説明

メモリモジュール及び半導体記憶装置

【課題】アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作が防止できるメモリモジュールを提供する。
【解決手段】メモリモジュールに、データを入出力する単位である複数のランクに区分けされた複数の半導体記憶装置と、全ランクの半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力されたアドレス信号を該半導体記憶装置に供給するための配線であるアドレス信号配線と、ランク単位で半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力された制御信号を該半導体記憶装置に供給するための配線である制御信号配線と、制御信号配線と接続された各半導体記憶装置に対応して設けられた、半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量を持つ容量部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメモリモジュール及び該メモリモジュールに搭載される半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパーソナルコンピュータやワークステーションサーバコンピュータ等の情報処理装置では、CPUによる処理の高速化や処理ビット数の増大に伴って膨大なデータの処理が要求され、必要となる主記憶装置の記憶容量も増大している。そのため、情報処理装置の主記憶装置には、SIMM(Single Inline Memory Module)、DIMM(Dual Inline Memory Module)、あるいはMCP(Multi Chip Package)等のメモリモジュールが用いられる。
【0003】
このメモリモジュールのデータ転送速度や信頼性等を向上させる技術として、メモリモジュールとメモリコントローラとを双方向のシリアルインターフェイスで接続し、メモリ制御用のコマンドやデータの転送を可能にするAMB(Advanced Memory Buffer)が知られている。例えば、特許文献1には、メモリモジュールの入出力端子とメモリモジュールに搭載された各半導体記憶装置に対する制御信号用の配線(以下、制御信号配線と称す)やアドレス信号用の配線(以下、アドレス信号配線と称す)との間に上記AMBに対応するバッファを備え、メモリモジュールの入出力端子とデータバス用の配線との間に直列・並列変換を行うコンバータを備えた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/00734号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メモリモジュールでは、搭載された複数の半導体記憶装置に対して、ランクと呼ばれる単位でデータが入出力される。例えば4ランクのメモリモジュールでは、搭載された全半導体記憶装置が4つのランクに区分けされ、該ランク単位でメモリコントローラによりデータの書き込み・読み出しが制御される。メモリコントローラは、チップセレクト信号を用いて、データの書き込み・読み出しを行うランクの半導体記憶装置を指定し、該指定した半導体記憶装置に対して所要のコマンドを出力する。すなわち、メモリモジュールに搭載された各半導体記憶装置にはランク単位で制御信号が供給される。ここで、メモリモジュール内では、指定されたランク以外の半導体記憶装置は動作しないため、アドレスバスやデータバスを全ランクで共用することで、メモリモジュールの基板(モジュール基板)に形成する配線数を低減している。
【0006】
ところで、AMB技術を採用したメモリモジュールでは、アドレス信号及び制御信号に対応してそれぞれAMB用のバッファが設けられる。上述したようにアドレス信号配線は全ランクで共用されるため、図10(a)に示すようにアドレス信号配線1には全ランクの半導体記憶装置が縦列接続される。図10(a)に示す例では、半導体記憶装置としてDRAMが用いられ、負荷となるDRAMの数(DRAM負荷数)は20である。一方、制御信号はランク単位で供給されるため、図10(b)に示すように制御信号配線2には制御対象のランクの半導体記憶装置のみが縦列接続される。図10(b)に示す例では、負荷となるDRAMの数(DRAM負荷数)は5である。なお、図10(a)に示すR0〜R3はランク0〜3を意味し、図10(b)に示すR0はランク0を意味する。また、図10(a)、(b)に示すBufferはAMB用のバッファであり、Rttは信号の反射を低減するための終端抵抗である。図10(a)、(b)は、ランクR0〜R3として用いられる4つのメモリチップ(DRAMチップ)が1つのパッケージに収容されたDRAM0〜4が、モジュール基板に搭載されたメモリモジュールを例示している。
【0007】
したがって、アドレス信号配線1と制御信号配線2とでは、各々の配線長がほぼ同一であっても負荷容量が異なり、接続されるDRAM負荷数に応じて信号の伝搬遅延時間に差が生じる。特に、縦列接続されたDRAMのうち、上記AMB用のバッファからより遠い位置で接続される後段のDRAMほど、アドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差が大きくなる。
【0008】
例えば、図11に示すように、バッファに最も近いDRAM0に対するアドレス信号の伝搬遅延時間Ta0と制御信号の伝搬遅延時間Tb0の差と、バッファから最も遠いDRAM4に対するアドレス信号の伝搬遅延時間Ta4と制御信号の伝搬遅延時間Tb4の差とを比べると、Ta0とTb0の差よりもTa4とTb4の差が非常に大きいことが分かる。この伝搬遅延時間の差は、メモリモジュールに搭載される各DRAMが高速化するほど、その動作に大きく影響するため、メモリモジュールのさらなる高速化を目指す場合に大きな問題となる。すなわち、半導体記憶装置が高速化するほど、伝搬遅延時間の差に伴ってタイミングマージンが低下するため、アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作の可能性が高くなる。
【0009】
誤動作を防止するために、例えば最も遅れて到着する信号の伝搬遅延時間を考慮して、ランク毎に各半導体記憶装置の動作タイミングを決定する手法も考えられる。しかしながら、そのような手法は、半導体記憶装置としてクロックに同期して動作するSDRAM(Synchronous DRAM)等を用いると、1クロック周期〜数クロック周期の期間で動作を停止させる必要があり、高速化に逆行することになるため、採用し難い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のメモリモジュールは、データを入出力する単位である複数のランクに区分けされた複数の半導体記憶装置と、
全ランクの前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力されたアドレス信号を該半導体記憶装置に供給するための配線であるアドレス信号配線と、
前記ランク単位で前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力された制御信号を該半導体記憶装置に供給するための配線である制御信号配線と、
前記制御信号配線と接続された各半導体記憶装置に対応して設けられた、前記半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量を持つ容量部と、
を有することを特徴とする。
【0011】
上記のようなメモリモジュールでは、アドレス信号配線の負荷容量と制御信号配線の負荷容量との差に等しい、半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量を持つ容量部が、各半導体記憶装置に対応して制御信号配線に設けられているため、制御信号の伝搬遅延時間が増大して、負荷容量の差に起因して発生するアドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作を防止できるメモリモジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のメモリモジュールの第1の実施の形態の一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した容量パッドの配置例を示す模式図である。
【図3】図1に示した容量パッドの配置例を示す模式図である。
【図4】図1に示した容量パッドの配置例を示す模式図である。
【図5】本発明のメモリモジュールの第2の実施の形態の一構成例を示すブロック図である。
【図6】半導体記憶装置の一構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の半導体記憶装置が備える容量アレイ回路の一構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明のメモリモジュールの第3の実施の形態の一構成例を示すブロック図である。
【図9】図7に示した容量アレイ回路の設定例を示す模式図である。
【図10】背景技術のメモリモジュールにおけるDRAMの接続例を示す模式図である。
【図11】図10に示した配線における信号の伝搬遅延時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明のメモリモジュールの第1の実施の形態の一構成例を示すブロック図であり、図2〜4は図1に示した容量パッドの配置例を示す模式図である。図1(a)はアドレス信号配線に対して負荷容量Cdieを備えた20台のDRAM(全ランク)が縦列接続された様子を示し、図1(b)は制御信号配線に対して負荷容量Cdieを備えた5台のDRAM(1ランク分)が縦列接続された様子を示している。
【0015】
図1(b)に示すように、第1の実施の形態のメモリモジュールは、制御信号配線2に複数の容量パッド(Pad)10を接続し、該容量パッド10と該容量パッドPadが形成された配線層と隣接するプレーン層(例えば、Vddプレーン(Plane))間の寄生容量C_padにより制御信号の伝搬遅延時間を増大させ、アドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減する例である。容量パッド10は、例えばモジュール基板に搭載される各DRAMに対応して、該DRAMの近傍にて、制御信号配線2にそれぞれ接続される。
【0016】
寄生容量C_padの値は、容量パッド10の面積で調整可能であり、例えば図1(a)、(b)に示す4ランク構成のメモリモジュールの場合、上述したようにDRAM1台当たりの負荷容量をCdieとすると、C_pad=3×Cdieに設定すればよい。すなわち、アドレス信号配線1の負荷容量と制御信号配線2の負荷容量とが一致するように、(ランク数−1)×Cdieに等しい容量C_padを持つ容量パッド10を、各DRAMに対応して制御信号配線2にそれぞれ接続すればよい。
【0017】
なお、図1(a)では、1つのアドレス信号配線1に対して全ランクのDRAMが接続された様子を示しているが、実際のメモリモジュールには複数のアドレス信号配線1が存在し、各アドレス信号配線1に全ランクのDRAMがそれぞれ接続されている。また、図1(b)では、1つの制御信号配線2に対してランク単位でDRAMが接続された様子を示しているが、実際のメモリモジュールには複数の制御信号配線2が存在し、各制御信号配線2にランク単位でDRAMがそれぞれ接続されている。さらに、図1(a)、(b)では、ランクR0〜R3として用いられる4つのDRAMチップが1つのパッケージに収容されたDRAM0〜4が、モジュール基板に搭載されたメモリモジュールを例示している。このことは、以下の第2の実施の形態及び第3の実施の形態においても同様である。
【0018】
図2〜図4に示すように、モジュール基板は、多層基板であり、DRAM等が搭載される表面層(Layer1)と、制御信号配線が形成される配線層(Layer2)と、電源Vddを供給するためのVddプレーン層(Layer3)とを備えている。
【0019】
図2は、DRAMが接続されるDRAM搭載パッド20の近傍で、制御信号配線2上に1つの容量パッド(Pad)10が配置される例を示している。ここで、該容量パッド10の長さをa1とし、幅をb1とし、配線層(Layer2)とVddプレーン層(Layer3)間の距離をhとしたとき、寄生容量C_padは、εr×ε0×((a1×b1)/h)で求めることができる。なお、ε0は真空の誘電率、εrは配線層(Layer2)とVddプレーン層(Layer3)間の媒質の比誘電率である。例えば、a1=6.78mm、b1=1mm、h=0.08mm、εr=4(ガラスエポキシ)とした場合、寄生容量C_padは、C_pad=4×8.854×10-12×((6.78×10-3×1×10-3)/0.08×10-3)=3pFとなる。
【0020】
図3は、制御信号配線2上に複数の容量パッド(Pad)11を配置した例を示している。また、図4は、制御信号配線2と並列に複数の容量パッド(Pad)12を接続した例を示している。図3及び図4は、図2に示した容量パッド10の寄生容量Cpadを10個の容量パッド11,12で実現する構成例を示している。
【0021】
例えば寄生容量Cpadを10個の容量パッド11で実現する場合、各容量パッド11の容量はC_pad/10に設定すればよい。図4に示す容量パッド12についても同様である。
【0022】
例えば、各容量パッド11の長さをa2とし、幅をb2とし、配線層(Layer2)とVddプレーン層(Layer3)間の距離をhとし、a2=1.36mm、b2=0.5mm、h=0.08mm、εr=4(ガラスエポキシ)である場合、容量パッド11の寄生容量C_pad2は、C_pad2=4×8.854×10-12×((1.36×10-3×0.5×10-3)/0.08×10-3)=0.3pFとなる。
【0023】
図3及び図4に示す構成では、1つの容量パッド11(または12)の面積を図2に示した容量パッド10よりも小さくすることが可能であり、図2に示した構成に比べて容量パッドを配置するための設計自由度が向上する。なお、図4に示す複数の容量パッド12に代えて、図2に示した1つの容量パッド10を制御信号配線2と並列に接続してもよい。
【0024】
本実施形態のメモリモジュールによれば、アドレス信号配線1の負荷容量と制御信号配線2の負荷容量との差に等しい、半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量を持つ容量パッドが、各半導体記憶装置に対応して制御信号配線2に設けられているため、制御信号の伝搬遅延時間が増大して、負荷容量の差に起因して発生するアドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減できる。したがって、アドレス信号と制御信号のタイミングマージンが向上し、アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作が防止される。
(第2の実施の形態)
図5は本発明のメモリモジュールの第2の実施の形態の一構成例を示すブロック図である。図5(a)はアドレス信号配線1に対して負荷容量Cdieを備えた20台のDRAM(全ランク)が縦列接続された様子を示し、図5(b)は制御信号配線2に対して負荷容量Cdieを備えた5台のDRAM(1ランク分)が縦列接続された様子を示している。
【0025】
図5(b)に示すように、第2の実施の形態のメモリモジュールは、制御信号配線2と電源Vdd間にチップコンデンサ(容量部)30を挿入し、該チップコンデンサ30の容量Ccapにより制御信号の伝搬遅延時間を増大させ、アドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減する例である。チップコンデンサ30は、モジュール基板に搭載された各DRAM近傍において、制御信号配線2と電源ライン間にそれぞれ挿入すればよい。
【0026】
チップコンデンサ30の容量Ccapの値は、図5(a)、(b)に示す4ランク構成のメモリモジュールの場合、DRAM1台当たりの負荷容量をCdieとすると、第1の実施の形態と同様に、Ccap=3×Cdieに設定すればよい。すなわち、アドレス信号配線1の負荷容量と制御信号配線2の負荷容量とが一致するように、(ランク数−1)×Cdieに等しい容量Ccapのチップコンデンサ30を、各DRAMに対応して制御信号配線2にそれぞれ接続すればよい。
【0027】
本実施形態のメモリモジュールによれば、制御信号配線2の負荷容量とアドレス信号配線1の負荷容量との差に等しい、半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量のチップコンデンサ30を各半導体記憶装置に対応して制御信号配線2に接続することで、第1の実施の形態のメモリモジュールと同様に、制御信号の伝搬遅延時間が増大して、負荷容量の差に起因して発生するアドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減できる。したがって、アドレス信号と制御信号のタイミングマージンが向上し、アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作が防止される。
(第3の実施の形態)
上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、モジュール基板上の制御信号配線2に容量パッド10(11、12)やチップコンデンサ30等の容量部を接続することで、アドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減する手法を示した。
【0028】
第3の実施の形態のメモリモジュールは、モジュール基板に搭載される各半導体記憶装置内に、上記伝搬遅延時間の差を調整するための容量部を設ける例である。
【0029】
まず、モジュール基板に搭載される半導体記憶装置について図面を用いて簡単に説明する。
【0030】
図6は半導体記憶装置の一構成例を示すブロック図である。なお、図6はSDRAM(Synchronous DRAM)の一構成例を示している。
【0031】
図6に示すように、半導体記憶装置100は、データを格納するための複数のメモリセルから構成されるメモリセルアレイ101と、メモリセルに格納されたデータを読み出すための複数のセンスアンプ102と、データの書き込み/読み出しを行うメモリセルにアクセスするためのアドレス信号をデコードするロウデコーダ103及びカラムデコーダ104と、メモリセルに書き込むデータ及びメモリセルから読み出されたデータを一時的に保持するラッチ回路105と、ロウデコーダ103に供給するロウアドレスを一時的に保持するロウアドレスバッファ106と、カラムデコーダ104に供給するカラムアドレスを一時的に保持するカラムアドレスバッファ107と、半導体記憶装置100を各種動作モードに設定するために外部から供給される制御コマンドをデコードするコマンドデコーダ108と、アドレス信号Addressを用いて設定される、CASレイテンシー(Latency)、バースト長、バーストタイプ等のモード設定情報を保持するモードレジスタ109と、メモリセルアレイ101に対するデータの書き込み動作及びメモリセルアレイ101からのデータの読み出し動作を制御するデータ制御回路110と、モードレジスタ109の出力信号にしたがって、ロウアドレスバッファ106、カラムアドレスバッファ107、ロウデコーダ103、カラムデコーダ104、センスアンプ102、データ制御回路110等の動作を制御する制御回路111と、外部から供給されるクロック信号CK、/CK及びCKE(CK Enable)を用いて半導体記憶装置100内部の各回路が動作するためのクロックを生成するクロック生成回路112と、外部から供給されるデータを受信してラッチ回路105へ供給すると共に、ラッチ回路105から出力されたデータを外部へ送出するデータ入出力バッファ113と、外部から供給されるデータをデータ入出力バッファ113で受信するためのタイミング信号、データ入出力バッファ113から外部へデータを出力するためのタイミング信号を生成するDLL(Digital Locked Loop)回路114とを有する構成である。なお、図6は、8バンク(Bank0〜7)のメモリセルアレイ101を備える半導体記憶装置100の構成例を示している。図6に示す半導体記憶装置100には、例えば周知のリフレッシュ動作を制御する回路やバースト動作を制御する回路等、所要の機能を実現するための回路をさらに備えていてもよい。メモリモジュールに搭載される半導体記憶装置は、図6に示した構成に限定されるものではなく、周知のどのような半導体記憶装置であってもよい。
【0032】
本実施形態の半導体記憶装置は、以下に示す容量アレイ回路をさらに備えた構成である。
【0033】
図7は本発明の半導体記憶装置が備える容量アレイ回路の一構成例を示すブロック図であり、図8は本発明のメモリモジュールの第3の実施の形態の一構成例を示すブロック図である。図9は図7に示した容量アレイ回路の設定例を示す模式図である。なお、図8(a)はアドレス信号配線1に対して負荷容量Cdieを備えた20台のDRAM(全ランク)が縦列接続された様子を示し、図8(b)は制御信号配線2に対して負荷容量Cdieを備えた5台のDRAM(1ランク分)が縦列接続された様子を示している。
【0034】
図7に示すように、容量アレイ回路40は、容量値が異なる複数の第1容量部41、第2容量部42及び第3容量部43と、第1容量部41〜第3容量部43と半導体記憶装置が備える制御信号用の入出力パッド50とを接続または切断するためのスイッチ部となる複数のAF(Anti-Fuse)回路60とを備えた構成である。図7は、容量が1pFの3つの第1容量部411〜413、容量が0.2pFの3つの第2容量部421〜423、容量が0.1pFの3つの第3容量部431〜433を備えた例を示している。第1容量部411〜413は直列に接続され、第2容量部421〜423は直列に接続され、第3容量部431〜433は直列に接続されている。また、直列に接続された第1容量部411〜413と、直列に接続された第2容量部421〜423と、直列に接続された第3容量部431〜433とは、並列に接続されている。
【0035】
第1容量部41〜第3容量部43は、例えばトランジスタやダイオード等の拡散層の寄生容量で実現すればよい。通常、半導体記憶装置の入出力パッドにはESD(Electro-Static Discharge)保護回路が接続されているため、例えば第1容量部41〜第3容量部43として、該ESD保護回路と同一の回路を形成し、該回路が備えるトランジスタ等の拡散層の寄生容量を利用すればよい。ESD保護回路は、例えば特開2004−063754号公報に記載された回路で実現できる。
【0036】
AF回路60は、例えばアンチヒューズ素子を用いて形成すればよい。アンチヒューズ素子は、通常は開放状態にあり、高電圧を印加することで短絡する素子である。アンチヒューズ素子の開放/短絡は、例えば半導体記憶装置のテスト用の制御信号であるDFT信号を用いて制御すればよい。DFT信号は半導体記憶装置がモジュール基板に搭載されている状態でも入出力パッド50等から入力することが可能であり、上記モードレジスタ109へ所定のコードを入力することで半導体記憶装置をテストモードへ移行させた後、DFT信号を用いてAF回路60の開放/短絡を設定すればよい。AF回路60は、例えば特開2003−317496号公報に記載された構成で実現できる。
【0037】
図7に示した容量アレイ回路40は、第1容量部41〜第3容量部43をそれぞれ3台備える構成であるため、第1容量部41〜第3容量部43毎にそれぞれ2ビットのDFT信号を用いれば、入出力パッド50に対する第1容量部41〜第3容量部43毎の接続数を制御できる。図7は、DFT[1:0]を用いて第1容量部411〜413の接続数を制御し、DFT[3:2]を用いて第2容量部421〜423の接続数を制御し、DFT[5:4]を用いて第3容量部431〜433の接続数を制御する例を示している。なお、容量アレイ回路40の構成は、図7に示した構成に限定されるものではなく、所定の容量を持つ複数の容量部と、各容量部に対応する複数のスイッチ部(AF回路)とを備え、外部からの制御信号により各容量部と制御信号用の入出力パッド50とを接続または切断できれば、どのような構成でもよい。
【0038】
本実施形態のメモリモジュールに搭載される半導体記憶装置は、制御信号用の入出力パッド50毎に上記容量アレイ回路40を備える。容量アレイ回路40の容量Caryは、図8(a)、(b)に示す4ランク構成のメモリモジュールの場合、半導体記憶装置(DRAM)1台当たりの負荷容量をCdieとすると、第1及び第2の実施の形態と同様に、Cary=3×Cdieになるように設定する。すなわち、アドレス信号配線の負荷容量と制御信号配線の負荷容量とが一致するように、各容量アレイ回路の容量Caryを(ランク数−1)×Cdieにそれぞれ設定すればよい。
【0039】
図7に示す容量アレイ回路40は、容量アレイ回路40が備える各AF回路60の開放/短絡を設定することで、図9に示すように、容量Caryを、0pF〜3.9pFの範囲において0.1pF単位で設定できる。
【0040】
図7に示したように、通常、半導体記憶装置の入出力パッド50には、パッド自体の寄生容量C_pad、初段回路(例えば、上記コマンドデコーダ108)70が備えるトランジスタのゲート電極の容量C_gate、ESD保護回路80が備えるトランジスタの寄生容量C_esdが既に接続されていると考えられる。また、入出力パッド50と、初段回路70、ESD保護回路80及び容量アレイ回路40とを接続する内部配線90にも寄生容量C_wireがある。したがって、メモリモジュールに搭載する半導体記憶装置の入力容量(負荷容量)は、必ずしも同一であるとは限らず、またモジュール基板に形成されるアドレス信号配線1や制御信号配線2の寄生容量も、長さや太さが異なるために、必ずしも同一であるとは限らない。
【0041】
本実施形態によれば、メモリモジュールに搭載する各半導体記憶装置に容量アレイ回路40を備え、各容量アレイ回路40の容量Caryを制御信号配線2とアドレス信号配線1との負荷容量の差に等しい容量((ランク数−1)×Cdie)に設定することで、第1及び第2の実施の形態と同様に、制御信号の伝搬遅延時間が増大して、負荷容量の差に起因して発生するアドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差を低減できる。さらに、容量アレイ回路40の容量Caryは、第1の実施の形態や第2の実施の形態よりも、アドレス信号と制御信号の伝搬遅延時間の差がより低減するように微調整できる。したがって、アドレス信号と制御信号のタイミングマージンがさらに向上し、アドレス信号と制御信号のタイミングの不一致に起因する誤動作が防止される。
【0042】
なお、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、半導体記憶装置として、ランクR0〜R3として用いられる4つのメモリ(DRAM)チップが1つのパッケージに収容された構成例を示しているが、半導体記憶装置は、複数のチップを収容している必要はなく、メモリチップ毎に個別のパッケージに収容された構成でもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 アドレス信号配線
2 制御信号配線
10、11、12 容量パッド
20 DRAM搭載パッド
30 チップコンデンサ
40 容量アレイ回路
41、411〜413 第1容量部
42、421〜423 第2容量部
43、431〜433 第3容量部
50 入出力パッド
60 AF回路
70 初段回路
80 ESD保護回路
90 内部配線
100 半導体記憶装置
101 メモリセルアレイ
102 センスアンプ
103 ロウデコーダ
104 カラムデコーダ
105 ラッチ回路
106 ロウアドレスバッファ
107 カラムアドレスバッファ
108 コマンドデコーダ
109 モードレジスタ
110 データ制御回路
111 制御回路
112 クロック生成回路
113 データ入出力バッファ
114 DLL回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを入出力する単位である複数のランクに区分けされた複数の半導体記憶装置と、
全ランクの前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力されたアドレス信号を該半導体記憶装置に供給するための配線であるアドレス信号配線と、
前記ランク単位で前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力された制御信号を該半導体記憶装置に供給するための配線である制御信号配線と、
前記制御信号配線と接続された各半導体記憶装置に対応して設けられた、前記半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量を持つ容量部と、
を有することを特徴とするメモリモジュール。
【請求項2】
前記容量部は、
前記制御信号配線上に配置されたパッドであることを特徴とする請求項1記載のメモリモジュール。
【請求項3】
前記容量部は、
前記制御信号配線上に配置された複数のパッドであることを特徴とする請求項1記載のメモリモジュール。
【請求項4】
前記容量部は、
前記制御信号配線と並列に接続されたパッドであることを特徴とする請求項1記載のメモリモジュール。
【請求項5】
前記容量部は、
前記制御信号配線と並列に接続された複数のパッドであることを特徴とする請求項1記載のメモリモジュール。
【請求項6】
前記容量部は、
チップコンデンサであることを特徴とする請求項1記載のメモリモジュール。
【請求項7】
所定の容量を備えた複数の容量部と、
外部から供給される信号にしたがって前記容量部と制御信号用の入出力パッドとを接続または切断する、各容量部に対応して設けられた複数のスイッチ部と、
を有することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項8】
データを入出力する単位である複数のランクに区分けされた、請求項7記載の複数の半導体記憶装置と、
全ランクの前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力されたアドレス信号を該半導体記憶装置に供給するための配線であるアドレス信号配線と、
前記ランク単位で前記半導体記憶装置が縦列接続される、外部から入力された制御信号を該半導体記憶装置に供給するための配線である制御信号配線と、
を有し、
前記容量部の全容量が、
前記半導体記憶装置の入力容量と(ランク数−1)との積に等しい容量に設定されたことを特徴とするメモリモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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