説明

メチルフェニデートで注意欠乏障害及び注意欠乏/活動亢進障害を治療する組成物及び方法

【課題】注意欠乏障害(ADD)及び注意欠乏/活動亢進障害(ADHD)を局所適用により治療する方法及び組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも10時間を越えて、メチルフェニデートを必要とする患者の皮膚又は粘膜への送達を実質的にゼロ−位のキネティックスで達成するのに充分な量でメチルフェニデートが存在する、柔軟で限定されたシステムにおけるメチルフェニデートを含む、メチルフェニデートを局所適用するための組成物及びそれを投与する治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも10時間にわたって実質的にゼロ−次のキネティックスを達成するのに充分な量で、調剤上受容可能な粘着性担体中のメチルフェニデートを局所適用することによって、注意欠乏障害(ADD)及び注意欠乏/活動亢進障害(ADHD)を治療する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注意欠乏障害(ADD)及び注意欠乏/活動亢進障害(ADHD)(以下、本明細書で個別的に及びまとめて“AD”という)は自己制御の発育障害である。これらの障害は注意持続時間、刺激制御及び活動レベルにおける問題より成る。これらの問題は、時間の経過に従って本人の行動を制御し、また将来の目的及び結果を心に留めておく個人の意志又は能力の機能不全に反映する。
従来から、大人と子供の両者におけるADの治療に選択する医薬としてメチルフェニデートが使用されてきており、それにはいくつかの理由がある。メチルフェニデートは、米国特許第2,957,880号に記載されており、中枢神経刺激薬である。アンフェタミンと相違はするが、メチルフェニデートの脳内での作用は同様である。現在市場で入手可能な剤形(リタリン(Ritalin)(登録商標)錠)及びその錠剤の有効な強度は、患者の覚醒時間の重要な部分を有効に治療するには不十分である。メチルフェニデートの作用持続時間は短く、約2〜4時間である。メチルフェニデートの放出制御錠剤は市場で入手可能であるが、これは一つの強度でのみ有効である。この製品は、子供が学校にいる間に錠剤を複数回投与することを避けるために、また一日の投薬を1回又は2回に減らすために設計されたものであり、患者の覚醒時間の重要な部分を有効に治療するには不十分である。
【0003】
現在ADHD用に使用されているメチルフェニデート療法は多数の欠点を示しており、それには即時放出型錠剤の血中値が変動すること;投薬回数が多いことに当然に伴う不便さがあること(例えば子供の投薬の時間及び/又は徴候を正確に監視することができないこと);幼児が錠剤全体を飲み下すことが困難であること;利用可能な錠剤の型が二つ、すなわち即時放出型錠剤と徐放性の錠剤しかなく、患者の覚醒時間中の重要な部分にBID(behavioral inhibition disorder; 行動抑制障害)投与が有効にできないこと;及び薬物の乱用の可能性があることなどがある。
薬物の局所適用には、常用の経口投与を越える多くの利点がある。利点としては、利用しやすさ、治療が中断されないこと、患者の服薬率が高いこと、中断が容易であること、肝臓による初回通過代謝が避けられること、薬物の血中濃度を高度に制御できること及び全体的に治療が改良されることがある。
“局所”又は“局所的に”という用語を本明細書では通常の意味で使用し、哺乳動物の点と直接接触することを意味しており、この点は解剖学的な部位又は表面領域であることができ、これらには皮膚若しくは粘膜又は硬化組織、例えば歯若しくは爪が含まれる。
【0004】
“適用”という用語は全身投与となるすべての態様を意味することを意図している。
“粘膜”又は“粘膜の”という用語を、本明細書では口、頬、膣、直腸、鼻、腸、及び眼の表面を意味するように使用する。
局所適用システムは多くの利点を有しているものの、周知の皮膚の障壁特性のために、多くの薬物が直ちにこの投与形態に適合するのではない。環境から無傷の皮膚を通って内部に移動する分子は、最初に角質層、すなわち皮膚の角質の外層及びその表面にあるすべての物質を透過しなければならない。次いで分子は、毛細血管壁を通過して全身系に入る前に、生きている表皮及び真皮乳頭を透過しなければならない。この過程で上記の組織のそれぞれは、同一分子に対して異なる透過抵抗性を示す。しかしながら、局所用組成物又は経皮投与された薬物に対して最も大きな障壁となるのは角質層であり、この層は細胞外脂質領域で分離された緻密なケラチン化した細胞の残余物の複合構造となっている。
【0005】
種々の薬物を経皮送達する手段を提供する局所適用システムが本技術分野で公知であり、それにはメチルフェニデートが述べられており、例えばQuan et al., 米国特許第5,601,839号に経皮送達システムが記載されている。8.0又はそれより大きいpKaを有する塩基性薬物が配送システムに取り込まれる。この剤形では透過強化剤としてトリアセチンの使用が必要である。Quan et al.はオキシブチニン、スコポラミン、フルオキセチン、エピネフリン、モルフィン、ヒドロモルフォン、アトロピン、コカイン、ブプレノルフィン、クロルプロマジン、イミプラミン、デシプラミン、メチルフェニデート、メタアンフェタミン、リドカイン、プロカイン、ピンドロール、ナドロール、及びカリソプロドールを好ましい“塩基性薬物”として挙げている。Bloom et al.,の米国特許第5,614,178号は、有効量の薬剤活性物質、高分子量架橋カチオン性ポリマー、非−イオン性界面活性剤、アルコキシル化エーテル及び調剤上受容可能な担体を含む局所送達組成物を開示している。Bloom et al.は局所送達システムに取り込む多数の異なる薬物を含んでいる。Lee et al.,の米国特許第5,629,019号は疎水性透過強化剤を含む経皮送達組成物を開示しており、ここではこの透過強化剤を不活性担体中で微小化しかつ安定化している。これらの組成物は生物学的に活性な物質を含むことができ、活性剤の皮膚又は粘膜に対する透過性を強化している。Lee et al.は経皮送達組成物に含むことができる有用な剤を100以上挙げている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、多くの異なる型の局所適用システムが本技術分野には存在するにもかかわらず、メチルフェニデートを患者に送達する方法の改良にたいする要望が引き続き存在する。従って、活性物質、本明細書ではメチルフェニデートを送達して少なくとも10時間にわたって実質的なゼロ−次キネティックスを達成する新規な局所適用システムが開発された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、メチルフェニデートを局所適用するための組成物を提供することである。前記の目的を調剤上受容可能な担体中のメチルフェニデートを提供することによって達成し、その量はそれを必要とする患者の皮膚又は粘膜に対して少なくとも10時間実質的にゼロ−次のキネティックスを達成するのに十分な量である。
前記の目的は、柔軟な、限定されたシステム中にメチルフェニデートを含むメチルフェニデートの局所適用のための組成物を提供することによっても達成され、該組成物において約0.5mg/24時間〜約100mg/24時間の送達速度を可能とするのに十分な量でメチルフェニデートが存在し、患者に有効な投薬を実現する。
好ましい態様において、担体は粘着剤を含む。本発明の他の目的は、上記の組成物のメチルフェニデートを塩基の形で、又は塩基/塩基性塩の組み合わせ若しくはエステルの形で提供することである。
本発明の他の態様では、担体中の製剤は、好ましくは約10cm2あたり少なくとも約26.4mgのメチルフェニデートを含む製剤において24時間あたり少なくとも約0.5mgを送達する。
本発明の他の態様では、組成物は強化剤をさらに含む。
本発明のさらに他の態様は、上記したゼロ−次のキネティックスを達成するのに有効な量のメチルフェニデートを含む経皮送達システムを適用することによって、子供又は大人の注意欠乏/活動亢進障害を治療することである。
本発明の前記及び他の目的も、メチルフェニデートを送達する局所適用システムを指向する本発明によって達成され、該システムでは患者の覚醒時間中にゼロ−次キネティックスを達成するのに有効な量でメチルフェニデートを投与する。
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の好ましい態様の詳細な説明を考慮することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
メチルフェニデートは以下の一般式を有する:
【化1】


4個の異性体があり、それらは(2R:2’R)−(+)−スレオ−エナンチオマー、(2S:2’S)−(−)−スレオ−エナンチオマー、(2R:2’S)−(+)−エリスロ−エナンチオマー、及び(2S:2’R)−(−)−エリスロ−エナンチオマーであるが、d−スレオ−メチルフェニデートだけが特に活性である。市場から入手可能なリタリンは50:50のd−スレオ−メチルフェニデート:l−スレオ−メチルフェニデートである。メチルフェニデートの分解生成物又は代謝産物も本質的に不活性でもある。
【0009】
本発明の目的にとって塩基性メチルフェニデートの等価物は調剤上受容可能な酸付加物及び塩基性メチルフェニデートの四級塩である。特に適しているのは弱酸の塩である。種々の無機及び有機酸がメチルフェニデートの調剤上受容可能な塩を形成する。酸、例えば硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、ケイヒ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、アスコルビン酸及び関連する酸と塩が形成される。硫酸、ヒドロハル(hydrohalic)酸、及び芳香族スルホン酸の種々の有機エステルとの四級アンモニウム塩を形成することもできる。このようなエステルには、メチルクロリド及びブロミド、エチルクロリド、プロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ベンジルクロリド及びブロミド、フェネチルブロミド、ナフチルメチルクロリド、ジメチルスルフェート、メチルベンゼンスルホネート、エチルトルエンスルホネート、エチレンクロロヒドリン、プロピレンクロロヒドリン、アリルブロミド、メチルアリルブロミド及びクロチルブロミドがある。
本発明に従うメチルフェニデートの投与を意図する局所組成物は柔軟な、限定されたシステムである。
【0010】
“粘着剤”という用語を本明細書では最も広い意味で使用することを意図しており、局所適用の部位に接着することが可能な天然又は合成ポリマーを意味し、本技術分野で一般的に知られている生体粘着剤(粘膜付着剤ともいう)及び感圧粘着剤を含む。ポリマーは、自体が粘着性を有するか又は、粘着剤、可塑剤、架橋剤若しくは他の添加剤を添加することによって粘着剤として作用する性質を有するという用語の意味において粘着剤である。特に好ましい粘着剤はアクリル類、天然及び合成ゴム、天然及び合成ガム、ポリシロキサン類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ビニルピロリドンコポリマー類、スチレンブロックコポリマー類、及びこれらの混合物である。特に適切な生体粘着剤又は粘膜付着剤は、天然又は合成多糖類及びポリアクリル酸ポリマー及びこれらの混合物を含む。本明細書で使用する“多糖類”は、加水分解によって二又はそれ以上の単糖類の分子又はその誘導体に分解することが可能な炭水化物を意味する。好ましい多糖類はセルロース材料及び天然ガムを含む。この粘着剤を単独で、又は二若しくはそれ以上を混合して、又は組み合わせて(すなわち層状にして)使用することができる。
メチルフェニデート特にその塩基型が不安定で、局所組成物に含まれる粘着剤、強化剤、添加剤及び他の成分の酸性官能基の存在によって分解することが分かっている。主な分解生成物/代謝産物はリタリン酸と考えられ、この酸性官能性成分が質量で1%増加すると約10倍それが増加する。この分解が局所組成物の保存中に活性エナンチオマーの量を大きく減少させ、これによって薬物の送達に利用可能なメチルフェニデートの量が減少する。
【0011】
前記の観点において、アクリル系ポリマーは非−官能性、ヒドロキシ官能性、又は最小限に酸官能性であることが好ましい。“最小限に酸官能性のアクリル系”は、アクリル系ポリマーの質量に対して約5質量%を越えない、好ましくは約1質量%、より好ましくは約0.5質量%を越えない酸官能性モノマーを有するアクリル系ポリマーとして定義される。
仕上げた製品にとって望ましくない黄変という色の変化の観点から見て、さらなる不安定性が酢酸ビニルの存在に見られる。従って、酢酸ビニル及び酢酸ビニルモノマー単位を含む粘着剤、例えばエチレン/酢酸ビニルコポリマー及びビニルピロリドン/酢酸ビニルに満足すべき作用があることが分かっていても、これらを使用することは一般に先に挙げた他の粘着剤より好ましくない。
さらに、キャップド(capped)(又はアミン−相溶性(compatible))ポリシロキサンの使用も局所組成物において安定性を高めかつ分解を減少させることが分かっている。リタリン酸の量を減少させることに加えて、このようなポリシロキサンポリマーは組成物の全体的な反応性を低下させ、かつそれゆえ、エリスロ−エナンチオマーのような他の分解生成物の存在を減少させると考えられる。“キャップド”ポリシロキサンポリマーは、化学的に処理されて、好ましくは炭化水素基、例えばメチル基での置換によってケイ素−結合ヒドロキシル基含量が減少又は除去されたものである。キャップドポリシロキサンの例は米国再発行特許第35,474号に記載されており、参考として本明細書に取り入れ、また、これらはDow Cornig CorporationからBio-PSA X7-4100、-4200及び-4300の製品シリーズとして市場で入手可能である。
【0012】
“柔軟な、限定されたシステム”という語句は、接触することとなる表面と同じ形を取ることが可能であり、かつ固形形態のままで該接触を維持することが可能な固形形態を意味することを意図しており、これによって生理学的に有害な作用を生じることなく、また患者に投与している間に水と接触して大きく分解されることなく局所適用が容易となる。
適切な粘着剤及び柔軟な、限定された送達システムの例示は、Noven Pharmaceuticals Inc., Miami, Floridaに付与された米国特許第5,474,783号及び5,656,386号に記載されたものを含む(参考として本明細書に取り込む)。
当技術分野で公知の他の柔軟な、限定されたシステムは、フィルム、硬膏剤、軟膏剤、包帯、及び一又は複数の分離した層に薬物を溶解させ又は含ませた多層送達システム及び皮膚又は粘膜に直接結合する粘着剤と分離している貯蔵所又は蓄積所に薬物を溶解させ又は含ませた貯蔵体−型送達システムを含む。
さらに、局所適用システムにおけるメチルフェニデートの溶解性を増加させる剤、例えばポリビニルピロリドンを任意に添加することによって、メチルフェニデートの溶解性を変化させることができる。
【0013】
本発明に従う組成物は、薬物が皮膚をとおして送達されるのを促進することが知られている剤を含むこともできるのは当然である。これらの剤は、皮膚透過強化剤、促進剤、補助剤及び吸着促進剤として言及されてきており、本明細書ではまとめて“強化剤”という。このクラスの剤は、様々の作用機構を有する剤を含んでおり、多数のポリマー中において薬物の溶解性及び拡散性を改良する作用を有する剤、表皮吸着を改良する剤、例えば角質層の性質を変えて湿度を保持し、皮膚を軟化し、皮膚の透過性を改良し、透過補助剤若しくは毛のう開口剤として作用し又は境界層を含む皮膚の状態を変化させる剤を含む。これらの剤のいくつかは複数の作用機構を有するとしても、それらは本質的には薬物の送達を強化するように作用する。
強化剤のいくつかの例は多価アルコール、例えばジプロピレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールであり、これは薬物の溶解性を強化する;油、例えばオリーブ油、スクアレン、及びラノリン;脂肪エーテル、例えばセチルエーテル及びオレイルエーテル;脂肪酸エステル、例えばイソプロピルミリステートであり、これは薬物の拡散性を強化する;尿素及び尿素誘導体、例えばアラントインであり、これはケラチンの性質に作用して湿度を保持する;極性溶媒、例えばジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチラウルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトニド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドであり、これはケラチンの透過性に作用する;サリチル酸、これはケラチンを軟化する;アミノ酸、これは透過補助剤である;ベンジルニコチネート、これは毛のう開口剤である;及び高分子量脂肪族界面活性剤、例えばラウリルスルフェート塩であり、これは皮膚の表面の状態及び投与された薬物の状態を変化させる。他の剤はオレイン酸及びリノレン酸、アスコルビン酸、パンテノール、ブチレート化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、トコフェリルアセテート、トコフェリルリノレート、プロピルオレエート、及び及びイソプロピルパルミテートを含む。
【0014】
ADを治療する本発明の組成物及び方法に先立ち、治療の初期に患者の“睡眠窓(sleep window)”を考慮する必要のない剤型(即時放出型錠剤又は徐放性錠剤)でメチルフェニデートを投与した。“睡眠窓”と述べた用語には時間枠があり、それは前回の投与の有効期間が終了する約30分前に始まりその投与の有効期間が終了してから約30〜60分までで終わる。これは60〜90分の期間であり、この間患者はベッドに横たわって平穏な睡眠に移行することができる。遅延が長引くと反動症状が完全に出現し、人は眠れなくなる。結果は明白な過剰刺激による不眠症であり、これは過剰投薬ではなく投薬の血中値の低下に関連する。反動は投薬の効果が消滅した後のAD症状の戻りである。反動期間中、ADの症状は実際上投薬前より悪くなることがある。
本発明に従うと、患者の覚醒時間中に実質的にゼロ−次のキネティックスを達成するのに有効な量を投与すると、ADの治療を目的として、局所適用送達によって人体にメチルフェニデートを投与することができることを発明者らは見出した。本発明の組成物は、局所適用経路を通じて患者にメチルフェニデートを安定に放出する。メチルフェニデートの送達速度が約0.5mg/24時間〜約100mg/24時間、より好ましくは約2.5mg/24時間〜約20mg/24時間であることが、患者の治療に有効な投与量を達成するのに必要である。メチルフェニデートの経口投与は1日あたり20−60mgである。局所適用システムは約20−180mgのメチルフェニデート又はシステム中で結晶化しない有効量を含むことができる。局所適用システムにおけるメチルフェニデートの量は、患者に少なくとも60mgの薬物を送達すると有効であることができる。送達パッチの大きさは、約2cm2〜約60cm2の範囲内であることができる。本発明の好ましいシステムは、24時間あたり約5mgのメチルフェニデートを送達しかつ10cm2あたり約26.4mgのメチルフェニデート塩基を含む。
【0015】
本明細書で使用される“流束”という用語は、皮膚又は粘膜への薬物の吸収として定義され、以下のフィックの拡散第一法則によって記述される:
J=−D(dCm/dx)
ここで、Jはg/cm2/秒で表す流束、Dはcm2/秒で表す薬物の皮膚又は粘膜への拡散係数かつdCm/dxは皮膚又は粘膜に対する薬物の濃度勾配である。
メチルフェニデートに対する正常な人間の皮膚の透過性は相対的に広い範囲にあり、この透過性は人間により、また部位により変わるだけでなく、薬物の化学的形態にも依存することを発明者らは見いだした。局所適用システムにおけるメチルフェニデートは塩基形又は塩基/塩基性塩、又はエステルであることが好ましい。
本明細書で使用する“治療上の有効量”という用語は、治療効果を達成するメチルフェニデートの投与量を意図しており、典型的には子供と大人の両者に対して1日当たり約0.05mg/kg〜約1.0mg/kg、より好ましくは約0.075mg/kg/日〜約0.3mg/kg/日である。
少なくとも10時間の間実質的にゼロ−次の送達を確実に達成するために、局所組成物中のメチルフェニデートを充分に供給して最初の10時間に薬物の約15から40%を送達するようにする。
拡散キネティックスのモデルによって、組成物からの消失速度が20〜25%より遅いと、キネティックスは、実際は第一次であるが実質的にはゼロ−次であり、この消失段階においてはキネティックスがゼロ−次モデルから大きく逸脱しないことを示すことができる。
【0016】
少なくとも10時間の実施的なゼロ−次の送達を達成するための好ましい態様は、組成物中に上記のポリマー、例えば官能基を有しないか又は最小限の官能基を有するアクリル系又はキャップドシリコーンポリマーを含むことである。このようなポリマーを使用すると充分な量のメチルフェニデートを組成物に負荷することが可能となり、一方少なくとも10時間の実施的なゼロ−次の送達に必要なメチルフェニデートを活性型に維持することが可能となる。
本発明は、局所適用システムでメチルフェニデートの治療に有効な量を連続的に送達することを意図しており、該局所適用システムは薬物の投入速度を制御する皮膚又は粘膜の透過性に第一義的に依存している。薬物が皮膚又は粘膜に送達される最大速度をシステム自体が制御する、速度が制御されたシステムからの薬物の送達を可能にすることも意図している。
本明細書で使用する“実質的にゼロ−次”という語句は、一度一定状態が達成されるとほぼ一定の速度で皮膚又は粘膜にメチルフェニデートが送達されることを意味している。この意味の範囲内での予期される典型的な変動は、一定状態(投与後3−10時間)におけるメチルフェニデートの平均血中値から約30%〜約40%の相違である。
【実施例】
【0017】
以下の特定の実施例は、本発明の意図の範囲内において、局所適用システム及び組成物を説明するものである。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するためのものではない。実施例中の質量パーセントは、特に記載しない限り、システムの乾燥質量に基づいている。
以下の市場から入手可能な粘着剤を実施例で使用した:“Duro-Tak 87-4194、87-2510、及び87-2097”は、NATIONAL STARCH AND CHEMICAL CORPORATION, Bridgewater, N.J.の有機溶液中のポリアクリレート粘着剤に対する商標である。
“Bio-PSA X7-4602、X7-4102、X7-4403、X7-4201、X7-4402及びQ7-4502”は、DOW CORNING CORPORATION, MEMDICAL PRODUCTS, Midland, MI.の有機溶液中のポリシロキサン粘着剤に対する商標である。
“Gelva-Multipolymer Solution (GMS) 1151 及び 7882”は、Monsanto Company, Saint Louis, MO.の有機溶液中のポリアクリレート粘着剤に対する商標である。
“KOLLIDON 12, 17, 30, 90, 及び VA 64”は、BASF Aktiengesellshaft, Ludwigschaften, ドイツのポリビニルピロリドンポリマー及び酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマーに対する商標である。
メチルフェニデートは中枢神経刺激薬で、Novartis Pharmaceuticals corporation からリタリン(登録商標)及びセンテドリン(登録商標)として常時市販されている。
【0018】
実施例1
局所送達組成物を以下のように製造した:60部のシリコーン粘着剤(30部のBio-PSA X7-4602 及び30部のBio-PSA Q7-4502)、20部のアクリル系粘着剤(Duro-Tak 87-4194)及び20部のメチルフェニデートの混合物を添加し、管中の混合物を攪拌して均一な混合物を形成する。次いでこの混合物を放出ライナー上に被覆し、次いでこれをオーブンに通して揮発性溶媒を除去する。この工程の完了後、粘着剤−薬物成分層を裏打ち材料と結合し、この単位をロールに巻いて保存する。
上記製剤からの死んだ皮膚に対する試験管内でのメチルフェニデートの流束は、5μg/cm2/時間〜40μg/cm2/時間の皮膚透過性を示す。
【0019】
実施例2(試験688(\3.4))
30質量%のメチルフェニデート塩基、40質量%のDuro-Tak 87-2296及び30質量%のBio-PSA X7-4403から組成物を製造した。流束の概要を図1に示す。
実施例3(試験688(\3.5))
20質量%のメチルフェニデート塩基、20質量%のDuro-Tak 87-2296及び56質量%のBio-PSA X7-4403及び4質量%のオレイルアルコールから組成物を製造した。流束の概要を図1に示す。
実施例4(試験697(剤型1/7))
20質量%のメチルフェニデート塩基、40質量%のDuro-Tak 87-2296及び40質量%のBio-PSA X7-4403から組成物を製造した。流束の概要を図2に示す。
実施例5(試験697(剤型B/6))
20質量%のメチルフェニデート塩基、20質量%のDuro-Tak 87-2296及び60質量%のBio-PSA X7-4403から組成物を製造した。流束の概要を図2に示す。
実施例6(試験715(/5))
20質量%のメチルフェニデート塩基、20質量%のDuro-Tak 87-4194、30質量%のBio-PSA X7-4602及び30質量%のBio-PSA X7-4502から組成物を製造した。流束の概要を図3に示す。
【0020】
実施例7−9

【0021】



1997年12月15日出願の優先の米国仮出願第60/069,510号は明細書、要約及び図面を含んでおり、明らかに全体が参考として含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、(a)5時間空けて投与する即時放出型の10mg錠剤の2回投与、(b)徐放性錠剤の1回投与及び(c)試験管内流束試験から得られた結果を補充したものにおいて時間に対するメチルフェニデートの公表された血中値を示している。このグラフは、経皮システムから実質的にゼロ−次の送達の拡大した期間を示している。
【図2】図2は試験管内試験からの結果で示されたように製剤中で実験的に変更した結果から得ることができる送達のキネティックスの型を示している。図1におけるのと同様に、即時放出型錠剤の2回投与及び徐放性錠剤の1回投与の公表されたデータを参考として入れてある。
【図3】図3は、試験管内流束試験から得られた結果によって証明された、実質的にゼロ−次の送達における長期化した期間を有する遅い開始を示している。図1及び図2からの錠剤投与を参考のため再度含めてある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデートを含む、メチルフェニデートを局所適用するための組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、24時間の全期間にわたって患者に治療上有効な投与量を達成する20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在し、メチルフェニデートの全送達量が約0.5mg〜約100mg、好ましくは約2.5mg〜約20mgであり、組成物中の全てのアクリル系ポリマーが非官能性のアクリル系ポリマーである、組成物。
【請求項2】
治療上有効な投与量が約0.05mg/kg/日〜約1.0mg/kg/日、好ましくは約0.075mg/kg/日〜約0.3mg/kg/日である、請求項1の組成物。
【請求項3】
柔軟で限定されたシステムにメチルフェニデートを含む、メチルフェニデートを局所投与するための組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、少なくとも10時間にわたって、メチルフェニデートを必要とする患者の皮膚又は粘膜への送達を実質的にゼロ−次のキネティックスで達成する20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在し、組成物中の全てのアクリル系ポリマーが非官能性のアクリル系ポリマーである、組成物。
【請求項4】
少なくとも5μg/cm2/時間の流束を提供して少なくとも10時間メチルフェニデートの治療血中値を達成する20〜180mgの量でメチルフェニデート又はその調剤上受容可能な塩を含む、メチルフェニデートの経皮送達組成物。
【請求項5】
少なくとも10時間少なくとも5μg/cm2/時間の流束で24時間患者に少なくとも0.5mgの投与量を提供する20〜180mgの量でメチルフェニデート又はその調剤上受容可能な塩を含む、メチルフェニデートの経皮送達組成物。
【請求項6】
メチルフェニデートが子供に対して治療上有効な量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデート及び調剤上受容可能な粘着剤担体を含むメチルフェニデートの局所適用組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、
(i) 少なくとも10時間にわたって、メチルフェニデートを必要とする患者の皮膚又は粘膜への送達を実質的にゼロ−次のキネティックスで達成する20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在し、
(ii) メチルフェニデート:シリコーン粘着剤:アクリル系粘着剤の比率(乾燥質量%)がそれぞれ約5〜30:0〜70:0〜70であり、かつ
(iii) 組成物が製造時にリタリン酸を実質的に含まない、
組成物。
【請求項8】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデート及び調剤上受容可能な粘着剤担体を含むメチルフェニデートの局所適用組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、
(i) 少なくとも10時間にわたって、メチルフェニデートを必要とする患者の皮膚又は粘膜への送達を実質的にゼロ−次のキネティックスで達成する20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在し、
(ii) 実質的に結晶を含まないメチルフェニデートが治療上有効な量で存在し、かつ
(iii) 組成物が製造時にリタリン酸を実質的に含まない、
組成物。
【請求項9】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデートを含むメチルフェニデートの局所適用組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、送達の最初の10時間に該柔軟で限定されたシステムの10cm2当たり3.96mg〜10.56mgのメチルフェニデートを送達するのに有効な20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在する、組成物。
【請求項10】
メチルフェニデートが塩基型である、請求項9の組成物。
【請求項11】
メチルフェニデートがd−スレオ−メチルフェニデートエナンチオマーを含む、請求項9の組成物。
【請求項12】
粘着剤をさらに含む、請求項9の組成物。
【請求項13】
粘着剤を非官能性アクリル系、天然及び合成ゴム類、生体粘着剤、非官能性ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ビニルピロリドンコポリマー、スチレンブロックポリマー及びそれらの混合物から成る群から選択する、請求項12の組成物。
【請求項14】
粘着剤が、天然又は合成多糖類及び非官能性ポリアクリル酸ポリマーから成る群から選択する生体粘着剤を含む、請求項13の組成物。
【請求項15】
天然多糖類が天然ガムである、請求項14の組成物。
【請求項16】
粘着剤が、キャップド又はアミン−相溶性ポリシロキサンポリマーであるポリシロキサンを含む、請求項13の組成物。
【請求項17】
粘着剤が、非官能性ポリマーであるアクリル系ポリマーを含む、請求項13の組成物。
【請求項18】
粘着剤が、酢酸ビニルを含まないポリマーである非官能性ポリアクリレートを含む、請求項13の組成物。
【請求項19】
組成物が約1質量%を越えない酸官能性モノマーを含む、請求項9の組成物。
【請求項20】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデートを含むメチルフェニデートの局所適用組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、送達の最初の10時間に23.76mg〜63.36mgのメチルフェニデートを送達するのに有効な20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在する、組成物。
【請求項21】
柔軟で限定されたシステムにおいてメチルフェニデートを含むメチルフェニデートの局所適用組成物であって、組成物がポリシロキサンポリマーを含み、送達の最初の10時間に9mg〜24mgのメチルフェニデートを送達するのに有効な20〜180mgの量でメチルフェニデートが存在する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−73856(P2009−73856A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291364(P2008−291364)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願2000−538677(P2000−538677)の分割
【原出願日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【出願人】(500134562)ノーヴェン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】