説明

メダル貸し機の不正検出装置

【課題】 払い出されるメダルを検知する検知器を何らかの手段で検知不能にし、計数を停止させてメダルを不正に抜き取ろうとする行為を検出して警報する。
【解決手段】 外部から供給されたメダルmを払い出し時まで貯留するメダルホッパー6と、投入金額に応じた枚数のメダルmをメダルホッパー6から払い出す払出器7と、同払出器7で払い出されるメダルmを計数用に検知する爪式の検知器と11とを備えたメダル貸し機において、払い出されるメダルmを検知する別のメダルセンサー12を検知器11の下流位置であるシュート10の終端位置に設け、検知器11とメダルセンサー12の検知枚数をそれぞれ計数して双方の計数値の差分値が所定値に達した場合に警報する警報手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メダルの不正な抜き取りを検出して警報するメダル貸し機の不正検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メダル遊技機で使用するメダルを貸し出すためのメダル貸し機は、外部から供給されたメダルを払い出し時まで貯留するメダルホッパーと、投入金額に応じた枚数のメダルをメダルホッパーから払い出す払出器と、同払出器で払い出されるメダルを計数用に検知する爪等を備えた検知器とを備えた構造のものが一般的である。ところで、従来のメダル貸し機では、メダルの受け皿から差し込んだ手で検知器の爪を押さえつけて検知不能にし、計数を停止させて投入金額に応じた枚数以上のメダルを不正に抜き取られてしまう問題があった。
【0003】
これに対し、メダル貸し機からのメダルの不正な抜き取りを検出して警報する不正検出装置が特許文献1で開示されている。この技術は、前記の従来技術においてメダル補給とその次のメダル補給との間における払い出し枚数が設定量より少ないと不正と判断して警報する警報手段を備えたことを特徴としている。しかし、この技術はメダルの実際の払い出し枚数を設定量と比較することで不正か否かを判断するから、メダル枚数を計数する手段自体が無効にされると効果を発揮できず、前記の不正行為などは検出することができなかった。
【特許文献1】特開2002−102425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、払い出されるメダルを検知する検知器を何らかの手段で検知不能にし、計数を停止させてメダルを不正に抜き取ろうとする行為を検出して警報できるメダル貸し機の不正検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 外部から供給されたメダルを払い出し時まで貯留するメダルホッパーと、投入金額に応じた枚数のメダルをメダルホッパーから払い出す払出器と、同払出器で払い出されるメダルを計数用に検知する検知器とを備えたメダル貸し機において、払い出されるメダルを検知する別のメダルセンサーを検知器の下流位置に設け、検知器とメダルセンサーの検知枚数をそれぞれ計数して双方の計数値の差分値が所定値に達した場合に警報する警報手段を設けたことを特徴とする、メダル貸し機の不正検出装置
2) 警報回数を記憶する記憶部と、警報後に検知器の計数値をメダルセンサーの計数値に同期させて計数を継続する制御と、記憶部の警報回数が所定回数に達した場合は強く警報し所定回数に達しない警報は弱く警報する制御とを警報手段に備えた、前記1)記載のメダル貸し機の不正検出装置
3) 警報手段の警報回数が所定回数に達した場合に作動中の払出器を停止する制御を警報手段に備えた、前記2)記載のメダル貸し機の不正検出装置
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、検知器を何らかの手段で検知不能にしてもメダルセンサーが別途検知を継続して計数しているから、検知器とメダルセンサーの双方の検知枚数の計数値に差分が生じ、差分値が所定値に達した場合に不正と判断して警報される。検知器とメダルセンサーは別位置に設けているから、双方を同時に検知不能にすることは困難で不正行為を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、メダルセンサーを払出器から離れた箇所に設ける場合は、メダルセンサーが検知する前に次のメダルが検知器で先に検知されて不正がなくても双方の計数値に差分が生じることがあるから、検知器とメダルセンサーの位置に応じて計数値の差分値が例えば1又は2など所定値に達した場合に警報するようにしてもよい。また、機械的なエラーによる誤検知等を考慮して警報回数も別途計数するとともに警報回数に応じて警報レベルを設定し、例えば警報回数が連続又は短時間に不連続で3回発生した場合などは不正と判断して払出器を即時停止し、1回の警報後に3〜5分など一定時間経過して警報がなかった場合は誤検知と判断し、警報を自動解除して監視を継続させるようにしてもよい。警報してもその警報回数が所定回数に達するまで稼動を継続させる場合は、警報後に次のメダルを計数する前に、検知器の計数値をメダルセンサーの計数値に同期させ、実際に払い出されるメダル枚数が検知漏れのあった検知器の不正確な計数値を引き継いで計数されないようにする。メダルセンサーの位置の関係で前記のように不正がなくても双方の計数値の差分値が常に0以外になる機器では、常に差分が生じるように同期させる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1〜6に示す実施例は、スロットマシンのゲーム用のメダルを貸し出すメダル貸し機の不正検出装置の例である。図1は実施例のメダル貸し機の斜視図、図2は実施例の払出器の説明図、図3は実施例の不正検出装置の説明図、図4,5は実施例の不正検出装置のプログラムのフローチャート、図6は実施例のメダル検知を示すチャートである。
【0009】
図中、1はメダル貸し機、2は筐体、3は貨幣投入口、4はビルバリ、5は補給路、6はメダルホッパー、7は払出器、8はモータ、9は小穴、10はシュート、11は検知器、12はメダルセンサー、13は受け皿、14は不正検出装置、15はCPU、16はRAM、17はROM、18はインターフェイス、19は警報部、20はスピーカー、21は警報ランプ、22は信号線、mはメダルである。
【0010】
本実施例のメダル貸し機1は、図1に示すように貨幣投入口3から投入された貨幣を識別して投入金額に応じた枚数のメダルmを払い出すように制御するビルバリ4と、外部から補給路5で取り込まれた多数枚のメダルmを払い出し時まで貯留するメダルホッパー6と、メダルホッパー6内のメダルmをビルバリ4の制御により払い出す払出器7と、払出器7で払い出されたメダルmを排出するシュート10と、シュート10で排出されたメダルmを収容する受け皿13とで構成されている。
【0011】
払出器7は、図2に示すようにメダルホッパー6のメダルmをモータ8の回転による遠心力で複数の小孔9から射出する構造で、その射出直後のシュート10の途中位置に爪式の検知器11を取り付け、シュート10の終端位置にメダルセンサー12を取り付けている。検知器11は射出したメダルmと接触した際に爪が可動することで検知するものである。メダルセンサー12はシュート10の両側壁に設けて通過するメダルmを非接触で検知するものである。
【0012】
不正検出装置14は、図3に示すようにCPU15・RAM16・ROM17・インターフェイス18・警報部19・スピーカー20・警報ランプ21・信号線22で構成し、検知器11とメダルセンサー12は信号線22を介して接続している。ROM17内のプログラムは、払出器7が作動を開始した後、検知器11とメダルセンサー12の検知枚数n,nを別個に計数し、メダルセンサー12の検知後の双方の計数値の差分値が1となった時点で警報ランプ21を点灯(弱い警報)させるとともに警報回数k(記憶部)を計数し、警報後に検知器11の計数枚数nをメダルセンサー12の計数枚数nに同期させて計数を継続し、さらに警報回数kが3回に達すると払出器7の作動を途中で停止させて警報音をスピーカー20で発音(強い警報)させるように構成している。不正検出装置14はビルバリ4の上部に内蔵させ、スピーカー20と警報ランプ21を不正検出装置14の正面に備え、筐体2の正面にスピーカー20用のスリットと警報ランプ21用の窓を形成している。
【0013】
本実施例では、メダル貸し機1の貨幣投入口3に貨幣を投入すると、ビルバリ4が貨幣の真偽を識別して払出器7に制御信号を送信し、払出器7はモータ8を回転させてメダルホッパー6のメダルmを小穴9から射出する。射出されたメダルmはシュート10で排出される途中、検知器11の爪に接触して検知された後にメダルセンサー12に検知される。不正検出装置14では、検知器11とメダルセンサー12の信号を受信してその検知枚数n,nを別個に計数し、双方の計数値の差分値が1となったか否かを計数と並行して逐次チェックする。差分値が0のままで払出器7が停止すると、投入金額に応じた枚数のメダルmが正しく払い出されたと判断して監視を継続する。
【0014】
何者かが巡回する店員や警備員の隙を突いて、メダル貸し機1の受け皿13から手を差し込み、検知器11の爪を押さえつけてメダルmを不正に抜き取ろうとする。動きを止められた検知器11は検知不能となって計数できなくなるが、メダルセンサー12は検知を継続して計数される。その時点で双方の計数値の差分値は1となり、不正検出装置14は警報ランプ21を点灯させて警報回数kを計数するが、この場合は不正行為であるから警報回数kが直ちに連続3回に達し、作動中の払出器7を即時に停止させてスピーカー20で警報音を発音させ、その警報音や点灯で店員や警備員が駆けつけて不正行為が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のメダル貸し機の不正検出装置は、メダルを用いる全ての遊技設備のメダル貸し機に利用できる。また、従来の不正検出装置と組み合わせて不正行為の検出精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例のメダル貸し機の斜視図である。
【図2】実施例の払出器の説明図である。
【図3】実施例の不正検出装置の説明図である。
【図4】実施例の不正検出装置のプログラムのフローチャートである。
【図5】実施例の不正検出装置のプログラムのフローチャートである。
【図6】実施例のメダル検知を示すチャートである。
【符号の説明】
【0017】
1 メダル貸し機
2 筐体
3 貨幣投入口
4 ビルバリ
5 補給路
6 メダルホッパー
7 払出器
8 モータ
9 小穴
10 シュート
11 検知器
12 メダルセンサー
13 受け皿
14 不正検出装置
15 CPU
16 RAM
17 ROM
18 インターフェイス
19 警報部
20 スピーカー
21 警報ランプ
22 信号線
m メダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給されたメダルを払い出し時まで貯留するメダルホッパーと、投入金額に応じた枚数のメダルをメダルホッパーから払い出す払出器と、同払出器で払い出されるメダルを計数用に検知する検知器とを備えたメダル貸し機において、払い出されるメダルを検知する別のメダルセンサーを検知器の下流位置に設け、検知器とメダルセンサーの検知枚数をそれぞれ計数して双方の計数値の差分値が所定値に達した場合に警報する警報手段を設けたことを特徴とする、メダル貸し機の不正検出装置。
【請求項2】
警報回数を記憶する記憶部と、警報後に検知器の計数値をメダルセンサーの計数値に同期させて計数を継続する制御と、記憶部の警報回数が所定回数に達した場合は強く警報し所定回数に達しない警報は弱く警報する制御とを警報手段に備えた、請求項1記載のメダル貸し機の不正検出装置。
【請求項3】
警報手段の警報回数が所定回数に達した場合に作動中の払出器を停止する制御を警報手段に備えた、請求項2記載のメダル貸し機の不正検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−132220(P2008−132220A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321380(P2006−321380)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000108247)株式会社ジェッター (42)
【Fターム(参考)】