説明

メークアップ化粧料

【課題】透明感を持たせつつ肌の色相感覚を変化させることができ、きめ細かい明るい仕上がりで、自然なつやを与えるメークアップ化粧料を提供する。
【解決手段】薄片状粉体の表面に有色金属又は有色金属酸化物を被覆し、さらに無色金属又は無色金属酸化物を被覆したパール顔料であって、該パール顔料を黒色人工皮革表面に平均0.05mg/cm2で塗布し、入射光側にS偏光板、受光側にP偏光板を装着した分光測色計を用い、C光による2°視野の受光条件で、パール顔料の反射光量を測定したとき、測定試料面の法線方向に対して45°で入射し、法線方向で受光した粉体反射光のa*値及びb*値の絶対値が10以下であるパール顔料を含有するメークアップ化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明感を持たせつつ肌の色相感覚を変化させることができ、きめ細かい明るい仕上がりで、自然なつやを与えるメークアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メークアップ化粧料は、これを塗布して肌の質感を変化させることが要求されており、拡散反射の強い粉体や鏡面反射の強い粉体などを使用して、質感の制御を行っている。例えば、拡散反射の強い粉体である酸化チタンや球状粉体を配合してマットな仕上がりを得たり、マイカ、セリサイト、タルク等の鏡面反射の強い板状粉体を配合してつやのある仕上がりを得たりしている。一方、シミ、ソバカス等の色むらをカバーするため、二酸化チタンや酸化鉄等の隠蔽力の高い顔料を配合することが行われている。
【0003】
しかしながら、隠蔽力の高い顔料を用いた場合には、自然な感じがなくなってしまうという問題がある。一方、隠蔽力の低い粉体で質感を調整した場合は、色むらなどのカバー力が低下する問題があった。
【0004】
近年、これらの問題を解決するため、隠蔽力が強くつや感を制御できるパール顔料を用いて肌の色相感覚を変化させることが検討されている。例えば、つやを付与するために、酸化チタン被覆パール顔料を用いた場合、正反射方向で鏡面反射によりつやを付与することができるが、鏡面反射以外の角度では、粉体そのものの白っぽい外観となってしまう。従って、顔全体などの広い範囲に化粧料を塗布すると、観察者に正対する部分はつや感があるが、正対しない部分では、白っぽい粉感が見えるため、不自然な仕上がりになってしまう傾向があった。自然なつやを得るため、特許文献1には、チタンマイカ表面をアルミナ、シリカで順次被覆した粉体が記載されている。しかし、正対しない部分での白っぽい粉感を解決できるものではない。
【0005】
一方、例えば、酸化鉄のような有色金属酸化物を被覆したパール顔料も市販されている。特許文献2、3には、酸化鉄被覆した板状粉体の上に酸化チタンなどの無色金属酸化物を被覆した多層パール顔料が提案されているが、赤色系のパール顔料のみが得られるにすぎず、明るい魅力的な肌合いを表現することはできない。
【特許文献1】特開2003−212722号公報
【特許文献2】特開平7−11161号公報
【特許文献3】特開平8−259840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、透明感を持たせつつ肌の色相感覚を変化させることができ、きめ細かい明るい仕上がりで、自然なつやを与えるメークアップ化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、薄片状粉体の表面を表面粗さを制御した有色金属又は有色金属酸化物で被覆し、さらに無色金属又は無色金属酸化物を被覆したパール顔料であって、特定の条件で測定した散乱光のa*値及びb*値の絶対値が10以下であるパール顔料が極めて鮮やかな発色を示し、この顔料を用いれば透明感を持たせつつ肌の色相感覚を変化させることができ、きめ細かい明るい仕上がりで、自然なつやを与えるメークアップ化粧料が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、薄片状粉体の表面に有色金属又は有色金属酸化物を被覆し、さらに無色金属又は無色金属酸化物を被覆したパール顔料であって、該パール顔料を黒色人工皮革表面に平均0.05mg/cm2で塗布し、入射光側にS偏光板、受光側にP偏光板を装着した分光測色計を用い、C光による2°視野の受光条件で、パール顔料の反射光量を測定したとき、測定試料面の法線方向に対して45°で入射し、法線方向で受光した粉体反射光(散乱光)のa*値及びb*値の絶対値が10以下であるパール顔料を含有するメークアップ化粧料を提供するものである。
なお、本発明において、a*値、b*値は、国際照明委員会(1976年)(CIE)で規格された色度を示す。また、ここで示したパール顔料のa*値、b*値の測定方法(図1参照)を「本発明のa*値、b*値の測定方法」という。
【発明の効果】
【0009】
本発明のメークアップ化粧料は、透明感を持たせつつ肌の色相感覚を変化させることができ、きめ細かい明るい仕上がりで、自然なつやを与えることができる。また、塗布時ののびなどの使用感も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられるパール顔料を得るための薄片状粉体は、平均粒径が2〜200μmで、平均厚さが0.01〜5μmであるのが好ましい。特に、配合適性の点から、平均粒径が2〜20μmで、平均厚さが0.05〜1μmであるのがより好ましい。ここで、平均粒径は体積平均粒径(D4)(体積分率で計算した平均粒径)を示す。測定は、レーザー回折式の粒度分布計で容易に再現性良く測定することが出来る。薄片状粉体の厚さは、原子間力顕微鏡により基準面との差を測定し相加平均したものを平均厚さとする。
【0011】
かかる薄片状粉体としては、雲母、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト属粘土鉱物、合成マイカ、合成セリサイト、板状二酸化チタン、板状シリカ、板状酸化アルミニウム、窒化硼素、硫酸バリウム、板状チタニア・シリカ複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、特に雲母が、表面の平滑性の点で好ましい。
【0012】
本発明に用いられるパール顔料おいて、薄片状粉体を被覆する有色金属としては、金、銅等が挙げられ、特に金が好ましい。有色金属酸化物としては、酸化鉄、低次酸化チタン、酸化銅、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル等が挙げられ、特に酸化鉄が好ましい。
【0013】
更に、本発明に用いられるパール顔料において、有色金属酸化物の表面を被覆する無色金属としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、錫、ケイ素、アルミニウム等が挙げられ、特にチタンが好ましい。無色金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。
【0014】
本発明に用いられるパール顔料は「本発明のa*値又はb*値の測定方法」に従って測定したとき、粉体反射光(散乱光)のa*値及びb*値の絶対値が10以下、好ましくは5以下のものである。
このような測色ができる測定機として、村上色彩技術研究所社製のGCMSシリーズを用いることができる。
【0015】
また、本発明に用いられるパール顔料は、薄片状粉体の表面を有色金属又は有色金属酸化物で被覆したものであるが、有色金属又は有色金属酸化物の表面粗さは10nm以下、好ましくは5nm以下である。有色金属又は有色金属酸化物は、特定波長の光を吸収するという特性を有するために、被覆表面の粗さが大きいと散乱色が強くなり、弱いパール光沢の発色となる。被覆表面の粗さを小さくすることにより、光の散乱が抑制されて散乱光の少ない鮮やかな発色を有する顔料が得られる。
【0016】
本発明において、表面平均粗さ(Ra)は、中心線平均粗さを示し、原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製、Nanoscope III)を用い、Scan Rate 1.0Hzで、2μm×2μmの範囲を測定したときの平均値を示すものである。測定の際、パール顔料はエタノール等の溶媒に分散させた状態で、平滑な基盤面上に付着させ、溶媒を除去することにより基盤に密着させた後、原子間力顕微鏡により測定する。
【0017】
また、本発明に用いられるパール顔料は、有色金属又は有色金属酸化物被覆層の光学的膜厚が15〜650nm、特に25〜650nmであることが好ましく、250nm以下、特に210nm以下であるのが好ましい。650nmを超えると、吸収層の絶対的な厚さが増すため、光吸収の影響が強くなるため、有色金属又は有色金属酸化物の固有色を活かしたパール顔料にすることが好ましい。例えば、酸化鉄では、光学的膜厚250nmを超えると、赤色のパール顔料とすることが好ましい。
ここで、光学的膜厚とは、有色金属又は有色金属酸化物の幾何学的層厚に屈折率をかけたものを示す。例えば、酸化鉄(屈折率3.0)の場合、幾何学的膜厚8〜220nmが好ましく、80nm以下、特に50nm以下であることが好ましい。散乱光を十分に抑制した場合、例えば有色金属酸化物に酸化鉄を用いると、光学的膜厚が120〜210nmの場合は干渉光が金色であり、60〜120nmの場合は干渉光が銀色である。なお、幾何学的膜厚はSEMにより測定される。
【0018】
更に、有色金属又は有色金属酸化物の表面を、無色金属又は無色金属酸化物で被覆して多層化すると、酸化鉄特有の色にとらわれない金色〜緑といった様々な色調の顔料を得ることができる。無色金属又は無色金属酸化物の光学的膜厚は平均180〜900nmであることが好ましい。酸化チタンの場合は、幾何学的膜厚が80〜360nmであることが好ましい。従来のパール顔料のように散乱色が強いと、これらの干渉光は散乱色に打ち消されてしまい、肉眼では観測できないが、本発明のパール顔料は散乱色が抑制されているため、被覆した有色金属又は有色金属酸化物の固有色ではない金色や緑色の干渉光も作り出すことができる。
酸化鉄等の光学的膜厚が大きい場合は、酸化鉄特有の赤色系の顔料を作る際に有利であり、散乱色を抑制することにより赤色系であっても従来の顔料より鮮やかな発色の赤色を作ることが可能となる。
【0019】
更に、屈折率の関係において、薄片状粉体nsと有色金属化合物nと無色金属化合物n0の関係において、ns<n>n0となる場合は、反射率を高くでき、彩度を高めることができる。具体的には、雲母(屈折率1.58)、酸化鉄(Fe2O3)(屈折率3.01)、酸化チタン(屈折率2.5〜2.7)の組み合わせが、特に好ましい。
特に、メークアップ化粧料に用いた場合、観察者に正対する部分はつや感があるが、正対しない部分では、従来の酸化チタン被覆雲母のように白っぽい粉感が見えず、自然に赤暗くシェードする仕上がりになり、より自然な肌に近い仕上がりになる。
【0020】
本発明のパール顔料は、例えば中和滴定法を用い、有色金属酸化物前駆体水溶液の添加速度を選定することにより製造することができる。有色金属又は有色金属酸化物の表面平均粗さを小さくするために、中和滴定法が好ましい。
【0021】
(製造方法1)
具体的には、薄片状粉体の水分散液に、有色金属酸化物前駆体の水溶液を、薄片状粉体100g当たりの金属イオン量が5×10-4〜12×10-4mol/minとなるように添加し、次いで、混合液にアルカリ水溶液を加えてpH5〜8とし、固体を分離した後、500〜1000℃で焼成してパール顔料を得、さらに得られたパール顔料を水に懸濁させ、無色金属の前駆体又は無色金属酸化物の前駆体の水溶液を添加し、次いで、混合液にアルカリ水溶液を加えてpH5〜8とし、固体を分離した後、500〜1000℃で焼成することにより製造することができる。
【0022】
すなわち、まず、薄片状粉体を水に分散させ、良く撹拌して、薄片状粉体の水分散液を調製する。分散液のスラリー濃度は1〜50質量%であるのが、薄片状粉体表面を金属化合物が均一に被覆するのに好ましい。
一方、有色金属酸化物前駆体としては、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等が挙げられ、これらの水溶液濃度は、20〜70質量%であるのが好ましい。
【0023】
薄片状粉体の分散液を、50〜100℃、好ましくは70〜80℃に加温し、分散液に酸を加え酸性にし、更に反応液のpHを2〜4、好ましくは2.5〜3.5に保つよう、アルカリ水溶液で調整しながら、有色金属酸化物前駆体水溶液を反応混合液に加える。特に、表面粗さの小さい平滑な被覆状態を実現するためには、有色金属酸化物前駆体水溶液の添加速度を、薄片状粉体100g当たりの金属イオン量が5×10-4〜12×10-4mol/min、好ましくは8×10-4〜11×10-4mol/minとなるように添加する。この範囲の添加速度の場合に、散乱光が抑制され、より好ましい顔料を得ることができる。
なお、pHの調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の水溶液が挙げられる。
【0024】
添加終了後、混合液を熟成させる。その後、アルカリ水溶液を加えてpH5〜8とし、さらに熟成させる。次に、固体を分離した後、水洗によって塩を除去し、乾燥する。その後、500〜1000℃、好ましくは700〜800℃で30〜180分間焼成を行う。
【0025】
次に、得られた有色金属酸化物で被覆された薄片状粉体の水分散液を調製する。分散液のスラリー濃度は1〜50質量%であるのが、有色金属酸化物で被覆された薄片状粉体を無色金属又は無色金属酸化物で均一に被覆するのに好ましい。
無色金属酸化物前駆体としては、硫酸チタン、四塩化チタン等が挙げられ、これらの水溶液濃度は、20〜60質量%であるのが好ましい。
【0026】
有色金属酸化物で被覆された薄片状粉体の分散液を、50〜100℃、好ましくは70〜80℃に加温し、酸を加え酸性にし、更に反応混合液のpHを1〜5、好ましくは1〜3に保つよう、アルカリ水溶液で調整ながら、無色金属酸化物前駆体の水溶液を加える。
なお、pHの調整に用いられるアルカリ水溶液としては、前記と同様のものを用いることができる。
【0027】
添加終了後、混合液を熟成させる。その後、アルカリ水溶液を加えてpH5〜8とし、さらに熟成させる。次に、固体を分離した後、水洗によって塩を除去し、乾燥を行う。その後、500〜1000℃、好ましくは700〜800℃で30〜180分間焼成を行うことにより、本発明のパール顔料を得ることができる。
【0028】
(製造方法2)
また、本発明で用いるパール顔料は、薄片状粉体に有色金属酸化物前駆体を被覆した後、焼成する工程を省き、無色金属又は無色金属酸化物で被覆する工程に移行して製造することもできる。すなわち、前記の製造方法1と同様に薄片状粉体の水分散液に有色金属酸化物前駆体の水溶液を添加し、次いで、アルカリ水溶液を加えてpH5〜8とした後、固体を分離し、水洗によって塩を除去する。このようにして得られた固体の表面を、製造方法1と同様の方法にて、無色金属又は無色金属酸化物で被覆し、焼成することにより、パール顔料を得ることができる。
【0029】
このようなパール顔料は、化粧持ち(持続性)向上の点からその表面を疎水化処理して用いることもできる。疎水化処理は、通常の方法に従い、疎水化処理剤で処理することにより行うことができる。
疎水化処理剤としては、シリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、N−モノ長鎖(炭素数8〜22)脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物などが挙げられる。
【0030】
シリコーン油としては、例えば各種鎖状シリコーン、環状シリコーン、変性シリコーンが;脂肪酸金属塩としては、特に炭素数12〜18の脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の塩が;アルキルリン酸及びその塩としては、合計炭素数8〜45のアルキル又はアルケニル基を有するモノ又はジエステル及びそのアルカリ金属塩若しくはアミン塩が;N−モノ長鎖脂肪族アシル塩基性アミノ酸としては、2−エチルヘキサノイル、カプリロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、イソステアロイル、オレオイル、ベヘノイル、ココイル、牛脂脂肪酸アシル、硬化牛脂脂肪酸アシル等の炭素数8〜22のアシル基が塩基性アミノ酸のα位又はω位のアミノ基に結合したものが;パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物としては、米国特許第3632744号明細書、特開昭62−250074号公報、特開昭55−167209号公報、特開平2−218603号公報等に記載のものなどが挙げられる。
【0031】
疎水化処理量は、十分な疎水性、良好な感触の点から、パール顔料1質量部に対して疎水化処理剤0.0005〜0.2質量部、特に0.02〜0.1質量部が好ましい。
【0032】
上記のようなパール顔料は、1種以上を用いることができ、メークアップ化粧料中に0.1〜30質量%、特に0.5〜30質量%含有するのが、配合の効果を十分に発揮できるとともに、強い光沢感による不自然さを回避できるので好ましい。また、従来のパール顔料を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
本発明のメークアップ化粧料は、常法に従って製造することができ、例えば粉白粉、固形白粉、フェイスパウダー、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、クリーム状ファンデーション、リキッドファンデーション、コンシーラー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウなどとすることができる。
【0034】
また、本発明で用いるパール顔料は、本発明のメークアップ化粧料が、粉白粉、固形白粉及びフェイスパウダーの場合は0.1〜30質量%、特に0.5〜30質量%;パウダーファンデーション及び油性ファンデーションの場合は0.1〜30質量%、特に0.5〜30質量%;クリーム状ファンデーション、リキッドファンデーション及びコンシーラーの場合は0.1〜30質量%、特に0.5〜25質量%;口紅及びリップクリームの場合は0.1〜20質量%、特に0.5〜15質量%;頬紅及びアイシャドウの場合は0.1〜30質量%、特に0.5〜25質量%;アイライナー及びアイブロウの場合は0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%含有されるのが好ましい。
【0035】
本発明のメークアップ化粧料は、さらに、25℃における粘度が1000mPa・s以下の油剤を含有することができる。特に、使用感の点から、0.1〜1000mPa・s、更に2〜500mPa・sの範囲の油剤が好ましい。
【0036】
油剤は、粘度が1000mPa・s以下であれば特に制限されず、例えば流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコーン油、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系油剤等が挙げられる。これらのうち、流動パラフィン、スクワラン、エステル油、シリコーン油、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系油剤が好ましい。
【0037】
油剤は、1種以上を用いることができ、メークアップ化粧料中に0.5〜60質量%、特に2〜50質量%含有するのが、べたつき感のない使用感が得られるので好ましい。
また、塗布時ののびを好適にし、所期の光学特性を発揮させるため、前記パール顔料と油剤の配合比率(質量比)は1/10〜100/1であるのが好ましい。
【0038】
本発明のメークアップ化粧料は、前記成分のほか、必要に応じて、通常の化粧料に配合されている成分、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、他の粉体、保湿剤、防腐剤、薬剤、紫外線吸収剤、色素、無機塩又は有機酸塩、香料、キレート剤、pH調整剤、水等を含有することができる。
【実施例】
【0039】
製造例1
粒径5〜60μmの薄片状雲母80gを、1.2Lの水に加えて十分に分散させ、80℃まで昇温した後、塩酸を加えてpH3にする。次に、予め調製した硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に保ちながら、鉄イオン濃度9×10-4mol/minの割合でゆっくりと添加する。添加終了後、水酸化ナトリウム水溶液でpH5にする。濾過し、水洗して塩を除去し、吸引濾過、乾燥し、次いで700℃で1時間焼成を行った。
得られた着色顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚20nmに均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さを測定したところ、表面粗さは3.44nmであった。
次いで、前記酸化鉄被覆パール顔料80gを1.2Lの水に加えて十分に分散させ、温度を75℃まで昇温する。昇温した後に、塩酸を加えてpH1.6とする。この後、40質量%四塩化チタン水溶液を1.4g/minの速度で240g添加しながら、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを1.6に維持する。その後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて分散液をpH7まで中和する。その後、水洗によって塩を除去し、吸引濾過、乾燥して、次いで700℃で90分間焼成を行った。これにより、高彩度な金色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆着色パール顔料を得た。
【0040】
製造例2
硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを430gに代える以外は製造例1と同様にして、酸化鉄被覆パール顔料を製造した。得られた顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚30nmに均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さを測定したところ、表面粗さは4.30nmであった。
次いで、40質量%四塩化チタン水溶液の添加量を240gから200gに代える以外は製造例1と同様にして、高彩度な金色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆パール顔料を得た。
【0041】
製造例3
硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを65gに代える以外は製造例1と同様にして、酸化鉄被覆パール顔料を製造した。得られた顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚5nm(光学的膜厚15nm)に均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さを測定したところ、表面粗さは3.5nmであった。
次いで、40質量%四塩化チタン水溶液の添加量を240gから305gに代える以外は製造例1と同様にして、高彩度な金色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆パール顔料を得た。
【0042】
製造例4
硝酸第二鉄水溶液(硝酸第二鉄17質量部:水26質量部)337gを65gに代える以外は製造例1と同様にして、酸化鉄被覆パール顔料を製造した。得られた顔料は、薄片状雲母の上に、非常に微細な酸化鉄粒子が幾何学的膜厚5nm(光学的膜厚30nm)に均一に被覆されていた。被覆層の表面粗さを測定したところ、表面粗さは3.5nmであった。
次いで、40質量%四塩化チタン水溶液の添加量を240gから170gに代える以外は、製造例1と同様にして、高彩度な赤色干渉の酸化チタン/酸化鉄被覆パール顔料を得た。
【0043】
試験例1
製造例1〜4及び市販の酸化チタン被覆雲母(Flamenco Gold(ENGELHARD 社)について、粉体反射光のa*値、b*値、及び被覆層の幾何学的膜厚を測定した。
(1)粉体反射光のa*値、b*値は、「本発明のa*値、b*値の測定方法」に従って測定した。分光測色計は、村上色彩技術研究所社製GCMS−4に偏光板(ポラロイド社製 型式:HN32)を設置して測定した。光源は、ナーバ社のハロゲンランプ(HLWS7)を用いた。黒色人工皮革(オカモト社製 型式:OK−7)を使用し、5cm×10cmの範囲に平均0.05mg/cm2となるようにスポンジを用いて、粉体を均一に塗布したものを測定試料として用いた。
また、幾何学的膜厚の測定は、SEMにより行った。被覆前の薄片状粉体の厚さを測定し、被覆後のパール顔料の厚さを測定することで、幾何学的膜厚とした。光学的膜厚に関しては、幾何学的膜厚に屈折率をかけたものであり、酸化鉄(Fe2O3)の屈折率は3.0、酸化チタンの屈折率は2.5を用いた。結果を表1に示す。
【0044】
(2)また、前記条件で偏光板を用いない通常の一般的な測色法(測定角度45°)で、粉体反射光のa*値、b*値を測定した。また、C*値、h値は、国際照明委員会(1976年)(CIE)で規格された彩度、色相角度を示す。結果を表2に示す。
表2の結果より、本発明で用いるパール顔料は、同じ色相角度を有する市販品に比べC*値が大きい、すなわち鮮やかであり、有色金属化合物自身の色に束縛されずに自由に干渉色を得ていることが示される。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
実施例1〜4、比較例1〜2
表3に示す組成の固形粉末状ファンデーションを製造し、きめ細かい仕上がり、肌色の明るさ、額部と頬側面部の塗布色の差の少なさ及び自然なつやを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0048】
(製法)
成分(1)〜(13)を撹拌混合後、(14)〜(16)を添加して混合する。これをアトマイザーで粉砕し、篩掛けした後、金皿に充填、打錠して固形粉末状ファンデーションを得た。
【0049】
(評価方法)
各固形粉末状ファンデーションを化粧品専用パネル20名が使用し、下記の基準で評価し、その平均値で判定した。
(1)きれいな肌に見える、きめ細かい仕上がり、肌色の明るさ、自然なつや;
5点:非常に良好。
4点:良好。
3点:普通。
2点:やや不良。
1点:不良。
【0050】
(2)額部と頬側面部の塗布色の差の少なさ;
5点:差がほとんどない。
4点:差が少ない。
3点:差がややある。
2点:差がやや大きい。
1点:差が大きい。
【0051】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明において、「本発明のa*値、b*値の測定方法」を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状粉体の表面に有色金属又は有色金属酸化物を被覆し、さらに無色金属又は無色金属酸化物を被覆したパール顔料であって、該パール顔料を黒色人工皮革表面に平均0.05mg/cm2で塗布し、入射光側にS偏光板、受光側にP偏光板を装着した分光測色計を用い、C光による2°視野の受光条件で、パール顔料の反射光量を測定したとき、測定試料面の法線方向に対して45°で入射し、法線方向で受光した粉体反射光のa*値及びb*値の絶対値が10以下であるパール顔料を含有するメークアップ化粧料。
【請求項2】
薄片状粉体の表面に有色金属又は有色金属酸化物を表面平均粗さ10nm以下で被覆し、さらに無色金属又は無色金属酸化物を被覆したパール顔料を含有するメークアップ化粧料。
【請求項3】
パール顔料の有色金属が金、又は有色金属酸化物が酸化鉄である請求項1又は2記載のメークアップ化粧料。
【請求項4】
無色金属がチタン、又は無色金属酸化物が酸化チタンである請求項1〜3のいずれか1項記載のパール顔料を含有するメークアップ化粧料。
【請求項5】
有色金属又は有色金属酸化物の光学的膜厚が平均15〜650nmである請求項1〜4のいずれか1項記載のパール顔料を含有するメークアップ化粧料。
【請求項6】
無色金属又は無色金属酸化物の光学的膜厚が平均180〜900nmである請求項1〜5のいずれか1項記載のパール顔料を含有するメークアップ化粧料。
【請求項7】
さらに、25℃における粘度が1000mPa・s以下の油剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載のメークアップ化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−193520(P2006−193520A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363490(P2005−363490)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】