説明

メディア搬送機構およびメディア処理装置

【課題】積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能なメディア搬送機構を提案する。
【解決手段】積層されたメディア3のうちの一番上の最上部メディア3Aを搬送アーム18で把持して搬送するメディア搬送機構では、搬送アーム18は、最上部メディア3Aの中心孔3bの側面に当接して最上部メディア3Aを把持する把持部材38と、把持部材38によって把持される最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bの中心孔3bの側面に当接し、直下メディア3Bを最上部メディア3Aに対して移動させて最上部メディア3Aから分離する分離部材39と、分離部材39で分離される直下メディア3Bの移動方向側に配置され、把持部材38によって把持される最上部メディア3Aの上面に当接して最上部メディア3Aの傾きを抑制する突起部34と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)またはBD(Blu−ray Disc)等のメディアを搬送するメディア搬送機構およびこのメディア搬送機構を有するメディア処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVD等のメディアに対してデータの書き込みとレーベル印刷とを行って、メディアを発行するCD/DVDパブリッシャー等のメディア処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のメディア処理装置は、データ書き込み等の処理が行われていない未使用のメディアが積層されて収容されるブランクメディアスタッカーと、処理済みのメディアが積層されて収容される作成済みメディアスタッカーと、メディアを把持して搬送するメディア搬送機構とを備えている。
【0003】
メディア搬送機構は、昇降可能な搬送アームを備えており、搬送アームは、メディアの中心孔に挿入されるガイド部と、メディアの中心孔の側面に当接してメディアを把持する把持機構とを備えている。ガイド部は、円柱状に形成される基端部と、下側へ向かって次第に径が小さくなる円錐台状のガイド面部とから構成されており、基端部の下端にガイド面部が繋がっている。把持機構は、メディアの中心孔の側面に当接してメディアを把持する3個の把持爪を備えている。
【0004】
特許文献1に記載のメディア処理装置では、処理前のメディアがブランクメディアスタッカーに積層されて収容されているため、スタッカー内で上下のメディア同士が密着してメディア間に吸着力が生じる場合がある。この場合、ブランクメディアスタッカーに積層されたメディアのうちの一番上の1枚のメディア(最上部のメディア)を搬送アームで持ち上げようとしたときに、直下のメディア(すなわち、上から2番目のメディア)が最上部のメディアとともに持ち上げられるおそれがある。2枚のメディアが吸着された状態で、搬送アームによってメディアが搬送されると、搬送先で不具合が生じる。そこで、特許文献1に記載のメディア処理装置では、搬送アームは、最上部のメディアに対して直下のメディアを移動させて最上部のメディアから分離するキックレバーを備えている。そのため、このメディア処理装置では、ブランクメディアスタッカーから最上部のメディアを1枚のみ確実に持ち上げることが可能である。
【0005】
なお、CDおよびDVDの記録面側の中心孔の周辺には、記録面を保護するためのスタックリングと呼ばれる円形状の突起が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−26457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、メディアとして、CDやDVDに加え、BDが広く利用されるようになっている。CDやDVDと同様に、BDの記録面側の中心孔の周辺にはスタックリングが形成されているが、BDのスタックリングの高さは、CDやDVDのスタックリングの高さよりも低くなっている。そのため、ブランクメディアスタッカー内で上下のBDが密着したときにBD間が負圧となることで発生するBD間の吸着力は、CDやDVD間の吸着力よりも大きくなる。
【0008】
上述のように、特許文献1に記載のメディア処理装置では、搬送アームがキックレバーを備えているため、ブランクメディアスタッカー内でメディア間に吸着力が発生しても、最上部のメディアから直下のメディアを分離して落下させ、ブランクメディアスタッカーから最上部のメディアを1枚のみ確実に持ち上げることが可能である。しかしながら、ブランクメディアスタッカー内に収容されるメディアがBDであった場合、BD間の吸着力は、CDやDVD間の吸着力よりも大きくなる。そのため、ブランクメディアスタッカー内でメディア間に吸着力が生じると、最上部のメディアから直下のメディアをキックレバーで分離する際に、最上部のメディアが直下のメディアと一緒に搬送アームから落下するといった現象が起こることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0009】
具体的には、本願発明者の検討によって、以下の現象が発生することが明らかになった。すなわち、図11(A)に示すように、把持爪108が最上部のメディア101を把持して持ち上げようとしたとき、最上部のメディア101に直下のメディア102が吸着されて、最上部のメディア101と一緒に直下のメディア102が搬送アーム105で持ち上げられた場合に、最上部のメディア101から直下のメディア102を分離するため、キックレバー106が直下のメディア102を蹴り出すと、直下のメディア102には、キックレバー106の蹴り出し方向に力F10が作用して、直下のメディア102は、キックレバー106の蹴り出し方向へ移動する。すると、図11(B)に示すように、直下のメディア102の中心孔102aの側面がガイド部107のガイド面部107aに接触して、ガイド面部107aに沿った力F20が直下のメディア102に作用する。すると、直下のメディア102を吸着している最上部のメディア101にもガイド面部107aに沿った力F20が作用する。すると、図11(C)に示すように、最上部のメディア101と把持爪108との接触点を支点としたモーメントM10が2枚のメディア101、102に生じて、最上部のメディア101が把持爪108から外れ、2枚のメディア101、102が回転する。すると、図11(D)に示すように、最上部のメディア101が直下のメディア102と一緒に搬送アーム105から落下する。なお、最上部のメディア101が把持爪108から外れても最上部のメディア101がキックレバー106に引っ掛かって落下しない場合もあるが、この場合には、最上部のメディア101の搬送先で不具合が生じる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、メディアに形成されるスタックリングの高さが低く、または、メディアにスタックリングが形成されておらず、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能なメディア搬送機構を提案することにある。また、本発明の課題は、かかるメディア搬送機構を有するメディア処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のメディア搬送機構は、昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構であって、前記搬送アームは、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアの中心孔の側面に当接し、前記直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、前記分離部材で分離される前記直下メディアの移動方向側に配置され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアの上面に当接して前記最上部メディアの傾きを抑制する突起部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のメディア搬送機構では、把持部材によって把持される最上部メディアの上面に当接して最上部メディアの傾きを抑制する突起部が、分離部材によって最上部メディアから分離される直下メディアの移動方向側に配置されている。そのため、最上部メディアに直下メディアが吸着され、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられた場合に、分離部材を作動させたときの最上部メディアの傾きを抑制して、最上部メディアが把持部材から外れるのを防止することが可能になる。したがって、メディアに形成されるスタックリングの高さが低くて、または、メディアにスタックリングが形成されていなくて、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられたときに、把持部材によって最上部メディアを把持しつつ、分離部材によって最上部メディアから直下メディアを分離することが可能になる。その結果、本発明では、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【0013】
本発明において、前記搬送アームは、前記把持部材および前記分離部材が収容されるケース体と、前記突起部を先端側で保持する保持部材とを有し、前記保持部材は、前記ケース体から前記直下メディアの移動方向へ突出するように伸びていることが好ましい。このように構成すると、メディアの径方向におけるメディアの中心と突起部との距離を長くすることが可能になる。したがって、突起部によって、最上部メディアの傾きを効果的に抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、前記突起部は、前記搬送アームに上下動可能に保持され、前記搬送アームは、前記突起部を下方向へ付勢する付勢部材を有することが好ましい。この場合には、前記搬送アームは、前記最上部メディアを把持する前に積層された前記メディアを上側から押さえ付ける押付動作を行い、前記付勢部材の付勢力は、前記押付動作時に前記突起部が前記最上部メディアから受ける力よりも小さく、かつ、前記分離部材が前記最上部メディアから前記直下メディアを分離するときに前記突起部が前記最上部メディアから受ける力よりも大きく設定されていることが好ましい。このように構成すると、最上部メディアの上面に当接する突起部が配置されていても、搬送アームによる押付動作時に突起部を上方向へ移動させて、最上部メディアを撓ませることが可能になる。したがって、搬送アームによる押付動作によって、最上部メディアと直下メディアとの貼付きを解消することが可能になる。また、このように構成すると、突起部が上下方向へ移動可能となっていても、分離部材を作動させたときには、突起部によって、最上部メディアの傾きを抑制することが可能になる。
【0015】
本発明のメディア搬送機構は、メディア処理装置に用いることができる。このメディア処理装置では、メディアに形成されるスタックリングの高さが低くて、または、メディアにスタックリングが形成されていなくて、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるメディア処理装置の外観斜視図。
【図2】開閉扉を開いた状態のメディア処理装置の斜視図。
【図3】メディア搬送機構の斜視図。
【図4】搬送アームを下側から示す斜視図。
【図5】搬送アームの先端側部分の底面図。
【図6】分離機構を上側から示す斜視図。
【図7】キックレバーの動作の説明図。
【図8】図4のE部の拡大図。
【図9】突起部の作用を説明するための説明図。
【図10】搬送アームによる押付動作の作用を説明するための概念図。
【図11】従来技術の問題点を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したメディア搬送機構およびメディア処理装置を説明する。
【0018】
(メディア処理装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるメディア処理装置1の外観斜視図である。図2は、図1のメディア処理装置1の内部構造が分かるように、筺体2の上板部分の一部を取り外すとともに、左右の開閉扉11、12を開いた状態を示す斜視図である。図3は、メディア搬送機構8の斜視図である。
【0019】
本形態のメディア処理装置1は、CD、DVDまたはBD等の円板状のメディア3に対してデータの書き込みとレーベル印刷とを行って、メディア3を発行するパブリッシャーである。このメディア処理装置1は、その筐体2内に、未使用のブランクメディア等の書き込み可能なメディア3を収納するためのメディア供給用スタッカー4と、メディア3へのデータの書き込みおよびメディア3からのデータの読み出しを行うメディアドライブ5と、データが書き込まれたメディア3のレーベル面3aに、書き込みデータの内容を表すタイトル等を含むレーベルを印刷するレーベルプリンター6と、データの書き込みやレーベルの印刷等が行われたメディア3を排出するためのメディア排出用スタッカー7と、メディア3を搬送するメディア搬送機構8とを有している。
【0020】
筺体2は、略直方体状に形成されている。筐体2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉11、12が取り付けられている。開閉扉11の下方には、表示ランプ、操作ボタン等が配列された操作パネル13が形成されている。操作パネル13の側方には、メディア排出口14が形成されている。
【0021】
開閉扉11、12を開けると、図2に示すように、メディア処理装置1の筐体2内の右側の部位に、メディア供給用スタッカー4とメディア排出用スタッカー7とが同軸状態で上下に配置されている。メディア供給用スタッカー4およびメディア排出用スタッカー7の後側の部位には、メディア搬送機構8が配置されている。メディア供給用スタッカー4、メディア排出用スタッカー7およびメディア搬送機構8の側方の部位には、上側にメディアドライブ5が配置され、下側にレーベルプリンター6が配置されている。図2では、メディアドライブ5およびレーベルプリンター6のメディアトレイ5a、6aはそれぞれ手前に引き出されたメディア受け渡し位置にある。メディアドライブ5およびレーベルプリンター6の側方の部位には、レーベルプリンター6へインクを供給するためのインクカートリッジを装着するためのカートリッジ装着部15が設けられている。
【0022】
メディア供給用スタッカー4には、メディア3が、レーベル面3aを上にした状態で厚さ方向に積層されて収納されている。メディア供給用スタッカー4は、前方へ水平に引き出し可能なスライド板4aと、このスライド板4aの上に垂直に配置されている左右一対の円弧状の枠板4b、4cとを備えている。メディア供給用スタッカー4にブランクメディア等の書き込み可能なメディア3を収納あるいは補充する場合には、開閉扉12を開けてスライド板4aを手前に引き出し、メディア3を枠板4b、4cの間に上方から挿入する。枠板4b、4cの間にメディア3が挿入されると、メディア3は、同軸状態で積層されてメディア供給用スタッカー4に収納される。この状態で、スライド板4aを筐体2内へ戻すと、メディア3の収納や補充が完了する。
【0023】
メディア排出用スタッカー7は、メディア供給用スタッカー4と同様に、前方に水平に引き出し可能なスライド板7aと、このスライド板7aの上面に垂直に配置されている左右一対の円弧状の枠板7b、7cとを備えている。データの書き込み済みのメディア3やレーベルの印刷済みのメディア3はメディア搬送機構8によって円弧状の枠板7b、7cの間に上方から挿入され、同軸状態に積層されてメディア排出用スタッカー7に保管される。開閉扉12を開けてスライド板7aを手前に引き出すことにより、メディア排出用スタッカー7に保管されているメディア3を一括して取り出すことができる。
【0024】
メディア搬送機構8は、メディア3を1枚ずつ筐体2内の各部分に搬送するものであり、メディア3のレーベル面3aの一部分を外周側から中心に延びる帯状に覆った状態で、このメディア3の中心部分を把持する搬送アーム18を備えている。搬送アーム18は、たとえば、メディア供給用スタッカー4に積層されて収納されるメディア3のうちの一番上のメディア3である最上部メディア3Aを順次、把持して取り出し、所定の位置へ搬送する。また、メディア搬送機構8は、シャーシ19と、シャーシ19の上下の水平支持板部分の間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸20とを備えている。搬送アーム18は、垂直ガイド軸20に取り付けられており、垂直ガイド軸20に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸20を中心に左右へ旋回可能となっている。
【0025】
図3に示すように、メディア搬送機構8は、搬送アーム18を昇降させるためのモーター21を備えており、モーター21の回転は、歯車列22を介してシャーシ19の上端近傍位置に配置されている駆動側プーリー23に伝達される。シャーシ19の下端近傍位置には、従動側プーリー24が配置されており、これら駆動側プーリー23および従動側プーリー24の間にタイミングベルト25が架け渡されている。タイミングベルト25の左右のベルト部分の一方には、搬送アーム18の後端部分が固定されている。したがって、モーター21を駆動すると、タイミングベルト25が上下方向に移動し、タイミングベルト25に取り付けられている搬送アーム18が垂直ガイド軸20に沿って昇降する。
【0026】
また、メディア搬送機構8は、搬送アーム18を旋回させるためのモーター26を備えており、モーター26の回転は、歯車列27を介して扇形の最終段歯車28に伝達される。扇形の最終段歯車28は、垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回可能である。最終段歯車28には、搬送アーム18の昇降機構の構成部品が組み付けられているシャーシ19が搭載されている。モーター26を駆動すると、最終段歯車28が左右に旋回するので、最終段歯車28に搭載されているシャーシ19が一体となって垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回する。その結果、シャーシ19に搭載されている昇降機構によって保持されている搬送アーム18が垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回する。
【0027】
図2に示すように、メディア供給用スタッカー4およびメディア排出用スタッカー7の一対の枠板4b、4cおよび枠板7b、7cの間には、搬送アーム18が昇降可能な隙間が形成されている。また、上下方向において、メディア供給用スタッカー4とメディア排出用スタッカー7との間には、搬送アーム18が水平に旋回して、メディア排出用スタッカー7の真上まで移動できるように、空間が形成されている。さらに、メディア供給用スタッカー4の上方から搬送アーム18を水平に旋回させると、メディア受け渡し位置にあるメディアドライブ5のメディアトレイ5aにアクセス可能となっている。また、上側のメディアトレイ5aをメディアドライブ5に押し込んだ後に搬送アーム18を下降させると、メディア受け渡し位置にあるレーベルプリンター6のメディアトレイ6aにアクセス可能となっている。さらに、上下のメディアトレイ5a、6aをメディアドライブ5およびレーベルプリンター6に押し込んだ後に搬送アーム18を下降させると、メディア排出口14にアクセス可能となっている。このように、搬送アーム18の昇降および左右への旋回の組み合わせ動作によって、メディア3を各部分に搬送することが可能である。
【0028】
(搬送アームの構成)
図4は、搬送アーム18を下側から示す斜視図である。図5は、搬送アーム18の先端側部分の底面図である。図6は、分離機構32を上側から示す斜視図である。図7は、キックレバー39の動作の説明図である。図8は、図4のE部の拡大図である。図9は、突起部34の作用を説明するための説明図である。
【0029】
搬送アーム18は、メディア3の中心孔3bに挿入されるメディアガイド30と、メディア3を把持する把持機構31とを備えている。上述のように、搬送アーム18は、メディア供給用スタッカー4に積層されて収納されるメディア3のうちの一番上のメディア3である最上部メディア3Aを順次、把持して取り出し、所定の位置へ搬送する。そのため、搬送アーム18は、最上部メディア3Aに吸着された最上部メディア3Aの直下のメディア3である直下メディア3B(図9参照)を最上部メディア3Aから分離する分離機構32を備えている。把持機構31および分離機構32は、扁平な略直方体状に形成されるケース体33の中に収容されている。また、搬送アーム18は、分離機構32によって、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離する際の最上部メディア3Aの傾きを抑制する突起部34を備えている。
【0030】
メディアガイド30は、搬送アーム18の先端側に配置されている。また、メディアガイド30は、搬送アーム18の下面側に配置されている。メディアガイド30の中心部分は、メディア3の調心機能を有するガイド部35となっている。ガイド部35は、下方向に向かうにしたがって外径が小さくなる略円錐台状に形成されている。ガイド部35の外周側には、3個の突起36が同一円上に等角度ピッチで配置されている。3個の突起36の外接円の径は、メディア3の中心孔3bの内径よりもわずかに小さくなっている。把持機構31によってメディア3が把持される際には、ガイド部35によって、メディア3の中心孔3bが3個の突起36の外周側へ案内される。
【0031】
把持機構31は、メディア3の中心孔3bの側面に当接してメディア3を把持する円柱状の3個の把持爪(把持部材)38を備えている。3個の把持爪38は、ガイド部35に形成される切欠き部の中に配置されるとともに、同一円上に等角度ピッチで配置されている。3個の把持爪38は、把持爪38の駆動機構に連結されており、連動して径方向へ移動可能となっている。メディア3の中心孔3bが突起36の外周側に配置されている状態で、3個の把持爪38が径方向外側へ移動すると、メディア3の中心孔3bの側面に把持爪38が当接して、メディア3が把持爪38に把持される。また、把持爪38がメディア3を把持している状態で、把持爪38が径方向内側へ移動すると、メディア3が把持爪38から外れる。把持爪38は、メディア3を把持するときに、図9に示すように、直下メディア3Bが吸着された最上部メディア3Aの中心孔3bの側面には当接するが、直下メディア3Bの中心孔3bの側面には当接しないように形成され、配置されている。
【0032】
分離機構32は、中間部39aがケース体33に回動可能に支持されるキックレバー(分離部材)39を備えている。キックレバー39の先端側は、下方に屈曲された後に側方に屈曲された作用片39bとなっている。作用片39bは、ガイド部35に形成される切欠き部の中に配置されている。キックレバー39の基端側には、揺動機構40が設けられている。揺動機構40は、図6に示すように、複合クラッチ歯車41と、鉛直複合伝達歯車42と、水平複合伝達歯車43と、ラック44とを備えている。複合クラッチ歯車41および鉛直複合伝達歯車42は、上下方向を軸方向とする回転が可能となるようにケース体33に支持されている。水平複合伝達歯車43は、水平方向を軸方向とする回転が可能となるようにケース体33に支持されている。ラック44は、シャーシ19に、垂直ガイド軸20と平行に支持されている。
【0033】
ラック44には、水平複合伝達歯車43のピニオン43aが噛み合っている。水平複合伝達歯車43には、ねじ歯車43bが設けられている。ねじ歯車43bは、鉛直複合伝達歯車42のねじ歯車42aに噛み合っている。鉛直複合伝達歯車42には、平歯車42bが設けられている。平歯車42bは、複合クラッチ歯車41の平歯車41aに噛み合っている。複合クラッチ歯車41は、平歯車41aに対して相対回転可能な間欠歯車41bを備えている。間欠歯車41bは、周面の一部に複数の歯からなる歯列41cを備えている。歯列41cは、鉛直複合伝達歯車42の平歯車42bと噛み合い可能となっている。また、間欠歯車41bには、カム穴41dが形成されている。カム穴41dには、キックレバー39の基端近傍で下方へ突出するカムピン(図示省略)が摺動可能に配置されている。平歯車41aと間欠歯車41bとの間には、クラッチ機構が設けられており、複合クラッチ歯車41の回転範囲内の一定範囲では、平歯車41aと間欠歯車41bとが供回りし、その他の範囲では、平歯車41aに対して間欠歯車41bが空回りする。
【0034】
分離機構32では、上下方向において、搬送アーム18が所定の位置にあるときには、図7(A)に示すように、キックレバー39の作用片39bは、メディア3の中心孔3bの側面よりも径方向内側に配置されている。この状態で、搬送アーム18が上昇を開始すると、複合クラッチ歯車41の平歯車41aが回転を開始する。また、搬送アーム18が所定位置まで上昇すると、間欠歯車41bが平歯車41aと一緒に回転する。間欠歯車41bが平歯車41aと一緒に回転すると、キックレバー39が中間部39aを中心に回動して、作用片39bが矢印Vの方向へ移動し、図7(B)に示すように、作用片39bの先端部分が、把持爪38によって把持されているメディア3の中心孔3bの側面よりも径方向外側に移動する。また、この状態で、搬送アーム18が下降すると、作用片39bは、メディア3の中心孔3bの側面よりも径方向内側へ移動する。
【0035】
作用片39bは、図9に示すように、最上部メディア3Aの中心孔3bの側面には、当接しないが、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bの中心孔3bの側面に当接する位置に配置されている。そのため、把持爪38が把持する最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着された状態で、搬送アーム18が上昇し、作用片39bがV方向へ移動すると、図7(B)に示すように、作用片39bが直下メディア3Bの中心孔3bの側面に当接して、最上部メディア3Aに対して直下メディア3Bを矢印Vの方向へ移動させる。直下メディア3Bが矢印Vの方向へ移動すると、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bは、最上部メディア3Aから分離されて、落下する。
【0036】
突起部34は、保持部材46の先端側に上下動可能に保持されている。保持部材46は、ケース体33から突出する腕部46aと、腕部46aの先端に形成される保持部46bとを備えている。腕部46aは、作用片39bが径方向外側へ移動するときの移動方向へ伸びている。すなわち、腕部46aは、キックレバー39の作用で直下メディア3Bが移動する方向(V方向)へ伸びており、ケース体33からV方向へ突出している。具体的には、腕部46aは、上下方向から見たときに、搬送アーム18のシャーシ19からの突出方向に直交する方向に対してシャーシ19側にわずかに傾いた方向へ突出している。
【0037】
保持部46bは、筒状に形成されており、その内周側で突起部34を上下動可能に保持している。保持部46bは、腕部46aの先端に形成されており、突起部34は、搬送アーム18のV方向側に配置されている。すなわち、突起部34は、作用片39bの移動方向の略延長線上に配置されている。また、突起部34は、コイルバネ等の付勢部材47によって下方向へ付勢されており、突起部34の下端は、把持爪38に把持される最上部メディア3Aのレーベル面3aに当接する。突起部34の下端部分は、下方向へ向かうにしたがって外径が小さくなる円錐状に形成されている。
【0038】
このように、キックレバー39の作用で直下メディア3Bが移動するV方向に突起部34が配置されているため、最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着されて最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられた場合に、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力が大きくても、キックレバー39を作動させたときの最上部メディア3Aの傾きを抑制して、最上部メディア3Aが把持爪38から外れるのを防止することが可能になる。すなわち、最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着されて最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたときに、キックレバー39が作動して、直下メディア3BがV方向へ移動すると、図9に示すように、直下メディア3Bの中心孔3bの側面がガイド部35の側面に接触して、ガイド部35の側面に沿った力Fが直下メディア3Bに作用するため、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力が大きいと、直下メディア3Bが吸着している最上部メディア3Aにもガイド部35の側面に沿った力Fが作用する。しかし、最上部メディア3Aに力Fが作用しても、最上部メディア3Aのレーベル面3aが突起部34に当接するため、従来のようなモーメントM10(図11参照)が最上部メディア3Aおよび直下メディア3Bに作用することがない。したがって、把持爪38から最上部メディア3Aが外れるまで、最上部メディア3Aが傾くのを防止することが可能になる。
【0039】
(付勢部材の付勢力)
図10は、搬送アーム18による押付動作の作用を説明するための概念図である。図10に示すように、メディア3のレーベル面3aと反対側の面には、円環状のスタックリング3cが形成されており、メディア供給用スタッカー4では、スタックリング3cの先端とレーベル面3aとが当接した状態で、複数のメディア3が積層されて収納されている。そのため、最上部メディア3Aのスタックリング3cに直下メディア3Bのレーベル面3aが貼り付くことがある。この貼付きを解消するため、搬送アーム18は、メディア供給用スタッカー4内の最上部メディア3Aを把持する前に、その一部を利用して、メディア供給用スタッカー4内のメディア3を上側から押さえ付ける押付動作を行っている。この押付動作によって、図10(A)の二点鎖線で示すように、最上部メディア3Aが撓み、図10(B)に示すように、最上部メディア3Aのスタックリング3cの、直下メディア3Bのレーベル面3aへの貼付部Pが直下メディア3Bのレーベル面3aから離れるため、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの貼付きを解消することが可能である。
【0040】
ここで、本形態の搬送アーム18は、最上部メディア3Aのレーベル面3aに当接する突起部34を備えており、突起部34は、付勢部材47に付勢されている。この付勢部材47の付勢力が強すぎると、押付動作を行ったときに、図10(C)に示すように、最上部メディア3Aの、突起部34が配置されている側(図10(C)の右側)が撓まなくなり、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの貼付きを解消できない場合が生じる。一方で、付勢部材47の付勢力が弱すぎると、最上部メディア3Aに吸着されている直下メディア3Bにキックレバー39の作用片39bが作用したときに、突起部34が上昇して、把持爪38から最上部メディア3Aが外れるまで、最上部メディア3Aが傾くおそれがある。
【0041】
そのため、本形態では、付勢部材47の付勢力は、押付動作時に突起部34が最上部メディア3Aから受ける力よりも小さく設定されている。また、付勢部材47の付勢力は、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離するために、直下メディア3Bに作用片39bが作用したときに突起部34が最上部メディア3Aから受ける力よりも大きく設定されている。
【0042】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、キックレバー39の作用で直下メディア3Bが移動するV方向に突起部34が配置されている。そのため、上述のように、最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着されて最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられた場合に、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力が大きくても、キックレバー39を作動させたときの最上部メディア3Aの傾きを抑制して、最上部メディア3Aが把持爪38から外れるのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、メディア3に形成されるスタックリング3cの高さが低くて、または、メディア3にスタックリング3cが形成されていなくて、積層されたメディア3間に生じる吸着力が大きい場合であっても、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたときに、把持爪38によって最上部メディア3Aを把持しつつ、キックレバー39によって最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離することが可能になり、メディア3を1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【0043】
本形態では、突起部34は、ケース体33からV方向へ突出する保持部材46の腕部46aの先端側に保持されている。そのため、メディア3の径方向におけるメディア3の中心と突起部34との距離を長くすることができる。したがって、本形態では、突起部34によって、最上部メディア3Aの傾きを効果的に抑制することができる。
【0044】
本形態では、付勢部材47の付勢力は、押付動作時に突起部34が最上部メディア3Aから受ける力よりも小さく、かつ、直下メディア3Bにキックレバー39の作用片39bが作用したときに突起部34が最上部メディア3Aから受ける力よりも大きく設定されている。そのため、本形態では、最上部メディア3Aのレーベル面3aに突起部34が当接していても、搬送アーム18による押付動作には、突起部34が上側へ移動して、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの貼付きが解消されるように最上部メディア3Aを撓ませることが可能になる。また、本形態では、直下メディア3Bにキックレバー39の作用片39bが作用したときには、付勢部材47の付勢力で突起部34が上側へ動かないため、突起部34が上下方向へ移動可能となっていても、突起部34によって、直下メディア3Bに作用片39bが作用したときの最上部メディア3Aの傾きを抑制することができる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態では、突起部34は、保持部材46に保持されているが、突起部34は、ケース体33に保持されても良い。また、上述した形態では、突起部34は、上下方向へ移動可能となっているが、突起部34は、固定されていても良い。
【符号の説明】
【0046】
1・・・メディア処理装置、3・・・メディア、3A・・・最上部メディア、3B・・・直下メディア、3a・・・レーベル面(上面)、3b・・・中心孔、8・・・メディア搬送機構、18・・・搬送アーム、33・・・ケース体、34・・・突起部、38・・・把持爪(把持部材)、39・・・キックレバー(分離部材)、46・・・保持部材、47・・・付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構であって、
前記搬送アームは、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアの中心孔の側面に当接し、前記直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、前記分離部材で分離される前記直下メディアの移動方向側に配置され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアの上面に当接して前記最上部メディアの傾きを抑制する突起部と、を有することを特徴とするメディア搬送機構。
【請求項2】
前記搬送アームは、前記把持部材および前記分離部材が収容されるケース体と、前記突起部を先端側で保持する保持部材とを有し、
前記保持部材は、前記ケース体から前記直下メディアの移動方向へ突出するように伸びていることを特徴とする請求項1に記載のメディア搬送機構。
【請求項3】
前記突起部は、前記搬送アームに上下動可能に保持され、
前記搬送アームは、前記突起部を下方向へ付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載のメディア搬送機構。
【請求項4】
前記搬送アームは、前記最上部メディアを把持する前に積層された前記メディアを上側から押さえ付ける押付動作を行い、
前記付勢部材の付勢力は、前記押付動作時に前記突起部が前記最上部メディアから受ける力よりも小さく、かつ、前記分離部材が前記最上部メディアから前記直下メディアを分離するときに前記突起部が前記最上部メディアから受ける力よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のメディア搬送機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のメディア搬送機構を有することを特徴とするメディア処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−8417(P2013−8417A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140625(P2011−140625)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】