説明

メラミン−ホルムアルデヒドを用いて相転移性パラフィン化合物をカプセル化する方法及びそれから生じるマイクロカプセル

相転移性パラフィン化合物のマイクロカプセル化方法が記載される。400を超える平均分子量を有するポリプロピレングリコールが、パラフィン化合物を乳化するための表面張力調整剤として用いられた。マイクロカプセル化のための疎水性液滴上へのメラミン、部分メチロール化メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物の沈着を促進するために、相変化性物質中に溶解されることが可能なポリイソシアネートが用いられた。製造されたマイクロカプセル化相変化性物質の乳濁液は編織布上に成功的に塗布され、そしてこれらのコーティング製品は改善熱調節機能を示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相転移性パラフィン化合物をカプセル化する方法及び生じるマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な利用可能な相変化性物質は、それらの熱的特性について、それらの相変化段階中、該物質の温度が一定に保たれる間それらが潜熱を吸収又は放出し得ることがよく知られている。相変化性物質(特に、マイクロカプセル化形態にて)が組み込まれている繊維製品及び他の製品は、使用相変化性物質(PCM)の融点の温度範囲において、かかる改良商品の周囲で微気象を確立し得、従って快適性についての要件を満たし得る。マイクロカプセル化PCMの使用は、米国特許第4,756,958号明細書及び第5,290,904号明細書に見られ得る。
【0003】
米国特許第5,456,852号明細書及び第5,916,478号明細書は両方共、用いられるホルムアルデヒドが環境的危険を負わせ得るその場重合を用いてのマイクロカプセルの製造方法を記載する。
【0004】
有用な固有的に難燃性の相変化性物質の例は、10から22個の炭素原子を有するハロゲン化パラフィン、一層特定的には一又は多塩素化及び臭素化パラフィン(ブロモオクタデカン、ブロモペンタデカン、ブロモノナデカン、ブロモエイコサン、ブロモドコサン、等のような)を包含し得る。本発明の調査を通じて、パラフィン化合物のマイクロカプセル化は、主としてパラフィン化合物のユニークな特性に因り、その他のコア物質についての関連方法よりもはるかに困難である、ということが分かる。特に、かかるPCMは、20から110℃の範囲の融点及び溶解性・相溶性問題を有する。
【0005】
Pauseの米国特許第6,077,597号明細書は、3層を有する相互作用性の断熱性系が確立され得ることを教示する。第1層は、相変化性物質を含有する複数個のマイクロスフェアが分散されているポリマーバインダーで被覆された基材を含む高密度の層である。第2層は、分散された相変化性物質を含有する複数個のマイクロスフェアを個々の繊維が含有する低密度繊維メッシュである。第3層は、可撓性基材である。繊維メッシュは、被覆層と第3層の間にサンドイッチされている。
【0006】
上記のマイクロカプセル化方法は大いに重要であり得るけれども、それらは依然いくつかの欠点の難点があり得る。上記の方法にて製造された場合のマイクロカプセルのシェルは、特に乾燥状態で高温にて(たとえば、130℃及びそれ以上にて)加熱される(布のコーティングについて硬化段階において必要であり得る)場合、幾分透過性であり得る。更に、乳濁液中の残留ホルムアルデヒドは、効果的に制御され得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、本発明の目的は、先行技術において述べられた問題の少なくとも一つ又はそれ以上を解決することである。最低限として、本発明の目的は、公衆に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、相転移を受け得るパラフィン化合物を含むコア成分をカプセル化する方法であって、次の工程すなわち
A 第1ポリマーを形成する第1モノマーを該コア成分中に溶解して第1溶液を形成させ、
B 第1溶液を第2水溶液中に分散して乳濁液を形成させ、
C メラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物を含有する第3水溶液に該乳濁液を添加してカプセル化混合物を形成させる
工程を含む方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、第1モノマーが約400より高い平均分子量を有するポリプロピレングリコール及びコア成分に可溶なポリイソシアネートであることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、第2溶液は、少なくとも1個のアニオン性官能基を有するポリマーである少なくとも1種の保護コロイドを含む。一層好ましくは、アニオン性官能基は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの混合物から成る群から選択される。更に、アニオン性官能基は、カルボン酸基であることが好ましい。
【0011】
好ましくは、ポリイソシアネートは、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート又はそれらの混合物から成る群から選択される。ポリイソシアネートは、コア成分の重量に関して約0.2から3重量%一層好ましくは約0.3から1重量%の量にあり得る。
【0012】
その代わりに、ポリイソシアネートは、コア成分の融点より約5℃高い温度にてコア成分中に溶解される。
【0013】
好ましくは、第1溶液は、コア成分の融点より約5℃高い温度にて第2溶液中に分散される。
【0014】
本発明の方法はまた、次の選択肢を有し得る。
・第2溶液は、約4から7好ましくは約4.7から6一層好ましくは約5.5から5.7のpHを有する。
・保護コロイドは、第2溶液の重量に関して約1から3重量%一層好ましくは1.5から2.5重量%の量にある。
・第1溶液は、約2000回転毎分の撹拌速度にて約10から15分間第2溶液中に分散される。
・メラミン及びホルムアルデヒドは、約1:3好ましくは1:2一層好ましくは1:1.3から1:1.8(メラミン:ホルムアルデヒド)のモル比にある。
・メラミン及びホルムアルデヒドは、約70℃にて及び約1から1.5時間混合されて初期縮合物を形成する。
・乳濁液は、約400から600回転毎分の撹拌速度にて第3溶液に添加される。
・カプセル化混合物のpHは、約4〜7好ましくは4.7〜6一層好ましくは5.5〜5.7に調整される。
【0015】
好ましくは、本発明の方法はまた、カプセル化混合物の温度を約70〜80℃に上げる工程を含み得る。カプセル化混合物の温度を約70から80℃に約1から5時間一層好ましくは約2から4時間維持する追加工程。随意に、本発明の方法はまた、少なくとも1種のホルムアルデヒドスカベンジャーをカプセル化混合物に添加する工程を含み得、しかしてホルムアルデヒドスカベンジャーは、エチレン尿素、ジエチレングリコール又はそれらの混合物から成る群から選択される。ホルムアルデヒドスカベンジャーは、乳濁液混合物の重量に関して0.1から1重量%好ましくは0.3から0.6重量%の量にあることが好ましい。加えて、ホルムアルデヒドスカベンジャーは、カプセル化混合物の温度を約70から80℃に維持する工程の終わりの約0.5から1時間前に添加される。更に、カプセル化混合物のpHは、カプセル化混合物の温度を約70から80℃に維持する工程の終わり後に約7.5に調整され得る。
好ましい具体的態様の詳細な説明
【0016】
さて、本発明は、以下のパラグラフにおいて図面を参照して例として説明される。
【0017】
本明細書の全体を通じて、用語「パラフィン化合物」は、パラフィン化合物及びそれらの関連ブロモ誘導体の両方を指す。「相転移性パラフィン化合物」は、相転移を受け得るパラフィン化合物を指す。好ましくは、10から22個の炭素の直線状分子鎖を有するパラフィン化合物及びそれらのブロモ誘導体が、この要件に合い得る。
【0018】
マイクロカプセル化パラフィン化合物は編織布上にコーティングによって施用され得そして相変化はマイクロカプセル内でのみ起こるので、シェルは常温及び高温の両方において低透過性を有すべきである。この目的のために、マイクロカプセル化のための慣用のその場縮合法(モノマーとしてメラミン及びホルムアルデヒドを用いて)が好まれそして選択された。本発明の研究過程を通じて、種々の長さの直線状アルキル鎖を有するパラフィン化合物はそれらの低い表面張力に因りよく乳化されるのが困難であり、そしてそれ故適正な表面張力調整剤が満足な乳化のために添加されるべきであることが分かった。他方では、パラフィン化合物中に溶解されることが可能なポリイソシアネートが用いられ、何故ならそれらはメラミン、メチロール化メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物上の遊離アミノ基と反応してシェルの第1外層を形成し得るからである。連続相中のメラミンの初期縮合物は、それが縮合と共に可溶性が劣るようになる時、パラフィン化合物のみの油滴に対してよりも上記の第1層に対してはるかに高い親和力を有し、そして「前もって包まれた」液滴上により容易に沈着する。
【0019】
マイクロカプセル乳濁液を製造すること及び布をコーティングすることの両方を含む手順が、次の工程にて与えられる。
【0020】
マイクロカプセルの製造の際の第1作製工程は、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の合成である。
【0021】
この過程は、メラミン、ホルムアルデヒド及び水を混合して初期縮合物すなわち第3溶液を形成させることを含む。好ましくは、初期縮合物の形成を高めるために、系は70℃にて撹拌下で1から1.5時間加熱される。次いで、初期縮合物すなわち第3溶液は、周囲温度に冷却されそして更なる使用のために貯蔵され得る。
【0022】
初期縮合物の作製の際のメラミン対ホルムアルデヒドのモル比は本発明のマイクロカプセル化にとって重要である、ということが分かった。初期縮合物用モノマーとしてメラミン及びホルムアルデヒドを用いての慣用のその場縮合法において、メラミン対ホルムアルデヒドのモル比は、1:1から1:6であり得る。しかしながら、低いメラミン対ホルムアルデヒド比率は、本発明のPCM(一般に、パラフィン化合物である)に対して適当であり得ない。低いメラミン対ホルムアルデヒド比率でもって形成された初期縮合物はあまりにも親水性であり得、しかして不満足な沈着の原因となり得る。初期縮合物の作製の際のメラミン対ホルムアルデヒドの比較的高いモル比が、コア物質の液滴上への初期縮合物の満足な沈着のために用いられるべきである、ということが本発明において分かった。メラミン対ホルムアルデヒドの満足なモル比は、1:3一層好ましくは1:2最も好ましくは1:1.3から1:1.8であり得る。これは初期縮合物中のメラミン環上に酸性条件下で(これもまた本発明において保護コロイドの選択に影響を及ぼし得、そして後で論考される)より多くの遊離アミノ基を与え得る、ということが信じられる。
【0023】
第2作製工程は、乳化用ビヒクルとして第2溶液を作製するために、適切量の保護コロイドを水中に溶解することである。
【0024】
モノマーとしてメラミン及びホルムアルデヒドを用いてマイクロカプセルのシェルとしてアミノプラストを形成させることは、当該技術において知られている。溶解されたメラミン及びメチロール化メラミンを含むところのメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物の予備作製された水溶液は、通常、既に乳化されたコア物質に添加され、そして縮合が酸性条件下で続行する。縮合過程と共に、形成アミノプラスト分子は十分に大きくなって水性連続相中に比較的溶解されなくなり、従ってそれらはコア物質の液滴上に沈着し、そして次いで縮合し続けてポリマーシェルを形成する。この過程において、保護コロイドと部分メチロール化メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物との間の反応を防ぐために、メラミン環上のN−メチロール基に対して反応性である基を有する保護コロイドは用いられるべきでない。上記の制約に従って、いかなる天然又は合成アニオン性ポリマーたとえばアニオン性官能基を含有するポリマーも、保護コロイドとして用いられ得る。「アニオン性官能基」は、正味の負電荷を有するところの本明細書において定められる官能基を意味する。代表的なアニオン性官能基は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、それらのアルキル化誘導体、等を包含する。アニオン性官能基の選択は、メラミンを含む系の反応体に対する生じるポリマーの反応性及びコストを含めて、いくつかの因子に基づく。
【0025】
保護コロイドとして用いるための適当な天然ポリマーの例は、アラビアガム及びアルギン酸である。半合成アニオン性ポリマーの例は、カルボキシメチルセルロース、フタル酸化ゼラチン、硫酸化デンプン、硫酸セルロース及びリグニンスルホン酸である。本発明において用いられ得る合成アニオン性ポリマーは、マレイン酸無水物を基剤としたコポリマー(加水分解されたかかるコポリマーを含めて)、アクリル酸を基剤としたホモポリマー及びコポリマー(メタクリル酸を基剤としたホモポリマー及びコポリマーを含めて)、ビニル−ベンゼンスルホン酸を基剤としたホモポリマー及びコポリマー、並びにカルボキシ変性ポリビニルアルコールを包含する。
【0026】
本発明の研究において、スチレンとマレイン酸(又は無水物)とのコポリマー及びポリアクリル酸が用いられる。カルボキシル基は浴pHに非常に感受性であり、そして低い浴pHは凝集を引き起こしそしてより大きい粒子が形成する、ということが分かる。浴pHはまた乳化に有意的に影響を及ぼし、そして通常それは4〜7に調整される。本発明の研究において、縮合についての浴pHは、4.7〜6.0好ましくは5.5〜5.7に制御されるべきである。保護コロイドの添加量は、それらの過剰供与量がマイクロカプセルの形成に悪影響を及ぼし得及びまたコーティング布の風合いに悪影響を及ぼし得るので制限される。スチレンとマレイン酸(又は無水物)とのコポリマー及びポリアクリル酸について、添加は、連続相の重量を基準として1.0%から3.0%好ましくは1.5%から2.5%に制限されるべきである。
【0027】
上記に記載されたように、初期縮合物中のメラミン環上に比較的多い遊離アミノ基が存在し得る。これは縮合を続行するために必要であり得、そしてプロトン化アミノ基はその際に保護コロイド分子上のアニオン性基と相互作用し得そして沈着過程が妨害される。この理由のために、酸性条件下で弱アニオン性基であるカルボキシル基を有する保護コロイドが好ましく、そしてかくしてカルボキシル基を有するところのスチレンとマレイン酸(又は無水物)とのコポリマー及びポリアクリル酸が本発明の研究において選択された。
【0028】
上記の二つの作製工程は、特定の順序にあるようには要求されない。
【0029】
第1製造工程は、ポリイソシアネート及びポリプロピレングリコールをPCMパラフィン化合物中に溶解して第1溶液を形成させることである。
【0030】
好ましくは、この工程はパラフィン化合物の融点より少なくとも5℃高い温度にて行われるべきであり、そして系はよく混合される。ポリイソシアネート及びポリプロピレングリコールの両方の受容され得る候補物は、用いられるパラフィン化合物中に溶解され得るものであるべきである。
【0031】
不良乳化剤が選択される場合、微細なマイクロカプセルはほとんど製造されない。かくして、コア物質の表面張力の調整が、満足な乳化のために必須である。適正な表面張力調整剤は、パラフィン化合物と相溶性であり、それらの特質において極性であり且つ施用について安全である有機化学物質であるべきである。本発明の研究において、400より高い平均分子量を有するポリプロピレングリコールが、上記の目的のための満足な候補物であることが分かった。コア物質の重量を基準として0.2%から3.0%好ましくは0.3%から1.0%のかかるプロピレングリコールが乳化されるべき疎水性混合物に添加された場合、比較的容易な且つ比較的良好な乳化が得られ得た。調整された表面張力を有するコア物質の液滴は親水性環境中ではるかに安定になった、ということが信じられる。コア相に対するグリコールの相対的少量は、パラフィン化合物の相転移性に有意的には影響を及ぼし得ない。
【0032】
適当なポリイソシアネートは、後のパラグラフにおいて論考される。
【0033】
添加されるべきポリイソシアネートの量は、コア物質の重量を基準として0.01%から5%好ましくは0.05%から0.2%の範囲にあり得る。コア物質の重量を基準として0.2%から3.0%好ましくは0.3%から1.0%のプロピレングリコールが、好ましくは用いられる。
【0034】
第2製造工程は、有機コア組成物(不連続相すなわち第1溶液)を保護コロイドビヒクル(連続相すなわち上記に作製されたような第2溶液)中に添加し、そしてそれらを乳化して乳濁液を形成させることである。
【0035】
好ましくは、この乳化工程は、パラフィン化合物の融点より少なくとも5℃高い温度にて10から15分間撹拌することにより遂行される。乳化をはるかに容易にし得る表面張力調整剤であるポリプロピレングリコールが不連続相中に存在するので、2,000rpmの撹拌速度でもって実験室において用いられる普通の撹拌機は、4から5マイクロメートル又はそれ以下の平均直径を有する油滴を生成させることが可能であり得る。しかしながら、乳濁液を形成させるために、混合物を10から15分間撹拌することが好ましくあり得る。
【0036】
第3製造工程は、予備作製された初期縮合物第3溶液を穏やかな撹拌(通常、400から600rpm)下で乳濁液に添加することである。この過程において、穏やかな撹拌が大いに重要であり、何故なら激しい撹拌は乳濁液中の油滴上へのメラミン、部分メチロール化メラミン及び初期縮合物の沈着に悪影響を及ぼし並びにまた新たに形成されたマイクロカプセルを損傷することが分かるからである。
【0037】
初期縮合物溶液を添加した後の系の酸性化が好ましく、そして通常系のpHは4〜7好ましくは4.7〜6一層好ましくは5.5〜5.7に調整される。
【0038】
カプセル化過程を容易にするために、カプセル化混合物の温度は次いでより高い温度に十分な時間上げられ得る。いかなる制約もなしに、縮合を開始しそして反応を約1から5時間好ましくは2から4時間の範囲の期間続行するために、温度は約70から80℃であることが好ましい。
【0039】
加えて、好ましくは反応の終わりの約0.5から1時間前に、エチレン尿素及びジエチレングリコールのようなホルムアルデヒドスカベンジャーが次いで添加され得る。エチレン尿素又はジエチレングリコールの添加量は、マイクロカプセル乳濁液の重量に関して約0.1%から1%好ましくは0.3%から0.6%の範囲にある。
【0040】
最後に、カプセル化混合物のpHは、カリウム若しくはナトリウムの水酸化物の溶液、カルボン酸塩又は他の容易に入手できる強若しくは弱塩基のような適当な塩基を添加することにより約6.5〜8.0好ましくは7.0〜7.8に調整されて縮合を終了し、そして次いで穏やかな撹拌下で浴を周囲温度に冷却する。用いられる塩基は重要でなくて、単にpH調整を達成するためである。
【0041】
次の方法が、本発明におけるカプセル化過程の結果を試験するために用いられそしてここに記載される。しかしながら、無論、他の適当な試験方法がその代わりに用いられ得る。
【0042】
形成されたマイクロカプセル乳濁液の1滴をスライドガラス上に塗布し、そして次いでこのスライドガラスを実験室オーブン中で60℃にて乾燥し、そして次いで130℃にて4分間硬化する。いくらかの乳濁液を取り、そして布のコーティングのために利用され得るバインダー、柔軟剤及び水と適正な比率にて混合して安定なコーティング用乳濁液を形成させる。先に論考されたように、乳濁液pHを約7.5に調整する。この形成された乳濁液を布サンプル上に塗布し、次いで乾燥及び硬化してマイクロカプセルを布サンプル上に固着させる。通常、この方法は、慣用のコーティング方法において用いられるのと同じやり方で遂行される。毛布、等のような最終製品については、吹付けコーティング技法が好ましい。マイクロカプセルの状態を観察するために、スライドガラス及び布サンプルの両方共を走査電子顕微鏡で検査した。
【0043】
PCMマイクロカプセルを、一連の布サンプル上に塗布した。人間の皮膚温度をシミュレーションする際に20℃の環境に平衡化された布が33℃の熱板と接触された場合の過渡状態中の動的表面温度変化を測定するために、科学実験を行った。対照布サンプルと比較すると、赤外線熱画像カメラを用いて測定された表面温度変化に有意差が認められた。また、対照布と処理布の間で、客観的測定涼しさ指数Qmaxに有意差が認められた。本発明により生成されたPCMマイクロカプセルは、慣用の製品と比較して、熱的機能の性能に改善をもたらすことができた、ということをこれらの試験結果は示している。
【0044】
乳濁液中のコア物質の液滴上への第3溶液中のメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の沈着は、その場縮合マイクロカプセル化において必須である。この過程において、第3溶液中の初期縮合物のすべてがカプセル化されるべき液滴上に沈着するとは限らないで、それらのいくらかは自己縮合してポリマーを形成して連続相すなわち第3溶液中に存在する、ということが本発明において分かった。この欠陥は非常に薄いカプセルシェルに通じ得、そしてよりひどくはいくらかの未カプセル化コア物質をもたらすことになり得る。かくして、油滴上におけるメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の沈着を促進することが、完全なカプセル化のために大いに重要である。
【0045】
第1に、上記に記載されたように、初期縮合物と特質において疎水性である油状コア物質との間の界面張力を低減するために、初期縮合物の作製の際のメラミン対ホルムアルデヒドのモル比は比較的低い。更に、初期縮合物と分子主鎖上に結合されたアニオン性基を有する保護コロイドとの間に、酸性条件下でより強いイオン相互作用があり得る。これが、何故第2溶液及びカプセル化混合物は低いpHに維持されるのが好ましいかという理由である。それ故、油滴上へのメチロール化が比較的少ない初期縮合物の沈着を促進するための何らかの手段が要求され得る。
【0046】
第2に、メラミン環上の比較的豊富なアミノ基はコア中のポリイソシアネートと容易に反応して疎水性液滴の周りでポリ尿素層を形成し得、そして該ポリ尿素層と連続相中の初期縮合物との間の親和力は比較的高くあり得る。
【0047】
第3に、ポリ尿素層の内側の未反応ポリイソシアネートはポリプロピレングリコールと反応して更に別のポリウレタン層を形成し得、そしてこの層はイソシアネート官能基を通じてポリ尿素層と連結され得る。
【0048】
それ故、油状コア物質は、3層すなわちポリウレタン層(未反応ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとにより形成された)、ポリ尿素層(未反応ポリイソシアネートとメラミンとにより形成された)及びアミノプラスト(メラミンとホルムアルデヒドとにより形成された)層で包まれ得る。高い保持性を有するマイクロカプセルが、その場合生じ得る。
【0049】
しかしながら、いくつかのポリイソシアネート、特に2個より多いイソシアネート基を有するものは、本発明の研究において用いられたパラフィン化合物と相溶性でない。コア物質に可溶なポリイソシアネートが用いられるべきである。マイクロカプセルの製造において効率的に働く好ましいポリイソシアネートは、トリレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである。マイクロカプセルの製造の最終段階において、残留ホルムアルデヒド含有量を低減するために、エチレン尿素のような環状尿素及びジエチレングリコールのようなポリグリコールが、ホルムアルデヒドスカベンジャーとして酸性条件下で添加された。
【0050】
マイクロカプセル化パラフィン化合物乳濁液は、一般に、比較的容易に取り扱われ得、また多くの分野において温度管理のための媒質として適用され得る。たとえば、本発明において製造されたマイクロカプセルは編織布の処理のために用いられ得、また最終生成物は安定で中性の乳濁液の状態にあり得る。かくして、布のコーティングのために必要なバインダー、柔軟剤及び他の添加剤は、適正な比率にて上記の乳濁液と混合されて安定なコーティング用乳濁液を形成し得る。マイクロカプセル乳濁液と相溶性であるところの布のコーティングのためのバインダーは、堅牢性及び布の風合いに従って広範囲の量にて添加され得る。柔軟剤は主としてポリシロキサン及びそれらの誘導体の乳濁液であり、そして添加量は主として風合い要件の点から決定される。布のコーティングはすべての慣用手法にて行われ、そして吹付けコーティングが毛布及び同様な製品の処理のために好ましい。
実施例
【0051】
さて、本発明は次の例により例示されるが、これらの例は限定的と解釈されるべきでない。
【0052】
例1:メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の作製
2.5gのメラミンを3.6gのホルムアルデヒド(35〜39%の水溶液)に添加し、そして次いでこの系に5gの水を添加する。この系を70℃にて約1時間撹拌して透明な溶液を形成させる。この系を33℃に冷却する。
【0053】
例2:保護コロイドとしてPSMS及び沈着促進剤としてTDIを用いてのマイクロカプセル乳濁液の製造
2.5gのポリ(スチレン−アルト−マレイン酸)ナトリウム塩(水中30%,平均Mw約120,000)を57.5gの水中に添加し、そして次いで浴pHを5に調整する。
30gのオクタデカンを33℃にて溶融し、そして次いで0.15gのポリプロピレングリコール(平均Mw約2,000)及び0.1gのトリレンジイソシアネートすなわちTDI(80%)をそれぞれ添加する。この系をよく混合し、そしてそれを定温に保つ。このコア組成物を上記で作製された保護コロイド溶液に31〜33℃にて添加し、そして次いでこの系を2,000rpmにて10から15分間激しく撹拌する。撹拌を400〜600rpmに低減し、そしてこの浴にメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物溶液を徐々に添加し、そして次いで撹拌を10分間続行する。浴pHを検査し、そしてそれを必要なら5.6に調整する。この浴を70℃に上げ、そして次いで反応を2時間続行する。この浴に0.4gのエチレン尿素を添加し、そして次いで反応を1時間続行する。浴pHを7.5に調整し、そしてこの浴を穏やかな撹拌下で周囲温度に冷却する。このマイクロカプセル乳濁液を1滴取り、そしてそれをスライドガラス上に塗布する。この塗布されたスライドガラスを60℃にて乾燥し、そして次いで130℃にて4分間硬化する。このマイクロカプセルのSEM写真が、図1に与えられている。
【0054】
例3:保護コロイドとしてPSMS及び沈着促進剤としてHDIを用いてのマイクロカプセル乳濁液の製造
手順はすべて例2に指摘されたものと同じであるが、但しTDIではなく0.1gの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートすなわちHDIを沈着促進剤として添加する。
【0055】
例4:保護コロイドとしてポリアクリル酸及び沈着促進剤としてTDIを用いてのマイクロカプセル乳濁液の製造
手順はすべて例2に指摘されたものと同じであるが、但しPSMSではなく3.5gのポリアクリル酸(水中25%,平均Mw約230,000)を保護コロイドとして用いる。
【0056】
例5:保護コロイドとしてポリアクリル酸及び沈着促進剤としてHDIを用いてのマイクロカプセル乳濁液の製造
手順はすべて例4に指摘されたものと同じであるが、但しTDIではなく0.1gのHDIを沈着促進剤として添加する。
【0057】
例6:保護コロイドとしてPSMS及びポリアクリル酸の両方を用いて且つ沈着促進剤としてのポリイソシアネートを用いないでのマイクロカプセル乳濁液の製造
手順はすべて例2及び4にそれぞれ指摘されたものと同じであるが、但しいかなるポリイソシアネートも沈着促進剤として添加しない。いくらかの白色固体フレークが最終浴中に観察され、しかしてそれらはメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物の自己縮合により形成された生成物である。
【0058】
例7:マイクロカプセル乳濁液を用いての布のコーティング
各マイクロカプセル化パラフィン化合物乳濁液について、異なるマイクロカプセル含有量を有する6種のコーティング用乳濁液を次の処方に従って製造し、そしてpH7.5に調整した。この例において用いられたバインダーはポリアクリル酸のコポリマーの乳濁液であり、そして柔軟剤はエポキシ変性ポリシロキサンの乳濁液である。
【表1】

【0059】
各乳濁液を布サンプル上にそれぞれ塗布し、そして次いでこのサンプルを110℃にて8分間乾燥し、そして実験室において用いられる硬化機械で130℃にて4分間硬化する。走査電子顕微鏡を用いて、このコーティング布におけるマイクロカプセルの状態を観察する。典型的な写真が、図2及び図3にそれぞれ与えられている。
【0060】
硬化段階中に、いかなるポリイソシアネートも沈着促進剤として添加されていないマイクロカプセル化オクタデカンでコーティングされた布サンプルから蒸発されたわずかな煙霧があり、そして処理布サンプルはぬるぬるした風合いを有する、ということが分かる。そしてポリイソシアネートが添加されているものについては、煙霧は何ら観察されず、そして処理布サンプルは全く乾いている。これは、沈着促進剤としてのポリイソシアネートの使用がマイクロカプセルシェルの透過性を低減し得るすなわちマイクロカプセルの保持性を増大し得ることを指摘している。
【0061】
例8:コーティング布の熱調節機能の決定
以前に指摘された方法にて決定を遂行し、そして相対結果が図4、表1、図5及び表2にそれぞれ与えられている。
【表2】

【表3】

【0062】
本発明の好ましい具体的態様が例により詳細に記載されたきたけれども、本発明の改変及び改造が当業者に行われることは明らかである。更に、本発明の具体的態様は、例又は図のみにより制約されると解釈されるべきでない。しかしながら、かかる改変及び改造は請求項に記載される本発明の範囲内にある、ということは明示的に理解されるべきである。たとえば、一つの具体的態様の一部として図示又は記載された特徴は、別の具体的態様に関して用いられて更に別の具体的態様を生じ得る。かくして、本発明は、請求項及びそれらの等価物の範囲内に入るような改変及び変型をカバーするよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、例2に従って製造されたマイクロカプセル化オクタデカンのSEM写真を示す。
【図2】図2は、損傷布についての本発明の方法に従って製造されたマイクロカプセルの状態のSEM写真を示す。
【図3】図3は、布表面についての本発明の方法に従って製造されたマイクロカプセルの状態のSEM写真を示す。
【図4】図4は、マイクロカプセル含有量とQmaxの間の関係を示す。
【図5】図5は、マイクロカプセル含有量と熱伝導度の間の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相転移を受け得るパラフィン化合物を含むコア成分をカプセル化する方法であって、次の工程すなわち
A 第1ポリマーを形成する第1モノマーを該コア成分中に溶解して第1溶液を形成させ、
B 第1溶液を第2水溶液中に分散して乳濁液を形成させ、
C メラミン−ホルムアルデヒドの初期縮合物を含有する第3水溶液に該乳濁液を添加してカプセル化混合物を形成させる
工程を含む方法において、第1モノマーが約400より高い平均分子量を有するポリプロピレングリコール及び該コア成分に可溶なポリイソシアネートであることを特徴とする方法。
【請求項2】
第2溶液が、少なくとも1個のアニオン性官能基を有するポリマーである少なくとも1種の保護コロイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アニオン性官能基が、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの混合物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アニオン性官能基がカルボン酸基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
保護コロイドが、第2溶液の重量に関して約1から3重量%の量にある、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
保護コロイドが、第2溶液の重量に関して1.5から2.5重量%の量にある、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第2溶液が、約4から7のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
第2溶液が、約4.7から6のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2溶液が、約5.5から5.7のpHを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリイソシアネートが、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート又はそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリイソシアネートが、コア成分の重量に関して約0.2から3重量%の量にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリイソシアネートが、コア成分の重量に関して約0.3から1重量%の量にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリイソシアネートをコア成分の融点より約5℃高い温度にてコア成分中に溶解する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第1溶液をコア成分の融点より約5℃高い温度にて第2溶液中に分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1溶液を約2000回転毎分の撹拌速度にて約10から15分間第2溶液中に分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
メラミン及びホルムアルデヒドが、約1:3(メラミン:ホルムアルデヒド)のモル比にある、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
メラミン及びホルムアルデヒドが、約1:2(メラミン:ホルムアルデヒド)のモル比にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
メラミン及びホルムアルデヒドが、約1:1.3から1:1.8(メラミン:ホルムアルデヒド)のモル比にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
メラミン及びホルムアルデヒドを約70℃にて及び約1から1.5時間混合して初期縮合物を形成させる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
乳濁液を約400から600回転毎分の撹拌速度にて第3溶液に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
カプセル化混合物のpHを約4〜7に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
カプセル化混合物のpHを約4.7〜6に調整する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カプセル化混合物のpHを約5.5〜5.7に調整する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
カプセル化混合物の温度を約70〜80℃に上げる工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
カプセル化混合物の温度を約70から80℃に約1から5時間維持する工程を更に含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
カプセル化混合物の温度を約70から80℃に約2から4時間維持する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種のホルムアルデヒドスカベンジャーをカプセル化混合物に添加する工程を更に含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ホルムアルデヒドスカベンジャーが、エチレン尿素、ジエチレングリコール又はそれらの混合物から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ホルムアルデヒドスカベンジャーが、乳濁液混合物の重量に関して0.1から1重量%の量にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ホルムアルデヒドスカベンジャーが、乳濁液混合物の重量に関して0.3から0.6重量%の量にある、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ホルムアルデヒドスカベンジャーを、カプセル化混合物の温度を約70から80℃に維持する工程の終わりの約0.5から1時間前に添加する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
カプセル化混合物の温度を約70から80℃に維持する工程の終わり後に、カプセル化混合物のpHを約7.5に調整する工程を更に含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−512191(P2006−512191A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562462(P2004−562462)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/CN2003/001106
【国際公開番号】WO2004/058390
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504439470)ナノ−スポーツ テクノロジーズ リミティド (1)
【Fターム(参考)】