説明

メンテナンス装置及び液体噴射装置

【課題】微粒子を含んだ液体が液体噴射ヘッドから排出されて液体受容部材に受容された場合において液体受容部材内で目詰まりが生じることを抑制できるメンテナンス装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】帯電性を有する微粒子を含むインクを噴射可能な記録ヘッド19から噴射されるインクを受容するための開口部S1を有するキャップ24と、キャップ24における開口部24bの内側に位置して開口部24bを介してキャップ24内に受容されるインクに含まれる微粒子に対して電圧の印加に伴い電界を作用させる電極部41,43とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体をターゲットに対して噴射させる液体噴射装置の一種として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)が広く知られている。このプリンターは、インクカートリッジから供給されたインク(液体)を記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に形成されたノズルからターゲットに対して噴射することにより印刷を行っている。このようなプリンターには、通常、インクの噴射不良を低減させることを目的として、記録ヘッドに対するメンテナンス動作を実行するためのメンテナンス装置が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載のメンテナンス装置は、ノズル開口を囲んだ状態となって記録ヘッドに当接可能に形成されたキャップ(液体受容部材)を備えるとともに、そのキャップ内にはインクを吸収可能なインク吸収材(液体吸収材)を収容している。そして、インクを噴射するノズルを囲うようにして記録ヘッドにキャップを当接させた状態で、このキャップ内を吸引することにより、ノズルから増粘したインクなどをキャップ内に排出させるとともに、そのキャップ内のインク吸収材に吸収させて保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のプリンターでは、記録ヘッドからキャップ内に排出されたインク中の微粒子がインク吸収材に目詰まりを生じさせてしまう虞があった。また、キャップに受容された廃液となるインクをキャップ内から流出させるためにキャップの底壁等に形成された排出口にインク中の微粒子が固化成分となって付着したりすると、同様にキャップ内で目詰まりを生じさせてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微粒子を含んだ液体が液体噴射ヘッドから排出されて液体受容部材に受容された場合において液体受容部材内で目詰まりが生じることを抑制できるメンテナンス装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、帯電性を有する微粒子を含む液体を噴射可能な液体噴射ヘッドから噴射される前記液体を受容するための開口部を有する液体受容部材と、該液体受容部材における前記開口部の内側に位置して該開口部を介して前記液体受容部材内に受容される前記液体に含まれる前記微粒子に対して電圧の印加に伴い電界を作用させる電極部とを備えた。
【0008】
上記構成によれば、液体噴射ヘッドから噴射されて液体受容部材に受容される液体に微粒子が含まれていても、そのような微粒子は、その微粒子の極性とは反対の極性の電極部に引き付けられ、液体受容部材には液体中から微粒子を分離された溶媒が主に受容されることになる。そのため、液体受容部材に受容された液体が揮発したとしても、この液体中からは既に微粒子が分離されているので、液体受容部材内に微粒子が残存することはほとんどない。したがって、微粒子を含んだ液体が液体噴射ヘッドから排出されて液体受容部材に受容された場合において液体受容部材内で目詰まりが生じることを抑制できる。
【0009】
また、本発明のメンテナンス装置において、前記液体受容部材内には前記開口部を介して受容された前記液体を吸収可能な液体吸収材が収容されている。
上記構成によれば、液体噴射ヘッドから噴射されて液体受容部材に受容されることで液体受容部材内の液体吸収材に吸収された液体に微粒子が含まれていても、そのような微粒子は、その微粒子の極性とは反対の極性の電極部に引き付けられるように電気泳動する。その結果、液体吸収材には微粒子が分離された後の溶媒を主たる成分とする液体が保持されるとともに、そのような溶媒を主たる成分とする液体が液体吸収材から揮発することになるので、液体吸収材に微粒子による目詰まりが生じる虞を抑制できる。
【0010】
また、本発明のメンテナンス装置において、前記電極部は、前記液体吸収材よりも前記開口部の開口縁寄りとなる位置において、前記開口部を通じて前記液体受容部材の外側に露出するように設けられる。
【0011】
上記構成によれば、液体受容部材に受容される液体から分離された微粒子が電極部に堆積したとしても、この堆積した微粒子を開口部に除去用の治具などを差し入れることにより電極部から容易に取り除くことができる。
【0012】
また、本発明のメンテナンス装置において、前記電極部は、前記液体受容部材が前記液体噴射ヘッドに対して前記開口部を対向させた位置状態において、当該開口部の開口縁よりも前記液体噴射ヘッドから離間した位置に設けられている。
【0013】
上記構成によれば、液体噴射ヘッドのメンテナンスなどのために液体受容部材が液体噴射ヘッドに対して開口部を対向させた位置状態になった場合において、液体受容部材の電極部上に堆積した微粒子が液体噴射ヘッドに接触するなどして付着してしまう虞を低減することができる。
【0014】
また、本発明の液体噴射装置は、上記構成のメンテナンス装置と、前記液体を噴射可能な液体噴射ヘッドとを備えた。
上記構成によれば、上記メンテナンス装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施形態のプリンターの斜視図。
【図2】メンテナンス装置の断面図。
【図3】キャッピング装置の分解斜視図。
【図4】(a)は電極部に対して電圧が印加されつつ、記録ヘッドのノズルからキャップ内にインクが排出された状態を示す模式図、(b)はインク中から分離した微粒子が電極部に対して堆積した状態を示す模式図。
【図5】(a)はキャップ内からインク溶媒が排出された状態を示す模式図、(b)は電極部から微粒子が掻き取られている状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンター11における略矩形箱状をなすフレーム12内の下部には、その長手方向に沿って記録媒体の一例である記録用紙Pを記録時に支持するための支持部材13が延設されている。そして、この支持部材13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが支持部材13の短手方向に給送されるようになっている。
【0017】
フレーム12内における支持部材13の上方には、該支持部材13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16にはガイド軸15の軸線方向に貫通するように支持孔16aが形成されるとともに、該支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、キャリッジ16はガイド軸15に該ガイド軸15の軸線方向への往復移動可能に支持されている。
【0018】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17a及び従動プーリー17bが回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されるとともに、これら一対のプーリー17a,17b間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介してガイド軸15の軸線方向に移動可能になっている。
【0019】
キャリッジ16の下面側には液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられるとともに、該記録ヘッド19の下面となるノズル形成面19aには液体としてのインクを噴射する複数のノズル22(図2参照)の開口が形成されている。一方、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対してインクを供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。
【0020】
そして、インクカートリッジ20内のインクは、記録ヘッド19に備えられた圧電素子21(図2参照)の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19の各ノズル22(図2参照)から支持部材13上に給送された記録用紙Pに噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0021】
なお、フレーム12内において記録用紙Pと対応しないホームポジション領域(非印刷領域)には、非印刷時に記録ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置23が設けられている。
【0022】
次に、メンテナンス装置23について詳述する。
図2に示すように、メンテナンス装置23は、有底四角箱状をなす液体受容部材の一例であるキャップ24と、該キャップ24を昇降させるための昇降装置(図示略)とを備えている。そして、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、キャップ24を昇降装置の駆動によって上昇させると、該キャップ24が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して当接するようになっている。
【0023】
また、キャップ24の底壁24aからは突部30が下方に向かって突設されるとともに、該突部30内にはキャップ24内からインクを排出するための排出口31が上下方向に貫通するように形成されている。そして、この突部30には、可撓性を有する排出チューブ32の基端側が接続されると共に、該排出チューブ32の他端側はフレーム12内の下方位置に設置された直方体状をなす廃インクタンク33内に挿入されている。また、キャップ24と廃インクタンク33との間における排出チューブ32の中間部には、キャップ24側から廃インクタンク33側へ向かってインクを流動させる場合に駆動されるチューブポンプ34が設けられている。なお、廃インクタンク33内には、該廃インクタンク33内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材35が収容されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、キャップ24内には、平板状をなす金属製の下側電極部41がその下面をキャップ24の底壁24aの内面に密着させるようにして固定されている。この下側電極部41は、上方から見た平面視での輪郭形状がキャップ24の開口部24bの輪郭形状と略同一の矩形状に形成されている。また、この下側電極部41の略中央部、すなわちキャップ24内に固定された場合にキャップ24の底壁24aに開口した排出口31と上下方向で対応する部位には、排出口31と同径で下側電極部41の厚み方向に貫通する貫通孔41aが形成されている。
【0025】
また、同じくキャップ24内において、下側電極部41の上側には、記録ヘッド19から排出されたインクを吸収可能な液体吸収材としての矩形マット状をなすインク吸収材42がその下面を下側電極部41の上面に密着させるようにして配置されている。このインク吸収材42は、上方から見た平面視での輪郭形状が、キャップ24の開口部24bの輪郭形状と略同一の矩形状に形成されている。すなわち、インク吸収材42は、下側電極部41と重ね合わせ方向での平面視形状が一致するように形成されている。そして、インク吸収材42は、その厚みが、下側電極部41上に載置された状態においてインク吸収材42の上面がキャップ24の開口部24bの開口縁よりも底壁24a側となる厚みに設計されている。
【0026】
さらに、同じくキャップ24内において、インク吸収材42の上面と開口部24bの開口縁との間となる位置には、上方から見た平面視での輪郭形状が、キャップ24の開口部24bの輪郭形状と略同一の矩形状であって、且つその面域全体が格子状をなす上側電極部43がその下面をインク吸収材42の上面に密着させるようにして固定されている。すなわち、上側電極部43は、下側電極部41及びインク吸収材42と重ね合わせ方向での平面視形状が一致するように形成されている。そして、上側電極部43は、その固定位置と厚みが、インク吸収材42上に重ね合わせた状態において上側電極部43の上面がキャップ24の開口部24bの開口縁よりも底壁24a側となるように設計されている。
【0027】
また、図2に示すように、下側電極部41には電線を介して電源装置44から電力が供給される一方、上側電極部43にはアース線が接続されている。そして、電源装置44から下側電極部41に電力が供給されることに伴ってキャップ24内における下側電極部41と上側電極部43との間には、正極になる下側電極部41と負極になる上側電極部43との間に所定の電圧(例えば8kv)が印加されるようになっている。なお、キャップ24が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接した状態では、キャップ24内において上側電極部43の上面とノズル形成面19aとの間に若干の隙間S1が形成される。
【0028】
次に、メンテナンス装置23の作用について説明する。
さて、記録ヘッド19のクリーニング動作が開始されると、電源装置44から下側電極部41への電力の供給が開始される。そして、この状態で、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた後、キャップ24を上昇させると、キャップ24が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して当接した状態(キャッピング状態)となる。すなわち、記録ヘッド19のノズル形成面19aとキャップ24との間には密閉空間域が形成される。そして、この状態において、チューブポンプ34を駆動させると、キャップ24内が吸引されて該キャップ24内に負圧が発生する。
【0029】
すると、この負圧により、各ノズル22から増粘したインクが気泡等とともにキャップ24内に排出される。その結果、図4(a)に示すように、キャップ24内の密閉空間域にはインクが充満した状態となる。このとき、キャップ24内の密閉空間域に充満したインクには、所定の極性(本実施形態では正極性)に帯電した微粒子36が含まれている。そして、この微粒子36を含んだインクは、キャップ24内に開口部24bを介して受容されるとき、まず格子状の上側電極部43を通過した後、そのキャップ24内の下側電極部41と上側電極部43との間のインク吸収材42によって吸収保持される。
【0030】
具体的には、記録ヘッド19のノズル22からキャップ24内に排出されたインクは、まず格子状の上側電極部43を通過するときに、インク中の正極性に帯電した微粒子36の一部が溶媒から分離されて負極の上側電極部43に引き付けられる。そして、そのように上側電極部43に引き付けられた微粒子36は上側電極部43に帯電吸着されて上側電極部43上に堆積するようになる。なお、こうしたインク中の微粒子36のうち、この格子状の上側電極部43を通過するときに上側電極部43に引き付けられなかった微粒子36は、その微粒子36を分散させている溶媒と共にキャップ24内に受容されてインク吸収材42に吸収される。
【0031】
すると、このインク吸収材42に吸収されたインクに含まれる微粒子36には、依然として下側電極部41と上側電極部43との間には電圧が印加されているので、これらの電極部41,43から電界が作用する。そのため、正極性を帯びた微粒子36は、負極の上側電極部43に向けてインク溶媒中を泳動することにより、この上側電極部43に帯電吸着されて上側電極部43上に堆積するようになる(図4(b)参照)。
【0032】
なお、上記のように、微粒子36が堆積した上側電極部43は、キャップ24が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して当接した状態では、キャップ24内においてノズル形成面19aとの間に若干の隙間S1が形成されている。そのため、この上側電極部43上に堆積した微粒子36がノズル形成面19aに対して付着することが抑制される。
【0033】
続いて、図5(a)に示すように、キャッピング状態にあるキャップ24内の空間域を図示しない大気開放弁を開弁させることにより大気開放した状態でチューブポンプ34が更に駆動されると、キャップ24内の空間域に充満していたインクが排出口31及び排出チューブ32を介して廃インクタンク33に排出される。ここで、キャップ24内から排出チューブ32を介して廃インクタンク33に排出されるインクには、微粒子36がほとんど含まれておらず、キャップ24から廃インクタンク33に至るインク流路に目詰まりの要因となる微粒子36が付着することもほとんどない。そのため、微粒子36を含むインクが記録ヘッド19の各ノズル22からキャップ24内に排出されたとしても、キャップ24内のインク吸収材42や排出口31及び排出口31から廃インクタンク33に至るインク流路の途中位置で目詰まりを生じることが抑制される。
【0034】
また、キャップ24内のインク吸収材42に吸収保持された後に溶媒成分が揮発するインク中からは微粒子36が分離されているため、そのインクの溶媒が揮発した後にインク吸収材42が微粒子36により目詰まりを生じることも抑制される。そのため、記録ヘッド19のクリーニング動作に伴って、インク吸収材42によるインクの吸収特性が低下することが抑制されるため、インク吸収材42の保守交換の頻度が低減される。
【0035】
そして、図5(b)に示すように、記録ヘッド19のクリーニング動作が完了すると、電源装置44が下側電極部41に対する電力の供給を停止する一方で、キャップ24が記録ヘッド19から離間するように下降し、更には、キャリッジ16がキャップ24に対して上下方向に対向しないようにホームポジションから退避する。すると、キャップ24における上方側の開口部24bが開放された状態となり、上側電極部43に堆積した微粒子36がキャップ24の開口部24bを介して外側に露出するようになる。そのため、この状態では、操作者は、掻き取りヘラなどのメンテナンス治具45を使用することにより、堆積した微粒子36を上側電極部43の上面から容易に掻き取ることが可能となる。
【0036】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)記録ヘッド19から噴射されてキャップ24に受容されるインクに微粒子36が含まれていても、そのような微粒子36は、その微粒子の極性(正極性)とは反対の極性(負極)の上側電極部43に引き付けられ、キャップ24にはインク中から微粒子36が分離された溶媒が主に受容されることになる。そのため、キャップ24に受容されたインクの溶媒が揮発したとしても、このインク中からは既に微粒子36が分離されているので、キャップ24内に微粒子36が残存することはほとんどない。したがって、微粒子36を含んだインクが記録ヘッド19から排出されてキャップ24に受容された場合においてキャップ24内で目詰まりが生じることを抑制できる。
【0037】
(2)記録ヘッド19から噴射されてキャップ24に受容されることでキャップ24内のインク吸収材42に吸収されたインクに微粒子36が含まれていても、そのような微粒子36は、その微粒子36の極性とは反対の極性の上側電極部43に引き付けられるように電気泳動する。その結果、インク吸収材42には微粒子36が分離された後の溶媒を主たる成分とするインクが保持されるとともに、そのような溶媒を主たる成分とするインクがインク吸収材42から揮発することになるので、インク吸収材42に微粒子36による目詰まりが生じる虞を抑制できる。
【0038】
(3)上側電極部43は、インク吸収材42よりもキャップ24の開口部24b寄りとなる位置において、キャップ24の開口部24bを通じてキャップ24の外側に露出するように設けられる。そのため、キャップ24に受容されるインクから分離された微粒子36が上側電極部43に堆積したとしても、この堆積した微粒子36を開口部24bに除去用のメンテナンス治具45などを差し入れることにより上側電極部43から容易に取り除くことができる。
【0039】
(4)微粒子36が堆積した上側電極部43は、キャップ24が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19に対して当接した状態では、キャップ24内においてノズル形成面19aとの間に若干の隙間S1が形成される。そのため、この上側電極部43に堆積した微粒子36がノズル形成面19aに対して付着することを抑制できる。
【0040】
(5)下側電極部41と上側電極部43との間に電圧を印加させた状態で、記録ヘッド19のノズル形成面19aとキャップ24との間に形成される密閉空間域にインクを充填させることにより、この充填されたインク中から微粒子36を分離することができる。そのため、インク中に含まれる微粒子36がインク吸収材42の内部に滞留することはほとんどなく、インク吸収材42によるインクの吸収特性が低下することが抑制されるため、インク吸収材42の保守交換の頻度を低減できる。
【0041】
(6)キャップ24内から排出チューブ32を介して廃インクタンク33に排出されるインク中には、微粒子36がほとんど含まれておらず、キャップ24から廃インクタンク33に至るインク流路に目詰まりの要因となる微粒子36が付着することもほとんどない。そのため、微粒子36を含むインクが記録ヘッド19の各ノズル22からキャップ24内に排出されたとしても、キャップ24内のインク吸収材42や排出口31及び排出口31から廃インクタンク33に至るインク流路の途中位置で目詰まりが生じることを抑制できる。
【0042】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、記録ヘッド19を制御してノズル22から噴射させたインクを受容する液体受容部材としてのフラッシングボックスをフレーム12内の印刷領域を挟んでホームポジション領域の反対側に設けると共に、このフラッシングボックスに受容されたインクに対して電界を作用させる電極部41,43やこのインクを吸収するインク吸収材42をフラッシングボックス内に設けるようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態において、下側電極部41にアース線を接続して接地するとともに、上側電極部43に電線を介して電源装置44から電力を供給するようにしてもよい。なお、この場合には、正極性の微粒子36を上側電極部43に帯電吸着させるために、電源装置44から上側電極部43には負電圧が印加されることが望ましい。
【0044】
・上記実施形態において、電源装置44は、インク中に含まれる微粒子36が負極性を有する場合には、下側電極部41と上側電極部43との間に上側電極部43が正極となるように電圧を印加することにより、この微粒子36を上側電極部43に堆積させるようにしてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、記録ヘッド19のノズル22からキャップ24の空間域にインクを充填した後に、電源装置44からの電力供給を開始して下側電極部41に対して電圧を印加するようにしてもよい。
【0046】
・なお、本明細書における「液体」には、インク以外の他の液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体も含むものとする。そして、こうした「液体」を噴射したり吐出したりする液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
11…液体噴射装置としてのプリンター、22…ノズル、23…メンテナンス装置、24…液体受容部材としてのキャップ、24b…開口部、36…微粒子、41…下側電極部、42…液体吸収材としてのインク吸収材、43…上側電極部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電性を有する微粒子を含む液体を噴射可能な液体噴射ヘッドから噴射される前記液体を受容するための開口部を有する液体受容部材と、
該液体受容部材における前記開口部の内側に位置して該開口部を介して前記液体受容部材内に受容される前記液体に含まれる前記微粒子に対して電圧の印加に伴い電界を作用させる電極部と
を備えたことを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のメンテナンス装置において、
前記液体受容部材内には前記開口部を介して受容された前記液体を吸収可能な液体吸収材が収容されていることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項3】
請求項2に記載のメンテナンス装置において、
前記電極部は、前記液体吸収材よりも前記開口部の開口縁寄りとなる位置において、前記開口部を通じて前記液体受容部材の外側に露出するように設けられることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置において、
前記電極部は、前記液体受容部材が前記液体噴射ヘッドに対して前記開口部を対向させた位置状態において、当該開口部の開口縁よりも前記液体噴射ヘッドから離間した位置に設けられていることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置と、
前記液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139818(P2012−139818A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291818(P2010−291818)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】