説明

メッキ液の再生方法

【課題】 本発明では電気透析法を応用することで、有害成分を簡便に除去・無害化する手段を提供する。
【解決手段】 メッキ液の陰極側にカチオン膜を、陽極側にアニオン膜を配置し、透析により分離された陰極側液と陽極側液を混合する事無く電気透析することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属分を含むメッキ液のその有害蓄積成分を除去し、再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属分を含むメッキ液、特にNiや銅や金等の無電解メッキ液では金属分の補給のためまた、その還元析出のため、阻害要因となる各種陽・陰イオンが蓄積しメッキ液の更新が必要となっている。その際有害金属分を含むためその除去が必要であるが、その処理は有害物の金属分と安定剤や還元剤等の陰イオンが共存するため、通常のアルカリ処理による沈殿分離は困難な為、専門技術を有する会社にて処理を委託している。
【0003】
また電気透析技術を応用してメッキ液の再生技術が提案されているが、特許文献1または2に見られるように基本的の透析構成はメッキ液系と陽極側と陰極側から透析された廃液系と陰極・陽極電極が配置されている電極液系の3系統により構成され、透析された廃液系溶液はその金属分と安定剤や還元剤等の陰イオンが共存する為、擬似メッキ液となっており、専門業者への委託処理がなされている。
【0004】
また電極液系では電気透析処理時の通電は基本的にはイオンを移動させる為であって、陽・陰電極反応は水素および酸素の発生によるPH変動が生じるのみで目的とする有害成分除去のための電気透析処理とは無縁である。
【特許文献1】特開平10−195670号公報
【特許文献2】特表2002−527630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では電気透析法を応用することで、有害成分を簡便に除去・無害化する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属イオンを含むメッキ液、特にNiや銅や金等の無電解メッキ液を電気透析法で再生する技術において、陰極側にカチオン膜を配置し透析される金属を含む陽イオンと、陽極側にアニオン膜を配置し透析される陰イオンを分離した状態で行う。
【0007】
その場合、陰極側には除去対象イオンであるNaやKなどのイオンと共にメッキ液構成種である金属イオンも同時に透析される。このときの陰極側構成液は硫酸や塩酸などの金属分を溶解する塩で構成される。また、使用されるカチオン膜はセレミオンCMV(旭硝子社製、商品名)やネオセプタCM1(アストム社製、商品名)等が用いられ、特に制限は無い。
【0008】
また、その陽極側には除去対象イオンである、還元剤(次亜燐酸やホルマリン)の分解物(亜燐酸やアセトアルデヒド)と金属分の補給対イオンの硫酸や塩素イオンと共にメッキ液構成種である各種陰イオン(酢酸やリンゴ酸やEDTA等の有機酸)も同時に透析される。このときの陽極側構成液は透析成分と沈殿物を形成しない硫酸や塩酸やNaOHなどで構成される。また、使用されるアニオン膜はセレミオンAMV(旭硝子社製、商品名)やネオセプタAM1(アストム社製、商品名)等が用いられ、特に制限は無い。以上透析により分離された陰極液は単純な金属溶液のため通常の排水処理方法である、アルカリ領域で金属水酸化物形成と濾過により容易に処理され、また、その陽極液ではPH調整により生成される、中和物形成・濾過分離により容易に処理される。
【0009】
本法では更に陰極液を陰電極室に導くことで、電気透析環境下でその透析金属イオンを電解還元反応を利用することで透析と同時に陰極液中の金属イオンを金属分として除去することも提案している。用いられる電極は金属であれば何れも利用でき純度の高い金属として、再利用が可能である。その電解条件は特に指定無く0.1A/dm2〜10A/dm2が通常用いられる。
【0010】
更に陽極液を陽電極室に導くことで、電気透析環境下でその透析イオンを電解酸化反応を利用することで透析と同時に陽極液中の有機酸イオンの分解によるCOD逓減と還元剤イオンや還元剤分解イオン等燐酸イオンへの変質により容易にP成分の分離除去性アップが図られることも提案している。用いられる電極はその不溶解性金属であれば何れも利用でき通常Ti/PT電極やSUS材が用いられる。その電解条件は特に指定無く0.1A/dm2〜10A/dm2が通常用いられる。本法では更にその陽極液にNaCLや硫酸を添加することで次亜塩素や次亜硫酸イオンが生成しその分解効率が向上することも提案している。
【0011】
陽・陰極電極に酸化・還元反応は目的とする透析膜による分離除去に対してはいささかもその妨げとはならない。
【発明の効果】
【0012】
金属イオンを含むメッキ液を電気透析法で再生する技術において、陰極側にカチオン膜を配置し透析される金属を含む陽イオンと、陽極側にアニオン膜を配置し透析される陰イオンを分離することで、透析された溶液を個別に排水処理を行うことで簡便に処理可能となる。また、透析時において、陰極電極に直接その金属分を含んだ透析液を接触させることで、金属分を還元析出させる。また、陽極電極に直接陰イオンを含んだ透析液を接触させることで電解酸化させることで、更に排水処理負荷が軽減される効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1は金属イオンを含むメッキ液を電気透析法で再生する技術において、陰極側にカチオン膜を配置し透析される金属を含む陽イオンと、陽極側にアニオン膜を配置し透析される陰イオンを分離し、個別に廃液処理することである。
【0014】
また発明の本発明の第2は透析時において、陰極電極に直接その金属分を含んだ透析液を接触させることで、金属分を還元析出させる。また、陽極電極に直接陰イオンを含んだ透析液を接触させることで電解酸化を行うことである。
【0015】
以下に図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の概念図である。
【0017】
電気透析対象とするメッキ液1は循環ポンプ9により電気透析ユニット3を経由してメッキ槽2に循環再生される。電気透析ユニットで透析された陽イオン分の透析液6は陰極側液として陰極液槽5に循環ポンプ10により濃縮される。また、電気透析ユニットで透析された陰イオン分の透析液8は陽極側液として陽極液槽7に循環ポンプ11により濃縮される。透析ユニットの電極液4として両端部に循環ポンプ12により循環される。
【0018】
図2は本発明の第1を説明する電気透析ユニット部である。
【0019】
電気透析されるメッキ液の陽極側にアニオン膜17を配し、陰極側にカチオン膜18を配する。
【0020】
メッキ液中の陰イオン成分19がアニオン膜により透析され、陽イオン成分20がカチオン膜により透析され循環濃縮される。陰極側に透析された溶液は排出規制される金属分を含むが、金属錯体を含むことが無い為、NaOH等の添加により容易に沈澱濾過され、濾液は無害化される。また陽極側に透析された溶液はPH調整され無害化される。また必要に応じて排出規制項目のCOD・BODが無視出来ない場合はCa塩等により沈澱濾過され無害化される。
【0021】
図3は本発明の第2を説明する電気透析ユニット部である。
【0022】
本図では、電気透析により透析されたメッキ液中の陰イオン成分19と陽イオン成分20を各々陰極電極と陽極電極に接触することで、電気透析の通電中に陰極では金属分の還元析出反応により金属分が除去された液22、陽極では有機酸等の酸化分解反応により低濃度化されCODが低下された液21が、透析効率をいささかも妨げる事無く生じPH調整のみを行うことで、特段の無害化処理を行う事無く無害化される。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
5ターンまで使用した無電解Ni液(Ni5g/L・SO35g/L・亜燐酸50g/L・次亜燐酸20g/L・Na30g/L)400Lを図1および図2で示す、電気透析ユニットにて電気透析を行った。電気透析ユニットで使用した、アニオン膜は旭硝子エンジニアリング製のセレミオンAMV、カチオン膜は旭硝子エンジニアリング製のセレミオンCMVを用いた。電気透析条件は膜面積10dm・膜電流密度1A/dm・膜数は各々10枚づつを並列配列させ20時間通電した。また、陰極側液には10%硫酸溶液を、陽極側液には10%NaOH溶液を用いた。電気透析により陰極側液10L中にNa4000g、Niが200g透析された。陰極側透析液をCaOHにてPH12としたところ水酸化Niの沈澱が生成し濾過により濾液には5PPmのNiが検出され無害化された。また電気透析により陽極側液10L中に硫酸8、000g、亜燐酸が8、000g、次亜燐酸が4000g透析された。陽極側透析液をNaOHにてPH12としたところ水酸化Niの沈澱が生成し濾過により濾液には5PPmのNiが検出され無害化された陰極側透析液をCaOHにてPH12としたところ燐酸Caの沈澱が生成し濾過により濾液には50PPmのPが検出され無害化された。
【0024】
(比較例)
実施例1に同様に電気透析を行い陽極側透析液と陰極側透析液を混合した透析廃液を得た。この透析廃液をCaOHにてPH12としたがNi錯体形成のためゲル状となり沈澱は生成せず、有害物のNiおよびPの分離は困難であった。
【0025】
(実施例2)
無電解Ni液(Ni5g/L)50Lの液を図3に示す透析ユニットで電気透析を行なった。電気透析ユニットで使用した、アニオン膜はアストム社製のネオセプタAM1、カチオン膜はアストム社製のネオセプタCM1を用いた。電気透析条件は膜面積および電極面積は10dm・膜電流密度2A/dm・膜数は各々10枚づつを並列配列させ20時間通電した。また、陰極側液には10%硫酸溶液を、陽極側液には10%NaOH溶液を用いた。電気透析により陰極側液10L中にNa4000g、Niが200g透析された。陰極面にNiの還元反応により200gの析出を得その陰極側透析液にはNi2+が皆無となり、無害化処理はPH調整のみで大幅に軽減された。また、電気透析により陽極側液10L中に亜燐酸30g/L・次亜燐酸10g/L・酢酸5g/L・リンゴ酸20g/Lが透析されたが、陽極表面で酸化反応が起こり亜燐酸20g/L・次亜燐酸5g/L・酢酸2g/L・リンゴ酸10g/Lと減少し、燐酸10g/L生成した。以上により陽極側液のCOD値が25000mg/L→10000mg/Lと減少し簡便に無害化された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の概念図である。
【図2】本発明に係る電気透析ユニット部である。
【図3】本発明に係る電気透析ユニット部である。
【符号の説明】
【0027】
1 メッキ液
2 メッキ槽
3 電気透析ユニット
4 電極液
5 陰極液槽
6 陽イオン分の透析液
7 陽極液槽
8 陰イオン分の透析液
9〜12 循環ポンプ
13 電源
14 電極液槽
15 陽電極
16 陰電極
17 カチオン膜
18 アニオン膜
19 メッキ液中の陰イオン成分
20 メッキ液中の陽イオン成分
21 酸化分解反応により低濃度化されCODが低下された液
22 金属分の還元析出反応により金属分が除去された液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属分を含むメッキ液を電気透析法により再生する方法において、該メッキ液の陰極側にカチオン膜を、陽極側にアニオン膜を配置し、透析により分離された陰極側液と陽極側液を混合する事無く電気透析することを特徴とするメッキ液の再生方法。
【請求項2】
陰極側液に含まれる金属イオンを電気透析時の陰極室に導入し、陰極に還元析出させることを特徴とする請求項1記載のメッキ液の再生方法。
【請求項3】
陽極側液に含まれる陽イオンを電気透析時の陽極室に導入し、陽極で酸化分解させることを特徴とする請求項1記載のメッキ液の再生方法。
【請求項4】
陽極で酸化分解させる場合、その酸化分解促進な為にNaClやH2SO4等を添加することを特徴とする請求項3記載のメッキ液の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225684(P2006−225684A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37716(P2005−37716)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】