説明

メディアにパターンを書き込む方法及びデータ記憶装置

【課題】回転するメディアへのパターン自己書き込みにおいて、回転ジッタの影響を抑制する。
【解決手段】本発明の一例において、まず、トラックTOに複数パターンを書き込む。偶数番目をNORMALパターン、奇数番目をFLIPパターンとする。トラックTOの各NORMALパターンをリード素子121で読み出し、その読み出し時刻からDw時間の経過後に、トラックTNに新たなFLIPパターンを書き込む。NORMALパターンN_[i]を読み出した時、NORMALパターンN_[i+1]の読み出し予想時刻を算出する。予想時刻は、回転ジッタを補償するように、すでに読み出されたNORMALパターンの読み出し時刻と予想時刻との間のタイミング誤差(tes)の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれに係数をかけた項の和によって決定する。予想時刻から、書き込み時間Dwを計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメディアにパターンを書き込む方法及びデータ記憶装置に関し、特に、回転するメディアへのパターン書き込みにおける書き込みタイミング制御に関する。
【背景技術】
【0002】
データ記憶装置として、光ディスクや磁気テープなどの様々な態様のメディアを使用する装置が知られている。その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータ・システムにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、携帯電話、あるいはデジタル・カメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のトラックを有しており、各トラックにはサーボ・データと、ユーザ・データが記憶される。薄膜素子で形成されたヘッド素子部がサーボ・データに従って所望の領域(アドレス)にアクセスすることによって、データ書き込みあるいはデータ読み出しを行うことができる。データ読み出し処理において、ヘッド素子部が磁気ディスクから読み出した信号は、信号処理回路によって波形整形や復号処理などの所定の信号処理が施され、ホストに送信される。ホストからの転送データは、信号処理回路によって同様に所定処理された後に、磁気ディスクに書き込まれる。
【0004】
上述のように、各トラックはユーザ・データが記憶されるユーザ・データ領域とサーボ・データが記憶されるサーボ・パターン領域とを備えている。サーボ・パターン(本明細書ではこれをProduct Servo Patternと呼ぶ)は、シリンダID、セクタ番号、バースト・パターンなどから構成されている。シリンダIDはトラックのアドレス、セクタ番号はトラック内のセクタ・アドレスを示す。バースト・パターンはトラックに対する磁気ヘッドの相対位置情報を有している。
【0005】
Product Servo Patternは各トラックにおいて円周方向に離間して複数セクタ形成されており、全トラックに渡る各セクタのProduct Servo Patternは、円周方向において位置(位相)が揃っている。磁気ディスクに対するデータの読み出しまたは書き込みは、磁気ディスクが回転している状態において、サーボ・データによって磁気ヘッドの位置を確認しながら実行される。
【0006】
Product Servo Patternは、製品としてのHDDが出荷される前に工場内において磁気ディスクに書き込まれる。従来の典型的なProduct Servo Patternの書き込みは、外部装置としてのサーボ・ライタを使用して行われている。HDDがサーボ・ライタにセットされ、サーボ・ライタはHDD内のヘッドをポジショナ(外部位置決め機構)によって位置決めし、Product Servo Pattern生成回路が生成したProduct Servo Patternを磁気ディスクに書き込む。
【0007】
現在、Product Servo Patternの書き込み工程(Servo Track Write:STW)は、HDDの製造コストの中で主要な位置を占めている。特に近年、HDDは高容量化の競争が激化し、これに伴いTPI(Track Per Inch)の増加が進んでいる。TPIが増加する事により、トラック数は増え、トラック幅(トラック・ピッチ)が小さくなる、これらはSTW時間の増加及びサーボ・ライタの高精密化を進め、STWのコスト増加の要因となっている。このコストを削減する為にサーボ・ライタのコスト削減、STW時間の短縮等が進められている。
【0008】
そこで、新たな手法としてSSW(Self Servo Write)が提案されている。このSSWはそれまでのSTWとは異なり、HDD本体の機械機構部分のみを使い、外部回路からHDD内のスピンドル・モータ(SPM)とボイス・コイル・モータ(VCM)をコントロールし、外部回路を用いてProduct Servo Patternを書き込む。これによって、サーボ・ライタのコスト削減を図っている。
【0009】
SSWの手法として、ヘッド素子部のリード素子とライト素子の半径方向位置が異なる(これをリード・ライト・オフセットと呼ぶ)ことを利用して、内周側もしくは外周側にすでに書き込まれたパターンをリード素子が読み出しながら位置決めを行い、ライト素子が、リード・ライト・オフセット離れた所望のトラックに新たなパターンを書きこむものが知られている。
【0010】
SSWにおいて、隣接サーボ・トラックの各Product Servo Patternは、円周方向の位置が正確に一致していることが必要である。Product Servo Patternが、隣接サーボ・トラック間で一部が重なるように書き込まれるので、隣接トラックのパターン間で円周方向における位相が一致していない場合、書き込まれたパターン間で信号の打ち消しが生じ、必要なパターンを書き込むことができないからである。また、制御容易性の点から、各パターンは、円周方向に等間隔に書き込むことが好ましい。
【0011】
従って、SSWにおいては、Product Servo Patternもしくはそれを書き込むための基礎となる他のパターンの書き込みにおいて、円周方向における位置、つまり書き込みタイミングを正確に制御することが要求される。なお、サーボ・ライトにおけるタイミング・パターンの伝播において、パターンの円周方向における間隔制御のために、すでに書き込まれたパターン間の間隔を使用して書き込みタイミングを修正する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平8−212733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
複数のパターンを正確にトラック上に書き込むためには、精密なSPMの制御を行ってその回転速度を正確に保つことが必要である。例えば、複数のパターンを等間隔で書き込む場合、SPMの回転速度を正確に保ちながら、一定のクロック周波数、クロック・カウント数で各パターンを等間隔に書き込んでいけばよい。専用の外部サーボ・ライタは、一般に、このようにSPMの回転を精密に制御することができ、正確にパターンを書き込むことができる。
【0013】
従来のSSWに対して、HDDの内部回路を使用して、磁気ディスクにサーボ・パターンを自己書き込みすることが考えられる。HDDの内部回路が自己完結的にサーボ・パターンの自己書き込みを実行することによって専用のサーボ・ライタが不要となり、多額の設備投資の必要がなくなる。
【0014】
しかしながら、このように通常のHDDが、それ自身の機構・回路でSSWを行う場合、専用の外部サーボ・ライタのようにSPMの回転を精密に制御することは困難であり、磁気ディスクの回転速度のふらつき(回転ジッタ)が存在する。そのため、一定のクロックに従ってパターンを磁気ディスクに書き込むと、パターン間隔にばらつきが発生し、同一トラックにおいて等間隔にパターンを書き込むことができない、あるいは、パターン間隔の等・不等にかかわらず、隣接トラックのパターン間において位相ずれが発生してしまう。
【0015】
本発明は上述のような事情を背景としてなされたものであって、自己パターン書き込みにおいてメディアの回転ジッタの影響を抑制し、より正確なタイミングで新たなパターンを書き込むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、回転するメディア上において、リード素子でパターンを読み出しながら、半径位置の異なるライト素子で新たなパターンを書き込む方法であって、回転するメディアの第1トラックに複数のパターンを書き込み、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定し、前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの先にあるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込むものである。先にあるパターンの読み出し予想時刻をそれまでに得られたタイミング誤差を使用して決定し、その予想時刻を使用して、基準パターンの読み出し時刻から新たなパターンの書き込み時刻までの時間を決定することによって、メディアの回転ジッタを補償し、正確なタイミングでのパターン書き込みを実現することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、第1トラックにおいてすでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0018】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0019】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様において、前記第1トラックにおける各パターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和を使用して決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様において、前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの次に読み出されるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込むものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様において、前記第1トラックにおいて、前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差と、その基準となる各パターンの前に読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差とを使用して、基準となる各パターンの前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、上記第1の態様において、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻は、そのパターンの読み出し基準時刻を、前記メディアの回転ジッタを補償するように第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して補正することによって決定するものである。基準時刻に対してタイミング誤差を使用してメディアの回転ジッタを補償することで、正確なタイミングでのパターン書き込みを実現することができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、回転するメディア上において、リード素子でパターンを読み出しながら、半径位置の異なるライト素子で新たなパターンを書き込むデータ記憶装置であって、回転するメディアの第1トラックに書き込まれた複数パターンのそれぞれを読み出すリード素子と、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、その第1トラックにおいてすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定するコントローラと、前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの先にあるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込むライト素子と、を備えるものである。第1トラックにおいてすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用してパターンの読み出し予想時刻を決定し、その予想時刻を使用して、第1トラックの基準パターンの読み出し時刻から第2トラックへの新たなパターン書き込みまでの時間を決定することで、メディアの回転ジッタを補償した正確なタイミングでパターン書き込みすることができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、上記第8の態様において、前記コントローラは、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、そのパターンの読み出し基準時刻を前記タイミング誤差を使用して決定された補正値で補正することによって決定するものである。基準時刻に対してタイミング誤差を使用して補正することで、メディアの回転ジッタを補償し、正確なタイミングでのパターン書き込みを実現することができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、上記第9の態様において、前記コントローラは、前記補正値を、前記第1トラックのすでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0026】
本発明の第11の態様は、上記第8の態様において、前記コントローラは、前記基準となるパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して前記先にあるパターンの読み出し基準時刻を補正し、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0027】
本発明の第12の態様は、上記第8の態様において、前記コントローラは、前記第1トラックにおける各パターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和を使用して決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【0028】
本発明の第13の態様は、上記第8の態様において、前記コントローラは、前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差と、すでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻と読み出し予想時刻との間のタイミング誤差とを使用して、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定するものである。これによって、メディアの回転ジッタを補償するよりも簡便に正確な予想時刻を決定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、回転するメディアへのパターン自己書き込みにおいて、その回転ジッタの影響を抑制し、より正確なタイミングでパターンを書き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0031】
本実施形態は、データ記憶装置におけるメディアへの自己パターン書き込み、つまり、自らメディアに書き込んだパターンを基準として新たなパターンを書き進む処理に関する。特に、自己パターン書き込みにおける書き込みタイミング制御に関する。本形態においては、データ記憶装置の一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)における、サーボ・パターンの自己書き込み処理を例として、本発明を説明する。
【0032】
HDDにおいて、その内部機構を使用してサーボ・パターンを書き込む自己サーボ書き込み(Self Servo Write(SSW))が知られている。好ましい実施形態のHDDにおいて、従来のSSWにおいて外部回路が行っていた機能が、製品カード(完成品としてのHDDの各ICが実装されている基板)上の内部回路自体に組み込まれている。これによって、HDDは、外部装置としてのサーボ・ライタ装置に直接的に依存することなく、実質的に内部構成のみによって磁気ディスクへのサーボ・パターン書き込み処理を実行することができる。HDDは、外部の制御装置からのスタート信号に応答して内部回路に実装された機能によってサーボ・パターンを磁気ディスクに書き込む。
【0033】
そこで、本形態におけるSSWの処理について説明する前に、本形態のSSWを実行するHDDの全体構成について、その概略を説明する。図1は、HDD1の概略構成を示すブロック図である。HDD1は、密閉されたエンクロージャ10内に、メディア(記録媒体)の一例である磁気ディスク11、ヘッド素子部12、アーム電子回路(アーム・エレクトロニクス:AE)13、スピンドル・モータ(SPM)14、ボイス・コイル・モータ(VCM)15、そしてアクチュエータ16を備えている。
【0034】
HDD1は、エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20を備えている。回路基板20上には、リード・ライト・チャネル(R/Wチャネル)21、モータ・ドライバ・ユニット22、ハードディスク・コントローラ(HDC)とMPUの集積回路(以下、HDC/MPU)23及びRAM24などの各ICを備えている。尚、各回路構成は一つのICに集積すること、あるいは、複数のICに分けて実装することができる。
【0035】
外部ホスト51からのライト・データは、HDC/MPU23によって受信され、R/Wチャネル21、AE13を介して、ヘッド素子部12によって、不揮発性の記録媒体である磁気ディスク11に書き込まれる。また、磁気ディスク11に記憶されているリード・データはヘッド素子部12によって読み出され、そのリード・データは、AE13、R/Wチャネル21を介して、HDC/MPU23から外部ホスト51に出力される。
【0036】
磁気ディスク11は、SPM14に固定されている。SPM14は所定の速度で磁気ディスク11を回転する。HDC/MPU23からの制御データに従って、モータ・ドライバ・ユニット22がSPM14を駆動する。本例の磁気ディスク11は、データを記録する記録面を両面に備え、各記録面に対応するヘッド素子部12が設けられている。
【0037】
各ヘッド素子部12はスライダ(不図示)に固定されている。また、スライダはアクチュエータ16に固定されている。アクチュエータ16はVCM15に連結され、回動軸を中心に揺動することによって、ヘッド素子部12(及びスライダ)を磁気ディスク11上において半径方向に移動する。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データ(DACOUT)に従ってVCM15を駆動する。
【0038】
ヘッド素子部12には、磁気ディスク11への記録データに応じて電気信号を磁界に変換するライト素子、及び磁気ディスク11からの磁界を電気信号に変換するリード素子を備えている。この点については後述する。なお、磁気ディスク11は、1枚以上あればよく、記録面は磁気ディスク11の片面あるいは両面に形成することができる。
【0039】
AE13は、複数のヘッド素子部12の中からデータ・アクセスが行われる1つのヘッド素子部12を選択し、選択されたヘッド素子部12により再生される再生信号を一定のゲインで増幅し、R/Wチャネル21に送る。また、R/Wチャネル21からの記録信号を選択されたヘッド素子部12に送る。SSWにおいては、AE13は選択したヘッド素子部12が読み出したサーボ信号をR/Wチャネル21に転送し、全てのヘッド素子部12に対してR/Wチャネル21からのライト・データ(サーボ・データ)を転送する。
【0040】
R/Wチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。また、リード処理において、R/Wチャネル21はAE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。リード・データは、HDC/MPU23に供給される。R/Wチャネル21はクロック生成回路211を備え、SSWのタイミング制御は、R/Wチャネル21が生成するクロック信号に従って実行される。
【0041】
HDC/MPU23において、MPUはRAM24にロードされたマイクロコードに従って動作する。HDD1の起動に伴い、RAM24には、MPU上で動作するマイクロコードの他、制御及びデータ処理に必要とされるデータが磁気ディスク11あるいはROM(不図示)からロードされる。HDC/MPU23は、サーボ・データを使用したヘッド素子部12のポジショニング制御、インターフェース制御などのデータ処理に関する必要な処理の他、HDD1の全体制御を実行する。SSWは、HDC/MPU23の制御の下において実行される。
【0042】
図2は、SSWにおける自己パターン書き込みの手法を概略的に示している。SSWは、内周(ID)側もしくは外周(OD)側サーボ・トラック(TO)に書き込まれているパターン(PO)をヘッド素子部12内のリード素子121で読み出しながら、外周側もしくは内周側サーボ・トラック(TN)に配置されたヘッド素子部12内のライト素子122で新たなパターン(PN)を書き込む。つまり、リード素子121が基準トラックTOの各セクタのサーボ・パターンをフォロしながら、各セクタの検出から所定タイミング後にライト素子122がトラックTNに新たなサーボ・パターンPNを書きこむ。ヘッド素子部12を外周側もしくは内周側に順次移動させながらパターンを書き進めることによって、磁気ディスク11全面にサーボ・パターンを書き込むことができる。
【0043】
さらに、図2はリード素子121とライト素子122の位置関係を示している。リード・ライト・オフセット(RW_Offset)は、リード素子121とライト素子122との間の半径方向における距離である。具体的には、リード素子121とライト素子122の各センター間の、磁気ディスク11の半径方向における距離である。リード・ライト・オフセットはヘッド素子部12の半径方向の位置によって変化する。ヘッド素子部12において、ID側からOD側まで全てのトラック位置においてリード・ライト・オフセットが存在するように設計することが可能である。これによって、内周側に書き込んだパターンを読み出してヘッド素子部12の位置合わせを行い、最もOD側のトラックまでパターンを書き込むことができる。
【0044】
このように、SSWでは、自分で書いたパターンを参照し、その信号から得られる時間的、空間的情報を使用して、時間的(周方向におけるタイミング制御)、空間的(半径方向における位置制御)な制御を行いながら、リード・ライト・オフセットだけ半径方向にずれた位置に、次のパターンを書き込む方法である。
【0045】
以降の説明において、リード素子121がライト素子122よりも磁気ディスク11の内周(ID)側に配置されているものとする。内周側からパターンを書き込むことによって、ライト素子122により先に書き込まれたパターンをリード素子121が読み取ることができる。これによって、リード素子121が読み取ったパターンによってヘッド素子部12の位置合わせを行いながら、ライト素子122が新たなパターンの書き込みを行うことができる。尚、リード/ライト素子121、122の位置を変更することによって、磁気ディスク11の反対面にパターンを書くときにも内周側SSWを開始することが可能となる。或いは位置を変更せず、反対面にパターンを書くときには磁気ディスク11の外側からSSWを開始することも可能である。尚、両面共に磁気ディスク11の外側からSSWを開始しても良い。更することによって、磁気ディスク11の外側からSSWを開始することも可能である。
【0046】
SSWは、いつかのシーケンスから構成されている。磁気ディスク11上には、最終的にユーザ・データのリード/ライトのための最終的なサーボ・パターン(Product Servo Pattern)がその全面に書きこまれる。その書き込みのために、磁気ディスク11上のProduct Servo Patternを使用してProduct Servo Patternを書き進めるシーケンス(Product Servo Patternの自己伝播)の他に、初期シーケンスにおいて、他のタイプ(もしくはProduct Servo Patternと同一フォーマット)のパターンを使用してProduct Servo Patternを書き込む。以下において、この初期シーケンスにおける処理を例として説明する。
【0047】
SSWプロセスの初期シーケンスにおいて、アクチュエータ16をクラッシュ・ストップ(Crash Stop)(不図示)に突き当ててヘッド素子部12の半径方向の位置を安定に保ち、初期パターンを確立する。クラッシュ・ストップとは、アクチュエータ16と衝突することによってその回動方向における移動を規制する部材であって、アクチュエータ16に対して内周側と外周側の双方に配置されている。典型的に、クラッシュ・ストップは樹脂によって形成する。アクチュエータ16をクラッシュ・ストップにつきあてた状態でヘッド素子部12の位置を変えるには、VCM15電流の値を調整する。
【0048】
また、自己パターン書き込みにおけるタイミング制御においてもHDD1が本来的に備えている機能を使用する。HDD1は、Product Servo Patternにおけるサーボ・アドレス・マーク(Servo Address Mark:SAM)あるいは、ユーザ・データ・セクタにおけるデータ・アドレス・マーク(Data Address Mark:DAM)をタイミング信号として使用することができる。具体的には、R/Wチャネル21は、SAMもしくはDAMを検出した時刻を正確に測定し、その値はHDC/MPUに転送され、それを使用した制御に用いられる。
【0049】
図3(a)に示すように、Product Servo Patternは、プリアンブル(PREAMBLE)、SAM、グレイ・コードからなるトラックID(GRAY)、サーボ・セクタ・ナンバ(PHYS)(オプショナル)及びバースト・パターン(BURST)から構成されている。SAMは、トラックID等の実際の情報が始まることを示す部分で、通常SAMが見つかったときに出てくるタイミング信号であるSAM信号が磁気ディスク11上に書き込まれた位置と正確な相関をもっている。また、バースト・パターン(BURST)はトラックIDで示されるトラックの更に精密な位置を示す信号で、この例ではトラックごとに周回上に位置を少し違えたところに千鳥上に書かれたA、B、C、Dの4つの振幅信号を備える。これらの各バーストはプリアンブル(PREAMBLE)と同じ周期の単一周波数信号である。
【0050】
あるいは図3(b)に示すように、ユーザ・データ・セクタ・フォーマットは、典型的には、プリアンブル(PREAMBLE)、DAM、ユーザ・データ(USER DATA)及びECC(Error Correction Code)を備えている。DAMはユーザ・データの始まりを示すデータであり、SAMと同様に、磁気ディスク11上に書き込まれた位置と正確な相関をもっている。また、R/Wチャネル21は、正確なクロックを作成するシンセイザを有しているのでタイミング信号間の時間間隔を測定するのに適している。
【0051】
通常の使用では、HDD1はサーボ時にProduct Servo Patternを読み取り、ライト時にはシンセイザの作る正確なクロックに書き込みたいデータを載せて磁気ディスク11にデータを書き込み、リード時にはユーザ・データ・セクタの先頭部のプリアンブルでクロックをリード信号にフェーズ・ロックさせ、定型パターンであるDAMでタイミングを正確にとることができる。この正確なタイミングと正確なクロックを用いてSSWに必要なセクタから次のセクタへのタイミング信号のコピーがステップ・バイ・ステップでできる。これを用い、書き込まれているパターンにトラック・フォロしながら次のセクタ位置に必要なパターンを書き込んでいくことが可能である。これから分かるように、DAMをタイミング・パターンとして用いる場合は、これと組になったサーボ用のパターンがトラック・フォローのために必要である。これによって、SSWにおける時間の制御と半径位置の制御を独立のパターンで行うことになる。
【0052】
このプロセスで注意しなければならないことは、磁気ディスク11の回転速度のふらつき(回転ジッタ)である。R/Wチャネル21のクロックが決まった周波数である場合、あるセクタ[i]のタイミング信号から次のセクタ[i+1]のタイミング信号までの時間は磁気ディスク11の回転速度が完璧に一定であれば常に同じ時間D[i]となるので、セクタ[i]のタイミング信号を検出してから決まった時間D[i]の後にセクタ[i+1]のタイミング信号を書き込むようにすれば、パターンの伝播は問題なくできる。ここでD[i]はセクタ[i]からセクタ[i+1]までの時間である。専用のサーボ・ライタではSPM14の回転を精密に制御することができるため、書き込みタイミングのずれが発生することはない。
【0053】
しかしながら、HDD1が自身の機構・回路でSSWを行う場合に、そのような正確な制御は困難であり、ある程度の磁気ディスク11の回転ジッタが存在する。この回転ジッタを無視して、同一書き込みタイミングでパターンを書き込むと、円周方向におけるパターン位置がずれる。本実施形態では、このような条件のもとでHDD1自身がSSWを行うために、磁気ディスク11の回転ジッタを考慮して、タイミング信号の期待値(目標値)と実際の測定値との差を使用して書き込み時刻値を補正し、磁気ディスク11の回転ジッタを補償する簡単な方法を提案する。
【0054】
図4は、実際のパターンを書き進めていく様子を示している。図4に示すように、HDD1は、内周側に書き込まれたパターンの半分に外周側のパターンの半分を重ねるようにして、内周側から外周側にパターンを書き進めていく。従って、パターンを書き込むときのトラック・ピッチは、書き込まれた後のパターンのトラック・ピッチの半分である。
【0055】
本実施形態においては、書き込むことが必要なセクタ数Nsの2倍の数(2Ns)のパターンを一つのトラックに書き込む。従って、最終的に必要とされる各パターン間の時間間隔を等間隔のTsとすると、各隣接パターンの時間間隔はTs/2となる。ここで、各パターンは、各パターンの検出時刻値を特定するためのタイミング信号(SAMもしくはDAM)及びヘッド素子部12を位置決めするための位置信号(バーストに相当)を必ず備えている。
【0056】
本形態において、INDEXを基準として、偶数セクタの各パターンをNORMALと呼び、奇数セクタの各パターンをFLIPと呼ぶ。つまり、NORMALとFLIPが交互に現れる状態になる。NORMALとFLIPとは、サーボ・パターンにおいて、異なるタイプのSAMを備える、あるいは逆ポラリティのパターンとすることによって区別することが好ましい。このことは、SSWをProduct Servo Patternで行う場合もDAMを用いるタイミング・パターンとサーボ・パターンの組で行ういずれの場合もあてはまる。ここでINDEXは、SPM14を駆動するモータ・ドライバ・ユニット22がスピンドル・モータの逆起電力に応じて生成する信号であって、スピンドル・モータ14の回転周期によって規定される。
【0057】
本形態のSSWは、1トラックのパターンの書き込みのために、磁気ディスク11の2回転を使用する。つまり、HDD1は、ID側トラックTOの各NORMALパターンを読み出しならが、OD側トラックTNに各FLIPパターンを書き込む。さらに、HDD1は、ID側トラックTOの各FLIPパターンを読み出しならが、OD側トラックTNに各NORMALパターンを書き込む。
【0058】
図6は、一つ前のセクタの各NORMALパターンを読み出しならが、各FLIPパターンを書き込む例を示している。HDD1は、NORMALの側の位置情報をみて、リード素子121をこの位置に保持しながら、リード・ライト・オフセットだけずれた位置にあるライト素子122を用いて、各NORMALパターンのタイミング信号からDw=Ts/2の時間位置に各FLIPパターンのタイミング信号が来るように各FLIPパターンを書き込む。
【0059】
具体的に説明する。最初の回転でトラックTO上のN_[0]、N_[1]、N_[2]・・・と偶数セクタのNORMALパターンをフォロしながら、各NORMALパターンを基準にしてトラックTN上の奇数セクタのFLIPパターンF_[0]、F_[1]、F_[2]・・・を、それぞれDw=Ts/2の時間位置になるように書く。同様に、次の回転でトラックTO上でF_[0]、F_[1]、F_[2]・・・と奇数セクタのパターンを基準にしてトラックTN上の偶数セクタのパターンN_[1]、N_[2]、N_[3]・・・を書く。なお、この順番は逆でもかまわない。
【0060】
ヘッド素子部12は書き込みと読み出しを同時に行うことは出来ない。つまり、例えば、内周側基準トラックのパターンN_[0]を基準に最初の外周側トラックTNにおけるパターンF_[0]をライト素子122が書いている時、リード素子121は内周側基準トラックTOのパターンF_[0]を読むことはできない。従って、奇数と偶数セクタをそれぞれ別々の回転で書く必要がある。上述の方法で書き込むことによって、磁気ディスク11の1回転で必要なセクタ数のパターン(FLIPかNORMALの一方)を全て書き込むことができるので、書き込み時間を短縮することができる。
【0061】
ここで、磁気ディスク11の回転速度は、理想的には一定vである。しかし、磁気ディスク11の回転ジッタのために、この回転速度は不規則に変化しうる。ここで、回転速度がvからv(1+δ)にずれたとする。このときの状況を図5に示す。この状況において、NORMALパターンを検出してから、通常どおりのDw=Ts/2のタイミングFLIPパターンを書き込むと、正常回転時にはDw*δだけずれた位置にFLIPがあらわれる。つまり、それまでに内周側に書き込まれたパターンと新たに書き込まれるパターンとの間に時間ずれ、つまり円周方向における位置ずれが発生する。上述のように、各隣接トラックは、一部重なるようにパターンを書き込むので、隣接トラック間のパターン位相ずれが起こると、その後にパターンを正確に読み出すことができなくなる。
【0062】
これを避けるためには常に回転変動δを計測しておいて書き込みの時間を補正してやればよい。このように、回転速度がvからv(1+δ)にずれた場合、図5に示すように、NORMALパターンを検出してから、Dw/(1+δ)=Ts/2(1+δ)の時間間隔となるタイミングでFLIPパターンを書くべきである。ここで、各時刻の実際の回転速度を直前のセクタ間の経過時間から求めることは可能であるが、ここの時刻の測定誤差の影響を避けるためには、複数のセクタの時刻を記憶して置きこれらを使ってフィルターリングを行うことが望ましい。しかし、この方法で精度をあげるには、直前の多数個の時刻データを常時記憶しておかなければならない。本形態においては、このような方法に代えて、あるいはこれと同義に近いやり方として、Dwに常にフィードバック補正をかけることでこの問題を解決する手法を開示する。
【0063】
以下、図6を参照して具体的に説明する。なお、以下においては、各NORMALパターンを基準として、各FLIPパターンを書き込むケースを例として説明する。基準トラックTOにおけるNORMALパターンについて、正確な回転速度での回転時におけるセクタ[i]のタイミング信号の時刻をt0[i]とする。これに回転誤差が加わった場合の時刻をtm[i]とする。ここで、回転誤差がない場合の各NORMALパターンの隣接セクタ間において、セクタ間隔が一定Tsの場合を考えると、次の関係が満足する。
t0[i+1] = t0[i] + Ts (数式1)
この仮定によって一般性が失われることはない。
【0064】
この時間差Tsは本例においては平均周回時間/全セクタ数として既知のものである。なお、必要な場合は、実際に基準トラックTOにおけるNORMALパターンをそれぞれ複数回読み出して、その読み出し時刻を測定し、その複数周回の各平均時刻から各パターン間の時間差を求めればよい。ここで各セクタ[i]の実際の読み出し(検出)時刻tm[i]、セクタ[i]に対して予想される時刻texp[i]、及びtm[i]とtexp[i]との間のタイミング誤差tes[i]を、次のように導入する。
【0065】
tes[i]=tm[i]−texp[i] (数式2)
sumtes=Σtes[j] (数式3)
texp[i+1] = tm[i] + (Ts−kd * (tes[i]−tes[i−1])−kp * tes[i]−ki * sumtes)(数式4)
初期値としては、
texp[0]=tm[0], sumtes=0 (数式5)
で開始して問題ない。ここで、kd、kp、kiは、それぞれ微分(tes[i]−tes[i−1])、現在値(tes[i])、積分値(sumtes)に対する係数であって、製品ごとに適切な値が設計により決定される。このように、タイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和によって、先のセクタの時刻の予想値に補正をかける。また、これらの項が誤差の許容範囲外になったとき、パターンの書き込みを止めることにも用いることができる。また、トラックTO上のNORMALパターンで制御をかけながら、トラックTN上のFLIPパターンを書く状態から、トラックTO上のFLIPパターンで制御をかけながら、トラックTN上のFLIPパターンを書く状態に遷移する場合には、積分項sumtesはそのまま保持して使うことが望ましい。
【0066】
これを用いて、HDC/MPU23は、tm[i]からの書き込みの時間間隔を、
Dw[i] = (Ts−kd*(tes[i]−tes[i−1])−kp*tes[i]−ki*sumtes)/2 (数式6)
と決定する。HDC/MPU23は、(tm[i]+ Dw[i])の時刻にライト素子122がFLIPパターンを書き込むように制御する。これによって、磁気ディスク11の回転ジッタを補償し、FLIPパターンを正確な位置に書き込み、内周側トラックのFLIPパターンと位相一致させることができる。
【0067】
つまり、HDC/MPU23は、セクタ[i]のNORMALパターンN_[i]を読み出したタイミングにおいて、磁気ディスク11の回転ジッタを織り込んだ形で、次の隣接セクタ[i+1]のNORMALパターンN_[i+1]の読み出し予想時刻(texp[i+1])を算出する。読み出し予想時刻(texp[i+1])は、数式4に示すように、基準時刻(tm[i]+Ts)を時刻の誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和によって決定される補正値(kd*(tes[i]−tes[i−1])−kp*tes[i]−ki*sumtes)で補正することによって得られる。
【0068】
上述のように、本例のFLIPパターンは、NORMALパターン間の中央に位置すべきであるため、リード素子121でセクタ[i]のNORMALパターンN_[i](のタイミング信号)を検出してから、(texp[i+1]−tm[i])/2の時間経過後にライト素子122でFLIPパターンF_[i]を書き込むことで、HDD1は、回転ジッタを補償した正確な位置にFLIPパターンF_[i]を書き込むことができる。
【0069】
このように、HDC/MPU23は、各NORMALパターンの読み出し予想時刻(目標時刻)(texp[k])を算出し、その予想時刻(texp[k])と実際の読み出し時刻(tm[k])との間の差分(タイミング誤差)を使用して、先のセクタの読み出し予想時刻を算出する。具体的には、上記数式から理解されるように、読み出し予想時刻(texp[k])は、読み出しのタイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれに係数をかけた項の和によって決定される。この計算によって、より正確な読み出し時刻を予想することができる。なお、実際のパターン書き込みにおいては、内周側の基準トラックの読み出しパターン(上記例におけるNORMALパターン)の読み出しを、複数セクタもしくは複数回転行い、上述の計算に従う制御による補正が実効的にかかった後に、外側のトラックに新たなパターン(上記例におけるFLIPパターン)を書き始める。
【0070】
たとえば、図7に示すように、4200rpm、168セクタの磁気ディスク11の回転速度に、0.03%の大きさの70Hz(回転数と同じ周期)で変化するサイン波の回転ジッタが乗った場合、何も補正をかけないと、書き込まれるFLIPパターンは、図7の太線(Terror@Writ)で示されるように、最大13nsec程度あるべき位置からずれてしまう。これに対して、kd=−0.4、kp=0.3、ki=0.5で上記の補正をかけて制御がかかりだすと、図8の太線(Terror@Writ)で示すように、1nsec程度におさまることがわかる。
【0071】
これらのグラフで、Terror@Sectはリード素子121のフォローイングに使用しているNORMALパターンのtexp[k]とtm[k]の違いである。Terror@Writは書き込もうとしているFLIPパターンでのtexp[k]と実際にかかれるべき場所との時間差で、左Y軸のスケールnsec単位で表示されている。一方、Integは上記数式の中のsumtesに相当し、その大きさは右Y軸のスケールでよみ取れる。SPM14の回転ジッタは、セクタの0からCOSで加えており、フィードバックをかけて安定したところからみると、このsumtes項がSPM14の回転ジッタの形をしていることがわかる。逆にこの項を用いてSPM14の回転速度の制御を行えることがわかる。また、この積分項、あるいは比例項、差分項、又はそれらの組み合わせが誤差の許容範囲外になったとき、パターンの書き込みを止めることにも用いることができる。
【0072】
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。例えば、読み出し予想時刻を上記積分項、比例項、及び差分項のそれぞれに係数をかけた項の和以外の方法によって決定することもできる。その場合においても、正確な予想時刻の算出のため、過去の複数のパターンのタイミング誤差を使用して予想時刻を決定する。特に、すでに得られている複数パターンのタイミング誤差の積分を使用することが好ましい。さらには、好ましくは各基準となるパターンのタイミング誤差(例えば上記現在値要素)を使用する。
【0073】
本例においては、各パターン間隔が一定(Ts)であるが、本発明のパターン書き込みをパターン間隔が不等である例に適用することも可能である。また、例えば、本発明は磁気ディスク装置に限らず、他のタイプの回転するメディアを使用するデータ記憶装置に適用することができる。あるいは、本発明はサーボ・パターンの自己書き込みに特に有用であるが、他のパターンの自己書き込みに適用することを妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態にかかるHDDの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態にSSWの手法を模式的に示す図である。
【図3】一般的なHDDにおけるProduct Servo Patternとユーザ・データ・セクタのフォーマットを模式的に示す図である。
【図4】磁気ディスク2回転によって、ID側サーボ・パターンを使いさらにOD側にサーボ・パターンを書き伸ばして行く方法を示す図である。
【図5】磁気ディスクの回転ジッタのために、回転速度がvからv(1+δ)にずれたときの状況を示す図である。
【図6】各NORMALパターンを基準として、フィードバック補正をかけたDw時間の経過後に、各FLIPパターンを書き込むケースを示す図である。
【図7】4200rpm、168セクタの磁気ディスクの回転速度に、0.03%の大きさの70Hzで変化するサイン波の回転ジッタが乗り、何も補正をかけない場合において、読み出しパターンの予想時刻と実際の読み出し時刻との違い及び、書き込もうとしているパターンでの予想時刻と実際にかかれるべき場所との時間差を示すグラフである。
【図8】図7の例に対して、本実施形態の回転ジッタ補償を行った場合の、読み出しパターンの予想時刻と実際の読み出し時刻との違い及び、書き込もうとしているパターンでの予想時刻と実際にかかれるべき場所との時間差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド素子部、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ
16 アクチュエータ、20 回路基板、21 リード・ライト・チャネル
22 モータ・ドライバ・ユニット、51 ホスト、121 リード素子
122 ライト素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するメディア上において、リード素子でパターンを読み出しながら、半径位置の異なるライト素子で新たなパターンを書き込む方法であって、
回転するメディアの第1トラックに複数のパターンを書き込み、
前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定し、
前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの先にあるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込む、方法。
【請求項2】
前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、第1トラックにおいてすでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1トラックにおける各パターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和を使用して決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの次に読み出されるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1トラックにおいて、前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差と、その基準となる各パターンの前に読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差とを使用して、基準となる各パターンの前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻は、そのパターンの読み出し基準時刻を、前記メディアの回転ジッタを補償するように第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して補正することによって決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
回転するメディア上において、リード素子でパターンを読み出しながら、半径位置の異なるライト素子で新たなパターンを書き込むデータ記憶装置であって、
回転するメディアの第1トラックに書き込まれた複数パターンのそれぞれを読み出すリード素子と、
前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、その第1トラックにおいてすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定するコントローラと、
前記第1トラックの基準となる各パターンの読み出し時刻から、そのパターンの先にあるパターンの読み出し予想時刻を使用して決定された時間が経過した時刻に、第2トラックに各パターンを書き込むライト素子と、
を備えるデータ記憶装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1トラックのパターンの読み出し予想時刻を、そのパターンの読み出し基準時刻を前記タイミング誤差を使用して決定された補正値で補正することによって決定する、請求項8に記載のデータ記憶装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記補正値を、前記第1トラックのすでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して決定する、請求項9に記載のデータ記憶装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記基準となるパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差を使用して前記先にあるパターンの読み出し基準時刻を補正し、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定する、請求項8に記載のデータ記憶装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記第1トラックにおける各パターンの読み出し予想時刻を、第1トラックのすでに読み出されたパターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差の積分項、比例項、及び差分項のそれぞれ係数をかけた項の和を使用して決定する、請求項8に記載のデータ記憶装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記基準となる各パターンの読み出し時刻とその読み出し予想時刻との間のタイミング誤差と、すでに読み出された複数のパターンの読み出し時刻と読み出し予想時刻との間のタイミング誤差とを使用して、前記先にあるパターンの読み出し予想時刻を決定する、請求項8に記載のデータ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−149220(P2007−149220A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342202(P2005−342202)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】