説明

メモリカードソケット

【課題】複数種類のメモリカードに共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とする。
【解決手段】第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持された時には、スライドバー8の移動に伴って導通位置から絶縁位置に変位する絶縁体83,83が第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在するために第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13が絶縁体83,83によって絶縁される。故に、従来例のように第1のコンタクトパッドP3,P6に第2のコンタクトC10〜C13が接触導通することによる不具合が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(MMC)などのメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカードソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型で大容量のメモリカードとしてSDメモリカードが提供されており、このようなSDメモリカードは、それを使用する電気機器(以下、ホスト機器と言う。)に搭載されたメモリカードソケットに装着されて使用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図18(a)〜(c)は従来のSDメモリカードMC1を示し、矩形板状のカード体100の内部にフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子を収納してある。カード体100の一面には長手方向における一側(カード挿入方向の前側部)に9個のコンタクトパッドP1〜P9が短幅方向に並べて配設されている。またカード体100の長手方向に沿う両側縁には突部101が形成されるとともに、前側部の片方の角部に斜めに傾斜する切欠部102を形成してある。またカード体100の挿入方向に沿った片側縁には、後述するメモリカードソケットの係合爪が係合する係合凹所103が形成されると共に、反対側の側縁にはライトプロテクトスイッチの摘み105がスライド移動自在に配置される凹部104を設けてある。尚、コンタクトパッドP1〜P8の間には絶縁のためのリブ106が形成されている。
【0004】
SDメモリカードMC1は、動作モードを切り替えて使用することが可能であり、動作モードに応じて各コンタクトパッドP1〜P9の機能が切り替えられるようになっている。従来のSDメモリカードMC1において、データの高速転送が可能なモードでは、4個のコンタクトパッドを介してデータ転送を行っており、1クロックサイクルで4ビットのデータ転送が可能となっている。
【0005】
このようなSDメモリカードMC1は、例えばデジタルカメラやデジタルビデオカメラのような映像記録機器の記憶媒体として使用されるのであるが、近年の映像記録機器の高精細度化に伴って、記憶媒体に記憶されるコンテンツが大容量化しており、大容量のデータをリアルタイムで記録したり、或いはコンピュータなどの外部機器に転送する場合に従来のSDメモリカードMC1ではデータの転送速度が十分速いとはいえず、比較的長い時間がかかっていた。
【0006】
そこで、データの転送速度を高速化した高速型SDメモリカードMC2が従来提供されている。図19(a)〜(c)は高速型SDメモリカードMC2の三面図であり、この高速型SDメモリカードMC2では、従来型のSDメモリカードMC1と同じ位置にコンタクトパッドP1,P2,P4,P5,P7〜P9を設けてある。またコンタクトパッドP3,P6の前後方向寸法を短くして、前端位置を後側にずらし、コンタクトパッドP3の前方位置に2個のコンタクトパッドP10,P11を左右に並べて配置するとともに、コンタクトパッドP6の前方位置に2個のコンタクトパッドP12,P13を左右に並べて配置してある。
【0007】
このような高速型SDメモリカードMC2の動作モードは、従来のSDメモリカードと同様の動作を行うSDモードと、より高速のデータ転送が可能な高速モードに切り替えが可能となっており、SDモードと高速モードとで各コンタクトパッドP1〜P13の機能が切り替えられるようになっている。
【0008】
そして、高速モードでは、コンタクトパッドP10,P11が対をなして、1ビットの差動データ信号を送受信すると共に、コンタクトパッドP12,P13が対をなして、1ビットの差動データ信号を送受信する。すなわち、上述のSDモードでは、4個のコンタクトパッドを用いて4ビットのデータを送受信していたが、高速モードでは、コンタクトパッドP10,P11の対と、コンタクトパッドP12,P13の対とを用いて2ビットのデータを送受信している。ここで、高速モードの方がSDモードよりも1クロックサイクルで伝送可能なビット数は少ないが、差動データを送受信することで動作クロックの周波数を飛躍的に高く設定できるため、高速モードではSDモードに比べて高速なデータ伝送を実現することができる。
【0009】
このように、高速型SDメモリカードMC2では、従来のSDメモリカードMC1に比べて高速のデータ転送が可能になっているが、従来のSDメモリカードMC1をブリッジメディアとして使用するホスト機器が既に数多く生産されている。これらのホスト機器は、従来のSDメモリカードに対応したメモリカードソケット(以下、従来型ソケットと言う。)を採用しているため、高速型SDメモリカードMC2には、従来型ソケットに装着して、データ転送が行えるようにすることが要求されている。
【0010】
そこで、高速型SDメモリカードMC2は、カード体100の前側角部に設けた切欠部107以外は従来のSDメモリカードMC1と同様の外形形状及び寸法に形成されている。切欠部107は、従来のSDメモリカードMC1と同じ位置でカード体100の前面に接する第1切欠部108と、第1切欠部108に連続して設けられ、カード体100の側面に接する第2切欠部109とで構成される。第2切欠部109は、第1切欠部108を距離dだけ後方に平行移動させて設けられ、第1切欠部108と第2切欠部109との間には段差(凹所)が設けてある。
【0011】
このように、高速型SDメモリカードMC2では、カード体100の前側の角部に深さの異なる第1切欠部108と第2切欠部109を設けてあり、メモリカードソケットにカード体100を挿入した際に、従来型ソケットではカード体100の第1切欠部108がメモリカードソケットのスライダと衝合するのに対して、高速型SDメモリカードMC2に対応したメモリカードソケット(以下、高速対応型ソケットと言う。)では、カード体100の第2切欠部109がスライダと衝合することによって、メモリカードMC2がより深い位置まで差し込まれることになる。すなわち、従来型ソケットにメモリカードを挿入した場合は、高速対応型ソケットにメモリカードを挿入した場合に比べて、SDメモリカードMC2の挿入位置が浅くなっており、両ソケットでソケット内部に配置されたコンタクトがI/O接触面に接触する位置を異ならせることができる。
【0012】
したがって、従来型ソケットでは、コンタクトパッドP3,P6の前側位置に設けたコンタクトパッドP10〜P13にソケット内部に配置したコンタクトが接触することはなく、従来のSDメモリカードMC1と同様に9個のコンタクトパッドP1〜P9のみをソケット側のコンタクトに接触させることができるようになり、従来型ソケットに対して互換性を持たせることができる。
【0013】
ところで、メモリカードソケットにはスライダを具備しない種類のものも存在し、このようにスライダを具備しない種類のメモリカードソケットでは、従来のSDメモリカードMC1と高速型SDメモリカードMC2とで挿入位置を異ならせることができないので、挿入位置によってメモリカードの種類を判別することができない。
【0014】
そこで、メモリカードの電気的特性によってメモリカードの種類を判別し、その判別結果に応じてコンタクトの切替/選択を行うメモリカードソケットが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このものでは、メモリカードの種類に応じて使用しないコンタクトをメモリカードソケットの内部回路から電気的に切り離すことによって、コンタクトの切替/選択を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−71175号公報
【特許文献2】特開2003−249290号公報
【特許文献3】特開2004−14499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献3に記載された技術を採用すれば、スライダの有無に関係なく、メモリカードの種類を判別することが可能になり、これによって、従来のSDメモリカードMC1と高速型SDメモリカードMC2の両方を使用することが可能になる。
【0017】
しかしながら、このものでは、従来のSDメモリカードMC1の装着位置と高速型SDメモリカードMC2の装着位置とが同じになるから、従来のSDメモリカードMC1では使用されない高速モード用のコンタクトがパッドP3,P6に接触する場合がある。
【0018】
ここで、従来のSDメモリカードMC1に対して使用しない高速モード用のコンタクトが、メモリカードソケットの内部回路から電気的に切り離されていたとしても、これら使用されないコンタクトがパッドP3,P6に接触していれば、高周波特性や信号伝送特性に悪影響が生じ、その結果、十分な性能を発揮できず、規定の転送速度に達しないという現象が起こってしまう。
【0019】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、その目的は、複数種類のメモリカードに共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができるメモリカードソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、書換可能な不揮発性の記憶素子が内蔵される矩形板状のカード体の厚み方向の一面側に複数のコンタクトパッドを備えるとともにコンタクトパッドの配列により分類される複数種類のメモリカードを挿抜可能なカード挿入口を有し、当該カード挿入口から挿入されたメモリカードを保持するソケット本体と、ソケット本体に保持されたメモリカードの複数のコンタクトパッドと接触導通する複数のコンタクトとを備え、複数種類のメモリカードは、全ての種類で共通する第1のコンタクトパッドと、一部の種類にのみ設けられた第2のコンタクトパッドとをカード体の先端側に有し、第2のコンタクトパッドを有する種類と第2のコンタクトパッドを有しない種類とでカード体の一部の形状又は寸法の少なくとも何れか一方が相違しており、前記複数のコンタクトは、第1のコンタクトパッドと接触導通する第1のコンタクトと、第2のコンタクトパッドと接触導通する第2のコンタクトとを含むメモリカードソケットであって、前記カード体の一部の形状又は寸法の相違点に基づいてメモリカードの種類を検出する検出手段と、第1のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在して両者を絶縁する絶縁位置と第2のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在せずに両者を接触導通させる導通位置との間で変位自在である絶縁体と、検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有しない種類である場合に絶縁体を絶縁位置へ変位させるとともに検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有する種類である場合に絶縁体を導通位置へ変位させる変位手段とをソケット本体に備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項1の発明によれば、第2のコンタクトパッドを有するメモリカードがソケット本体に保持された時には、変位手段によって導通位置に変位させられる絶縁体が第2のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在しないために第2のコンタクトパッドと第2のコンタクトが接触導通し、一方、第2のコンタクトパッドを有しないメモリカードがソケット本体に保持された時には、変位手段によって絶縁位置に変位させられる絶縁体が第1のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在するために第1のコンタクトパッドと第2のコンタクトが絶縁体に絶縁されるので、従来例のように第1のコンタクトパッドに第2のコンタクトが接触導通することによる不具合が生じない。その結果、複数種類のメモリカードに共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記絶縁体は、ソケット本体にカード体が保持されていないときに導通位置に在り、前記変位手段は、検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有しない種類である場合に絶縁体を導通位置から絶縁位置へ変位させるとともに検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有する種類である場合に絶縁体を導通位置に留めさせることを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明によれば、第2のコンタクトパッドを有しない種類のメモリカードがソケット本体内に挿入された場合に絶縁体が導通位置から絶縁位置へ変位するが、第2のコンタクトパッドを有する種類のメモリカードがソケット本体内に挿入された場合は絶縁体が導通位置に止まるため、絶縁体が変位する機会を減らすことで信頼性の向上が図れる。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記検出手段は、カード挿入口から挿入されるカード体に押されてソケット本体内を移動するとともに、前記カード体の一部の形状又は寸法の相違によってカード体がソケット本体に保持されているときの位置が異なる移動体を有し、前記変位手段は、移動体と一体に移動させることで絶縁体を絶縁位置と導通位置との間で変位させることを特徴とする。
【0025】
請求項3の発明によれば、検出手段並びに変位手段を簡単な構造で実現できる。
【0026】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記検出手段は、前記移動体に設けられ、第2のコンタクトパッドを有しない種類のメモリカードのカード体に設けられている当接部にのみ当接する突起部を有し、当該突起部が当接部に当接するときと当接しないときとで移動体の位置が異なることによってメモリカードの種類を検出することを特徴とする。
【0027】
請求項4の発明によれば、絶縁体を当接部に当接させてメモリカードの種類を検出する場合と比較して絶縁体に加わる応力が低減でき、その結果、絶縁体を小型化しつつメモリカードの挿抜に対する信頼性の向上が図れる。
【0028】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、移動体の移動をガイドするガイド機構がソケット本体並びに移動体に設けられたことを特徴とする。
【0029】
請求項5の発明によれば、ガイド機構によって移動体の移動時のがたつきや偏移を抑制できる。
【0030】
請求項6の発明は、請求項3〜5の何れか1項の発明において、第1のコンタクトパッドはカード挿入口への挿入向きと交差する方向に沿って並設され、第2のコンタクトパッドは第1のコンタクトパッドの何れかと前記挿入向きに沿って並び且つ当該第1のコンタクトパッドよりも挿入向きに沿った前方に設けられており、第1及び第2のコンタクトは、ばね性を有する帯板状に形成され後端部がソケット本体に支持されて先端部が第1又は第2のコンタクトパッドに弾接し、且つ一対の第2のコンタクトの間に第1のコンタクトが配置されてなり、絶縁体は、第1のコンタクトを挟んで隣り合う前記一対の第2のコンタクトと第1のコンタクトパッドの間に介在する一対の絶縁部と、前記挿入向きに交差する方向に沿って第1のコンタクトを跨ぐ形で前記一対の絶縁部を連結する連結部とを有し、前記変位手段は、カード体の厚み方向において第1のコンタクトと重なる位置に配置され、絶縁体を移動体に支持させる帯板状の支持体からなることを特徴とする。
【0031】
請求項6の発明によれば、第1のコンタクトを挟んで隣り合う2つの第2のコンタクトに対応した一対の絶縁部に対して支持体を共用し、カード体の厚み方向において第1のコンタクトと重なる位置に支持体を配置することでソケット本体の大型化を防ぐことができる。
【0032】
請求項7の発明は、請求項5の発明において、前記ガイド機構は凹溝及び当該凹溝に嵌合する嵌合突起を有し、ソケット本体のカード挿入口へのカード体の挿入方向に沿って前記嵌合突起が凹溝内を移動自在としてなり、前記突起部は、前記挿入方向において凹溝並びに嵌合突起と重なる形で移動体に設けられていることを特徴とする。
【0033】
請求項7の発明によれば、カード体の挿入向きに沿って突起部に加わる力が真っ直ぐに嵌合突起に伝わるので、移動体をスムーズに移動させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、複数種類のメモリカードに共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態1を示し、カバーシェルを外した状態の斜視図である。
【図2】同上のカバーシェルを外した状態の平面図である。
【図3】同上のカバーシェルを外した状態の要部斜視図である。
【図4】同上に従来型のSDメモリカードを装着した状態を示し、(a)はベースシェルを外した状態の平面図、(b)は(a)の一部省略したA−A線断面矢視図、(c)は(a)の一部省略したB−B線断面矢視図である。
【図5】同上に高速型のSDメモリカードを装着した状態を示し、(a)はベースシェルを外した状態の平面図、(b)は(a)の一部省略したC−C線断面矢視図、(c)は(a)の一部省略したD−D線断面矢視図である。
【図6】本発明の実施形態2を示し、カバーシェルを外した状態の斜視図である。
【図7】同上のカバーシェルを外した状態の平面図である。
【図8】同上のカバーシェルを外した状態の要部斜視図である。
【図9】(a)は同上に従来型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図、(b)は同上に高速型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図である。
【図10】本発明の実施形態3を示し、カバーシェルを外した状態の斜視図である。
【図11】同上のカバーシェルを外した状態の平面図である。
【図12】同上のカバーシェルを外した状態の要部斜視図である。
【図13】(a)は同上に従来型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図、(b)は(a)のE−E線断面矢視図、(c)は同上に高速型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図、(d)は(c)のF−F線断面矢視図である。
【図14】本発明の実施形態4を示し、ベースシェルを外した状態の斜視図である。
【図15】同上のベースシェルを外した状態の平面図である。
【図16】同上のベースシェルを外した状態の要部斜視図である。
【図17】(a)は同上に従来型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図、(b)は(a)の一部省略した断面図、(c)は同上に高速型のSDメモリカードを装着した状態の一部省略した平面図、(d)は(c)の一部省略した断面図である。
【図18】従来型のSDメモリカードを示し、(a)は裏側から見た平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図19】高速型のSDメモリカードを示し、(a)は裏側から見た平面図、(b)は表側から見た平面図、(c)はカード挿入方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、従来技術で説明した従来型のSDメモリカードMC1と高速型SDメモリカードMC2の2種類のメモリカードに対応可能としたメモリカードソケットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
(実施形態1)
本実施形態のメモリカードソケットMS1は、図1および図2,図4(a)に示すようにベースシェル1およびカバーシェル2からなる扁平な矩形箱状のソケット本体3と、複数本のコンタクトC1〜C13を保持するコンタクトブロック4と、ソケット本体3内に2種類のSDメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1及び高速型のSDメモリカードMC2)の挿入方向に沿った前後方向で移動自在に配置され、カード挿入口3aから挿入されたSDメモリカードMCn(n=1,2)の先端側と衝合し、SDメモリカードMCnからの押力を受けてSDメモリカードMCnとともに前方に移動するスライダ5と、スライダ5を後方(カード挿入口3a側)に常時弾性付勢するコイルばね(付勢ばね)14と、スライダ5を所定位置(SDメモリカードMCnのコンタクトパッドにコンタクトが接触導通する位置)でロックし、該ロック後にSDメモリカードMCnへの押力が加わってスライダ5が前方移動するときにロックを解除するスライダロック機構SLとを主要な構成要素として備えている。なお、スライダ5やコイルばね14ならびにスライダロック機構SLについては、従来周知であるから詳細な説明を省略する。また、以下の説明では図2において前後左右を規定し、図2における紙面に垂直な方向を上下方向と規定する。
【0038】
ベースシェル1は、厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工並びに曲げ加工を施すことにより形成され、左右両側部を上方に折り曲げて側片6b,6bを形成したものであり、上側および前後両側が開放されている。
【0039】
ベースシェル1の前部および左側部には、上方に突出する複数個の突出片(図示せず)が折り曲げ形成されており、これらの突出片をコンタクトブロック4の基体7下面に開口した圧入溝(図示せず)に圧入することで、ベースシェル1の上面にコンタクトブロック4が圧入固定されるようになっている。なお、ベースシェル1の前端よりやや後方には、コンタクトブロック4に保持されたコンタクトC1〜C13が下向きに撓む際の逃げとなる貫通孔11が複数形成されている。
【0040】
また、ベースシェル1の後側縁の右端には、SDメモリカードMCnの通過位置よりも外側位置から上方に突出し、さらにその先端側が前方に突出する側面視L字形の支持片12が折り曲げ形成されている。
【0041】
カバーシェル2は、厚さが極薄い矩形板状のステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成され、カバーシェル2の前縁からは下方に突出する曲げ片(図示せず)が折り曲げ形成されている。また、カバーシェル2には、曲げ片よりもやや後端寄りの位置に、下方に突出する複数個の突出片(図示せず)が切り起こしによって形成されている。而して、上面にコンタクトブロック4の基体7が固定されたベースシェル1の上側にカバーシェル2を載置して、カバーシェル2の突出片をコンタクトブロック4の基体7に設けた圧入溝(図示せず)に圧入するとともに、カバーシェル2の周縁部とベースシェル1との当接部位をレーザ溶接などの方法で接合することにより、カバーシェル2がベースシェル1およびコンタクトブロック4に対して固定され、後面にカード挿入口3aが開口する扁平な矩形箱状のソケット本体3が構成される。
【0042】
コンタクトブロック4は上下方向から見て平面視略L字状に形成された樹脂成形品からなる基体7を備えている。この基体7は、ベースシェル1およびカバーシェル2の前側辺に沿って配置されてソケット本体3の前面を閉塞する前側部7aと、前側部7aの左側端部から後方に突出し、ベースシェル1の側片6bに沿って配置される側部7bとで構成されている。また、前側部7aの後面右端には、コイルばね14の一端側を保持するばね受け(図示せず)が設けられ、コンタクトブロック4とスライダ5との間にコイルばね14が介装されている。したがって、スライダ5はコイルばね14のばね力によって常時後ろ向き(カード挿入口3aに対する反挿入向き)に弾性付勢されている。また、前側部7aの上面における前端側には下方へ後退した段部7dが設けられている。さらに、側部7bには、前後方向に沿って延び、SDメモリカードMCnの裏面と対向する段部7cが設けられている。
【0043】
さらに、基体7の前側部7aには、2種類のSDメモリカードMCnの前部裏面に共通して左右方向に並設された複数のコンタクトパッド(第1のコンタクトパッド)P1〜P9にそれぞれ接触導通する9本のコンタクト(第1のコンタクト)C1〜C9と、高速型のSDメモリカードMC2の前部裏面にのみ左右方向に並設された複数のコンタクトパッド(第2のコンタクトパッド)P10〜P13にそれぞれ接触導通する4本のコンタクト(第2のコンタクト)C10〜C13とが圧入または同時成形により一体に保持されている。各コンタクトC1〜C13は、弾性を有する金属板によって帯板状に形成され、前側部7aより後方に突出する部位の先端部分が略へ字形に曲成されることでコンタクトパッドPn(n=1,2,…,13)に弾接する接触部が形成されるとともに、前側部7aより前方に突出する部位が略鈎形に曲成されることでプリント配線板などに表面実装するための半田付端子112が形成されている。
【0044】
スライダ5は合成樹脂成形品であって、SDメモリカードMCnの右側縁に沿って前後方向に移動する短冊形の側部5aと、側部5aの先端部(前端部)から側方(図2における左方)に突出してカード体100の切欠部102または第1切欠部108に当接する側部5bとが一体に形成されている。また、側部5aの内側面の下側縁には、前後方向に沿って、SDメモリカードMCnの裏面と対向する段部19が一体に突設されている。尚、側部5bの後面には、従来型のSDメモリカードMC1の切欠部102または高速型のSDメモリカードMC2の第1切欠部108と略同じ角度で傾斜する傾斜面が形成されている。而して、ソケット挿入口3aよりソケット本体3内に従来型のSDメモリカードMC1が挿入された場合は当該SDメモリカードMC1の切欠部102が側部5bの傾斜面と衝合し(図4(a)参照)、高速型のSDメモリカードMC2が挿入された場合は当該SDメモリカードMC2の第1切欠部108が側部5bの傾斜面と衝合することになり(図5(a)参照)、SDメモリカードMC1,MC2からの押力を受けてスライダ5が前方に移動することになる。
【0045】
ここにおいて、SDメモリカードMC1,MC2のカード体100の一面(裏面)には、長手方向における一側(図4(a)及び図5(a)における上側)に8個の凹所110が短幅方向(図4(a)及び図5(a)における左右方向)に並設され、各凹所110の底面に第1及び第2のコンタクトパッドP1〜P13がそれぞれ配置されている。但し、図5(a)に示すように第2のコンタクトパッドP10〜P13については高速型のSDメモリカードMC2にのみ配置してある。尚、高速型のSDメモリカードMC2に設けた各凹所110の前後方向(図5(a)における上下方向)の寸法L2は、従来型のSDメモリカードMC1に設けた各凹所110の前後方向(図4(a)における上下方向)の寸法L1よりも大きい寸法に設定されている(L2>L1)。但し、本実施形態における従来型のSDメモリカードMC1並びに高速型のSDメモリカードMC2は、それぞれ図18及び図19に示したものと共通である。
【0046】
ここで、本実施形態では、前記寸法L1,L2の違いに基づいてソケット本体3に保持されるSDメモリカードMC1,MC2の種類を検出する検出手段と、従来型のSDメモリカードMC1の第1のコンタクトパッドP3、P6と第2のコンタクトC10,C11、C12,C13の間に介在して両者を絶縁する絶縁位置と高速型のSDメモリカードMC2の第2のコンタクトパッドP10,P11、P12,P13と第2のコンタクトC10,C11、C12,C13の間に介在せずに両者を接触導通させる導通位置との間で変位自在である2つの絶縁体83,83と、検出手段によって検出されるSDメモリカードMCnの種類が第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない種類(従来型のSDメモリカードMC1)である場合に絶縁体83,83を導通位置から絶縁位置へ変位させるとともに検出手段によって検出されるSDメモリカードMCnの種類が第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する種類(高速型のSDメモリカードMC2)である場合に絶縁体83,83を絶縁位置から導通位置へ変位させる変位手段とをソケット本体3に備えている。但し、本実施形態では、絶縁性を有する合成樹脂成形品からなるスライドバー8によって検出手段と変位手段を実現している。
【0047】
スライドバー8は、図1及び図2に示すように長尺な帯板状に形成された主部(移動体)80と、主部80の長手方向における両端より主部80の厚み方向に沿って同一向きに突出する一対の嵌合突起81,81とを有する。一方、基体7の前側部7aにはスライドバー8の嵌合突起81,81が嵌合する一対の凹溝70,70が形成されている。そして、一対の嵌合突起81,81を一対の凹溝70,70に各々嵌合するようにしてソケット本体3内に収納されるスライドバー8は、嵌合突起81と凹溝70からなるガイド機構によってガイドされながらソケット本体3内を前後方向に平行移動可能となっている。ここで、前側部7aにおける凹溝70,70の下方にコイルばね90,90を収納する収納凹部71,71がそれぞれ設けられており、前端が収納凹部71の前壁に支持されるとともに後端がスライドバー8の主部80の前面に支持される形でコイルばね90が収納凹部71に収納される。尚、図1及び図2に示すようにSDメモリカードMCnがソケット本体3内に挿入されていない状態ではコイルばね90,90に力が加わっておらず、後述するようにソケット本体3内に従来型のSDメモリカードMC1が挿入された状態ではコイルばね90,90が圧縮されることでスライドバー8が後向きに弾性付勢されることになる。
【0048】
また、主部80は、後面の両端近傍の部位から扁平な帯板状の突起部82,82がそれぞれ後方に向けて突設されている。これら2つの突起部82,82は、それぞれ上下方向において第1のコンタクトC2,C7と重なる位置にあって、第1のコンタクトC2,C7の接触部が挿通される挿通溝82a,82aが設けられている。つまり、第1のコンタクトC2,C7は突起部82,82の挿通溝82a,82aを通して第1のコンタクトパッドP2,P7に接触導通することになる。ここで、突起部82,82の前後方向に沿った長さ寸法(主部80の後面から突起部82,82の先端までの距離)L3は、高速型のSDメモリカードMC2の凹所110の前後方向の寸法L2よりも短く且つ従来型のSDメモリカードMC1の凹所110の前後方向の寸法L1よりも大きい寸法に設定されている(L1<L3<L2)。したがって、ソケット本体3内に高速型のSDメモリカードMC2が保持されている状態では、図5に示すように突起部82,82の先端(後端)が凹所110の後側の壁面(当接部)に当接しないので、スライドバー8は前方へ移動(変位)せずに静止したままとなる。一方、ソケット本体3内に従来型のSDメモリカードMC1が保持されている状態では、図4に示すように突起部82,82の先端(後端)が凹所110の後側の壁面(当接部)に当接するので、スライドバー8はカード体100に押されて前方へ移動(変位)する。つまり、スライドバー8は、従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持されているときと、高速型のSDメモリカードMC2がソケット本体3に保持されているときとで前後方向における位置(静止位置)が異なり、この位置の違いによって2種類のSDメモリカードMCnの種類を検出することができる。ここで、挿通溝82a、82aを設けて第1のコンタクトC2,C7を逃げることによって突起部82,82の左右方向の幅寸法を大きくしているため、突起部82,82の強度を向上することができる。尚、突起部82,82に設けられた挿通溝82a,82aは、スライドバー8が絶縁位置に静止している状態でも第1のコンタクトC2,C7と干渉しない長さ寸法に設定されている。また、突起部82,82の先端面(後端面)は、従来型のSDメモリカードMC1の凹所110の後側壁面(当接部)との当接面積が大きくなるように当該後側壁面(当接部)と平行な角度で傾斜している。
【0049】
2つの絶縁体83,83は、図1〜図3に示すように一対の絶縁部83a,83aと、これら一対の絶縁部83a,83aをその長手方向の一端側で連結する連結部83bとを有する平面視略コ字状に形成され、連結部83bの中央部分において、帯板状の支持体84,84により主部80に支持されている。主部80における支持体84,84の左右両側には第2のコンタクトC10〜C13を逃げるために4つの凹溝80aが設けられており、左右方向に隣り合う2つの凹溝80aの間、つまり、一対の第2のコンタクトC10,C11の間並びに一対の第2のコンタクトC12,C13の間にそれぞれ支持体84,84が配置されており、支持体84,84に支持された絶縁体83,83の一対の絶縁部83a,83aが前後方向に沿って第2のコンタクトC10〜C13と重なる位置に配置されている(図2参照)。
【0050】
絶縁部83aは先端(後端)が下向きに傾斜しており、ソケット本体3内に挿入されるカード体100の先端部分に引っ掛かることなく凹所110の底面に乗り上げるようになっている。また、絶縁部83a、83aと連結部83bとの連結部位における前端面が後方へ向かって下方に傾斜する傾斜面となっている。
【0051】
次に、本実施形態のメモリカードソケットMS1に2種類のSDメモリカードMC1,MC2を装着する場合の動作を説明する。
【0052】
高速型のSDメモリカードMC2が装着された場合、既に説明したようにスライドバー8が前方へ移動せずに静止したままとなる。このとき、絶縁体83,83も静止したままであるから、図5に示すように絶縁体83,83の各一対の絶縁部83a,83aは第2のコンタクトC10〜C13の接触部よりも後方に位置しており、第2のコンタクトC10〜C13と第2のコンタクトパッドP10〜P13との間に絶縁部83aが介在せず、第2のコンタクトC10〜C13の接触部が第2のコンタクトパッドP10〜P13に弾接して両者が接触導通する(このときの絶縁体83の位置を「導通位置」と呼ぶ。)。
【0053】
一方、従来型のSDメモリカードMC1が装着された場合、既に説明したようにスライドバー8が前方へ移動して絶縁体83,83も導通位置から前方へ移動する。このとき、図4に示すように絶縁体83,83の各一対の絶縁部83a,83aが凹所110の底面と第2のコンタクトC10〜C13の接触部との間に挿入され、第2のコンタクトC10〜C13と第1のコンタクトパッドP3,P6との間に絶縁部83aが介在し、第2のコンタクトC10〜C13の接触部が第1のコンタクトパッドP3,P6から隔絶されて両者が絶縁される(このときの絶縁体83の位置を「絶縁位置」と呼ぶ。)。
【0054】
上述のように本実施形態のメモリカードソケットMS1では、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する高速型のSDメモリカードMC2がソケット本体3に保持された時には、絶縁体83,83が第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在しないために第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13がそれぞれ接触導通し、一方、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持された時には、スライドバー8の移動に伴って導通位置から絶縁位置に変位する絶縁体83,83が第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在するために第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13が絶縁体83,83によって絶縁されるので、従来例のように第1のコンタクトパッドP3,P6に第2のコンタクトC10〜C13が接触導通することによる不具合が生じない。その結果、複数種類のメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1と高速型のSDメモリカードMC2)に共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【0055】
また、本実施形態のメモリカードソケットMS1では、SDメモリカードMCnのカード体100の一部の寸法(凹所110の前後方向における長さ寸法L1,L2)の相違によってカード体100がソケット本体3に保持されているときの位置が異なる移動体(スライドバー8)を有し、変位手段たる支持体84,84が絶縁体83,83をスライドバー8と一体に移動させることで絶縁体83,83を絶縁位置と導通位置との間で変位させているので、検出手段並びに変位手段を簡単な構造で実現できるという利点がある。しかも、移動体たるスライドバー8に設けられた突起部82,82が、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない種類のメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1)のカード体100に設けられている当接部(凹所110の後側壁面)にのみ当接することでSDメモリカードMCnの種類を検出しているので、絶縁体83,83を当接部に当接させてメモリカードの種類を検出する場合と比較して絶縁体83,83に加わる応力が低減でき、その結果、絶縁体83,83を小型化しつつメモリカードの挿抜に対する信頼性の向上が図れるという利点がある。さらに、移動体たるスライドバー8の移動をガイドするガイド機構(嵌合突起81と凹溝70)をソケット本体3並びにスライドバー8に設けているので、ガイド機構によってスライドバー8の移動時のがたつきや偏移を抑制できるという利点がある。尚、突起部82,82を、前後方向においてガイド機構(嵌合突起81と凹溝70)と重なる形(位置)に設ければ、カード体100の挿入向きに沿って突起部82,82に加わる力が真っ直ぐに嵌合突起81,81に伝わるので、スライドバー8をスムーズに移動させることができる。
【0056】
ここで、本実施形態においては、絶縁体83,83が第1のコンタクトC3,C6を挟んで隣り合う一対の第2のコンタクトC10,C11並びにC12,C13と第1のコンタクトパッドC3,C6の間に介在する一対の絶縁部83a,83aと、左右方向に沿って第1のコンタクトC3,C6を跨ぐ形で一対の絶縁部83a、83aを連結する連結部83b,83bとを有し、変位手段たる支持体84がカード体100の厚み方向(上下方向)において第1のコンタクトC3,C6と重なる位置に配置されているので、第1のコンタクトC3,C6を挟んで隣り合う2つの第2のコンタクトC10,C11並びにC12,C13に対応した一対の絶縁部83a,83aに対して支持体84を共用し、カード体100の厚み方向(上下方向)において第1のコンタクトC3,C6と重なる位置に支持体84,84を配置することでソケット本体3の大型化を防ぐことができるという利点がある。
【0057】
ここで、本実施形態では第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する高速型のSDメモリカードMS2が装着された場合にスライドバー8が移動せず、絶縁体83,83が導通位置に止まったままとなり、第2のコンタクトCパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1が装着された場合にだけスライドバー8が移動するため、絶縁体83,83の変位(スライドバー8の移動)する機会が減ることで信頼性の向上が図れるという利点がある。但し、高速型のSDメモリカードMC2の装着時に必ずしも絶縁体83,83を導通位置に留める必要はない。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態のメモリカードソケットMS2は、スライドバー8に設けられて2種類のSDメモリカードMC1,MC2の種類を検出する検出手段の構成に特徴があり、その他の構成については実施形態1と共通である。故に、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態における検出手段は、図6〜図8に示すようにスライドバー8の右端から後向きに突出する突起部85で構成されている。この突起部85の先端面(後端面)は、後方に向かって外方(右方)に傾斜する傾斜面となっている。尚、突起部85の下面にはスライダ5(本実施形態では図示略)を逃げるための凹部85aが形成されている。
【0060】
而して、本実施形態のメモリカードソケットMS2では、高速型のSDメモリカードMC2がソケット本体3に保持されている状態では、図9(b)に示すようにカード体100の前側角部に設けられた切欠部107と突起部85とが当接しないためにスライドバー8が前方へ移動せず、その結果、絶縁体83,83は導通位置に静止したままとなる。一方、従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持されている状態では、図9(a)に示すようにカード体100の前側角部に設けられた切欠部102と突起部85とが当接するためにスライドバー8がカード体100に押されて前方へ移動し、その結果、絶縁体83,83が導通位置から絶縁位置に変位(移動)することになる。
【0061】
而して、本実施形態のメモリカードソケットMS2では、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する高速型のSDメモリカードMC2がソケット本体3に保持された時には、絶縁体83,83が第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在しないために第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13がそれぞれ接触導通し、一方、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持された時には、スライドバー8の移動に伴って導通位置から絶縁位置に変位する絶縁体83,83が第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在するために第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13が絶縁体83,83によって絶縁されるので、従来例のように第1のコンタクトパッドP3,P6に第2のコンタクトC10〜C13が接触導通することによる不具合が生じず、複数種類のメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1と高速型のSDメモリカードMC2’)に共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態のメモリカードソケットMS3は、スライドバー8に設けられて2種類のSDメモリカードMC1,MC2の種類を検出する検出手段の構成に特徴があり、その他の構成については実施形態1と共通である。故に、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施形態のメモリカードソケットMS3が対応する高速型のSDメモリカードMC2’においては、図13(c)に示すように第2のコンタクトパッドP10〜P13と第1のコンタクトパッドP2,P4,P5,P7との間に絶縁用のリブ106が設けられていない。一方、本実施形態のメモリカードソケットMS3が対応する従来型のSDメモリカードMC1においては、図13(a)に示すように全てのコンタクトパッド(第1のコンタクトパッドP1〜P9)の間に絶縁用のリブ106が設けられている。
【0064】
そこで本実施形態のメモリカードソケットMS3では、図10〜図12に示すようにスライドバー8の後端面における4つの凹溝80aの隣に、後向きに突出する4つの突起部86を突設して検出手段を構成している。つまり、高速型のSDメモリカードMC2’がソケット本体3に保持されている状態では、第2のコンタクトパッドP10〜P13と第1のコンタクトパッドP2,P4,P5,P7との間に絶縁用のリブ106が設けられていないためにスライドバー8が前方へ移動せず、その結果、絶縁体83,83は導通位置に静止したままとなる(図13(c),(d)参照)。一方、従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持されている状態では、第1のコンタクトパッドP1〜P9間に設けられているリブ106の先端部分に突起部86が当接するためにスライドバー8がカード体100に押されて前方へ移動し、その結果、絶縁体83,83が導通位置から絶縁位置に変位(移動)することになる(図13(a),(b)参照)。
【0065】
而して、本実施形態のメモリカードソケットMS3では、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する高速型のSDメモリカードMC2’がソケット本体3に保持された時には、絶縁体83,83が第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在しないために第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13がそれぞれ接触導通し、一方、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持された時には、スライドバー8の移動に伴って導通位置から絶縁位置に変位する絶縁体83,83が第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在するために第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13が絶縁体83,83によって絶縁されるので、従来例のように第1のコンタクトパッドP3,P6に第2のコンタクトC10〜C13が接触導通することによる不具合が生じず、複数種類のメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1と高速型のSDメモリカードMC2’)に共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【0066】
(実施形態4)
本実施形態のメモリカードソケットMS4は、プリント配線板などに表面実装された状態で裏面(コンタクトパッドP1〜P13が露出する面)を上に向けてカード体100がソケット本体3に保持される構成である点に特徴があり、その他の構成については基本的に実施形態3と共通である。故に、形状や寸法が若干異なっていても機能が共通する構成要素については実施形態3と共通の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図14〜図17に示すように、本実施形態のメモリカードソケットMS4では、半田付端子112の向きが実施形態3のメモリカードソケットMS3の場合と上下反転しており、カバーシェル2側がプリント配線板の実装面と対向することになる。尚、スライドバー8の構造については実施形態3と共通である。
【0068】
而して、本実施形態のメモリカードソケットMS4においても実施形態3のメモリカードソケットMS3と同様に、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有する高速型のSDメモリカードMC2’がソケット本体3に保持された時には、絶縁体83,83が第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在しないために第2のコンタクトパッドP10〜P13と第2のコンタクトC10〜C13がそれぞれ接触導通し(図17(c),(d)参照)、一方、第2のコンタクトパッドP10〜P13を有しない従来型のSDメモリカードMC1がソケット本体3に保持された時には、スライドバー8の移動に伴って導通位置から絶縁位置に変位する絶縁体83,83が第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13の間に介在するために第1のコンタクトパッドP3,P6と第2のコンタクトC10〜C13が絶縁体83,83によって絶縁されるので(図17(a),(b)参照)、従来例のように第1のコンタクトパッドP3,P6に第2のコンタクトC10〜C13が接触導通することによる不具合が生じず、複数種類のメモリカード(従来型のSDメモリカードMC1と高速型のSDメモリカードMC2’)に共用でき、かつメモリカードの装着時におけるコンタクトとコンタクトパッドとの接触状態を各種のメモリカードの性能を発揮するのに適した状態とすることができる。
【符号の説明】
【0069】
MS1 メモリカードソケット
3 ソケット本体
8 スライドバー(移動体)
82 突起部
83 絶縁体
C1〜C9 第1のコンタクト
C10〜C13 第2のコンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書換可能な不揮発性の記憶素子が内蔵される矩形板状のカード体の厚み方向の一面側に複数のコンタクトパッドを備えるとともにコンタクトパッドの配列により分類される複数種類のメモリカードを挿抜可能なカード挿入口を有し、当該カード挿入口から挿入されたメモリカードを保持するソケット本体と、ソケット本体に保持されたメモリカードの複数のコンタクトパッドと接触導通する複数のコンタクトとを備え、
複数種類のメモリカードは、全ての種類で共通する第1のコンタクトパッドと、一部の種類にのみ設けられた第2のコンタクトパッドとをカード体の先端側に有し、第2のコンタクトパッドを有する種類と第2のコンタクトパッドを有しない種類とでカード体の一部の形状又は寸法の少なくとも何れか一方が相違しており、
前記複数のコンタクトは、第1のコンタクトパッドと接触導通する第1のコンタクトと、第2のコンタクトパッドと接触導通する第2のコンタクトとを含むメモリカードソケットであって、
前記カード体の一部の形状又は寸法の相違点に基づいてメモリカードの種類を検出する検出手段と、第1のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在して両者を絶縁する絶縁位置と第2のコンタクトパッドと第2のコンタクトの間に介在せずに両者を接触導通させる導通位置との間で変位自在である絶縁体と、検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有しない種類である場合に絶縁体を絶縁位置へ変位させるとともに検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有する種類である場合に絶縁体を導通位置へ変位させる変位手段とをソケット本体に備えたことを特徴とするメモリカードソケット。
【請求項2】
前記絶縁体は、ソケット本体にカード体が保持されていないときに導通位置に在り、前記変位手段は、検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有しない種類である場合に絶縁体を導通位置から絶縁位置へ変位させるとともに検出手段によって検出されるメモリカードの種類が第2のコンタクトパッドを有する種類である場合に絶縁体を導通位置に留めさせることを特徴とする請求項1記載のメモリカードソケット。
【請求項3】
前記検出手段は、カード挿入口から挿入されるカード体に押されてソケット本体内を移動するとともに、前記カード体の一部の形状又は寸法の相違によってカード体がソケット本体に保持されているときの位置が異なる移動体を有し、
前記変位手段は、移動体と一体に移動させることで絶縁体を絶縁位置と導通位置との間で変位させることを特徴とする請求項1又は2記載のメモリカードソケット。
【請求項4】
前記検出手段は、前記移動体に設けられ、第2のコンタクトパッドを有しない種類のメモリカードのカード体に設けられている当接部にのみ当接する突起部を有し、当該突起部が当接部に当接するときと当接しないときとで移動体の位置が異なることによってメモリカードの種類を検出することを特徴とする請求項3記載のメモリカードソケット。
【請求項5】
移動体の移動をガイドするガイド機構がソケット本体並びに移動体に設けられたことを特徴とする請求項3又は4記載のメモリカードソケット。
【請求項6】
第1のコンタクトパッドはカード挿入口への挿入向きと交差する方向に沿って並設され、第2のコンタクトパッドは第1のコンタクトパッドの何れかと前記挿入向きに沿って並び且つ当該第1のコンタクトパッドよりも挿入向きに沿った前方に設けられており、
第1及び第2のコンタクトは、ばね性を有する帯板状に形成され後端部がソケット本体に支持されて先端部が第1又は第2のコンタクトパッドに弾接し、且つ一対の第2のコンタクトの間に第1のコンタクトが配置されてなり、
絶縁体は、第1のコンタクトを挟んで隣り合う前記一対の第2のコンタクトと第1のコンタクトパッドの間に介在する一対の絶縁部と、前記挿入向きに交差する方向に沿って第1のコンタクトを跨ぐ形で前記一対の絶縁部を連結する連結部とを有し、
前記変位手段は、カード体の厚み方向において第1のコンタクトと重なる位置に配置され、絶縁体を移動体に支持させる帯板状の支持体からなることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載のメモリカードソケット。
【請求項7】
前記ガイド機構は凹溝及び当該凹溝に嵌合する嵌合突起を有し、ソケット本体のカード挿入口へのカード体の挿入方向に沿って前記嵌合突起が凹溝内を移動自在としてなり、前記突起部は、前記挿入方向において凹溝並びに嵌合突起と重なる形で移動体に設けられていることを特徴とする請求項5記載のメモリカードソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−192158(P2010−192158A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32800(P2009−32800)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】