説明

メマンチン医薬組成物

本発明は、造粒メマンチンを含む容易に溶解し安定した用量比例医薬組成物とその調製方法に向けられている。特に、本発明は、フィルムコート錠の形をした造粒メマンチン医薬組成物に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒メマンチンを含む容易に溶解し安定した用量比例医薬組成物とその調製方法に向けられている。特に、本発明は、フィルムコート錠の形をしたメマンチン医薬組成物に向けられている。
【0002】
本出願は、本明細書に参考として内含されている2006年7月5日付けの米国仮出願第60/818,823号の利益を享受するものである。
【背景技術】
【0003】
メマンチンは、経口的に活性なNMDA受容体拮抗薬であるものとして報告されている。メマンチンの塩酸塩は、NAMENDA(登録商標)として市販されている。塩酸メマンチンについての報告されているIUPAC名は3,5−ジメルチアダマンタン−1−アミンヒドロクロリドであり、塩酸メマンチンは同様、1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタンヒドロクロリドという化学名でも知られていると報告されている。塩酸メマンチンは、以下の構造式を有するものと理解されている:
【化1】

塩酸メマンチンの分子式は、C1221N・HClであり、分子量は215.76である。
【0004】
メマンチンHClは、現在NAMENDA(登録商標)という商標名でフィルムコート錠の形でForestにより市販されている。欧州では、塩酸メマンチンはMerz(AXURA(登録商標))及びLundbeck(EBIXA(登録商標))により市販されている。NAMENDA(登録商標)は、中度乃至は重度のアルツハイマー病の治療用にFDAによって承認された。フィルムコートされたNAMENDA(登録商標)錠は、メマンチンHCl及び、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、トリアセチン、二酸化チタン、FD&C黄色6号、FD&C青色2号及び四三酸化鉄といった不活性成分を含有するものとして報告されている。
【0005】
その教示全体が本明細書に参考として内含されている米国公報第2006/0002999A1(「’999公報」)は、60分以内で少なくとも約80パーセントの溶解速度で放出される3〜40Kpの間すなわち約4.2〜56SCU(ストロングコブユニット)の間の硬度をもつ、直接圧縮方法により調製されたメマンチン又はネラヘキセンといったような1−アミノシクロヘキサンの医薬組成物について報告している。
【0006】
直接圧縮は、理論的にはかなり単純なプロセスであるとしても、実際には、例えば分離が発生しないように全ての成分がかなり均等なサイズとなるように成分を入念に選択する必要があるといったさまざまな不都合に悩まされており、かくして、直接圧縮組成物においては均質性の欠如が多発する問題となっている。換言すると、直接圧縮プロセスにより調製された組成物は、均質性の欠如という欠点を有している。粉末は流動性の悪さ、圧縮性の低さ及びステッキング(粘着性)そして’999公報内に開示されているような「キャッピング」という欠点を呈する確率がさらに高いことから、直接圧縮組成物は、流れ増強成分及び圧縮助剤の使用を必要とすることが多い。
【0007】
その教示全体が本明細書に参考として内含されている米国特許出願公報第2006/0198884A1号(「’884公報」)は、メマンチン又はネラメキサンといった1−アミノシクロヘキサンの医薬組成物について報告している。この出願で使用されている用語は、その正確な意味に関し非常に不明瞭であるが、この出願は、さまざまな量のメマンチンを含むさまざまなメマンチン投薬量単位を請求しているように思われる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、メマンチンを含み、37℃で0.1NのHCl中に入れてから約60分以内に約95パーセントのメマンチンが放出される、メマンチンを含む造粒組成物に向けられている。好ましくは、37℃で0.1NのHCl中に入れてから約45分以内、より好ましくは約30分以内そして最も好ましくは約15分以内に約95パーセントのメマンチンが放出される。
【0009】
好ましくは、メマンチンは、塩酸メマンチンの形態をしている。より好ましくは、塩酸メマンチンは、組成物の約2〜約6重量パーセントの量で存在している。
【0010】
本発明に従うと、造粒メマンチン組成物は好ましくはメマンチンそして少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む。より好ましくはメマンチンは塩酸メマンチンである。好ましくは少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤及び潤滑剤からなる群の中から選択される。好ましい希釈剤としてはラクトース一水和物及び微結晶性セルロースが含まれる。好ましくは、希釈剤は、組成物の約40重量パーセント〜約95重量パーセントの量で存在する。好ましい結合剤としてはポビドンが含まれる。好ましくは、結合剤は、組成物の約0.5重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する。好ましい崩壊剤としてはクロスカルメロースナトリウムが含まれる。好ましくは、崩壊剤は組成物の約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する。好ましい流動促進剤としては、コロイド状二酸化ケイ素及びタルクが含まれる。好ましくは、流動促進剤は、組成物の約0.5重量パーセント〜約3重量パーセントの量で存在する。好ましい潤滑剤としてはステアリン酸マグネシウムが含まれる。好ましくは、潤滑剤は、組成物の約0.5重量パーセント〜約2重量パーセントの量で存在する。
【0011】
本発明に従うと、造粒メマンチン又は塩酸メマンチン組成物は、好ましくは固体経口剤形の形をしている。好ましくは、固体経口剤形は顆粒の錠剤又はカプセル又はサシェ剤である。
【0012】
本発明に従うと、造粒メマンチン組成物は、好ましくはメマンチン、ラクトース一水和物、ポビドン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及びコーティングを含むフィルムコート錠の形をしている。ここでも又メマンチンは好ましくは塩酸メマンチンである。
【0013】
本発明は同様に、メマンチン及び少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤、好ましくは希釈剤、結合剤及び/又は崩壊剤を液体中で造粒して造粒物を形成させる段階及び造粒物を乾燥させ粉砕する段階を含む、メマンチン組成物を調製するための湿式造粒プロセスにも向けられている。このとき造粒物は好ましくは、例えばその後1つ以上の賦形剤好ましくは崩壊剤、流動促進剤及び/又は潤滑剤と配合することなどによってカプセル内に充填されるか又は錠剤コアの形に圧縮され得る組成物を形成させるために使用される。顆粒は同様に、「そのままの状態で」すなわちさらなる加工を全く行なうことなく顆粒として使用することもできる。
【0014】
本発明は同様に、メマンチンと少なくとも1つの賦形剤、好ましくは希釈剤、結合剤、崩壊剤、及び/又は潤滑剤を混合して混合物を形成させる段階、混合物を圧縮成形又はスラグ成形する段階及び混合物を粉砕して顆粒を形成させる段階を含む、メマンチン組成物を調製するための乾式造粒プロセスにも向けられている。このとき顆粒は好ましくは、例えばその後、1つ以上の賦形剤好ましくは崩壊剤、流動促進剤及び/又は潤滑剤と配合することなどによってカプセル内に充填されるかまたは錠剤コアの形に圧縮され得る組成物を形成させるために使用される。
【0015】
本発明は同様に、湿式造粒プロセスによって調製される造粒メマンチン組成物にも向けられている。
【0016】
本発明は同様に、乾式造粒プロセスによって調製される造粒メマンチン組成物にも向けられている。
【0017】
本発明は同様に、療法における本発明の組成物の使用にも向けられている。以上で論述した通り、メマンチンは、アルツハイマー病を治療する上での使用のために認可されたものである。従って、本発明の組成物は、アルツハイマー病を治療するために認可される可能性のあるものである。アルツハイマー病を治療する方法においては、治療上有効な量の本発明の造粒メマンチン組成物が、それを必要とする患者に対し投与される。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、造粒により調製されたメマンチンを提供することにより直接圧縮の不都合に対処する。本発明の造粒メマンチン組成物は、’999公報の中で報告されているようなパンチに対するステッキング又はキャッピングを回避するべく錠剤の硬度を増大させる必要なく、直接圧縮組成物について報告された溶解プロファイルに匹敵するか又はそれよりも優れた溶解プロファイルを有する。その上、錠剤の硬度は溶解速度に対し実質的作用を全く及ぼさない。造粒方法特に湿式造粒は、組成物内部の活性物質の良好な均質性及び加速条件(40℃及び75パーセントの相対湿度)下での安定性試験の間の完成製品の非常に優れた安定性、ならびに優れた流動性を可能にする。
【0019】
本発明は、好ましくは湿式造粒により調製されたメマンチンを含む組成物を提供する。本発明の造粒メマンチン組成物は好ましくは、100rpmのバスケット(USP器具I)内で37℃で0.1NのHCl中に入れてから約60分以内に約95パーセントのメマンチンが放出される、即放性組成物である。好ましくは、100rpmのバスケット内で37℃で0.1NのHCl中に入れてから約45分以内、より好ましくは約30分以内に約95パーセントのメマンチンが放出され、最も好ましくは約15分以内に約85パーセント以上のメマンチンが放出される。
【0020】
湿式造粒においては、活性成分は、好ましくは粉末形態の賦形剤と配合され、次に、粉末を顆粒へと凝集させる標準的には水である液体の存在下でさらに混合される。得られた造粒物はふるい分けされかつ/又は粉砕され、乾燥させられ、その後所望の粒径までふるい分けされかつ/又は粉砕される。その後、造粒物を付加的な賦形剤と組合せかつ/又は固体剤形に処方することができる。
【0021】
乾式造粒においては、活性成分は、好ましくは粉末形態の賦形剤と合わせて配合され、その後スラグ又はシート又はリボンの形態に圧縮成形され、その後圧縮成形顆粒の形に細かく粉砕される。圧縮成形顆粒は、その後固体剤形へと処方され得る。好ましくは、乾式造粒は、ローラー圧縮成形か又は「スラグ成形」のいずれかにより実施される。
【0022】
本発明の組成物は、メマンチン及び少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含んでいてよい。好ましくは、組成物はメマンチン、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、表面活性剤、潤滑剤及びコーティングを含む。好ましくは、メマンチンは、塩酸メマンチンの形をしており、これはより好ましくは、組成物の約2〜約6重量パーセント、好ましくは約3〜約5重量パーセントの間の量で存在する。
【0023】
有用な希釈剤としては、固体医薬組成物の中で一般に用いられている希釈剤が含まれる。例えば有用な希釈剤には、(二塩基性及び/又は三塩基性の)リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース、ソルビトール、デンプン及びスクロースのうちの少なくとも1つが含まれるが、これらに制限されるわけではない。好ましくは希釈剤は、ラクトース一水和物又は微結晶性セルロースのうちの少なくとも1つである。より好ましくは、希釈剤は、組成物の約40重量パーセント〜約90重量パーセント、好ましくは約50重量パーセント〜約90重量パーセントの量で存在する。
【0024】
有用な結合剤としては、固体医薬組成物中で一般に使用される結合剤が含まれる。例えば有用な結合剤としては、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリエチレンオキシド、デンプン又はポビドンのうちの少なくとも1つが含まれるかこれらに制限されるわけではない。エチルセルロースを使用してもよいが、エチルセルロースの使用は、溶解を妨げる可能性があり、最も好ましい結合剤ではない。好ましくは、結合剤はポビドンである。より好ましくは、結合剤は組成物の約0.5重量パーセント〜約10重量パーセント、好ましくは約1重量パーセント〜約5重量パーセントの量で存在する。
【0025】
有用な崩壊剤としては、固体医薬組成物中で一般に使用される崩壊剤が含まれる。例えば、有用な崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプンが含まれるが、これらに制限されるわけではない。好ましくは、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。より好ましくは、崩壊剤は組成物の約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する。
【0026】
有用な流動促進剤としては、固体医薬組成物中で一般に使用されるものが含まれる。例えば、有用な流動促進剤には、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン及びタルクのうちの少なくとも1つが含まれるかこれらに制限されるわけではない。好ましくは、流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素及びタルクのうちの少なくとも1つである。より好ましくは、流動促進剤は、組成物の約0.5重量パーセント〜約3重量パーセントの量で存在する。
【0027】
有用な潤滑剤としては、固体医薬組成物の中で一般に使用されている潤滑剤が含まれる。例えば、有用な潤滑剤には、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸亜鉛のうちの少なくとも1つが含まれるがこれらに制限されるわけではない。好ましくは、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム及び/又はフマル酸ステアリルナトリウム及び/又はタルクである。より好ましくは、潤滑剤は、組成物の約0.5重量パーセント〜約2重量パーセントの量で存在する。
【0028】
組成物は、経口投与向けの固体剤形の形に処方され得る。好ましくは、固体剤形は、錠剤、カプセル又は顆粒である。より好ましくは固体剤形は錠剤である。最も好ましくは、固体剤形はフィルムコート錠である。
【0029】
1つの特に好ましい実施形態においては、組成物は、塩酸メマンチン、ラクトース一水和物、ポビドン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及びコーティングを含むフィルムコート錠の形に処方される。好ましくは、コーティングはヒプロメロース、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、二酸化チタン及び/又は酸化鉄を含む。例えば、コーティングは、標準的にヒプロメロース、ポリエチレングリコール、ポリソルベート及び着色料例えば二酸化チタン及び酸化鉄を含むColorcon社から入手可能なOPADRY(登録商標)、OPADRY(登録商標)といったような市販の混合粉末から調製することができる。
【0030】
本発明は同様に、湿式造粒によりメマンチン組成物を調製するためのプロセスをも提供する。該プロセスは、メマンチン及び少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤、好ましくは希釈剤、結合剤及び崩壊剤を液体中で造粒して造粒物を形成させる段階を含む。造粒物は次に好ましくは乾燥させられ、粉砕される。このとき造粒物は好ましくは、例えばその後1つ以上の医薬的に許容される賦形剤好ましくは崩壊剤、流動促進剤及び潤滑剤と配合することなどによってカプセル内に充填されるか又は錠剤コアの形に圧縮され得る組成物を形成させるために使用される。
【0031】
本発明は同様に、乾式造粒によりメマンチン組成物を調製するためのプロセスをも提供する。該プロセスは、メマンチン及び少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤、好ましくは希釈剤、結合剤、崩壊剤及び潤滑剤を混合して混合物を形成させる段階、混合物を圧縮成形又はスラグ成形する段階そしてスラグを粉砕して顆粒を形成させる段階を含む。このとき造粒物は好ましくは、例えばその後1つ以上の医薬的に許容される賦形剤好ましくは崩壊剤、流動促進剤及び潤滑剤と配合することなどによってカプセル内に充填されるか又は錠剤コアの形に圧縮され得る組成物を形成させるために使用される。
【0032】
本発明の組成物は、哺乳動物に投与することができる。好ましくは、哺乳動物はヒトであり、組成物は医薬組成物として投与される。好ましくは、医薬組成物は、NAMENDAd(登録商標)についての認可された適応にあるようにアルツハイマー病を治療するために投与される。処方情報を参照のこと。
【0033】
医薬組成物中のメマンチンの量は、好ましくは、治療上有効な量のメマンチンを提供する量である。使用されるメマンチンの量は、治療反応をもたらすのに必要な量に応じて異なるということが認識される。
【0034】
薬物又は薬理学的に活性な作用物質の「有効な」又は「治療上有効な」量というのは、その治療にとって実際メマンチンが有用である場合にアルツハイマータイプの中度乃至重度の認知症の治療などといった所望の効果を提供するために充分でかつ非毒性である薬物又は作用物質の量を意味する。
【0035】
投与されるメマンチン化合物の量及び使用される投与計画は、選択された特定の化合物、治療対象の年令及び全身状態、対象の身体条件の重症度及び処方担当医師の判断によって左右される。
【0036】
本明細書で使用されている「治療している」、「治療された」、及び「治療」という用語は、症候の重症度及び/又は頻度の削減、症候の除去及び/又は根本にある原因の排除、症候及び/又はその根本にある原因の発生の予防、又は損傷の改善又は矯正のうちの少なくとも1つを意味する。かくして例えばアルツハイマー病を「治療する」当該方法は、本明細書でこの用語が使用されている通り、素因をもつ個体における障害の予防及び臨床的に症状を示している個体における障害の治療の両方を包含する。以上で論述した通り、メマンチンは、アルツハイマー病を治療する上で使用するために認可されたものである。従って、本発明の組成物は、アルツハイマー病を治療するために認可される可能性のあるものである。
【0037】
このように本発明を特定の好ましい実施形態及び実例を参照しながら記述してきたが、当業者であれば、明細書中で開示されている通りの本発明の精神及び範囲から逸脱しない、記述され例示された通りの本発明に対する修正を正しく認識するかもしれない。以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記されるものであり、いかなる形であれその範囲を制限するように意図されず又制限するものとみなされるべきものではない。実施例には、従来の方法の詳細な記述は含まれていない。かかる方法は、当業者にとって周知であり、数多くの刊行物の中で記述されている。
【実施例】
【0038】
別段の規定のないかぎり、使用される分析方法は以下の通りであった:100rpmでの回転を伴って37℃で0.1NのHCl中でNaCl0.2パーセントの媒質900mlの中で、6容器アセンブリの器具I(バスケット)内において溶解を実施する。試料採取を規定された時点で行ない、その後塩化ダンシルでの誘導体化による調製を行なう。C18カラム及びアセトニトリルと水の移動相を伴う蛍光検出装置を用いてHPLC分析を行なう。
【0039】
FID検出器を装備したGC器具及びRtx−5アミンクロスボンド5パーセントジフェニル−95パーセントジメチルポリシロキサンカラム及びヘリウムキャリヤガスを用いて検定を実施する。自動サンプラ及び勾配パラメータが該方法において詳述される。試料は、塩化ナトリウムと炭酸カリウムの溶液中に溶解させられ、その後内部標準としてキシレンを含有するヘキサンで抽出される。標準と試料は、最高35分の実行時間中GCカラム内に注入される。
【0040】
実施例1:湿式造粒により調製されるメマンチン組成物
造粒剤として精製水を用いて塩酸メマンチン(5mg/錠)、ラクトース一水和物(70mg/錠)、ポビドン(1mg/錠)及びクロスカルメロースナトリウム(7mg/錠)〔パートI〕を造粒して造粒物を形成させた。造粒物を乾燥させ、ふるい分けし、クロスカルメロースナトリウム(2mg/錠)、微結晶性セルロース(32.5mg/錠)及びコロイド状二酸化ケイ素(1mg/錠)の混合物〔パートII〕及びステアリン酸マグネシウム(1.5mg/錠)〔パートIII〕と配合して配合物を形成させた。合計配合時間は30分であった。配合物を次に錠剤コアの形に圧縮した。成分は表1中に要約されている。
【表1】

【0041】
実施例2:湿式造粒により調製されるメマンチン組成物
造粒剤として精製水を用いて塩酸メマンチン(10mg/錠)、ラクトース一水和物(140mg/錠)、ポビドン(2mg/錠)及びクロスカルメロースナトリウム(14mg/錠)〔パートI〕を造粒して造粒物を形成させた。造粒物を乾燥させ、粉砕し、クロスカルメロースナトリウム(4mg/錠)、微結晶性セルロース(65mg/錠)及びコロイド状二酸化ケイ素(2mg/錠)の混合物〔パートII〕及びステアリン酸マグネシウム(3mg/錠)〔パートIII〕と配合して配合物を形成させた。合計配合時間は30分であった。配合物を次に錠剤コアの形に圧縮した。成分は表2中に要約されている。
【表2】

【0042】
実施例3:湿式造粒により調製されるメマンチン組成物
造粒剤として精製水を用いて塩酸メマンチン(10mg/錠)、ラクトース一水和物(50mg/錠)、微結晶性セルロース(100mg/錠)及びクロスカルメロースナトリウム(8mg/錠)〔パートI〕を造粒して造粒物を形成させた。造粒物を乾燥させ、クロスカルメロースナトリウム(4mg/錠)、ラクトース一水和物(60mg/錠)及びタルク(5mg/錠)の混合物〔パートII〕及びステアリン酸マグネシウム(3mg/錠)〔パートIII〕と配合して配合物を形成させた。合計配合時間は30分であった。配合物を次に錠剤コアの形に圧縮した。成分は表3中に要約されている。
【表3】

【0043】
比較例4:直接圧縮により調製されるメマンチン組成物
塩酸メマンチン(5mg/錠)、ラクトース一水和物(55mg/錠)、微結晶性セルロース(55mg/錠)、コロイド状二酸化ケイ素(1mg/錠)、タルク(2.5mg/錠)及びステアリン酸マグネシウム(1.5mg/錠)をふるいにかけ、合わせて配合して配合物を形成させた。合計配合時間は30分であった。配合物を次に錠剤コアに圧縮し、コーティングした。成分は下表4にまとめられている。
【表4】

【0044】
実施例1及び2で調製された医薬組成物を検定率及び溶解率についてテストした。結果は表5にまとめられている。
【表5】

【0045】
実施例3で調製した医薬組成物の溶解速度を、100rpmの回転速度及び37℃で0.1NのHClを900ml用いるU.S.P.I型器具(バスケット)を使用してテストした。実施例3で調製した医薬組成物の溶解プロフィールは、表6にまとめられている。
【表6】

【0046】
実施例1(湿式造粒)及び4(直接圧縮)において調製した医薬組成物を配合均質性についてテストした。最終的配合物を、貯蔵コンテナ内の異なる場所で10個の試料を採取してサンプリングし、検定のため全ての試料をテストした。結果は表7にまとめられており、この表中「RSD」は相対標準偏差を意味する。
【表7】

【0047】
実施例1からの本発明の試料についてのRSD限界は、FDAにより許容され得る5.0パーセント及び比較例4の5.4パーセントよりも著しく低いものである。かくして、表7に例示されている通り、湿式造粒により調製された本発明の造粒メマンチン組成物は許容可能なRSD限界内に入り、一方直接圧縮により調製された組成物は許容可能なRSD限界外になる、すなわち均質性欠如という欠点を有している。
【0048】
さらに、以上で提示したデータによって例示されている通り、好ましくは湿式造粒により製造された本発明の造粒メマンチン組成物は優れた物理的及び化学的特性を有する。それに加え、物理的加工上の考慮事項に照らすと、メマンチン錠剤のための好ましい製造方法は、湿式造粒であることがわかった。湿式造粒を使用する場合、ステッキングを回避するためにより硬度の高い錠剤を製造する必要は全くなく、優れた配合均質性を達成するために配合時間を延長する必要も全く無い。
【0049】
実施例5:乾式造粒により調製されるメマンチン組成物
塩酸メマンチン(5mg/錠)、ラクトース一水和物(35mg/錠)、ポビドン(1mg/錠)、クロスカルメロースナトリウム(7mg/錠)及びステアリン酸マグネシウム(0.5mg/錠)〔パートI〕を配合して混合物を形成させる。次に、混合物を圧縮成形又はスラグ成形し、その後粉砕して顆粒を形成させる。結果として得た顆粒を次にクロスカルメロースナトリウム(2mg/錠)、微結晶性セルロース(32.5mg/錠)及びコロイド状二酸化ケイ素(1mg/錠)〔パートII〕及びステアリン酸マグネシウム(1mg/錠)〔パートIII〕と配合して組成物を形成させる。合計配合時間は30分である。成分は表8に要約されている。
【表8】

【0050】
実施例6:乾式造粒により調製されるメマンチン組成物
塩酸メマンチン(10mg/錠)、ラクトース一水和物(50mg/錠)、微結晶性セルロース(100mg/錠)、クロスカルメロースナトリウム(8mg/錠)及びステアリン酸マグネシウム(1mg/錠)〔パートI〕を配合して混合物を形成させる。次に、混合物を圧縮成形又はスラグ成形し、その後粉砕して顆粒を形成させる。結果として得た顆粒を次にクロスカルメロースナトリウム(4mg/錠)、ラクトース一水和物(50mg/錠)及びタルク(5mg/錠)〔パートII〕及びステアリン酸マグネシウム(2mg/錠)〔パートIII〕と配合して組成物を形成させる。合計配合時間は30分である。成分は表9に要約されている。
【表9】

【0051】
乾式造粒は、選択された賦形剤が水に対する感応性を有する場合、又は水性加工が分解性プロセスを加速させることがわかっている場合、湿式造粒に対する変形形態として有利であり得る。湿式造粒により製造された組成物に起因すると考えられる利点のいくつかは、ローラー圧縮成形又は「スラグ成形」により例証された方法による乾式造粒を使用して達成できる。
【0052】
本明細書中で開示された発明が前述の目標を達成するために充分適していることは明白であるが、当業者であれば数多くの修正及び実施形態を考案することができるということも認識される。従って、添付のクレームは、本発明の真の精神及び範囲に入るものとしてこのような修正及び実施形態を全て網羅することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒メマンチンを含む組成物。
【請求項2】
湿式造粒メマンチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物を含む医薬剤形。
【請求項4】
前記剤形が、10個の個別にサンプリングされた剤形が目標値の90〜110パーセントの間の平均検定値(mean assay)及び5.0パーセント以下の標準偏差を有するように複数の剤形について含有量の均一性を有する、請求項3に記載の医薬剤形。
【請求項5】
100rpmで回転するバスケット装置内において37℃で900mlの0.1NのHCl中に剤形を入れてから約60分以内に約95パーセントのメマンチンが放出される、請求項3及び4のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項6】
0.1NのHCl中に剤形を入れてから約45分以内に約95パーセントのメマンチンが放出される、請求項3〜5のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項7】
0.1NのHCl中に剤形を入れてから約30分以内に約95パーセントの造粒メマンチンが放出される、請求項3〜5のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項8】
0.1NのHCl中に剤形を入れてから約15分以内に約85パーセント以上のメマンチンが放出される、請求項3〜5のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項9】
少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項3〜8のいずれか1項に記載の医薬剤形。
【請求項10】
医薬的に許容される賦形剤が、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤及び潤滑剤からなる群の中から選択される、請求項3〜9のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項11】
希釈剤が、ラクトース一水和物又は微結晶性セルロースのうちの少なくとも1つである、請求項3〜10のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項12】
希釈剤が、組成物の約40重量パーセント〜約95重量パーセントの量で存在している、請求項3〜11のいずれか1項に記載の医薬剤形。
【請求項13】
結合剤がポビドンである、請求項3〜12のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項14】
結合剤が、組成物の約0.5重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在している、請求項3〜13のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項15】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムである、請求項3〜14のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項16】
崩壊剤が、組成物の約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在している、請求項3〜15のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項17】
流動促進剤がコロイド状二酸化ケイ素又はタルクのうちの少なくとも1つである、請求項3〜16のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項18】
流動促進剤が、組成物の約0.5重量パーセント〜約3重量パーセントの量で存在している、請求項3〜17のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項19】
潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びタルクのうちの少なくとも1つを含む、請求項3〜18のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項20】
潤滑剤が、組成物の約0.5重量パーセント〜約2重量パーセントの量で存在している、請求項3〜19のいずれかに記載の医薬剤形。
【請求項21】
請求項3〜20のいずれかに記載の剤形及びコーティングを含むフィルムコート錠。
【請求項22】
錠剤、カプセル又は顆粒のサシェ剤である、請求項3〜21のいずれかに記載の固体経口剤形。
【請求項23】
造粒メマンチンが湿式造粒塩酸メマンチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
造粒メマンチンが造粒塩酸メマンチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
造粒塩酸メマンチンが、組成物の約2重量パーセント〜6重量パーセントの量で存在する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ラクトース一水和物、ポビドン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項24及び25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の組成物を含む、塩酸メマンチンの医薬経口剤形。
【請求項28】
メマンチンHClが約5mgの量で存在し、ラクトース一水和物が約70mgの量で存在し、ポビドンが約1mgの量で存在し、クロスカルメロースナトリウムが約9mgの量で存在し、微結晶性セルロースが約32.5mgの量で存在し、コロイド状二酸化ケイ素が約1mgの量で存在し、ステアリン酸マグネシウムが約1.5mgの量で存在する、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
メマンチンHClが約10mgの量で存在し、ラクトース一水和物が約140mgの量で存在し、ポビドンが約2mgの量で存在し、クロスカルメロースナトリウムが約18mgの量で存在し、微結晶性セルロースが約65mgの量で存在し、コロイド状二酸化ケイ素が約2mgの量で存在し、ステアリン酸マグネシウムが約3mgの量で存在する、請求項27に記載の剤形。
【請求項30】
メマンチン組成物を調製するための湿式造粒法であって、メマンチンを液体を用いて造粒して造粒物を形成させる段階、造粒物を乾燥させ粉砕する段階及び造粒物から組成物を形成させる段階を含む方法。
【請求項31】
液体が水である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
液体による造流段階の前に、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とメマンチンを配合する段階をさらに含む、請求項30及び31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
造粒物と少なくとも1つの追加的な医薬的に許容される賦形剤とを配合して組成物を形成させる段階をさらに含む、請求項30〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
追加的な医薬的に許容される賦形剤が、希釈剤、流動促進剤、崩壊剤及び潤滑剤からなる群の中から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
メマンチン組成物を調製するための乾式造粒法であって、メマンチンを圧縮成形又はスラグ成形する段階、結果として得た圧縮成形体又はスラグを粉砕して顆粒を形成させる段階、及び顆粒から組成物を形成させる段階を含む方法。
【請求項36】
圧縮成形又はスラグ成形の前に、メマンチンと少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を混合して混合物を形成させる段階をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
組成物が、少なくとも1つの追加的な医薬的に許容される賦形剤と造粒物を配合することによって顆粒から形成される、請求項35及び36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
追加的な医薬的に許容される賦形剤が、希釈剤、流動促進剤、崩壊剤及び潤滑剤から成る群の中から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
メマンチンを造粒する段階、液体中でメマンチンと少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を造粒して造粒物を形成させる段階、造粒物を乾燥させ粉砕する段階及び造粒物から組成物を形成させる段階を含む方法によって調製される請求項3〜20及び27〜29のいずれかに記載の固体経口剤形。
【請求項40】
液体が水である、請求項39に記載の固体経口剤形。
【請求項41】
メマンチンと少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を混合して混合物を形成させる段階、混合物を圧縮成形又はスラグ成形する段階、混合物を粉砕して顆粒を形成させる段階及び顆粒から組成物を形成させる段階を含む方法によって調製される、請求項3〜20及び27〜29のいずれかに記載の固体経口剤形。
【請求項42】
アルツハイマー病の治療のための請求項3〜20及び27〜29のいずれかに記載の剤形の使用。

【公表番号】特表2009−542647(P2009−542647A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518087(P2009−518087)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036628
【国際公開番号】WO2008/005036
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】