説明

メチル化されたDNAの含量を測定する方法

【課題】簡便にDNAを定量又は検出する方法を提供する。
【解決手段】(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をメチル化感受性制限酵素による消化処理を行う第一工程、(2)第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料からメチル化された一本鎖DNAを取得し、該一本鎖DNAと、固定化メチル化DNA抗体とを結合させて一本鎖DNAを選択する第二工程、及び、本工程の前工程として第二工程で選択された一本鎖DNAを、固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖状態であるDNA(正鎖)にする工程(第一前工程)等から構成される生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるDNAのメチル化状態を評価するための方法としては、例えば、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法が存在している(例えば、非特許文献1及び2参照)。この測定方法では、まず、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、目的とするDNA領域を含むDNAを抽出する必要がある。該抽出方法としては、例えば、ゲル濾過、シリカ支持体、有機溶媒等による抽出方法等が知られているが、いずれの抽出方法も操作が煩雑である。次いで、抽出されたDNAの目的領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法としては、例えば、(1)亜硫酸塩等を用いて該DNAを修飾した後、DNAポリメラーゼによるDNA合成の連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと記すこともある。)に供することにより目的領域を増幅する方法、(2)メチル化感受性制限酵素を用いて該DNAを消化した後、PCRに供することにより、目的領域を増幅する方法等を挙げることができる。
【0003】
【非特許文献1】Clark SJ, Harrison J, Paul CL, Frommer M., High sensitivity mapping of methylated cytosines. Nucleic Acids Res. 1994 Aug 11;22(15):2990-7.
【非特許文献2】Ushijima T, Morimura K, Hosoya Y, Okonogi H, Tatematsu M, Sugimura T, Nagao M., Establishment of methylation-sensitive- representational difference analysis and isolation of hypo- and hypermethylated genomic fragments in mouse liver tumors.Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Mar 18;94(6):2284-9.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のいずれの方法とも、PCRに供するまでの操作(具体的には例えば、メチル化検出のためのDNAの修飾及びその後の生成物の精製等)に非常に時間と労力とを要する。更に、PCRが、増幅しようとする目的領域のDNAの塩基配列に対して相補的な1組のオリゴヌクレオチドプライマー(以下、プライマー対と記すこともある。)を用いて液相中にて行われるために、増幅されたDNA断片を精製した後、これをPCRのための反応容器へ移し換える操作、また目的領域を増幅させるための前記プライマー対を含む反応試薬を反応系に添加するための操作等も必要である。更に、増幅しようとする目的領域のDNAの増幅を確認するために、電気泳動等の分析操作に供する必要もあり、これらの操作は極めて繁雑である。このように、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定するための一連の操作には、多大な手間が存在していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡便にDNAを定量又は検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をメチル化感受性制限酵素による消化処理を行う第一工程、
(2)第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料からメチル化された一本鎖DNAを取得し、該一本鎖DNAと、固定化メチル化DNA抗体とを結合させて一本鎖DNAを選択する第二工程、及び、(3)下記の各本工程の前工程として第二工程で選択された一本鎖DNAを、固定化固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖状態であるDNA(正鎖)にする工程(第一前工程)と、
第一前工程で一本鎖状態にされたゲノム由来のDNA(正鎖)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’ 末端より更に3’ 末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)、に対して相補性である塩基配列(負鎖)を有する伸長プライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)を有し、且つ、本工程として
(a)生成した目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A工程(本工程)と、
(b)生成した目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記の目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’ 末端より更に3’ 末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有する伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第B工程(本工程)とを有し、
更に第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、を有することを特徴とする方法。
[発明2]
固定化固定化メチル化DNA抗体がメチルシトシン抗体である発明1に記載の方法。
[発明3]
生物由来検体が哺乳動物の血液、体液、血清、血漿、細胞溶解液又は組織溶解液である発明1又は2に記載の方法。
[発明4]
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料、又は予め精製されてなるDNA試料である発明1〜3のいずれか一に記載の方法。
[発明5]
第一工程が、
目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、メチル化感受性制限酵素の認識部位の塩基配列と相補的な塩基配列からなるマスキング用オリゴヌクレオチドと、を混合することにより、該メチル化感受性制限酵素の認識部位が保護されてなる一本鎖DNAを選択する第一(A)工程と、
第一(A)工程で選択された一本鎖DNAをメチル化感受性制限酵素で消化処理する第一(B)工程と、から構成される発明1〜4のいずれか一に記載の方法。
[発明6]
メチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素、又はHhaIである発明1〜5のいずれか一に記載の方法。
[発明7]
第一工程におけるメチル化感受性制限酵素による消化処理を行わずに第二工程を行う発明1〜6のいずれかの請求項記載の方法。
[発明8]
第二工程が、
第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料に含まれるメチル化された二本鎖DNAをメチル化された一本鎖DNAに分離する第二(A)工程と、
第二(A)工程で得られたメチル化一本鎖DNAと固定化メチル化DNA抗体と結合させる第二(B)工程とからなり、
第二(A)工程でメチル化された二本鎖DNAをメチル化一本鎖DNAに分離する際に、カウンターオリゴヌクレオチドを添加する発明1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、簡便にDNAを定量又は検出する方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における「生物由来検体」としては、例えば、細胞溶解液、組織溶解液(ここでの組織とは、血液、リンパ節等を含む広義の意味である。)若しくは、哺乳動物においては、血漿、血清、リンパ液等の体液、体分泌物(尿や乳汁等)等の生体試料及びこれら生体試料から抽出して得られたゲノムDNAを挙げることができる。また該生物由来検体としては、例えば、微生物、ウイルス等由来の試料も挙げられ、この場合には、本発明における「ゲノムDNA」とは、微生物、ウイルスのゲノムDNAを意味するものである。哺乳動物由来の検体が血液である場合には、定期健康診断や簡便な検査等での本発明の利用が期待できる。
ゲノムDNAを哺乳動物由来の検体から得るには、例えば、市販のDNA抽出用キット等を用いてDNAを抽出すればよい。
因みに、血液を検体として用いる場合には、血液から通常の方法に準じて血漿又は血清を調製し、調製された血漿又は血清を検体として、その中に含まれる遊離DNA(胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAが含まれる)を分析すると、血球由来のDNAを避けて胃癌細胞等の癌細胞由来のDNAを解析することができ、胃癌細胞等の癌細胞、それを含む組織等を検出する感度を向上させることができる。
尚、前記ゲノムDNA由来のDNA試料は、該ゲノムDNAが有する後述する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であってもよく、又は所定の方法により予め精製されてなるDNA試料であってもよい。
【0008】
「メチル化されたDNA」とは、下記のようなDNAを意味するものである。通常、遺伝子(ゲノムDNA)を構成する塩基は4種類である。これらの塩基のうち、シトシンのみがメチル化されるという現象が知られており、このようなDNAのメチル化修飾は、5’ −CG−3’ で示される塩基配列(Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表す。以下、該塩基配列を「CpG」と記すこともある。)中のシトシンに限られている。シトシンにおいてメチル化される部位は、その5位である。細胞分裂に先立つDNA複製に際して、複製直後は鋳型鎖の「CpG」中のシトシンのみがメチル化された状態となるが、メチル基転移酵素の働きにより即座に新生鎖の「CpG」中のシトシンもメチル化される。従って、DNAのメチル化の状態は、DNA複製後も、新しい2組のDNAにそのまま引き継がれることになる。このようなメチル化修飾により生じたDNAを意味するものである。
本発明における「CpG対」とは、CpGで示される塩基配列と、これに相補するCpGが結合してなる二本鎖オリゴヌクレオチドを意味するものである。
【0009】
「目的とするDNA領域」(以下、目的領域と記すこともある。)は、該領域に含まれるシトシンのメチル化有無を調べたいDNA領域であって、少なくとも1種類以上のメチル化感受性制限酵素の認識部位を有するものであり、例えば、Lysyl oxidase、HRAS-like suppressor、bA305P22.2.1、Gamma filamin、HAND1、Homologue of RIKEN 2210016F16、FLJ32130、PPARG angiopoietin-related protein、Thrombomodulin、p53-responsive gene 2、Fibrillin2、Neurofilament3、disintegrin and metalloproteinase domain 23、G protein-coupled receptor 7、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2等の有用タンパク質遺伝子のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列中のシトシンを含むDNAの領域等を挙げることができる。
【0010】
具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がLysyl oxidase遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のLysyl oxidase遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号1で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF270645に記載される塩基配列の塩基番号16001〜18661で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号1で示される塩基配列においては、ヒト由来のLysyl oxidaseタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2031〜2033に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号1で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号1で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号1で示される塩基配列において、塩基番号1539、1560、1574、1600、1623、1635、1644、1654、1661、1682、1686、1696、1717、1767、1774、1783、1785、1787、1795等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0011】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子がHRAS-like suppressor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号2で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC068162に記載される塩基配列の塩基番号172001〜173953で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号2で示される塩基配列においては、ヒト由来のHRAS-like suppressor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1743〜1953に示されている。配列番号2で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号2で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号2で示される塩基配列において、塩基番号1316、1341、1357、1359、1362、1374、1390、1399、1405、1409、1414、1416、1422、1428、1434、1449、1451、1454、1463、1469、1477、1479、1483、1488、1492、1494、1496、1498、1504、1510、1513、1518、1520等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0012】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、bA305P22.2.1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のbA305P22.2.1遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号3で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL121673に記載される塩基配列の塩基番号13001〜13889で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号3で示される塩基配列においては、ヒト由来のbA305P22.2.1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号849〜851に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号663〜889に示されている。配列番号3で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号3で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号3で示される塩基配列において、塩基番号329、335、337、351、363、373、405、424、427、446、465、472、486等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0013】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Gamma filamin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のGamma filamin遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号4で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC074373に記載される塩基配列の塩基番号63528〜64390で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号4で示される塩基配列においては、ヒト由来のGamma filaminタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号572〜574に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号463〜863に示されている。配列番号4で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号4で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号4で示される塩基配列において、塩基番号329、333、337、350、353、360、363、370、379、382、384、409、414、419、426、432、434、445、449、459、472、474、486、490、503、505等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0014】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、HAND1遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHAND1遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号5で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026688に記載される塩基配列の塩基番号24303〜26500で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号5で示される塩基配列においては、ヒト由来のHAND1タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号1656〜1658に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号1400〜2198に示されている。配列番号5で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号5で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号5で示される塩基配列において、塩基番号1153、1160、1178、1187、1193、1218、1232、1266、1272、1292、1305、1307、1316、1356、1377、1399、1401、1422、1434等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0015】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Homologue of RIKEN 2210016F16遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号6で示される塩基配列(Genbank Accession No.AL354733に記載される塩基配列の塩基番号157056〜159000で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号6で示される塩基配列においては、ヒト由来のHomologue of RIKEN 2210016F16タンパク質のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1392〜1945に示されている。配列番号6で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号6で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号6で示される塩基配列において、塩基番号1172、1175、1180、1183、1189、1204、1209、1267、1271、1278、1281、1313、1319、1332、1334、1338、1346、1352、1358、1366、1378、1392、1402、1433、1436、1438等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0016】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、FLJ32130遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFLJ32130遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号7で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC002310に記載される塩基配列の塩基番号1〜2379で示される塩基配列の相補的塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号7で示される塩基配列においては、ヒト由来のFLJ32130タンパク質のアミノ酸末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2136〜2138に示されており、上記エクソン1と考えられる塩基配列は、塩基番号2136〜2379に示されている。配列番号7で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号7で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号7で示される塩基配列において、塩基番号1714、1716、1749、1753、1762、1795、1814、1894、1911、1915、1925、1940、1955、1968等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0017】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、PPARG angiopoietin-related protein遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related protein遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号8で示される塩基配列が挙げられる。配列番号8で示される塩基配列においては、ヒト由来のPPARG angiopoietin-related proteinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号717〜719に示されており、上記エクソン1の5’ 側部分の塩基配列は、塩基番号1957〜2661に示されている。配列番号8で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号8で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号8で示される塩基配列において、塩基番号35、43、51、54、75、85、107、127、129、143、184、194、223、227、236、251、258等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0018】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Thrombomodulin遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のThrombomodulin遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号9で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF495471に記載される塩基配列の塩基番号1〜6096で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号9で示される塩基配列においては、ヒト由来のThrombomodulinタンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードするATGコドンが、塩基番号2590〜2592に示されており、上記エクソン1の塩基配列は、塩基番号2048〜6096に示されている。配列番号9で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシン、とりわけ配列番号9で示される塩基配列においてCpGが密に存在する領域中に存在するCpG中のシトシンは、例えば、胃癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、胃癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号9で示される塩基配列において、塩基番号1539、1551、1571、1579、1581、1585、1595、1598、1601、1621、1632、1638、1645、1648、1665、1667、1680、1698、1710、1724、1726、1756等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0019】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、p53-responsive gene 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号10で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009471に記載される塩基配列の塩基番号113501〜116000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号10で示される塩基配列においては、ヒト由来のp53-responsive gene 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1558〜1808に示されている。配列番号10で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号10で示される塩基配列において、塩基番号1282、1284、1301、1308、1315、1319、1349、1351、1357、1361、1365、1378、1383等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0020】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Fibrillin2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号11で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC113387に記載される塩基配列の塩基番号118801〜121000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号11で示される塩基配列においては、ヒト由来のFibrillin2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1091〜1345に示されている。配列番号11で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号11で示される塩基配列において、塩基番号679、687、690、699、746、773、777、783、795、799、812、823、830、834、843等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0021】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Neurofilament3遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号12で示される塩基配列(Genbank Accession No.AF106564に記載される塩基配列の塩基番号28001〜30000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号12で示される塩基配列においては、ヒト由来のNeurofilament3遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号614〜1694に示されている。配列番号12で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号12で示される塩基配列において、塩基番号428、432、443、451、471、475、482、491、499、503、506、514、519、532、541、544、546、563、566、572、580等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0022】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、disintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号13で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009225に記載される塩基配列の塩基番号21001〜23300で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号13で示される塩基配列においては、ヒト由来のdisintegrin and metalloproteinase domain 23遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1194〜1630に示されている。配列番号13で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号13で示される塩基配列において、塩基番号998、1003、1007、1011、1016、1018、1020、1026、1028、1031、1035、1041、1043、1045、1051、1053、1056、1060、1066、1068、1070、1073、1093、1096、1106、1112、1120、1124、1126等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0023】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G protein-coupled receptor 7遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号14で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC009800に記載される塩基配列の塩基番号75001〜78000で示される塩基配列に相当する。)が挙げられる。配列番号14で示される塩基配列においては、ヒト由来のG protein-coupled receptor 7遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1666〜2652に示されている。配列番号14で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号14で示される塩基配列において、塩基番号1480、1482、1485、1496、1513、1526、1542、1560、1564、1568、1570、1580、1590、1603、1613、1620等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0024】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、G-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、のプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号15で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC008971に記載される塩基配列の塩基番号57001〜60000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号15で示される塩基配列においては、ヒト由来のG-protein coupled somatostatin and angiotensin-like peptide receptor遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号776〜2632に示されている。配列番号15で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号15で示される塩基配列において、塩基番号470、472、490、497、504、506、509、514、522、540、543、552、566、582、597、610、612等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0025】
また具体的には例えば、有用タンパク質遺伝子が、Solute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子である場合には、そのプロモーター領域、非翻訳領域又は翻訳領域(コーディング領域)の塩基配列中に存在する一つ以上のCpGで示される塩基配列としては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1と、その5’ 上流に位置するプロモーター領域とが含まれるゲノムDNAの塩基配列を挙げることができ、より具体的には、配列番号16で示される塩基配列(Genbank Accession No.AC026802に記載される塩基配列の塩基番号78801〜81000で示される塩基配列の相補的配列に相当する。)が挙げられる。配列番号16で示される塩基配列においては、ヒト由来のSolute carrier family 6 neurotransmitter transporter noradrenalin member 2遺伝子のエクソン1の塩基配列は、塩基番号1479〜1804に示されている。配列番号16で示される塩基配列中に存在するCpGで示される塩基配列中のシトシンは、例えば、膵臓癌細胞等の癌細胞において高いメチル化頻度(即ち、高メチル化状態(hypermethylation))を示す。更に具体的には、膵臓癌細胞においてメチル化頻度が高いシトシンとしては、例えば、配列番号16で示される塩基配列において、塩基番号1002、1010、1019、1021、1051、1056、1061、1063、1080、1099、1110、1139、1141、1164、1169、1184等で示される塩基番号であるシトシンを挙げることができる。
【0026】
「メチル化DNA抗体」とは、DNA中のメチル化された塩基を抗原として結合する抗体を意味する。具体的には、メチルシトシン抗体であり、一本鎖DNA中の5位がメチル化されたシトシンを認識して結合する性質を有している抗体を挙げることができる。。また、市販されているメチル化DNA抗体であっても、本特許記載のメチル化状態のDNAを特異的に認識して、特異的に結合できる抗体であればよい。
メチル化DNA抗体は、メチル化された塩基、メチル化DNA等を抗原として、通常の方法により作成できる。具体的にメチルシトシン抗体を作成するためには、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、或いは、5−メチルシトシンを含むDNA等を抗原として作製された抗体からDNA中のメチルシトシンへの特異的な結合を指標として選抜することで作製できる。
動物に抗原を免疫して得られる抗体としては、精製した抗原を免疫した後、IgG画分の抗体(ポリクローナル抗体)を利用する方法と、単一のクローンを生産する抗体(モノクローナル抗体)を利用する方法がある。本特許ではメチル化DNA、或いはメチルシトシンを特異的に認識できる抗体であることが望ましいため、モノクローナル抗体を利用することが望ましい。
【0027】
モノクローナル抗体を作製する方法としては、細胞融合法による方法を挙げることができる。例えば、細胞融合法は免疫したマウス由来の脾細胞(B細胞)と骨髄腫細胞とを細胞融合させることでハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマの生産する抗体を選抜して、メチルシトシン抗体(モノクローナル抗体)を作製できる。細胞融合法でモノクローナル抗体を作製する場合は、抗原を精製する必要がなく、例えば、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、又は、5−メチルシトシンを含むDNA等の混合物を抗原として、免疫に用いる動物に投与できる。投与方法としては、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、又は、5−メチルシトシンを含むDNA等を、直接、抗体を産生させるマウスへ投与する。抗体が産生されにくい場合は、抗原を支持体へ結合させて免疫しても良い。また、アジュバント溶液(例えば、流動パラフィンとAracel Aを混合し、アジュバントとして結核菌の死菌を混合したもの)と抗原をよく混合することや、リポソームに組み入れて免疫することで、抗原の免疫性を上げることができる。或いは、抗原を含む溶液とアジュバント溶液を等量添加し、十分に乳液状にしてから、マウスの皮下或いは腹腔内に注射する方法や、ミョウバン水とよく混合してから百日咳死菌をアジュバントとして添加する方法がある。尚、最初の免疫をしてから適当な期間の後、マウスの腹腔内或いは静脈内に追加免疫することもできる。また、抗原の量が少ない場合には、抗原が浮遊する溶液を、直接マウス脾臓に注入して免疫しても良い。
最終免疫から数日後に脾臓を摘出し脂肪組織を剥離してから、脾細胞浮遊液を作製する。この脾細胞と、例えばHGPRT欠損骨髄腫細胞とを細胞融合してハイブリドーマを作製する。細胞融合剤としては脾細胞(B細胞)と骨髄腫細胞を効率的に融合できる方法ならば何でもよく、例えば、センダイウイルス(HVJ)、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法などが挙げられる。また、高電圧パルスを用いる方法で細胞融合をしても良い。
細胞融合操作の後、HAT培地で培養し、脾細胞と骨髄腫細胞が融合したハイブリドーマのクローンを選択し、スクリーニングが可能になるまで細胞が成育するのを待つ。目的とする抗体を生産するハイブリドーマを選択するための抗体の検出法や抗体力価の測定法には、抗原抗体反応系を利用できる。具体的には、可溶性抗原に対する抗体測定法で、放射性同位元素免疫定量法(RIA)、酵素免疫定量法(ELISA)などが挙げられる。
【0028】
一本鎖DNA中に存在するCpGが少なくとも一箇所以上メチル化されていれば抗メチル化抗体と結合することができる。従って、本発明における「メチル化された一本鎖DNA」とは、一本鎖DNA中に存在するCpGが少なくとも一箇所以上メチル化されている一本鎖DNAを意味しており、一本鎖DNA中に存在するCpGの全てがメチル化されている一本鎖DNAに限った意味ではない。
【0029】
本発明における「(目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、)増幅されたDNAの量」とは、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的領域におけるメチル化されたDNAの増幅後の量そのもの、即ち、本発明の後述する第三工程で求めた量を意味するものである。例えば、生物由来検体が1mLの血清であった場合には、血清1mL中に含まれる前記のメチル化されたDNAに基づいて増幅されたDNAの量を意味する。
【0030】
「相補性によって結合(相補的な(塩基対合による)結合)」とは、塩基同士の水素結合による塩基対合により二本鎖DNAを形成することを意味する。例えば、DNAを構成する二本鎖の各々一本鎖DNAを構成する塩基が、プリンとピリミジンの塩基対合により二本鎖を形成することであり、より具体的には、複数の連続した、チミンとシトシン、グアニンとアデニンの水素結合による塩基結合により、二本鎖DNAを形成することを意味する。相補性によって結合することを「相補的な結合」と呼ぶこともある。「相補的な結合」は、「相補的に塩基対合しうる」又は「相補性により結合」と表現することもある。また、相補的に結合しうる塩基配列を互いに「相補性を有する」[相補性である]と表現することもある。尚、人工的に作成されるオリゴヌクレオチドに含まれるイノシンがシトシン、アデニン、チミンと水素結合の水素結合で結合することも意味する。
「目的とするDNA領域(に対して相補性である塩基配列)を含む一本鎖DNA」とは、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAとの結合体(二本鎖)を形成するために必要な塩基配列、即ち、目的とするDNA領域の塩基配列の一部に相補的な塩基配列を含む塩基配列であることを意味し、「相補的塩基配列」と表現することもある。また、相補的塩基配列は、「相補的」と表現することもある。
【0031】
第一工程において、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をメチル化感受性制限酵素による消化処理を行う。
「メチル化感受性制限酵素」とは、例えば、メチル化されたシトシンを含む認識配列を消化せず、メチル化されていないシトシンを含む認識配列のみを消化することのできる制限酵素等を意味する。即ち、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されているDNAの場合には、該メチル化感受性制限酵素を該DNAに作用させても、該DNAは切断されない。これに対して、メチル化感受性制限酵素が本来認識することができる認識配列に含まれるシトシンがメチル化されていないDNAの場合には、該メチル化感受性制限酵素を該DNAに作用させれば、該DNAは切断される。このようなメチル化感受性酵素の具体的な例としては、例えば、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素であるHpaII、BstUI、NarI、SacII、HhaI等を挙げることができる。尚、前記のメチル化感受性制限酵素は、すでにGruenbaumらにより明らかにされている(Nucleic Acid Research, 9、 2509-2515)。
【0032】
メチル化感受性制限酵素による消化の有無を調べる方法としては、具体的には例えば、前記DNAを鋳型とし、解析対象とするシトシンを認識配列に含むDNAを増幅可能なプライマー対を用いてPCRを行い、DNAの増幅(増幅産物)の有無を調べる方法を挙げることができる。解析対象とするシトシンがメチル化されている場合には、増幅産物が得られる。一方、解析対象とするシトシンがメチル化されていない場合には、増幅産物が得られない。このようにして、増幅されたDNAの量を比較することにより、解析対象となるシトシンのメチル化されている割合を測定することができる。
即ち、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAがメチル化されていれば、前記のメチル化感受性制限酵素がメチル化状態であるDNAを切断しないという特性を利用することにより、前記の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていたか否かを区別することができる。即ち、前記のメチル化感受性制限酵素で消化処理することにより、仮に生物由来検体生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、該メチル化感受性制限酵素により切断される。また仮に生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、該メチル化感受性制限酵素により切断されない。従って、消化処理を実施した後、後述のように、前記の目的とするDNA領域を増幅可能な一対のプライマーを用いたPCRを実施することにより、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記制限酵素の認識部位の中に存在している少なくとも1つ以上のCpG対におけるシトシンがメチル化されていないのであれば、PCRによる増幅産物は得られず、一方、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおける前記のメチル化感受性制限酵素の認識部位の中に存在している全てのCpG対におけるシトシンがメチル化されていたのであれば、PCRによる増幅産物が得られることになる。
【0033】
第一工程は、具体的には例えば、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが哺乳類由来のゲノムDNAの場合には、以下のように実施すればよい。哺乳類由来のゲノムDNAに、最適な10×緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithothreitol)を3μL、1mg/mL BSA水溶液を3μL、メチル化感受性制限酵素HpaII又はHhaI(10U/μL)等を夫々1.5μL加え、次いで該混合物に滅菌超純水を加えて液量を30μLとし、37℃で1時間〜3時間インキュベーションすればよい。
【0034】
また第一工程における、メチル化感受性制限酵素処理の好ましい態様としては、マスキング用オリゴヌクレオチドを添加する方法が挙げられる。具体的には、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、メチル化感受性制限酵素の認識部位の塩基配列と相補的な塩基配列からなるマスキング用オリゴヌクレオチドと、を混合することにより、該メチル化感受性制限酵素の認識部位が保護されてなる一本鎖DNAを選択する第一(A)工程と、第一(A)工程で選択された一本鎖DNAをメチル化感受性制限酵素で消化処理する第一(B)工程と、から構成されてもよい。具体的には例えば、メチル化感受性制限酵素処理をするための溶液中にマスキング用オリゴヌクレオチドを添加すればよい。
この第一(A)工程と第一(B)工程とを経ることによって、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が一本鎖DNAであっても、二本鎖DNAのみを基質とするメチル化感受性制限酵素により消化することができる。また、第一(A)工程と第一(B)工程は連続して実施しても構わないし、同時に実施しても構わない。
【0035】
「マスキング用オリゴヌクレオチド」とは、メチル化感受性制限酵素の認識部位の塩基配列と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、一本鎖DNA中の目的とするDNA領域に含まれる数箇所あるメチル化感受性制限酵素の認識配列のうち、少なくとも1箇所(全ての個所でも良い)と相補的に結合することで二本鎖を形成し(即ち、前記箇所を二本鎖状態にして)、二本鎖DNAのみを基質とするメチル化感受性制限酵素でも前記箇所を消化できるように、また、試料が一本鎖DNAである場合、一本鎖DNAを消化できるメチル化感受性制限酵素(一本鎖DNAを消化できるメチル化感受性制限酵素は二本鎖DNAも消化でき、その消化効率は、二本鎖DNAに対する方が一本鎖DNAに対するよりも高い)での前記箇所の消化効率を向上させることができるようにするためのオリゴヌクレオチドであり、且つ、目的とする領域のDNAを含む一本鎖DNAと一本鎖固定化オリゴヌクレオチドとの二本鎖の形成を阻害しないオリゴヌクレオチドを意味する。また、該マスキング用オリゴヌクレオチドは、後述のリバース用プライマー(正鎖)を伸長プライマーとして、該マスキング用オリゴヌクレオチド(負鎖)を鋳型として、伸長プライマーを伸長させる反応に利用できないオリゴヌクレオチドでなければならない。尚、塩基長としては、8〜200塩基長が望ましい。
【0036】
ゲノムDNA由来のDNA試料に混合させるマスキング用オリゴヌクレオチドは、1種類でもよく複数種類でも良い。複数種類を用いると、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAのメチル化感受性制限酵素の認識部位の多くが二本鎖状態になり、メチル化感受性制限酵素での、後述の「DNAの切れ残し」を最小限に抑えることができる。マスキング用オリゴヌクレオチドは、例えば、目的とするDNA領域に含まれる数箇所あるメチル化感受性制限酵素の認識配列のうち、メチル化している場合には消化せずにメチル化していない場合には消化したい箇所(例えば、疾患患者検体では100%メチル化されており、健常者検体では100%メチル化されていない箇所等)に応じて設計し、これを使用することが特に有用である。
【0037】
尚、第一工程におけるメチル化感受性制限酵素による消化処理での懸念点として、メチル化されていないシトシンを含む認識配列を完全に消化できない(所謂「DNAの切れ残し」)虞を挙げることができる。このような虞が問題となる場合には、メチル化感受性制限酵素の認識部位が多く存在すれば、「DNAの切れ残し」を最小限に抑えることができるので、目的とするDNA領域としては、メチル化感受性制限酵素の認識部位を少なくとも1つ以上有しており、その認識部位が多ければ多いほどよいと考えられる。
【0038】
尚、「生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料」が、該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料であることを好ましい態様の一つとして挙げることができる。ここで、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAの消化物を固定化オリゴヌクレオチドで選択する場合には、短い鋳型DNAの方がより選択され易く、また、PCRで目的領域を増幅する場合にも、鋳型DNAが短い方がよいと考えられるので、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素を生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料に直接使用し消化処理を実施してもよい。尚、目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素により消化処理する方法としては、一般的な制限酵素処理法を用いればよい。
これらの好ましい態様は、生物由来検体そのものを予め上記のような制限酵素で消化処理しておくことにより、メチル化量を精度良く求めることができるためである。該方法は、上記のような「DNAの切れ残し」を無くすのに有用である。
【0039】
生物由来検体に含まれるゲノムDNA由来の試料をメチル化感受性制限酵素により消化する方法としては、生物由来検体がゲノムDNA自体の場合には前記の方法と同様な方法でよく、生物由来検体が組織溶解液、細胞溶解液等の場合には前記の方法と同様な方法に準じて、大過剰のメチル化感受性制限酵素、例えば、25ngのDNA量に対して500倍量(10U)又はそれ以上のメチル化感受性制限酵素を用いて消化処理を実施すればよい。
ゲノムDNAは、基本的には二本鎖DNAとして存在している。したがって、本操作においては、一本鎖を消化できるメチル化感受性制限酵素(例えば、HhaI)だけでなく、二本鎖DNAを消化できるメチル化感受性制限酵素(例えば、HpaII、BstUI、NarI、SacII、HhaI等)を用いることができる。
【0040】
他に、第一工程の態様としては、一本鎖DNAを消化できるメチル化感受性制限酵素での消化処理を実施せずに第二工程を実施する等を挙げることができる。目的とするDNA領域に一本鎖DNAを消化できるメチル化感受性制限酵素で切断される塩基配列が無い場合には、第一工程を実施せずに第二工程を実施しても構わない。
【0041】
本発明測定方法の第二工程では、第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料からメチル化された一本鎖DNAを取得し、該一本鎖DNAと、固定化メチル化DNA抗体とを結合させて一本鎖DNAを選択する。また、第二工程は、第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料に含まれるメチル化された二本鎖DNAをメチル化された一本鎖DNAに分離する第二(A)工程と、第二(A)工程で得られたメチル化一本鎖DNAと固定化メチル化DNA抗体と結合させる第二(B)工程とから構成されてもよい。
【0042】
本発明測定方法の第二(A)工程において、「第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料に含まれるメチル化された二本鎖DNAをメチル化された一本鎖DNAに分離する」際、二本鎖DNAを一本鎖DNAにするための一般的は操作を行えばよい。具体的には、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料を適当量の超純水に溶解し、95℃で10分間加熱し、氷中で急冷すればよい。
【0043】
本発明測定方法の第二(B)工程における
【0044】
第二(B)工程においては、第一工程で得られたDNAから、メチル化された一本鎖DNAを、固定化メチル化DNA抗体とを結合させることにより選択する。固定化メチル化DNA抗体は、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、メチル化された一本鎖DNAを選択するために用いられる。また、固定化メチル化DNA抗体は、支持体に固定化され得るものであればよく、「支持体に固定化され得るもの」とは、固定化メチル化DNA抗体を支持体へ直接的、或いは間接的に固定できることを意味する。このように固定化されるためには、固定化メチル化DNA抗体を通常の遺伝子工学的な操作方法又は市販のキット・装置等に従って、支持体に固定すればよい(固相への結合)。具体的には、固定化メチル化DNA抗体をビオチン化して得られたビオチン化固定化メチル化DNA抗体をストレプトアビジンで被覆した支持体(例えば、ストレプトアビジンで被覆したPCRチューブ、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズ等)に固定する方法を挙げることができる。
また、固定化メチル化DNA抗体を、アミノ基、チオール基、アルデヒド基等の活性官能基を有する分子を共有結合させた後、シランカップリング剤等で表面を活性化させたガラス、多糖類誘導体、シリカゲル、或いは前記合成樹脂等、若しくは耐熱性プラスチック製の支持体に共有結合させる方法もある。尚、共有結合には、例えば、トリグリセライドを5個直列に連結して成るようなスペーサー、クロスリンカー等により共有結合させる方法も挙げられる。
更に、固定化メチル化DNA抗体を直接支持体に固定化してもよく、また、固定化メチル化DNA抗体に対する抗体(二次抗体)を支持体に固定化し、二次抗体にメチル化抗体を結合させることで支持体に固定してもよい。
尚、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を選択する際に本固定化固定化メチル化DNA抗体が支持体に固定化されていればよく、(1)該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化固定化メチル化DNA抗体との結合前の段階で、本固定化固定化メチル化DNA抗体と支持体との結合により固定化されるものであってもよく、また(2)該一本鎖DNA(正鎖)と本固定化固定化メチル化DNA抗体との結合後の段階で、本固定化固定化メチル化DNA抗体と支持体との結合により固定化されるものであってもよい。
【0045】
第二(B)工程において、「メチル化された一本鎖DNAを、固定化固定化メチル化DNA抗体と結合させることにより、前記の一本鎖DNAを選択する」際、具体的には例えば、固定化固定化メチル化DNA抗体として、「ビオチン標識されたビオチン化メチルシトシン抗体」を使用して、以下のように実施すればよい。
(a)ビオチン化メチルシトシン抗体を適当量(例えば、0.1μg/50μL)アビジン被覆PCRチューブに添加し、その後、室温で約1時間静置し、ビオチン化メチルシトシン抗体とストレプトアビジンの固定化を促す。その後、残溶液の除去及び洗浄を行う。洗浄バッファー[例えば、0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を、100μL/チューブの割合で添加し、溶液を取り除く。この洗浄操作を数回繰り返し、支持体に固定化されたビオチン化メチルシトシン抗体をPCRチューブ内に残す。
(b)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来の二本鎖DNAをバッファー(例えば、33mM Tris-Acetate pH 7.9、66mM KOAc、10mM MgOAc2、0.5mM Dithothreitol)とを混合して、95℃で数分間加熱する。その後、約0〜4℃の温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温し、一本鎖DNAを形成させる。その後、室温に戻す。
(c)形成された前記一本鎖DNAを、ビオチン化メチルシトシン抗体が固定化されたアビジン被覆PCRチューブに添加し、その後、室温で約1時間静置し、ビオチン化メチルシトシン抗体と、前記一本鎖DNAのうちメチル化された一本鎖DNAとの結合を促す(結合体の形成)(この段階で、少なくともメチル化されてないDNA領域を含む一本鎖DNAは、結合体を形成しない。)。その後、残溶液の除去及び洗浄を行う。洗浄バッファー[例えば、0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を、100μL/チューブの割合で添加し、溶液を取り除く。この洗浄操作を数回繰り返し、結合体をPCRチューブ内に残す(結合体の選択)。
(b)において使用するバッファーとしては、生物試料由来のゲノムDNA由来の二本鎖DNAを一本鎖DNAへ分離するために適していれば良く、前記バッファーに限ったわけではない。
(a)及び(c)における洗浄操作は、溶液中に浮遊している固定化されていない固定化メチル化DNA抗体、固定化メチル化DNA抗体に結合しなかった溶液中に浮遊しているメチル化されていない一本鎖DNA、または、後述の制限酵素で消化された溶液中に浮遊しているDNA等を反応溶液から取り除くため重要である。尚、洗浄バッファーは、上記の遊離の固定化メチル化DNA抗体、溶液中に浮遊している一本鎖DNA等の除去に適していれば良く、前記洗浄バッファーに限らず、DELFIAバッファー(PerkinElmer社製、Tris-HCl pH 7.8 with Tween 80)、TEバッファー等でも良い。
【0046】
他に第二(A)工程において、メチル化された一本鎖DNAを分離する際の好ましい態様としては、カウンターオリゴヌクレオチドを添加すること等を挙げることができる。カウンターオリゴヌクレオチドとは、目的とするDNA領域と同じ塩基配列を短いオリゴヌクレオチドに分割したものである。通常10〜100塩基、より好ましくは、20〜50塩基の長さに設計したものであればよい。尚、カウンターオリゴヌクレオチドは、フォーワード用プライマーあるいはリバース用プライマーが目的とするDNA領域と相補的に結合する塩基配列上には設計しない。カウンターオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに比し、大過剰で添加され、目的とするDNA領域を一本鎖(正鎖)にした後、固定化メチル化DNA抗体と結合させる際に、目的とするDNA領域の相補鎖(負鎖)と目的とするDNA領域を一本鎖(正鎖)が相補性により再結合することを妨げるために添加する。目的とするDNA領域にメチル化DNA抗体を結合させて、DNAのメチル化頻度又はそれに相関関係のある指標値を測定する際に、目的領域が一本鎖である方がメチル化DNA抗体に結合しやすいからである。尚、カンウターオリゴヌクレオチドは、目的とするDNA領域に比べて、少なくとも10倍、通常は100倍以上の量が添加されることが望ましい。
【0047】
「メチル化された一本鎖DNAを分離する際にカウンターオリゴヌクレオチドを添加する」とは、具体的には、生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料から、メチル化された一本鎖DNAを選択するために、生物由来生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をカウンターオリゴヌクレオチドと混合して、目的とするDNA領域の相補鎖とカウンターオリゴヌクレオチドとの二本鎖を形成させればよい。例えば、前記DNA試料と、前記カウンターオリゴヌクレオチドを、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合して、95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温し、次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻せばよい。
【0048】
第三工程において、下記の各本工程の前工程として、第二工程で選択された一本鎖DNAを、固定化固定化メチル化DNA抗体から分離して遊離の一本鎖状態のDNAにする工程(第一前工程)と、
第一前工程で遊離の一本鎖状態にされたゲノム由来のDNA(正鎖)と、一本鎖状態であるDNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’ 末端より更に3’ 末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)、に対して相補性である塩基配列(負鎖)を有する伸長プライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、遊離の一本鎖状態であるDNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)を有し、且つ、本工程として
(a)生成した目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A工程(本工程)と、
(b)生成した目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記の目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’ 末端より更に3’ 末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有する伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第B工程(本工程)とを有し、
更に第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。
【0049】
第三工程では、まず、下記の各本工程の前工程のうち第一前工程として、第二工程で選択された一本鎖DNAを固定化固定化メチル化DNA抗体から一旦分離して一本鎖状態であるDNAにする。具体的には例えば、第二工程で選択された一本鎖DNAに、アニーリングバッファーを添加することにより、混合物を得る。次いで、得られた混合物を95℃で数分間加熱することにより、一本鎖状態であるDNA(正鎖)を得る。その後、第二前工程では、具体的には例えば、第一前工程で得られた一本鎖状態のDNA(正鎖)とフォワードプライマーを、滅菌超純水を17.85μL、最適な緩衝液(例えば、100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2)を3μL、2mM dNTPを3μL、5N ベタインを6μL加え、次いで該混合物にAmpliTaq(DNAポリメラーゼの1種:5U/μL)を0.15μL加えて液量を30μLとした溶液中で混合し、37℃で約2時間インキュベーションし、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる。第三前工程においては、具体的には例えば、第二前工程で伸長形成された二本鎖DNAに、アニーリングバッファーを添加することにより混合物を得て、得られた混合物を95℃で数分間加熱することにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAに一旦分離する。
その後、本工程として、
(i) 生成した目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)に、前記のフォワード用プライマーをアニーリングさせるために、例えば、前記のフォワード用プライマーのTm値の約0〜20℃低い温度まで速やかに冷却し、その温度で数分間保温する。
(ii)その後、室温に戻す。
(iii)上記(i)でアニーリングさせた前記の一本鎖状態であるDNAを鋳型として、前記のフォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該プライマーを1回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる(即ち、第A工程)。具体的には例えば、後述の説明や前述の本発明の第二前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(iv)生成した目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’ 末端より更に3’ 末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有する伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の一本鎖状態であるDNAを伸長形成された二本鎖DNAとする(即ち、第B工程)。具体的には例えば、上記(iii)のA工程と同様に、第二前工程における伸長反応での操作方法等に準じて実施すればよい。
(v)更に第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すこと(例えば、第A工程及び第B工程)により、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する。
【0050】
第三工程は、具体的には、第一前工程から開始して本工程に至るまでの反応を、一つのPCR反応として実施することもできる。また、第一前工程から第三前工程まで、各々、独立した反応として実施し、本工程のみをPCR反応として実施することもできる。
【0051】
選択された一本鎖DNAに含まれる目的とするDNA領域(即ち、目的領域)を増幅する方法としては、例えば、PCRを用いることができる。目的領域を増幅する際に、予め蛍光等で標識されたプライマーを使用してその標識を指標とすれば、電気泳動等の煩わしい操作を実施せずに増幅産物の有無を評価できる。PCR反応液としては、例えば、本発明の第二工程で得たDNAに、50μMのプライマーの溶液を0.15μlと、2mM dNTPを2.5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、20mM MgCl2、0.01% Gelatin)を2.5μlと、AmpliTaq Gold (耐熱性DNAポリメラーゼの一種: 5U/μl)を0.2μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を25μlとした反応液を挙げることができる。
目的とするDNA領域(即ち、目的領域)は、GCリッチな塩基配列が多いため、時に、ベタイン、DMSO等を適量加えて反応を実施してもよい。反応条件としては、例えば、前記のような反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで55〜65℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を30〜40サイクル行う条件が挙げられる。かかるPCRを行った後、得られた増幅産物を検出する。例えば、予め標識されたプライマーを使用した場合には、先と同様の洗浄・精製操作を実施後、蛍光標識体の量の測定によりPCR反応での増幅量を評価することができる。また、標識されていない通常のプライマーを用いたPCRを実施した場合は、金コロイド粒子、蛍光等で標識したプローブ等をアニーリングさせ、目的領域に結合した該プローブの量を測定することにより検出することができる。また、増幅産物の量をより精度よく求めるには、例えば、リアルタイムPCR法を用いればよい。リアルタイムPCR法とは、PCRをリアルタイムでモニターし、得られたモニター結果をカイネティックス分析する方法であり、例えば、遺伝子量に関して2倍程度のほんのわずかな差異をも検出できる高精度の定量PCR法として知られる方法である。該リアルタイムPCR法には、例えば、鋳型依存性核酸ポリメラーゼプローブ等のプローブを用いる方法、サイバーグリーン等のインターカレーターを用いる方法等を挙げることができる。リアルタイムPCR法のための装置及びキットは市販されるものを利用してもよい。以上の如く、検出については特に限定されることはなく、これまでに周知のあらゆる方法による検出が可能である。これら方法では、反応容器を移し換えることなく検出までの操作が可能となる。
【0052】
本発明は、下記のような場面において利用すればよい。
各種疾患(例えば、癌)においてDNAのメチル化異常が起こることが知られており、このDNAメチル化異常を検出することにより、各種疾患の度合いを測定することが可能と考えられている。
例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されているDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明を実施すれば、メチル化されたDNAの量は多くなり、例えば、疾患由来の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて100%メチル化されていないDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明を実施すれば、メチル化されたDNAの量はほぼ0に近い値となるであろう。また、例えば、健常者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて低メチル化状態(hypomethylation)で、且つ、疾患患者の生物由来検体中に含まれるゲノムDNAにおいて高メチル化状態(hypermethylation)であるDNA領域があり、そのDNA領域について、本発明を実施すれば、健常者の場合には、メチル化されたDNAの量は、0に近い値を示し、一方、疾患患者の場合には、健常者の場合における値よりも有意に高い値を示すため、この値の差異に基づき、「疾患の度合い」を判定することができる。ここでの「疾患の度合い」とは、一般に該分野において使用される意味と同様であって、具体的には、例えば、生物由来検体が細胞である場合には該細胞の悪性度を意味し、また、例えば、生物由来検体が組織である場合には該組織における疾患細胞の存在量等を意味している。更に、生物由来検体が血漿・血清である場合にはその個体が疾患を有する確率を意味している。従って、本発明は、メチル化異常を調べることにより、各種疾患を診断することを可能にする。
【0053】
このような本発明における、目的領域のメチル化されたDNA量の測定を行うための各種方法で使用し得る制限酵素、プライマー又はプローブは、検出用キットの試薬として有用である。本発明は、これら制限酵素、プライマー又はプローブ等を試薬として含有する検出用キットや、これらプライマー又はプローブ等が支持体上に固定化されてなる検出用チップも提供しており、本発明又は本発明メチル化割合測定方法の権利範囲は、該方法の実質的な原理を利用してなる前記のような検出用キットや検出用チップのような形態での使用ももちろん含むものである。
【実施例】
【0054】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.1μg/100μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0056】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計9本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0057】
配列番号17で示される塩基配列からなるHpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer-M(7)、配列番号18で示される塩基配列からなるHpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)、配列番号19で示される塩基配列からなるアンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer-UMを合成して、夫々につき0.001pmol/10μL TEバッファー溶液を調製した。
【0058】
<HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチド>
Nは5-メチルシトシンを示す。
GPR7-2079-2176/98mer-M(7):
5’ - GTTGGCCACTGCGGAGTCGNGCNGGGTGGCNGGCCGCACCTACAGNGCCGNGNGNGCGGTGAGCCTGGCCGTGTGGGGGATCGTCACACTCGTCGTGC -3’ (配列番号17)
<HpaIIの認識配列がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチド>
Nは5-メチルシトシンを示す。
GPR7-2079-2176/98mer-HM(5):
5’ - GTTGGCCACTGCGGAGTCGCGCCGGGTGGCNGGCCGCACCTACAGNGCCGNGNGNGCGGTGAGCCTGGCCGTGTGGGGGATCGTCACACTCGTCGTGC -3’ (配列番号18)
<アンメチル化オリゴヌクレオチド>
GPR7-2079-2176/98mer-UM:
5’ - GTTGGCCACTGCGGAGTCGCGCCGGGTGGCCGGCCGCACCTACAGCGCCGCGCGCGCGGTGAGCCTGGCCGTGTGGGGGATCGTCACACTCGTCGTGC -3’ (配列番号19)
【0059】
得られた夫々の溶液(各溶液について3本ずつ調製)について、以下のA処理、B処理またはC処理を施した(各1本ずつ調製)。
【0060】
A処理群(無処理群):前記で調製したサンプルに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を5μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/mL)を5μLとを加えて、更に該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとした。
【0061】
B処理群(HpaII処理群):前記で調製したサンプルに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を5μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/mL)を5μLと、HpaIIを10Uとを加えて、更に該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとした。
【0062】
C群(マスキング用オリゴヌクレオチド添加+HpaII処理群):前記で調製したサンプルに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を5μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を5μLと、HpaIIを10Uと、配列番号20で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドMAをマスキング用オリゴヌクレオチドとして5pmol加えて、更に該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとした。
【0063】
<マスキング用オリゴヌクレオチド>
MA:5’ - GCCACCCGGCGCGA -3’ (配列番号20)
【0064】
各々の反応液を37℃で1晩インキュベーションした。(以上、本発明の第一工程に相当する)
【0065】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したオリゴヌクレオチド反応液50μLを加え、室温で1時間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作を更に2回繰り返した(以上、本発明の第二工程に相当する)。
【0066】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号21及び配列番号22で示される塩基配列からなるプライマーの各溶液(PF1及びPR1)及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、目的とするDNA領域(GPR7-2079-2176、配列番号23、メチルシトシンもCで表す)におけるメチル化されたDNAを増幅した。
【0067】
<プライマー>
PF1:5’ -GTTGGCCACTGCGGAGTCG-3’ (配列番号21)
PR1:5’ -GCACGACGAGTGTGACGATC-3’ (配列番号22)
【0068】
<目的とするDNA領域>
GPR7-2079-2176:5’ - GTTGGCCACTGCGGAGTCGCGCCGGGTGGCCGGCCGCACCTACAGCGCCGCGCGCGCGGTGAGCCTGGCCGTGTGGGGGATCGTCACACTCGTCGTGC -3’ (配列番号23)
【0069】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、3μMに調製された配列番号21及び配列番号22で示される塩基配列からなるプライマーの溶液各5μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)5U/μLを0.25μLと、5Nベタイン水溶液を10μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで59℃にて30秒間更に72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を25サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、2%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明の第三工程に相当する。)。
【0070】
その結果を図1に示した。A処理群(無処理群)の場合、HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−M(7)と、HpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)では、増幅が確認されその増幅産物(目的とするDNA領域:GPR7−2079−2176)が得られた。アンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−UMでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。B処理群(HpaII処理群)の場合も、A処理群と同様の結果であった。C処理群(マスキング用オリゴヌクレオチド添加+HpaII処理群)の場合、HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−M(7)では、増幅が確認されその増幅産物(目的とするDNA領域:GPR7−2079−2176)が得られたが、HpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)、及び、アンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−UMでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。
【0071】
以上より、固定化したメチルシトシン抗体で、メチル化された目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを選択することが可能であること、また、マスキング用オリゴヌクレオチドを添加・混合しメチル化感受性制限酵素で処理することにより、マスキング用オリゴヌクレオチドで保護されたメチル化感受性制限酵素認識部位がメチル化されていない目的とするDNA領域を消化できること、且つ、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されていないDNAを増幅することなく、メチル化されたDNAのみを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量できることが確認された。
【0072】
実施例2
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0073】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0074】
クロンテック社より購入されたヒト血液由来ゲノムDNAについて、以下の配列番号24及び配列番号25で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマープライマー(PF2及びPR2)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(X、配列番号26、Genbank Accession No. NT_029419等に示される塩基番号25687390-25687775に相当する領域)を増幅した。
【0075】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’ - CTCAGCACCCAGGCGGCC -3’ (配列番号24)
PR2:5’ - CTGGCCAAACTGGAGATCGC -3’ (配列番号25)
【0076】
<DNAフラグメント>
X:5’ - CTCAGCACCCAGGCGGCCGCGATCATGAGGCGCGAGCGGCGCGCGGGCTGTTGCAGAGTCTTGAGCGGGTGGCACACCGCGATGTAGCGGTCGGCTGTCATGACTACCAGCATGTAGGCCGACGCAAACATGCCGAACACCTGCAGGTGCTTCACCACGCGGCACAGCCAGTCGGGGCCGCGGAAGCGGTAGGTGATGTCCCAGCACATTTGCGGCAGCACCTGGAAGAATGCCACGGCCAGGTCGGCCAGGCTGAGGTGTCGGATGAAGAGGTGCATGCGGGACGTCTTGCGCGGCGTCCGGTGCAGAGCCAGCAGTACGCTGCTGTTGCCCAGCACGGCCACCGCGAAAGTCACCGCCAGCACGGCGATCTCCAGTTTGGCCAG -3’(配列番号26)
【0077】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを5ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで61℃にて30秒間更に72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントXを精製した。
【0078】
得られたDNAフラグメント溶液の一部について、SssI methylase (NEB社製)を1μlと、10xNEBuffer2(NEB社製)を10μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を100μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて15-30分間インキュベーションし、さらにS-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlを追加して37℃にて15-30分間インキュベーションした。これをWizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により精製した。さらにこれらの操作を5回繰り返し、メチル化したDNAフラグメント(MX、配列番号27)を得た。
【0079】
<DNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
MX:5’ - CTCAGCACCCAGGNGGCNGNGATCATGAGGNGNGAGNGGNGNGNGGGCTGTTGCAGAGTCTTGAGNGGGTGGCACACNGNGATGTAGNGGTNGGCTGTCATGACTACCAGCATGTAGGCNGANGCAAACATGCNGAACACCTGCAGGTGCTTCACCANGNGGCACAGCCAGTNGGGGCNGNGGAAGNGGTAGGTGATGTCCCAGCACATTTGNGGCAGCACCTGGAAGAATGCCANGGCCAGGTNGGCCAGGCTGAGGTGTNGGATGAAGAGGTGCATGNGGGANGTCTTGNGNGGNGTCNGGTGCAGAGCCAGCAGTANGCTGCTGTTGCCCAGCANGGCCACNGNGAAAGTCACNGCCAGCANGGNGATCTCCAGTTTGGCCAG -3’ (配列番号27)
【0080】
得られたDNAフラグメントXについて、以下の溶液を調製した。
溶液A:100pg/5μL TE溶液
溶液B:10pg/5μL TE溶液
溶液C:1pg/5μL TE溶液
溶液D:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0081】
得られたDNAフラグメントMXについて、以下の溶液を調製した。
溶液MA:100pg/5μL TE溶液
溶液MB:10pg/5μL TE溶液
溶液MC:1pg/5μL TE溶液
溶液MD:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0082】
前記のDNAフラグメントXの溶液及びメチル化したDNAフラグメントMXの溶液の夫々について、以下の処理を施した。
【0083】
前記で調製したDNAフラグメント溶液5μLに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を2μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLと、メチル化感受性制限酵素HpaIIを12Uを加え、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした各々の混合液を37℃で3時間インキュベーションした(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0084】
配列番号28で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域X’ の負鎖に相補性により結合可能な配列番号29〜配列番号40で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC1〜C12を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0085】
<目的とするDNA領域>
X’ :5’ - CTCAGCACCCAGGCGGCCGCGATCATGAGGCGCGAGCGGCGCGCGGGCTGTTGCAGAGTCTTGAGCGGGTGGCACACCGCGATGTAGCGGTCGGCTGTCATGACTACCAGCATGTAGGCCGACGCAAACATGCCGAACACCTGCAGGTGCTTCACCACGCGGCACAGCCAGTCGGGGCCGCGGAAGCGGTAGGTGATGTCCCAGCACATTTGCGGCAGCACCTGGAAGAATGCCACGGCCAGGTCGGCCAGGCTGAGGTGTCGGATGAAGAGGTGCATGCGGGACGTCTTGCGCGGCGTCCGGTGCAGAGCCAGCAGTACGCTGCTGTTGCCCAGCACGGCCACCGCGAAAGTCACCGCCAGCACGGCGATCTCCAGTTTGGCCAG -3’ (配列番号28)
【0086】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C1:5’ - GCCACCGCGAAAGTCACCGCCAGCACGGCG -3’ (配列番号29)
C2:5’ - GCCAGCAGTACGCTGCTGTTGCCCAGCACG -3’ (配列番号30)
C3:5’ - CGGGACGTCTTGCGCGGCGTCCGGTGCAGA -3’ (配列番号31)
C4:5’ - AGGCTGAGGTGTCGGATGAAGAGGTGCATG -3’ (配列番号32)
C5:5’ - ACCTGGAAGAATGCCACGGCCAGGTCGGCC -3’ (配列番号33)
C6:5’ - TAGGTGATGTCCCAGCACATTTGCGGCAGC -3’ (配列番号34)
C7:5’ - CGGCACAGCCAGTCGGGGCCGCGGAAGCGG -3’ (配列番号35)
C8:5’ - ATGCCGAACACCTGCAGGTGCTTCACCACG -3’ (配列番号36)
C9:5’ - ATGACTACCAGCATGTAGGCCGACGCAAAC -3’ (配列番号37)
C10:5’ - TGGCACACCGCGATGTAGCGGTCGGCTGTC -3’ (配列番号38)
C11:5’ - CGCGCGGGCTGTTGCAGAGTCTTGAGCGGG -3’ (配列番号39)
C12:5’ - CAGGCGGCCGCGATCATGAGGCGCGAGCGG -3’ (配列番号40)
【0087】
前記の反応液に、調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLと、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻した(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0088】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する)。
【0089】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号24及び配列番号25で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF2及びPR2の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号28で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域X’ におけるメチル化されたDNAを増幅した。
【0090】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF2:5’ - CTCAGCACCCAGGCGGCC -3’ (配列番号24)
PR2:5’ - CTGGCCAAACTGGAGATCGC -3’ (配列番号25)
【0091】
<目的とするDNA領域>
X’ :5’ - CTCAGCACCCAGGCGGCCGCGATCATGAGGCGCGAGCGGCGCGCGGGCTGTTGCAGAGTCTTGAGCGGGTGGCACACCGCGATGTAGCGGTCGGCTGTCATGACTACCAGCATGTAGGCCGACGCAAACATGCCGAACACCTGCAGGTGCTTCACCACGCGGCACAGCCAGTCGGGGCCGCGGAAGCGGTAGGTGATGTCCCAGCACATTTGCGGCAGCACCTGGAAGAATGCCACGGCCAGGTCGGCCAGGCTGAGGTGTCGGATGAAGAGGTGCATGCGGGACGTCTTGCGCGGCGTCCGGTGCAGAGCCAGCAGTACGCTGCTGTTGCCCAGCACGGCCACCGCGAAAGTCACCGCCAGCACGGCGATCTCCAGTTTGGCCAG -3’ (配列番号28)
【0092】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで61℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を25サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第四工程に相当する。)。
【0093】
その結果を図2に示した。メチル化されたDNAフラグメントMXの溶液MA、MB及びMCでは、増幅が確認されその増幅産物が得られた。ネガティブコントロール溶液MDでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。メチル化されていないDNAフラグメントXの溶液A、B、C及びDでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。
【0094】
以上より、固定化したメチルシトシン抗体で、メチル化された目的とするDNA領域を含むDNAを選択することが可能であること、また、メチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAをより高感度に検出できることが確認された。
【0095】
実施例3
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0096】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0097】
クロンテック社より購入されたヒト血液由来ゲノムDNAについて、以下の配列番号41及び配列番号42で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF3及びPR3)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(Y、配列番号43、Genbank Accession No. ac009800等に示される塩基番号76606-76726に相当する領域)を増幅した。
【0098】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF3:5’ - TGAGCTCCGTAGGGCGTCC -3’ (配列番号41)
PR3:5’ - GCGCCGGGTCCGGGCCC -3’ (配列番号42)
【0099】
<DNAフラグメント>
Y:5’ - GCGCCGGGTCCGGGCCCGATGCGTTGGCGGGCCAGGGCTCCGAGAACGAGGCGTTGTCCATCTCAACGAGGGCAGAGGAGCCGGCGACCTGGCGTCCCCCAAGGACGCCCTACGGAGCTCA -3’ (配列番号43)
【0100】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを5ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて30秒間次いで60℃にて30秒間更に72℃にて45秒間を1サイクルとする保温を50サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントYを精製した。
【0101】
得られたDNAフラグメント溶液の一部について、SssI methylase (NEB社製)を1μlと、10xNEBuffer2(NEB社製)を10μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を100μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて15-30分間インキュベーションし、さらにS-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlを追加して37℃にて15-30分間インキュベーションした。これをWizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により精製した。さらにこの操作を5回繰り返し、メチル化したDNAフラグメント(MY、配列番号44)を得た。
【0102】
<DNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
MY:5’ - GNGCNGGGTCNGGGCCNGATGNGTTGGNGGGCCAGGGCTCNGAGAANGAGGNGTTGTCCATCTCAANGAGGGCAGAGGAGCNGGNGACCTGGNGTCCCCCAAGGANGCCCTANGGAGCTCA -3’ (配列番号44)
【0103】
得られたDNAフラグメントYについて、以下の溶液を調製した。
溶液A:100pg/5μL TE溶液
溶液B:10pg/5μL TE溶液
溶液C:1pg/5μL TE溶液
溶液D:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0104】
得られたDNAフラグメントMYについて、以下の溶液を調製した。
溶液MA:100pg/5μL TE溶液
溶液MB:10pg/5μL TE溶液
溶液MC:1pg/5μL TE溶液
溶液MD:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0105】
前記のDNAフラグメントYの溶液及びメチル化したDNAフラグメントMYの溶液の夫々について、以下の処理を施した。
【0106】
前記で調製したDNAフラグメント溶液5μLに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を2μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLと、メチル化感受性制限酵素HpaIIを12Uを加え、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした各々の混合液を37℃で3時間インキュベーションした(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0107】
配列番号45で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Y’ の負鎖に相補性により結合可能な配列番号46、塩基配列47及び配列番号48で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC13、C14、及びC15を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0108】
<目的とするDNA領域>
Y’ :5’ - GCGCCGGGTCCGGGCCCGATGCGTTGGCGGGCCAGGGCTCCGAGAACGAGGCGTTGTCCATCTCAACGAGGGCAGAGGAGCCGGCGACCTGGCGTCCCCCAAGGACGCCCTACGGAGCTCA -3’ (配列番号45)
【0109】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C13:5’ - GCGTCCCCCAAGGACGCCCTACGGAGCTCA -3’ (配列番号46)
C14:5’ - CTCAACGAGGGCAGAGGAGCCGGCGACCTG -3’ (配列番号47)
C15:5’ - CGCCGGGTCCGGGCCCGATGCGTTGGCGGG -3’ (配列番号48)
【0110】
前記の反応液に、調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLと、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻した(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0111】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する)。
【0112】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号41及び配列番号42で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF3及びPR3の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号45で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域Y’ におけるメチル化されたDNAを増幅した。
【0113】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF3:5’ - TGAGCTCCGTAGGGCGTCC -3’ (配列番号41)
PR3:5’ - GCGCCGGGTCCGGGCCC -3’ (配列番号42)
【0114】
<目的とするDNA領域>
Y’ :5’ - GCGCCGGGTCCGGGCCCGATGCGTTGGCGGGCCAGGGCTCCGAGAACGAGGCGTTGTCCATCTCAACGAGGGCAGAGGAGCCGGCGACCTGGCGTCCCCCAAGGACGCCCTACGGAGCTCA -3’ (配列番号45)
【0115】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで60℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を25サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する。)。
【0116】
その結果を図3に示した。メチル化されたDNAフラグメントMYの溶液MA、MB及びMCでは、増幅が確認された。ネガティブコントロール溶液MDでは、増幅が確認されなかった。メチル化されていないDNAフラグメントYの溶液A、B、C及びDでは、増幅が確認されなかった。
【0117】
以上より、固定化したメチルシトシン抗体で、メチル化された目的とするDNA領域を含むDNAを選択することが可能であること、また、メチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAをより高感度に検出できることが確認された。
【0118】
実施例4
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0119】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0120】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
得られたゲノムDNAから、以下の配列番号49及び配列番号50で示されるPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー(PF4及びPR4)及び反応条件を用いてPCRを行うことにより、供試サンプルとして用いられるDNAフラグメント(T、配列番号51、Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号384569-384685に相当する領域)を増幅した。
【0121】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF4:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTAT -3’ (配列番号49)
PR4:5’ - AGTACAGATCTGGCGTTCTCG -3’ (配列番号50)
【0122】
<DNAフラグメント>
T:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTATAACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGTATTGCGAAATCCGCCCGGACGATATCACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTCCGAGAACGCCAGATCTGTACT -3’ (配列番号51)
【0123】
PCRの反応液としては、鋳型とするゲノムDNAを10ngと、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μlと、each 2mM dNTPを5μlと、10×緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μlと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μlを0.25μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μlとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間更に72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を40サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認し、Wizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により、DNAフラグメントTを精製した。
【0124】
得られたDNAフラグメント溶液の一部について、SssI methylase (NEB社製)を1μlと、10xNEBuffer2(NEB社製)を10μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を100μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて15-30分間インキュベーションし、さらにS-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlを追加して37℃にて15-30分間インキュベーションした。これをWizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により精製した。さらにこの操作を3回繰り返し、メチル化したDNAフラグメント(MT、配列番号52)を得た。
【0125】
<DNAフラグメント>(Nは5-メチルシトシンを示す)
MT:5’ - GGACCTGTGTTTGANGGGTATAACACTAAGTTGNGCAATTTGCTGTATTGNGAAATCNGCCNGGANGATATCACTCTTGAGNGCATGTGCNGTTTCNGAGAANGCCAGATCTGTACT -3’ (配列番号52)
【0126】
得られたDNAフラグメントTについて、以下の溶液を調製した。
溶液A:100pg/5μL TE溶液
溶液B:10pg/5μL TE溶液
溶液C:1pg/5μL TE溶液
溶液D:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0127】
得られたDNAフラグメントMTについて、以下の溶液を調製した。
溶液MA:100pg/5μL TE溶液
溶液MB:10pg/5μL TE溶液
溶液MC:1pg/5μL TE溶液
溶液MD:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0128】
前記のDNAフラグメントTの溶液及びメチル化したDNAフラグメントMTの溶液の夫々について、以下の処理を施した。
【0129】
前記で調製したDNAフラグメント溶液5μLに、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を2μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLと、メチル化感受性制限酵素HpaIIを12Uを加え、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした各々の混合液を37℃で3時間インキュベーションした(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0130】
配列番号53で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域T’ の負鎖に相補性により結合可能な配列番号54〜配列番号57で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC16〜C19を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0131】
<目的とするDNA領域>
T’ :5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTATAACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGTATTGCGAAATCCGCCCGGACGATATCACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTCCGAGAACGCCAGATCTGTACT -3’ (配列番号53)
【0132】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C16:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTAT -3’ (配列番号54)
C17:5’ - AACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGT -3’ (配列番号55)
C18:5’ - ATTGCGAAATCCGCCCGGACGATAT -3’ (配列番号56)
C19:5’ - CACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTC -3’ (配列番号57)
【0133】
前記の反応液に、調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLと、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻した(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0134】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する)。
【0135】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号49及び配列番号50で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF4及びPR4の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号53で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域T’ におけるメチル化されたDNAを増幅した。
【0136】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF4:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTAT -3’ (配列番号49)
PR4:5’ - AGTACAGATCTGGCGTTCTCG -3’ (配列番号50)
【0137】
<目的とするDNA領域>
T’ :5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTATAACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGTATTGCGAAATCCGCCCGGACGATATCACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTCCGAGAACGCCAGATCTGTACT -3’ (配列番号53)
【0138】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を28サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第四工程に相当する。)。
【0139】
その結果を図4に示した。メチル化されたDNAフラグメントMTの溶液MA、MB及びMCでは、増幅が確認されその増幅産物が得られた。ネガティブコントロール溶液MDでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。メチル化されていないDNAフラグメントTの溶液A、B、C及びDでは、増幅が確認されずその増幅産物は得られなかった。
【0140】
以上より、固定化したメチルシトシン抗体で、メチル化された目的とするDNA領域を含むDNAを選択することが可能であること、また、メチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAをより高感度に検出できることが確認された。
【0141】
実施例5
市販のメチルシトシン抗体(Aviva Systems Biology社製)を、市販ビオチン化キット(Biotin Labeling Kit-NH2、同仁化学研究所製)を用いて、カタログに記載された方法に準じて、ビオチン標識した。得られたビオチン標識メチルシトシン抗体を溶液[抗体約0.25 μg/μL 0.1% BSA含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)溶液]として冷蔵保存した。
【0142】
ストレプトアビジン被覆済みPCRチューブ(計8本)に、合成して得られたビオチン標識メチルシトシン抗体の0.1 μg/50 μL溶液を各50μLの割合で添加し、約1時間室温で放置してPCRチューブに固定化した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法で使用する固定化メチル化DNA抗体の調製に相当する)。
【0143】
パン酵母酵母株X2180−1AをYPD培地(1% Yeast extract、2% Peptone、2% Glucose, pH 5.6-6.0)で、濁度がOD600 0.6-1.0 になるまで培養し、10,000g で10分間遠心して、1x107の酵母細胞を調製した。調製した酵母細胞から、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されているような、一般的な酵母ゲノムの調製法を用いて酵母ゲノムを取得した。
調製した酵母細胞を、バッファーA(1M ソルビトール、 0.1M EDTA、pH 7.4)に懸濁し、0.1% 2-メルカプトエタノール(終濃度14mM)及び100U zymolase(10 mg/ml)を添加して、溶液が透明になるまで 30°C で1時間、撹拌しながらインキュベートした。550gで10分間遠心してプロトプラストを回収後、バッファーB(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、 20 mM EDTA)に懸濁してから、ドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、65℃で30分間インキュベートした。続いて、体積比2/5量の5M CH3COOKを添加して混和してから30分間氷冷後、15,000gで30分間遠心して上清を回収した。回収した上清に体積比1/10量の3M CH3COONaと等量のイソプロパノ−ルを加えてよく混和し、15,000g 4℃で30分間遠心して得られた沈澱を70%エタノールでリンスして回収した。沈澱を乾燥させてから、1ml のTEバッファー(10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)に溶解し、40μg/mlになるようにRNase A(Sigma社製)を加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて、混合液にproteinase K(Sigma社製)を500μg/ml及びドデシル硫酸ナトリウムを1%(w/v)になるように加えた後、これを55℃で約16時間振とうした。振とう終了後、当該混合物をフェノール[1M Tris-HCl(pH 8.0)にて飽和]・クロロホルム抽出処理した。水層を回収し、これにNaClを0.5Nとなるよう加えた後、これをエタノール沈澱処理して生じた沈澱を回収した。回収された沈澱を70%エタノールでリンスすることにより、ゲノムDNAを得た。
【0144】
得られた酵母ゲノムDNAの一部について、SssI methylase (NEB社製)を1μlと、10xNEBuffer2(NEB社製)を10μlと、S-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を100μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて15-30分間インキュベーションし、さらにS-adenosyl methionine (3.2 mM, NEB社製)を1μlを追加して37℃にて15-30分間インキュベーションした。これをWizard SV Gel/PCR Kit(PROMEGA社)により精製した。さらにこの操作を3回繰り返し、メチル化酵母ゲノムDNAを得た。
【0145】
得られた酵母ゲノムDNAについて、以下の溶液を調製した。
溶液A:10ng/5μL TE溶液
溶液B:1ng/5μL TE溶液
溶液C:0.1ng/5μL TE溶液
溶液D:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0146】
得られたメチル化酵母ゲノムDNAについて、以下の溶液を調製した。
溶液MA:10ng/5μL TE溶液
溶液MB:1ng/5μL TE溶液
溶液MC:0.1ng/5μL TE溶液
溶液MD:TE溶液(ネガティブコントロール液)
【0147】
上記の酵母ゲノムDNAの溶液及びメチル化酵母ゲノムDNAの溶液の夫々について、以下の処理を施した。
【0148】
PCRチューブに、上記に調製したゲノムDNA溶液5μLと、制限酵素XspIを5Uと、XspIに最適な10x緩衝液(200mM Tris-HCl pH 8.5、100mM MgCl2、10mM Dithiothreitol、1000mM KCl)1μlとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を10μlとしたものを調製した。当該反応液を、37℃にて1時間インキュベーションした。
【0149】
さらに上記の反応液に、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)を2μLと、BSA(Bovine serum albumin 1mg/ml)を2μLと、メチル化感受性制限酵素HpaIIを12Uを加え、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を20μLとした各々の混合液を37℃で3時間インキュベーションした(以上、本発明測定方法の第一工程に相当する)。
【0150】
配列番号58で示される塩基配列からなるDNAフラグメントT’(Genbank Accession No. NC_001139等に示される酵母染色体VIIの塩基番号384523-384766に相当する領域)の負鎖に相補性により結合可能な配列番号54〜配列番号57及び配列番号59〜配列番号62で示される塩基配列からなるカウンターオリゴヌクレオチドC16〜C23を合成し、夫々の濃度が0.01μMであるTEバッファー溶液を調製した。
【0151】
<DNAフラグメント>
T’:5’ - TAGGAAATACATTCCGAGGGCGCCCGCACAAGGCCTATTATTAGAGGGACCTGTGTTTGACGGGTATAACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGTATTGCGAAATCCGCCCGGACGATATCACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTCCGAGAACGCCAGATCTGTACTGCGATCGCACACGAGGAGACACAGCGTCACGTGTTTTGCCATTTTGTACGACAAATGAACCGCCTGGCCACGCCTCTAATC -3’ (配列番号58)
【0152】
<カウンターオリゴヌクレオチド>
C16:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTAT -3’ (配列番号54)
C17:5’ - AACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGT -3’ (配列番号55)
C18:5’ - ATTGCGAAATCCGCCCGGACGATAT -3’ (配列番号56)
C19:5’ - CACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTC -3’ (配列番号57)
C20:5’ - AATACATTCCGAGGGCGCCCGCACAAGGCC -3’ (配列番号59)
C21:5’ - GCGATCGCACACGAGGAGACA -3’ (配列番号60)
C22:5’ - AGCGTCACGTGTTTTGCCATTTTGTACGAC -3’ (配列番号61)
C23:5’ - AAATGAACCGCCTGGCCACGCCTCTAATC -3’ (配列番号62)
【0153】
前記の酵母ゲノムDNA及びメチル化酵母ゲノムDNAの夫々の反応液について、以下の処理を施した。
【0154】
前記の反応液に、調製したカウンターオリゴヌクレオチド溶液10μLと、緩衝液(330mM Tris-Acetate pH 7.9、660mM KOAc、100mM MgOAc2、5mM Dithiothreitol)5μLと、100mMのMgCl溶液5μLと、1mg/mLのBSA溶液5μLを添加し、さらに当該混合物に滅菌超純水を加えて液量を50μLとし、混合した。その後、本PCRチューブを95℃で10分間加熱し、70℃まで速やかに冷却し、その温度で10分間保温した。次いで、50℃まで冷却し10分間保温し、さらに37℃で10分間保温した後、室温に戻した(以上、本発明測定方法の第二工程に相当する)。
【0155】
前記のビオチン標識メチルシトシン抗体が固定化されたストレプトアビジン被覆済みPCRチューブに、前記で調製したDNAフラグメントの反応液50μLを加え、室温で30分間放置した。その後、溶液をピペッティングにより取り除き、100μLの洗浄バッファー[0.05% Tween20含有リン酸バッファー(1mM KH2PO4、3mM Na2HPO 7H2O、154mM NaCl pH7.4)]を添加した後、当該バッファーをピペッティングにより取り除いた。この操作をさらに2回繰り返した(以上、本発明測定方法の第三工程に相当する)。
【0156】
次に、上記のPCRチューブに、配列番号49及び配列番号50で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーPF4及びPR4の各溶液及び、下記の反応条件を用いてPCRを行うことにより、配列番号53で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域T’ におけるメチル化されたDNAを増幅した。
【0157】
<PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー>
PF4:5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTAT -3’ (配列番号49)
PR4:5’ - AGTACAGATCTGGCGTTCTCG -3’ (配列番号50)
【0158】
<目的とするDNA領域>
T’ :5’ - GGACCTGTGTTTGACGGGTATAACACTAAGTTGCGCAATTTGCTGTATTGCGAAATCCGCCCGGACGATATCACTCTTGAGCGCATGTGCCGTTTCCGAGAACGCCAGATCTGTACT -3’ (配列番号53)
【0159】
PCRの反応液としては、鋳型とするDNAに、5μMに調製されたオリゴヌクレオチドプライマー溶液各3μLと、each 2mM dNTPを5μLと、緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、0.01% Gelatin)を5μLと、耐熱性DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold、ABI社製)5U/μLを0.25μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を50μLとしたものを用いた。当該反応液を、95℃にて10分間保温した後、95℃にて20秒間次いで58℃にて30秒間さらに72℃にて30秒間を1サイクルとする保温を31サイクル行う条件でPCRを行った。
PCRを行った後、1.5%アガロースゲル電気泳動により増幅を確認した。その結果は、以下の通りであった(以上、本発明測定方法の第四工程に相当する。)。
【0160】
その結果を図5に示した。メチル化酵母ゲノムDNAの溶液MA、MB及びMCでは、増幅が確認された。ネガティブコントロール溶液MDでは、増幅が確認されなかった。メチル化されていない酵母ゲノムDNAの溶液A、B、C及びDでは、増幅が確認されなかった。
【0161】
以上より、固定化したメチルシトシン抗体で、メチル化された目的とするDNA領域を含むDNAを選択することが可能であること、また、メチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAをより高感度に検出できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明により、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を簡便に測定する方法等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、実施例1において、調製されたサンプルから配列番号23で示された塩基配列からなる領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。 図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−M(7)溶液の「A」処理が施されたサンプル「M」、HpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)溶液の「A」処理が施されたサンプル「H」、アンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−UM溶液の「A」処理が施されたサンプル「U」、HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−M(7)溶液の「B」処理が施されたサンプル「M」、HpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)溶液の「B」処理が施されたサンプル「H」、アンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−UM溶液の「B」処理が施されたサンプル「U」、HpaIIの認識配列がメチル化されている部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−M(7)溶液の「C」処理が施されたサンプル「M」、HpaIIの認識配列の一部がメチル化されていない部分メチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−HM(5)溶液の「C」処理が施されたサンプル「H」、アンメチル化オリゴヌクレオチドGPR7−2079−2176/98mer−UM溶液の「C」処理が施されたサンプル「U」、での結果を示している。
【0164】
【図2】図2は、実施例2において、調製されたサンプルから配列番号28で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、メチル化されたDNAフラグメントMXの溶液「MD」(ネガティブコントロール)、メチル化されていないDNAフラグメントXの溶液「D」(ネガティブコントロール)、メチル化されたDNAフラグメントMXの溶液「MC」、メチル化されていないDNAフラグメントXの溶液「C」、メチル化されたDNAフラグメントMXの溶液「MB」、メチル化されていないDNAフラグメントXの溶液「B」、メチル化されたDNAフラグメントMXの溶液「MA」、メチル化されていないDNAフラグメントXの溶液「A」、での結果を示している。
【0165】
【図3】図3は、実施例3において、調製されたサンプルから配列番号45で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、メチル化されたDNAフラグメントMYの溶液「MD」(ネガティブコントロール)、メチル化されていないDNAフラグメントYの溶液「D」(ネガティブコントロール)、メチル化されたDNAフラグメントMYの溶液「MC」、メチル化されていないDNAフラグメントYの溶液「C」、メチル化されたDNAフラグメントMYの溶液「MB」、メチル化されていないDNAフラグメントYの溶液「B」、メチル化されたDNAフラグメントMYの溶液「MA」、メチル化されていないDNAフラグメントYの溶液「A」、での結果を示している。
【0166】
【図4】図4は、実施例4において、調製されたサンプルから配列番号53で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、メチル化されたDNAフラグメントMTの溶液「MD」(ネガティブコントロール)、メチル化されていないDNAフラグメントTの溶液「D」(ネガティブコントロール)、メチル化されたDNAフラグメントMTの溶液「MC」、メチル化されていないDNAフラグメントTの溶液「C」、メチル化されたDNAフラグメントMTの溶液「MB」、メチル化されていないDNAフラグメントTの溶液「B」、メチル化されたDNAフラグメントMTの溶液「MA」、メチル化されていないDNAフラグメントTの溶液「A」、での結果を示している。
【0167】
【図5】図5は、実施例5において、調製されたサンプルから配列番号53で示される塩基配列からなる目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAをPCRにて増幅し、得られた増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動した結果を示した図である。図中の一番左のレーンから、DNAマーカー「MK」、メチル化酵母ゲノムDNAの溶液「MD」(ネガティブコントロール)、メチル化されていない酵母ゲノムDNAの溶液「D」(ネガティブコントロール)、メチル化酵母ゲノムDNAの溶液「MC」、メチル化されていない酵母ゲノムDNAの溶液「C」、メチル化酵母ゲノムDNAの溶液「MB」、メチル化されていない酵母ゲノムDNAの溶液「B」、メチル化酵母ゲノムDNAの溶液「MA」、メチル化されていない酵母ゲノムDNAの溶液「A」、での結果を示している。
【0168】
[配列表フリーテキスト]
配列番号17
実験のために設計された部分メチル化オリゴヌクレオチド
配列番号18
実験のために設計された部分メチル化オリゴヌクレオチド
配列番号19
実験のために設計されたアンメチル化オリゴヌクレオチド
配列番号20
実験のために設計されたマスキング用オリゴヌクレオチド
配列番号21
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
目的とするDNA領域からなるオリゴヌクレオチド
配列番号24
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号25
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号26
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号27
実験のために設計されたメチル化DNAフラグメント
配列番号28
目的とするDNA領域からなるオリゴヌクレオチド
配列番号29
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号30
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号31
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号32
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号33
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号34
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号35
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号36
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号37
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号38
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号39
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号40
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号41
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号42
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号43
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号44
実験のために設計されたメチル化DNAフラグメント
配列番号45
目的とするDNA領域からなるオリゴヌクレオチド
配列番号46
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号47
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号48
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号49
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号50
実験のために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号51
実験のために設計されたDNAフラグメント
配列番号52
実験のために設計されたメチル化DNAフラグメント
配列番号53
目的とするDNA領域からなるオリゴヌクレオチド
配列番号54
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号55
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号56
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号57
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号58
目的とするDNA領域からなるオリゴヌクレオチド
配列番号59
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号60
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号61
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド
配列番号62
実験のために設計されたカウンターオリゴヌクレオチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAの含量を測定する方法であって、
(1)生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料をメチル化感受性制限酵素による消化処理を行う第一工程、
(2)第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料からメチル化された一本鎖DNAを取得し、該一本鎖DNAと、固定化メチル化DNA抗体とを結合させて一本鎖DNAを選択する第二工程、及び、
(3)下記の各本工程の前工程として第二工程で選択された一本鎖DNAを、固定化メチル化DNA抗体から分離して一本鎖状態であるDNA(正鎖)にする工程(第一前工程)と、
第一前工程で一本鎖状態にされたゲノム由来のDNA(正鎖)を、一本鎖状態であるDNA(正鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(正鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(正鎖)、に対して相補性である塩基配列(負鎖)を有する伸長プライマー(フォーワード用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を二本鎖DNAに伸長形成させる工程(第二前工程)と、
第二前工程で伸長形成された二本鎖DNAを、目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)に一旦分離する工程(第三前工程)を有し、且つ、本工程として
(a)生成した目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)を鋳型として、前記フォワード用プライマーを伸長プライマーとして、該伸長プライマーを一回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第A工程(本工程)と、
(b)生成した目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)を鋳型として、前記の目的とするDNA領域に対して相補性である塩基配列を含む一本鎖DNA(負鎖)が有する塩基配列の部分塩基配列(負鎖)であって、且つ、前記の目的とするDNA領域の塩基配列(正鎖)に対して相補性である塩基配列(負鎖)の3’末端よりさらに3’末端側に位置する部分塩基配列(負鎖)、に対して相補性である塩基配列(正鎖)を有する伸長プライマー(リバース用プライマー)を伸長プライマーとして、該伸長プライマーを1回伸長させることにより、前記の目的とするDNA領域を含む一本鎖DNAを二本鎖DNAとして伸長形成させる第B工程(本工程)とを有し、
さらに第三工程の各本工程を、前記各本工程で得られた伸長形成された二本鎖DNAを一本鎖状態に一旦分離した後、繰り返すことにより、前記の目的とするDNA領域におけるメチル化されたDNAを検出可能な量になるまで増幅し、増幅されたDNAの量を定量する第三工程、を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
固定化メチル化DNA抗体がメチルシトシン抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物由来検体が哺乳動物の血液、体液、血清、血漿、細胞溶解液又は組織溶解液である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
生物由来検体中に含まれるゲノムDNA由来のDNA試料が、該ゲノムDNAが有する目的とするDNA領域を認識切断部位としない制限酵素で予め消化処理されてなるDNA試料、又は予め精製されてなるDNA試料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第一工程が、
目的とするDNA領域を含む一本鎖DNA(正鎖)と、メチル化感受性制限酵素の認識部位の塩基配列と相補的な塩基配列からなるマスキング用オリゴヌクレオチドと、を混合することにより、該メチル化感受性制限酵素の認識部位が保護されてなる一本鎖DNAを選択する第一(A)工程と、
第一(A)工程で選択された一本鎖DNAをメチル化感受性制限酵素で消化処理する第一(B)工程と、から構成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
メチル化感受性制限酵素が、生物由来検体中に含まれるゲノムDNAが有する目的とするDNA領域の中に認識切断部位を有する制限酵素、又はHhaIである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第一工程におけるメチル化感受性制限酵素による消化処理を行わずに第二工程を行う請求項1〜6のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項8】
第二工程が、
第一工程で得られた消化処理が行われたDNA試料に含まれるメチル化された二本鎖DNAをメチル化された一本鎖DNAに分離する第二(A)工程と、
第二(A)工程で得られたメチル化一本鎖DNAと固定化メチル化DNA抗体と結合させる第二(B)工程とからなり、
第二(A)工程でメチル化された二本鎖DNAをメチル化一本鎖DNAに分離する際に、カウンターオリゴヌクレオチドを添加する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−225760(P2009−225760A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77967(P2008−77967)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】