説明

メトホルミンの経口経粘膜送達のための組成物

本発明は、メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含む経口経粘膜医薬組成物、糖尿病を含む様々な症状を治療するために当該組成物を使用する方法、当該組成物を製造する方法、および当該組成物の作製に使用するための製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
メトホルミンおよびその医薬的に許容可能な塩(例えば、メトホルミン塩酸塩、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド・ジアミド塩酸塩(N,N−dimethylimidodicarbonimidic diamide hydrochloride))は、糖尿病、糖尿病前症、多嚢胞性卵巣疾患および肥満症を含む、多くの症状を治療するために使用されてきた。メトホルミンの作用機構は、結晶中グルコースレベル(特に、食後グルコースレベル)を減少させること、肝臓のグルコース生成を減少させること、脂質レベルを減少させること、インスリンへの感受性を増大させること、および/または、腸管吸収を減少させることを含む。さらに、メトホルミンは、低血糖を引き起こすことなく作用する。
【0002】
現在、メトホルミンの経口製剤(錠剤)(例えばGLUCOPHAGE、Bristol Meyers Squibb社)が使用されている。メトホルミンの経口製剤の投与は、多くの副作用を引き起こす可能性がある。メトホルミンの経口製剤の使用に関する有害事象は、本来消化管に関する(例えば摂食障害、嘔気、胃内ガス貯留、嘔吐および時々の下痢等)。さらに、メトホルミンの経口製剤は、苦い後味を生じさせる可能性があり、そのことが食欲不振をもたらす可能性がある。これらの副作用は、しばしば、患者に薬物を摂取させることの失敗、即ち「服薬遵守の問題」をもたらす。服薬遵守の問題は、概して悪い味がする薬剤の摂取を拒む小児を含む、全ての世代の個人に一般的である。
【0003】
それゆえ、服薬遵守を助けるために、少なくとも1以上のこれらの問題を軽減するメトホルミンの製剤に大きな期待が存在する。
【発明の概要】
【0004】
第1の側面によると、本発明は、医薬的に許容可能な担体と、前記担体に含まれるメトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る有効量の医薬品とを含む経口経粘膜メトホルミン組成物(oral transmucosal metformin composition)であって、前記担体が、医薬的有効量の前記医薬品を、吸収のために口部粘膜に送達する能力を有する組成物を提供する。
【0005】
第2の側面によると、メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る医薬品の有効量と、アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(octylphenoxypolyethoxyethanol)、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン(monoolein)、モノオレイン酸塩(monooleates)、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される少なくとも1つの吸収促進剤(absorption enhancer)の有効量とを混合し、製剤を作ることを含む、経口経粘膜メトホルミン組成物の製造方法が提供される。製剤は、本発明による組成物を作るために、適切な医薬的に許容可能な担体と組み合わせられる。
【0006】
更なる側面によると、本発明は、糖尿病、糖尿病前症、肥満および多嚢胞性卵巣症候群から選択される様々な症状を治療するための、組成物の使用の方法、およびその使用を提供する。本発明による組成物は、血漿グルコースレベルの減少、肝臓のグルコース生成の減少、脂質レベルの減少、インスリンへの感受性の増大、グルコースの腸管吸収の減少、低血糖の減少および食欲の低下のために有用となり得る。本発明による方法は、そのような症状を治療するために、被検対象(subject)に第1の側面による組成物を投与することを含む。本発明はまた、同じ症状を治療するための薬物の製造における組成物の使用を提供する。本発明による組成物は、少なくとも1、20または30分の間、口内で維持され得る。また、組成物は、1から30分、1から20分または1から9分までの間、口内で維持され得る。
【0007】
また更なる側面によると、本発明は、第1の側面による組成物の作製に使用するための製剤を提供する。製剤は、メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩と、アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される少なくとも1つの吸収促進剤の有効量とから成る医薬品を含み、前記医薬品は、約5から90、10から80、20から80または20から50w/w%の濃度で存在し、吸収促進剤の全濃度は、約30、20、10、7、5、2、1、0.5、または0.01w/w%未満である(全て、製剤の総重量を基準とする)。
【0008】
本発明には、多くの利点がある。消化管(GI)を回避することで、メトホルミンおよびその塩の経口製剤の消化管の合併症および副作用を避けることができる。経口摂取される既知の製剤では、消化管における分解の問題のために、より高い投与量当りの量の医薬品が必要となる。口内粘膜を通して医薬品を送達する本発明による組成物は、より少ない活性成分で処方することができる。このことは、コストを削減し、味覚プロファイル(taste profile)を改善する。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本発明による好ましい実施態様の詳細は以下の通りである。
【0010】
医薬組成物
一実施態様において、本発明は、以下を含む経口経免疫メトホルミン組成物である:
メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る、有効量の医薬品、
アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される、少なくとも1つの有効量の吸収促進剤、および
医薬的に許容可能な担体であって、医薬的有効量の前記医薬品を、吸収のために口部粘膜に送達する能力を有する担体。
【0011】
一実施態様において、医薬組成物は、約10から50w/w%の濃度のメトホルミン塩酸塩、約0.01から2または0.01から0.5w/w%の濃度のドデシル硫酸ナトリウム、約0.01から2または0.01から0.5w/w%のグリココール酸ナトリウム、約2から10または2から7w/w%の濃度のグリセリン、および、約10から90、30から75、または60から75w/w%の濃度のチューインガム基礎剤(chewing gum base)を含む、チューインガムの形態である(全て、製剤の総重量を基準とする)。別の実施例において、組成物は、ハードキャンディ(hard candy)またはロゼンジ(lozenge)の形態である。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、以下を含む、経口経粘膜メトホルミン組成物の製造方法である:
(a)メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る有効量の医薬品と、(b)アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される、少なくとも1つの有効量の吸収促進剤とを混合し、ペーストを形成する;
前記ペーストとガム基礎剤(gum base)を混合する;および
生成される混合物を、チューインガム錠剤、カプセル、キャプレッツ(caplets)またはチクレッツ(chiclets)に形成する。
【0013】
開示される何れかの吸収促進剤の医薬的に許容可能な塩および類似体はまた、本発明の範囲内であり、これらの化合物の何れかの混合物または組み合わせも同様である。
【0014】
吸収促進剤は、口内粘膜を介す医薬品の送達を容易にするものである。本願で使用される「容易にする」とは、吸収促進剤が存在しない医薬組成物と比較して、口内粘膜を介して送達される医薬品の速度および/または量が増大すること(例えば、少なくとも約5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%または75%の増大)を意味する。
【0015】
各々の吸収促進剤は、組成物の全重量に基づき、最大で約30、20、15、10、5、2、1、0.5または0.01w/w%の濃度で存在し得る。吸収促進剤の総量は、組成物の全重量に基づいて、約30w/w%未満、好ましくは約20w/w%未満、およびより好ましくは約10または7w/w%未満である。
【0016】
吸収促進剤は、医薬品を封入し、および、組成物が口腔にて溶液にされる際に、経口粘膜を介したその送達を容易にするのに役立つ、ミセル形成化合物(micelle forming compounds)である。
【0017】
当業者に理解されるように、ミセルは、分子の極性の親水性部分が外面に広がり、一方無極性の疎水性部分が内部に広がる、両親媒性の分子のコロイド性の集合である。ミセルの存在は、それらによる吸収能の増強およびそれらのサイズという2つの理由のために、医薬品の吸収を有意に助けると考えられている。加えて、医薬品をミセルに封入することは、薬剤を急速な分解から保護する。
【0018】
各々のミセルが、医薬品および1以上の吸収促進剤(即ち、ミセル形成化合物)を含み得ることが理解されるだろう。好ましくは、少なくとも2つのミセル形成化合物が、混合ミセル(mixed micelles)の形成に用いられる。本願で使用される「混合ミセル」という用語は、それぞれが異なるミセル形成化合物を用いて形成された、少なくとも2つの異なる種のミセルを指す。例えば、本発明による組成物は、少なくとも2つの異なる種のミセルの混合物を含むことができる:医薬品とミセル形成化合物の1つ(例えば、アルカリ金属アルキル硫酸塩)との間で形成されたミセル、および、医薬品と少なくとも1つの付加的なミセル形成化合物(例えば、グリココール酸ナトリウム)との間で形成されたミセル。個々のミセルは、1よりも多いミセル形成化合物から同様に形成することができると理解されるだろう。
【0019】
ミセルのサイズは、好ましくは6ミクロンを超すサイズであるが、例えば約1から約10ナノメートル、または約1から約5ナノメートルといったように、より小さくすることも可能である。ミセルの形状は、変化させることが可能であり、例えば、扁長、扁円、または球状の形態をとりうる;球状ミセルが、最も典型的である。極端にサイズの小さいミセルは、封入される医薬品の口内粘膜を通った効率的な透過を促進すると考えられている。従って、当該分野において既知の医薬製剤と比較して、本発明による組成物は、特に口内粘膜を介した活性薬物の生物学的利用能の増大を提供する。
【0020】
互換性の問題が生じない限り、あらゆるアルカリ金属アルキル硫酸塩を、本発明による組成物に使用することができる。好ましくは、アルキルはC8からC22アルキル、より好ましくはラウリル(C12)である。あらゆるアルカリ金属を利用することが可能であり、ナトリウムを伴うものが好ましい。アルカリ金属アルキル硫酸塩は、一般に、最大で約30w/w%の濃度で存在するが、最大で全組成物の約5w/w%の濃度が好ましい。最大で全組成物の約1、0.5または0.01w/w%の濃度が、より好ましい。
【0021】
本願にて使用される「胆汁酸」という用語は、はコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸といった、コール酸誘導体を含むが、これらに限定されない。何れの胆汁酸、またはそれらの塩も、本発明の組成物に使用することが可能である。グリココール酸ナトリウムが好ましい。本発明は、相対的に濃度の低い胆汁酸塩を使用するため、これらの塩の使用に関する毒性の問題は、回避することが出来ない場合でも小さい。
【0022】
レシチンは、飽和した状態でも不飽和の状態でもよく、好ましくは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ケファリンおよびリゾレシチンから選択される。
【0023】
ヒアルロン酸の好ましい塩は、ヒアルロン酸のアルカリ金属塩、特にヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸のアルカリ土属塩およびヒアルロン酸アルミニウムである。本発明による組成物にヒアルロン酸またはその医薬的に許容可能な塩を使用する場合、全組成物の約1から5w/w%の間の濃度が好ましく、約1.5から3.5w/w%の間の濃度がより好ましい。
【0024】
組成物は更に、等張剤を、最大で全組成物の約30、20、15、10、または6w/w%の濃度で含むことができる。適切な等張剤は、ソルビトールおよびマンニトールといった糖類、およびグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等といった多価アルコール、および第二リン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。グリセリンが好ましい。等張剤は、溶液中でミセルを維持するのに役立つ。グリセリンは、ミセル形成化合物および等張剤の両方として機能し得る;第二リン酸ナトリウムが使用される場合、それは細菌の増殖を阻害することにも役立つ。
【0025】
任意に、医薬組成物は、1以上の付加的な治療薬(例えばスルホンウレア(sulfonureas))を含むことができる。本願で使用される「治療薬」という用語は、疾病症状の発症を予防しまたは遅らせること、および/またはそれらの重症度または頻度を低下させることを含む、疾病または疾病に関連した症状を寛解させる薬剤を指す。一実施態様において、治療薬は、糖尿病、糖尿病前症、肥満または多嚢胞性卵巣症候群を治療するために使用される。
【0026】
有効量の医薬品が、本組成物に含まれなければならない。本願で使用される「有効量」という用語は、患者において疾病の意図された治療処置もしくは予防をすること、または患者において生理的状態を調節することといった、望ましい結果をもたらすために必要な医薬品の量を意味する。そのような量は、従って、患者において治療的および/または予防的効果を有すると理解される。有効量は、使用される特定の薬剤、薬剤のために決定されたパラメーター、治療すべき障害の性質および重症度、および使用する担体の特性によって異なると理解されるだろう。
【0027】
「有効量」とはまた、ピーク時のメトホルミン血漿中濃度を、経口メトホルミン塩酸塩錠剤(例えば、約50、100、250、500、750、800または1000mgのメトホルミ塩酸塩ンを含んでいるメトホルミン塩酸塩錠剤)を投与された被検対象におけるピーク時のメトホルミン血漿中濃度にほぼ等しくするために必要な量とすることができる。本願で使用される「ほぼ等しい」とは、本発明による医薬組成物の投与後のピーク時のメトホルミン血漿中濃度(標準的生物学的利用能測定法を用いて評価)が、メトホルミンの経口錠剤の投与後のピーク時のメトホルミン血漿中濃度の10%以内であることを意味する。
【0028】
血漿グルコースレベル、肝臓のグルコース生成、脂質レベル、腸管吸収または体重減少における何れの減少も、インスリンに対する感受性の何れの増加がそうであるように、治療的および/または予防的となり得ると理解される。正確な投与レベルは、治療する医師またはその他の医療提供者によって決定しなければならず、および、個人の年齢、体重、性別および一般的健康状態を含む周知の因子および付随した治療を行うか否かに依存する。もちろん、当業者は、分割したおよび部分的な投与もまた、本発明の範囲内であると理解するだろう。何が有効量の構成要素となるかの決定は、十分に、当業者の技術の範囲内である。
【0029】
医薬的に有効な投与量は、in vitroまたは動物モデル試験システムによる投与量−応答曲線から推定してよい。それらはまた、既知のメトホルミン塩酸塩の経口製剤の生物学的利用能を測定することで決定してよい。本発明による医薬組成物は、次に、既知の経口製剤の生物学的利用能に近い生物学的利用能を有する投与量で処方することができる。
【0030】
医薬品の量は、50から850ミリグラムとすることができる。
【0031】
典型的に、本組成物は、一投与量当り約50から500ミリグラムを含むだろう。投薬計画に依存して、各々の投与量は、50、112.5、250ミリグラムまたは500ミリグラムを含むようにすることができる。量は、とりわけ使用される担体の放出特性に依存して異なることが理解されるだろう。放出される医薬品の量が意図された治療および/または予防効果を持つように、活性成分の量が調整されるだろう。
【0032】
それぞれの投与量は、存在する担体の量に依存して、組成物の総重量を基準として、約5から90、より好ましくは約10から80w/w%、およびさらにより好ましくは約20から80または20から50w/w%の医薬品を含むことができる。
【0033】
本組成物は、任意に、安定剤および/または防腐剤を含む。フェノール類化合物は、組成物を安定化するだけでなく、細菌の増殖から保護し、および組成物の吸収を助けるため、特にこの目的に適している。フェノール類化合物とは、ベンゼン環に直接結合した1以上の水酸基を有する化合物を意味すると理解されるだろう。本発明による好ましいフェノール類化合物は、フェノールおよびメチルフェノール(別名m−クレゾール)、ならびにそれらの混合物を含む。
【0034】
本発明による組成物は、さらに1以上の以下のものを含むことができる:無機塩類;酸化防止剤およびプロテアーゼ阻害剤。本組成物に使用するための、これらの任意の成分のいずれかの量は、当業者が決定することが可能である。
【0035】
無機塩類または塩類は、インスリンを放出するための付加的な刺激を提供しうるものでなければならない。無機塩類の非限定的な例は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび亜鉛の塩類であり、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛および炭酸水素ナトリウムである。
【0036】
酸化防止剤は、医薬的な活性成分の分解および酸化を防止するのに用いられる。酸化防止剤は、トコフェロール、デターオキシム(deteroxime)メシレート、メチルパラベン(paraben)、エチルパラベン、アスコルビン酸およびそれらの混合物、ならびに医薬の分野で既知のその他の酸化防止剤から選択することができる。好ましい酸化防止剤は、トコフェロールである。パラベンはまた、組成物に保存性を提供するだろう。
【0037】
プロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解酵素の作用による医薬品の分解を阻害するのに役立つ。プロテアーゼ阻害剤を使用する場合、好ましくは組成物の約1から3w/w%の間の濃度とする。タンパク分解活性を阻害することができる何れの物質も、互換性の問題なく使用することが可能である。例として、バシトラシンおよびバシトラシン誘導体(例えばバシトラシン・メチレン・ジサリシレート(bacitracin methylene disalicylates)、大豆トリプシンおよびアプロチニン)が含まれるが、これらに限定されない。バシトラシンおよびその誘導体は、好ましくは、全組成物の約1.5から2w/w%の間の濃度で使用され、一方大豆トリプシンおよびアプロチニンは、好ましくは、全組成物の約1から2w/w%の間の濃度で使用される。
【0038】
着色剤、着香剤および非治療的量のその他の化合物もまた、組成物に含んでよいことを当業者は理解するだろう。メントールをミセル形成化合物の1つとして使用する場合、それはまた、組成物に風味を付与するだろう。
【0039】
着香剤は、精油、エッセンス、抽出物、粉末、酸および味覚プロファイルに影響を及ぼし得るその他の物質とすることができる。使用可能な着香剤は、ココナッツ、コーヒー、コーラ、チョコレート、バニラ、グレープフルーツ、メントール、カンゾウ、アニス、アプリコット、カラメル、蜂蜜、パイナップル、イチゴ、キイチゴ、トロピカルフルーツ、サクランボ、シナモン、ペパーミント、ヒメコウジ、スペアミント、ユーカリノキおよびミント着香剤を含むがこれらに限定されない。一実施態様において、着香剤は、メントール、カラメル、コーヒーおよびコーラから選択される。
【0040】
使用可能な着色剤は、天然物または合成物由来であり、食品または薬剤における使用に承認が得られていなければならない。
【0041】
担体は、例えば、子供に訴えるために、動物型または星といった様々な形状に処方することができる。
【0042】
本発明による組成物は、室温または低温で保存することができる。
【0043】
医薬品は、口内粘膜(oral mucosal membranes)または「口内粘膜(oral mucosae)」を通して投与される。これらは、口、のど、喉頭および食道の膜を含む。口の膜、特に、頬および舌下の粘膜が好ましい。舌下の粘膜は、舌の腹側表面および口の底を含み、頬の粘膜は頬の内側である。舌下および頬の粘膜は、比較的透過性であり、多くの薬剤の迅速な吸収および許容可能な生物学的利用能を可能とする。更に、頬および舌下の粘膜は、都合がよく、非回避的(non−evasive)で、容易に接触可能である。消化管およびその他の臓器と比較して、頬の環境は、酵素活性がより低く、および、pHが中性であり、このことは、in vivoでの薬剤の有効期間の延長を可能とする。
【0044】
担体は、医薬品の十分な量を放出し、薬剤が吸収されるために十分な期間口内に留まり、患者に治療的および/または予防的効果をもたらすように設計される。吸収の改善ために、担体は、好ましくは、口内粘膜の増大した表面積に接触させるために、口の中を移動できるものである。好ましい実施態様において、担体は、口内粘膜全体を移動する際に、十分な時間噛むまたはなめることができる咀嚼可能なキャンディ(例えば、チューインガムまたはタフィー(taffey))として、またはハードキャンディもしくはロゼンジとして処方される。放出される医薬品の量は、担体が口に留まる期間に、約50、60、70、80、または90%を越える量が放出される。この期間は、約1から30分、好ましくは約1から20分、およびより好ましくは約1から10分である。口で放出され唾液に溶解されるとき、医薬品はミセルの形状で存在するだろう。というのは、それが、本願で使用されるミセル形成吸収促進剤に封入されるだろうからである。当業者は、本願の技術および一般的知識に基づいて、適切な担体を作製する方法を容易に理解するだろう。
【0045】
組成物を作製する方法
本発明はまた、本発明による医薬組成物を作製する方法を提供する。本発明は、メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る有効量の医薬品と、アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される、少なくとも1つの有効量の吸収促進剤とを混合し、製剤を作製し、医薬的に許容可能な担体と組み合わせることで、作製することができる。
【0046】
本方法は、等張剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤および無機塩類から選択される1以上の成分を加える工程を含むことができる。
【0047】
混合は、研究室使用のためのKitchenAid brand professional HD Series Mixer等といった、高速な撹拌機の使用によって行うことができる。
【0048】
チューインガム組成物を作製するために、本方法はさらに、以下の工程を含むことができる:
製剤をガム基礎剤と混合する;および
生成される混合物を、チューインガム錠剤、カプセル、キャプレットまたはチクレッツに形成する。
【0049】
成分の特異的な量は、本願で提供される一般的指針に基づいて、当業者によって決定することができる。
【0050】
治療の方法
本発明は、本発明の第1の側面に従って被検対象に組成物を投与することを含む、糖尿病、糖尿病前症、肥満および多嚢胞性卵巣症候群から選択される症状を治療する方法を提供する。本組成物は、被検対象における血漿グルコースレベル(例えば食後のグルコースレベル)の減少、肝臓のグルコース生成の減少、脂質レベルの減少、インスリンに対する感受性の増大、グルコースの腸内吸収の減少、低血糖の減少、体重の減少、および/または食欲の減少に有用であり得る。
【0051】
本組成物が、咀嚼可能なキャンディまたはハードキャンディまたはロゼンジである場合、本方法は、患者に治療的および/または予防的効果をもたらすために、ミセルの形状で医薬品の放出および吸収のために十分な期間、キャンディを咀嚼しおよび/またはなめるということを含む。
【0052】
医薬組成物は、一投与量(例えば、1つのかけらまたはガムまたはキャンディ)で提供することができ、または、連続的に投与される多数の投与量で提供してよい。一投与当りのメトホルミンまたはその塩の投与頻度および量は、治療すべき症状の性質および重症度、ならびに、被検対象の性別、体重、健康状態および年齢(それらに限定されない)を含むその他の因子に基づいて、医師の処方によって決定される。
【0053】
本方法は、また、糖尿病、糖尿病前症、肥満および/または多嚢胞性卵巣症候群を治療し、および/または体重減少をもたらすための、1以上のその他の治療薬を投与する工程を含むことができる。上記の症状のための治療薬は、当該分野で既知であり、併用治療の投薬は、医師または健康の専門家(health practitioner)によって決定することができる。例えば、本発明による医薬組成物は、その他の治療薬と同時に、あるいは同日の異なる時間に、投与することができる。特に、本発明による医薬組成物は、糖尿病の治療のためのインスリンと組み合わせて投与することができる。本発明による医薬組成物をインスリンと組み合わせて使用する場合、糖尿病の制御のために必要なインスリンの量を減らすことができる。
【0054】
本願で使用される「糖尿病(diabetes)」または「真性糖尿病(diabetes mellitus)」は、高血糖で特徴付けられる症状を意味する。高血糖は、インスリン分泌および/またはインスリン作用の完全なまたは相対的な障害をもたらし得る。高血糖を検出する方法は、当該分野において既知であり、一般に血漿グルコースレベルの測定を含む。無症候性の患者において、空腹時の高血糖に対する診断基準が満たされる場合に、糖尿病と診断される:つまり、成人または小児において、2度の機会にて、一晩の絶食の後の血漿(または血清)グルコース濃度が140mg/dL以上(7.77mmol/L以上)(全米糖尿病データ・グループ(National Diabetes Data Group)(NDDG)により推奨される);または、被検対象が絶食しているときに、血漿グルコースレベルが、126mg/dL超(6.99mmol/L超)(米国糖尿病協会(the American Diabetes Association)によって推奨される)。糖尿病は、被検対象がほとんどまたは全くインスリン生成しない1型糖尿病(インシュリン依存性糖尿病)、および、グルコースに応答するインスリン分泌の低下、および/または、骨格筋によるグルコース取り込みの刺激におけるおよび肝臓のグルコース生成の制限におけるインスリンの効果の減少(インスリン抵抗性)により高血糖が生じる2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)を含む。
【0055】
本願で使用される「糖尿病前症」(耐糖能障害(impaired glucose tolerance)、すなわちIGTとも呼ばれる)とは、被検対象の食後の血漿グルコースレベルが、正常値より高く、しかし2型糖尿病が診断されるほど十分高くない場合に生じる症状を意味する。血漿グルコースレベルの測定方法は、当該分野において既知である。
【0056】
本願で使用される「多嚢胞性卵巣症候群」または「高アンドロゲン性慢性無排卵症(hyperandrogenic chronic anovulation)」とは、無月経を生じる可能性のある症状であるが、通常不規則な月経、軽度の肥満と多毛症によって特徴づけられ、典型的に思春期の時期始まり、時間とともに悪化する。大部分の患者は、診察により大量の頚管粘液の存在が示され、遊離型の(free)エストロゲンが上昇している。大部分の循環型アンドロゲンのレベルは穏やかに上昇する傾向がある。卵巣は、滑らかで肥厚したカプセルに腫脹する可能性があり、また正常のサイズをとる可能性がある。一般的に、卵巣は2から6mmの多くの卵胞嚢胞を含み、包膜が過形成して顆粒膜細胞を囲む。閉鎖性の細胞(atretic cells)を含む大きな嚢胞が存在する可能性がある。
【0057】
本願で使用される「肥満」は、医学専門家による測定にて、体重が標準体重より約30%超大きいことを指し、および/または、医学専門家による測定にて、肥満度指数が約27大きいことを指す。
【0058】
本願で使用される「治療的」、「治療」、および「治療する」という用語は、疾病の症状の発症を予防または遅延させること、および/または疾病の症状の重症度または頻度を下げることを含む、疾病または疾病に関する症状を回復することを意味する。
【0059】
糖尿病および糖尿病前症の症状は、異脂肪血症、肥満、動脈高血圧ならびに微小血管合併症および巨大血管(macrovascular)合併症、例えばアテローム性動脈硬化症、網膜症、腎症および神経障害を含むが、これらに限られない。肥満の症状は、糖尿病(例えば2型糖尿病)、冠動脈疾患、末梢血管閉塞疾患(peripheral arterial occlusive disease)、心筋梗塞、末梢血管閉塞疾患、異脂肪血症(例えば高脂血症)、脳卒中、慢性静脈異常、整形の問題(orthopedic problems)、睡眠時無呼吸障害、胃食道逆流疾患、高血圧、関節炎、不妊症、流産および癌(例えば結腸直腸癌、乳癌)を含むが、これらに限られない。
【実施例】
【0060】
ペースト製剤の作製
本発明による組成物の作製に使用するための製剤は、以下のように作製した。
【0061】
実施例1
粉末状のメトホルミン塩酸塩(Spectrum Chemicalsから入手可能)、粉末状のグリココール酸ナトリウム(NutriScience Innovations(LLC)から入手可能)および粉末状の硫酸ラウリルナトリウム(Charles TennantおよびBioshopから入手可能)を、100メッシュのふるいにかけ、ふるいを通った分子を、製剤を作製するために使用した。
【0062】
室温、25から65%の相対湿度で、123.51グラムの液体グリセリン(Canada Colors and Chemicals Ltd.から入手可能)を、ゆっくりと高速混合装置に入れ、約2から3分間撹拌した。ここに、4.83グラムの粉末状のグリコール酸ナトリウム(sodium glycholate)を加え、この2つの成分を更に2〜3分間混合した。次に、4.82グラムの粉末状硫酸ラウリルナトリウムを加え、混合物を更に2から3分間撹拌し、不透明な溶液を作製した。その後、1000グラムの粉末状のメトホルミン塩酸塩を、さらに15〜20分続けて混合し、柔らかい手触り(doughy texture)を有した均一なペーストを形成した。
【0063】
このようにして形成したペーストは、本発明に準じており、88.25w/w%の濃度のメトホルミン塩酸塩、10.90w/w%の濃度のグリセリン、0.43w/w%の濃度のグリココール酸ナトリウムおよび0.43w/w%の濃度の硫酸ラウリルナトリウムを含む(全て、ペースト製剤の全重量に基づく)。
【0064】
実施例2
実施例1のプロトコルを、最初の成分の量をわずかに変えて再び繰り返し、76.98w/w%の濃度のメトホルミン塩酸塩、22.28w/w%の濃度のグリセリン、0.37w/w%の濃度のグリココール酸ナトリウムおよび0.37w/w%の濃度の硫酸ラウリルナトリウム(全て、ペースト製剤の全重量に基づく)を含む、本発明によるペーストを作った。
【0065】
実施例1および2において、ペーストの全重量に基づいてわずか10w/w%のグリセリンを有するように、ペーストの作製に用いられるグリセリンの量を減らすことができる。ペースト製剤と適切な医薬的に許容可能な担体とを組み合わせて、本発明による組成物を製造することが可能である。
【0066】
チューインガム組成物の製造
実施例3
上記実施例2によるペーストを、本発明の別の側面によるチューインガム組成物(チクレッツ)とした。それぞれのチクレッツは、212.5w/w%の濃度のメトホルミン塩酸塩、6.15w/w%の濃度のグリセリン、0.10w/w%の濃度のグリココール酸ナトリウム、および0.10w/w%の濃度の硫酸ラウリルナトリウムを含む(全て、チクレッツ組成物の全重量に基づく)。各々のチクレッツの残余は、ガム基礎剤で構成した。
【0067】
この実施例のチューインガムは、6.15w/w%の濃度でグリセリンを含むが、ガムの全重量に基づいてわずか3w/w%のグリセリンを有するチューインガムを作るために、ペーストの作製に用いられるグリセリンの最初の量を下方に調整してよい。
【0068】
実施例4
ペーストの作製のために実施例3で使用する成分の量は、850mgのメトホルミン塩酸塩、246mgのグリセリン、4mgのグリココール酸ナトリウムおよび4mgの硫酸ラウリルナトリウムを含むガム組成物を製造するように調整した。
【0069】
実施例3および4の両方において、チューインガムは以下の通りに既知の方法に従って用意した。エラストマー、乳化剤およびワックスからなるマトリックス物質を、すりつぶし(ground)、従来のチューインガムミキサーに入れた。そして、付加的な成分(甘味料、調味料および着色剤)を添加し、味のよいガム基礎剤を形成した。次に、ペーストを、ガム基礎剤に、ペーストが約276に対してガム基礎剤が1000の比率で加え、全ての成分を混合し均一なチューインガムの塊を作った。その後、温めたガムの塊を、ミキサーから取り出し、従来のシステムおよび機械を使用して、チューインガムの小片にした。ガム小片を放置して固くし、付加的な着色剤および着香剤を含む任意のドラジェ(dragee)コーティングでコートした。
【0070】
本発明によるチューインガム組成物は、米国特許第5,487,902号、6,344,222号、6,432,383号および5,470,566号(これらによって教示されるものは本願に援用される)に記載されるような、その他の既知の方法を用いて作製してよい。
【0071】
キャンディおよびロゼンジの製造
例えば、ペーストは、米国特許第5,470,566号(これによって教示されるものは、本願に援用される)に開示されるような既知の方法を使用して、キャンディおよびロゼンジに成形することが可能である。
【0072】
例えば、それは、米国特許出願公報のU.S.2003/0095925 A1(これによって教示されるものは、本願に援用される)で述べられるように、咀嚼可能なカプセルの製造に使用することが可能である。
【0073】
メトホルミンガムの投与に関する試験
1チクレッツ当り212.5mgのメトホルミン塩酸塩を含む上記実施例3のチューインガムを、2人の被験者、個人AおよびBに投与した。被験者を一晩絶食させ、翌朝チクレッツを1つ与え(この時点を0分とする)、30分間の咀嚼の後吐き出させた。10分待った後、被験者に別のチクレッツを与え、さらに30分間咀嚼させた。その後4時間待った後、その日の最初の食事の前に、被験者に3つめのチクレッツを与え、約30〜40分間咀嚼させた。個人AおよびBの血漿中のメトホルミンの濃度(ng/ml)を0分から測定し、図1にプロットした。系列2は、個人Aのメトホルミン血漿中濃度を表す。系列3は、個人Bのメトホルミン血漿中濃度を表す。
【0074】
1週間前に、個人Bに、Bristol−Meyers Squib社により商標登録GLUCOPHAGEとして販売されるメトホルミン塩酸塩の錠剤850mgを投与した。一晩の絶食の後、朝の時間=0のときに錠剤を摂取させた。個人Bのプラズマの中のメトホルミンの濃度(ng/ml)を0分から測定し、図1にプロットした(系統1参照)。
【0075】
メトホルミン血漿中濃度のピークは、GLUCOPHAGEを投与した対照被験者においておよびメトホルミンガムを投与した被験者の1人において、約300分後となった。メトホルミンガムを投与した第2の被験者におけるメトホルミン血漿中濃度のピークは、約360分後であった。GLUCOPHAGE錠剤を与えた被験者でピークが1500ng/mlであったのに対して、ガムを与えた個人の1人でのピーク時の血漿中濃度は2000ng/mlを越えた。これらの結果は、ガムが、3つのチクレッツの投与当りのメトホルミン塩酸塩の濃度が遥かに低いにも関わらず、ヒト被験者の血流にメトホルミン塩酸塩を送達することにおいて、錠剤と同等かそれよりも有効であることを示している。
【0076】
チューインガムからのメトホルミン塩酸塩の放出
上述の既知の方法を用いて、実施例2のペースト製剤から、3つの異なるチューインガム組成物を作製した。風味の付いたガム基礎剤を使用した。各々のガム基礎剤を特定するシリアル番号および各々の基礎剤を使用して製造されるチューインガム組成物は、以下のように確認される。
【0077】
チューインガム組成物5475−01−1は、コーラ風味のガム基礎剤25084を用いて作製した;
チューインガム組成物5475−04−1は、カラメル風味のガム基礎剤25046を用いて作製した;および、
チューインガム組成物5475−05−1は、コーヒー−カラメル風味のガム基礎剤25046を用いて作製した。
【0078】
チューインガム組成物は、1グラムのチクレッツの形態とした。チクレッツは、それぞれ約210、217および214mgのメトホルミン塩酸塩を含むようにした。メトホルミン塩酸塩の実際の量は、両方向に最大5%まで変化させることが可能であると理解させる。
【0079】
各々のチクレッツを、緩衝液を含む咀嚼装置に入れた。毎分60咀嚼の速度で20分間チクレッツを咀嚼させた。緩衝液に放出されるメトホルミン塩酸塩の量を、2、5、10および20分のときに、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を使用して、放出されるメトホルミン塩酸塩のパーセンテージとして測定した。結果は下記の表1に要約される。放出される薬剤のパーセンテージをプロットした(図2参照)。
【表1】

【0080】
ガム組成物5475−01−1の最初の放出速度は、より緩徐性のガム基礎剤を使用したため、他の組成物より遅い。
【0081】
全体の結果から、メトホルミン塩酸塩の放出は、全ての組成物において、咀嚼からちょうど5分後に放出される医薬品が少なくとも90%となり、迅速であることが示された。
【0082】
実施例5
同一の投与レベルにおける、メトホルミンガムとメトホルミン錠剤の比較試験
メトホルミン塩酸塩の量が、1チクレッツにつき214.5mgである(212.5mgに対して)ことを除いては、実施例3の組成物と同一の組成を有するチューインガムを、10人の健常なボランティア(6人が男性、4人が女性)(それぞれ平均年齢が30歳および29.8歳で、それぞれ平均BMIが23.9および21.49)の群に投与した。時間=0分において、各々の被験者に、2つのチクレッツ(メトホルミン塩酸塩の全投与量は429mg)を与えて咀嚼させた。
【0083】
対照として、別の日に、同じ群の被験者それぞれに、Bristol−Meyers Squib社から商標登録GLUCOPHAGEとして販売されるメトホルミン塩酸塩固体の429mg錠剤を1つ投与した。
【0084】
被験者から得られる血漿サンプル(300マイクロリットル)を、HPLCによる分析の前に、弱陽イオン交換の固相摘出(solid phase extraction)(spe)に供した。
【0085】
被験者の血漿中のメトホルミンの濃度(ppm)は、時間=0分から測定を始め、5、15、30、45、60、90、120、150、180、210、240、300、360、540、720、1440分(24時間)に付加的にサンプリングした。図3にその値をプロットした。
【0086】
ANOVA(f−検定)による対応曲線下面積(Corresponding Areas under the Curve)(AUC)分析およびペアワイズt検定(pairwise t−test)により、GLUCOPHAGE錠剤を与えられた被験者と比較してガムを与えられた被験者の血漿中濃度に有意な差はなかったものの、ガムによる血漿中濃度はより高い傾向にあることが示された。メトホルミンの血漿中濃度のピークは、両群の患者とも約200分にて生じ、ガムを与えられた被験者において、ほぼ0.8ppmのピーク血漿中濃度であるのに対し、GLUCOPHAGE錠剤を与えられた被験者は、ほぼ0.6ppmであった。
【0087】
これらの結果は、ガムが、ヒト被験者の血流へのメトホルミン塩酸塩の送達において、少なくとも錠剤と同程度の効果を有することを示す。
【0088】
本発明は、その好ましい実施態様を言及して、特に示しおよび記載したが、形態および詳細のさまざまな変化は、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、本発明において行ってよいことを当業者は理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、時間に対するメトホルミン血漿中濃度(ng/ml)を示すグラフである。系列1は、850mgのメトホルミン塩酸塩錠剤を与えられて摂取した個人における、メトホルミン血漿中濃度を表す。系列2および3は、それぞれ212.5mgのメトホルミンを含む、チューインガムの3つのチクレッツを咀嚼した2人の個人における、メトホルミン血漿中濃度を表す。
【図2】図2は、時間に対する、本発明によるチューインガム組成物から放出されるメトホルミンの量を示すグラフである。
【図3】図3は、429mgのメトホルミン錠剤を与えられ摂取した個人と、429mgのメトホルミンを含むガムを咀嚼した個人とにおける、時間に対するメトホルミン血漿中濃度(ppm)を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、経口経粘膜メトホルミン組成物の作製に使用するための製剤:
メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る医薬品、および
アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される少なくとも1つの有効量の吸収促進剤、
ここにおいて、前記医薬品は、前記製剤の全量を基準として約5から90w/w%の濃度で存在する。
【請求項2】
以下を含む経口経粘膜メトホルミン組成物:
メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る有効量の医薬品、
アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される少なくとも1つの有効量の吸収促進剤、および
吸収のために口内粘膜に医薬的に有効量の前記医薬品を送達することが可能な、医薬的に許容可能な担体。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、それぞれの吸収促進剤が全組成物の約30w/w%以下の濃度で存在し、吸収促進剤の全濃度が、全組成物の約30w/w%未満である組成物。
【請求項4】
それぞれの吸収促進剤が全組成物の約7w/w%未満の濃度で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属アルキル硫酸塩がアルカリ金属C8からC22アルキル硫酸塩である、請求項2から4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルカリ金属C8からC22アルキル硫酸塩が硫酸ラウリルナトリウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
更に、全配合の約30w/w%以下の濃度で等張剤を含む、請求項2から6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記等張剤がグリセリンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
更に胆汁酸塩を含む、請求項2から8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記胆汁酸塩がグリココール酸ナトリウムである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項2から10の何れか1項に記載の組成物であって、前記吸収促進剤が、前記組成物が口腔内で溶液となったときに、前記医薬品を封入するためのミセルを形成することが可能な、ミセル形成化合物である組成物。
【請求項12】
前記メトホルミンの医薬的に許容可能な塩がメトホルミン塩酸塩である、請求項2から11の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記医薬品の量が、1投与量当り約100から850ミリグラムである、請求項2から12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記医薬品の量が、1投与量当り約100から500ミリグラムである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記医薬品の量が、1投与量当り約250から500ミリグラムである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項2から15の何れか1項に記載の医薬組成物であって、全て組成物の全重量を基準として、約10から50w/w%の濃度のメトホルミン塩酸塩、約0.01から2w/w%の濃度のラウリル硫酸ナトリウム、約0.01から2w/w%の濃度のグリココール酸ナトリウム、約2から10w/w%の濃度のグリセリン、および約10から90w/w%の濃度のチューインガム基礎剤を含む、チューインガムの形態の組成物。
【請求項17】
前記担体がハードキャンディまたはロゼンジである、請求項2から15の何れか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記膜が頬の膜である、請求項1から17の何れか1項に記載の組成物。
【請求項19】
以下を含む、経口経粘膜メトホルミン組成物の製造方法:
(a)メトホルミンまたはその医薬的に許容可能な塩から成る有効量の医薬品と、(b)アルカリ金属アルキル硫酸塩、グリセリン、胆汁酸または胆汁酸塩、レシチン、ヒアルロン酸、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノレン酸、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、モノオレイン、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、メントール、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの医薬的に許容可能な塩および類似体から選択される、少なくとも1つの有効量の吸収促進剤とを混合し、ペーストを作製する;
前記ペーストとガム基礎剤とを混合する;および
生成される混合物を、チューインガム錠剤、カプセル、キャプレッツまたはチクレッツに形成する。
【請求項20】
被検対象における糖尿病の治療に使用するための、請求項2から18の何れか1項に記載の組成物。
【請求項21】
被検対象における糖尿病の治療における、請求項2から18の何れか1項に記載の組成物の使用。
【請求項22】
糖尿病の治療のための医薬の製造における、請求項2から18の何れか1項に記載の組成物の使用。
【請求項23】
請求項2から18の何れか1項の組成物を被検対象に投与することを含む、糖尿病の治療方法。
【請求項24】
前記組成物を少なくとも1分間口内に維持する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物を1から30分間口内に維持する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物を1から20分間口内に維持する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物を1から9分間口内に維持する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を少なくとも30分間口内に維持する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物を少なくとも20分間口内に維持する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象におけるインスリンへの感受性を増大させる方法。
【請求項31】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象におけるグルコースの腸管吸収を減少させる方法。
【請求項32】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象における低血糖を減少させる方法。
【請求項33】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象の体重を減少させる方法。
【請求項34】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象の食欲を低下させる方法。
【請求項35】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象において肥満を治療する方法。
【請求項36】
請求項2から18の何れか1項に記載の組成物を被検対象に投与することを含む、被検対象における多嚢胞性卵巣症候群を治療する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−534523(P2008−534523A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503334(P2008−503334)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000472
【国際公開番号】WO2006/102752
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507326788)ジェネレックス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】