説明

メタルガスケット

【課題】 波形状のストッパーを採用しつつストッパーにおけるクラックの発生を効果的に防止可能なメタルガスケットを提供する。
【解決手段】 エンジンの燃焼室に対応させて開口部11を形成したガスケット構成板10からなり、ガスケット構成板10に開口部11を取り囲むように燃焼室ビード15を形成したメタルガスケット1において、ガスケット構成板10における燃焼室ビード15と開口部11間に、燃焼室ビード15の高さよりも低い断面波形状の内周側ストッパー17を、プレス成形により、各波部16の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、各波部16に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、燃焼室ビード15に沿って形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジンに好適に利用可能なメタルガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンのメタルガスケットとして、単又は複数枚のガスケット構成板からなり、このガスケット構成板に、燃焼室に対応させて開口部を形成するとともに開口部を取り囲むようにビードを形成し、更にビードの内周側にストッパーを形成して、ビードのヘタリを防止できるように構成したものが広く採用されている。
【0003】
ストッパーとしては、ガスケット構成板の開口部の周縁を折り返し、この折り返し部分をストッパーとて利用したものが広く採用されているが、最近では、特許文献1のように、ガスケット構成板のビードの内側にプレス成形により断面波形状のストッパーを開口部と同心状に形成したものも提案されている。また、この特許文献1には、ビードの内周側においてガスケット構成板を正弦波状にプレスし、その後に各波部の頂部及び底部に均し加工を施して、各波部の傾斜部を頂部及び底部よりも厚肉に構成してなるストッパーも開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ビードの内側においてガスケット構成板に正弦波状のストッパーを形成するに際して、各波部の傾斜部が頂部及び底部よりも薄肉になるようにプレス成形したメタルガスケットも開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−144119号公報
【特許文献2】特表2004−503731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、メタルガスケットのビードには、エンジン運転時におけるシリンダ内の圧力変動により、圧縮と復元とを繰り返し行う応力振幅が発生するが、この応力振幅がビードにおけるクラックの発生原因の1つであることが知られている。特に、特許文献1、2に記載のように、幅の狭い(波長の短い)小さい波部を複数配置し、ストッパーの機能を持たせる場合、各波部の幅に対する高さの比が大きくなるので、ビードと同様の成形方法で波部を成形すると、疲労破壊することが懸念される。つまり、従来のビードは、ビードの最終形状に略適合した成形面を有する金型を用いて成形している関係上、プレス成形するときに、雄型のパンチ頂部と素材金属板間に大きな摩擦力が発生する。この摩擦抵抗のよりパンチ頂部との接触部分における素材金属板の横方向への伸びが制限され、波部の頂部及び底部はほとんど伸びないで、両傾斜部だけが伸びて要求形状に成形される関係上、頂部及び底部の板厚は両傾斜部の板厚に比して厚肉になる。この傾向は、ビードの幅に対する高さの比が大きくなる程大きくなるので、特許文献1、2に記載のように、幅に対する高さの比が大きな波部を形成すると、波部の頂部においてストッパ−が疲労破壊することが懸念される。
【0007】
また、特許文献1には、各波部の頂部を薄肉に構成したものが開示されているものの、この波部は素材金属板を正弦波状にプレス成形した後、各波部の頂部に対して均し加工を施して成形したもので、波部の傾斜部を厚肉に構成することで、ストッパーの耐圧縮性能は向上するが、応力振幅が最も大きくなる波部の頂部にクラックが発生し易く、しかもプレス成形した後、波部の幅が広がらないように開口縁を固定した状態で均し加工を施す必要があるので、製造工程が複雑になるとともに均し加工専用の金型が別途必要になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、波形状のストッパーを採用しつつストッパーにおけるクラックの発生を効果的に防止可能なメタルガスケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、クラックの発生を効果的に防止可能なストッパーの構成について鋭意検討した結果、ガスケット構成板のプレス成形時に、ストッパーにおける疲労破壊の発生し易い部位、即ち応力振幅の大きな部位の塑性変形量を大きく設定して、該部位における加工硬化を高めて疲労限を高めることで、クラックの発生を効果的に防止できるとの発想を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に係るメタルガスケットは、エンジンの燃焼室に対応させて開口部を形成した単又は複数枚のガスケット構成板からなり、少なくとも1枚のガスケット構成板に開口部を取り囲むようにビードを形成した単板構成又は複板構成のメタルガスケットにおいて、前記ガスケット構成板におけるビードと開口部間の部分とそれに対面する部分の少なくとも一方に、ビードの高さよりも低い断面波形状の内周側ストッパーを、プレス成形により、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所の加工硬化を高め薄肉とし、波部に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、ビードに沿って形成したものである。
【0011】
このメタルガスケットを単板構成のメタルガスケットに適用する場合には、1枚のガスケット構成板に開口部を形成し、この開口部を取り囲むようにビードを形成し、ビードとガスケット構成板の開口部間の部分に、断面波形状の内周側ストッパーを形成することになる。また、複板構成のメタルガスケットに適用する場合には、ビードと内周ストッパーをいずれかのガスケット構成板に形成することになり、同一のガスケット構成板にビード及び内周側ストッパーを形成することもできるし、異なるガスケット構成板にビードと内周側ストッパーを形成することもできる。また、ビード及び内周ストッパーはそれぞれ1つだけ形成してもよいし、複数形成してもよい。
【0012】
このメタルガスケットでは、これをシリンダブロックとシリンダヘッド間に装着して、ヘッドボルトを締結した状態で、シリンダブロックとシリンダヘッド間のうちの内周側ストッパー付近に一定の隙間が形成される。一方、ビードは内周側ストッパーに近接して配置されるので、内周側ストッパーにより形成される隙間分だけ変形量が少なくなって、完全に平坦に圧縮変形することはなく、多少扁平に圧縮変形した状態となる。つまり、このメタルガスケットでは、ビードの過剰な圧縮変形が内周側ストッパーにより防止され、ビードのヘタリによるシール性能の低下が防止されることになる。
【0013】
また、このメタルガスケットでは、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉に成形され、波部に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、断面波形状の内周側ストッパーがプレス成形されているので、応力振幅が大きくな箇所に、加工硬化により疲労限が高められた薄肉部が配置されることになり、応力振幅が大きくなる箇所における疲労破壊を効果的に防止して、ストッパーにおけるクラックの発生を防止できる。しかも、プレス成形のみにより内周側ストッパーを成形でき、特許文献1のように均し加工を必要としないので、製造工程数が増えることを防止できるとともに、均し加工専用の金型等の設備を用いる必要もない。尚、厚肉部及び薄肉部は、全ての波部に設けることが好ましいが、特定の波部にのみ設けることも可能である。
【0014】
ここで、前記ガスケット構成板におけるビードよりも外側でビードに近接する部分とそれに対面する部分の少なくとも一方に、ビードの高さよりも低い断面波形状の外周側ストッパーを、プレス成形により、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、波部に厚肉部と薄肉部とが交互に配置されるように、ビードに沿って形成することもできる。この場合には、ビードの内周側と外周側とにストッパーが形成されるので、ビード付近の面圧バランスを良好に設定して、シール性能を十分に確保しつつ、シリンダ孔の真円度を高めてエンジン性能を向上できる。また、この外周側ストッパーの波部は、内周側ストッパーと同様に構成されているので、ストッパーにおけるクラックの発生を防止でき、しかも製造工程数が増えることを防止できるとともに、均し加工専用の金型等の設備を用いる必要もない。尚、内周側ストッパーと外周側ストッパーとは同じ高さに設定してもよいし、面圧バランスが良好になるように、異なる高さに設定することも可能である。
【0015】
前記応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となるように、該箇所に沿って条溝を形成することができる。このような条溝をストッパーのプレス成形時に同時に成形すると、条溝を形成した部分の板厚を薄肉に構成して、加工硬化により疲労限を高め、応力振幅によるクラックの発生を効果的に防止できる。また、このように条溝を形成する場合には、金型構造が複雑にならないように、ビードに隣接配置する波部のビード側の縁部には条溝を形成しないように構成することが好ましい。
【0016】
前記波部における薄肉部及び厚肉部の配置としては、例えば薄肉部を波部の頂部及び底部に設け、厚肉部を波部の両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合、薄肉部を波部の両傾斜部における頂部側及び底部側に設け、厚肉部を波部の頂部及び底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合、薄肉部を波部の頂部及び両傾斜部における底部側に設け、厚肉部を波部の底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合、などが挙げられる。つまり、ストッパーに作用する応力振幅は、波部の頂部及び底部付近において大きくなるので、波部の頂部や底部、両傾斜部の頂部側や底部側に薄肉部を設けることで、該部分における疲労限を高めて、応力振幅によるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0017】
前記ストッパーは、断面正弦波状に形成することもできるし、波部の頂部又は底部の上面側又は下面側に平坦面を有する扁平な断面波状に形成することもできる。また、ストッパーの面圧が一様になるように、周方向の各部における断面形状を正弦波から扁平な波形状に段階的或いは連続的に変化させることも可能である。更に、多気筒直列エンジンにおいては、両側に配列される気筒を取り囲むストッパーと、中央に配列される気筒を取り囲むストッパーの断面形状が異なるように構成することも可能で、例えば前者を正弦波状に形成し、後者を扁平な波形状に形成することができる。
【0018】
前記ストッパーは、周方向に連続的に形成することもできるし、間欠的に形成することもできる。間欠的に形成する場合には、例えばシリンダヘッドをシリンダブロックに固定するためのヘッドボルトの締結部付近におけるストッパーを省略して、ストッパーを間欠的に形成することが好ましい。つまり、ビード及びストッパーに作用する面圧は、ヘッドボルトの締結部から離れるにしたがって低くなるので、ヘッドボルトの締結部付近におけるストッパーを省略することで、ヘッドボルトの締結部から離れた部分のビードに作用する面圧を高め、ビードに作用する面圧が全周にわたって一様になるように調整して、シール性能を向上できるので好ましい。
【0019】
また、前記ストッパーの周方向において波部の高さを変化させたり、前記ストッパーの周方向において波部の個数を変化させたりすることも好ましい。この場合においても、前記ストッパーを間欠的に形成する場合と同様に、波部の高さや波部の個数を周方向に変化させることで、ビードに作用する面圧を調整して、シール性能を向上できる。具体的には、ヘッドボルトの締結部に接近するにしたがって、波部の高さを低く設定したり、波部の個数を少なく設定したりすることで、ビードに作用する面圧を一様に調整できる。また、ストッパーの形成部位と波部の高さと波部の個数とを任意に組み合わせて、ビードに作用する面圧を調整することも可能である。
【0020】
前記ストッパーの波部をビードの突出側へ突出させることも好ましい。このように構成することで、このメタルガスケットをシリンダヘッドとシリンダブロック間に組み付けたときに、ストッパーとビード間におけるガスケット構成板の弾性変形を防止できる。尚、ビードを形成したガスケット構成板と、ストッパーを形成したガスケット構成板とを重ね合わせたメタルガスケットにおいて、ビードの突出側とは、ビードに対する対面側を意味するものとする。
【0021】
前記ストッパーの波部を真円状又は開口部の半径方向に振幅する波形状に形成することができる。ストッパーとして、開口部の半径方向に振幅する波形状のものを用いる場合には、全周にわたって一様な波長及び振幅に設定することも可能であるが、波長及び/又は振幅を調整して、ビードに作用する面圧を調整することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るメタルガスケットによれば、ビードが過剰に圧縮変形することを内周側ストッパーにより防止して、ビードのヘタリによるシール性能の低下を防止できる。しかも、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉に成形され、波部に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、断面波形状の内周側ストッパーがプレス成形されているので、応力振幅が大きくな箇所に、加工硬化により疲労限が高められた薄肉部が配置されることになり、応力振幅が大きくな箇所における疲労破壊を効果的に防止して、ストッパーにおけるクラックの発生を防止できる。しかも、プレス成形のみにより内周側ストッパーを成形できるので、製造工程数が増えることを防止できるとともに、均し加工専用の金型等の設備を用いる必要もない。
【0023】
ここで、前記ガスケット構成板におけるビードよりも外側でビードに近接する部分とそれに対面する部分の少なくとも一方に、ビードの高さよりも低い断面波形状の外周側ストッパーを、プレス成形により、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、波部に厚肉部と薄肉部とが交互に配置されるように、ビードに沿って形成すると、ビード付近の面圧バランスを良好に設定して、シール性能を十分に確保しつつ、シリンダ孔の真円度を高めてエンジン性能を向上できる。また、この外周側ストッパーの波部は、内周側ストッパーと同様に構成しているので、ストッパーにおけるクラックの発生を防止でき、しかも製造工程数が増えることを防止できるとともに、均し加工専用の金型等の設備を用いる必要もない。
【0024】
前記応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となるように、該箇所に沿って条溝を形成すると、条溝を形成した部分の板厚を薄肉に構成して、加工硬化により疲労限を高め、応力振幅によるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0025】
薄肉部を波部の頂部及び底部に設け、厚肉部を波部の両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合、前記薄肉部を波部の両傾斜部における頂部側及び底部側に設け、厚肉部を波部の頂部及び底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合、前記薄肉部を波部の頂部及び両傾斜部における底部側に設け、厚肉部を波部の底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設ける場合には、応力振幅が大きくなる波部の頂部や底部、両傾斜部の頂部側や底部側における疲労限を高めて、該部分におけるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0026】
前記ストッパーを、波部の頂部又は底部の上面側又は下面側に平坦面を有する扁平な断面波状に形成すると、ストッパーの剛性を高めることが可能となる。
【0027】
前記ストッパーを間欠的に形成したり、ストッパーの周方向において波部の高さを変化させたり、前記ストッパーの周方向において波部の個数を変化させたりすると、ストッパーの形成部位や波部の高さや波部の個数を適正に設定すると、ビードに作用する面圧を調整して、シール性能を向上できる。
【0028】
前記ストッパーの波部をビードの突出側へ突出させると、シリンダヘッドとシリンダブロック間に組み付けたときに、ストッパーとビード間におけるガスケット構成板の弾性変形を防止できる。
【0029】
前記ストッパーの波部を真円状に形成すると、ストッパーの成形性を向上できる。また、前記ストッパーを開口部の半径方向に振幅する波形状に形成すると、この波の波長及び/又は振幅を調整することで、ビードに作用する面圧を適正に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0031】
図1、図2に示すメタルガスケット1は、多気筒直列エンジン用のメタルガスケットで、このメタルガスケット1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3の結合面4、5間に介装されて、燃焼室6やウォータジャケット7や潤滑油通路(図示略)などに臨む結合面4、5をシールするように構成したものである。本発明に係るメタルガスケット1は、鋳鉄製のシリンダブロックを備えたエンジンや、シリンダブロック及びシリンダヘッドをアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽合金を主体として構成したエンジンに適用できる。本実施例では、ウォータジャケット7の上面を開放させたオープンデッキタイプのシリンダブロック2を備え、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3をアルミニウム合金で構成したエンジンに本発明を適用した場合について説明する。
【0032】
メタルガスケット1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との結合面4、5の略全面にわたって介装される1枚もののガスケット構成板10で構成されている。
【0033】
ガスケット構成板10は、JIS規格におけるSUS301などのステンレス鋼板で構成され、ガスケット構成板10の外縁形状はシリンダブロック2の結合面4と略同じ形状に形成されている。ガスケット構成板10の厚さは、0.15mm未満であると後述するビード15、20〜22の剛性が低下して十分な面圧が得られず、0.4mmを越えると加工による材料の変質やヘッドボルトの過締結により、ビード15、20〜22にクラックが発生する恐れがあることから、0.15〜0.4mm、より好ましくは0.15〜0.35mm、特に好ましくは0.2〜0.25mmに設定することになる。このガスケット構成板10は、金属板単体で構成することも可能であるが、メタルガスケット1のシール性を向上するため、ガスケット構成板10の少なくとも一方の表面に対してゴムコーティング層等を形成したコーティング金属板で構成することも可能である。
【0034】
ガスケット構成板10の幅方向の略中央部には長さ方向に間隔をあけて複数の開口部11が燃焼室6に対応させて形成され、各開口部11の外側にはシリンダブロック2のウォータジャケット7に対応させて複数の冷却水孔(図示略)が所定配列で形成されている。冷却水孔の外側にはシリンダヘッド3をシリンダブロック2に固定するためのヘッドボルト(図示外)が挿通する複数のボルト挿通孔12が開口部11を取り囲むように略等間隔で形成され、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に対してバランスよく締結できるように構成されている。特定のボルト挿通孔12の外側には潤滑油が流通する油孔13が形成され、シリンダブロック2からシリンダヘッド3側へ潤滑油を供給して、動弁機構等を潤滑できるように構成されている。
【0035】
ガスケット構成板10には、燃焼室6を取り囲む燃焼室ビード15と、燃焼室ビード15の内側に配置される複数の波部16からなる内周側ストッパー17と、ボルト挿通孔12を取り囲むボルト孔ビード20と、ボルト挿通孔12と油孔13とを併せて取り囲むボルト油孔ビード21と、これら複数のボルト孔ビード20やボルト油孔ビード21全体を取り囲む外周ビード22が形成されている。尚、外周ビード22は、冷却水孔を取り囲むように配置されていれば、ボルト孔ビード20やボルト油孔ビード21を取り囲まないように配置することも可能である。また、ボルト孔ビード20とボルト油孔ビード21と外周ビード22とは円弧状の丸ビードで構成してもよいし、段状のステップビードで構成してもよい。
【0036】
ガスケット構成板10における、開口部11や冷却水孔やボルト挿通孔12や油孔13の形状や個数や配置、燃焼室ビード15やボルト孔ビード20やボルト油孔ビード21や外周ビード22の形状や個数や配置はエンジンの構成等に応じて任意に設定することになる。
【0037】
内周側ストッパー17と燃焼室ビード15とはウォータジャケット7よりも燃焼室6側に配置されるとともに、シリンダブロック2における円筒状のシリンダ内周壁2aの上面に対面させて配置され、燃焼室ビード15はシリンダ内周壁2aの厚さ方向の略中央部に配置されている。
【0038】
内周側ストッパー17は、プレス成形のみにより成形され、燃焼室ビード15と略同心環状の4つの波部16から断面波形状に形成され、内周側ストッパー17における板厚の中心線は略正弦波状に形成されている。波部16の個数は任意に設定できるが、内周側ストッパー17としての機能を確保するため、少なくとも2個以上設けることが好ましい。また、この内周側ストッパー17は、1回のプレス成形により成形することもできるし、複数回のプレス成形により段階的に所望形状に成形することもできる。
【0039】
各波部16の幅は燃焼室ビード15の幅よりも小さく設定され、各波部16の高さは自然状態における燃焼室ビード15よりも低く設定されている。各波部16は、燃焼室ビード15の突出側とは反対側へ突出させることも可能であるが、波部16と燃焼室ビード15間におけるガスケット構成板10の変形を極力少なくするため、各波部16の底面をガスケット構成板10の平坦な一般部の底面と略同一平面内に配置して、各波部16を燃焼室ビード15と同じ側に突出させることが好ましい。
【0040】
内周側ストッパー17は、それを構成する各波部16の少なくともエンジン運転時における応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、各波部16に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、プレス成形されている。このように、応力振幅が大きくなる箇所が薄肉になるようにプレス成形すると、加工硬化により薄肉部の疲労限が高くなって疲労破壊し難くなることから、薄肉部の応力振幅に対する耐久性を向上して、クラックの発生を防止できる。応力振幅が大きくなる箇所は、内周側ストッパー17の形状にもよるが、基本的には、少なくとも各波部16の頂部16aや底部16c、両傾斜部16bの頂部16a側や底部16c側に配置される。薄肉部をプレス成形により成形する具体的な方法としては、金型における薄肉部の成形部のアールを小さく設定したり、応力振幅が大きくなる箇所に沿って断面円弧状の条溝が形成されるように、金型における薄肉部に突条を形成する方法が好適であるが、それ以外の方法を採用することも可能である。
【0041】
次に、薄肉部と厚肉部の具体的な配置について説明する。但し、各波部16の頂部16aや底部16c、両傾斜部16bの頂部16a側や底部16c側に薄肉部が配置されていれば、下記に例示する以外の構成を採用することも可能である。
【0042】
図3(a)に示すように、内周側ストッパー17の頂部16a及び底部16cとその付近の上面及び下面をそれぞれ一様な半径の曲面で構成して、内周側ストッパー17を略正弦波状に構成する場合には、条溝18に対応する頂部16a及び底部16cが最も薄い板厚t1となり、傾斜部16b側へ行くにしたがって板厚が漸次増大して、両傾斜部16bの高さ方向の略中央部で最も厚い板厚t2となるように、各波部16の1周期S内に薄肉部と厚肉部を形成することになる。
【0043】
図3(b)に示すように、内周側ストッパー17の上面の底部と下面の頂部とに平坦面16dを形成し、その他の部分を全体的に曲面で構成して、内周側ストッパー17を扁平な正弦波状に構成する場合には、頂部16a及び底部16cと、両傾斜部16bの高さ方向の途中部が最も厚い板厚t2となり、条溝18に対応する両傾斜部16bの頂部16a側及び底部16c側において最も薄い板厚t1となるように、板厚を漸次変化させて、各波部16の1周期S内に薄肉部と厚肉部を形成することになる。但し、波部16の傾斜部16bにおける頂部16a側の板厚t1と、底部16c側の板厚t1とは同じに設定してもよいし、異なるように設定してもよい。また、波部16の頂部16a及び底部16cの板厚t2と、傾斜部16bの高さ方向の板厚t2とは同じに設定してもよいし、異なるように設定してもよい。
【0044】
図3(c)に示すように、上面の底部に平坦面16dを形成し、その他の部分を全体的に曲面で構成して、内周側ストッパー17を扁平な略正弦波状に構成する場合には、条溝18に対応する頂部16a及び両傾斜部16bの底部16c側が最も薄い板厚t1となり、底部16及び傾斜部16bの高さ方向の略中央部において最も厚い板厚t2となるように、板厚を漸次変化させて、各波部16の1周期S内に薄肉部と厚肉部を形成することになる。但し、波部16の頂部16aの板厚t1と、傾斜部16bの底部16c側の板厚t1とは同じに設定してもよいし、異なるように設定してもよい。また、波部16の底部16cの板厚t2と、傾斜部16bの高さ方向の板厚t2とは同じに設定してもよいし、異なるように設定してもよい。
尚、図3(a)〜(c)に示す波部16は、上下を反転させて用いるこのとも可能である。また、燃焼室ビード15に隣接配置される波部16の燃焼室ビード15側の条溝は、金型の構成が複雑にならないように、省略することも可能である。
【0045】
ガスケット構成板10における内周側ストッパー17以外の平坦な一般部の板厚t0(図2参照)と、各波部16の薄肉部の板厚t1と厚肉部の板厚t2とは、下記(1)〜(3)の関係が成立するように設定されている。但し、「a」、「b」は定数である。
【0046】
(1)t1=a×t0(但し、0.5≦a≦0.95)
(2)t2=b×t0(但し、0.5≦b≦0.95)
(3)a<b
【0047】
即ち、定数a、bは、0.5よりも小さいと薄肉部及び厚肉部の板厚が薄くなり過ぎて、内周側ストッパー17が破損し易くなり、0.95よりも大きいと薄肉化による加工硬化がほとんど期待できないので、0.5≦a≦0.95及び0.5≦b≦0.95と設定することが好ましい。このように、薄肉部の板厚が一般部よりも薄肉になるようにプレス成形することで、プレス成形時の加工硬化により疲労限を上昇させて、薄肉部の疲労強度を高めることができる。また、厚肉部の板厚に関しても、薄肉部よりも厚肉ではあるが、平坦な一般部よりも多少薄肉に構成することで、プレス成形時の加工硬化により疲労限を上昇させて、内周側ストッパー17全体の疲労破壊を効果的に防止できる。
【0048】
このメタルガスケット1においては、シリンダブロック2とシリンダヘッド3間にメタルガスケット1を介装した状態で、シリンダヘッド3をシリンダブロック2にヘッドボルトにて締結して、メタルガスケット1をエンジンに組み付けることになるが、この組付状態において、燃焼室ビード15が内周側ストッパー17との高さの差分だけ圧縮変形して、燃焼室6がシールされることになる。また、内周側ストッパー17により、燃焼室ビード15付近に隙間が形成され、燃焼室ビード15が過剰に圧縮変形することが防止されて、燃焼室ビード15のヘタリが防止されることになる。しかも、内周側ストッパー17における応力振幅の大きくなる、各波部16の頂部16aや底部16c、両傾斜部16bの頂部16a側や底部16c側に、加工硬化により疲労限が高められた薄肉部が配置されるので、各波部16の疲労破壊を効果的に防止することが可能となる。更に、プレス成形のみにより、内周側ストッパー17を形成できるので、既存設備を有効活用してメタルガスケット1を製作することが可能となる。
【0049】
尚、内周側ストッパー17の断面形状は正弦波状以外に、矩形波状や台形波状など任意の断面形状の波形状に形成することができる。また、内周側ストッパー17の半径方向の中央部側と外側とで、波部16の高さ(振幅)や幅(波長)に差を持たせることも可能である。具体的には、中央部側の波部16の高さを高く設定したり、波部16の幅を小さく設定したりすることで、燃焼室6の気密性を高めることができる。
【0050】
また、内周側ストッパー17の周方向において内周側ストッパー17の周方向において波部16の個数を変化させたり、波部16の高さを変化させたり、内周側ストッパー17の周方向において波部16の幅を変化させたりすることも可能である。この場合には、波部16の個数や波部16の高さや波部16の幅を周方向に変化させることで、ビードに作用する面圧を調整して、シール性能を向上できる。具体的には、ヘッドボルトが挿通するボルト挿通孔12に接近するにしたがって、波部16の個数を少なく設定したり、波部16の高さを低く設定したり、波部16の幅を大きく設定したりすることで、燃焼室ビード15に作用する面圧を一様に調整できる。また、波部16の個数や波部16の高さや波部16の幅を任意に組み合わせて、燃焼室ビード15に作用する面圧を調整することも可能である。
【0051】
更に、内周側ストッパー17における隣接する波部16間に、耐熱性及び耐圧縮性を有する合成樹脂材料や金属材料を、パターン印刷やディスペンサーによる材料塗布や金属圧入や金属溶射により肉盛り又は充填し、各波部16の谷間を埋めるように配置することも可能で、このように構成することで、ストッパー17としての機能を十分に発揮することができる。このような金属材料や合成樹脂材料の肉盛りや充填は、隣接する全ての波部16間に行ってもよいし、隣接する特定の波部16間にのみ行ってもよい。また、周方向に連続的に肉盛りすることも可能であるし、燃焼室ビード15の面圧が一様になるように部分的に形成してもよい。肉盛り又は充填した合成樹脂材料や金属材料は、その外面が波部16の頂部16aや底部16cと同レベルに配置させることが好ましいが、頂部16aや底部16cを覆うように配置してもよいし、頂部16aや底部16cが外部に露出するように配置してもよい。
【実施例2】
【0052】
図4、図5に示すように、この実施例2のメタルガスケット1Aは、ガスケット構成板10Aからなる1枚構成のメタルガスケットで、前記実施例1のメタルガスケット1におけるガスケット構成板10の構成を部分的に変更したもので、前記実施例1と同一部材には、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
このメタルガスケット1Aのガスケット構成板10Aは、前記実施例1におけるガスケット構成板10の内周側ストッパー17に代えて、2つの波部16を有する断面波形状の内周側ストッパー17Aを設け、燃焼室ビード15の全体を取り囲むように燃焼室ビード15の外側に近接して、2つの波部16を有する断面波形状の外周側ストッパー30を設けたものである。このメタルガスケット1Aは、鋳鉄製のシリンダブロックを備えたエンジンに適用することも可能であるが、シリンダブロック及びシリンダヘッドをアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽合金を主体として構成したものに好適である。特に、ウォータジャケット7の上面を開放させたオープンデッキタイプのエンジンにおいては、燃焼室6を構成するシリンダブロック2のシリンダ内周壁2aの真円度が低下し易いので、これを防止するために好適に採用できる。
【0054】
両ストッパー17A、30の波部16は、前記実施例1の内周側ストッパー17の波部16と同様に、応力振幅の大きくなる各波部16の頂部16aや底部16c、両傾斜部16bの頂部16a側や底部16c側に、加工硬化により疲労限が高められた薄肉部が配置されるように構成されている。
【0055】
両ストッパー17A、30における波部16の個数は任意に設定できるが、ストッパーとしての機能を確保するため、少なくとも2個以上設けることが好ましい。また、内周側ストッパー17Aと外周側ストッパー30とで、波部16の個数や高さや幅に差を持たせることも可能である。例えば、内周側ストッパー17Aの波部16の個数を外周側ストッパー30の波部16よりも多く設定したり、内周側ストッパー17Aの波部16の高さを外周側ストッパー30の波部16よりも高く設定したり、内周側ストッパー17Aの波部16の幅を外周側ストッパー30の波部16よりも大きく設定したりすることで、燃焼室6の気密性を高めることができる。また、両ストッパー17A、30の波部16の突出方向は、燃焼室ビード15の突出方向とは反対側に設定してもよいが、燃焼室ビード15に対するストッパー17としての機能を十分に発揮できるように、燃焼室ビード15と同じ側に突出させることが好ましい。
【0056】
このメタルガスケット1Aにおいては、シリンダブロック2とシリンダヘッド3間にメタルガスケット1Aを介装した状態で、シリンダヘッド3をシリンダブロック2にヘッドボルトにて締結して、メタルガスケット1Aをエンジンに組み付けることになるが、この組付状態において、燃焼室ビード15が両ストッパー17A、30との高さの差分だけ圧縮変形して、燃焼室6がシールされることになる。また、両ストッパー17A、30により、燃焼室ビード15付近に隙間が形成され、燃焼室ビード15が過剰に圧縮変形することが防止されて、燃焼室ビード15のヘタリが防止されることになる。しかも、ヘッドボルトの締結荷重が、燃焼室ビード15と両ストッパー17A、30によりシリンダ内周壁2aの上面に分散してバランスよく作用することになるので、シリンダ内周壁2aの半径方向への変形を少なくして、シリンダ孔の真円度を向上し、エンジン性能を向上できる。また、前記実施例1のストッパー17と同様に、ストッパー17A、30の少なくとも一方における隣接する波部16間に、合成樹脂材料や金属材料を肉盛り又は充填して、ストッパー17としての機能を高めることも可能である。
【0057】
また、両ストッパー17A、30の各波部16の頂部16aや底部16c、両傾斜部16bの頂部16a側や底部16c側に加工硬化により疲労限が高められた薄肉部が配置されるので、各波部16の疲労破壊を効果的に防止することが可能となる。更に、プレス成形のみにより、両ストッパー17A、30を形成できるので、既存設備を有効活用してメタルガスケット1Aを製作することが可能となる。
【0058】
尚、外周側ストッパー30は、内周側ストッパー17Aと比較して耐熱性等の要求が低いので、図6に示すメタルガスケット1Bにように、外周側ストッパー30を省略したガスケット構成板10Bを設け、このガスケット構成板10Bにパターン印刷又は溶射によって肉盛部を形成したり、リング状のストッパー板を溶接したりしてなる外周側ストッパー31を設けてもよい。
【実施例3】
【0059】
前記実施例1、2では、1枚のガスケット構成板10、10A、10Bからなるメタルガスケット1、1A、1Bについて説明したが、本発明は複数枚のガスケット構成板を備えた複板構成のメタルガスケットにも適用できる。
【0060】
具体的には、図7(a)に示すメタルガスケット1Cのように、前記実施例2におけるガスケット構成板10Aの燃焼室ビード15の突出側に、略平坦なガスケット構成板35を重ね合わせたり、図7(b)に示すメタルガスケット1Dのように、前記実施例2におけるガスケット構成板10Aの両側に、平坦なガスケット構成板35を重ね合わせたり、図7(c)に示すメタルガスケット1Eのように、前記実施例2におけるガスケット構成板10Aの燃焼室ビード15の突出側に、燃焼室ビード15を有するガスケット構成板36を、燃焼室ビード15同士を突き合わせて重ね合わせたりすることができる。また、前記ガスケット構成板10Aに代えて、ガスケット構成板10、10Bにガスケット構成板35、36を重ねあわせて、メタルガスケットを構成することも可能である。
【0061】
また、図8(a)に示すメタルガスケット1Fのように、実施例2のガスケット構成板10Aから外周側ストッパー30を省略したガスケット構成板37と、実施例2のガスケット構成板10Aから燃焼室ビード15及び内周側ストッパー17Aを省略したガスケット構成板38とを重ね合わせてもよいし、図8(b)に示すメタルガスケット1Gのように、実施例2のガスケット構成板10Aから内周側ストッパー17Aを省略したガスケット構成板39と、実施例2のガスケット構成板10Aから燃焼室ビード15及び外周側ストッパー30を省略したガスケット構成板40とを重ね合わせてもよいし、図8(c)に示すメタルガスケット1Hのように、実施例2のガスケット構成板10Aから内周側ストッパー17及び外周側ストッパー30を省略した第1ガスケット構成板41と、実施例2のガスケット構成板10Aから燃焼室ビード15を省略したガスケット構成板42とを重ね合わせてもよい。また、図8(d)に示すメタルガスケット1Iのように、メタルガスケット1Hにおいて、ガスケット構成板42を開口部11を取り囲む内周側構成板43とそれ以外の外周側構成板44とに分割構成し、外周側ストッパー30に代えて、両構成板43、44の重合部分45を設けた第2ガスケット構成板46と、ガスケット構成板41とを重ね合わせてもよい。更に、このように複数のガスケット構成板を重ね合わせる場合には、外周側ストッパー30に代えてパターン印刷又は溶射によって肉盛部を形成したり、リング状のストッパー17板を溶接したりすることもできる。
【0062】
尚、前記実施例2では、内周側ストッパー17Aを開口部11を中心とした真円状に形成し、外周側ストッパー30を開口部11を中心とした真円状部分を組み合わせた連続的な環状に形成したが、図9に示すメタルガスケット1Jのガスケット構成板10Jのように、隣接する開口部11を取り囲む燃焼室ビード15の合流部15a付近において、外周側ストッパー30を省略して、外周側ストッパー30を間欠的に設けることも可能である。また、図10に示すメタルガスケット1Kのガスケット構成板10Kのように、ボルト挿通孔12付近における外周側ストッパー30及び内周側ストッパー17Aを省略して、両ストッパー17A、30を間欠的に設けることも可能である。更に、前記実施例1のように、外周側ストッパー30を設けないで、内周側ストッパー17のみを設けるガスケット構成板10においても、ヘッドボルトの締結部付近における内周側ストッパー17を省略して、面圧を調整することが可能である。
【0063】
また、図11に示すガスケット構成板10Lのように、真円状の内周側ストッパー17、17Aに代えて、半径方向に振幅する波形状の内周側ストッパー17Bを形成することも可能である。また、外周側ストッパー30に関しても、図示していないが、半径方向に振幅する波形状に形成することができる。この場合には、波の幅や波の高さを調整することで、面圧を調整できる。
【0064】
尚、本実施例では、1〜3枚のガスケット構成板を用いたメタルガスケットについて説明したが、4枚以上のガスケット構成板を積層状に設けたメタルガスケットに対しても本発明を同様に適用することができる。また、このように複数枚のガスケット構成板を用いたメタルガスケットにおいては、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との結合面4、5よりも外側部分や、例えばウォータジャケット7が配置される部分などのようにシリンダブロック2とシリンダヘッド3との結合面4、5が存在しない部分において、これら複数枚のガスケット構成板を重ね合わせた状態で、はとめやメカニカルクリンチ等によりに一体的に結合することになる。
【0065】
また、本実施例では、多気筒直列エンジンのシリンダブロック2とシリンダヘッド3に装着されるメタルガスケットに本発明を適用したが、単気筒エンジンやV型エンジンに対しても本発明を同様に適用することが可能である。また、エンジン以外のエアポンプなどに対しても本発明を同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】メタルガスケット要部の平面図
【図2】シリンダブロック及びシリンダヘッドに対するメタルガスケットの組付直前における図1のII-II線でのエンジンの縦断面図
【図3】(a)(b)(c)は各種波部の断面図
【図4】他の構成のメタルガスケット要部の平面図
【図5】シリンダブロック及びシリンダヘッドに対する同メタルガスケットの組付直前における図4のV-V線でのエンジンの縦断面図
【図6】他の構成のメタルガスケットのストッパー付近の縦断面図
【図7】(a)〜(c)は複板構成の各種メタルガスケットのストッパー部付近の縦断面図
【図8】(a)〜(d)は他の複板構成の各種メタルガスケットのストッパー部付近の縦断面図
【図9】他の構成のメタルガスケット要部の平面図
【図10】他の構成のメタルガスケット要部の平面図
【図11】他の構成のガスケット構成板のストッパー部付近の平面図
【符号の説明】
【0067】
1 メタルガスケット 2 シリンダブロック
2a シリンダ内周壁 3 シリンダヘッド
4 結合面 5 結合面
6 燃焼室 7 ウォータジャケット
10 ガスケット構成板 11 開口部
12 ボルト挿通孔 13 油孔
15 燃焼室ビード 15a 合流部
16 波部 16a 頂部
16b 傾斜部 16c 底部
16d 平坦面
17 内周側ストッパー 18 条溝
20 ボルト孔ビード 21 ボルト油孔ビード
22 外周ビード
1A メタルガスケット 17A 内周側ストッパー
10A ガスケット構成板 30 外周側ストッパー
1B メタルガスケット 10B ガスケット構成板
31 外周側ストッパー
1C メタルガスケット 35 ガスケット構成板
1D メタルガスケット 1E メタルガスケット
36 ガスケット構成板 1F メタルガスケット
37 ガスケット構成板 38 ガスケット構成板
1G メタルガスケット 39 ガスケット構成板
40 ガスケット構成板 1H メタルガスケット
41 ガスケット構成板 42 ガスケット構成板
1I メタルガスケット 43 内周側構成板
44 外周側構成板 45 重合部分
46 ガスケット構成板 1J メタルガスケット
10J ガスケット構成板 1K メタルガスケット
10K ガスケット構成板 10L ガスケット構成板
17B 内周側ストッパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に対応させて開口部を形成した単又は複数枚のガスケット構成板からなり、少なくとも1枚のガスケット構成板に開口部を取り囲むようにビードを形成した単板構成又は複板構成のメタルガスケットにおいて、
前記ガスケット構成板におけるビードと開口部間の部分とそれに対面する部分の少なくとも一方に、ビードの高さよりも低い断面波形状の内周側ストッパーを、プレス成形により、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、波部に薄肉部と厚肉部とが交互に配置されるように、ビードに沿って形成した、
ことを特徴とするメタルガスケット。
【請求項2】
前記ガスケット構成板におけるビードよりも外側でビードに近接する部分とそれに対面する部分の少なくとも一方に、ビードの高さよりも低い断面波形状の外周側ストッパーを、プレス成形により、波部の少なくとも応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となり、波部に厚肉部と薄肉部とが交互に配置されるように、ビードに沿って形成した請求項1記載のメタルガスケット。
【請求項3】
前記応力振幅が大きくなる箇所が薄肉となるように、該箇所に沿って条溝を形成した請求項1又は2記載のメタルガスケット。
【請求項4】
前記薄肉部を波部の頂部及び底部に設け、厚肉部を波部の両傾斜部における高さ方向の途中部に設けた請求項1〜3のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項5】
前記薄肉部を波部の両傾斜部における頂部側及び底部側に設け、厚肉部を波部の頂部及び底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設けた請求項1〜3のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項6】
前記薄肉部を波部の頂部及び両傾斜部における底部側に設け、厚肉部を波部の底部と両傾斜部における高さ方向の途中部に設けた請求項1〜3のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項7】
前記ストッパーを断面正弦波状に形成した請求項1〜6のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項8】
前記ストッパーを波部の頂部又は底部の上面側又は下面側に平坦面を有する扁平な断面波状に形成した請求項1〜6のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項9】
前記ストッパーを周方向に連続的又は間欠的に形成した請求項1〜8のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項10】
前記ストッパーの周方向において波部の高さを変化させた請求項1〜9のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項11】
前記ストッパーの周方向において波部の個数を変化させた請求項1〜10のいずれか1項記載のメタルガスケット
【請求項12】
前記ストッパーの波部をビードの突出側へ突出させた請求項1〜11のいずれか1項記載のメタルガスケット。
【請求項13】
前記ストッパーの波部を真円状又は開口部の半径方向に振幅する波形状に形成した請求項1〜12のいずれか1項記載のメタルガスケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−144897(P2006−144897A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335349(P2004−335349)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(390007777)国産部品工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】