポートを有するさまざまなMTM膜を構
成するために使用できる。例えば、二つの直交する方向x及びyにそって異なるポートを持
つMTM膜を使用することで、Nx×NyのセルにそってEM場の所望の分布をもたらし、特定の
用途向けに手直しされた放射パターンを形成することができる。
【0208】
<オフセット給電部設計>
上述の実施例は、一方向にそった信号伝搬、又はx及びy方向にそった減結合伝搬を示し
ている。帯域幅を増やし、マッチング条件を最適化するために使用されうる他のデバイス
パラメータは、オフセット給電である。これは、上及び下にあるx-y平面が非対称となる
ように中心外れのx方向にそって給電部を設けることである。これは、y方向にそってnyモ
ードを励起する別の給電部を備えることなくEM波をy方向にも伝搬させるトリガとなる。
【0209】
例えば、3×3の構造では、給電部がセルの中心yエッジに置かれる場合(nx=1、ny=2)、
これは中心に置かれた給電部と考えられる。その代わりに、給電部がセルの中心yエッジ
に置かれるか(nx=1、ny=1)、又は対称性のため(nx=1、ny=3)である場合、給電部は中心外
れであると考えられる。給電部が、(nx=1,ny=2)セルのところに、ただしyエッジにそって
中心から空間オフセットδのところにある場合に同じ推論を行える。
【0210】
このようなオフセット給電の下で、分散曲線βx及びβyは、ほとんど互いの上に載り、
nx及びny共振が近い値及び類似の帯域幅(BW)(勾配)を有するように構成できる。
【0211】
図20A〜20Eは、このようなメタマテリアルアンテナ並びにx及びyモードの励起の一実施
例を示している。図3は、x及びy方向にそって二つのI/Oポートを持つそのようなCRLHメタ
マテリアルアンテナの具体的な実施例を示している。マルチセルCRLH MTM構造は、x及びy
方向のユニットセルの異なる物理的寸法(及びしたがって異なる等価回路パラメータ)のせ
いで(LH)共振モードが二つの異なる(所望の)周波数で励起される単一アンテナとして二次
元異方性メタマテリアル構造を持つように設計できる。これらの共振x及びyモードは、同
じ又は異なるオーダーである、つまり、両方ともn=-1に対応するか、又は一方がn=0に対
応し、他方がn=-1に対応するようにできる。給電部は両方とも、その中心をx及びy方向に
そって真ん中のセル内に置く。
【0212】
これら二つのモードはそれぞれ、アンテナの対応する部分を介してのみ励起されうるた
め、所望の帯域における信号は、デバイスのTx又はRxポートによってのみ使用でき、した
がってデュプレクサの必要は排除される。さらに、アンテナのところに伝送路を適宜設計
し、対応するRFチェーンのインピーダンスと整合するようにすることにより、信号の選択
的フィルタリングがこれらの伝送路により実現できる。この場合、対応するBPフィルタも
必要なくなり、デバイスのサイズが縮小され、複雑度もなおいっそう低減されうる。
【0213】
具体的一実施例として、図20A〜Eのユニットセルは、二つの基板と三つの金属層を備え
ることができる。低誘電率(εr1=3.5、h1=3.048mm)を有する厚手の基板RO 4350及び高誘
電率(εr2=10.2、h2=0.25mm)を有する薄手の基板RO 3010が積み重ねられる。それぞれの
ユニットセルは、上部の隣接するパッチ間の間隙が0.2mmである4.8×4.8mm2の正方形のパ
ッチを備え、金属製ビアがグラウンドに接続される。四つのMIMキャパシタが、xとyの両
方向で隣接するセルにリンクされ、それぞれサイズは4.5mm2及び3.8mm2である。しかし、
設計は、この材料のみに制限されるわけでなく、RF及びマイクロ波用途に適した誘電体材
料を代わりに使用することもできる。高度なMTMアンテナサブシステムの全体的サイズは
、13.2mm(幅)、13.2mm(長さ)、及び3.278mm(高さ)である。給電部は、上部金属層上の14
×2のマイクロストリップ線路である。
【0214】
高度なMTMアンテナのモデルは、全波高周波シミュレーションツールであるAnsoft HFSS
で構築される。図20Fは、図20A〜20Eにおいて二つのポートを有する二次元MTMアンテナの
HFSSシミュレーションからの結果を示している。この場合の異方性は、アンテナがWCDMA
周波数に対する高度なデュプレクサとして動作しうるように調節される。送信帯域中心周
波数は、1.95GHzであり、受信帯域中心周波数は、2.14GHzである。ポート1のリターンロ
スは、送信帯域におけるポート1の共振を示している。ポート2のリターンロスは、受信帯
域におけるポート2の共振を示している。Tx経路からRx経路までの間で25dBを超える絶縁
が達成されることが、S12のプロットから明らかである。x軸にそったポートが励起された
ときの二次元構造にそったEM場分布及びほとんどの場は、励起方向に従う間隙にそって集
中する。
【0215】
図20Gは、図20Aのデュアルポート、デュアルバンドのMTMアンテナに基づく例示的なMTM
FDDデバイスを示している。この実施例では、MTM FDDデバイスは、2ポートのメタマテリ
アルアンテナ、信号の送信と受信が別々の送信(Tx)及び受信(Rx)ポートを備えるRFIC、対
応するアンテナポートをRFICのTxポート又はRxポートのいずれかに接続する二つの給電路
、給電1及び給電2、並びに適切な動作帯域において信号を選択するためのデバイスのTx及
びRxチェーン内でそれぞれ接続されるバンドパスフィルタを備える。
【0216】
したがって、FDD用のメタマテリアルアンテナサブシステムは、二つのアンテナポート
を有する2ポートメタマテリアルアンテナ、及びそれぞれRFIC回路により生成される送信
周波数の送信チャネル信号Tx及びアンテナから受信された、またRFIC回路に送られるべき
異なる受信周波数の受信チャネル信号Rxを搬送するため対応するアンテナポートを接続す
る二つの給電路を備える。メタマテリアルアンテナは、二つの異なる共振モードをもたら
す二次元異方性アンテナであり、それぞれのモードは対応するアンテナポートの一つを介
して励起される。
【0217】
それに加えて、2ポートメタマテリアルアンテナは、二つのアンテナポート、及びそれ
ぞれRFIC回路により生成される送信周波数の送信チャネル信号Tx及びアンテナから受信さ
れた、またRFIC回路に送られるべき異なる受信周波数の受信チャネル信号Rxを搬送するた
めに対応するアンテナポートを接続する二つの給電路を備えることができる。二つの給電
路は、それぞれ送信チャネル信号及び受信チャネル信号の部分において送信周波数及び受
信周波数の信号をフィルタリングするためにバンドパスフィルタなしで基準面において対
応するRFICチェーンのインピーダンスマッチングをそれぞれ行うように設計される。メタ
マテリアルアンテナは、二つの異なる共振モードをもたらす二次元異方性アンテナであり
、それぞれのモードは対応するアンテナポートの一つを介して励起される。このデバイス
は、さらに、それぞれデバイスのTx及びRxチェーン内で結合された、送信バンドパスフィ
ルタ及び受信バンドフィルタを備えることができる。
【0218】
上記のMTM設計に基づく無線FDDデバイスは、送信周波数で共振する送信ポート及び異な
る受信周波数で共振する受信ポートを有する2ポートメタマテリアルアンテナ、送信周波
数で信号の独立の送信を、受信周波数で信号の独立の受信を行うための送信(Tx)ポート及
び受信(Rx)ポートを有するRFIC回路、並びにそれぞれ対応するアンテナポートをRFIC回路
のTxポート及びRxポートにそれぞれ接続する二つの給電路を備えることができる。アンテ
ナ給電路は、それぞれの信号経路内にバンドパスフィルタを置くことなく基準面において
対応するRFICチェーンのインピーダンスマッチングを行うように設計されうる。
【0219】
他の実装では、メタマテリアルアンテナは、二つの異なる共振モードをもたらす二次元
異方性アンテナであり、それぞれのモードは一つの対応するアンテナポートのみを介して
励起される。
【0220】
図21A〜21Eは、2モードのCRLH MTMアンテナの他の実施例を示している。二次元アンテ
ナは、x及びy方向にそって異なるパラメータを持つ、つまり、異方性MTM構造を持つこと
ができる。異方性を有するので、同じオーダーのLH共振が、異なる周波数で励起されうる
。適切なCRLHパラメータを持つアンテナを設計することにより、x及びyモードは、互いに
非常に近くに出現でき、したがって、個々の共振のBWの総和に等しい、複合BWを持つアン
テナを形成するために使用できる。実装の一つの特徴は、ある点においてMTM構造にオフ
セット給電を加えることができる点であり、x及びyモードの両方を励起することができる
。最下層は、全面金属のGND面及び構造の中心軸からのオフセットを持つ給電路を有する

【0221】
CRLH MTM構造は、さらに、隣接するアンテナ間のカップリングを低減するためにMIMOア
ンテナとの指向性カプラーを使用する指向性RFカプラーを製作するために使用されうる。
図22に示されているように、指向性カプラーは、λ/10の間隔などの密集アンテナ間の絶
縁を改善する4ポートデバイスであり、アナログ領域において、受動的に、信号間の直交
性を復元する。アンテナから受信された信号は、90°又は180°の指向性カプラーを使用
することにより減結合される。アンテナ間のカップリングを低減することは、無相関経路
を形成するのでMIMOアンテナアレー設計を成功させるうえで鍵となる構成要素と考えられ
る。
【0222】
従来の指向性カプラーは、長さλ/4の複数のセクションを持つTLを必要としており、サ
イズが大きくなるため実装が実用的でない。CRLH MTM構造を使用することで、90°又は18
0°の指向性カプラーのサイズを縮小することができる。これは、二つのポートがアンテ
ナに接続され、他の二つが無線トランシーバに接続された4ポート指向性カプラーを設計
することにより実現されうる。(0°,90°)及び(90°,0°)などの二つの異なる励起をアン
テナポートに印加して絶縁を低減することができる。これは、直交になるのに近いアンテ
ナの放射パターンであった。180°カプラーを使用することで、異なる励起は(0°,0°)及
び(0°,180°)の励起であり、入力信号間の総和と差に対応する。
【0223】
図23は、MTM減結合マッチング回路網の一実施例を示している。指向性カプラーは、隣
接するアンテナ間のカップリングを低減するので、同様に、密集間隔で配置されているア
ンテナを減結合するだけでなく、それぞれのアンテナポートに割り当てられた任意のビー
ムパターンも許容する最適なマッチング回路網を設計する手段を見つけることが望ましい
。そのような受動的な、無損失の減結合/パターン整形マッチング回路網(DPSN)を形成す
るための実用的な反復アプローチが定められた。一度に二つのアンテナしか減結合できな
い指向性カプラーと異なり、DPSNはN個のアンテナポート及びN個のトランシーバポートに
接続する。このマッチング回路網の入力要素は、N個のアンテナポートとN個のトランシー
バポートとの間の位相オフセットの特定の値を含む。したがって、指向性カプラーは、N=
2とし、位相オフセットを90°又は180°とするDPSNの特別な場合と考えられる。ここでも
バランス状態のCRLH TLを使用して、DPSNを設計し、DPSNのサイズを縮小する。
【0224】
アンテナアレーは、最終用途に基づき放射パターン及び偏波を最適化するためそのレイ
アウトが異なる幾何学的形状により定められるように複数のMTMアンテナを組み合わせた
ものである。例えば、WiFiアクセスポイント(AP)では、アンテナは、CPW線路がアンテナ
を電力結合器/分配器及びスイッチに接続するボードの周囲にそってプリントされうる。
それを、ラップトップのディスプレイ上に、又は他の通信デバイス内に実装することがで
きる。
【0225】
図24及び25は、二つの実施例を示している。ダイオードなどのスイッチング要素は、ア
ンテナ素子を電力結合器/分配モジュールに接続するトレースにそって使用される。これ
らのダイオードは、アンテナアレーの部分集合のみをアクティブ化するようにビームスイ
ッチングコントローラ(BSC)により制御される。マッチング条件を改善するため、スイッ
チング素子は、λを伝搬する波の波長として、電力結合器/分配器からλ/2のところに配
置されうる。移相器及び/又は遅延線は、選択されたアンテナのビームパターンをさらに
高めるために使用されうる。電力結合器/分配器(PCD)は、既製のコンポーネント又はボー
ド上に直接プリントされたものとすることができる。
【0226】
プリントされたPCSは、Wilkinson PCDなどの従来の設計又はゼロ次電力結合器及び分配
器(UCLA 2005開示)などのMTM設計に基づくことができる。以下の実施例では、プリントさ
れたWilkinson PCDを例示している。
【0227】
PCDからの入出力信号は、無線トランシーバに送られ、処理される。デジタルシグナル
プロセッサは、リンク性能を評価する手段を備える。これは、パケット誤り率及びRSSI(
受信信号強度)に基づくことができる。このデジタルプロセッサは、信号性能のレベルに
基づいてBSCにフィードバックを送る。
【0228】
BSCの動作は、特定の場所及び時刻における通信環境に適した最適なビームパターンに
収束するときに以下の段階により説明できる。
【0229】
走査モード:これは、細いビームに遷移する前に強い経路の方向を絞り込むために幅の
広いビームが最初に使用される初期化プロセスである。複数の方向が、同じ信号強度を示
すことがある。これらのパターンは、メモリに記録される前にクライアント情報及び時刻
を刻印される。
【0230】
ロックモード:リンクを、最高の信号強度を示した単一パターンの一つにロックする。
【0231】
再走査モード:リンクが低い性能を示し始めた場合に、最初にメモリ内に記録されてい
るビームパターンを考慮し、最初にそれらの方向からのビーム配向を変更する再走査モー
ドをトリガする。
【0232】
MIMOモード:MIMOシステムでは、最初に強くマルチパスリンクの方向を見つけてから、M
IMOの複数のアンテナパターンをそれらの方向にロックするのが望ましい。したがって、
アンテナの複数の部分集合が、同時に動作しており、それぞれMIMOトランシーバに接続さ
れる。
【0233】
<ZOR電力結合器/分配器>
電力結合器は、出力ポート及びNブランチ入力ポートを有するゼロ度右手/左手系複合(C
RLH)伝送路(TL)を備えることができる。それぞれの入力ポートは、アンテナからの出力信
号を受け取るように構成される。入力ポートは、出力信号を生成するためにZOR TLにより
同相で結合される。ZORモードは、ブランチポートが信号を組み合わせるように緩く結合
され、TLの他端が開放端である無限大波長定在波共振器に対応する。電力結合器は、集中
インダクタ及びキャパシタを使用して製作できる。給電路は、プリントされたマイクロス
トリップ又はCPW給電路のいずれかとすることができる。出力ポートは、接続されている
デバイスのインピーダンスと整合するように構成される。Nブランチ入力線は、ポートを
アクティブ化又はディセーブルする集積化されたスイッチを有する。このスイッチは、ダ
イオード又はMEMSデバイスとすることができる。ゼロ次CRLH MTM伝送路の実施例は、本出
願の明細書の一部として参照により組み込まれるイトウ(Itoh)らの「zeroth-order reson
ator」という表題の2006年5月30日に公開された米国特許出願第2006/0,066,422号におい
て説明されている。
【0234】
電力分配器は、入力ポート及びNブランチの出力ポートを有するゼロ度CRLH伝送路(TL)
を備えることができる。それぞれの出力ポートは、アンテナに信号を送るように構成され
る。入力信号は、N出力ポートを生成するように同相で等しく分配される。ZORモードは、
ブランチポートが主入力ポートからの信号を等しく分配するように緩く結合され、TLの他
端が開放端である無限大波長定在波共振器に対応する。電力結合器は、集中インダクタ及
びキャパシタを使用して製作できる。給電路は、プリントされたマイクロストリップ又は
CPW給電路のいずれかとすることができる。入力ポートは、接続されているデバイスのイ
ンピーダンスと整合するように構成される。Nブランチ出力線は、ポートをアクティブ化
又はディセーブルする集積化されたスイッチを有する。このスイッチは、ダイオード又は
MEMSデバイスとすることができる。
【0235】
MTMアンテナと電力結合器/分配器の集合体の代わりに、MTM漏洩波アンテナを使用して
、ビームパターン間の整形、方向制御、又は切り換えを行うことができる。図26は、一実
施例を示している。漏洩波アンテナは、一端が無線トランシーバに接続され、他端が入出
力ポートと同じインピーダンスで終端されているZOR TLを使用して製作できる。
【0236】
放射パターンのビーム幅は、TLのセルの個数に依存する。セルの数が多ければ多いほど
、ビーム幅は狭くなる。TLに直交する方向は、ZOR周波数に対応し、前方及び後方ビーム
は、それぞれ、RH及びLH領域に対応する。アンテナは、これらの異なるビーム方向を生じ
ながら同じ周波数で動作する必要があるため、キャパシタンス及びインダクタの値は、LH
、RH、及びZOR領域内で同じ周波数により共振する構造を形成するように変化する。
【0237】
アンテナ及び電力結合器/分配器の集合体を、漏洩波アンテナとともに使用できる。こ
れは、電力結合器/分配器構造を漏洩波アンテナとしても使用することにより実現される
が、その設計が、主ポートと同じインピーダンスを持つ他のTLポートを終端することのみ
を除き電力結合器/分配器と似ているからである。
【0238】
図27は、さらに、信号をMIMO、SM、STBC、BF、及びBFN機能に送るアナログ回路に結合
されているN個のMTMアンテナ素子を使用するアンテナシステムを例示している。図24〜27
の実施例では、非MTM構造では解決するのが困難であると思われる技術的、又は工学的課
題を解決するために、少なくとも一つの素子がCRLH MTM構造から作られる。アンテナ又は
アンテナアレーが、CRLH MTM構造から作られ、アンテナ又はアンテナアレーに結合された
RF回路素子もCRLH MTM構造である場合、二つのMTM構造は異なることがある。MTM構造は、
さまざまなRFコンポーネント、デバイス、及びシステムを設計する際に設計の柔軟性及び
運用を高めることができる。
【0239】
一次元及び二次元におけるMTMコンセプトを利用することで、RFチップパッケージング
技術に適合するように、単一の層及び複数の層を設計することができる。第1のアプロー
チでは、低温同時焼成セラミック(LTCC)設計及び加工技術を使用することによりシステム
オンパッケージ(SOP)コンセプトを利用している。多層MTM構造は、高い誘電率εを使用す
ることによりLTCC加工用に設計されており、例えば、ε=7.8、損失正接0.0004のDuPont 9
51を使用する。ε値が高いほど、サイズの縮小はさらに推し進められる。したがって、ε
=4.4のFR4基板を使用して前の節で示されたすべての設計及び実施例は、LTCCのより高い
誘電率の基板に適合するように直列及びシャントのキャパシタ及びインダクタを調節する
ことでLTCCに移すことができる。
【0240】
LTCC基板の高い誘電率と対照的に、プリントMTM設計をRFチップに縮小するために使用
できる他の技術は、GaAs基板とポリアミド薄層を使用するモノリシックマイクロ波集積回
路(MMIC)である。両方の場合において、FR4又はRoger基板上のオリジナルのMTM設計は、L
TCC及びMMIC基板/層の誘電率及び厚さに適合するように調節される。
【表5】

【0241】
本明細書は、多くの詳細事項を含んでいるが、これらは、本発明の範囲又は請求内容の
範囲に対する制限として解釈すべきではなく、むしろ本発明の特定の実施形態に特有の特
徴の説明として解釈すべきである。別々の実施形態の背景状況において本明細書で説明さ
れているいくつかの特徴も、単一の実施形態において組み合わせて実装されうる。逆に、
単一の実施形態の背景状況において説明されているさまざまな特徴は、複数の実施形態で
別々に、又は好適な部分的組合せで、実装することも可能である。さらに、上ではいくつ
かの特徴を特定の組合せで動作するものとして説明することができ、さらには最初にその
ようなものとして請求されうるが、請求されている組合せから得られる一つ又は複数の特
徴は、場合によっては、組合せから切り取られ、また請求された組合せは、部分的組合せ
又は部分的組合せの変更形態を対象とするものとすることもできる。
【0242】
ごく少数の実装が開示されている。しかし、変更形態及び機能強化を構成できることは
理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】CRLHメタマテリアルの分散図である。
【図2】四つのMTMユニットセルからなる一次元アレーを備えるCRLH MTMデバイスの一実施例を示す図である。
【図2A−C】図2A、2B、及び2Cは、図2におけるそれぞれのMTMユニットセル内の部分の電磁的特性及び機能、並びにそれぞれの等価回路を例示する図である。
【図3】MTMユニットセルの二次元アレーに基づくCRLH MTMデバイスの他の実施例を示す図である。
【図4】一次元又は二次元アレー及びCRLH MTM構造内に形成されたアンテナ素子を含むアンテナアレーの一実施例を示す図である。
【図5】図4のアンテナアレーに基づくMIMOアンテナサブシステムを例示する図である。
【図6】図6A及び6Bは、CRLH MTMアンテナサブシステムの二つの無線応用事例を示す図である。
【図7】図6A及び6Bを実装する無線通信システムの一実施例を示す図である。
【図8】図8A及び8Bは、無線送信及び受信の無線通信におけるさまざまな状態を示す図である。
【図9A−B】図9A及び9Bは、無線送信及び受信の無線通信におけるさまざまな状態を示す図である。
【図9C】図9Cは、無線送信及び受信の無線通信におけるさまざまな状態を示す図である。
【図10】無線ネットワークにおける制御アルゴリズムの一実施例を示す図である。
【図11】四つのユニットセルを備えるCRLH MTM伝送路の一実施例を示す図であり、図11A、11B、及び11Cは、伝送路モード及びアンテナモードのいずれかにおける異なる状態の下にある図11のデバイスの等価回路を示す図である。
【図12】四つのユニットセルを備えるCRLH MTM伝送路の一実施例を示す図であり、図12A、12B、及び12Cは、伝送路モード及びアンテナモードのいずれかにおける異なる状態の下にある図11のデバイスの等価回路を示す図である。
【図13】図13A及び13Bは、図11のデバイスにおけるベータ曲線にそった共振位置の実施例を示す図である。
【図14】図14A及び14Bは、切断グラウンド導電層設計によるCRLH MTMデバイスの一実施例を示す図である。
【図15】図15A及び15Bは、切断グラウンド導電層設計によるCRLH MTMデバイスの他の実施例を示す図である。
【図16】図16A〜16Eは、CRLH MTMアンテナの実施例を示す図である。
【図17】図17A〜17Dは、CRLH MTMアンテナの実施例を示す図である。
【図18】図18A〜18Dは、CRLH MTMアンテナの実施例を示す図である。
【図19】図19A〜19Dは、CRLH MTMアンテナの実施例を示す図である。
【図20A−E】図20A〜20Eは、二次元ユニットセルの空間異方性を有する設計に基づくデュアルポート、デュアルバンドのCRLH MTMアンテナシステムの一実施例を示す図である。
【図20F】図20Fは、図20Aのアンテナの性能を示す図である。
【図20G】図20Gは、図20Aのアンテナに基づくFDDデバイスを示す図である。
【図21】図21A〜21Eは、シングルポート、デュアルバンドのCRLH MTMアンテナの一実施例を示す図である。
【図22】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。
【図23】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。
【図24】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。
【図25】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。
【図26】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。
【図27】CRLH MTMアンテナ又はRF回路素子に基づく装置及びサブシステムの実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配置され、左手/右手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成する
ように構造化され、それぞれのアンテナ素子がCRLHメタマテリアル構造と共振する信号の
波長の1/10の寸法を有し、二つの隣接するアンテナ素子が前記波長の1/4以下の間隔を互
いにあけて配置されている、複数のアンテナ素子を備えるデバイス。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、空間多重化(SM)をサポートするように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、時空間ブロック符号化(STBC)をサポートするように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、ビーム形成を行うように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記アンテナ素子は、ビーム形成及びヌル形成を行うように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
基板を備え、
前記アンテナ素子は、前記基板上に形成される
請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記アンテナ素子は、二次元アレーを形成する
請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記アンテナ素子は、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する前記信号の前記波長を中
心とする帯域を持つバンドパスフィルタを実行するように構成された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記アンテナ素子は、少なくとも二つの異なる波長を共振させるように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アンテナ素子は、信号移相器を実行して信号内に移相を生じさせるように構造化さ
れた
請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記アンテナ素子は、CRLHメタマテリアル構造のエッジでインピーダンスマッチングを
行うように構造化された
請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記アンテナ素子は、信号を送信し、受信するための無線通信カードの一部である
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記アンテナ素子は、信号を送信し、受信するためのハンドヘルド型無線通信デバイス
の一部である
請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記アンテナ素子は、信号を送信し、受信するためのラップトップコンピュータの一部
である
請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記CRLHメタマテリアル構造に集積化されたRF回路素子を備え、前記RF回路素子は、帰
還回路網、増幅器、フィルタ、電力分配器、又は電力結合器のうちの一つである
請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記RF回路素子は、CRLHメタマテリアル構造を備える
請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
CRLHメタマテリアル構造を有する指向性カプラーを備え、前記指向性カプラーは前記ア
ンテナ素子の少なくとも一部に結合されている
請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
基板と、
前記基板上に形成され、左手/右手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を形成するように
構造化された複数のユニットセルを備えるアンテナと、
第2のCRLHメタマテリアル構造内の前記基板上に形成され、前記アンテナに結合されたR
F回路素子とを備えるデバイス。
【請求項19】
前記RF回路素子は、フィルタを備える
請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記RF回路素子は、電力分配器を備える
請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記RF回路素子は、電力結合器を備える
請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
前記RF回路素子は、指向性カプラーを備える
請求項18に記載のデバイス。
【請求項23】
前記RF回路素子は、マッチング回路網を備える
請求項18に記載のデバイス。
【請求項24】
前記アンテナは、多入力多出力アンテナアレーである
請求項18に記載のデバイス。
【請求項25】
基板と、
前記基板上に形成され、それぞれのアンテナ素子が右手/左手系複合(CRLH)メタマテリ
アル構造を形成する複数のユニットセルを備えるように構造化され、複数のアンテナ素子
を備えるアンテナアレーと、
前記基板上に形成され、それぞれの信号フィルタが前記アンテナアレーのそれぞれのア
ンテナ素子の信号経路に結合される、複数の信号フィルタと、
前記基板上に形成され、それぞれの信号増幅器が前記アンテナアレーのそれぞれのアン
テナ素子の信号経路に結合される、複数の信号増幅器と、
前記基板上に形成され、前記複数の信号フィルタ及び前記複数の信号増幅器を介して前
記アンテナアレーに結合され、前記アンテナアレーに送られるか、又は前記アンテナアレ
ーから受信される信号を処理するように動作可能なアナログ信号処理回路とを備えるデバ
イス。
【請求項26】
前記アンテナアレーは、多入力多出力アンテナアレーである
請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記アナログ信号処理回路に結合され、前記アナログ信号処理回路からのアナログ信号
をデジタル信号に変換し、前記アナログ信号処理回路に送られるデジタル信号をアナログ
信号に変換するように動作可能なデジタル-アナログインターフェース回路と、
前記デジタル-アナログインターフェース回路を介して前記アナログ信号処理回路と通
信し、空間多重化(SM)、ビーム形成(BF)、ビーム形成及びヌル形成(BFN)、並びに時空間
ブロック符号化(STBC)のうちの一つを動的に制御するチャネル制御メカニズムを備えるデ
ジタルプロセッサとを備える請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
それぞれのアンテナ素子は、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/10
の寸法を有し、
二つの隣接するアンテナ素子は、互いに、波長の1/4以下の間隔をあけて配置される請
求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
それぞれのアンテナ素子は、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/6
未満の寸法を有し、
二つの隣接するアンテナ素子は、互いに、波長の1/4以下の間隔をあけて配置される請
求項25に記載のデバイス。
【請求項30】
前記信号フィルタのそれぞれは、第2のCRLH金属材料構造を備える
請求項25に記載のデバイス。
【請求項31】
前記信号増幅器のそれぞれは、第2のCRLH金属材料構造を備える
請求項25に記載のデバイス。
【請求項32】
それぞれのアンテナ素子は、前記デバイスにおいて信号の波長の1/6の寸法を有する
請求項25に記載のデバイス。
【請求項33】
前記アンテナ素子は、前記基板上にプリントされた金属層である
請求項25に記載のデバイス。
【請求項34】
第1の側に第1の表面を有し、前記第1の側の反対側の第2の側に第2の表面を有する誘電
体基板と、
前記第1の表面上に形成され、互いに隔てられている複数の導電性パッチと、
前記第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、
前記導電性パッチを前記グラウンド導電層に接続し、それぞれのユニットセルが前記第
1の表面上にそれぞれの導電性パッチを有する体積と前記それぞれの導電性経路を前記グ
ラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネクタとを備える複数のユニットセルをそれ
ぞれ形成するために前記基板内に形成された複数の導電性ビアコネクタと、
遠位端が前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチの近くに配置され、電磁
結合される導電性給電路とを備え、
前記デバイスは、前記ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を
形成するように構造化され、
それぞれのユニットセルは、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/6
以下の寸法を有するデバイス。
【請求項35】
無線アクセスポイント、或いは無線信号が受信又は送信される際に使用される前記CRLH
メタマテリアル構造に結合されたルーターを備える
請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
それぞれのユニットセルは、波長の1/10以下の寸法を有する
請求項34に記載のデバイス。
【請求項37】
前記グラウンド導電層は、それぞれの導電性パッチの寸法よりも小さい寸法をそれぞれ
のユニットセルにおいて有するようにパターン形成される
請求項34に記載のデバイス。
【請求項38】
前記デバイスは、前記信号共振のそれぞれの周波数の1%を超える帯域幅を持つ信号共振
を有するように構造化される
請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記デバイスは、前記信号共振のそれぞれの周波数の4%を超える帯域幅を持つ信号共振
を有するように構造化される
請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
前記ユニットセルは、一次元アレーを形成し、
前記グラウンド導電層は、前記一次元アレーにそってストライプ線を含むようにパター
ン形成される
請求項37に記載のデバイス。
【請求項41】
インピーダンスマッチング状態をもたらすように前記直線アレーの一端のところでユニ
ットセルに形成された終端キャパシタを備える
請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
第1の側に第1の表面を有し、前記第1の側の反対側の第2の側に第2の表面を有する誘電
体基板と、
前記第1の表面上に形成され、互いに隔てられている複数の導電性パッチと、
前記第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、
前記導電性パッチを前記グラウンド導電層に接続し、それぞれのユニットセルが前記第
1の表面上にそれぞれの導電性パッチを有する体積と前記それぞれの導電性経路を前記グ
ラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネクタとを備える複数のユニットセルをそれ
ぞれ形成するために前記基板内に形成された複数の導電性ビアコネクタとを備え、
前記デバイスは、前記ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を
形成するように構造化され、
前記グラウンド導電層は、それぞれの導電性パッチの下の寸法が前記それぞれの導電性
パッチの寸法よりも小さくなるようにパターン形成されるデバイス。
【請求項43】
無線アクセスポイント、或いは無線信号が送信又は受信される際に使用される前記CRLH
メタマテリアル構造に結合されたルーターを備える
請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
それぞれのユニットセルは、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/10
以下の寸法を有する
請求項42に記載のデバイス。
【請求項45】
それぞれのユニットセルは、前記CRLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/40
以下の寸法を有する
請求項44に記載のデバイス。
【請求項46】
さらに、前記CRLHメタマテリアル構造に結合され、第2のCRLHメタマテリアル構造内に
置かれるように構造化されたRF回路を備える
請求項42に記載のデバイス。
【請求項47】
前記グラウンド導電層は、前記ユニットセルの少なくとも一部の前記導電性ビアコネク
タに接続され、前記ユニットセルの部分の前記導電性パッチの下を通るストリップ線路を
備え、
前記ストリップ線路は、それぞれのユニットセルの前記導電経路の寸法よりも狭い幅を
有する
請求項42に記載のデバイス。
【請求項48】
前記グラウンド導電層は、
共通グラウンド導電性領域と、
複数のストリップ線路であって、前記ストリップ線路の第1の遠位端のところで前記共
通グラウンド導電性領域に接続され、前記ユニットセルの前記部分の前記導電性パッチの
下の前記ユニットセルの少なくとも一部の導電性ビアコネクタに接続された前記ストリッ
プ線路の第2の遠位端を有する複数のストリップ線路とを備え、
前記ストリップ線路は、それぞれのユニットセルの前記導電経路の寸法よりも狭い幅を
有する
請求項42に記載のデバイス。
【請求項49】
第1の側に第1の表面を有し、前記第1の側の反対側の第2の側に第2の表面を有する誘電
体基板と、
前記第1の表面上に形成され、互いに隔てられて二次元アレーを形成する複数の導電性
パッチと、
前記第1の表面上に形成され、前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチに
電磁結合される導電性給電路と、
前記第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、
前記導電性パッチを前記グラウンド導電層に接続し、それぞれのユニットセルが前記第
1の表面上にそれぞれの導電性パッチを有する体積と前記それぞれの導電性経路を前記グ
ラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネクタとを備える複数のユニットセルをそれ
ぞれ、空間異方性を示す二次元アレーに形成するために前記基板内に形成された複数の導
電性ビアコネクタとを備え、
前記デバイスは、前記ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を
形成するように構造化され、
前記導電性給電路は、二つの異なる周波数で二つのモードを励起するために二次元アレ
ーの対称的位置から外れているユニットセルに結合されているデバイス。
【請求項50】
第1の側に第1の表面を有し、前記第1の側の反対側の第2の側に第2の表面を有する誘電
体基板と、
前記第1の表面上に形成され、互いに隔てられて二次元アレーを形成する複数の導電性
パッチと、
前記第1の表面上に形成され、第1の方向にそった前記二次元アレーの中心対称線にそっ
ている前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチに電磁結合される第1の導電
性給電路と、
前記第1の表面上に形成され、第2の方向にそった前記二次元アレーの中心対称線にそっ
ている前記複数の導電性パッチのうちの一つの導電性パッチに電磁結合される第2の導電
性給電路と、
前記第2の表面上に形成されているグラウンド導電層と、
前記導電性パッチを前記グラウンド導電層に接続して、それぞれのユニットセルが前記
第1の表面上にそれぞれの導電性パッチを有する体積と前記それぞれの導電性経路を前記
グラウンド導電層に接続するそれぞれのビアコネクタとを備える複数のユニットセルをそ
れぞれ、二次元アレーに形成するために前記基板内に形成された複数の導電性ビアコネク
タとを備え、
前記デバイスは、前記ユニットセルから右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を
形成するように構造化され、
前記ユニットセルにより形成された前記CRLHメタマテリアル構造は、それぞれ前記第1
の給電路及び前記第2の給電路内にある二つの異なる周波数の二つのモードをサポートす
るように空間的異方性を有するデバイス。
【請求項51】
誘電体基板を備え、前記誘電体基板の片側に共通導電層が形成されている、メタマテリ
アルアンテナと、前記誘電体基板の片側に、接触するようにして互いに間隔をあけて配置
された導電性パッドのアレーと、前記導電性パッドを前記共通導電層にそれぞれ接続する
複数の導電性ビアコネクタとを備え、前記金属素材のアンテナは、第1の周波数で前記メ
タマテリアルアンテナの第1の方向にそって第1の共振を、第2の異なる周波数で前記メタ
マテリアルアンテナの第2の方向にそって第2の共振を示すように構造化され、
前記第1の周波数で信号を誘導するように前記メタマテリアルアンテナに結合された第1
の導電性給電路と、
前記第2の周波数で信号を誘導するように前記メタマテリアルアンテナに結合された第2
の導電性給電路と、
前記第1の周波数で信号を受信するように前記第1の導電性給電路に接続された受信ポー
トを備え、送信のため前記メタマテリアルアンテナに向けられた前記第2の周波数で伝送
信号を発生するように前記第2の導電性給電路に接続された送信ポートを備え、前記メタ
マテリアルアンテナと前記FDD回路との間に結合された別の周波数デュプレクサがない、
周波数分割複信(FDD)回路を具備するデバイス。
【請求項52】
前記第1の周波数で信号を送信し、他の周波数では信号を除去するように前記第1の導電
性給電路に結合されたバンドパスフィルタを備える
請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
さらに、前記第2の周波数で信号を送信し、他の周波数では信号を除去するように前記
第2の導電性給電路に結合されたバンドパスフィルタを備える請求項51に記載のデバイス

【請求項54】
請求項51に記載のアンテナを備える無線トランシーバデバイス。
【請求項55】
周波数分割複信(FDD)を実装する方法であって、
誘電体基板と、前記誘電体基板の片側に形成された共通導電層と、前記誘導体基板の他
方の側に互いに間隔をあけて配置され、前記誘電体基板と接触する導電性パッドの二次元
アレーと、前記導電性パッドを前記共通導電層にそれぞれ接続する複数の導電性ビアコネ
クタとを備えることと、
第1の周波数では前記メタマテリアルアンテナの第1の方向にそって第1の共振を、第2の
異なる周波数では前記メタマテリアルアンテナの第2の方向にそって第2の共振を示すよう
に前記金属素材のアンテナを構成することと、
前記メタマテリアルアンテナにより受信された前記第1の周波数で信号をFDD回路に、前
記FDD回路により処理される受信信号として誘導し、しかもその際に前記第1の周波数及び
前記第2の周波数で信号を分離するのに別の周波数デュプレクサを使用せずに、第1の導電
性給電路を前記メタマテリアルアンテナに接続することと、
前記FDD回路からの前記第2の周波数で信号を前記メタマテリアルアンテナによる送信の
ため前記メタマテリアルアンテナに誘導するように、しかもその際に信号を前記第1の周
波数と前記第2の周波数で分離するのに別の周波数デュプレクサを使用せずに、第2の導電
性給電路を前記メタマテリアルアンテナに接続することとを含む方法。
【請求項56】
前記第1及び前記第2の導電性給電路のそれぞれにおいて信号の周波数をフィルタリング
することを含む
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記基板の片側に形成された複数の分離された導電性パッチにより誘電体基板上に形成
された複数のユニットセルと、前記基板の他方の側に形成されたグラウンド導電層と、そ
れぞれ導電性パッチをそれぞれ前記グラウンド導電層に接続するために前記基板内に形成
された複数の導電性ビアコネクタとを備える右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造
を備えることと、
導電性給電路を前記CRLHメタマテリアル構造に結合して、右手系TEMモードと左手系TEM
モードの混合であるTEモードを励起し、前記TEMモードのそれぞれのモードにおける帯域
幅よりも広い、それぞれのTEモードにおける帯域幅を実現することとを含む方法。
【請求項58】
二次元アレーを形成するユニットセルを作ることと、
前記CRLHメタマテリアル構造にオフセット給電を適用し、前記二次元アレーの二つの方
向にそって異なる周波数における二つの異なる共振モードを励起することとを含む
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記二次元アレーの第1の方向にそって第1の導電性給電路を使用して、前記二つの共振
モードのうちの一つのモードで第1の信号を結合することと、
前記二次元アレーの第2の方向にそって第2の導電性給電路を使用して、前記二つの異な
る共振モードのうちの他のモードで第2の信号を結合することとを含む
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
アンテナアレーと、
前記アンテナアレーに電磁結合されているRF回路素子と、
前記RF回路素子に結合されているアナログRF回路とを備え、
前記RF回路素子は、右手/左手系複合(CRLH)メタマテリアル構造を備えるデバイス。
【請求項61】
前記CRLHメタマテリアル構造は、
前記基板の片側に形成された複数の分離された導電性パッチにより誘電体基板上に形成
された複数のユニットセルと、前記基板の他方の側に形成されたグラウンド導電層と、そ
れぞれ導電性パッチをそれぞれ前記グラウンド導電層に接続するために前記基板内に形成
された複数の導電性ビアコネクタとを備える
請求項60に記載のデバイス。
【請求項62】
前記RF回路素子は、電力結合器を備える
請求項60に記載のデバイス。
【請求項63】
前記RF回路素子は、マッチング回路網を備える
請求項60に記載のデバイス。
【請求項64】
前記RF回路素子は、電力結合器を備える
請求項60に記載のデバイス。
【請求項65】
RF信号を送信及び受信するためのRFトランシーバモジュールを備え、
前記RFトランシーバモジュールは、互いに間隔をあけて配置され、右手/左手系複合(CR
LH)メタマテリアル構造を形成するように構造化された、それぞれのアンテナ素子が前記C
RLHメタマテリアル構造と共振する信号の波長の1/10よりも大きい寸法を有し、二つの隣
接するアンテナ素子が前記波長の1/6以上の間隔を互いにあけて配置されている、複数の
アンテナ素子を備えるアンテナアレーを具備するデバイス。
【請求項66】
前記RFトランシーバモジュールは、無線アクセスポイント又は基地局である
請求項65に記載のデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
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【図2A−C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A−E】
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【図20F】
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【図20G】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−234397(P2011−234397A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−144488(P2011−144488)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【分割の表示】特願2009−507995(P2009−507995)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(511157930)タイコ エレクトロニクス サービス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】