メチオニンスルホキシドペプチド、組成物および使用方法
ヒト皮膚での酸化ストレスの影響を軽減するための、酸化型メチオニン残基を含むペプチドの使用。C末端に酸化型メチオニンを含む短鎖ポリペプチドが、生存皮膚モデルで日焼け細胞生成を阻害すること、およびメチオニンスルホキシドレダクターゼをアップレギュレーションすることが示される。化粧品として許容される組成物および前記ポリペプチドの使用方法が開示される。酸化型ペプチドは、酸化型α1-アンチトリプシンを修復することができ、それにより、エラスターゼによる結合組織の分解を阻害する。この作用は、例えば、日焼けにより損傷した皮膚の修復および気腫の治療をはじめとする広範囲の効果を有し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月13日に出願されたUS 61/168,808の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、老化防止スキンケアの分野に属する。具体的には、本発明は、ヒト皮膚での酸化ストレスの影響を軽減するための酸化型メチオニン残基を含有するペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書中で言及するすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0004】
メチオニン
メチオニン(C5H11NO2S)は、以下の化学構造を有する、電気的に中性な、非極性、疎水性α-アミノ酸である:
【化1】
【0005】
メチオニン(Met)は、タンパク質構成性である。タンパク質構成アミノ酸のうち、メチオニンは、タンパク質中で報告された最も低い出現率である2.3%を有する。それにもかかわらず、タンパク質翻訳の際には、メチオニンはすべての真核生物タンパク質のN末端位置に見出される。Met残基は、以下で述べるように、タンパク質の構造および機能を保護する。メチオニンは必須アミノ酸であるため、ヒトは摂取する必要がある。
【0006】
Metの酸化および皮膚老化
タンパク質において、メチオニン残基の含硫側鎖は、タンパク質の環境中で活性酸素種(ROS)による酸化を受ける。ROSによるメチオニンの酸化は、メチオニンスルホキシド(MetO)をもたらし、これは以下の構造を有する:
【化2】
【0007】
硫黄原子は二重に酸化される場合があり、メチオニンスルホン(MetO2)がもたらされる。メチオニンスルホンは、強力で生物学的に不可逆性の酸化剤であり、生物学的に還元可能な、より穏やかなメチオニンスルホキシドとは区別される。本明細書の全体にわたって、酸化型メチオニンへの言及は、メチオニンスルホンではなく、メチオニンスルホキシドを指す。
【0008】
タンパク質がメチオニン残基で酸化され、このメチオニンが該タンパク質の機能および/または構造に重要である場合、タンパク質活性が傷害される場合がある。タンパク質の酸化は様々な疾患に関連付けられており、それに含まれる皮膚老化では、これが主な原因であることが明らかになっている。例えば、「The Repair Enzyme Peptide Methionine-S-Sulfoxide Reductase Is Expressed In Human Epidermis and Upregulated by UVA Radiation」(Ogawa et al. Journal of Investigative Dermatology (2006) 126, 1128-1134、;2006年3月2日にインターネットで公開;その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。この中で、「酸化型タンパク質の蓄積は、細胞老化の特徴であると考えられる」、および「MetOを還元する能力は、ROSの存在下で細胞が生存し続けるために必須であると思われる」と述べられている。さらに、現在では、日光への曝露が、ヒト皮膚でのROS形成の著明な要因であることが知られている。
【0009】
メチオニンスルホキシドレダクターゼ
メチオニンアミノ酸残基の酸化が、細胞内に存在するメカニズムを介して、ヒト皮膚においてさえも可逆的であることは、よい知らせである。酸化されたペプチドは、修復することができる。メチオニンスルホキシドの還元は、メチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)によって触媒され、これは大部分の細胞で見出される抗酸化酵素である。Msrの役割についてのこの理解から、タンパク質表面に露出されたメチオニン残基とMsrとが、細胞中での活性酸素種(ROS)を調節する酸化還元サイクルを形成するという学説が浮上してきた。すなわち、タンパク質のMet残基は、細胞中の活性酸素種のスカベンジャーとして作用する内在性の抗酸化剤であり、Msrは酸化されたメチオニンを有効な形態に還元する。つまり、タンパク質表面でのメチオニン酸化は、単にランダムな損傷というわけではなく、酸化ストレスの影響を軽減するシステムの一部分である。
【0010】
Msrには、MsrAおよびMsrBと呼ばれる2つの形態がある。MsrAは、MsrのS立体異性体の還元に関与し、MsrBは、R立体異性体の還元に関与する。図1は、メチオニンスルホキシドのメチオニンへの還元でのMsrAの役割を模式的に示している。
【0011】
表皮ケラチノサイトでのMsrA活性の存在が、2003年に本出願人により実証された。それとは別に、初代培養正常ヒト表皮ケラチノサイトおよびHaCaT細胞、ならびに被験体のヒト表皮で、MsrA活性の存在が2006年にOgawaらにより報告された(上記の参考文献)。両方のグループがRT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いた。Ogawaは、初代培養ヒトケラチノサイトおよびHaCaT細胞での顕著なMsrA活性を報告した。さらに、Ogawaは、MsrAが、角化表皮層(すなわち、角質層)または真皮層ではなく、ヒト皮膚の有核表皮層で選択的に見出されることを報告した。つまり、皮膚細胞をはじめとする細胞内では、Msr酵素はタンパク質機能を調節しており、欠陥のある、機能不全タンパク質の蓄積を防止する。
【0012】
Msrダウンレギュレーションは組織老化に関連する
タンパク質を修復するMsrメカニズムにもかかわらず、タンパク質中のMetOの量は加齢に伴い増加することが示されている。このことは、Msr系が加齢と共に減弱していくことを示唆する。Stadtmanら(Methionine Oxidation and Aging; Biochimica et Biophysica Acta - Proteins & Proteomics; Volume 1703, Issue 2, 2005年1月17日 (2004年9月9日からインターネットで入手可能), 第135〜140頁)により以下のことが指摘されている:
「MetOレベルの変化は、以下のものをはじめとする多数の異なるメカニズムのうちいずれか1以上での変化を反映している可能性がある:(i) ROS生成速度の増加;(ii)抗酸化能力の低下;(iii)酸化型タンパク質を選択的に分解するタンパク質分解活性の低下;または(iv) Msr酵素レベルの直接的な低下によるかまたは関与する還元性等価物(チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、NADPH生成)の能力の低下が間接的に原因となる、MetO残基をMet残基に変換する能力の低下。Msr活性の重要性は、加齢が多くの動物組織でのMsr活性の低下を伴うという事実、およびMsrレベルの低下をもたらすマウスでの突然変異が最高寿命の低下をもたらし、Msrの過剰発現は最高寿命の劇的な上昇をもたらすという事実により強調される。」
【0013】
つまり、加齢はMsrダウンレギュレーションをもたらし、Msrダウンレギュレーションは組織老化をもたらす。近年、多数の病理学的障害がMsr活性の低下と関連付けられている。これらには、アルツハイマー病およびパーキンソン病、白内障、白斑、α1-アンチトリプシン関連障害(すなわち、気腫、皮膚老化)および寿命の短縮が含まれる。
【0014】
MsrダウンレギュレーションはH2O2に関連する
白斑患者の表皮細胞での過酸化水素H2O2の蓄積は、Msr酵素の発現低下と関連付けられている。逆に、白斑患者での上昇したH2O2レベルを人工的に低下させた場合、Msr発現が回復し、健常皮膚のレベルに近づいた。また、H2O2により引き起こされる酸化ストレスは、白斑患者での、Msr酵素の活性低下、およびMetOからMetへの還元能力の低下に関連付けられている。さらに、H2O2の存在下(白斑患者の皮膚でのものである必要はなく、単にH2O2の存在下)でのMsrAおよびMsrB(特にMsrA)の活性低下も実証されている(Schallreuter et al., “Methionine Sulfoxide Reductases A and B Are Deactivated by Hydrogen Peroxide (H2O2) in the Epidermis of Patients with Vitiligo”; Journal of Investigative Dermatology (2008) 128, 808-815; 2007年10月18日にインターネットで公開)。
【0015】
つまり、Msrレベルの低下およびMsr活性の低下は、H2O2レベルの上昇と関連している。酸化ストレスの増加はMsrレベルの低下と関連している。
【0016】
Msrアップレギュレーション
Ogawaらは、UVA光への曝露が、表皮でのMsrA発現を顕著に増加させることを示した。この作用は、培養HaCaT細胞でも見られた。UVAに対する応答は、時間依存的、線量依存的かつ波長依存的に生じた。同様に、Ogawaらは、低濃度の過酸化水素に反応して、培養HaCaT細胞でMsrAのアップレギュレーションが生じたことを報告している。
【0017】
一方で、Ogawaらにより報告されているように、低線量のUVBは、曝露後72時間以内に、HaCaT細胞でMsrAをダウンレギュレートすることが観察された。UVB曝露は表皮での過酸化水素生成を引き起こす傾向があるので、これは奇妙である。つまり、UVBと過酸化水素とは同様の作用を有すると予想されていた可能性がある。白斑患者で過酸化水素がMsrをダウンレギュレーションしているようであるという、上述のSchallreuterらの知見により、状況はさらに混乱させられている。Msrに関して、表皮での過酸化水素の役割および表皮に対するUVB曝露の作用は、今のところ完全には理解されていないというのが本出願人の意見である。
【0018】
日焼けにより損傷した皮膚細胞
本明細書の全体にわたって、UVBとは280〜320nmの波長を意味し、UVAとは320〜450nmの波長を意味すると理解することができる。日光は、直接的損傷および間接的損傷と呼ばれる2種類の様式のいずれかで皮膚に損傷(ダメージ)を与える。直接的損傷では、皮膚中のDNAが、スペクトルのUVB部分からの光子を直接吸収する。それより少ない程度で、DNAはUVA光子も吸収する。この吸収は、DNA配列中での突然変異を引き起こす可能性があり、これが皮膚細胞内での応答を惹起する。応答としては、日焼け細胞(Sunburn Cell)の形成およびメラニンの生成が挙げられる。メラノーマの全発生数のうち8%のみが、直接的なDNA突然変異に起因する。
【0019】
対照的に、間接的損傷は、紫外線光子が皮膚に侵入し、発色団に吸収されたときに生じる。励起状態では、発色団は、活性酸素種の形成をもたらす反応に入る。例えば、ヒト皮膚では、UVB曝露は過酸化水素の生成に関連し、UVAは一重項酸素の生成に関連する。皮膚が、活性種を中和することによって恒常性を維持することができない場合には、活性種は、(例えばメチオニン部位での)酸化を介して皮膚細胞DNAおよびタンパク質に損傷を与えるであろう。DNAおよびタンパク質に対するこの損傷は、酸化ストレスと呼ばれ、皮膚老化の主要因である。さらに、メラノーマの全発生数のうち92%が、間接的な、酸化的DNA損傷に起因する。
【0020】
残念なことに、一部の日焼け止め剤は皮膚に浸透し、活性酸素種の形成に顕著に寄与する場合があることが明らかになっている。例えば、
「有核表皮で生成されるUV誘導(20mJ cm-2)活性酸素種(ROS)の数は、UVフィルターであるオクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、またはベンゾフェノン-3が皮膚表面に留まっている時間の長さに依存する。・・・それぞれのUVフィルターが、t=20分間、皮膚表面に留まった後、対照で生成される数は下回るものの、生成されるROSの数は増加する。t=60分までに、フィルターは対照を上回るROSを生成する。3種類すべてのUVフィルターが有核層に浸透した場合、ROSのレベルは、UV照射のもとで表皮発色団により天然に生成されるレベルを上回ることがデータにより示されている。」(Hanson Kerry M.; Gratton Enrico; Bardeen Christopher J. (2006). "Sunscreen enhancement of UV-induced reactive oxygen species in the skin". Free Radical Biology and Medicine 41 (8): 1205-1212)。
【0021】
つまり、一部の日焼け止め剤の使用が、メラノーマの発生数の増加および他の酸化的損傷に寄与してきたことが示唆されてきた。本発明は、一部の日焼け止め剤からの酸化的損傷のリスクなしに、UV曝露の損傷作用を低減させる。実際には、本発明は、皮膚タンパク質の酸化的損傷を逆転させる。
【0022】
皮膚浸透
角質層は、局所的に塗布された物質に対する主要な浸透バリアの典型である。角質層は、非常に特殊化した組織で、脂質マトリックスに包まれた、約20の角質細胞の層からなる。角質細胞は密に詰まっており、その間の空間は、ラメラ二重層の秩序立った構造により満たされている。角質層は、皮膚を通した親油性物質および親水性物質の通過を調節する。多くの因子が、ある特定の化合物が角質層を通過できるかどうか、および生存中の表皮細胞のより深い層まで通過する速度を決定している可能性がある。それらの因子の一部としては、分子のサイズ、極性および溶解性、皮膚の年齢および状態、浸透促進剤の使用、ならびに皮膚を通過する経路が挙げられる。
【0023】
サイズに関して、分子の分子量が約600ダルトンを超えて増大するにつれ、該分子が角質層に浸透するのはより困難になることが経験により示されている。皮膚のタイプおよび健康状態に応じて、一部の情報源ではこのカットオフ値が若干低く設定されている。例えば、ある情報源は、「無傷の皮膚を通って浸透できる最大の分子は、分子量500を有する」と示唆している(“Routes for Skin Penetration”, N. Dylan, Cosmetiscope Technical Notes 0504; 2009年3月4日にhttp://www.nyscc.org/cosmetiscope/archive/tech0504.htmlにアクセス)。したがって、600ダルトンは皮膚浸透に対する絶対的なカットオフ値では決してない。より大きな分子が皮膚に浸透する場合がある。それにもかかわらず、約600ダルトンを超えて増大すると、化粧用として許容される手段による角質層の通過は徐々に困難になっていく。つまり、皮膚に浸透させるための担体分子を設計する場合、約606ダルトンの分子量を有する分子を用いることは、自明ではないであろう。極性に関して、一般的には、カチオン性分子種はアニオン性分子種よりも良好に皮膚に浸透する。溶解性に関して、親油性化合物は、親水性化合物よりも速く角質層に浸透する傾向がある。
【0024】
局所的に塗布された化合物が角質層に侵入し、それを通過する能力は、皮膚のバリア抵抗を可逆的に低下させる公知の浸透促進剤により改善することができる。多数の化合物が浸透促進活性について評価されており、そのようなものとしては、スルホキシド(すなわち、ジメチルスルホキシド、DMSO)、アゾン(すなわち、ラウロカプラム)、ピロリドン(すなわち、2-ピロリドン、2P)、アルコールおよびアルカノール(すなわち、エタノールまたはデカノール)、グリコール(すなわち、プロピレングリコール)、界面活性剤およびテルペンが挙げられる。これらの群の浸透促進剤は、様々な作用様式および皮膚バリアを通過する様々な浸透チャンネルを代表する。バリア浸透を促進する非化学的手段としては、物理的技術(すなわち、イオントフォレシス、ソノフォレシス)、酵素的技術(角質層脂質の一部を変化させる)および小胞状担体(すなわち、リポソーム、ニオソーム等)の使用が挙げられる。
【0025】
α1-アンチトリプシン欠損症
α1-アンチトリプシン欠損症は、血液および肺におけるα1-アンチトリプシン(A1AT)活性の低下をもたらす遺伝的障害である。エアロゾル化A1ATの使用の研究が進行中であることに注目するのは興味深い。エアロゾル化A1ATは、下気道に到達させる目的で、肺に吸入させる。吸入されたA1ATが、肺内の損傷したエラスチン線維に到達するかどうかはまだわかっていない(“Alpha 1-antitrypsin deficiency”, http://en.wikipedia.org/wiki/Alpha_1-antitrypsin_deficiencyの記事を参照されたい(最終更新:2009年3月28日))。この記事は、肺内でMsrをアップレギュレートするためのC末端メチオニンスルホキシド残基を有するペプチドの使用を、開示も示唆もしていない。この記事は、C末端メチオニンスルホキシド残基を有するエアロゾル化ペプチドを、開示も示唆もしていない。
【0026】
本発明以前には、本出願人は、日光への曝露前に塗布した場合に、Msrアップレギュレーションを介して皮膚を保護する、化粧用として許容される局所用組成物は知らなかった。本出願人らは、末端メチオニンスルホキシドを有するペプチド(具体的には、分子量約600以下のペプチド)を含む化粧用として許容される局所用組成物を開示する先行技術を知らなかった。本出願人らは、末端メチオニンスルホキシドを含むペプチドを皮膚に塗布するステップを含む、UV光の損傷作用を低減させる化粧用として許容される方法を知らなかった。
【発明の概要】
【0027】
C末端に酸化型メチオニンを含有する短鎖ポリペプチドは、生存皮膚モデルで日焼け細胞の生成を阻害すること、およびメチオニンスルホキシドレダクターゼをアップレギュレーションすることが示される。化粧用として許容される組成物および該ポリペプチドの使用方法が開示される。さらに、酸化型ペプチドが酸化型α1-アンチトリプシンを修復できることが推測され、これは次にエラスターゼによる結合組織の分解を阻害する。この作用は、例えば、日焼けにより損傷した皮膚の修復および気腫の治療をはじめとする、広範囲の効果を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】メチオニンスルホキシドのメチオニンへの還元でMsrAが果たす役割を模式的に表す図である。
【図2a】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す図である。
【図2b】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す図である。
【図3】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導細胞死に対するMsrの作用を示す図である。
【図4】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのMsrアップレギュレーションに対する酸化型ペプチド(MetO-エンケファリン)の正の効果を示す図である。
【図5】UVB照射により引き起こされる日焼け細胞生成に対するMetO-エンケファリンの阻害効果を示す図である。
【図6】UVB照射により引き起こされる日焼け細胞生成に対するMetO-エンケファリンの阻害効果を示す図である。
【図7】表皮細胞でのMetO-エンケファリンの低い細胞毒性を示す図である。
【図8】α1-アンチトリプシンがエラスターゼ活性を阻害することを示す図である。
【図9】酸化型α1-アンチトリプシンがエラスターゼ活性を阻害できないことを示す図である。
【図10】α1-アンチトリプシンのエラスターゼ阻害活性が、酸化型α1-アンチトリプシンを還元するMsrAにより回復させることができることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書の全体にわたって、「含む」(comprise)およびその活用形は、制約のないものであり、群、リスト、集合または組成が、明確に指定された項目に限定されないことを意味するものと解釈されるべきである。
【0030】
慣用のRT-PCRによりケラチノサイトにおいてメチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)の存在を確認した後、細胞毒性のない様式で、この酵素をアップレギュレートする方法を用いて実験を開始した。最初に試した物質は酸化型メチオニン(スルホキシド型)であったが、結果は、ハウスキーピング遺伝子に対するMsrの比は上昇させることができなかったことを示した。しかしながら、これらの実験で、酸化型ペプチドは非常に良好な結果をもたらした。
【0031】
本発明は、部分的には、以下の知見に基づく:1. MsrがNHEKでUVB誘導過酸化水素を阻害し、細胞生存率を改善させる;2. メチオニンスルホキシド(MetO)は、それ自体ではMsrを顕著にアップレギュレートしない;3. C末端メチオニンスルホキシドを有する低分子量ポリペプチドが、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)でMsrをアップレギュレートできる;4.このポリペプチドの非酸化型は、Msrを顕著にアップレギュレートしない;5. Msrのアップレギュレーションに加えて、酸化型ポリペプチドは、UVB照射生存皮膚モデルでの日焼け細胞の形成の阻害に有効である;6. 酸化型ポリペプチドを用いると、細胞毒性のない様式でMsrがアップレギュレーションされる。続いて、これらのそれぞれについて述べる。
【0032】
1. Msrは、NHEKにおいて内在性過酸化水素およびUVB誘導過酸化水素を阻害し、細胞生存率を改善させる
図2aおよび図2bは、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)での内在性過酸化水素およびUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す。NHEKは、示した濃度のMrs中でプレインキュベートした。インキュベーション後、一部の細胞をUVB(20mJ/cm2)に曝露した。グラフに示されているように、内在性過酸化水素レベルの著明な低下およびUVB曝露に起因する過酸化水素形成の著明な減少が見られた。MsrがUVB誘導H2O2を阻害するならば、本明細書中に記載される方法によるMsrのアップレギュレーションを、予防対策として、酸化ストレスの開始前に用いることができると推測された。Msrが内在性H2O2を減少させるならば、本明細書中に記載される方法によるMsrのアップレギュレーションが、ケラチノサイトに関して、老化防止であることが確立される。つまり、皮膚への酸化型ペプチドの送達は、老化防止スキンケアに対する新規なアプローチを構成すると考えられる。
【0033】
図3は、正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導細胞死に対するMsrの作用を示す。NHEKを、示した濃度のMsr中で4時間プレインキュベーションし、続いて、種々のレベルのUVBに曝露した。グラフに示されているように、UVB曝露の結果としての細胞死率(%)は、無処理対照と比較して有意に低下する。この結果は、試験したすべてのレベルのUVB曝露およびMsr濃度で観察される。
【0034】
2. 酸化型メチオニン(MetO)は、それ自体ではNHEKにおいてMsrを顕著にアップレギュレートしない
2003年8月付近に、慣用のRT-PCRによりケラチノサイトでのメチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)の存在を確認した後、細胞毒性のない様式で、この酵素をアップレギュレートする方法を用いて実験を開始した。最初に試した物質は酸化型メチオニン(スルホキシド型)であった。しかしながら、結果は、ハウスキーピング遺伝子と比較して、Msrのレベルは顕著には上昇しなかったことを示した。本出願人らは数回にわたって試したが、2004年2月までに、この酸化型アミノ酸はケラチノサイトにおいてMsrを誘導しないであろうことが明らかになった。比較的大型のタンパク質である酸化型ウシ血清アルブミンも試したが、成功しなかった。しかしながら、2004年2月に行なった実験で、酸化型ポリペプチドが非常によい結果をもたらした。この方針に沿って、研究を続けた。
【0035】
3. C末端メチオニンスルホキシドを有する低分子量ポリペプチドは、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)において、Msrをアップレギュレートできる
本発明の酸化型ペプチドの例は、以下の配列によって表される:
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
このポリペプチドは、約606の分子量を有し、C末端メチオニン残基で酸化されている。
【0036】
このペプチドの非酸化型は、Met-エンケファリン(CAS番号:58569-55-4;C27H35N5O7S)として知られている。
【化3】
【0037】
Met-エンケファリンは、573.6611g/モルのモル質量を有する、ペンタペプチド神経伝達物質である。Met-エンケファリンは、身体における痛みおよび痛覚(侵害受容)を調節する。
【0038】
「MetO-エンケフェリン」とは、Met-エンケファリンの酸化型を意味し、これは、配列番号1に示されているように、C末端メチオニン残基の硫黄で酸化されている。
下記では、MetO-エンケフェリンが、正常ヒト表皮ケラチノサイトでMsrをアップレギュレートすることを実証する。NHEK細胞を、培養培地中(対照)および酸化型ペプチドを含有する培養培地中および非酸化型ペプチドを含有する培養培地中(対照)で一晩インキュベートした。酸化型ペプチドの濃度(mg/mL)としては、0.01、0.1および0.25を含めた。非酸化型ペプチド(すなわち、Met-エンケファリン)は、0.25mg/mLでのみ試験した。インキュベーション後、細胞からmRNAを抽出し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってcDNAを調製した。β-ミクログロブリンを対照として、ゲル電気泳動を用いてサンプルをMsrについてプローブした。結果を図4に示す。Msr発現の平均増加は、酸化型ペプチド濃度0.01%、0.1%および0.25%について、それぞれ18%、28%および25.4%であった。この結果をウエスタンブロッティングにより確認したところ、酸化型ペプチドを用いて処理した細胞でMsr mRNAの増加を示した。
【0039】
4. 非酸化型ポリペプチドは、NHEKにおいてMsrを顕著にアップレギュレートしない
図4からも見て取れるように、非酸化型ペプチドは、Msr発現に顕著な増大を引き起こさなかった。さらに、この結果をウエスタンブロッティングにより確認したところ、非酸化型ペプチドを用いて処理した細胞でMsr mRNAの顕著な増加を示さなかった。
【0040】
5. 酸化型ポリペプチドは、UVB照射生存皮膚モデルでの日焼け細胞の形成を阻害するのに有効である
UVB照射生存皮膚モデルに対するMetO-エンケファリン酸化型ペプチドの作用を、日焼け細胞(SBC)の生成を調べることにより評価した。
【0041】
方法:EpiDerm Full Thickness 200(EFT200)生存皮膚モデルをMatTek社から入手し、1mg/mlのMetO-エンケファリンを含む又は含まない培地中で48時間インキュベートした。酸化型ペプチドは、室温で保存することができる。ペプチドは既に酸化されているので、保存中には比較的低い反応性を有する。2mlの培地を生存皮膚モデルの下に添加した。生存皮膚モデルは、トランスウェルメンブレン上に配置して、気/液界面の維持を可能にした。48時間後、生存皮膚モデルを100mJ/cm2のUVBに曝露し、再び栄養供給し、一晩インキュベートした。次の日、サンプルを10%ホルマリンで固定し、組織学的切片作製およびH&E染色のためにParagon Bioservices社に送付した。各切片に対して5箇所の連続する顕微鏡視野について、SBCおよび非日焼け細胞の数を計数し、SBCを総細胞数に対するパーセンテージで表すことにより、SBCの存在に関して評価した。日焼け細胞は、細胞質の好酸性染色および濃縮した核(染色体凝集)により特徴付けられる。
【0042】
結果:1mg/mlのMetO-エンケファリンを用いて処理したサンプルでの日焼け細胞の生成は、著明に減少した。同じ実験の2回の別々の実施の結果を、それぞれ図5および6に示す。両方の実験からのSBCの平均減少%は、31.1%であった。つまり、UVB照射の有害作用に対するかなりの程度の保護が、MetO-エンケファリンペプチドにより実証された。
【0043】
観察された日焼け細胞形成の減少は、ペプチドによるUVBの吸収に起因するものであろうかという疑問が生じた。答えはもちろん「いいえ」である。MetO-エンケファリンのUVスペクトルは、水とほぼ同じである。290nmでは、k値0.24および吸光係数145.5と表される吸収が見られる。しかしながら、この吸収はわずかなもので、したがってペプチドによる吸収は、SBCの発生率の低下に顕著に寄与しなかった。さらに、ペプチドは生存皮膚モデルの下に添加され、曝露は、約300nm未満のすべてのUV照射を効率よくフィルターするポリスチレン製のフタを有する6ウェルプレート中で行なった。つまり、MetO-エンケファリンペプチドは、放射の吸収以外の機構によって、UVB照射の有害作用から正常ヒト表皮ケラチノサイトを保護すると結論付けることができる。いかなる理論に拘泥することも望まないが、UVB照射がMetOの細胞内濃度を上昇させ、MetO-エンケファリンがMsrをアップレギュレーションし、これが続いてUVB誘導MetOをMetに還元すると考えられる。
【0044】
6. 酸化型ポリペプチドを用いると、Msrが細胞毒性のない様式でアップレギュレーションされる
図7は、ケラチノサイトでの、様々な濃度のMetO-エンケファリンの細胞毒性(またはその欠如)を示す。これらの結果は、酸化型ペプチドとのインキュベーションに続いてケラチノサイトで観察された作用が、細胞毒性によるものではなかったことも実証する。
【0045】
C末端メチオニン残基でそれ自体が既に酸化されている小分子メチオニン含有ポリペプチドが、観察された作用を有するであろうことは、予期されたものではなく、また先行技術において推測されてもいなかった。酸化型メチオニン自体はMsrをアップレギュレートできないことから、このことはまさに真実である。まとめると、データから、MetO-エンケファリン酸化型ポリペプチドはMsrをアップレギュレートすること、SBC形成を減少させ、かつH2O2生成を阻害することによりUVBストレスから生存皮膚モデルを保護すること、そして、皮膚でのエラスターゼ誘導性損傷を低減させること、白斑患者においてMsrレベルを上昇させることが示唆される。
【0046】
Msrによる酸化型α1-アンチトリプシンの修復およびエラスターゼの阻害
潜在的に広範囲の因果関係を伴って、酸化型α1-アンチトリプシン(A1ATとも称される;α1プロテイナーゼインヒビター、A1PIとも称される)を修復するために、Msrが初めて用いられた。肝臓で産生されるセリンプロテアーゼインヒビターであるA1ATは、トリプシンだけでなく、様々な種類のプロテアーゼを阻害する。例えば、A1ATは、炎症事象の間に放出される酵素の作用から組織を保護する。そのような酵素の1つは、エラスターゼである。
【0047】
エラスターゼは、エラスチンを分解するプロテアーゼである。エラスチンは、すべての結合組織の2つの主成分のうちの1つである。エラスターゼが抑制されないと、やがて、罹患組織の部位および機能に応じて、様々な結合組織病変が生じ得る。例えば、過剰なエラスターゼ活性は、一部の例を挙げれば、皮膚のたるみおよび弾性線維症;肺気腫または慢性閉塞性肺疾患;ならびに肝硬変をもたらす場合がある。
【0048】
正常な状態では、α1-アンチトリプシン(A1AT)が、エラスターゼを不活性型に維持することにより好中球エラスターゼの活性を抑制する。A1ATは、そのメチオニン358残基を用いてエラスターゼに結合することによりこれを行なう。しかし、A1ATがそのメチオニン358残基で酸化された場合、A1ATの結合機能は損なわれ、結合組織の過剰な分解が結果として起こる。A1ATのメチオニン358残基の酸化は、細胞内過酸化水素レベルの上昇、炎症、喫煙および酸化ストレスに関連付けられている。α1-アンチトリプシンを補充する方法が必要とされる。有利なことに、Msrが酸化型α1-アンチトリプシンを修復し、エラスターゼ阻害を回復させるようであることが観察されている。
【0049】
方法:Molecular Probes社から入手したエラスターゼアッセイを用いて、α1-アンチトリプシンを用いた阻害に合わせて改変した。CytoFluorプレートリーダーで、485nmでの励起および525nmでの発光により蛍光を測定した。
【0050】
結果:実験の第1ステージでは、エラスターゼ活性がα1-アンチトリプシンにより阻害されることを実証する。これは、0.1mg/mlエラスチンおよび0.05単位/mlエラスターゼを用量依存的にα1-アンチトリプシン(2.5〜50μg/サンプル)とインキュベートすることにより実施した。結果を図8に示し、ここで、con=対照;E=エラスターゼ;I=インヒビター(アッセイに含めた);AT=α1-アンチトリプシンである。α1-アンチトリプシンの濃度が増加するにつれ蛍光が減少し、これはエラスターゼのより強力な阻害を示す。
【0051】
実験の第2ステージでは、過酸化水素(H2O2)は、α1-アンチトリプシンがエラスターゼを阻害する能力を妨げることを実証する。これは、10μgのα1-アンチトリプシンを過酸化水素で酸化することにより行なった。図9は、周囲温度で3時間インキュベートした5、10および30ミリモル濃度(mM)のH2O2が、用量依存的にα1-アンチトリプシンを阻害することを示す。30mMのH2O2で、α1-アンチトリプシンによりもたらされるほぼすべてのエラスターゼ阻害が失われる。
【0052】
実験の第3ステージでは、α1-アンチトリプシンの酸化を、MsrAにより逆転させることができることを実証する。これは、30mM H2O2で酸化させたA1ATを、0.7mg/ml MsrAおよび10mM DTTと共に2時間インキュベートすることにより実施した。続いて、サンプルを、適切な対照(DTT単独、Msr単独等)(効果はなかった)と並行して、エラスターゼ活性アッセイで上記と同様に再びアッセイした。図10は、この実験の結果を示す。100%エラスターゼから開始する。上記と同様、α1-アンチトリプシン(AT)は、エラスターゼ活性のうち約90%を除去する(エラスターゼ+ATと表示されたバー)。α1-アンチトリプシンを酸化した後、エラスターゼ活性はすべて元に戻る(エラスターゼ+AToxと表示されたバー)。最後に、図10の右端のバーは、0.7mg/mLのMsrAが、エラスターゼ活性のうち59%超の再阻害をもたらしたことを示す。つまり、MsrAは、酵素的精度で、酸化型α1-アンチトリプシンに対するエラスターゼ阻害を著明に回復させることができた。
【0053】
Msrは酸化型α1-アンチトリプシンを修復するので、MetO-エンケファリン酸化型ペプチドを用いて、表皮Msrをアップレギュレーションすることにより、皮膚に対するエラスターゼ誘導性損傷を低減させることができることが予測される。治療の必要がある被験者の皮膚にMetO-エンケファリンを送達し、吸収させると、MetO-エンケファリンがMsrをアップレギュレートし、これが酸化型α1-アンチトリプシンを修復するであろう。修復されたα1-アンチトリプシンは、エラスターゼによる結合組織分解を停止するであろう。
【0054】
同様に、MetO-エンケファリンは、α1-アンチトリプシンのメチオニン358残基の酸化を含むいかなる状態または病変でも有用であると予想することができる。例えば、MetO-エンケファリンは、気腫の治療において有用であり得ることが予想される。例えば、MetO-エンケファリンは、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患に対する治療が必要な被験者により吸入されて、エアロゾルビヒクル中で下気道に送達することができる。気道では、MetO-エンケファリンはMsrをアップレギュレートすることができ、続いてこれが、酸化型α1-アンチトリプシンを修復するであろう。修復されたα1-アンチトリプシンは、エラスターゼによる結合組織分解を停止するであろう。
【0055】
さらに、MetO-エンケファリンを送達することができるいずれの組織でも、MetO-エンケファリンは一般的にMsrのアップレギュレーターとして有用であり得ることが予想される。
【0056】
組成物
本明細書中に記載される酸化型ペプチドの利点は、化粧用としてまたは製薬上許容される基剤および1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を皮膚に塗布することにより実現されると期待される。酸化型ペプチドは、MetO-エンケファリンであり得る。酸化型ペプチドの「有効量」とは、所与の皮膚表面積にわたって、所定のレベルの酸化的組織損傷を予防するのに十分な量のMsrをアップレギュレーションするのに十分な量である。有効量は、酸化型ペプチドの濃度が、調製物の0.01重量%ほども低い場合に、実現することができる。したがって、消費者により典型的に塗布される平方センチメートルあたりの局所用調製物の平均量は、有効量の酸化型ペプチドを容易に含むことができる。
【0057】
MetO-エンケファリン酸化型ペプチドは、ユーザーの皮膚への局所的塗布に好適な化粧用として許容される広範囲の製剤に組み込むことができる。成分、組成物の剤形および製造方法に対する第1の主な制約は、最終製品が、上記の「有効量」の酸化型ペプチドを含有しなければならないということである。第2の主な制約は、最終製剤が、Msrをアップレギュレーションするかまたは日焼け細胞の形成を阻害する酸化型ペプチドの能力を、許容できないレベルまで低下させてはならないということである。
【0058】
一般的に、当技術分野で通常の技能を用いれば、酸化型ペプチドを水性または非水性組成物に組み込むことが可能であろう。水性組成物は、エマルジョン剤、液剤、懸濁剤、分散剤、スティック剤、ゲル剤またはエアロゾル剤の形態であり得る。エマルジョン剤の形態である場合、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンであり得る。組成物のすべての水性の形態が、最小量から最も好ましい量の、以下の範囲の水を含有することができる:約:1〜99%、5〜99%、1〜90%、10〜99%、5〜90%、1〜85%、5〜85%、10〜90%、および10〜85%。油が存在する場合、1〜99%、好ましくは約5〜90%、より好ましくは約5〜75%の油が存在する。
【0059】
組成物は、ほとんどいかなる化粧用として許容される成分でも含有することができる。例えば、日焼け止め剤を含有することができる。日焼け止め剤としては、化学的UVAもしくはUVB日焼け止め剤または微粒子状の物理的日焼け止め剤が挙げられる。存在する場合、日焼け止め剤は、約0.1〜50%、好ましくは約0.5〜40%、より好ましくは約1〜35%の範囲であり得る。しかしながら、所定のレベルの保護のためには、上記のMetO-エンケファリンにより与えられる保護のために、日焼け止め剤の量を減らすことが可能である場合がある。他の追加の成分としては以下のものが挙げられる:保湿剤(すなわち、グリコール、糖);界面活性剤(すなわち、シリコーン系または有機系;存在する場合、界面活性剤は、組成物全体のうち、約0.001〜30重量%、好ましくは約0.005〜25重量%、より好ましくは約0.1〜20重量%の範囲であり得る);生物学的材料(細胞RNAもしくはDNAの断片、またはプロバイオティクス微生物;存在する場合、そのような材料は、約0.001〜30%、好ましくは約0.005〜25%、より好ましくは約0.01〜20%の範囲であり得る);構造化剤(structuring agent);油(すなわち、揮発性および不揮発性、シリコーンおよび非シリコーン);ビタミン;抗酸化剤;皮膚活性化剤その他。
【0060】
使用方法
本発明の酸化型ペプチドは、酸化ストレスに起因する損傷を修復するために用いることができるか、または酸化ストレスに起因する損傷を予防するために用いることができる。
【0061】
修復:酸化ストレスに起因する皮膚損傷を修復するために、本発明の酸化型ペプチドを、損傷した皮膚に塗布することができる。酸化的に損傷された皮膚に対する治療を必要とする被験者の皮膚に投与された本発明の組成物は、Msrをアップレギュレーションし、これがC末端メチオニン残基で酸化された皮膚中のタンパク質を修復するであろう。アップレギュレーションされたMsrは、その358メチオニン残基で酸化されたα1-アンチトリプシン(A1AT)も修復することができる。したがって、本発明の第1の方法は、酸化型残基が、ケラチノサイトで見られるものなどの皮膚タンパク質中のものであるか、α1-アンチトリプシンでのものかにかかわらず、ヒト皮膚において酸化されたメチオニンアミノ酸残基の量を低下させる方法である。該方法は、酸化型メチオニンアミノ酸残基を有する皮膚に「有効量」のMetO-エンケファアリンを塗布するステップを含む。該方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を塗布するステップを含むことができる。
【0062】
予防:酸化ストレスに起因する皮膚損傷を予防するために、特定の酸化ストレスの開始前に本発明の酸化型ペプチドを皮膚に塗布することができる。例えば、海辺で1日を過ごそうと計画している場合、皮膚に塗布された本発明の組成物は、Msrをアップレギュレーションし、かつ/または日焼け細胞形成を阻害し、これにより、そうでなければUVAおよび/またはUVB曝露に起因して生じていたであろう損傷が低減されるであろう。したがって、本発明の第2の方法は、ヒト皮膚において酸化型メチオニンアミノ酸残基の量を維持する方法である。該方法は、酸化ストレスが開始されるリスクがある皮膚に、「有効量」のMetO-エンケファリン酸化型ペプチドを塗布するステップ;および、酸化型ペプチドの塗布ステップ後に、皮膚を該リスクに曝すステップを含む。該方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を塗布するステップを含むことができる。
【0063】
老化の徴候の減少:本発明の第3の方法は、皮膚老化の1種以上の徴候をある程度減少させる。この方法では、有効量のMetO-エンケファリン酸化型ペプチドを、皮膚老化の1種以上の徴候を現している皮膚の領域に反復して塗布する。反復塗布は、少なくとも皮膚で改善が観察されるまで、数日または数週間または数ヵ月または数年にわたって行なう。酸化型ペプチドは、所定のスケジュールに従って皮膚に塗布することができる(すなわち、1日1回以上、3週間;または1日おきに1日2回、6ヵ月間)。塗布は、老化の1種以上の徴候のある程度の減少が実現されるまで、行なうことができる。その後、塗布を停止するか、または老化の徴候の減少を維持するために変更することができる。この方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を定期的に塗布するステップを含むことができる。
【0064】
ある程度減少させることができる老化の徴候としては、限定するものではないが、すべての外見上見て取れ、かつ触ってわかる徴候、ならびに皮膚老化に起因するいずれかの他の肉眼的効果または微視的効果が挙げられる。そのような徴候は、内因性因子もしくは外因性因子(例えば、年齢による老化および/または環境的ダメージ)により誘導されるかまたは引き起こされる場合がある。これらの徴候としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる(酸化的タンパク質損傷により引き起こされる程度まで):しわなどの手触りの不均一性;皮膚弾力の低下(機能的皮膚エラスチンの低下および/または不活性化)、たるみ(目の周りおよび顎のむくみを含む)、皮膚硬度の低下、皮膚の緊張の低下、皮膚の変形からの反動の低下、弾性線維症、コラーゲン分解、および角質層、真皮、表皮での他の組織学的変化;変色(目の下のものを含む)、しみ、黄ばみ、皮膚領域の色素過剰(加齢によるしみおよびそばかすなど)、角化、分化異常、ならびに過剰角質化。
【0065】
α1-アンチトリプシン障害の治療
本発明の第4の方法は、α1-アンチトリプシンの358メチオニン残基の酸化に起因する障害を治療する。この方法では、有効量のMsrAまたはMetO-エンケファリンを、酸化型α1-アンチトリプシンタンパク質に送達する。例えば、該方法は、特に、MsrまたはMetO-エンケファリンが皮膚に吸収されるのを可能にするであろうビヒクル中で、そのような治療を必要とする被験者の皮膚にMsrAまたはMetO-エンケファリンを塗布するステップを含むことができる。障害は、皮膚または深部組織でのものであり得る。皮膚では、障害は、弾性線維症またはコラーゲンの分解により引き起こされる皮膚老化であり得る。
【0066】
本発明の組成物は、他の有利な皮膚に対する方法を含む皮膚処置レジメンの一部として塗布することができる。例えば、皮膚を洗浄し、化粧水で処置した後、本発明の組成物を塗布する。また、組成物は、例えば、洗浄剤、化粧水、ピーリング剤(exfoliant)、および本発明の組成物を含むキットの一部であり得る。
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月13日に出願されたUS 61/168,808の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、老化防止スキンケアの分野に属する。具体的には、本発明は、ヒト皮膚での酸化ストレスの影響を軽減するための酸化型メチオニン残基を含有するペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書中で言及するすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0004】
メチオニン
メチオニン(C5H11NO2S)は、以下の化学構造を有する、電気的に中性な、非極性、疎水性α-アミノ酸である:
【化1】
【0005】
メチオニン(Met)は、タンパク質構成性である。タンパク質構成アミノ酸のうち、メチオニンは、タンパク質中で報告された最も低い出現率である2.3%を有する。それにもかかわらず、タンパク質翻訳の際には、メチオニンはすべての真核生物タンパク質のN末端位置に見出される。Met残基は、以下で述べるように、タンパク質の構造および機能を保護する。メチオニンは必須アミノ酸であるため、ヒトは摂取する必要がある。
【0006】
Metの酸化および皮膚老化
タンパク質において、メチオニン残基の含硫側鎖は、タンパク質の環境中で活性酸素種(ROS)による酸化を受ける。ROSによるメチオニンの酸化は、メチオニンスルホキシド(MetO)をもたらし、これは以下の構造を有する:
【化2】
【0007】
硫黄原子は二重に酸化される場合があり、メチオニンスルホン(MetO2)がもたらされる。メチオニンスルホンは、強力で生物学的に不可逆性の酸化剤であり、生物学的に還元可能な、より穏やかなメチオニンスルホキシドとは区別される。本明細書の全体にわたって、酸化型メチオニンへの言及は、メチオニンスルホンではなく、メチオニンスルホキシドを指す。
【0008】
タンパク質がメチオニン残基で酸化され、このメチオニンが該タンパク質の機能および/または構造に重要である場合、タンパク質活性が傷害される場合がある。タンパク質の酸化は様々な疾患に関連付けられており、それに含まれる皮膚老化では、これが主な原因であることが明らかになっている。例えば、「The Repair Enzyme Peptide Methionine-S-Sulfoxide Reductase Is Expressed In Human Epidermis and Upregulated by UVA Radiation」(Ogawa et al. Journal of Investigative Dermatology (2006) 126, 1128-1134、;2006年3月2日にインターネットで公開;その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。この中で、「酸化型タンパク質の蓄積は、細胞老化の特徴であると考えられる」、および「MetOを還元する能力は、ROSの存在下で細胞が生存し続けるために必須であると思われる」と述べられている。さらに、現在では、日光への曝露が、ヒト皮膚でのROS形成の著明な要因であることが知られている。
【0009】
メチオニンスルホキシドレダクターゼ
メチオニンアミノ酸残基の酸化が、細胞内に存在するメカニズムを介して、ヒト皮膚においてさえも可逆的であることは、よい知らせである。酸化されたペプチドは、修復することができる。メチオニンスルホキシドの還元は、メチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)によって触媒され、これは大部分の細胞で見出される抗酸化酵素である。Msrの役割についてのこの理解から、タンパク質表面に露出されたメチオニン残基とMsrとが、細胞中での活性酸素種(ROS)を調節する酸化還元サイクルを形成するという学説が浮上してきた。すなわち、タンパク質のMet残基は、細胞中の活性酸素種のスカベンジャーとして作用する内在性の抗酸化剤であり、Msrは酸化されたメチオニンを有効な形態に還元する。つまり、タンパク質表面でのメチオニン酸化は、単にランダムな損傷というわけではなく、酸化ストレスの影響を軽減するシステムの一部分である。
【0010】
Msrには、MsrAおよびMsrBと呼ばれる2つの形態がある。MsrAは、MsrのS立体異性体の還元に関与し、MsrBは、R立体異性体の還元に関与する。図1は、メチオニンスルホキシドのメチオニンへの還元でのMsrAの役割を模式的に示している。
【0011】
表皮ケラチノサイトでのMsrA活性の存在が、2003年に本出願人により実証された。それとは別に、初代培養正常ヒト表皮ケラチノサイトおよびHaCaT細胞、ならびに被験体のヒト表皮で、MsrA活性の存在が2006年にOgawaらにより報告された(上記の参考文献)。両方のグループがRT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いた。Ogawaは、初代培養ヒトケラチノサイトおよびHaCaT細胞での顕著なMsrA活性を報告した。さらに、Ogawaは、MsrAが、角化表皮層(すなわち、角質層)または真皮層ではなく、ヒト皮膚の有核表皮層で選択的に見出されることを報告した。つまり、皮膚細胞をはじめとする細胞内では、Msr酵素はタンパク質機能を調節しており、欠陥のある、機能不全タンパク質の蓄積を防止する。
【0012】
Msrダウンレギュレーションは組織老化に関連する
タンパク質を修復するMsrメカニズムにもかかわらず、タンパク質中のMetOの量は加齢に伴い増加することが示されている。このことは、Msr系が加齢と共に減弱していくことを示唆する。Stadtmanら(Methionine Oxidation and Aging; Biochimica et Biophysica Acta - Proteins & Proteomics; Volume 1703, Issue 2, 2005年1月17日 (2004年9月9日からインターネットで入手可能), 第135〜140頁)により以下のことが指摘されている:
「MetOレベルの変化は、以下のものをはじめとする多数の異なるメカニズムのうちいずれか1以上での変化を反映している可能性がある:(i) ROS生成速度の増加;(ii)抗酸化能力の低下;(iii)酸化型タンパク質を選択的に分解するタンパク質分解活性の低下;または(iv) Msr酵素レベルの直接的な低下によるかまたは関与する還元性等価物(チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、NADPH生成)の能力の低下が間接的に原因となる、MetO残基をMet残基に変換する能力の低下。Msr活性の重要性は、加齢が多くの動物組織でのMsr活性の低下を伴うという事実、およびMsrレベルの低下をもたらすマウスでの突然変異が最高寿命の低下をもたらし、Msrの過剰発現は最高寿命の劇的な上昇をもたらすという事実により強調される。」
【0013】
つまり、加齢はMsrダウンレギュレーションをもたらし、Msrダウンレギュレーションは組織老化をもたらす。近年、多数の病理学的障害がMsr活性の低下と関連付けられている。これらには、アルツハイマー病およびパーキンソン病、白内障、白斑、α1-アンチトリプシン関連障害(すなわち、気腫、皮膚老化)および寿命の短縮が含まれる。
【0014】
MsrダウンレギュレーションはH2O2に関連する
白斑患者の表皮細胞での過酸化水素H2O2の蓄積は、Msr酵素の発現低下と関連付けられている。逆に、白斑患者での上昇したH2O2レベルを人工的に低下させた場合、Msr発現が回復し、健常皮膚のレベルに近づいた。また、H2O2により引き起こされる酸化ストレスは、白斑患者での、Msr酵素の活性低下、およびMetOからMetへの還元能力の低下に関連付けられている。さらに、H2O2の存在下(白斑患者の皮膚でのものである必要はなく、単にH2O2の存在下)でのMsrAおよびMsrB(特にMsrA)の活性低下も実証されている(Schallreuter et al., “Methionine Sulfoxide Reductases A and B Are Deactivated by Hydrogen Peroxide (H2O2) in the Epidermis of Patients with Vitiligo”; Journal of Investigative Dermatology (2008) 128, 808-815; 2007年10月18日にインターネットで公開)。
【0015】
つまり、Msrレベルの低下およびMsr活性の低下は、H2O2レベルの上昇と関連している。酸化ストレスの増加はMsrレベルの低下と関連している。
【0016】
Msrアップレギュレーション
Ogawaらは、UVA光への曝露が、表皮でのMsrA発現を顕著に増加させることを示した。この作用は、培養HaCaT細胞でも見られた。UVAに対する応答は、時間依存的、線量依存的かつ波長依存的に生じた。同様に、Ogawaらは、低濃度の過酸化水素に反応して、培養HaCaT細胞でMsrAのアップレギュレーションが生じたことを報告している。
【0017】
一方で、Ogawaらにより報告されているように、低線量のUVBは、曝露後72時間以内に、HaCaT細胞でMsrAをダウンレギュレートすることが観察された。UVB曝露は表皮での過酸化水素生成を引き起こす傾向があるので、これは奇妙である。つまり、UVBと過酸化水素とは同様の作用を有すると予想されていた可能性がある。白斑患者で過酸化水素がMsrをダウンレギュレーションしているようであるという、上述のSchallreuterらの知見により、状況はさらに混乱させられている。Msrに関して、表皮での過酸化水素の役割および表皮に対するUVB曝露の作用は、今のところ完全には理解されていないというのが本出願人の意見である。
【0018】
日焼けにより損傷した皮膚細胞
本明細書の全体にわたって、UVBとは280〜320nmの波長を意味し、UVAとは320〜450nmの波長を意味すると理解することができる。日光は、直接的損傷および間接的損傷と呼ばれる2種類の様式のいずれかで皮膚に損傷(ダメージ)を与える。直接的損傷では、皮膚中のDNAが、スペクトルのUVB部分からの光子を直接吸収する。それより少ない程度で、DNAはUVA光子も吸収する。この吸収は、DNA配列中での突然変異を引き起こす可能性があり、これが皮膚細胞内での応答を惹起する。応答としては、日焼け細胞(Sunburn Cell)の形成およびメラニンの生成が挙げられる。メラノーマの全発生数のうち8%のみが、直接的なDNA突然変異に起因する。
【0019】
対照的に、間接的損傷は、紫外線光子が皮膚に侵入し、発色団に吸収されたときに生じる。励起状態では、発色団は、活性酸素種の形成をもたらす反応に入る。例えば、ヒト皮膚では、UVB曝露は過酸化水素の生成に関連し、UVAは一重項酸素の生成に関連する。皮膚が、活性種を中和することによって恒常性を維持することができない場合には、活性種は、(例えばメチオニン部位での)酸化を介して皮膚細胞DNAおよびタンパク質に損傷を与えるであろう。DNAおよびタンパク質に対するこの損傷は、酸化ストレスと呼ばれ、皮膚老化の主要因である。さらに、メラノーマの全発生数のうち92%が、間接的な、酸化的DNA損傷に起因する。
【0020】
残念なことに、一部の日焼け止め剤は皮膚に浸透し、活性酸素種の形成に顕著に寄与する場合があることが明らかになっている。例えば、
「有核表皮で生成されるUV誘導(20mJ cm-2)活性酸素種(ROS)の数は、UVフィルターであるオクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、またはベンゾフェノン-3が皮膚表面に留まっている時間の長さに依存する。・・・それぞれのUVフィルターが、t=20分間、皮膚表面に留まった後、対照で生成される数は下回るものの、生成されるROSの数は増加する。t=60分までに、フィルターは対照を上回るROSを生成する。3種類すべてのUVフィルターが有核層に浸透した場合、ROSのレベルは、UV照射のもとで表皮発色団により天然に生成されるレベルを上回ることがデータにより示されている。」(Hanson Kerry M.; Gratton Enrico; Bardeen Christopher J. (2006). "Sunscreen enhancement of UV-induced reactive oxygen species in the skin". Free Radical Biology and Medicine 41 (8): 1205-1212)。
【0021】
つまり、一部の日焼け止め剤の使用が、メラノーマの発生数の増加および他の酸化的損傷に寄与してきたことが示唆されてきた。本発明は、一部の日焼け止め剤からの酸化的損傷のリスクなしに、UV曝露の損傷作用を低減させる。実際には、本発明は、皮膚タンパク質の酸化的損傷を逆転させる。
【0022】
皮膚浸透
角質層は、局所的に塗布された物質に対する主要な浸透バリアの典型である。角質層は、非常に特殊化した組織で、脂質マトリックスに包まれた、約20の角質細胞の層からなる。角質細胞は密に詰まっており、その間の空間は、ラメラ二重層の秩序立った構造により満たされている。角質層は、皮膚を通した親油性物質および親水性物質の通過を調節する。多くの因子が、ある特定の化合物が角質層を通過できるかどうか、および生存中の表皮細胞のより深い層まで通過する速度を決定している可能性がある。それらの因子の一部としては、分子のサイズ、極性および溶解性、皮膚の年齢および状態、浸透促進剤の使用、ならびに皮膚を通過する経路が挙げられる。
【0023】
サイズに関して、分子の分子量が約600ダルトンを超えて増大するにつれ、該分子が角質層に浸透するのはより困難になることが経験により示されている。皮膚のタイプおよび健康状態に応じて、一部の情報源ではこのカットオフ値が若干低く設定されている。例えば、ある情報源は、「無傷の皮膚を通って浸透できる最大の分子は、分子量500を有する」と示唆している(“Routes for Skin Penetration”, N. Dylan, Cosmetiscope Technical Notes 0504; 2009年3月4日にhttp://www.nyscc.org/cosmetiscope/archive/tech0504.htmlにアクセス)。したがって、600ダルトンは皮膚浸透に対する絶対的なカットオフ値では決してない。より大きな分子が皮膚に浸透する場合がある。それにもかかわらず、約600ダルトンを超えて増大すると、化粧用として許容される手段による角質層の通過は徐々に困難になっていく。つまり、皮膚に浸透させるための担体分子を設計する場合、約606ダルトンの分子量を有する分子を用いることは、自明ではないであろう。極性に関して、一般的には、カチオン性分子種はアニオン性分子種よりも良好に皮膚に浸透する。溶解性に関して、親油性化合物は、親水性化合物よりも速く角質層に浸透する傾向がある。
【0024】
局所的に塗布された化合物が角質層に侵入し、それを通過する能力は、皮膚のバリア抵抗を可逆的に低下させる公知の浸透促進剤により改善することができる。多数の化合物が浸透促進活性について評価されており、そのようなものとしては、スルホキシド(すなわち、ジメチルスルホキシド、DMSO)、アゾン(すなわち、ラウロカプラム)、ピロリドン(すなわち、2-ピロリドン、2P)、アルコールおよびアルカノール(すなわち、エタノールまたはデカノール)、グリコール(すなわち、プロピレングリコール)、界面活性剤およびテルペンが挙げられる。これらの群の浸透促進剤は、様々な作用様式および皮膚バリアを通過する様々な浸透チャンネルを代表する。バリア浸透を促進する非化学的手段としては、物理的技術(すなわち、イオントフォレシス、ソノフォレシス)、酵素的技術(角質層脂質の一部を変化させる)および小胞状担体(すなわち、リポソーム、ニオソーム等)の使用が挙げられる。
【0025】
α1-アンチトリプシン欠損症
α1-アンチトリプシン欠損症は、血液および肺におけるα1-アンチトリプシン(A1AT)活性の低下をもたらす遺伝的障害である。エアロゾル化A1ATの使用の研究が進行中であることに注目するのは興味深い。エアロゾル化A1ATは、下気道に到達させる目的で、肺に吸入させる。吸入されたA1ATが、肺内の損傷したエラスチン線維に到達するかどうかはまだわかっていない(“Alpha 1-antitrypsin deficiency”, http://en.wikipedia.org/wiki/Alpha_1-antitrypsin_deficiencyの記事を参照されたい(最終更新:2009年3月28日))。この記事は、肺内でMsrをアップレギュレートするためのC末端メチオニンスルホキシド残基を有するペプチドの使用を、開示も示唆もしていない。この記事は、C末端メチオニンスルホキシド残基を有するエアロゾル化ペプチドを、開示も示唆もしていない。
【0026】
本発明以前には、本出願人は、日光への曝露前に塗布した場合に、Msrアップレギュレーションを介して皮膚を保護する、化粧用として許容される局所用組成物は知らなかった。本出願人らは、末端メチオニンスルホキシドを有するペプチド(具体的には、分子量約600以下のペプチド)を含む化粧用として許容される局所用組成物を開示する先行技術を知らなかった。本出願人らは、末端メチオニンスルホキシドを含むペプチドを皮膚に塗布するステップを含む、UV光の損傷作用を低減させる化粧用として許容される方法を知らなかった。
【発明の概要】
【0027】
C末端に酸化型メチオニンを含有する短鎖ポリペプチドは、生存皮膚モデルで日焼け細胞の生成を阻害すること、およびメチオニンスルホキシドレダクターゼをアップレギュレーションすることが示される。化粧用として許容される組成物および該ポリペプチドの使用方法が開示される。さらに、酸化型ペプチドが酸化型α1-アンチトリプシンを修復できることが推測され、これは次にエラスターゼによる結合組織の分解を阻害する。この作用は、例えば、日焼けにより損傷した皮膚の修復および気腫の治療をはじめとする、広範囲の効果を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】メチオニンスルホキシドのメチオニンへの還元でMsrAが果たす役割を模式的に表す図である。
【図2a】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す図である。
【図2b】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す図である。
【図3】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導細胞死に対するMsrの作用を示す図である。
【図4】正常ヒト表皮ケラチノサイトでのMsrアップレギュレーションに対する酸化型ペプチド(MetO-エンケファリン)の正の効果を示す図である。
【図5】UVB照射により引き起こされる日焼け細胞生成に対するMetO-エンケファリンの阻害効果を示す図である。
【図6】UVB照射により引き起こされる日焼け細胞生成に対するMetO-エンケファリンの阻害効果を示す図である。
【図7】表皮細胞でのMetO-エンケファリンの低い細胞毒性を示す図である。
【図8】α1-アンチトリプシンがエラスターゼ活性を阻害することを示す図である。
【図9】酸化型α1-アンチトリプシンがエラスターゼ活性を阻害できないことを示す図である。
【図10】α1-アンチトリプシンのエラスターゼ阻害活性が、酸化型α1-アンチトリプシンを還元するMsrAにより回復させることができることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書の全体にわたって、「含む」(comprise)およびその活用形は、制約のないものであり、群、リスト、集合または組成が、明確に指定された項目に限定されないことを意味するものと解釈されるべきである。
【0030】
慣用のRT-PCRによりケラチノサイトにおいてメチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)の存在を確認した後、細胞毒性のない様式で、この酵素をアップレギュレートする方法を用いて実験を開始した。最初に試した物質は酸化型メチオニン(スルホキシド型)であったが、結果は、ハウスキーピング遺伝子に対するMsrの比は上昇させることができなかったことを示した。しかしながら、これらの実験で、酸化型ペプチドは非常に良好な結果をもたらした。
【0031】
本発明は、部分的には、以下の知見に基づく:1. MsrがNHEKでUVB誘導過酸化水素を阻害し、細胞生存率を改善させる;2. メチオニンスルホキシド(MetO)は、それ自体ではMsrを顕著にアップレギュレートしない;3. C末端メチオニンスルホキシドを有する低分子量ポリペプチドが、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)でMsrをアップレギュレートできる;4.このポリペプチドの非酸化型は、Msrを顕著にアップレギュレートしない;5. Msrのアップレギュレーションに加えて、酸化型ポリペプチドは、UVB照射生存皮膚モデルでの日焼け細胞の形成の阻害に有効である;6. 酸化型ポリペプチドを用いると、細胞毒性のない様式でMsrがアップレギュレーションされる。続いて、これらのそれぞれについて述べる。
【0032】
1. Msrは、NHEKにおいて内在性過酸化水素およびUVB誘導過酸化水素を阻害し、細胞生存率を改善させる
図2aおよび図2bは、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)での内在性過酸化水素およびUVB誘導過酸化水素に対するMsrの作用を示す。NHEKは、示した濃度のMrs中でプレインキュベートした。インキュベーション後、一部の細胞をUVB(20mJ/cm2)に曝露した。グラフに示されているように、内在性過酸化水素レベルの著明な低下およびUVB曝露に起因する過酸化水素形成の著明な減少が見られた。MsrがUVB誘導H2O2を阻害するならば、本明細書中に記載される方法によるMsrのアップレギュレーションを、予防対策として、酸化ストレスの開始前に用いることができると推測された。Msrが内在性H2O2を減少させるならば、本明細書中に記載される方法によるMsrのアップレギュレーションが、ケラチノサイトに関して、老化防止であることが確立される。つまり、皮膚への酸化型ペプチドの送達は、老化防止スキンケアに対する新規なアプローチを構成すると考えられる。
【0033】
図3は、正常ヒト表皮ケラチノサイトでのUVB誘導細胞死に対するMsrの作用を示す。NHEKを、示した濃度のMsr中で4時間プレインキュベーションし、続いて、種々のレベルのUVBに曝露した。グラフに示されているように、UVB曝露の結果としての細胞死率(%)は、無処理対照と比較して有意に低下する。この結果は、試験したすべてのレベルのUVB曝露およびMsr濃度で観察される。
【0034】
2. 酸化型メチオニン(MetO)は、それ自体ではNHEKにおいてMsrを顕著にアップレギュレートしない
2003年8月付近に、慣用のRT-PCRによりケラチノサイトでのメチオニンスルホキシドレダクターゼ(Msr)の存在を確認した後、細胞毒性のない様式で、この酵素をアップレギュレートする方法を用いて実験を開始した。最初に試した物質は酸化型メチオニン(スルホキシド型)であった。しかしながら、結果は、ハウスキーピング遺伝子と比較して、Msrのレベルは顕著には上昇しなかったことを示した。本出願人らは数回にわたって試したが、2004年2月までに、この酸化型アミノ酸はケラチノサイトにおいてMsrを誘導しないであろうことが明らかになった。比較的大型のタンパク質である酸化型ウシ血清アルブミンも試したが、成功しなかった。しかしながら、2004年2月に行なった実験で、酸化型ポリペプチドが非常によい結果をもたらした。この方針に沿って、研究を続けた。
【0035】
3. C末端メチオニンスルホキシドを有する低分子量ポリペプチドは、正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)において、Msrをアップレギュレートできる
本発明の酸化型ペプチドの例は、以下の配列によって表される:
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
このポリペプチドは、約606の分子量を有し、C末端メチオニン残基で酸化されている。
【0036】
このペプチドの非酸化型は、Met-エンケファリン(CAS番号:58569-55-4;C27H35N5O7S)として知られている。
【化3】
【0037】
Met-エンケファリンは、573.6611g/モルのモル質量を有する、ペンタペプチド神経伝達物質である。Met-エンケファリンは、身体における痛みおよび痛覚(侵害受容)を調節する。
【0038】
「MetO-エンケフェリン」とは、Met-エンケファリンの酸化型を意味し、これは、配列番号1に示されているように、C末端メチオニン残基の硫黄で酸化されている。
下記では、MetO-エンケフェリンが、正常ヒト表皮ケラチノサイトでMsrをアップレギュレートすることを実証する。NHEK細胞を、培養培地中(対照)および酸化型ペプチドを含有する培養培地中および非酸化型ペプチドを含有する培養培地中(対照)で一晩インキュベートした。酸化型ペプチドの濃度(mg/mL)としては、0.01、0.1および0.25を含めた。非酸化型ペプチド(すなわち、Met-エンケファリン)は、0.25mg/mLでのみ試験した。インキュベーション後、細胞からmRNAを抽出し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってcDNAを調製した。β-ミクログロブリンを対照として、ゲル電気泳動を用いてサンプルをMsrについてプローブした。結果を図4に示す。Msr発現の平均増加は、酸化型ペプチド濃度0.01%、0.1%および0.25%について、それぞれ18%、28%および25.4%であった。この結果をウエスタンブロッティングにより確認したところ、酸化型ペプチドを用いて処理した細胞でMsr mRNAの増加を示した。
【0039】
4. 非酸化型ポリペプチドは、NHEKにおいてMsrを顕著にアップレギュレートしない
図4からも見て取れるように、非酸化型ペプチドは、Msr発現に顕著な増大を引き起こさなかった。さらに、この結果をウエスタンブロッティングにより確認したところ、非酸化型ペプチドを用いて処理した細胞でMsr mRNAの顕著な増加を示さなかった。
【0040】
5. 酸化型ポリペプチドは、UVB照射生存皮膚モデルでの日焼け細胞の形成を阻害するのに有効である
UVB照射生存皮膚モデルに対するMetO-エンケファリン酸化型ペプチドの作用を、日焼け細胞(SBC)の生成を調べることにより評価した。
【0041】
方法:EpiDerm Full Thickness 200(EFT200)生存皮膚モデルをMatTek社から入手し、1mg/mlのMetO-エンケファリンを含む又は含まない培地中で48時間インキュベートした。酸化型ペプチドは、室温で保存することができる。ペプチドは既に酸化されているので、保存中には比較的低い反応性を有する。2mlの培地を生存皮膚モデルの下に添加した。生存皮膚モデルは、トランスウェルメンブレン上に配置して、気/液界面の維持を可能にした。48時間後、生存皮膚モデルを100mJ/cm2のUVBに曝露し、再び栄養供給し、一晩インキュベートした。次の日、サンプルを10%ホルマリンで固定し、組織学的切片作製およびH&E染色のためにParagon Bioservices社に送付した。各切片に対して5箇所の連続する顕微鏡視野について、SBCおよび非日焼け細胞の数を計数し、SBCを総細胞数に対するパーセンテージで表すことにより、SBCの存在に関して評価した。日焼け細胞は、細胞質の好酸性染色および濃縮した核(染色体凝集)により特徴付けられる。
【0042】
結果:1mg/mlのMetO-エンケファリンを用いて処理したサンプルでの日焼け細胞の生成は、著明に減少した。同じ実験の2回の別々の実施の結果を、それぞれ図5および6に示す。両方の実験からのSBCの平均減少%は、31.1%であった。つまり、UVB照射の有害作用に対するかなりの程度の保護が、MetO-エンケファリンペプチドにより実証された。
【0043】
観察された日焼け細胞形成の減少は、ペプチドによるUVBの吸収に起因するものであろうかという疑問が生じた。答えはもちろん「いいえ」である。MetO-エンケファリンのUVスペクトルは、水とほぼ同じである。290nmでは、k値0.24および吸光係数145.5と表される吸収が見られる。しかしながら、この吸収はわずかなもので、したがってペプチドによる吸収は、SBCの発生率の低下に顕著に寄与しなかった。さらに、ペプチドは生存皮膚モデルの下に添加され、曝露は、約300nm未満のすべてのUV照射を効率よくフィルターするポリスチレン製のフタを有する6ウェルプレート中で行なった。つまり、MetO-エンケファリンペプチドは、放射の吸収以外の機構によって、UVB照射の有害作用から正常ヒト表皮ケラチノサイトを保護すると結論付けることができる。いかなる理論に拘泥することも望まないが、UVB照射がMetOの細胞内濃度を上昇させ、MetO-エンケファリンがMsrをアップレギュレーションし、これが続いてUVB誘導MetOをMetに還元すると考えられる。
【0044】
6. 酸化型ポリペプチドを用いると、Msrが細胞毒性のない様式でアップレギュレーションされる
図7は、ケラチノサイトでの、様々な濃度のMetO-エンケファリンの細胞毒性(またはその欠如)を示す。これらの結果は、酸化型ペプチドとのインキュベーションに続いてケラチノサイトで観察された作用が、細胞毒性によるものではなかったことも実証する。
【0045】
C末端メチオニン残基でそれ自体が既に酸化されている小分子メチオニン含有ポリペプチドが、観察された作用を有するであろうことは、予期されたものではなく、また先行技術において推測されてもいなかった。酸化型メチオニン自体はMsrをアップレギュレートできないことから、このことはまさに真実である。まとめると、データから、MetO-エンケファリン酸化型ポリペプチドはMsrをアップレギュレートすること、SBC形成を減少させ、かつH2O2生成を阻害することによりUVBストレスから生存皮膚モデルを保護すること、そして、皮膚でのエラスターゼ誘導性損傷を低減させること、白斑患者においてMsrレベルを上昇させることが示唆される。
【0046】
Msrによる酸化型α1-アンチトリプシンの修復およびエラスターゼの阻害
潜在的に広範囲の因果関係を伴って、酸化型α1-アンチトリプシン(A1ATとも称される;α1プロテイナーゼインヒビター、A1PIとも称される)を修復するために、Msrが初めて用いられた。肝臓で産生されるセリンプロテアーゼインヒビターであるA1ATは、トリプシンだけでなく、様々な種類のプロテアーゼを阻害する。例えば、A1ATは、炎症事象の間に放出される酵素の作用から組織を保護する。そのような酵素の1つは、エラスターゼである。
【0047】
エラスターゼは、エラスチンを分解するプロテアーゼである。エラスチンは、すべての結合組織の2つの主成分のうちの1つである。エラスターゼが抑制されないと、やがて、罹患組織の部位および機能に応じて、様々な結合組織病変が生じ得る。例えば、過剰なエラスターゼ活性は、一部の例を挙げれば、皮膚のたるみおよび弾性線維症;肺気腫または慢性閉塞性肺疾患;ならびに肝硬変をもたらす場合がある。
【0048】
正常な状態では、α1-アンチトリプシン(A1AT)が、エラスターゼを不活性型に維持することにより好中球エラスターゼの活性を抑制する。A1ATは、そのメチオニン358残基を用いてエラスターゼに結合することによりこれを行なう。しかし、A1ATがそのメチオニン358残基で酸化された場合、A1ATの結合機能は損なわれ、結合組織の過剰な分解が結果として起こる。A1ATのメチオニン358残基の酸化は、細胞内過酸化水素レベルの上昇、炎症、喫煙および酸化ストレスに関連付けられている。α1-アンチトリプシンを補充する方法が必要とされる。有利なことに、Msrが酸化型α1-アンチトリプシンを修復し、エラスターゼ阻害を回復させるようであることが観察されている。
【0049】
方法:Molecular Probes社から入手したエラスターゼアッセイを用いて、α1-アンチトリプシンを用いた阻害に合わせて改変した。CytoFluorプレートリーダーで、485nmでの励起および525nmでの発光により蛍光を測定した。
【0050】
結果:実験の第1ステージでは、エラスターゼ活性がα1-アンチトリプシンにより阻害されることを実証する。これは、0.1mg/mlエラスチンおよび0.05単位/mlエラスターゼを用量依存的にα1-アンチトリプシン(2.5〜50μg/サンプル)とインキュベートすることにより実施した。結果を図8に示し、ここで、con=対照;E=エラスターゼ;I=インヒビター(アッセイに含めた);AT=α1-アンチトリプシンである。α1-アンチトリプシンの濃度が増加するにつれ蛍光が減少し、これはエラスターゼのより強力な阻害を示す。
【0051】
実験の第2ステージでは、過酸化水素(H2O2)は、α1-アンチトリプシンがエラスターゼを阻害する能力を妨げることを実証する。これは、10μgのα1-アンチトリプシンを過酸化水素で酸化することにより行なった。図9は、周囲温度で3時間インキュベートした5、10および30ミリモル濃度(mM)のH2O2が、用量依存的にα1-アンチトリプシンを阻害することを示す。30mMのH2O2で、α1-アンチトリプシンによりもたらされるほぼすべてのエラスターゼ阻害が失われる。
【0052】
実験の第3ステージでは、α1-アンチトリプシンの酸化を、MsrAにより逆転させることができることを実証する。これは、30mM H2O2で酸化させたA1ATを、0.7mg/ml MsrAおよび10mM DTTと共に2時間インキュベートすることにより実施した。続いて、サンプルを、適切な対照(DTT単独、Msr単独等)(効果はなかった)と並行して、エラスターゼ活性アッセイで上記と同様に再びアッセイした。図10は、この実験の結果を示す。100%エラスターゼから開始する。上記と同様、α1-アンチトリプシン(AT)は、エラスターゼ活性のうち約90%を除去する(エラスターゼ+ATと表示されたバー)。α1-アンチトリプシンを酸化した後、エラスターゼ活性はすべて元に戻る(エラスターゼ+AToxと表示されたバー)。最後に、図10の右端のバーは、0.7mg/mLのMsrAが、エラスターゼ活性のうち59%超の再阻害をもたらしたことを示す。つまり、MsrAは、酵素的精度で、酸化型α1-アンチトリプシンに対するエラスターゼ阻害を著明に回復させることができた。
【0053】
Msrは酸化型α1-アンチトリプシンを修復するので、MetO-エンケファリン酸化型ペプチドを用いて、表皮Msrをアップレギュレーションすることにより、皮膚に対するエラスターゼ誘導性損傷を低減させることができることが予測される。治療の必要がある被験者の皮膚にMetO-エンケファリンを送達し、吸収させると、MetO-エンケファリンがMsrをアップレギュレートし、これが酸化型α1-アンチトリプシンを修復するであろう。修復されたα1-アンチトリプシンは、エラスターゼによる結合組織分解を停止するであろう。
【0054】
同様に、MetO-エンケファリンは、α1-アンチトリプシンのメチオニン358残基の酸化を含むいかなる状態または病変でも有用であると予想することができる。例えば、MetO-エンケファリンは、気腫の治療において有用であり得ることが予想される。例えば、MetO-エンケファリンは、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患に対する治療が必要な被験者により吸入されて、エアロゾルビヒクル中で下気道に送達することができる。気道では、MetO-エンケファリンはMsrをアップレギュレートすることができ、続いてこれが、酸化型α1-アンチトリプシンを修復するであろう。修復されたα1-アンチトリプシンは、エラスターゼによる結合組織分解を停止するであろう。
【0055】
さらに、MetO-エンケファリンを送達することができるいずれの組織でも、MetO-エンケファリンは一般的にMsrのアップレギュレーターとして有用であり得ることが予想される。
【0056】
組成物
本明細書中に記載される酸化型ペプチドの利点は、化粧用としてまたは製薬上許容される基剤および1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を皮膚に塗布することにより実現されると期待される。酸化型ペプチドは、MetO-エンケファリンであり得る。酸化型ペプチドの「有効量」とは、所与の皮膚表面積にわたって、所定のレベルの酸化的組織損傷を予防するのに十分な量のMsrをアップレギュレーションするのに十分な量である。有効量は、酸化型ペプチドの濃度が、調製物の0.01重量%ほども低い場合に、実現することができる。したがって、消費者により典型的に塗布される平方センチメートルあたりの局所用調製物の平均量は、有効量の酸化型ペプチドを容易に含むことができる。
【0057】
MetO-エンケファリン酸化型ペプチドは、ユーザーの皮膚への局所的塗布に好適な化粧用として許容される広範囲の製剤に組み込むことができる。成分、組成物の剤形および製造方法に対する第1の主な制約は、最終製品が、上記の「有効量」の酸化型ペプチドを含有しなければならないということである。第2の主な制約は、最終製剤が、Msrをアップレギュレーションするかまたは日焼け細胞の形成を阻害する酸化型ペプチドの能力を、許容できないレベルまで低下させてはならないということである。
【0058】
一般的に、当技術分野で通常の技能を用いれば、酸化型ペプチドを水性または非水性組成物に組み込むことが可能であろう。水性組成物は、エマルジョン剤、液剤、懸濁剤、分散剤、スティック剤、ゲル剤またはエアロゾル剤の形態であり得る。エマルジョン剤の形態である場合、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンであり得る。組成物のすべての水性の形態が、最小量から最も好ましい量の、以下の範囲の水を含有することができる:約:1〜99%、5〜99%、1〜90%、10〜99%、5〜90%、1〜85%、5〜85%、10〜90%、および10〜85%。油が存在する場合、1〜99%、好ましくは約5〜90%、より好ましくは約5〜75%の油が存在する。
【0059】
組成物は、ほとんどいかなる化粧用として許容される成分でも含有することができる。例えば、日焼け止め剤を含有することができる。日焼け止め剤としては、化学的UVAもしくはUVB日焼け止め剤または微粒子状の物理的日焼け止め剤が挙げられる。存在する場合、日焼け止め剤は、約0.1〜50%、好ましくは約0.5〜40%、より好ましくは約1〜35%の範囲であり得る。しかしながら、所定のレベルの保護のためには、上記のMetO-エンケファリンにより与えられる保護のために、日焼け止め剤の量を減らすことが可能である場合がある。他の追加の成分としては以下のものが挙げられる:保湿剤(すなわち、グリコール、糖);界面活性剤(すなわち、シリコーン系または有機系;存在する場合、界面活性剤は、組成物全体のうち、約0.001〜30重量%、好ましくは約0.005〜25重量%、より好ましくは約0.1〜20重量%の範囲であり得る);生物学的材料(細胞RNAもしくはDNAの断片、またはプロバイオティクス微生物;存在する場合、そのような材料は、約0.001〜30%、好ましくは約0.005〜25%、より好ましくは約0.01〜20%の範囲であり得る);構造化剤(structuring agent);油(すなわち、揮発性および不揮発性、シリコーンおよび非シリコーン);ビタミン;抗酸化剤;皮膚活性化剤その他。
【0060】
使用方法
本発明の酸化型ペプチドは、酸化ストレスに起因する損傷を修復するために用いることができるか、または酸化ストレスに起因する損傷を予防するために用いることができる。
【0061】
修復:酸化ストレスに起因する皮膚損傷を修復するために、本発明の酸化型ペプチドを、損傷した皮膚に塗布することができる。酸化的に損傷された皮膚に対する治療を必要とする被験者の皮膚に投与された本発明の組成物は、Msrをアップレギュレーションし、これがC末端メチオニン残基で酸化された皮膚中のタンパク質を修復するであろう。アップレギュレーションされたMsrは、その358メチオニン残基で酸化されたα1-アンチトリプシン(A1AT)も修復することができる。したがって、本発明の第1の方法は、酸化型残基が、ケラチノサイトで見られるものなどの皮膚タンパク質中のものであるか、α1-アンチトリプシンでのものかにかかわらず、ヒト皮膚において酸化されたメチオニンアミノ酸残基の量を低下させる方法である。該方法は、酸化型メチオニンアミノ酸残基を有する皮膚に「有効量」のMetO-エンケファアリンを塗布するステップを含む。該方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を塗布するステップを含むことができる。
【0062】
予防:酸化ストレスに起因する皮膚損傷を予防するために、特定の酸化ストレスの開始前に本発明の酸化型ペプチドを皮膚に塗布することができる。例えば、海辺で1日を過ごそうと計画している場合、皮膚に塗布された本発明の組成物は、Msrをアップレギュレーションし、かつ/または日焼け細胞形成を阻害し、これにより、そうでなければUVAおよび/またはUVB曝露に起因して生じていたであろう損傷が低減されるであろう。したがって、本発明の第2の方法は、ヒト皮膚において酸化型メチオニンアミノ酸残基の量を維持する方法である。該方法は、酸化ストレスが開始されるリスクがある皮膚に、「有効量」のMetO-エンケファリン酸化型ペプチドを塗布するステップ;および、酸化型ペプチドの塗布ステップ後に、皮膚を該リスクに曝すステップを含む。該方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を塗布するステップを含むことができる。
【0063】
老化の徴候の減少:本発明の第3の方法は、皮膚老化の1種以上の徴候をある程度減少させる。この方法では、有効量のMetO-エンケファリン酸化型ペプチドを、皮膚老化の1種以上の徴候を現している皮膚の領域に反復して塗布する。反復塗布は、少なくとも皮膚で改善が観察されるまで、数日または数週間または数ヵ月または数年にわたって行なう。酸化型ペプチドは、所定のスケジュールに従って皮膚に塗布することができる(すなわち、1日1回以上、3週間;または1日おきに1日2回、6ヵ月間)。塗布は、老化の1種以上の徴候のある程度の減少が実現されるまで、行なうことができる。その後、塗布を停止するか、または老化の徴候の減少を維持するために変更することができる。この方法は、少なくとも約0.01重量%の濃度で酸化型ペプチドを含む組成物を定期的に塗布するステップを含むことができる。
【0064】
ある程度減少させることができる老化の徴候としては、限定するものではないが、すべての外見上見て取れ、かつ触ってわかる徴候、ならびに皮膚老化に起因するいずれかの他の肉眼的効果または微視的効果が挙げられる。そのような徴候は、内因性因子もしくは外因性因子(例えば、年齢による老化および/または環境的ダメージ)により誘導されるかまたは引き起こされる場合がある。これらの徴候としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる(酸化的タンパク質損傷により引き起こされる程度まで):しわなどの手触りの不均一性;皮膚弾力の低下(機能的皮膚エラスチンの低下および/または不活性化)、たるみ(目の周りおよび顎のむくみを含む)、皮膚硬度の低下、皮膚の緊張の低下、皮膚の変形からの反動の低下、弾性線維症、コラーゲン分解、および角質層、真皮、表皮での他の組織学的変化;変色(目の下のものを含む)、しみ、黄ばみ、皮膚領域の色素過剰(加齢によるしみおよびそばかすなど)、角化、分化異常、ならびに過剰角質化。
【0065】
α1-アンチトリプシン障害の治療
本発明の第4の方法は、α1-アンチトリプシンの358メチオニン残基の酸化に起因する障害を治療する。この方法では、有効量のMsrAまたはMetO-エンケファリンを、酸化型α1-アンチトリプシンタンパク質に送達する。例えば、該方法は、特に、MsrまたはMetO-エンケファリンが皮膚に吸収されるのを可能にするであろうビヒクル中で、そのような治療を必要とする被験者の皮膚にMsrAまたはMetO-エンケファリンを塗布するステップを含むことができる。障害は、皮膚または深部組織でのものであり得る。皮膚では、障害は、弾性線維症またはコラーゲンの分解により引き起こされる皮膚老化であり得る。
【0066】
本発明の組成物は、他の有利な皮膚に対する方法を含む皮膚処置レジメンの一部として塗布することができる。例えば、皮膚を洗浄し、化粧水で処置した後、本発明の組成物を塗布する。また、組成物は、例えば、洗浄剤、化粧水、ピーリング剤(exfoliant)、および本発明の組成物を含むキットの一部であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物。
【請求項2】
酸化型ペプチドのうち少なくとも1種が、
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約1〜99%が水である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
日焼け止め剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
酸化型メチオニン残基を有する皮膚に該組成物を塗布するステップ
を含む、ヒト皮膚において酸化型メチオニン残基の量を減少させる方法。
【請求項6】
酸化型メチオニン残基がケラチノサイト中のものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化型メチオニン残基が、α1-アンチトリプシンのメチオニン358残基である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
酸化ストレスが開始されるリスクがある皮膚に該組成物を塗布するステップ、および、塗布ステップの後に、
皮膚を該リスクに曝すステップ
を含む、ヒト皮膚において酸化型メチオニン残基の量を維持する方法。
【請求項9】
前記リスクが、UVAおよび/またはUVB光への曝露である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
少なくとも皮膚での改善が観察されるまで、皮膚老化の1種以上の徴候を示す皮膚領域に、該組成物を反復して塗布するステップ
を含む、皮膚老化の1種以上の徴候を減少させる方法。
【請求項11】
反復塗布を、所定のスケジュールに従って、数日または数週間または数ヵ月または数年にわたって行なう、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
皮膚老化の1種以上の徴候が、しわ、皮膚弾力の低下、皮膚硬度の低下、弾性線維症、コラーゲン分解、および色素過剰を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
α1-アンチトリプシン障害に罹患した組織でMsrAレベルを増大させるステップを含む、α1-アンチトリプシン障害の治療方法。
【請求項14】
罹患組織がヒト皮膚であり、かつ以下のステップ:
MsrまたはMetO-エンケファリンが皮膚に吸収されるのを可能にするであろうビヒクル中の、MsrAもしくはMetO-エンケファリンまたはその両方を皮膚に塗布するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組織障害が白斑である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組織障害が気腫である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
角質層に浸透することが可能であり、かつC末端メチオニンスルホキシド残基を有するペプチドを組織に塗布することによる、ヒト組織でMsrAをアップレギュレーションする方法。
【請求項18】
ペプチドの分子量が約606ダルトンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドが、6未満のアミノ酸残基を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが、
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
アップレギュレーションが表皮ケラチノサイトで生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物。
【請求項2】
酸化型ペプチドのうち少なくとも1種が、
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約1〜99%が水である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
日焼け止め剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
酸化型メチオニン残基を有する皮膚に該組成物を塗布するステップ
を含む、ヒト皮膚において酸化型メチオニン残基の量を減少させる方法。
【請求項6】
酸化型メチオニン残基がケラチノサイト中のものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化型メチオニン残基が、α1-アンチトリプシンのメチオニン358残基である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
酸化ストレスが開始されるリスクがある皮膚に該組成物を塗布するステップ、および、塗布ステップの後に、
皮膚を該リスクに曝すステップ
を含む、ヒト皮膚において酸化型メチオニン残基の量を維持する方法。
【請求項9】
前記リスクが、UVAおよび/またはUVB光への曝露である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
化粧品としてまたは製薬上許容される基剤および少なくとも0.01重量%の1種以上の酸化型ペプチドを含む組成物を用意するステップ;
少なくとも皮膚での改善が観察されるまで、皮膚老化の1種以上の徴候を示す皮膚領域に、該組成物を反復して塗布するステップ
を含む、皮膚老化の1種以上の徴候を減少させる方法。
【請求項11】
反復塗布を、所定のスケジュールに従って、数日または数週間または数ヵ月または数年にわたって行なう、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
皮膚老化の1種以上の徴候が、しわ、皮膚弾力の低下、皮膚硬度の低下、弾性線維症、コラーゲン分解、および色素過剰を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
α1-アンチトリプシン障害に罹患した組織でMsrAレベルを増大させるステップを含む、α1-アンチトリプシン障害の治療方法。
【請求項14】
罹患組織がヒト皮膚であり、かつ以下のステップ:
MsrまたはMetO-エンケファリンが皮膚に吸収されるのを可能にするであろうビヒクル中の、MsrAもしくはMetO-エンケファリンまたはその両方を皮膚に塗布するステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組織障害が白斑である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組織障害が気腫である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
角質層に浸透することが可能であり、かつC末端メチオニンスルホキシド残基を有するペプチドを組織に塗布することによる、ヒト組織でMsrAをアップレギュレーションする方法。
【請求項18】
ペプチドの分子量が約606ダルトンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドが、6未満のアミノ酸残基を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが、
Y - G - G - F - M-O (配列番号1)
Try - Gly - Gly - Phe - MetO
である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
アップレギュレーションが表皮ケラチノサイトで生じる、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−523436(P2012−523436A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504919(P2012−504919)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/030749
【国際公開番号】WO2010/120691
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/030749
【国際公開番号】WO2010/120691
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】
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