説明

メンテナンス装置、検査装置、リモート検査システム、デジタルAV機器およびデジタル家電機器

【課題】予め用意されていない検査項目についても遠隔地から検査できること
【解決手段】検査手順を送信する検査装置と、検査データを受信し診断する診断装置とに接続する第1の通信手段と、制御信号に従い動作するコンテンツ再生機器に接続する第2の通信手段と、検査手順を記憶する検査手順記憶手段と、第1の通信手段を介して、検査手順を受信する検査手順受信手段と、検査手順受信手段が受信した検査手順に基づき、コンテンツ再生機器を制御する制御信号およびコンテンツ再生機器により生成されたデータを要求する制御信号を生成して、第2の通信手段を介してコンテンツ再生機器へ送信し、要求の結果として取得したデータを検査データとして収集する検査手順実行手段と、検査手順実行手段が収集した検査データを、第1の通信手段を介して診断装置に送信する検査データ送信手段とを備えることを特徴とするメンテナンス装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置、検査装置、リモート検査システム、デジタルAV機器およびデジタル家電機器、特に遠隔地に設置されたデジタルAV機器およびデジタル家電機器などのメンテナンス対象装置に対して、検査およびメンテナンスを実施可能なメンテナンス装置および検査装置を備えたリモート検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伝送路を介して遠隔に設置された装置を監視し保守することが一般的になっている。さらに、低コストで利用できる伝送路の伝送容量が増大傾向にあり、検査信号として、エンコードされた動画のようなアプリケーションレベルの信号を伝送し検査することも可能となってきている(例えば、特許文献1)。
また、被検査装置がデジタルTVであれば、検査信号として、放送波にて伝送されている通常の放送番組を利用することもできる。
【0003】
これにより、装置の製造事業者が、インターネット等の伝送路を介して、ユーザ宅など遠隔に設置されている自社製の装置の状態だけでなくアプリケーションレベルで現れる事象までも把握し、修理等のメンテナンスを行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2004−194043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非検査装置としてテレビを例にあげた場合、検査内容は、単に放送(検査信号)が正しく受信されたことだけでは十分ではない。放送信号は、多数のチャネル(放送波)からなっており、複数のチャネルを受信しないと正常かどうか把握できない。アナログ放送からデジタル放送への移行時においては、アナログ放送、デジタル放送の両方のチェックが必要である。同時にEPGやデータ放送なども正しく再生・表示されるかどうか、各種メニュー画面やテレビ本体が表示すべき画面が正しく表示されているか、などのチェックが必要である。
【0005】
また、近年のテレビは、2つのチューナを持ち、2番組同時表示(2画面モード)や、1画面を放送の再生に、もう1画面をインターネットの表示にするというようなことが可能である。これらのことを実現するために、テレビの内部には、動画用のプレーン(表示用メモリ)、フルカラーグラフィック用のプレーン、限定カラーグラフィック用のプレーンなどがあり、さらに、それぞれのプレーンで作成された絵(動画やグラフィック)を合成して出力するためのオーバーレイ機構を持っている。これは複数のプレーンを重ねあわせ、1画面として合成を行うことや、複数のプレーンの大きさを縮小(あるいは拡大)して、1画面の中に配置するなどのことを行う。
このような状況では、単に外部から受信した検査信号を折り返して検査手段に送信することだけでは、受信機の不具合を特定することは非常に困難である。
【0006】
加えて、 デジタルTVやHDDレコーダ、複合機、携帯電話などは、近年ますます高機能化してパーソナルコンピュータとほとんど差異がない程複雑化してきている。そのため、商品出荷前後にもかかわらず予期せぬ事象が多く発生する。特に、商品出荷後に発見される事象のほとんどは、操作手順、操作のタイミング、アプリケーションの実行状況、商品の置かれた環境など複数要素の組合せであらわされる多数の条件のうち、ある特定の条件下でしか発生しない。
しかしながら、上記従来の構成では、被検査装置が受信した検査信号を処理する検査手順は、予想可能な範囲内の検査項目で、あらかじめ被検査装置内の不揮発性メモリ311に格納されているため、実行可能な検査の種類には限界があった。そのため、本来はある事象が発生するにもかかわらず、リモート検査では事象を確認できず、装置が設置されているユーザ宅などにメンテナンス担当者が直接出向かなければ事象を確認できないという問題があった。
【0007】
また、被検査装置の製造時期や設置環境によっても事象の発生頻度が変わる場合もあるが、上記構成では、例えそれが予想される事象であったとしても、発生頻度が少ない、または、個別対応が必要な確率が高い場合などは、開発における対応の優先度が下がり、該当する検査手順が、被検査装置内の不揮発性メモリに格納されない可能性が高い。そのため、本来は事象を確認できるにもかかわらず、装置が設置されているユーザ宅などにメンテナンス担当者が直接出向かなければ事象を確認できず、従って有効な対処もできないという問題もあった。
また、上記従来の構成では、商品出荷後に確認される事象であり、特定の条件下でしか発生しないに事象に対しては、該事象を確認できるような検査信号を、その都度、用意する必要があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検査のために検査信号を用意する必要がなく、予め予想できない事象に対する検査項目や、優先度が低いために予め用意されていない事象に対する検査項目についても検査をすることができ、メンテナンス担当者が、装置の設置されているユーザ宅などを直接訪問せずに遠隔地から検査を実施して、該事象を発見することができるリモート検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明は、検査手順を送信する検査装置に接続する第1の通信手段と、制御信号に従い動作するコンテンツ再生機器に接続する第2の通信手段と、前記第1の通信手段を介して、検査手順を受信する検査手順受信手段と、前記検査手順受信手段が受信した検査手順に基づき、前記コンテンツ再生機器を制御する制御信号および前記コンテンツ再生機器により生成されたデータを要求する制御信号を生成して、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器へ送信し、前記要求の結果として取得したデータを検査データとして収集する検査手順実行手段と、前記検査手順実行手段が収集した検査データを、前記第1の通信手段を介して送信する検査データ送信手段とを備えることを特徴とするメンテナンス装置である。
【0010】
上記構成のメンテナンス装置によれば、検査手順により検査データを収集する手順が指示されるため、検査手順を変更することにより、コンテンツ再生機器から離れた場所からでも検査条件や検査項目を自由に変更でき、開発時に想定外の検査手順でしか発生しない事象をリモートで発見することが可能となり、その後の対応を適切に効率よく行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上述のメンテナンス装置であって、前記検査手順は、検査の開始時刻に関する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、検査開始時間を指定することが可能となり、コンテンツ再生機器から離れた場所からでも、特定の時間帯に発生する事象に対する検査が可能となる。
【0012】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査手順は、キー操作入力の代替えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、事象が発生する場合の条件を作り出すための複雑な手順を自動化でき、コンテンツ再生機器から離れた場所からでも、特定条件下でしか発生しない事象の確認が可能となる。
【0013】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査手順は、ユーザへの操作指示の通知を前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、事象が発生する条件を作り出すための複雑な手順のうち、自動化できない手順を、ユーザに代行してもらうことが可能となり、コンテンツ再生機器から離れた場所からでも、特定条件下でしか発生しない事象をリモートで発見することができる。
【0014】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査手順は、前記コンテンツ再生機器が記憶するプログラムの書き換えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、コンテンツ再生機器のソフトウェアを書き換えることにより、特定の条件と同等の条件を擬似的に作り出すことが可能となり、例えば長時間経過後のアプリケーション動作状況でしか発生しない事象を確認する場合などに、検査データ収集にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査手順は、前記コンテンツ再生機器が備えるハードウェアの制御を前記メンテナンス装置に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、ハードウェア処理される信号の状態を変えることで、特定の条件と同等の条件を擬似的に作り出すことが可能となり、例えば電波状況が悪くなった時にしか発生しない事象を確認する場合などに、検査データ収集にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記コンテンツ再生機器に固有の識別情報または前記コンテンツ再生機器の状態情報を、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器に要求し、該要求の結果として得られた情報を、前記第1の通信手段を介して前記検査装置に送信するステート信号送信手段を備え、前記検査手順受信手段は、前記ステート信号送信手段が送信した情報に基づき生成された検査手順を、前記第1の通信手段を介して受信することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、メンテナンス対象装置を制御するメンテナンス装置と接続する通信手段と、複数の検査手順を記憶する検査手順記憶手段と、前記コンテンツ再生機器に固有の識別情報または前記コンテンツ再生機器の状態情報を、前記通信手段を介して前記メンテナンス装置から受信するステート信号受信手段と、前記検査手順記憶手段が記憶している検査手順の中から、前記ステート信号受信手段が受信した情報に対応した検査手順を選択する検査手順選択手段と、前記検査手順選択手段が選択した検査手順を、前記通信手段を介して前記メンテナンス装置へ送信する検査手順送信手段とを備えることを特徴とする検査装置である。
【0018】
また、本発明は、上述のメンテナンス装置と、前記メンテナンス装置と接続された伝送路と、前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置された前記請求項16に記載の検査装置とを備えることを特徴とするリモート検査システムである。
【0019】
上記構成のメンテナンス装置、検査装置およびリモート検査システムによれば、ステート信号から検査対象の状態がわかるので、出荷後の被検査装置のハードウェア構成やソフトウェアのバージョンなどの個体差や設置環境に依存する事象の場合に、ステート信号に基づいて最適な検査手順の選択が可能となり、個別にメンテナンスが可能となり、その後の対応を適切に効率よく行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上述のメンテナンス装置であって、前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の設置地域識別情報を含むことを特徴とする。
また、本発明は、上述の検査装置であって、前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の設置地域識別情報を含むことを特徴とする。
【0021】
上記構成のメンテナンス装置および検査装置によれば、特定地域でしか発生しない事象を効率よく発見することが可能となる。特定地域でしか発生しない事象とは、例えば、基本的に県域放送である地上波デジタルTV放送波のあるコンテンツ受信中に特定の条件が満たされた場合にのみ発生するような事象(緊急放送を受信できないなど)を指す。また、このような事象のいくつかは特定の地域からのみ報告される。従って、特定地域にしか発生しない事象には、該当する地域にのみ対応を行えばよいので、上記構成により、その後の対応を適切に効率よく行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の操作履歴情報を含むことを特徴とする。
また、本発明は、上述のいずれかの検査装置であって、前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の操作履歴情報を含むことを特徴とする。
【0023】
上記構成のメンテナンス装置および検査装置によれば、ユーザから事象発生の報を受けてから検査を行う場合に、事象発生の原因が、ユーザの操作に起因するかどうかを分析することが可能となり、より適切な対応を行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査データは、前記検査手順実行手段が前記制御信号により前記コンテンツ再生機器を制御している間の前記コンテンツ再生機器の動作履歴情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、動画や静止画から構成されるコンテンツを扱う場合に、検査に必要な特徴的な画像データを、空間的時間的に切り出した信号を含む検査データであるので、検査判定を効率的に行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記検査データは、前記検査手順実行手段が前記制御信号により前記コンテンツ再生機器を制御している間の前記コンテンツ再生機器の動作履歴情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、検査データ取得までの動作履歴を用いて、コンテンツ再生機器の事象が、検査指示信号に基づく動作に起因する事象かどうかを確認することが可能となり、適切な対応を行うことが可能となる。
【0026】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記第1の通信手段は、処置手順を送信する処置装置に接続し、前記第1の通信手段を介して、処置手順を受信する処置手順受信手段と前記処置手順受信手段が受信した処置手順に基づき、前記コンテンツ再生機器を制御する制御信号を生成して、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器へ送信する処置手順実行手段とを備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、上述のリモート検査システムであって、前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置され、前記メンテナンス装置から検査データを受信し、前記メンテナンス装置と接続されたメンテナンス対象装置に施す処置を、前記受信した検査データに基づき決定する診断装置と、前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置され、前記診断装置が決定した処置に基づき生成した処置手順を、前記メンテナンス装置へ送信する処置装置とを備えることを特徴とする。
【0028】
上記構成のメンテナンス装置およびリモート検査システムによれば、新たな事象を誘発しかねない対応や、安全性の面から特に注意を要するような対応のように、どうしてもサービス担当者が直接処置する必要のある事象を除く、ほとんどの事象に対して、サービス担当者が出向くことなく処置することが可能となり、対応に要する処置コストだけでなく、対応によってユーザに与える時間的コスト的損失をも低く抑えることが可能となる。
【0029】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記処置手順は、前記検査データを診断した結果の報知を前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、ユーザに検査結果や処置方法や処置手順を報せることが可能となり、適切な処置を円滑に行うことが可能となる。
【0030】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記処置手順は、前記コンテンツ再生機器が記憶するプログラムの一部または全ての削除または書き換えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、ソフトウェア対応のみで解決する事象に対して、自動で対応することが可能となり、対応にかかるコストを低く抑えることが可能となる。
【0031】
また、本発明は、上述のいずれかのメンテナンス装置であって、前記処置手順実行手段は、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器から処置許諾情報を受信してから、前記受信した処置手順に基づき生成した制御信号を送信することを特徴とする。
上記構成のメンテナンス装置によれば、処置の実施前にユーザの意思を確認することで処置を行うことになるため、処置することで発生するトラブル減少につながり処置コストを抑えることが可能となる。
【0032】
本発明は、上述のいずれかの項に記載のメンテナンス装置と、前記メンテナンス装置と接続されたコンテンツ再生機器とを備えることを特徴とするデジタルAV機器である。
【0033】
本発明は、上述のいずれかの項に記載のメンテナンス装置と、前記メンテナンス装置と接続され、デジタル動画コンテンツを扱うコンテンツ再生機器とを備えることを特徴とするデジタル家電機器である。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、検査手順により検査データを収集する手順が指示されるため、検査手順を変更することにより、コンテンツ再生機器から離れた場所からでも検査条件や検査項目を自由に変更でき、開発時に想定外の検査手順でしか発生しない事象をリモートで発見することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施形態に係るメンテナンス装置9の構成を示す概略機能ブロック図である。
図1(a)に示すように、メンテナンス装置9は、バス900、通信I/F部(第1の通信手段)901、制御部902、記憶部903、外部I/F部(第2の通信手段)904、タイマ部905、エンコーダ部906から構成され、記憶部903には、検査手順領域9031、ステート記憶領域9032、検査データ領域9033を含む。
ここで、各部の間でやり取りされるデータや制御信号などの各種信号は、バス900を経由して転送される。
また、メンテナンス装置9は、経路29を経由してインターネットなどの伝送路2に接続され、伝送路2上の検査装置や診断装置(図示せず)、処置装置(図示せず)との通信を行う。
さらに、メンテナンス装置9は、IEEE1394などの外部I/F部904に応じた経路39を経由してコンテンツ再生機器3に、接続され、コンテンツ再生機器を遠隔制御するとともに、お互いのデータ交換も行う。
【0036】
制御部902は、図1(b)に示すように、ステート信号送信処理部9021(ステート信号送信手段)、検査指示信号受信処理部(検査手順受信手段)9022、検査前手順実行処理部9023、検査手順実行処理部(検査手順実行手段)9024、検査データ送信処理部(検査データ送信手段)9025、処置信号受信処理部(処置手順受信処理部)9026、処置手順実行処理部(処置手順実行手段)9027を備える。
ステート信号送信処理部9021は、コンテンツ再生機器3に固有の識別情報またはコンテンツ再生機器3の状態情報を、外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3に要求し、該要求の結果として得られた情報をステート記憶領域9032に格納するとともに、通信I/F901を介して検査装置に送信する
【0037】
検査指示信号受信処理部9022は、通信I/F901を介して、伝送路2の先に接続された検査装置から検査指示信号を受信する。検査前手順実行処理部9023は、受信した検査指示信号から検査手順を抽出して検査手順領域9031に格納し、さらに検査指示信号に基づき、コンテンツ再生機器3を制御する制御信号を外部I/F部904を介して送信する。なお、検査前手順実行処理部9023の詳細については、図6を参照して後述する。検査手順実行処理部9024は、検査手順領域9031に格納された検査手順に基づき、コンテンツ再生機器3を制御する制御信号およびコンテンツ再生機器3から検査データを収集する制御信号を外部I/F部904を介して送信し、その結果として検査データを受信して検査データ領域9033に格納する。なお、検査手順実行処理部9024の詳細については、図7を参照して後述する。検査データ送信処理部9025は、検査データ領域9033に格納された検査データを通信I/F901を介して、伝送路2の先に接続された診断装置に送信する。
処置信号受信処理部9026は、通信I/F901を介して、伝送路2に接続された処置装置から処置信号を受信する。処置手順実行処理部9027は、処置信号受信処理部9026が受信した処置信号から抽出した処置手順に基づき、コンテンツ再生機器3を制御する制御信号を生成し、通信I/F904を介して送信する。
【0038】
次に、図1に示すメンテナンス装置9の動作について、図2を参照して説明する。メンテナンスが開始されると(ステップS20)、制御部902のステート信号送信処理部9021は、通信I/F部901に、伝送路2の先に接続されている検査装置への接続を指示し、通信I/F部901は、検査装置との接続を行う(ステップS21)。
ここで、検査装置は、メンテナンス装置9から、検査に必要なステート信号を受信し、検査指示信号を送信するために必要な機能をもった装置である。
【0039】
検査装置との接続が確立すると、制御部9023のステート信号送信処理部9021は、外部I/F部904を介して、経路39経由で接続されているコンテンツ再生機器3に、製造番号のようなあらかじめ登録されているメンテナンス対象装置3に固有の識別情報、および、コンテンツ再生機器3に現在設定されている各種の値、である状態情報を送信するように要求する。ステート信号送信処理部9021は、得られた識別情報および状態情報を記憶部903内のステート記憶領域9032に記憶させるとともに、制御部902のステート信号送信処理部9021の指示により、通信I/F部901は、検査装置に対して、ステート信号領域9032に格納された情報をステート信号として送信する(ステップS22)。
【0040】
尚、ステート信号には、コンテンツ再生機器3が設置されている場所を特定する設置地域識別情報や、操作履歴情報が含まれる。すなわち、ステート信号は、コンテンツ再生機器3が稼動後に自動で設定された値に限らず、ユーザが設定した値も含んでいる。また、ステート信号として検査装置に送信される値の数と種類は、検査の目的に応じて任意である。
【0041】
制御部902の検査指示信号受信処理部9022は、通信I/F部901を介して、ステート信号を送信し終えた後に検査装置から送信される検査指示信号を受信する(ステップS23)。制御部902の検査前手順実行処理部9023は、検査指示信号受信処理部9022が受信した検査指示信号からを実行し、検査手順を抽出して検査手順領域9031に格納するとともに、コンテンツ再生機器3を制御する制御信号を送信する(ステップS24)。なお、検査前手順実行処理部9023が動作するステップS24の詳細は、図6を参照して後述する。
【0042】
検査前手順実行処理部9023が、受信した検査指示信号をひととおり実行し終えると、通信I/F部901は、検査装置との接続を切断する(ステップS25)。
次に、制御部902の検査手順実行処理部9024は、外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3を制御して、コンテンツ再生機器3を検査信号発生装置へ接続させる(ステップS26)。
ここで、検査信号発生装置は、アプリケーションレベルの信号を送出できる装置である。コンテンツ再生機器3がTVである場合は、検査信号発生装置は通常のTV放送局でもよい。つまり、特定のTV放送局にチャンネルを合わせて、放送を受信するだけでもよい。
【0043】
外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3を制御して、検査信号の受信が開始されたら(ステップS27)、制御部902の検査手順実行処理部9024は、同様に外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3を制御して、コンテンツ再生機器3内部の所望のデータ信号を、検査データとして、収集する(ステップS28)。なお、検査手順実行処理部9024が動作するステップS28の詳細は後述する。
【0044】
検査データを収集し終えると、検査手順実行処理部9024は、外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3を制御して、コンテンツ再生機器3と検査信号発生装置との接続を切断する(ステップS29)。
次に、制御部902の検査データ送信処理部9025は、通信I/F部901に、伝送路2の先に接続されている診断装置への接続を指示し、通信I/F部901は、診断装置との接続を行う(ステップS30)。ここで、診断装置は、メンテナンス装置9から、検査データを受信するために必要な機能をもった装置である。
【0045】
診断装置に接続すると、検査データ送信処理部9025は、ステップS28で得られた検査データを、通信I/F部901を介して、診断装置へ送信する(ステップS31)。診断装置に対して、検査データを送信し終えると、通信I/F部901は、診断装置との接続を切断し(ステップS32)、メンテナンスに関する検査処理を終了する(ステップS33)。
ここで、コンテンツ再生機器3は、動画を扱う機器で、さらに、メンテナンス装置9によるリモート制御が可能であれば、何であっても良く、図3に示すデジタルTVも接続可能である。
【0046】
図3に示すデジタルTVの構成と、放送波を受信し、映像を出力するまでの簡単な動作説明を以下に行う。図3は、コンテンツ再生機器3がデジタルTVであった場合の構成例を示す機能ブロック図である。
【0047】
図3に示すように、コンテンツ再生機器3は、バス300、通信I/F部301、制御部302、記憶部303、タイマ部304、操作I/F部305、AV入力部306、デコーダ部307、ビデオ出力部308、オーディオ出力部309、不揮発性メモリ311、外部I/F部312、AV入力経路313から構成される。また、記憶部303内部には、退避領域3031、ビデオバッファ3033、グラフィックバッファ3034、表示バッファ3035、オーディオバッファ3036を含む。ここで、各部の間でやり取りされるデータや制御信号などの各種信号は、バス300を経由して転送される。
【0048】
AV入力部306は、オーディオコンテンツまたはビデオコンテンツを含む信号を入力する外部I/F、および、入力された信号をデジタル信号であるストリームデータに変換する回路をもつブロックである。ビデオ出力部308は、表示バッファ3035内に格納されているデジタル信号である表示データを、アナログ信号に変換する回路、および、表示媒体、および、表示媒体用のドライバ、および、デジタルまたはアナログのビデオ出力をもつ外部I/Fを含むブロックである。オーディオ出力部309は、スピーカなどの音声媒体、および、音声媒体用のドライバ、および、デジタルまたはアナログのオーディオ出力をもつ外部I/Fを含むブロックである。また、操作入力I/F部305は、コンテンツ再生機器3に付随の操作キーやリモコンキーからの入力の有無を監視し、入力に対応する信号を制御部302へ出力するブロックである。
【0049】
AV入力経路313から入力されたデジタルTV信号は、AV入力部306でデジタル信号であるストリームデータに変換され、デコーダ部307へ出力される。放送波の受信であれば、AV入力経路313はアンテナであり、AV入力部306はデジタルTV用チューナであり、ストリームデータはTS(Transport Stream)である。ストリームデータは、デコーダ部307でデコードされ、ビデオデータはビデオバッファ3033へ、音声データはオーディオバッファ3036へ書き込まれる。また、デコーダ307でデコードされたデータのうち、TSではセクションと呼ばれる制御データは制御部302で処理され、画面表示が必要な場合は、制御部302で生成されるグラフィックデータがグラフィックバッファ3034へ書き込まれる。さらに、ビデオバッファ3033に書き込まれたビデオデータが構成する画面は、グラフィックバッファ3034に書き込まれたグラフィックデータが構成する画面と合成され、表示バッファ3036へ格納される。表示バッファ3036に書き込まれた表示データは、ビデオ出力部308で処理され、表示媒体で表示される。また、オーディオバッファ3036に書き込まれた音声データは、オーディオ出力部309で処理され、音声媒体から出力される。
【0050】
このビデオバッファ3033の画面とグラフィックバッファ3034の画面との合成に際しては、単純に重ね合わせることだけではく、透過度の設定、拡大、縮小、ウインドウ表示(たとえばビデオ画面を小さくして、残りのところにデータ放送画面を出すなど)などの処理がなされてもよい。実際のデジタル放送受信システムでは、合成に係る処理を実現するためのハードウェアも、ハードウェア設定のためのソフトウェアも、複雑であり、様々な事象の原因になりやすい。また、上記ウインドウ表示は、データ放送のコンテンツでも指定が可能である。日本のデジタル放送ではデータ放送の記述言語としてBMLを用いているが、これはビデオの表示サイズ指定が可能であり、柔軟な表示を作り出すことが可能である。また地方局からローカルなデータ放送コンテンツを送出することが可能であり、このコンテンツが誤っている場合や、コンテンツに依存してソフトウェア、ハードウェアが起こす事象などでは、メーカーサイドのサポートセンターではそのコンテンツが受信できない。このため、該事象を再現できない場合が生じるので、特に該事象の起きたときの状況をそのまま取得することが重要になる。
【0051】
図4は、プレーン(表示用メモリ)の重ねあわせを示す図である。1001はデコーダ部307からの出力を保持するプレーンであり、ビデオバッファ3033の全部もしくは一部に書き込まれたデータで構成される。このプレーンは普通はフルカラーで展開された動画の1フレームを保持し、通常60分の1秒に1度書き換えられる。インターレースの動画はプログレッシブ動画への変換が必要であるが、本発明には関係ないので省略している。1002は制御部302からの出力を保持するプレーンであり、グラフィックバッファ3034の全部または一部に書き込まれたデータで構成される。制御部302は、選択されたチャネル番号を示すために、キャラクタで「CH Asada 8」という文字列を、このプレーンに書いている。制御部302がこのプレーンに書き込むのは、特に文字列である必要はなく、静止画や動画、ベクトル図形などでもよい。1003は、プレーン1001とプレーン1002とを合成したものであり、表示バッファ3035に書き込まれたデータで構成される。この合成では、単純にプレーン1001の上にプレーン1002の透明でない部分を重ね合わせること以外にアルファブレンディングのように割合を決めて重ね合わせるという手法を用いることも可能であるが、ここでは、その手法は問わない。通常はこの重ね合わせは動画のフレーム更新の速度にあわせて行う必要があるので、ハードウェアで実現されることが多いが、ここでは、その実現手法は問わない。
【0052】
図5は、図4のプレーンの重ね合わせの状態での表示例である。1020aは、外部の装置から、操作コマンドとしてチューナを切り替えて8チャンネルにする指示を受けたことを示している。このとき、1011aは、デコーダ部307が出力した8チャネルの動画を示しているプレーンである。1012aは、このとき制御部302からの表示データがなかったことを示しているプレーンである。1013aは、プレーン1011aとプレーン1012aを重ね合わせて作成されたプレーンである。説明のためにプレーン1012aを重ね合わせたと記載しているが、実際にはプレーン1012aは何も入力がないことを判断して、重ねあわせを行わなくてもプレーン1013aは作り出すことが可能である。1014aでは、プレーン1013aを外部機器に送信するためにエンコード(符号化)する。尚、1014aは図1(a)におけるエンコーダ部906である。このときには通信負荷を減らすためにデータ量を減らすことが望ましく、たとえば静止画像であればJPEG、動画であればMPEG2やMPEG4やH.264などの圧縮を行うのが一般的である。1015aは、エンコード1014aによるエンコード結果のデータが外部機器に送信されて、復元され、プレーン1013a と同じ絵が再現されたことを示している。
【0053】
一方、1020bは、外部の装置から、操作コマンドとして「チャネル表示」の指示を受けたことを示している。1011bは、プレーン1011aと同じチャネルの画像を保持しているプレーンである。1012bは、1020bのコマンドを受けて、現在のチャネルの表示が制御部302により書かれたプレーンである。1013bは、プレーン1011bとプレーン1012bとを重ね合わせたプレーンを示している。このプレーン1013bは通常、ユーザに提示する表示と1対1で対応している。プレーン1013bでは、プレーン1012bで「CH Asada 8」という文字列のところが黒の■(四角)として表示されている。これは、重ね合わせの時に発生した事象であり、たとえばアルファブレンディングの設定を誤った場合などの原因により発生した事象であることが考えられる。プレーン1013bは1014bにてエンコードされ、外部装置に送られる。1015bは、1014bからの出力を受信して展開した画像であり、プレーン1013bの状況を遠隔地で把握することができる。
【0054】
画像1015bを遠隔地で確かめることができると、映像のデコーダ部307の出力に関する事象か、制御部302の出力に関する事象か、などのことがわかる。ただし、画像1015bでは重ね合わせにおいて発生した事象か、プレーン1012bに文字を展開する際に発生した事象か、というところの判断はつかない。
【0055】
なお、上記では、チャネル表示を例にあげて説明をしたが、実際には、制御部302(主としてCPUによるソフト処理にて実現される)で作られる画面としては、本装置の設定メニュー、電子番組表、データ放送、インターネットアクセスアプリケーション(たとえばウエブブラウザ)などがあり、それらは別々のソフトウェアモジュールとして動作していることが多い。また映像のプレーンは、デジタル地上波、アナログ地上波、衛星放送、外部入力など各種の入力ソースデータを取ることがある。さらに図5のように簡単な場合でも最低2面のプレーンとそれを重ね合わせる機構を持っているため、単に表示が乱れるということがわかったとしても、どの部分に課題があるかを特定できないことが多い。本発明では、1020aや1020bのように制御コマンドを外部装置から与えること、それにより、複数のプレーンの描画内容の切り替えを可能にすること、複数のプレーンを重ね合わせた後の画像をエンコードして外部装置に送信することにより、いろいろな条件を外部から指定をして、より正確な異常診断を行うことが可能になる。
【0056】
本体やリモコンのキー操作を行った場合は、操作入力I/F部305から制御部302に対して、キー操作があったことを示す信号が出力される。また、不揮発性メモリ311には、あらかじめ、コンテンツ再生機器3が動作するためのプログラムおよび製造番号などの機器固有の情報が格納されており、さらに、記憶部303の退避領域3031には、コンテンツ再生機器3が稼動した後に書き込まれる機器に関する情報が書き込まれる。また、ネットワークなどの伝送路への接続は、通信I/F部301を介して行われることになる。
【0057】
さらに、外部I/F部312は、外部制御経路39に接続される外部機器との通信を行い、外部機器からの制御コマンドの受信、外部からの制御コマンドへのレスポンスなどを行う。例えば、外部I/F部312が、外部機器より、リモコンのチャンネル切替ボタンを押したことを示す操作入力コマンドを受けた場合、外部I/F部312で操作入力コマンドが抽出された操作入力コマンドは、バス300を経由して制御部302に転送され、あたかも制御部302に操作入力I/F部305からの入力があったかのように、制御部302は、デコーダ部307およびAV入力部306を制御して、操作入力コマンドで指示されたチャンネル切替動作を実現する。
【0058】
したがって、コンテンツ再生機器3からみた外部機器がメンテナンス装置9であった場合、図2におけるステップS28では、メンテナンス装置9の制御部902から、メンテナンス装置9の外部I/F部904を介して、記憶部303内部に格納されたデータのモニタを要求する制御コマンドが発行され、制御部302は、記憶部303に格納されたデータを順次読み出し、外部I/F部312を介してメンテナンス装置9へ送信するという動作を行う。
【0059】
図2におけるステップS23で受信された前記検査指示信号は、検査手順である、検査前に必要な複数の命令と検査時に必要な命令の集合体(以下、検査データ収集命令セット)とが、通信に適したパッケージ処理された信号である。
尚、通信に適したパッケージ処理とは、一般的には、通信に必要なヘッダ類が付加されて、分割処理および誤り訂正符号化されることであり、その方法について本発明では特に規定しないが、これらパッケージ処理とその逆処理であるアンパッケージ処理は、通信I/F部901で実施される。即ち、ステップS22で送信されるステート信号と、ステップS31で送信される検査データは、パッケージ処理され、ステップS23で受信される検査指示信号はアンパッケージ処理される。
前記検査指示信号は、検査前に必要な複数の命令をステップS24で順次実行し、検査データ収集命令セットをステップS28で実行することになる。
【0060】
以下に、図1のメンテナンス装置9に図3のコンテンツ再生機器3が接続されているとして、検査指示信号実行(図2におけるステップS24)の具体的な動作をステップS24における処理のフローチャートである図6を用いて説明する。
メンテナンス装置9が図2におけるステップS24を開始すると(ステップS2400)、制御部902の検査前手順実行処理部9023は、通信I/F部901でヘッダ等の不要な部分を取り除いて抽出された検査指示信号(以下、検査指示命令)が、検査を開始する時間を指示する命令であるか判定する(ステップS2401)。検査指示命令が検査開始の時間を指示する命令である場合は、検査前手順実行処理部9023は、タイマ部905に対して、タイマプログラムの起動を指示するとともに、検査開始時間を示す値を引き渡す(ステップS2402)。この時点から、タイマ部905では、引き渡された値までカウントを続け、カウントし終えたら検査前手順実行処理部9023に報告する。
【0061】
また、ステップS2401において、検査指示命令が、検査開始を指示する命令でない場合は、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、検査データを収集するためのひとつまたは複数の命令からなる検査データ収集命令セットであるか判定する(ステップS2403)。検査データ収集命令セットである場合は、検査前手順実行処理部9023は、記憶部903内に設けられた検査手順領域9031へ、検査データ収集命令セットを格納する(ステップS2404)。尚、格納された検査データ収集命令セットは、図2におけるステップS28で再び読み出されて実行される。
【0062】
ステップS2403において、検査指示命令が、検査データ収集命令セットでない場合、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、キー操作入力信号に相当する信号(以下、操作入力命令)であるか判定し(ステップS2405)、操作入力命令である場合は、検査前手順実行処理部9023は、キー入力処理プログラムを実行する(ステップS2406)。キー入力処理プログラムが実行されると、検査前手順実行処理部9023は、外部I/F部904を介して、コンテンツ再生機器3の操作入力を実行させるコマンドを発行する。コンテンツ再生機器3では、外部入力I/F部312から得られたコマンドに従い、操作入力I/F部305から制御部302に入力される信号を無視するとともに、操作入力I/F部305からの入力信号であるかのように操作入力命令を処理し、あたかも操作入力I/F部305からの入力があったかのように、コンテンツ再生機器3を制御する。
【0063】
ステップS2405において、検査指示命令が、操作入力命令でない場合、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、ユーザへの操作指示やユーザへのお報せなどの表示を指示する信号(以下、表示命令)であるか判定し(ステップS2407)、表示命令である場合は、検査前手順実行処理部9023は、表示プログラムを実行する(ステップS2408)。表示プログラムが実行されると、検査前手順実行処理部9023は、外部I/F部904を介して、コンテンツ再生機器3に表示を実行させるコマンドを発行する。コンテンツ再生機器3では、外部入力I/F部312から得られた表示命令を反映したコマンドに従う。
【0064】
ここで、表示命令を反映したコマンドによる指示が画像表示であれば、あらかじめ記憶部303または不揮発性メモリ311に格納されている表示画面を生成するための値、または、画面表示命令に付随する表示画面を生成するための値を用いて、制御部302で画面表示命令で指示された画面が生成される。生成された画面はグラフィックデータとしてグラフィックバッファ3034へ書き込まれ、さらに、ビデオバッファ3033に格納されているビデオデータと合成されて表示バッファ3035に書き込まれ、表示バッファ3035から表示データがビデオ出力部308へ入力されて処理され、表示媒体に表示される。
また、表示命令を反映したコマンドによる指示が音声表示であれば、画像同様に、あらかじめ記憶部303または不揮発性メモリ311に格納されている音声を生成する値、または、表示命令に付随する音声を生成する値を用いて、制御部302で音声データが生成され、オーディオバッファ3036に格納され、オーディオ出力部309で処理され音声媒体から出力される。
【0065】
ステップS2407において、検査指示命令が、画面表示命令でない場合、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、ソフトウェアの書き換えを指示する信号(以下、ソフト書換命令)であるか判定し(ステップS2409)、ソフト書換命令である場合は、検査前手順実行処理部9023は、ソフト書換プログラムを実行する(ステップS2410)。ソフト書換プログラムが実行されると、検査前手順実行処理部9023は、外部I/F部904を介して、コンテンツ再生機器3にソフトウェア書換を実行させるコマンドを発行する。コンテンツ再生機器3では、外部入力I/F部312から得られたコマンドに従い、あらかじめ不揮発性メモリ311に格納されているソフトウェア、もしくは、退避領域3031に一時的に退避させて動作しているソフトウェアのうち、書き換え対象のソフトウェアプログラムを、ソフト書換命令に付随して得られる新たなソフトウェアに書き換える。
【0066】
ここで、ステップS2410で実行されるソフト書換命令は、検査を円滑に効率的に行うために、一時的にソフトウェアを書き換えているので、図2におけるステップS28で検査データを収集した際に、再び元の状態にソフトウェアを書き換える必要が生じる場合がある。
【0067】
ステップS2409において、検査指示命令が、ソフト書換命令でない場合、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、強制的にハードウェアのレジスタ値を書き換えるなどして、コンテンツ再生機器3を構成するハードウェアを直接制御させることを指示する信号(以下、HW制御命令)であるか判定し(ステップS2411)、HW制御命令である場合は、検査前手順実行処理部9023は、HW制御プログラムを実行する(ステップS2412)。HW制御プログラムが実行されると、検査前手順実行処理部9023は、外部I/F部904を介して、コンテンツ再生機器3にハードウェア制御を実行させるコマンドを発行する。コンテンツ再生機器3では、外部入力I/F部312から得られたコマンドに従い、制御部302は、制御対象のハードウェアに対して、レジスタ値を書き換える、あるいは、ハードウェアの制御信号の制御などを行う。
【0068】
ステップS2412で実行されるHW制御命令は、検査を円滑に効率的に行うために、一時的にハードウェアを制御しているので、図2におけるステップS28で検査データを収集した際に、再び元の状態にハードウェアを制御する必要が生じる場合がある。
【0069】
ステップS2412実行後、または、ステップS2411において、検査指示命令が、HW制御命令でない場合は、検査前手順実行処理部9023は、検査指示命令が、無効もしくは指示終了であるとみなし、記憶部903内の検査データ領域9033に、実行した検査指示命令を履歴として格納し(ステップS2420)、 検査指示信号実行処理を終了する(ステップS2413)。
【0070】
上記手順で検査指示信号を実行した後、コンテンツ再生機器3は、図2で説明したように、検査信号発生装置に接続し(ステップS26)、検査信号の受信を開始し(ステップS27)、検査データ収集処理を開始する。
【0071】
以下、図1のメンテナンス装置9に図3のコンテンツ再生機器3が接続されているとして、検査データ収集(図2におけるステップS28)の具体的な動作をステップS28における処理のフローチャートである図7を用いて説明する。
【0072】
コンテンツ再生機器3が図2におけるステップS28を開始すると(ステップS2800)、制御部902の検査手順実行処理部9024は、検査開始時間となったことをタイマ部905が報告するまで、検査データ収集処置の開始を待ち続ける(ステップS2801)。タイマ部905から検査開始時間であるとの報告が検査手順実行処理部9024にあると(ステップS2801のyes)、検査手順実行処理部9024は、記憶部903の検査手順領域9031から、図6におけるステップS2404で格納された検査データ収集命令セットを構成するそれぞれの命令(以下、検査命令)を順次読み出していく(ステップS2802)。
【0073】
検査手順実行処理部9024は、読み出された検査命令が、検査データを収集することを指示する命令(以下、収集命令)であるか判定し(ステップS2803)、収集命令であれば、検査手順実行処理部9024は、収集命令に付随する値に基づいて、外部I/F部904からコンテンツ再生機器3に対して、収集するビデオバッファ3033に格納されたデータ、グラフィックバッファ3034に格納されたデータ、表示バッファ3035に格納されたデータ、のいずれかを含む画像データの、あるポイントから他のポイントまでといった空間的な領域と、あるいは/または、前記画像データと、オーディオバッファ3036に格納された音声データの、あるタイミングから他のタイミングまでといった時間的な領域と、で制限された範囲内のデータを指定し(ステップS2820)、外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3から検査データを収集し、記憶部903の検査データ領域9033へ格納する(ステップS2804)。ここで収集するデータは、時間ゼロすなわち静止画であっても良いし、動画でも良い。動画であれば、チャネルの切り替えやメニュー表示などのコマンドの切り替えの遷移の中で起こる事象の確認を行いやすくなる。更に、収集するデータは、データ放送やWEBのコンテンツなど、コンテンツに依存して生じる事象に対応するために、デコーダ部307の入力データであるコンテンツデータを含むことがより望ましく、コンテンツを送信することで、この装置(個体)特有の事象か、コンテンツに依存した、本機種共通の不具合かの判断を診断することができる。
【0074】
例えば、図3に示すコンテンツ再生機器3であるデジタルTVにおける検査データ収集作業は、以下のようになる。
検査命令が収集命令であった場合、制御部902の検査手順実行処理部9024は、外部I/F部904からコマンドを発行し、コンテンツ再生機器3のデコーダ部307が動作を停止している場合は起動させ、例えばAV入力経路313からビデオ出力部308とオーディオ出力部309までの処理経路のように、検査信号がデコードされ出力される処理経路を設定する。制御部302は、ビデオバッファ3033、グラフィックバッファ3034、表示バッファ3035、オーディオバッファ3036の4つのバッファに格納されたビデオデータ、グラフィックデータ、表示データ、オーディオデータを、外部I/F部312を介して、メンテナンス装置9へ送信し、メンテナンス装置9では、制御部902が、受信した前記4つのデータを、検査データ領域9033へ格納させ、検査データの収集を行う。
また、ステップS2820により空間的時間的な指定があれば、メンテナンス装置9に送信されるデータは指定に従って制限された範囲内のものに限られる。
【0075】
一方、ステップS2803において、検査命令が、収集命令ではない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査命令が、操作入力命令であるか判定し(ステップS2805)、操作入力命令であれば、図6におけるステップS2405と同様の処理手順で、操作入力命令に基づいてキー入力プログラムを実行する(ステップS2806)。
【0076】
ステップS2805において、検査命令が、操作入力命令ではない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査命令が、表示命令であるか判定し(ステップS2807)、表示命令であれば、図6におけるステップS2407と同様の処理手順で、表示命令に基づいて表示プログラムを実行する(ステップS2808)。
【0077】
ステップS2807において、検査命令が、表示命令ではない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査命令が、ソフト書換命令であるか判定し(ステップS2809)、ソフト書換命令であれば、図6におけるステップS2409と同様の処理手順で、ソフト書換命令に基づいてソフト書換プログラムを実行する(ステップS2810)。
【0078】
ステップS2809において、検査命令が、ソフト書換命令ではない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査命令が、HW制御命令であるか判定し(ステップS2811)、HW制御命令であれば、図6におけるステップS2411と同様の処理手順で、HW制御命令に基づいてハードウェア制御プログラムを実行する(ステップS2812)。
尚、ステップS2810は、図6におけるステップS2410が実行された場合、または、一度ステップS2810が実行されている場合に、コンテンツ再生機器3を検査前の状態へ戻すために使用される場合がある。同様に、ステップS2812も、図6におけるステップS2412が実行された場合、または、一度ステップS2812が実行されている場合に、コンテンツ再生機器3を検査前の状態へ戻すために使用される場合がある。
【0079】
ステップS2811において、検査命令が、HW制御命令ではない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査命令が、検査データ収集終了を示す信号であるか判定し(ステップS2813)、検査データ収集終了を示していればステップS2814へ進む。
また、検査データ収集終了を示していない場合は、検査手順実行処理部9024は、検査データ収集に関する動作履歴を、検査データ領域9033へ追加格納し(ステップS2821)、ステップS2802へ戻って再び検査手順領域9031から次の検査命令を読み出すことになる。
【0080】
ステップS2813で検査データの収集終了と判定されると、検査データ送信処理部9025は、検査データ領域9033に集めた検査データを、エンコーダ部906へ転送し、エンコーダ部906は、診断装置へ送信するのに最適なサイズに、転送された検査データをエンコードする(ステップS2814)。ここでエンコーダ部906が行うエンコードは、静止画であればJPEG、動画であればMPEG2やMPEG4やH.264など適切なエンコードであればよく、また、フルハイビジョンの画像サイズをエンコードする場合には、動画でも静止画でも大きなサイズになるので、画像サイズを縦横とも1/2に縮小してからエンコードする機能を持たせてもよい。さらに、エンコードされた検査データは、エンコーダ部906から再び検査データ領域9033へ格納され(ステップS2815)、検査データ収集終了とエンコードに関する動作履歴を、検査データ領域9033へ格納し(ステップS2822)、検査データ収集処理を終了する(ステップS2816)。
ここで、上記各ステップで収集されエンコードされた検査データは、図2のステップS31で、通信I/F部901から伝送路2の先にある診断装置へ向けて送信される。
【0081】
以上に示す、ステップS2420、ステップS2821およびステップS2822によって、検査データを収集し終わるまでの動作履歴を示す動作履歴情報を検査データに含めることにより、診断装置は、コンテンツ再生機器3における検査データ収集処理で生じる事象の発見を容易にすることが可能となる。検査履歴データは、ビデオバッファ3033、グラフィックバッファ3034、表示バッファ3035から収集された検査データに比べはるかに小さいため、検査履歴データによる検査は非常に有効であり、より適切な診断結果信号を生成することが可能となる。
【0082】
また、ステップS2820によって、検査データとして収集するビデオバッファ3033、グラフィックバッファ3034、表示バッファ3035、オーディオバッファ3036の各データを、空間的、時間的に制限した領域のものとすることで、診断装置における診断処理の低減と、コンテンツ再生機器3から診断装置に至る伝送路の容量的制約の低減と、が可能となる。
【0083】
さらに、検査データに含まれるアプリケーション動作によって生じる事象を含む信号は、アプリケーションレベルでの制御データまたは前記制御データと、画像データおよび音声データのいずれか、もしくは全て、の混合データであっても良い。すなわち、コンテンツ再生機器3で動作するアプリケーション上に現れる事象が確認できるデータであれば良い。更に、検査データは、コンテンツ再生機器3の記憶部303に格納されている全データの任意の一部とすることも可能である。その場合、前記任意の一部の指定方法は、あらかじめコンテンツ再生機器3の不揮発性メモリ311に書き込まれていても良いし、検査指示信号によって指定しても良い。
【0084】
尚、図7におけるステップS2801の処理は、図2におけるステップS25の直後にあってもよい。その場合は、検査信号発生装置への接続が検査開始直前となり、ユーザ操作などの外的要因により検査信号の受信開始または検査データの収集が阻害される可能性が低くなり、より効率的に検査を行うことが可能となる。また、同様の理由から、図7におけるステップS2801の処理が、図2におけるステップS26の直後にあっても、ほぼ同じ効果が得られる。
【0085】
尚、検査データに対する診断は、診断装置で自動診断しても良いが、実際には、診断装置側でサービスマンが診断することが必要となる場合もある。この場合には、検査データと一緒に送られてくる動作履歴を見て、後からサービスマンが診断することが可能である。また、コマンドを送りながら、サービスマンが診断するという場合も存在し、この場合には、S2401で検査開始時間がゼロとなり、S25へ進み、S2800以降で用いられる検査データ収集命令セットは、サービスマンがその都度検査命令を指定して送信し、必要なデータを装置から取得して、その結果をサービスマンが判断した上で、次の検査命令を送信する、ということが可能である。
【0086】
また、診断装置側のサービスマンと会話をしながらチェック状況やユーザ動作などを確認して、チェックを進めることも可能である。本システムでは、信号としてのチェックは可能であるが、液晶テレビのバックライト、液晶パネル、液晶ドライバなどで発生する事象を検出することができない。このような場合でも、本発明に加えて、ユーザとの会話を行うことで、事象の特定を行うことが容易になる。また、液晶パネル、液晶ドライバなどで発生する事象は、特定のコンテンツを表示することでより発見しやすくすることが可能であるので、検査装置5から特定のURLを指定して、液晶パネルや液晶ドライバチェック用のページを表示させることで、ユーザが容易に該事象を発見することが可能になる。
【0087】
このように、以上に示した構成によれば、商品出荷後に発見された事象に対する検査が容易となり、より適切で効果的な検査を行うことが可能となる。
【0088】
さらに、メンテナンス装置9は、以上に示す動作により実施された検査の結果として必要と認められる処置を自動的に行っても良く、その場合の動作を、図1、図8のフローチャートおよび図8のステップS44の図9を参照して、以下に説明する。
図2のステップS33において一連の検査工程が終了した後に(ステップS40)、メンテナンス装置9は、通信I/F部901によって接続している伝送路2の先に接続されている処置装置からの接続要求を受け取ると、通信I/F部901と処置装置との間で接続手順を実行する。接続が確立すると(ステップS41)、制御部902の処置信号受信処理部9026は、処置装置から送信される処置信号を受信する(ステップS42)。処置信号受信処理部9026が、処置信号を受信し終えると、通信I/F部901は、切断手順に従い、処置装置との接続を切断し(ステップS43)、制御部902の処置手順実行処理部9027は、受信した処置信号を実行し(ステップS44)、処理を終了する(ステップS45)。
【0089】
ここで、処置装置は、メンテナンス装置9に対し、処置信号を送信するために必要な機能をもった装置である。
また、処置信号を実行するステップS44は、図9に示す処理を行う。通信I/F901が処置装置を切断する(ステップS43)と、処置手順実行処理部9027は、外部I/F部904を介してコンテンツ再生機器3に対しコマンドを発行し、処置処理を開始する旨を、画面または音声またはLED表示などの方法で、コンテンツ再生機器3上で表示させる(ステップS4401)。表示する内容としては、「今からこの装置に対する事象レポートを表示し、レポートに従って最適の対応を行います。」といった内容で、処置処理の開始を求める内容であればよいが、「処置を始めてよろしいですか?」といった内容が最後に追加されて、開始許諾を求めるものであればさらによい。
【0090】
ステップS4401で処置処理の開始許諾を求める表示を指示したときは、処置手順実行処理部9027は、コンテンツ再生機器3の入力I/F部305から得られ、外部I/F部312から、メンテナンス装置9の外部I/F部904に送信されてくる、処置処理を許諾することを意味する信号(以下、処置許諾信号)が得られたか判定する(ステップS4402)。
【0091】
処置許諾信号が得られたと判定された場合、処置手順実行処理部9027は、通信I/F部901が受信し、ヘッダ等の不要な部分を取り除いた処置信号(以下、処置命令)が、診断結果を表示することを指示した信号(以下、診断結果表示命令)であるか判定し(ステップS4403)、診断結果表示命令である場合、表示プログラムを実行する(ステップS4404)。
【0092】
また、ステップS4402で処置許諾信号が得られない場合は、処置手順実行処理部9027は、処置処理を終了する(ステップS4409)。尚、ステップS4401、および、ステップS4404における表示に関する処理は、図6におけるステップS2408と同じ処理となる。
【0093】
ステップS4403で、処置命令が、診断結果表示命令でない場合は、処置手順実行処理部9027は、処置命令が、コンテンツ再生機器3に搭載されているソフトウェアの書き換えを指示する信号(以下、ソフト書換処置命令)であるか判定し(ステップS4405)、ソフト書換処置命令であった場合、処置手順実行処理部9027は、外部I/F部904を介して、コンテンツ再生機器3に対して、ソフトウェアの書き換えを要求するコマンドを送信する。尚、ソフトウェアの書き換え処理は、図6におけるステップS2410と同じ手順でよい。
ステップS4404で、処置命令が、ソフト書換処置命令でない場合は、制御部902は、処置命令に付随する値を用いて、コンテンツ再生機器3内の各部の初期値や現在の動作パラメータなどの設定データの書き換えを要求するコマンドと送信し(ステップS4408)、処置処理を終了する(ステップS4409)。
【0094】
以上の動作は、処置装置が複数の処置内容を含んだ処置信号を生成し、コンテンツ再生機器3で処置信号実行処理(ステップS44)の処置開始表示(ステップS4401)を行うときにユーザに処置内容を選択させることも可能である。
【0095】
また、メンテナンス装置9は、コンテンツ再生機器3に含まれても良い。
図10は、本実施の形態に係るメンテナンス装置9がデジタルTVに含まれている場合の構成例を示す機能ブロック図である。ここで、コンテンツ再生機器3はデジタルTVであり、デジタルTVに関する構成例は、図3と同じである。従って、図10における各機能ブロックおよび経路は、図1および図3と同じ番号で示している。
【0096】
図10(a)に示すように、メンテナンス装置が内蔵されたコンテンツ再生機器(以下、メンテナンス装置内蔵機器)8は、バス300、通信I/F部301、制御部302、記憶部303、タイマ部304、操作I/F部305、AV入力部306、デコーダ部307、ビデオ出力部308、オーディオ出力部309、不揮発性メモリ311、AV入力経路313、エンコーダ部906から構成される。
また、記憶部303内部には、退避領域3031、ビデオバッファ3033、グラフィックバッファ3034、表示バッファ3035、オーディオバッファ3036、検査手順領域9031、ステート記憶領域9032、検査データ領域9033を含む。
また、メンテナンス装置内蔵機器8は、経路29を経由して伝送路2に接続され、伝送路2上の他の機器との通信を行う。
【0097】
図10において、図1のメンテナンス装置9の外部I/F部904と図3のコンテンツ再生機器3の外部I/F部312は廃止されている。さらに、メンテナンス装置9の、バス900、通信I/F部901、制御部902、記憶部903、タイマ部905は、それぞれ、コンテンツ再生機器3の、バス300、通信I/F部301、制御部302、記憶部303、タイマ部304に機能統合されている。図10(b)に示すように、制御部302は、ステート信号送信処理部9021、検査指示信号受信処理部9022、検査前手順実行処理部9023、検査手順実行処理部9024、検査データ送信処理部9025、処置指示信号受信処理部9026、処置手順実行処理部9027を備える。
従って、メンテナンス装置内蔵機器8の動作は、図2、図6、図7、図8、図9を用いて説明した動作と同じである。
【0098】
ただし、メンテナンス装置9の制御部901が、外部I/F903、経路39、コンテンツ再生機器3の外部I/F312を経由して、コンテンツ再生機器3の制御部302に対して実行していた処理が、制御部902と制御部302の機能統合によってなくなり、関連する処理はメンテナンス装置内蔵機器8の制御部302が直接実行することになる。同様に、メンテナンス装置9のタイマ部905で実行されていた処理も、メンテナンス装置内蔵機器8のタイマ部304で実行されることになる。
また、記憶部903内に備えていた検査手順領域9031、ステート記憶領域9032、検査データ領域9033が、メンテナンス装置内蔵対象機器8の記憶部303内に備えることになることから、メンテナンス装置9の記憶部903内の前記3つの領域へのアクセスを含む処理は、メンテナンス装置内蔵機器8の記憶部303内の該当領域(検査手順領域9031、ステート記憶領域9032、検査データ領域9033)へのアクセス処理となる。
【0099】
前記メンテナンス装置内蔵機器8の構成例によると、記憶部303の容量拡大は生じるが、メンテナンス装置9の備えるコンテンツ再生機器3に対する検査機能を損なうことがないだけではなく、共通機能ブロックの統合によるコストダウンを見込むことも可能となる。
【0100】
本実施形態におけるコンテンツ再生機器3またはメンテナンス装置内蔵機器8は、デジタルTVを例に説明を行ったが、メンテナンスを行う対象となる機器は、画像表示機能、あるいは、音声表示機能、あるいは、動画表示機能の、いずれか、または、ひとつが備わっている機器であれば良い。すなわち、HDDレコーダ、カーナビ、携帯電話、デジタルカメラ、FAX、複写機または複合機などに摘要可能である。さらには、エアコンや電子レンジなど、本来の機能としては画像表示機能や音声表示機能や動画表示機能のない機器であっても、操作インターフェースに使用される表示系アプリなどの補助的な機能を対象として、本発明を適用することも可能である。
【0101】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図を参照して以下に説明する。
図11(a)は、本実施の形態に係る検査装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図11(a)に示すように、検査装置5は、バス500、通信I/F部(通信手段)501、制御部502、記憶部503、指示信号選択部(検査手順選択手段)504から構成され、記憶部503内部には、指示信号領域(検査手順記憶手段)5031を含む。図11(b)に示すように、制御部502は、ステート信号受信処理部(ステート信号受信手段)5021と検査指示信号送信処理部(検査手順送信手段)5022とを備える。
ここで、各部の間でやり取りされるデータや制御信号などの各種信号は、バス500を経由して転送される。
また、検査装置5は、経路25を経由して伝送路2に接続され、伝送路2上の他の機器との通信を行う。
【0102】
図11に示す検査装置5の動作について、図12のフローチャートを参照して、説明する。検査装置5は、通信I/F部501で、メンテナンス装置9からの接続要求を受信すると(ステップS10)、メンテナンス装置9との接続を確立する(ステップS11)。
【0103】
接続が確立すると、制御部502のステート信号受信処理部5021は、通信I/F部501を介して、伝送路の先に接続されているメンテナンス装置3からステート信号を受信する(ステップS13)。ステート信号は、製造番号のようなあらかじめ登録されているメンテナンス対象装置3に固有の識別情報、および、コンテンツ再生機器3に現在設定されている各種の値、である状態情報を含み、コンテンツ再生機器3が設置されている場所を特定する設置地域識別情報や、コンテンツ再生機器3に係る操作履歴情報が含まれる。すなわち、ステート信号は、コンテンツ再生機器3が稼動後に自動で設定された値に限らず、ユーザが設定した値も含んでいる。また、ステート信号として検査装置で受信される値の数と種類は、検査の目的に応じて任意である。
【0104】
ステップS13で受信されたステート信号は、コンテンツ再生機器3の前記状態情報が通信に適したパッケージ処理された信号である。尚、通信に適したパッケージ処理とは、一般的には、通信に必要なヘッダ類が付加されて、分割処理および誤り訂正符号化されることであり、その方法について本発明では特に規定しないが、これらパッケージ処理とその逆処理であるアンパッケージ処理は、通信I/F部501で実施される。
【0105】
通信I/F部501でアンパッケージ処理され、ステート信号受信処理部5021が受信したステート信号に基づき、指示信号選択部504により、検査指示信号が選択され(ステップS14)、選択された検査指示信号が、検査指示信号送信処理部5022の指示で通信I/F部501を介してメンテナンス装置9へ送信される(ステップS15)。
【0106】
ここで、記憶部503内の指示信号領域5031には、検査手順であるコンテンツ再生機器3を制御する複数の命令が、ステート信号に対応づけられた表として格納されている。前記表のステート信号項目としては、例えば、機器IDと設置地域識別情報の組合せが挙げられ、また、前記組合せに対応する命令の項目は、前記組合せごとに、検査前の複数の命令と、検査時の複数命令からなる命令セットが、実行順に列挙されている。
さらに具体的に例を挙げると、機器IDが「A」で設置地域識別情報が「B」の組み合わせに対して、実行順に列挙された「電源を切る」「検査開始時間は11時50分」という2つの検査前命令と、同様に実行順に列挙された「地上波TV放送の4チャンネルを受信」「音量は20に設定」「9分待機」「EPG表示に切り替える」「1分待機」「表示バッファのデータを取得」「1秒間計数」「データ取得を止める」「検査を終了する」という9つの命令からなる命令セットが、対応づけられている。
【0107】
指示信号選択部504は、ステート信号の要素から、機器IDと設置地域識別情報とを抽出し、前記表を参照することにより、前記2つの命令と命令セットからなる検査手順を確定し、検査指示信号送信処理部5022は、通信I/F部501から検査指示信号としてメンテナンス装置9へ送信することになる。
尚、送信される検査指示信号には、検査開始時間を指示する信号、および、キー操作入力信号に相当する信号、および、ユーザへの操作指示を表示させることを要求する信号 のいずれかを含む。さらに、コンテンツ再生機器3に搭載されているソフトウェアの書き換えを要求する信号を含み、さらに、コンテンツ再生機器3のハードウェアを直接制御することを要求する信号をも含む。
【0108】
ステップS15で、検査装置5が検査指示信号を送信し終わったら、検査指示信号送信処理部5022は、通信I/F部501に指示してメンテナンス装置3との接続を切断し(ステップS16)、検査装置5における検査フローは完了する(ステップS18)。
尚、前記検査装置の動作説明におけるメンテナンス装置は、コンテンツ再生機器3に関するステート信号を送信し、検査信号を受信し、受信した検査信号を実行してコンテンツ再生機器3のメンテナンスを行うために必要な機能をもった装置である。
【0109】
本実施形態の検査装置によれば、メンテナンス対象となる機器の状態および設置状況に応じて検査手順を指示することが可能となり、効率的な検査によって、特に個別対応が必要とされる特殊な事象の発見さえも可能となる。
また、本実施形態の検査装置によれば、回収修理が必要ではあるが、ユーザにとっては時々しか使用しない機能で発見された事象に対して、回収日までの期間は、一時的に事象に関連する機能や操作を制限するなどの対応も可能となり、ユーザ満足度を維持しつつ確実なメンテナンス業務の遂行が可能となる。
また、数例しか報告されない同じ症状を示す事象に対して、点在するお互いのコンテンツ再生機器の動作状態を同じ状態にして事象を再現させてみるなどの解析が、ユーザ宅に設置された状態で実施することも可能である。
【0110】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について、図13を参照して以下に説明する。前記2つの実施形態で説明した、メンテナンス装置9またはメンテナンス装置内蔵機器8と、検査装置5を組み合わせることにより、リモート検査システムとして運用が可能である。
また、メンテナンス装置9またはメンテナンス装置内蔵機器8に対して、検査信号を与える検査信号発生装置と、同様に処置信号を与える処置装置と、処置装置が処置信号を選択するために、メンテナンス装置9またはメンテナンス装置内蔵機器8から得られる検査データから検査結果を導き出す診断装置と、を加えることにより、遠隔にあるコンテンツ再生機器3またはメンテナンス装置内蔵機器8の、検査から処置までを、一貫して行う、リモート検査システムとしての運用も可能である。
【0111】
図13は、本実施の形態に係るリモート検査システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図13(a)に示すように、本実施形態のリモート検査システムの一形態は、検査信号発生装置1、伝送路2、コンテンツ再生機器3、診断装置4、検査装置5、処置装置7、メンテナンス装置9から構成される。また、検査信号発生装置1、診断装置4、検査装置5、処置装置7、メンテナンス装置9は、それぞれ、経路21、経路24、経路25、経路27、経路29により伝送路2に接続され、さらに、コンテンツ再生機器3は経路39によりメンテナンス装置9に接続されている。
【0112】
また、図13(b)に示すように、本実施形態のリモート検査システムの他の形態では、検査信号発生装置1、伝送路2、コンテンツ再生機器3、診断装置4、検査装置5、第2の伝送路6、処置装置7、メンテナンス装置9から構成される。また、診断装置4、検査装置5、処置装置7、メンテナンス装置9は、それぞれ、経路24、経路25、経路27、経路29により伝送路2に接続され、さらに、コンテンツ再生機器3は経路39によりメンテナンス装置9に接続されている。また、検査信号発生装置1、コンテンツ再生機器3、診断装置4は、それぞれ経路61、経路63、経路64により第2の伝送路6と接続される。
【0113】
図13(a)は、インターネットの動画コンテンツ配信サイトから配信されるコンテンツを検査信号に利用した場合のリモート検査システムの構成例である。検査信号は、検査装置5とメンテナンス装置9とを接続する伝送路2上を経由して、メンテナンス装置9で受信され、コンテンツ再生機器3に転送される。コンテンツ再生機器3では、転送された検査信号を、デコーダ307へ転送しデコードすることになる。
また、図13(b)は、TV放送局から放送されるコンテンツを検査信号に利用した場合のリモート検査システムの構成例で、第2の伝送路6が放送網に相当し、検査信号は、放送局に相当する検査信号発生装置1から経路61、第2の伝送路6、経路63と経由してコンテンツ再生機器3で受信される。
【0114】
図13(a)および図13(b)におけるリモート検査システムの動作は、図2、図6、図7、図8、図9、図11、図12を用いて説明が可能であり、図2と図12との間には、以下の相関関係がある。
ステップS21とステップS11、および、ステップS25とステップS16は、メンテナンス装置9と検査装置5との接続および切断に関する処理でお互いが対応している。ステップS22でメンテナンス装置9から送信されたステート信号は、ステップS13で検査装置5で受信されている。ステップS15で検査装置5から送信された検査指示信号は、ステップS23でメンテナンス装置9で受信されている。
【0115】
また、ステップS31において、メンテナンス装置9によって収集された検査データは、診断装置4に送信されるが、診断装置4では、受信した検査データを参照および分析して、診断結果信号を出力しても良い。尚、診断結果信号の出力は、例えば、単なるテキストデータ、または、それらがプリント出力された紙データ、または、他のアプリケーションに引き渡される数値データの集合体、または、他のアプリケーションを起動させる命令または命令の集合体、または、他のデジタル機器または機器の一部を動作させる起動命令など、本発明では形態を問わない。
さらに、処置装置7は、前記診断結果信号を参照して、コンテンツ再生機器3に対する処置内容を決定しても良い。
【0116】
いずれの構成例も、メンテナンス装置9およびコンテンツ再生機器3および経路39は、メンテナンス装置内蔵機器8に置き換えられてもよい。
また、検査信号発生装置1、診断装置4、検査装置5、処置装置7は、図13に示すように互いに独立した装置であっても良いし、任意の組合せで機能統合された装置形態をなしていても良い。
さらに、各装置を接続する伝送路は、図13に示した(a)(b)2つの例に限らず、検査信号発生装置1、診断装置4、検査装置5、処置装置7の各装置がメンテナンス装置9に確実に接続される形態であれば良い。
【0117】
伝送路と各装置との組合せで、図13にない構成による使用例として、図13(b)における経路63がなくなり、メンテナンス装置9と第2の伝送路6との間が経路69で接続されている形態がある。例えば、鉄道車両内の動画コンテンツサービスを行う機器では、動画コンテンツは停車中に無線でダウンロードする。従って、前記形態によれば、ステート信号と検査指示信号は鉄道用の通信回線を利用し、検査信号や検査データは停車中に繋がる無線回線を利用することにより、リモート検査システムが構成でき、揺れや加減速や速度や通過地域などの鉄道車両の運行条件に応じたリモート検査が可能となる。
【0118】
以上、第1から第3の3つの実施の形態で説明したメンテナンス装置、および、検査装置、および、前記2つの装置から構成されるリモート検査システムによる、検査とメンテナンスの例を、コンテンツ再生機器がデジタルTVであった場合について、以下に示す。
【0119】
ユーザから、チャンネル切替を無造作に繰り返す、いわゆるザッピング操作時に、「エラー:受信できません」という表示が出て、視聴できるはずの番組を視聴できない時が稀にある、との報告があった場合、メンテナンス担当者は、ユーザに、同じ現象がおきたときに、検査装置へアクセスすることを促す。
尚、上記エラー表示は、正しくは、アンテナ入力の電界強度が受信感度に満たない場合に、表示される注意メッセージである。
【0120】
しかし、デジタルTVの周囲温度が、搭載されているチューナの性能保証条件の範囲境界であった場合に生じる事象の可能性もある。このような事象の場合は、電界強度が受信感度を超えているかどうか判定するタイミングを、ソフト修正によってずらすことで回避できる。ただし、99%以上のユーザは、チューナの性能保証条件範囲内で稼動しており、上記判定のタイミングを遅くすると、ほとんどのユーザがチャンネル切替時に不快感を覚えると予測されるので、個別対応で解決するほうが良い。
前記現象が起きた場合は、前記表示を表示させる正当な理由か否かを確認する必要がある。すなわち、まず、視聴不可能なチャンネルが選択されていないか、次に、表示時に本当に電波が弱くなっていないか、の2点を確認する必要がある。
【0121】
また、検査装置には、事象に応じて検査指示信号を示す表が用意されている。すなわち、対応を行うデジタルTVを特定するために、この事象が発生する可能性のある機器IDの範囲、設置地域識別情報、その地域における視聴可能なチャンネルの3項目にたいし、検査指示信号となる検査命令および命令セットが手順通りに記述される。上記特定されたデジタルTVに対する検査前の検査命令は、特にない。
【0122】
また、検査時の命令セットは、「0秒後に検査開始」「グラフィックデータ取得」「電界強度表示設定」「グラフィックデータ取得」「チャンネル切替」「1秒計数」「グラフィックデータ取得」「電界強度表示設定」「グラフィックデータ取得」と続き、以降は、「チャンネル切替」から2回目の「グラフィックデータ取得」までが、視聴可能チャンネル分だけ繰り返される。
ここで、命令セットの、最初の「チャンネル切替」までにある2つの「グラフィックデータ取得」は、前者が画面にエラー表示が出ているか確認するため、後者がデジタルTVに備えられた電界強度測定機能による数値表示を確認するためである。また、「1秒計数」は、チャンネル切り替えが完了した直後のグラフィックデータを取得するための命令である。
【0123】
ユーザのところに設置しているデジタルTVで、再び同じ現象が出た時点で、ユーザは、メンテナンス装置を操作して検査装置へアクセスし、リモート検査が開始される。メンテナンス装置は、ユーザの所有するデジタルTVを制御して、ステート信号を取得する。
検査装置は、機器ID、および、設置地域識別情報、および、現在の表示チャンネルから、検査指示信号を選択する。選択された検査指示信号は、メンテナンス装置で受信され、検査指示信号に含まれる検査命令が順次実行されることになる。
取得された検査データは、メンテナンス装置から診断装置へ送信され、診断装置では、視聴可能チャンネル毎に、チャンネル切替直後の画面と、電界強度測定値を表示した画面とをチェックすることが可能となる。診断装置では、チャンネル切替直後の画面にエラー表示があり、電界強度測定値を表示した画面で確認できる電界強度が受信感度以下であれば、そのチャンネルが電界強度不足であると判断する。
【0124】
この場合は、メンテナンス担当者が出向いて更なる検査と修理を行うことになる。また、アンテナの取り付け具合など、ユーザで確認できることであれば、アナウンスのうえユーザに確認してもらってもよい。
また、チャンネル切替直後の画面にエラー表示があるが、電界強度測定値を表示した画面で確認できる電界強度が受信感度を超えていれば、デジタルTVのソフトを修正して、チャンネル切替時に電界強度が受信感度を超えているかどうか判定するタイミングをずらす、個別対応措置となる。
メンテナンス装置が、処置装置に接続できる場合は、処置装置から得られる処置信号に基づいて、メンテナンス装置は、デジタルTVに対して、前記診断結果である“メンテナンス担当者が修理に伺います”“アンテナの取り付け具合を確認してください”“個別対応となります。ソフトをアップデートしてもよろしいですか?”などの画面表示を表示させるように制御する。ソフトアップデートであれば、ユーザがリモコンから指定されたキーを押すと、メンテナンス装置が、デジタルTVを制御して、ソフトの書き換えを行う。
【0125】
他の例として、特定のチャンネルで映像が動かなくなる時がある、との報告があった場合は、メンテナンス担当者は、前記の例と同様に、ユーザに、同じ現象がおきたときに、検査装置へアクセスすることを促す。
尚、上記現象は、放送されているストリームデータであるTSを取得できない場合におきることが多いため、検査装置は、前記の例と同様に、メンテナンス装置経由でデジタルTVのステート信号として設置地域識別情報を取得し、順次検査指示信号となる命令セットを送出する。
【0126】
この場合、命令セットは、「0秒後に検査開始」「グラフィックデータおよびビデオデータ取得」「画面情報表示ボタン押下操作」「グラフィックデータおよびビデオデータ取得」「画面情報表示ボタン押下操作」「グラフィックデータおよびビデオデータ取得」と続き、以降「チャンネル切替」「1秒計時」を挟んで、前記3回におよぶ「グラフィックデータおよびビデオデータ取得」を、視聴可能チャンネル分だけ繰り返される。尚、視聴可能チャンネル全てにわたって検査をするのは、ユーザから報告のあったチャンネル以外でも現象が現れていないかを確認するためであるが必須ではない。
【0127】
図14は、取得するグラフィックデータやビデオデータの例である。尚、図14における(A)(B)(C)(D)はそれぞれ同一のバッファ内のデータであり、それぞれ、上段がチャンネルに合わせたときの、中段が最初の「画面情報表示ボタン押下操作」後の、下段が2回目の「画面情報表示ボタン押下操作」後の、表示データである。
ここで、不具合がない場合の画面表示、すなわち、表示バッファ3035に格納された表示データは、図14(C)となる。
【0128】
しかし、ユーザから報告のあったチャンネルで取得した検査データのうち、グラフィックバッファ3034に格納されていたグラフィックデータは、図14(B)となり、画面情報としてOSD表示されるチャンネル名「CH Asada」や時刻「12:45」は「画面情報表示ボタン押下操作」に従って表示されるが、ビデオバッファ3033に格納されていたビデオデータは、図14(A)のように、どのタイミングでも、上段と同じビデオデータとなる。
尚、このとき、ユーザには、図14(D)のように、画面情報は、操作に応じて順次切り替わっていくが、映像が止まったままになっているように見える。
【0129】
図14(A)および(B)に示す検査データからわかるのは、ビデオデータのみが動いていないということである。診断装置は、この事実から、これは放送されているTSが取得できていないことに起因して映像だけが停止している現象であり、過去の事例から、アンテナにおける受信電界強度が強すぎる状態であることが原因であると判断する。また、この場合の適切な処置は、アンテナ入力部分(AV入力部306の入力部分)にあるアッテネータを入れるように設定値を書き換えることである。
【0130】
メンテナンス装置が、処置装置に接続できる場合は、処置装置から得られる処置信号に基づいて、メンテナンス装置は、デジタルTVに対して、前記診断結果である“個別対応となります。設定値を適切に書き換えてもよろしいですか?”などの画面表示を表示させるように制御し、ユーザがリモコンから指定されたキーを押すことで了承が得られたら、メンテナンス装置が、デジタルTVを制御して、設定値の書き換えを行う。
【0131】
以上のように、従来であれば、メンテナンス担当者がユーザから、詳細に症状の説明をうけたうえで、ユーザ宅まで出張して対応し、最悪の場合は、回収修理または同等品との交換対応が必要であった一連のメンテナンス作業が、症状によってはメンテナンス担当者の出張対応が必要ではあるが、作業の大半または全部がリモートで行えるようになる。また、個別対応が可能であれば、回収修理などのコスト削減も可能となる。
【0132】
なお、記憶部303、記憶部503、記憶部903は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CR−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0133】
なお、図1および図10におけるステート信号送信処理部9021、検査指示信号受信処理部9022、検査前手順実行処理部9023、検査手順実行処理部9024、検査データ送信処理部9025、処置信号受信処理部9026、処置手順実行処理部9027、図11におけるステート信号受信処理部5021、検査指示信号送信処理部5022は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0134】
また、図1および図10におけるステート信号送信処理部9021、検査指示信号受信処理部9022、検査前手順実行処理部9023、検査手順実行処理部9024、検査データ送信処理部9025、処置信号受信処理部9026、処置手順実行処理部9027の機能を実現するためのプログラム、あるいは、図11におけるステート信号受信処理部5021、検査指示信号送信処理部5022の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンピュータシステムをメンテナンス装置あるいは検査装置として、リモート検査を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0135】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0136】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、メンテナンス装置が制御する、あるいは、メンテナンス装置を内蔵する、コンテンツ再生機器として、デジタルTVやHDDレコーダやネットワークカメラやTV電話や携帯電話やカーナビや鉄道車両内表示装置などの映像コンテンツを扱うデジタルAV機器、および、FAXプリンタや複合機などの画像データを扱うデジタル機器、および、操作系インターフェースに動画や音声や画像を用いるアプリケーションを搭載した、電子レンジや洗濯機や冷蔵庫やエアコンなどのデジタル家電機器が利用可能である。
また、前記各機器をリモートで検査し、メンテナンスを行う、リモート検査システムとしても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるメンテナンス装置9の概略構成を表すブロック図である。
【図2】本実施の形態によるメンテナンス装置の検査から診断までの処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】本実施の形態によるメンテナンス装置9に接続されるコンテンツ再生機器3の概略構成を表すブロック図である。
【図4】本実施の形態によるプレーン合成の例を説明する図である。
【図5】本実施の形態によるプレーン合成において発生する事象の例を説明する図である。
【図6】本実施の形態によるメンテナンス装置9における検査指示信号実行処理(ステップS24)の流れを示すフローチャート図である。
【図7】本実施の形態によるメンテナンス装置9における検査データ収集処理(ステップS28)の流れを示すフローチャート図である。
【図8】本実施の形態によるメンテナンス装置9における処置に関する処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】本実施の形態によるメンテナンス装置9における処置信号実行処理(ステップS44)の流れを示すフローチャート図である。
【図10】本実施の形態によるメンテナンス装置内蔵機器8の概略構成を表すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による検査装置5の概略構成を表すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態による検査装置5の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態によるリモート検査システムの概略構成を表すブロック図である。
【図14】コンテンツ再生機器がデジタルTVである場合の取得するグラフィックデータやビデオデータの例を示す図である。
【符号の説明】
【0139】
9…メンテナンス装置、
900…メンテナンス装置のバス、901…メンテナンス装置の通信I/F部(第1の通信手段)、902…メンテナンス装置の制御部、903…メンテナンス装置の記憶部、904…メンテナンス装置の外部I/F部(第2の通信手段)、905…メンテナンス装置のタイマ部、906…メンテナンス装置のエンコーダ部、9021…ステート信号送信処理部(ステート信号送信手段)、9022…検査指示信号受信処理部(検査手順受信手段)、9023…検査前手順実行処理部、9024…検査手順実行処理部(検査手順実行手段)、9025…検査データ送信処理部(検査データ送信手段)、9026…処置信号受信処理部(処置手順受信手段)、9027…処置手順実行処理部(処置手順実行手段)、9031…メンテナンス装置の記憶部内の検査手順領域、9032…メンテナンス装置の記憶部内のステート記憶領域、9033…メンテナンス装置の記憶部内の検査データ領域、
2…伝送路、29…経路、39…経路、
3…コンテンツ再生機器、
8…メンテナンス装置内蔵機器(デジタルAV機器、デジタル家電機器)、
300…バス、301…通信I/F部、302…制御部、303…記憶部、304…タイマ部、305…操作入力I/F部、306…AV入力部、307…デコーダ部、308…ビデオ出力部、309…オーディオ出力部、311…不揮発性メモリ、312…外部I/F部、313…AV入力経路、3031…記憶部内の退避領域、3033…記憶部内のビデオバッファ、3034…記憶部内のグラフィックバッファ、3035…記憶部内の表示バッファ、3036…記憶部内のオーディオバッファ、
5…検査装置、
25…経路、
500…検査装置のバス、501…検査装置の通信I/F部(通信手段)、502…検査装置の制御部、503…検査装置の記憶部、504…検査装置の指示信号選択部(検査手順選択手段)、5021…ステート信号受信処理部(ステート信号受信手段9、5022…検査指示信号送信処理部(検査手順送信手段)、5031…検査装置の指示信号領域、
1…検査信号発生装置、4…診断装置、7…処置装置、
21…経路、24…経路、27…経路、
6…第2の伝送路、
61…経路、63…経路、64…経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査手順を送信する検査装置に接続する第1の通信手段と、
制御信号に従い動作するコンテンツ再生機器に接続する第2の通信手段と、
前記第1の通信手段を介して、検査手順を受信する検査手順受信手段と、
前記検査手順受信手段が受信した検査手順に基づき、前記コンテンツ再生機器を制御する制御信号および前記コンテンツ再生機器により生成されたデータを要求する制御信号を生成して、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器へ送信し、前記要求の結果として取得したデータを検査データとして収集する検査手順実行手段と、
前記検査手順実行手段が収集した検査データを、前記第1の通信手段を介して送信する検査データ送信手段と
を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記検査手順は、検査の開始時刻に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記検査手順は、キー操作入力の代替えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記検査手順は、操作指示のユーザへの通知を前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記検査手順は、前記コンテンツ再生機器が記憶するプログラムの書き換えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記検査手順は、前記コンテンツ再生機器が備えるハードウェアの制御を前記メンテナンス装置に要求する情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記コンテンツ再生機器に固有の識別情報または前記コンテンツ再生機器の状態情報を、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器に要求し、該要求の結果として得られた情報を、前記第1の通信手段を介して前記検査装置に送信するステート信号送信手段を備え、
前記検査手順受信手段は、前記ステート信号送信手段が送信した情報に基づき生成された検査手順を、前記第1の通信手段を介して受信すること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の設置地域識別情報を含むことを特徴とする請求項7に記載のメンテナンス装置。
【請求項9】
前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の操作履歴情報を含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のメンテナンス装置。
【請求項10】
前記検査データは、前記コンテンツ再生機器が備える画像記憶手段が記憶する画像データを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項11】
前記検査データは、前記検査手順実行手段が前記制御信号により前記コンテンツ再生機器を制御している間の前記コンテンツ再生機器の動作履歴情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項12】
前記第1の通信手段は、処置手順を送信する処置装置に接続し、
前記第1の通信手段を介して、処置手順を受信する処置手順受信手段と
前記処置手順受信手段が受信した処置手順に基づき、前記コンテンツ再生機器を制御する制御信号を生成して、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器へ送信する処置手順実行手段と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項13】
前記処置手順は、前記検査データを診断した結果の報知を前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする請求項12に記載のメンテナンス装置。
【請求項14】
前記処置手順は、前記コンテンツ再生機器が記憶するプログラムの一部または全ての削除または書き換えを前記コンテンツ再生機器に要求する情報を含むことを特徴とする請求項12または請求項13に記載のメンテナンス装置。
【請求項15】
前記処置手順実行手段は、前記第2の通信手段を介して前記コンテンツ再生機器から処置許諾情報を受信してから、前記受信した処置手順に基づき生成した制御信号を送信することを特徴とする請求項12から請求項14のいずれかの項に記載のメンテナンス装置。
【請求項16】
メンテナンス対象装置を制御するメンテナンス装置と接続する通信手段と、
複数の検査手順を記憶する検査手順記憶手段と、
前記コンテンツ再生機器に固有の識別情報または前記コンテンツ再生機器の状態情報を、前記通信手段を介して前記メンテナンス装置から受信するステート信号受信手段と、
前記検査手順記憶手段が記憶している検査手順の中から、前記ステート信号受信手段が受信した情報に対応した検査手順を選択する検査手順選択手段と、
前記検査手順選択手段が選択した検査手順を、前記通信手段を介して前記メンテナンス装置へ送信する検査手順送信手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項17】
前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の設置地域識別情報を含むことを特徴とする請求項16に記載の検査装置。
【請求項18】
前記コンテンツ再生機器の状態情報は、前記コンテンツ再生機器の操作履歴情報を含むことを特徴とする請求項16に記載の検査装置。
【請求項19】
前記請求項7に記載のメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置と接続された伝送路と、
前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置された前記請求項16に記載の検査装置と
を備えることを特徴とするリモート検査システム。
【請求項20】
前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置され、前記メンテナンス装置から検査データを受信し、前記メンテナンス装置と接続されたメンテナンス対象装置に施す処置を、前記受信した検査データに基づき決定する診断装置と、
前記伝送路と接続し、前記メンテナンス装置の遠隔地に設置され、前記診断装置が決定した処置に基づき生成した処置手順を、前記メンテナンス装置へ送信する処置装置と
を備えることを特徴とする請求項19に記載のリモート検査システム
【請求項21】
請求項1から請求項15のいずれかの項に記載のメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置と接続されたコンテンツ再生機器と
を備えることを特徴とするデジタルAV機器。
【請求項22】
請求項1から請求項15のいずれかの項に記載のメンテナンス装置と、
前記メンテナンス装置と接続され、デジタル動画コンテンツを扱うコンテンツ再生機器と
を備えることを特徴とするデジタル家電機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−334559(P2007−334559A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164575(P2006−164575)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】