説明

メラノコルチン受容体リガンドの医薬組成物

本発明は、メラノコルチン受容体(MC−R)の内の1種類以上のリガンドであるペプチド、またはその医薬的に許容できる塩類を含有する組成物、そのような組成物を調製するための方法、および哺乳類を処置するためにそのような組成物を用いる方法における向上に関する。特に、本発明はメラノコルチン受容体亜型4(MC4−R)のリガンドであるAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩を含む医薬組成物に関し、ここで、対象への皮下または筋肉内投与の後、そのペプチドは生理的pHにおいてデポーを形成し、それはゆっくりと溶解して体液および血流中へと放出される。本発明は、さらに有機性構成要素、例えばジメチルアセトアミド(DMA)または1000より低い平均分子量を有するプロピレングリコール(PEG)を含んでいてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノコルチン受容体(MC−R)の内の1種類以上のリガンドであるペプチド、またはその医薬的に許容できる塩類を含有する組成物、そのような組成物を調製するための方法、および哺乳類を処置するためにそのような組成物を用いる方法における向上に関する。特に、本発明はメラノコルチン受容体亜型4(MC4−R)のリガンドであるAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩を含む医薬組成物に関し、ここで、対象への皮下または筋肉内投与の後、そのペプチドは生理的pHにおいてデポーを形成し、それはゆっくりと溶解して体液および血流中へと放出される。本発明は、さらに有機性構成要素、例えばジメチルアセトアミド(DMA)または1000より低い平均分子量を有するプロピレングリコール(PEG)を含んでいてよい。
【背景技術】
【0002】
メラノコルチン類はプロホルモンであるプロオピオメラノコルチン(POMC;長さ131アミノ酸)の翻訳後プロセシングにより形成される調節ペプチドのファミリーである。POMCは3つのクラスのホルモンへとプロセシングされる;メラノコルチン類、副腎皮質刺激ホルモン、および様々なエンドルフィン類(例えばリポトロピン)(Cone, et al., Recent Prog. Horm. Res., 51:287-317, (1996); Cone et al., Ann. N.Y.Acad. Sci., 31:342-363, (1993))。
【0003】
メラノコルチン類は脳、副腎、皮膚、精巣、脾臓、腎臓、卵巣、肺、甲状腺、肝臓、結腸、小腸および膵臓を含む多種多様な正常なヒト組織で見付かっている(Tatro, J. B. et al., Endocrinol. 121:1900-1907 (1987); Mountjoy, K. G. et al., Science 257:1248-1251 (1992); Chhajlani, V. et al., FEBS Lett. 309:417-420 (1992); Gantz, I. et al. J. Biol. Chem. 268:8246-8250 (1993)およびGantz, I. et al., J. Biol. Chem. 268:15174-15179 (1993))。
【0004】
メラノコルチンペプチド類は、行動および記憶の制御、神経栄養および解熱特性に影響を及ぼすこと、ならびに免疫系の調節に影響を及ぼすことを含む多種多様な生理活性を示すことが示されている。副腎皮質機能への(副腎皮質刺激ホルモンまたは“ACTH”)、およびメラニン細胞への(メラニン細胞刺激ホルモンまたは“MSH”)それらのよく知られた作用は別として、メラノコルチン類は心臓血管系、鎮痛、体温調節ならびにプロラクチン、黄体形成ホルモンおよび生体アミン類を含む他の神経液性因子の放出を制御していることも示されている(De Wied, D. et al., Methods Achiev. Exp. Pathol. 15:167-199 (1991); De Wied, D. et al., Physiol. Rev. 62:977-1059 (1982); Guber, K.A. et al., Am. J. Physiol. 257:R681-R694 (1989); Walker J.M. et al., Science 210:1247-1249 (1980); Murphy, M. T. et al., Science 221:192-193 (1983); Ellerkmann, E. et al., Endocrinol. 130:133-138 (1992)およびVersteeg, D. H. G. et al., Life Sci. 38:835-840 (1986))。
【0005】
メラノコルチン類の結合部位は、涙腺および顎下腺、膵臓、脂肪、膀胱、十二指腸、脾臓、脳および生殖腺組織、ならびに悪性黒色腫を含む多くの異なる組織タイプに分布していることも示されている。現在までに5種類のメラノコルチン受容体が特性づけられている。これらには、メラニン細胞特異的受容体(MC1−R)、副腎皮質特異的ACTH受容体(MC2−R)、メラノコルチン−3受容体(MC3−R)、メラノコルチン−4受容体(MC4−R)およびメラノコルチン−5受容体(MC5−R)が含まれる。そのメラノコルチン受容体の全てが、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)のクラスのペプチドホルモンに応答する(Cone, R. D. et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 680:342-363 (1993); Cone, R. D. et al., Recent Prog. Horm. Res., 51:287-318 (1996))。
【0006】
当技術でメラニン細胞刺激ホルモン受容体(MSH−R)、メラノトロピン受容体またはメラノコルチン−1受容体として知られているMC1−Rは、Gタンパク質共役型受容体のファミリーに属する315アミノ酸の膜貫通タンパク質である。MC1−RはMSHおよびACTHの両方に関する受容体である。MC1−Rの活性は、アデニル酸シクラーゼを活性化するGタンパク質により仲介される。MC1−R受容体は、メラニン細胞および副腎皮質組織、ならびに様々な他の組織、例えば副腎、白血球、肺、リンパ節、卵巣、精巣、下垂体、胎盤、脾臓および子宮で見られる。副腎皮質刺激ホルモン受容体(ACTH−R)とも呼ばれるMC2−Rは、メラニン細胞および副腎皮質組織で見られる297アミノ酸の膜貫通タンパク質である。MC2−RはACTHの副腎皮質刺激作用を仲介する。ヒトでは、MC3−Rは脳組織で見られる360AAのタンパク質であり;マウスおよびラットでは、MC3−Rは323AAのタンパク質である。MC4−Rは332アミノ酸の膜貫通タンパク質であり、それは脳ならびに胎盤および腸組織でも発現している。MC5−Rは、副腎、胃、肺および脾臓において、ならびに非常に低いレベルで脳において発現する、325アミノ酸の膜貫通タンパク質である。MC5−Rは副腎皮質の3つの層、主にアルドステロン産生糸球帯細胞でも発現している。
【0007】
しかし、その5種類の既知のメラノコルチン受容体はそれらの機能が異なる。例えばMC1−Rは、MC1−Rの強力なアゴニストであるα−MSHに応答して色素形成を制御するGタンパク質共役型受容体である。MC1−R受容体の作動(Agonism)は結果としてメラニン細胞の刺激をもたらし、それはユーメラニンを生じさせ、皮膚の癌の危険性を増大させる。MC1−Rの作動は神経学的作用を有する可能性もある。MC2−R活性の刺激は、結果として副腎組織の癌腫を生じさせる可能性がある。最近の薬理学的確認により、中枢のMC4−R受容体はメラノコルチンのアゴニストおよびアンタゴニストに関してそれぞれ報告された食欲低下および食欲促進作用の主要な仲介因子であることが確証された。MC3−RおよびMC5−Rの作動の作用はまだ知られていない。
【0008】
肥満および悪液質のような体重の障害を処置するための新規の療法の設計のための標的として、メラノコルチン(MC−R)受容体に大きな関心が持たれてきた。遺伝学的および薬理学的証拠の両方が、中枢のMC4−R受容体を主要な標的として指し示している(Giraudo, S. Q. et al., Brain Res., 809:302-306 (1998); Farooqi, I. S. et al., NE J Med., 348:1085-1095 (2003); MacNeil, D. J. et al., Eu. J. Pharm., 44:141-157 (2002); MacNeil, D. J. et al., Eu. J. Pharm., 450:93-109 (2002); Kask, A. et al., NeuroReport, 10:707-711 (1999))。受容体選択的アゴニストおよびアンタゴニストについての現在の進歩は、メラノコルチン受容体の活性化、特にMC4−Rの療法的可能性を明示している。
【0009】
1種類以上のメラノコルチン受容体を活性化するアゴニスト、アンタゴニストまたは他のリガンド化合物は、それを必要とする、またはその危険にさらされている対象において、以下のものを含む多種多様な適応症を処置するのに有用であろう:急性および慢性の炎症性疾患、例えば一般的炎症(米国特許第6,613,874号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、炎症性腸疾患(米国特許第6,713,487号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、脳炎症(Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、敗血症(米国特許第6,613,874号;米国特許第6,713,487号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、および敗血症性ショック(米国特許第6,613,874号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004));自己免疫性構成要素を有する疾患、例えばリウマチ性関節炎(米国特許第6,713,487号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、痛風性関節炎(Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004), Getting, S. J. et al., Curr. Opin. Investig. Drugs, 2:1064-1069 (2001))、および多発性硬化症((米国特許第6,713,487号);体重増加を伴う代謝性疾患および医学的状態、例えば肥満(米国特許第6,613,874号;米国特許第6,600,015号; Fehm, H. L. et al., J. Clin. Endo. 2 Metab., 86:1144-1148 (2001); Hansen, M. J. et al., Brain Res., 1039:137-145 (2005); Ye, Z. et al., Peptides, 26:2017-2025 (2005); Farooqi, I. S. et al., NE J Med., 348:1085-1095 (2003); MacNeil, D. J. et al., Eu. J. Pharm., 44:141-157 (2002); MacNeil, D. J. et al., Eu. J. Pharm., 450:93-109 (2002); Kask, A. et al., NeuroReport, 10:707-711 (1999); Schwartz, M. W., J. Clin. Invest., 108:963-964 (2001), Gura, T., Science, 287:1738-1740 (2000), Raffin-Sanson, M. L., Eu. J. Endo., 144:207-208 (2001), Hamilton, B. S. et al., Obesity Res. 10:182-187 (2002))、摂食障害(米国特許第6,720,324号; Fehm, H. L. et al., J. Clin. Endo. 2 Metab., 86:1144-1148 (2001); Pontillo, J. et al., Bioorganic 2 Med. Chem. Ltrs., 15:2541-2546 (2005))およびプラダー−ウィリ症候群(Prader−Willi Syndrome)(GE, Y. et al., Brain Research, 957:42-45 (2002));体重減少を伴う代謝性の疾患および医学的状態、例えば食欲低下(米国特許第6,613,874号; Wisse, B. R. et al., Endo., 142:3292-3301 (2001))、食欲異常亢進(米国特許第6,720,324号)、AIDS衰弱(Marsilje, T. H. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14:3721-3725 (2004); Markison, S. et al., Endocrinology, 146:2766-2773 (2005))、悪液質(米国特許第6,613,874号; Lechan, R. M. et al., Endo., 142:3288-3291 (2001); Pontillo, J. et al., Bioorganic 2 Med. Chem. Ltrs., 15:2541-2546 (2005))、癌性悪液質(米国特許第6,639,123号)および虚弱高齢者における衰弱(米国特許第6,639,123号);糖尿病(米国特許第6,713,487号)ならびに糖尿病学的に(diabetalogical)関連する病気および糖尿病の合併症、例えば網膜障害(米国特許第6,525,019号);新生物性増殖(米国特許第6,713,487号)、例えば皮膚癌(Sturm, R.A., Melanoma Res., 12:405-416 (2002); Bastiens, M. T. et al., Am. J. Hum. Genet., 68:884-894 (2001))、および前立腺癌(Luscombe, C. J. et al., British J. Cancer, 85:1504-1509 (2001);生殖または性的な医学的状態、例えば女性における子宮内膜症(米国特許第6,713,487号)および子宮出血(米国特許第6,613,874号)、性的機能障害(米国特許第6,720,324号; Van der Ploeg, L. H. T. et al., PNAS, 99:11381-11386 (2002), Molinoff, P. B. et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 994:96-102 (2003), Hopps, C. V. et al., BJU International, 92:534-538 (2003))、勃起機能障害((米国特許第6,613,874号; Diamond, L. E. et al., Urology, 65:755-759 (2005), Wessells, H. et al., Int. J. Impotence Res., 12:S74-S79 (2000), Andersson, K-E. et al., Int. J. Impotence Res., 14:S82-S92 (2002), Bertolini, A. et. al., Sexual Behavior: Pharmacology and Biochemistry, Raven Press, NY, p 247-257 (1975); Wessells, H. et al., Neuroscience, 118:755-762 (2003), Wessells, H. et al., Urology, 56:641-646 (2000), Shadiack, A. M. et al., Society for Neuroscience Abstract, (2003); Wessells, H. et al., J. Urology, 160:389-393 (1998), Rosen, R. C. et al., Int. J. Impotence Res., 16:135-142 (2004), Wessells, H. et al., Peptides, 26:1972-1977 (2005))、ならびに男性における性的応答の減少(米国特許第6,713,487号; Fourcroy, J. L., Drugs, 63:1445-1457 (2003));生体に対する処置または傷害の結果として生じる疾患または病気、例えば臓器移植拒絶(米国特許第6,713,487号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、虚血および再潅流傷害(Mioni, C. et al., Eu. J. Pharm., 477:227-234 (2003); Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、脊髄損傷の処置および創傷治癒を促進するための処置(Sharma H. S. et al., Acta. Nerochir. Suppl., 86:399-405 (2003); Sharma H.S., Ann. N.Y. Acad. Sci. 1053: 407-421 (2005);米国特許第6,525,019号)、ならびに化学療法、放射線療法、一時的または永続的な固定により引き起こされる体重減少(Harris, R. B. et al., Physiol. Behav., 73:599-608 (2001))または透析;心血管の疾患または病気、例えば出血性ショック(Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、心原性ショック(米国特許第6,613,874号)、低血液量性ショック(米国特許第6,613,874号)、心血管障害(米国特許第6,613,874号)、および心性悪液質(Markison, S. et al., Endocrinology, 146:2766-2773 (2005);肺の疾患または病気、例えば急性呼吸窮迫症候群(米国特許第6,350,430号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))、慢性閉塞性肺疾患(米国特許第6,713,487号)、喘息(米国特許第6,713,487号)および肺線維症;免疫寛容を増進すること(Luger, T. A. et al., Pathobiology, 67:318-321 (1999))および免疫系に対する攻撃、例えば特定のアレルギー(米国特許第6,713,487号)または臓器移植拒絶(米国特許第6,713,487号; Catania, A. et al., Pharm. Rev., 56:1-29 (2004))と関係する免疫系に対する攻撃と戦うこと;皮膚科学的疾患および病気、例えば乾癬(米国特許第6,713,487号)、皮膚色素沈着喪失(米国特許第6,713,487号; Ye, Z. et al., Peptides, 26:2017-2025 (2005))、アクネ(Hatta, N. et al., J. Invest. Dermatol., 116:564-570 (2001); Bohm, M. et al., J. Invest. Dermatol., 118:533-539 (2002))、ケロイド形成(米国特許第6,525,019号)および皮膚癌(Sturm, R.A., Melanoma Res., 12:405-416 (2002); Bastiens, M. T. et al., Am. J. Hum. Genet., 68:884-894 (2001))の処置;行動、中枢神経系または神経の病気および障害、例えば不安(米国特許第6,720,324号; Pontillo, J. et al., Bioorganic 2 Med. Chem. Ltrs., 15:2541-2546 (2005))、抑うつ(Chaki, S. et al., Peptides, 26:1952-1964 (2005), Bednarek, M. A. et al., Expert Opinion Ther. Patents, 14:327-336 (2004);米国特許第6,720,324号)、記憶および記憶機能障害(米国特許第6,613,874号; Voisey, J. et al., Curr. Drug Targets, 4:586-597 (2003))、痛覚の調節(米国特許第6,613,874号; Bertolini, A. et al., J. Endocrinol. Invest., 4:241-251 (1981); Vrinten, D. et al., J. Neuroscience, 20:8131-8137 (2000))および神経障害的な痛みの処置(Pontillo, J. et al., Bioorganic 2 Med. Chem. Ltrs., 15:2541-2546 (2005));アルコール消費、アルコール乱用および/またはアルコール中毒と関係する病気および疾患(WO 05/060985; Navarro, M. et al., Alcohol Clin. Exp. Res., 29:949-957 (2005));ならびに腎臓の病気または疾患、例えば腎性悪液質(Markison, S. et al., Endocrinology, 146:2766-2773 (2005))またはナトリウム排泄増加(米国特許第6,613,874号)の処置。
【0010】
1種類以上のメラノコルチン受容体を活性化するリガンド化合物は、それを必要とする対象において、チロキシンの放出(米国特許第6,613,874号)、アルドステロンの合成および放出(米国特許第6,613,874号)、体温(米国特許第6,613,874号)、血圧(米国特許第6,613,874号)、心拍(米国特許第6,613,874号)、血管緊張(米国特許第6,613,874号)、脳血流(米国特許第6,613,874号)、血糖値(米国特許第6,613,874号)、骨の代謝、骨の形成または発達(Dumont, L. M. et al., Peptides, 26:1929-1935 (2005)、卵巣重量(米国特許第6,613,874号)、胎盤発達(米国特許第6,613,874号)、プロラクチンおよびFSHの分泌(米国特許第6,613,874号)、子宮内胎児成長(米国特許第6,613,874号)、分娩(米国特許第6,613,874号)、精子形成(米国特許第6,613,874号)、皮脂およびフェロモンの分泌(米国特許第6,613,874号)、神経保護(米国特許第6,639,123号)および神経成長(米国特許第6,613,874号)を含む多種多様な正常化または恒常性活性を調節するのに、ならびに動機付け(米国特許第6,613,874号)、学習(米国特許第6,613,874号)および他の行動(米国特許第6,613,874号)を調節するのに有用であろう。
【0011】
1回の皮下注射において向上した薬物動態パラメーターを有する許容できる持続放出プロフィールを提供する、メラノコルチン受容体の内の1種類以上のリガンド、特にMC4−Rに選択的に結合するリガンドであるペプチドを含有する組成物の向上した配合物に関する必要性が存在する。理想的には、そのような向上した持続放出配合物は、出願者自身の先行する国際公開第WO2007/008704号、第WO2008/147556号および第WO2008/156677号において開示されているようなメラノコルチン受容体の内の1種類以上に関するリガンドとして作用する新規ペプチドを含む。さらに、本発明の配合物の他の療法的作用の中には、より均一な放出プロフィールと関係する弱められた副作用および向上した有効性がある。加えて、本発明は溶液を提供し、それは透明な溶液であってよく、またはそうでなくてもよく、賦形剤を欠いており、従って製造プロセスを単純にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,613,874号
【特許文献2】米国特許第6,713,487号
【特許文献3】米国特許第6,600,015号
【特許文献4】米国特許第6,720,324号
【特許文献5】米国特許第6,639,123号
【特許文献6】米国特許第6,525,019号
【特許文献7】米国特許第6,350,430号
【特許文献8】WO 05/060985
【特許文献9】WO2007/008704
【特許文献10】WO2008/147556
【特許文献11】WO2008/156677
【非特許文献】
【0013】
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【非特許文献66】Dumont, L. M. et al., Peptides, 26:1929-1935 (2005)
【発明の概要】
【0014】
本発明の発明者らは、メラノコルチン受容体の内の1種類以上のリガンドとして作用するペプチドのパモ酸塩を含む医薬組成物の配合物はインビボでの遅い放出に理想的な溶解性を示すという驚くべき発見をした。特に好ましいのは、以下“実施例1”と呼ぶ、メラノコルチン受容体亜型4のリガンドである次のペプチドであり:Ac-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2、ここで、対象への皮下または筋肉内投与の後、そのペプチドは生理的pHにおいてデポーを形成し、それはゆっくりと溶解して体液および血流中へと放出され、それにより結果として弱められた副作用および向上した有効性をもたらす。
【0015】
本発明は、下記において以下の段落で、および特許請求の範囲において要約することができる。
(1)1観点において、本発明は、メラノコルチン受容体の内の1種類以上のリガンドとして作用するペプチドまたはその医薬的に許容できる塩を含む溶液、ゲルもしくは半固体、または懸濁液の医薬組成物に向けられており、ここでそのペプチドは対象への皮下または筋肉内投与の後デポーを形成する。
【0016】
(2)段落1に記載の医薬組成物、ここで、前記の溶液中の前記のペプチドは投与後に注射部位においてデポーを形成し、それはゆっくりと溶解して体液および血流中に放出され、ここで前記の溶液は純粋な水溶液、純粋な有機性溶液、有機性構成要素を有する水溶液、無機性構成要素を有する水溶液、または有機性および無機性構成要素の両方を有する水溶液である。
【0017】
(3)前記のペプチドが実施例1、すなわちAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2である、段落1または段落2に記載の医薬組成物。
(4)前記のペプチドがパモ酸塩の形である、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0018】
(5)さらに前記のペプチドの水溶液中での溶解性を増大させる、またはゲルまたは半固体の粘性を減少させる有機性構成要素を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0019】
(6)前記の有機性構成要素が有機性ポリマー、アルコール、DMSO、DMF、またはDMAである、段落5に記載の医薬組成物。
(7)前記の有機性ポリマーがPEGである、段落6に記載の医薬組成物。
【0020】
(8)前記のPEGが約200から約10,000までの平均分子量を有する、段落7に記載の医薬組成物。
(9)前記のペプチドをPEG200またはPEG400水溶液中で溶解させ、ここでPEGの水に対する体積対体積比が約1:99から約99:1までである、段落8に記載の医薬組成物。
【0021】
(10)前記のペプチドをPEG200またはPEG400水溶液中で溶解させ、ここでPEGの水に対する体積対体積比が約1:9から約1:1までである、段落9に記載の医薬組成物。
【0022】
(11)前記のアルコールがエタノールまたはイソプロピルアルコールである、段落6に記載の医薬組成物。
(12)前記のペプチドの重量対体積濃度が約0.1mg/mL〜約600mg/mLである、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0023】
(13)前記の組成物のpHが約3.0〜約8.0である、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
(14)前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/水溶液中で溶解させ、ここでPEG400の水に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約200mg/mLである、段落13に記載の医薬組成物。
【0024】
(15)前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG200/水溶液中で溶解させ、ここでPEG200の水に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約200mg/mLである、段落13に記載の医薬組成物。
【0025】
(16)前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/PBS溶液中で溶解させ、ここでPEG400のPBSに対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約300mg/mLである、段落13に記載の医薬組成物。
【0026】
(17)前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/生理食塩水溶液中で溶解させ、ここでPEG400の生理食塩水溶液に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約300mg/mLである、段落13に記載の医薬組成物。
【0027】
(18)さらに保存剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
(19)前記の保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、およびメチルパラベンからなるグループから選択される、段落18に記載の医薬組成物。
【0028】
(20)前記の保存剤が約0.01mg/mLから約100mg/mLまでの濃度で存在する、段落19に記載の医薬組成物。
(21)さらに等張剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0029】
(22)前記の等張剤が約0.01mg/mLから約100mg/mLまでの濃度で存在する、段落21に記載の医薬組成物。
(23)さらに安定剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0030】
(24)前記の安定剤がイミダゾール、アルギニンおよびヒスチジンからなるグループから選択される、段落23に記載の医薬組成物。
(25)さらに界面活性剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0031】
(26)さらにキレート剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
(27)さらに緩衝剤を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
(28)前記の緩衝剤がトリス、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、およびビス−トリスからなるグループから選択される、段落27に記載の医薬組成物。
【0032】
(29)さらに二価金属を含む、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
(30)前記の二価金属が亜鉛である、段落29に記載の医薬組成物。
(31)前記の溶液が透明な液体である、前記の段落のいずれか1個に記載の医薬組成物。
【0033】
本発明の好ましい態様は、実施例1、すなわちMCR−RのリガンドであるAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2に向けられているが、本発明は実施例1に決して限定されない。本発明のペプチドには、例えば、第WO2007/008704号、第WO2008/147556号および第WO2008/156677号として公開されている出願者自身の先行する国際公開番号において開示されているような、メラノコルチン受容体の内の1種類以上に関するリガンドとして作用する全てのそれらのペプチドが含まれる。これらの刊行物を、あたかもそれぞれの独立した刊行物の開示が本明細書において明確に提供されたのと同じ程度まで、本明細書に援用する。
【0034】
これらの刊行物からの以下の化合物も、本発明の医薬組成物を構成するために好都合に用いられてよい:
実施例2:Ac-D-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
実施例3:Ac-Tyr-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
実施例4:Ac-Tyr-D-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;および
実施例5:ヒダントイン(Arg-Gly)-シクロ(Cys-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1Aおよび図1Bは、200mg/mL(20% w/v)の実施例1のパモ酸塩(50% PEG400および50%水(v/v)の溶媒中で溶解させた)を含む配合物の、2.5mg/kg体重で投与されたSprague−Dawleyラットへの1回の皮下投与の後に得られた薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、それぞれ通常の目盛りで、および対数目盛りで示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、200mg/mL(20% w/v)の実施例1のパモ酸塩(50% PEG200および50%水(v/v)の溶媒中で溶解させた)を含む配合物の、2.5mg/kg体重で投与されたSprague−Dawleyラットへの1回の皮下投与の後に得られた薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、それぞれ通常の目盛りで、および対数目盛りで示す。
【図3】図3Aおよび図3Bは、300mg/mL(30% w/v)の実施例1のパモ酸塩(50% PEG400および50% PBS(v/v)の溶媒中で溶解させた)を含む配合物の、3.75mg/kg体重で投与されたSprague−Dawleyラットへの1回の皮下投与の後に得られた薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、それぞれ通常の目盛りで、および対数目盛りで示す。
【図4】図4Aおよび図4Bは、300mg/mL(30% w/v)の実施例1のパモ酸塩(50% PEG400および50%生理食塩水(v/v)の溶媒中で溶解させた)を含む配合物の、3.75mg/kg体重で投与されたSprague−Dawleyラットへの1回の皮下投与の後に得られた薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、それぞれ通常の目盛りで、および対数目盛りで示す。
【図5】図5Aおよび図5Bは、実施例1の酢酸塩(生理食塩水/2%熱非働化マウス血清/5% DMA/2% tween−80溶媒中で溶解させた)を含む配合物の、0.5mg/kg体重で投与されたSprague−Dawleyラットへの1回の皮下投与の後に得られた薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、それぞれ通常の目盛りで、および対数目盛りで示す。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、図1A〜図5Aで通常の目盛りで、同様に図1B〜5Bで対数目盛りで示したものと同じ薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、本明細書で記述するような実験において用いられた異なる配合物の並べ合わせた比較として示す。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、図1A〜図5Aで通常の目盛りで、同様に図1B〜図5Bで対数目盛りで示したものと同じ薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、本明細書で記述したような実験において用いられた異なる配合物の並べ合わせた比較として示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書においてペプチドを定義するために用いられる命名法は当技術で典型的に用いられる命名法であり、ここでN末端のアミノ基が左に見え、C末端のカルボキシル基が右に見える。そのアミノ酸が異性体の形を有する場合、別途明確に示さない限り、それは表されているアミノ酸のL型である。別途定義しない限り、全ての本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、この発明が属する技術の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0037】
本明細書で用いられる略語を次のように定義する:
Ac: アセチル
AlaまたはA: アラニン
ArgまたはR: アルギニン
CysまたはC: システイン
GluまたはE: グルタミン酸
GlyまたはG: グリシン
HisまたはH: ヒスチジン
PheまたはF: フェニルアラニン
TrpまたはW: トリプトファン
TyrまたはY: チロシン
別途示さない限り、この開示における全てのアミノ酸の略語(例えばAla)は-NH-C(R)(R’)-CO-の構造を表し、ここでRおよびR’はそれぞれ独立して水素またはアミノ酸の側鎖(例えば、Alaに関してはR = CH3およびR’ = H)であり、またはRおよびR’は繋がれて環系を形成していてよい。
【0038】
例えばAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2中の名称“NH2”は、そのペプチドのC末端がアミド化されていることを示す。
“-シクロ(Cys-Cys)-”は次の構造を意味する:
【0039】
【化1】


【0040】
本明細書でパラメーターおよび量と関連して用いられる用語“約”は、そのパラメーターまたは量がその明記されたパラメーターまたは量の±5%以内であることを意味する。
本明細書において用いられる特定の他の略語を次のように定義する:
Boc: tert-ブチルオキシカルボニル
BSA: ウシ血清アルブミン
DCM: ジクロロメタン
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン
DMF: ジメチルホルムアミド
DTT: ジチオスレイトール
Fmoc: 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
HBTU: 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HOBt: 1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
IBMX: イソブチルメチルキサンチン
パモ酸ナトリウム: 次の構造を有するパモ酸二ナトリウム塩
【0041】
【化2】

LC-MS: 液体クロマトグラフィー質量分析
LOQ: 定量限界
MRM: 多重反応モニタリング
NMP: N-メチルピロリドン
PBS: リン酸緩衝生理食塩水
PEG: ポリ(エチレングリコール)、それは次の構造を有する:
【0042】
【化3】

ここで、nは1〜2,000の整数である。
【0043】
PEG200: 約200Daの平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)
PEG400: 約400Daの平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)
TFA: トリフルオロ酢酸
TIS: トリイソプロピルシラン
Tris-HCl: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩
Trt: トリチル。
【実施例】
【0044】
合成
この発明のペプチドは、標準的な固相ペプチド合成により調製することができる。例えば、Stewart, J.M., et al., Solid Phase Synthesis (Pierce Chemical Co., 第2版 1984)を参照。以下の実施例は、この発明のペプチドを作るための合成法を記述し、その方法は当業者に周知である。他の方法も当業者に既知である。その実施例は説明のために提供するのであって、本発明の範囲を限定することを意味するものでは決して無い。
【0045】
実施例1、すなわちAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2の合成
【0046】
【化4】

上記の構造を有する表題のペプチドを、Apexペプチド合成機(Aapptec;米国ケンタッキー州ルイスビル)上でFmoc化学を用いて組み立てた。220 mgの0.91 mmol/g (0.20 mmoles)RinkアミドMBHA樹脂(Polymer Laboratories;米国マサチューセッツ州アマースト)を反応ウェルの中に置き、合成の前に3.0 mLのDMF中で予め膨潤させた。サイクル1に関して、その樹脂を3-mL分のDMF中25%ピペリジンで2回、それぞれ5および10分間処理し、続いて3-mLのDMFで4回洗浄した−それぞれの洗浄は、3 mLの溶媒の添加、1分間の混合、および1分間空にする、で構成されていた。アミノ酸のストックを、NMP中で0.45M HOBTを含有する0.45M溶液として調製した。HBTUをNMP中0.45M溶液として調製し、DIPEAをNMP中2.73M溶液として調製した。その樹脂に、2 mLの第1アミノ酸(0.9 mmoles, Fmoc-Cys(Trt)-OH) (Novabiochem;米国カリフォルニア州サンディエゴ)を、2 mL (0.9 mmoles)のHBTUおよび1.5 mL (4.1 mmoles)のDIPEAと共に添加した。1時間絶え間なく攪拌した後、そのカップリング試薬を樹脂から排出し(drained)、そのカップリングの工程を繰り返した。アミノ酸のアシル化の後、その樹脂を3-mL分割量(aliquots)のDMFで1分間×2回洗浄した。そのペプチドを組み立てるプロセス(脱ブロック/洗浄/アシレート/洗浄)を、サイクル2〜9に関して、サイクル1に関して記述したプロセスと同じで繰り返した。次のアミノ酸を用いた:サイクル2) Fmoc-Trp(Boc)-OH (Genzyme;米国マサチューセッツ州ケンブリッジ); サイクル3) Fmoc-Arg(Pbf)-OH (Novabiochem); サイクル4) Fmoc-DPhe-OH (Genzyme); サイクル5) Fmoc-His(Trt)-OH (Novabiochem); サイクル6) Fmoc-D-Ala-OH (Genzyme); サイクル7) Fmoc-Cys(Trt)-OH, (Novabiochem); およびサイクル8) Fmoc-Arg(Pbf)-OH (Genzyme)。そのN末端Fmocを、上記のようにDMF中25%ピペリジンを用いて除去し、続いて3-mLのDMFでの洗浄を1分間×4回行った。N末端のアセチル化を、0.5 mLのNMP中3M DIPEAを1.45 mLのNMP中0.45M無水酢酸と共に樹脂に添加することにより実施した。その樹脂を30分間混合し、アセチル化を繰り返した。その樹脂を3 mLのDMFで合計5回洗浄し、続いてそれぞれ5 mLのDCMで5回洗浄した。
【0047】
そのペプチドを切断および脱保護するため、5mLの次の試薬をその樹脂に添加した:2% TIS/5% 水/5% (w/v) DTT/88% TFA。その溶液を3.5時間混合させた。濾液を40 mLの冷無水エチルエーテル中に集めた。沈殿物を冷却遠心機で3500 rpmで10分間遠心分離してペレットにした。エーテルをデカントし、ペプチドを新しいエーテル中で再懸濁した。そのエーテルでの仕上げを3回行った。最後のエーテルでの洗浄の後、そのペプチドを空気乾燥させて残留するエーテルを除去した。
【0048】
そのペプチドを10%アセトニトリル中で溶解させ、質量分析および30x4.6cm C18カラム(Vydac;米国カリフォルニア州ヘスペリア)を30分間にわたる2〜60%アセトニトリル(0.1% TFA)の勾配で用いる逆相HPLCにより分析した。この分析は生成物が約53%の純度であることを確認した。電子スプレーイオン化を用いる質量分析は、望まれる線状生成物に相当する1118.4の質量を含有する主生成物を同定した。その粗生成物(約100 mg)を5%酢酸中で2mg/mLの濃度に希釈した。この溶液に、強く攪拌しながら0.5Mヨウ素/メタノールを淡黄色になるまで滴加した。その溶液をさらに10分間強く攪拌した。次いで、連続的な混合の下で1.0Mチオ硫酸ナトリウムをその混合物が無色になるまで添加することにより、過剰なヨウ素を停止した(quenched)。そのペプチドを質量分析およびHPLCにより再度検査した。質量分析は1116.4の質量を有する主な種を同定し、それは酸化が成功して環状ペプチドが形成されたことを示していた。そのペプチド溶液を、C18カラムを備えた分取HPLC上で、類似の溶離勾配を用いて精製した。その精製された生成物を、HPLCにより純度に関して(>95%)、および質量分析により(1116.9、それは予想される質量である1117.3と一致する)再度分析し、続いて凍結乾燥した。凍結乾燥の後、28 mgの精製された生成物が得られ、これは24%の収率に相当する。
【0049】
他の例示されたペプチドを、実質的に上記の合成プロセスに関して記述した手順に従って合成した。選択された例示されたペプチドに関する物理的データを表1に示す。
【0050】
【表1】

実施例1のパモ酸塩の調製
実施例1の酢酸塩(200 mg, 0.18 mmole)を10 mLの水中で溶解させた。パモ酸ナトリウム(155 mg, 0.36 mmole)を10 mLの水中で溶解させた。その2つの溶液を合わせてよく混合した。沈殿を3000 rpmで20分間の遠心分離により集め、水で3回洗浄し、凍結乾燥により乾燥させた。
【0051】
インビトロ試験
本発明の化合物は、下記の手順に従ってメラノコルチン受容体の内の1種類以上のリガンドとしての活性に関して試験することができ、試験した。当業者は、本発明の化合物のメラノコルチン受容体分子への結合活性をアッセイするために、本明細書で記述した手順に類似の手順を用いてよいことを知っているであろう。
【0052】
放射リガンド結合アッセイ
インビトロ受容体結合アッセイのために用いられる細胞膜を、hMC-R受容体亜型1、3、4または5を安定して発現するトランスジェニックCHO-K1細胞から得た。望まれるhMC-R受容体亜型を発現するCHO-K1細胞を、氷冷したpH 7.4の50mM Tris-HCl中で超音波処理し(Branson(登録商標),コネチカット州、米国;設定7、おおよそ30秒間)、次いでおおよそ4℃の温度において39,000 gで10分間遠心分離した。そのペレットを同じ緩衝液中で再懸濁し、おおよそ4℃の温度において50,000 gで10分間遠心分離した。細胞膜を含有する洗浄したペレットを、おおよそ−80℃で保管した。
【0053】
[125I](Tyr2)-(Nle4-D-Phe7)α-MSH ([125I]-NDP-α-MSH; Amersham Biosciences(登録商標),米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)結合の競合阻害を、ポリプロピレン96ウェルプレートにおいて実施した。上記のように調製した細胞膜(1〜10μgタンパク質/ウェル)を、0.2% BSA、5 mM MgCl2、1 mM CaCl2および0.1 mg/mLバシトラシンを含有するpH 7.4の50 mM Tris-HCl中で、増大する濃度の試験化合物および0.1〜0.3 nM [125I]-NDP-α-MSHと共に、おおよそ37℃においておおよそ90〜120分間保温した。結合した[125I]-NDP-α-MSHリガンドを遊離の[125I]-NDP-α-MSHから、Packard Filtermate(登録商標)ハーベスター(Millipore,米国マサチューセッツ州ダンバース)を用いて、0.1 % (w/v)ポリエチレンイミン(PEI)に予め浸したGF/Cグラスファイバーフィルタープレート(Unifilter(登録商標),米国コネチカット州メリデン)を通す濾過により分離した。フィルターをおおよそ0〜4℃の温度においてpH 7.4の50 mM Tris-HClで3回洗浄し、次いでPackard Topcount(登録商標)シンチレーションカウンター(GMI, Inc.,米国ミネソタ州ラムゼイ)を用いて放射活性に関してアッセイした。結合データを、コンピューター支援非線形回帰分析(XL fit; IDBS,米国マサチューセッツ州バーリントン)により分析した。
【0054】
好ましい態様の選ばれたものを、上記で論じたアッセイを用いて試験し、その結合定数(nMでのKi)を表2で報告する。
【0055】
【表2】

環状AMPバイオアッセイ
細胞内の環状AMP (cAMP)レベルを、電気化学発光(ECL)アッセイ(Meso Scale Discovery,米国メリーランド州ゲイザースバーグ;以下“MSD”と呼ぶ)により決定した。hMC-R受容体亜型を安定して発現するCHO-K1細胞を、RMPI 1640(登録商標)アッセイ緩衝液(RMPI 1640緩衝液は0.5mM IBMX、および0.2%タンパク質カクテル(MSDブロッカーA)を含有する)中で懸濁した。hMC受容体亜型1、3、4または5を安定して発現するトランスジェニックCHO-K1細胞を、組み込まれた(integrated)炭素電極を含有し、抗cAMP抗体でコートされた384-ウェルMulti-Arrayプレート(MSD)中で、おおよそ7,000細胞/ウェルの密度で分配した。増大する濃度の試験化合物を添加し、その細胞をおおよそ37℃でおおよそ40分間保温した。この保温の後、0.2%タンパク質カクテルおよび2.5 nM TAG(商標)ルテニウム標識cAMP (MSD)を含有する溶解緩衝液(ph 7.3の、MgCl2およびTriton X-100(登録商標)を含むHEPES緩衝生理食塩水溶液)を添加し、細胞を室温でおおよそ90分間保温した。その第2の保温期間の終わりに、読み取り緩衝液(ph 7.8の、ECL共反応物およびTriton X-100を含有するTris緩衝溶液)を添加し、Sector Imager 6000読み取り装置(登録商標)(MSD)を用いたECL検出により、細胞溶解物中のcAMPレベルを直ちに決定した。データをコンピューター支援非線形回帰分析(XL fit; IDBS)を用いて分析し、EC50値またはKb値のどちらかとして報告した。
【0056】
EC50は、最大反応応答の50%、例えば上記のアッセイを用いて決定されるようなcAMPの最大レベルの50%を得るのに必要なアゴニスト化合物の濃度を表す。Kb値はアンタゴニストの強度を反映し、Schild分析により決定される。簡潔には、増大する濃度のアンタゴニストの存在下で、アゴニストの濃度−反応曲線を実施する。Kb値はアゴニストに関する濃度−反応曲線において2倍のシフトを生じるであろうアンタゴニストの濃度である。それはy軸上でSchildプロット上の線をゼロに外挿することにより計算される。
【0057】
化合物の選ばれたものを上記で論じたアッセイを用いて試験し、その結果を表3で報告する。
【0058】
【表3】

可溶性試験
実施例1のパモ酸塩の配合物の調製
実施例1のパモ酸塩(50mg)を微量遠心チューブの中に量って入れ、125μLのPEG400および125μLの水をその後に添加した。溶解を促進するため、その混合物を超音波処理した。透明な溶液が得られる可能性があり、得られた。
【0059】
実施例1の酢酸塩の可溶性を、特定の量のそのペプチドを量り、それを適切な体積の水、生理食塩水、またはPBS中で溶解させることにより決定し、その結果を表4Aで示す。
【0060】
【表4】

実施例1のパモ酸塩の溶解度を、そのペプチドを水またはPBS中で混合し、続いて上清中の濃度をHPLCで決定することにより決定し、その結果を表4Bで示す。
【0061】
【表5】

実施例1の脂肪酸塩の配合物の薬物動態試験
実施例1の以下の“配合物1〜6”を調製した:
(1)“配合物1”:50% PEG400および50%水(v/v)の溶液中で200mg/mL(20% w/v)の濃度で溶解させた実施例1のパモ酸塩。
【0062】
(2)“配合物2”:50% PEG200および50%水(v/v)の溶液中で200mg/mL(20% w/v)の濃度で溶解させた実施例1のパモ酸塩。
(3)“配合物3”:50% PEG400および50% PBS(v/v)の溶液中で300mg/mL(30% w/v)の濃度で溶解させた実施例1のパモ酸塩。
【0063】
(4)“配合物4”:50% PEG400および50%生理食塩水(v/v)の溶液中で300mg/mL(30% w/v)の濃度で溶解させた実施例1のパモ酸塩。
(5)“配合物5”:生理食塩水/2%熱非働化マウス血清/5% DMA/2% tween−80溶液中で溶解させた実施例1の酢酸塩。
【0064】
投与
配合物1および2に関して、Sprague−Dawleyラットに5μL/ラットもしくは1.0mg/ラットのどちらかの固定された量、または2.5mg/kg体重の変動可能な量で皮下注射により投与した。
【0065】
配合物3および4に関して、Sprague−Dawleyラットに5μL/ラットもしくは1.5mg/ラットのどちらかの固定された量、または3.75mg/kg体重の変動可能な量で皮下注射により投与した。
【0066】
配合物5に関して、Sprague−Dawleyラットに0.5mg/kg体重の変動可能な量で皮下注射により投与した。
試料の調製
配合物1および2に関して、100μLの血漿を5μLのギ酸で酸性化し、300μLのアセトニトリルで沈殿させた。その上清を遠心分離により集め、speed−vacにより乾燥させた。その乾燥したペレットを100μLの水中で溶解させ、次いでそれを遠心分離した。その調製物の50μLを、LC−MS/MS分析のために注入した。
【0067】
配合物3および4に関して、200μLの血漿を10μLのギ酸で酸性化し、600μLのアセトニトリルで沈殿させた。その上清を遠心分離により集め、speed−vacにより乾燥させた。その乾燥したペレットを150μLの水中で溶解させ、次いでそれを遠心分離した。その調製物の50μLを、LC−MS/MS分析のために注入した。
【0068】
配合物5に関して、200μLの血漿を10μLのギ酸で酸性化し、600μLのアセトニトリルで沈殿させた。その上清を遠心分離により集め、speed−vacにより乾燥させた。その乾燥したペレットを150μLの30%アセトニトリル中で溶解させ、次いでそれを遠心分離した。その調製物の50μLを、LC−MS/MS分析のために注入した。
【0069】
LC−MS/MS分析
配合物1および2に関して、Turbo Ionsprayプローブを備えたAPI4000質量分析システムを用いてLC−MS/MS分析を実施した。559.5および110.1のイオン対での分子イオン検出のMRMモードを用いた。HPLC分離を、Luna C8(2) 2×30mm 3μカラムで、0.3mL/分の流速において10分間で0%Bから80%Bまで動かして実施した。緩衝液Aは水中1%ギ酸であり、緩衝液Bはアセトニトリル中1%ギ酸である。LOQは5ng/mLであった。
【0070】
配合物3および4に関して、Turbo Ionsprayプローブを備えたAPI4000質量分析システムを用いてLC−MS/MS分析を実施した。559.5および110.1のイオン対での分子イオン検出のMRMモードを用いた。HPLC分離を、Luna C8(2) 2×30mm 3μカラムで、0.3mL/分の流速において10分間で0%Bから80%Bまで動かして実施した。緩衝液Aは水中1%ギ酸であり、緩衝液Bはアセトニトリル中1%ギ酸である。LOQは2ng/mLであった。
【0071】
配合物5に関して、Turbo Ionsprayプローブを備えたAPI4000質量分析システムを用いてLC−MS/MS分析を実施した。559.5および110.1のイオン対での分子イオン検出のMRMモードを用いた。HPLC分離を、Luna C8(2) 2×30mm 3μカラムで、0.3mL/分の流速において10分間で0%Bから90%Bまで動かして実施した。緩衝液Aは水中1%ギ酸であり、緩衝液Bはアセトニトリル中1%ギ酸である。LOQは1ng/mLであった。
【0072】
結果および要約
配合物1〜5で投与された実施例1の血漿濃度をその標準的なキャリブレーションプロットを用いて計算し、その結果を表5に示す。
【0073】
【表6】

配合物1の薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロットを、図1Aにおいて通常の目盛りで、そして図1Bにおいて対数目盛りで示す。
【0074】
配合物2の薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロットを、図2Aにおいて通常の目盛りで、そして図2Bにおいて対数目盛りで示す。
配合物3の薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロットを、図3Aにおいて通常の目盛りで、そして図3Bにおいて対数目盛りで示す。
【0075】
配合物4の薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロットを、図4Aにおいて通常の目盛りで、そして図4Bにおいて対数目盛りで示す。
配合物5の薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロットを、図5Aにおいて通常の目盛りで、そして図5Bにおいて対数目盛りで示す。
【0076】
図6Aおよび図6Bは、図1A〜図5Aで通常の目盛りで、同様に図1B〜図5Bで対数目盛りで示したものと同じ薬物動態プロフィールの完全な時間経過プロット(中央値)を、本明細書で記述したような実験において用いられた異なる配合物の並べ合わせた比較として示す。
【0077】
配合物1〜5で投与された実施例1のいくつかの薬物動態パラメーターを表6に示す。
【0078】
【表7】

その結果は、本明細書で記述したような本発明に従う実施例1の配合物が、向上した薬物動態パラメーターおよびより均一な放出プロフィールを有する許容できる持続放出配合物を提供することを示し、それは結果として弱められた副作用および向上した有効性をもたらすことができる。例えば、配合物1は1回の皮下注射の後、著しく低いCmaxおよび長いTmaxを有するおおよそ24時間の放出プロフィールを有することが示されている。さらに、表6で示したように、実施例1のパモ酸塩配合物、すなわち配合物1〜4の全てが実施例1の酢酸塩配合物、すなわち配合物5と比較して著しく増大したT1/2を有することが示されている。
【0079】
本発明の追加の態様は前記の開示から明らかであると考えられ、本明細書で完全に記述され、下記の特許請求の範囲で定義される通りの本発明に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノコルチン受容体の内の1種類以上のリガンドとして作用するペプチドまたはその医薬的に許容できる塩を含む溶液、ゲルもしくは半固体、または懸濁液の医薬組成物であって、そのペプチドが対象への皮下または筋肉内投与の後デポーを形成する、前記医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、前記の溶液中の前記のペプチドが投与後に注射部位においてデポーを形成し、それがゆっくりと溶解して体液および血流中に放出され、前記の溶液が純粋な水溶液、純粋な有機性溶液、有機性構成要素を有する水溶液、無機性構成要素を有する水溶液、または有機性および無機性構成要素の両方を有する水溶液である、前記医薬組成物。
【請求項3】
前記のペプチドが以下のもの:
Ac-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
Ac-D-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
Ac-Tyr-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
Ac-Tyr-D-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;または
ヒダントイン(Arg-Gly)-シクロ(Cys-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2;
またはその医薬的に許容できる塩である、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記のペプチドがAc-Arg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記の医薬的に許容できる塩がパモ酸塩である、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらに有機性構成要素を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記の有機性構成要素が有機性ポリマー、アルコール、DMSO、DMF、またはDMAである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記の有機性ポリマーがPEGである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記のPEGが約200から約10,000までの平均分子量を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記のペプチドをPEG200またはPEG400水溶液中で溶解させ、ここでPEGの水に対する体積対体積比が約1:99から約99:1までである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記のペプチドをPEG200またはPEG400水溶液中で溶解させ、ここでPEGの水に対する体積対体積比が約1:9から約1:1までである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記のアルコールがエタノールまたはイソプロピルアルコールである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記のペプチドの重量対体積濃度が約0.1mg/mL〜約600mg/mLである、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記の組成物のpHが約3.0〜約8.0である、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/水溶液中で溶解させ、ここでPEG400の水に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約200mg/mLである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG200/水溶液中で溶解させ、ここでPEG200の水に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約200mg/mLである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/PBS溶液中で溶解させ、ここでPEG400のPBSに対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約300mg/mLである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記のArg-シクロ(Cys-D-Ala-His-D-Phe-Arg-Trp-Cys)-NH2のパモ酸塩をPEG400/生理食塩水溶液中で溶解させ、ここでPEG400の生理食塩水溶液に対する体積対体積比が約1:1であり、そのペプチドの重量対体積濃度が約300mg/mLである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
さらに保存剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記の保存剤が、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、およびメチルパラベンからなるグループから選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記の保存剤が約0.01mg/mLから約100mg/mLまでの濃度で存在する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
さらに等張剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記の等張剤が約0.01mg/mLから約100mg/mLまでの濃度で存在する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
さらに安定剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記の安定剤がイミダゾール、アルギニンおよびヒスチジンからなるグループから選択される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
さらに界面活性剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
さらにキレート剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
さらに緩衝剤を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記の緩衝剤がトリス、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、グリシン、アスパラギン酸、およびビス−トリスからなるグループから選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
さらに二価金属を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記の二価金属が亜鉛である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記の溶液が透明な液体である、前記の請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2013−510879(P2013−510879A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539052(P2012−539052)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056690
【国際公開番号】WO2011/060352
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】