説明

メディア攪拌式粉砕機

【課題】良質な粉砕、分散作用により、高品質の製品を得ることのできるメディア攪拌式粉砕機を提供する。
【解決手段】本発明のメディア攪拌式粉砕機は、原料入口を有し、球形の粉砕室を有する粉砕容器、前記粉砕室内であって前記粉砕容器の内壁近傍に回転自在に設置された攪拌部材、前記粉砕室内に入れられた粉砕メディア、および前記粉砕室内であって前記攪拌部材に対向して回転自在に配置された遠心分離式メディア分離材を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア攪拌式粉砕機に関する。本発明のメディア攪拌式粉砕機は、インキ、塗料、顔料、セラミック、金属、無機物、誘電材、フェライト、トナー、ガラス、製紙用コーティングカラー等の原料を粉砕メディアと混合して微細粒子に粉砕または分散するための使用に特に適しているが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
メディア攪拌式粉砕機としては、特開2005−199125号公報で提案されたメディア攪拌ミルが知られている。
【0003】
上記特開2005−199125号公報で提案されたメディア攪拌ミルは、内部に粉砕メディアを収容する粉砕室が設けられる粉砕タンクと、該粉砕タンクに回転可能に設けられる回転軸と、該回転軸の前記粉砕室内に位置する部分に設けられて、回転軸と一体に回転可能な攪拌分離部材とを備えたメディア攪拌ミルであって、
前記粉砕室の内壁面と前記攪拌部材の外周面とを、互いに合致する形状に形成するとともに、前記攪拌分離部材の外周面から攪拌部材の中心部に貫通し、その部分から前記回転軸の中心部を貫通して前記粉砕室外に連通する分離排出路と、前記攪拌部材の上下面間を前記回転軸の軸線方向に貫通して、前記粉砕室内の上部と下部との間を相互に連通する圧力緩和孔とを設けたことを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2005−199125号公報
【0004】
しかしながら、前記のような構造のメディア攪拌ミルにあっては、遠心力が最大となる最大径部に粉砕メディアが密集しやすく、局所的となり、分散力、粉砕力が場所によってばらばらとなり、その差が大きい。そのため、原料の分散、粉砕が均一に行われず、高品質の製品を得ることが困難であるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、良質な粉砕、分散作用により、高品質の製品を得ることのできるメディア攪拌式粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記(1)〜(10)の構成の本発明によるメディア攪拌式粉砕機によって達成される。
(1)ビーズ状粉砕メディアを収容した竪型円筒形の粉砕室を有する粉砕容器、この粉砕容器に設けられた原料スラリー供給口、前記粉砕室の下部であって、該粉砕室の軸心とほぼ同軸の回転軸を持つ撹拌部材、および前記粉砕室内であって、前記撹拌部材の上方に設けられたメディア分離部材を備えたメディア攪拌式粉砕機において、前記粉砕室下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部と環状の粉砕室下方部分外方部とを構成する案内環を設け、前記粉砕室下方部分外方部を粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路としたことを特徴とするメディア攪拌式粉砕機。
(2)前記案内環は環状空間を有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプによって支えられ、該パイプを用いて前記環状空間に通水排水が可能な構造である上記(1)のメディア攪拌式粉砕機。
(3)前記パイプが粉砕容器の上方から延び、下端で前記案内環を支持している上記(2)のメディア攪拌式粉砕機。
(4)前記メディア分離部材は、遠心式のホイール形状分離部材又はスクリーンである上記(1)〜(3)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(5)前記撹拌部材が羽根車であり、上下に間隔を置いて配置された一対の環状板とそれらの間に配置された複数の羽根で構成されている上記(1)〜(4)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(6)前記撹拌部材は、周速5〜30m/sの速度で回転する上記(1)〜(5)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(7)前記案内環は、その下端が前記撹拌部材の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にある上記(1)〜(6)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(8)前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmである上記(1)〜(7)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(9)前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2である上記(1)〜(8)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
(10)粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%の1である上記(1)〜(9)のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【発明の効果】
【0007】
本発明のメディア攪拌式粉砕機においては、上記したように、粉砕室内に案内環を設置したことにより、粉砕メディアが円周方向に移動しながら、粉砕室の半径方向外方に粉砕容器の内壁に向かって移動し、続いて案内環と粉砕容器の間の上昇通路を上昇し、ついで中央部から案内環の内部を通って下降し攪拌部材に戻る運動を規則的に繰返すことができることから、粉砕室に対するビーズの容積割合が少なくともビーズ間隔が極端に広がらず、粉砕・分散効率を向上できる。また、粉砕メディアの偏析が生じにくく、粉砕力、分散力が均一であるため、均一分散が可能となり、高品質な製品を得ることができる。
更には、粉砕部と粉砕メディア分離部の機能分散が明確になり粉砕メディア分離性能が向上する。
更にまた、粉砕室外筒冷却に加えて、案内環での冷却ができるので冷却能力を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態によるメディア攪拌式粉砕機について説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるメディア攪拌式粉砕機10を示すものであり、このメディア攪拌式粉砕機10は、上部を閉鎖する端板12aを有する竪型円筒形の粉砕容器12を備えている。この粉砕容器12は、内部に円柱状の粉砕室14を備えており、この粉砕室14内にスラリー状の原料を導入するための原料スラリー供給口16を有している。
【0009】
上記粉砕容器12の粉砕室14の内部下部中央には、攪拌部材22が回転自在に配置されている。攪拌部材22は、羽根車であり、例えば、ボス22aの周囲に固定され、上下に間隔を置いて配置された一対の環状板22b,22cとそれらの間に配置された複数の羽根22dで構成されている。
【0010】
上記撹拌部材22には、上端がこの撹拌部材22のハブ22aに取り付けられ、そこから粉砕容器12および上記フレーム18を軸方向下方に貫通して延びる撹拌部材駆動軸である回転駆動軸24が固定されている。この回転駆動軸24は、その下方端部が、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。この回転駆動軸24の回転軸(回転軸線)は粉砕室14の中心軸を通っていることが好ましい。なお、上記回転駆動軸24には、軸封25(メカニカルシール等)が設けられている。
【0011】
メディア攪拌式粉砕機において周知のように、粉砕容器12の内部には、ビーズ状の粉砕メディア30(なお、図においては極めて拡大して示した)が収納されている。この粉砕メディア30は、その直径が0.02〜2mmのものを用いることができる。この粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%である。通常のメディア攪拌式粉砕機においては、粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の75%〜90%であるので、本発明のメディア攪拌式粉砕機は、拘束力が小さくソフトな粉砕・分散が可能である。
【0012】
上記粉砕容器12の粉砕室14の内部上方であって粉砕室14の中心部近傍には、上記該攪拌部材と軸方向に間隔をおいて対向して配置され、原料スラリー内に分散したメディア30を該原料から分離するための遠心分離式メディア分離部材32が設けられている。このメディア分離部材32は、下部に内部に空間を有する筒状の本体を有するボス32aおよび該本体の下部を閉鎖する閉鎖板32bを備えている。上記ボス32aの本体には、複数の開孔が設けられ、そこから原料スラリーのみが上記本体内の空間に導入されるようになっている。このメディア分離部材32は、上記該攪拌部材22と同軸に配置されていることが好ましいが、軸がずれていてもよい。このメディア分離部材32には、中空の回転駆動軸34が固定されている。この駆動軸34は、端板12bを貫通して上方に延び、その端部は、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。なお、上記回転駆動軸34には、軸封36(メカニカルシール等)が設けられている。また、この駆動軸34の中空部は、メディア分離部材32の内部空間に連通し、原料スラリー出口38を形成している。上記メディア分離部材としては、従来のスクリーンを用いることもできる。
【0013】
粉砕容器12の外周には、冷媒体または熱媒体(通常は冷媒体であって、冷却水)を通すためのジャケット40が設けられており、粉砕室14内を温調可能にしている。このジャケット40には、下方部分に冷却水を導入するための冷却水入口42、上方部分に冷却水を排出するための冷却水出口46が設けられている。
【0014】
粉砕容器12は、上記端板12aを取り外すことにより、粉砕容器12を開いて、容易にメンテナンスができるようになっている。
【0015】
本発明のメディア攪拌式粉砕機においては、上記攪拌部材22は、周速5〜30m/sの範囲の回転速度で駆動が可能であり、メディア分離部材32は、10〜20m/sの範囲の回転速度で駆動が可能である。
【0016】
上記粉砕室14内の下部には、案内環50が配置されている。内周環板52、その外周方向に間隔を隔てた外周環板54,下辺を構成する環状の下環板56および上辺を構成する上環板58から構成されており、内部は液密となっている。
【0017】
この案内環50は、前記粉砕室14下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部14aと環状の粉砕室下方部分外方部14bとを構成する。前記粉砕室下方部分外方部14bは、粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路の機能を果たす。
【0018】
前記案内環50は、上記した構造であるので環状空間50aを有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプ60a、60b(図2参照)によって支えられ、該パイプ60a、60bを用いて前記環状空間に冷却水の通水排水が可能な構造である。従って、本発明では、原料スラリーを粉砕容器12内部からも冷却できる。
【0019】
前記パイプ60a、60bは、図に示したように粉砕容器12の上方から延び、下端で前記案内環50を支持していることが好ましい。
【0020】
前記案内環50は、図に示したようにその下端が前記撹拌部材22の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材32の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にあることが好ましい。
【0021】
前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmであることが好ましい。上記間隔が、上記の下限未満であると、ビーズの動きを拘束しすぎであり、上限を越えると、自由度が増しすぎる。
【0022】
前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2であることが好ましい。上記高さが、上記の下限未満であると、ビーズの流れのコントロールが不十分になり、上限を越えると、ビーズの流れのスムーズさが損なわれる。
【0023】
作動においては、原料スラリー供給口16から原料である被粉砕粒子を含む原料スラリーを粉砕室14に導入しながら撹拌部材22を回転駆動する。粉砕室14内に導入されたスラリーは、粉砕室14内にすでに形成されているスラリーとメディア30の回転流れに乗って攪拌部材22の方向に下降移動されて、攪拌部材22により撹拌混合される。このとき、スラリーとメディア30は、半径方向外方に粉砕容器12の内壁まで移動され、この後撹拌混合された上記スラリーとメディア30は、今度は粉砕室14の内壁と案内環50の間の上昇通路を上昇移動する流れfとなり、そして上昇しきると、今度は先の下降する流れとなる。粉砕室14中心付近やや上方において、スラリーおよびメディアにはメディア分離部材32により回転運動が与えられる。この回転運動により、質量の大きいメディアは半径方向外向きに付勢され、スラリーから分離される。この場合、被粉砕粒子のうち、粉砕が不十分で粒子サイズが大きいものもメディアと同様に挙動する。一方、十分に粉砕されて質量が小さくなった粒子を含むスラリーは、メディア分離部材32の内部空間に入り、回転軸34内部の原料出口38を介してメディア攪拌式粉砕機外部へ排出される。この構成により、上記の整った流れ中に、原料粒子は、自由に運動する粉砕メディアの接触により良質な破砕、分散が行われ、その結果、高品質の製品がえられる。また、本発明のメディア攪拌式粉砕機によれば、上記の作用により、粒度分布幅の狭い粉砕を達成することが可能になる。また、粉砕メディアの量も少なくて済む。
なお、本発明のメディア攪拌式粉砕機においては、攪拌部材22が、メディア分離部材32から十分に離隔されているので、該メディア分離部材32の干渉が極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施態様によるメディア攪拌式粉砕機を示す断面図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、それぞれ図1に示したメディア攪拌式粉砕機に使用されているメディア分離部材の羽根部材の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 メディア攪拌式粉砕機
12 粉砕容器
14 粉砕室
16 原料スラリー供給口
18 フレーム
22 攪拌部材
24 回転駆動軸
25 軸封
30 粉砕メディア
32 メディア分離部材
32a ハブ部
32b 閉鎖板
34 中空駆動軸
36 軸封
38 原料出口
40 ジャケット
40a 冷却水入口
40b 冷却水出口
50 案内環
52 内周環板
54 外周環板
56 下環板
58 上環板
60a パイプ
60b パイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズ状粉砕メディアを収容した竪型円筒形の粉砕室を有する粉砕容器、この粉砕容器に設けられた原料スラリー供給口、前記粉砕室の下部であって、該粉砕室の軸心とほぼ同軸の回転軸を持つ撹拌部材、および前記粉砕室内であって、前記撹拌部材の上方に設けられたメディア分離部材を備えたメディア攪拌式粉砕機において、前記粉砕室下方部分を半径方向に分割し、粉砕室下方部分内方部と環状の粉砕室下方部分外方部とを構成する案内環を設け、前記粉砕室下方部分外方部を粉砕メディアと原料スラリーの混合物の上昇通路としたことを特徴とするメディア攪拌式粉砕機。
【請求項2】
前記案内環は環状空間を有し、前記粉砕容器に取り付けられた複数のパイプによって支えられ、該パイプを用いて前記環状空間に通水排水が可能な構造である請求項1のメディア攪拌式粉砕機。
【請求項3】
前記パイプが粉砕容器の上方から延び、下端で前記案内環を支持している請求項2のメディア攪拌式粉砕機。
【請求項4】
前記メディア分離部材は、遠心式のホイール形状分離部材又はスクリーンである請求項1〜3のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項5】
前記撹拌部材が羽根車であり、上下に間隔を置いて配置された一対の環状板とそれらの間に配置された複数の羽根で構成されている請求項1〜5のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項6】
前記撹拌部材は、周速5〜30m/sの速度で回転する請求項1〜5のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項7】
前記案内環は、その下端が前記撹拌部材の上端以上にあり、そしてその上端が前記メディア分離部材の下端と下方に所定の間隔を隔てた位置にある請求項1〜6のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項8】
前記案内環の外周壁と粉砕容器の内周壁の間の間隔は、10〜50mmである請求項1〜7のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項9】
前記案内環の高さは、粉砕室の高さの1/3〜1/2である請求項1〜8のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。
【請求項10】
粉砕メディアの総容積が、粉砕室の容積の30%〜60%である請求項1〜9のいずれかのメディア攪拌式粉砕機。


【図1】
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【図2】
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