説明

メータ装置

【課題】指針方向への照明と同時に、背面から文字板へ均一な照明も行うことが可能となるメータ装置を提供する。
【解決手段】文字板5の背面に位置する、凹状に湾曲した窪みにムーブメント4が配置されたケース内反射部13と、回転軸41の先端に一体に取付可能に設けられ、回転軸41内を伝播してきた光源からの光の一部を、ムーブメント4のムーブメントケース外面またはケース内反射部13に向けて屈折する導光部材7と、文字板5上の標記を指し示す指針本体62と、指針本体62の基部から文字板5に向けて垂設された、基端側が文字板5の軸孔50に回転可能状態に挿通されるとともに導光部材7を介して回転軸41の先端側と連結可能な指針軸61と、を有する指針6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用計器や船舶用計器、航空機用計器など各種乗物用の計器として用いることができるメータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種計器類に用いるメータ装置として各種多様なものが提案され開発されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1のメータ装置100は、図7に示すように、光源の光を効率的に利用できるようにするため、透光性を有し指標を記載した表示板101と、指針102で指標を指示させる指針部材103と、照明用の光源104と、光源104からの照射光を指針102及び指標に導くための導光部材105と、導光部材105からの出射光を表示板101に裏面から入射させる反射板106と、を備えている。また、導光部材105には、光源104からの照射光を指針102に導く筒部105Aと、反射板106に導く屈曲部105Bと、を備える。
【0004】
このメータ装置100では、筒部105Aに指針部材103の指針軸107が挿通されるとともに、光源104が下端面105C及び受光面105Dに正対配置されており、下端面105Cからの入射光を指針102と正対した上端面105Eから出射させる。また、導光部材105には、屈曲部105Bが筒部105Aの外周面から表示板101の外縁側に延びており、下端面105Cと並んで配置された受光面105Dからの入射光を表示板101の外縁側に設けた屈曲部105Bの出光面105Fから出射させる。なお、特許文献2も同様の構成を有しており、同様の機能を備える。
【0005】
一方、特許文献3のメータ装置200には、図8に示すように、指針201の回転角により第1の計測値である速度を指示する第1の指示機構220と、指針201の回転中心201Aから半径方向に広がる発色域203によって第2の計測値であるエンジン回転数を指示する第2の指示機構230と、照明手段202と、を備える指示装置210が設けられる。
【0006】
このうち、第2の指示機構230は、第2の計測値に応じて指針201の回転軸206上を上下動する発色軸204と、発色軸204の先端部の発色を指針201の回転中心201Aから離間した位置に投影して発色域203を形成する断面逆台形状の導光手段205と、を備える。そして、照明手段202からの照明光を、回転軸206、及び固有色の発色軸204を介して導光手段205の発色域203に誘導し、発色域203の彩色を行うことで、夜間などでも視認し易い安定した発色による照明を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−112933号公報
【特許文献2】特開2010−48743号公報
【特許文献3】特開2010−101734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図7に示す、特許文献1に記載のようなメータ装置100によれば、導光部材105は、光源104から多くの照明光を上方の指針部材103へ送り込ませるように構成されている。また、導光部材105は、光源104からの照明光の一部を、同時に反射板106へも送り込ませるような構成となっている。ところが、導光部材105によれば、反射板106に対して照明光を、専らその周縁部に送り込ませているものであって、中心部寄りには送り込ませにくい構造となっている。このような事情については、特許文献2でも同様である。
【0009】
一方、図8に示す、特許文献3に記載のメータ装置200では、回転軸206を介して光源202からの照明光の大部分を上方の指針201へ誘導させて照射させており、回転軸206を伝播する照明光の一部が発色軸204から導光手段205へ送り込まれている。このように、メータ装置200でも、照明光の一部が導光手段205へ誘導されて指針201と同時に導光手段205に対する照明も行われているが、導光手段205への入射領域は一部領域Sのみであって、導光手段205の全面を照明させる構造とはなっていない。
【0010】
従って、いずれの特許文献に記載のものも、照明光の一部が反射板や導光手段へ送り出される構成ではあるものの、それらへの照明については、いずれに対しても一部領域に偏在した照明態様であって、均一な照明を行うことができる構造とはなっていない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、指針方向への照明と同時に、文字板に対して背面から均一な照明を行うことが可能となるメータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るメータ装置は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 光源から照射された光が入射する回転軸と、前記回転軸を回動させるモータと、前記回転軸及び前記モータを内部に収容するムーブメントケースと、を有するムーブメントと、
各種標記を設けた文字板と、
前記文字板の背面に位置する、凹状に湾曲した窪みに前記ムーブメントが配置された計器のケース内反射部と、
前記回転軸の先端に一体に取付可能に設けられ、前記回転軸内を伝播してきた前記光源からの光の一部を、前記ムーブメントのムーブメントケース外面または前記ケース内反射部に向けて屈折する導光部材と、
前記文字板上の標記を指し示す指針本体と、前記指針本体の基部から文字板に向けて垂設された、基端側が前記文字板の軸孔に回転可能状態に挿通されるとともに前記導光部材を介して回転軸の先端側と連結可能な指針軸と、を有する指針と、
を備えること。
(2) 上記(1)の構成のメータ装置において、
前記文字板の背面側において、前記指針軸の基端に取付可能な遮光部材をさらに備える、
こと。
(3) 上記(2)の構成のメータ装置において、
前記導光部材及び前記遮光部材は、前記指針軸と前記回転軸とを連結する手段を構成している、
こと。
(4) 上記(3)の構成のメータ装置において、
前記導光部材は、前記指針軸を連結する手段としての、該指針軸の先端が圧入される上穴と、前記回転軸を連結する手段としての、該回転軸の先端が圧入される下穴とを有し、
前記上穴は、床面が膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、該床面から延びる下部内周面は上方へ拡開し、
前記下穴は、天井面が膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、該天井面から延びる上部内周面は下方へ拡開する、
こと。
(5) 上記(2)〜(4)のいずれか一つの構成のメータ装置において、
前記指針軸の外周面のうちの、前記遮光部材より前記文字板寄りに位置する箇所には、前記指針軸の内部から外部へ向けての光の透過を抑制する光透過抑制部材が設けられている、
こと。
【0013】
上記(1)の構成のメータ装置によれば、導光部材での屈折作用により、照明光を、ムーブメントのムーブメントケース外面及びケース内反射部へ向けて分散させた状態で導光させることが可能となる。その結果、ムーブメントケース外面からの反射光及びケース内反射部からの反射光を用い、文字板への均一照明が可能となる。換言すれば、指針方向への照明と同時に、文字板に対して背面からの均一な照明を行うことが可能となる。
上記(2)の構成のメータ装置によれば、指針軸の文字板から露出する先端部に大きなキャップを被せる必要がなくなる。換言すれば、小さなキャップであっても、文字板の指針軸が貫通する軸孔からの光漏れを可及的に抑えることが可能となる。これにより、デザイン性が良好なメータ装置が実現できる。
上記(3)の構成のメータ装置によれば、指針軸と回転軸との間に専用の連結手段を設けなくても済むので、コスト削減が図れる。
上記(4)の構成のメータ装置によれば、指針軸方向へある程度の光量を確保させることができる。また、ムーブメントのムーブメントケース外面或いはケース内反射部へ向けた照明光の伝搬を促すことができる。
上記(5)の構成のメータ装置によれば、光透過抑制部材によって指針軸の外周面からの照明光の漏れを抑制させているので、軸孔を通して文字板の背面側から光が漏出するのを回避させることもできる。さらに、指針軸の文字板から露出する先端部に大きなキャップを被せる必要がなくなり、小さなキャップでも、文字板の指針軸が貫通する軸孔からの光漏れを可及的に抑えることが可能となる。その結果、デザイン性が良好な意匠表示のメータ装置が提供できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメータ装置によれば、導光部材での屈折作用により、照明光を、ムーブメントのムーブメントケース外面及びケース内反射部へ向けて分散させた状態で導光させることが可能となる。その結果、ムーブメントケース外面からの反射光及びケース内反射部からの反射光を用い、文字板への均一照明が可能となる。換言すれば、指針方向への照明と同時に、文字板への均一で効果的な照明も行うことが可能なメータ装置が実現できるようになる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るメータ装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線における矢視断面図である。
【図3】図2に示すメータ装置の指針要部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るメータ装置の導光部材を構成するプリズムを示す斜視図である。
【図5】図4のプリズムの要部における照明光の光路を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るメータ装置の遮光部材を示す斜視図である。
【図7】従来のメータ装置を示す断面図である。
【図8】従来の他のメータ装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るメータ装置1を示すものである。
【0018】
メータ装置1は、基板2上に実装された光源3と、この光源3が搭載された領域を含む基板2上の所定場所に取付けられたムーブメント4と、ムーブメント4の上部に設置された、数字、文字、記号など、車自体或いは車周辺の環境などに関する必要情報を表記する文字板5と、文字板5の数字、文字、記号など指し示す指針6と、後に詳述する、導光部材(以下、「プリズム」とよぶ)7及び遮光部材8と、を有する。なお、図1中、符号11はトリップメータやオドメータなどをデジタル表示させるLCD(Liquid Crystal Display)による表示部、符号10は、これらの部材を内部に収容するケース、符号12は表示板、をそれぞれ示す。また、図2中、符号13は計器のケース10の内部に位置するケース内反射部を示すものであり、このケース内反射部13の表面は、照明光が吸収されず効果的に反射するような光沢感を高めた適宜材料で形成される。
【0019】
光源3は、所定波長(λ)の可視光を出射する例えばLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)で構成されており、後述する回転軸41の下部側の端面(以下、これを「基端面」とよぶ)に正対状態でその直下の基板2に実装されている。本実施形態の光源3であるLEDは、光軸が基板2の上面に対して垂直なZ方向に設定されており、このLEDからの光(以下、「照明光」とよぶ)の大部分のものが直上の回転軸41の基端面に向けて出射される。
【0020】
ムーブメント4には、図2に示すこのムーブメントのムーブメントケース40内部に、ステップモータM、減速ギア列G、回転軸41などのムーブメント部品が収容されている。ムーブメントケース40の上面4A側は、後述するプリズム7で屈折後の照明光を反射させることで文字板5またはケース内反射部13に誘導し、最終的に文字板5を均一に照明するため、外周に向かうほどケース内反射部13へ向けて下方に傾斜した斜面を呈している。このため、ムーブメントケース40は、照明光が吸収されず効果的に反射するような適宜材料で形成される。
【0021】
ステップモータMは、回転軸41、さらには指針6を回動させるためのものであり、減速ギア列G、即ち中間ギアG1及び出力ギアG2を介して減速させながら回転軸41を回動させる。この回転軸41を回動させることにより、これと一体の指針6を文字板5の表面に沿って回動させ、必要な各種情報を指し示す。本実施形態のステップモータMは、図2に示すように、ステータM1と、このステータM1の開口された中央部に設置されたロータ軸を含むロータM2と、を備える。なお、上記のような減速ギア列Gではなく、単一のギアで減速させる構成であってもよい。
【0022】
出力ギアG2は、回転軸41の中間部付近においてこの回転軸41と一体に形成されている。例えば、本実施形態の出力ギアG2は、適宜の透明樹脂材料により、導光機能を有する回転軸41と一体成形されている。尚、本実施形態では、このように出力ギアG2と回転軸41とは一体に成形されているが、別体としてそれぞれ形成しておき、その後に回転軸41を出力ギアG2に貫通して固着させるようにした構成でもよい。
【0023】
回転軸41は、導光性に優れた適宜の透光性(若しくは導光性)樹脂材料で出力ギアG2と一体に成形されており、ステップモータMからの回動力を指針軸61へ伝達させるだけでなく、光源3からの照明光を指針軸61へ伝播させる。具体的には、この回転軸41は、出力ギアG2の円盤状のギア本体中央から上方および下方にそれぞれ突出するように設けられている。そして、ギア本体に対して垂直上方に延びる回転軸41の上側の軸芯、ギア本体に対して垂直下方に延びる回転軸41の下側の軸芯、およびギア本体のギア軸芯は、いずれも同一直線上に位置する。また、この回転軸41は、光源3からの照明光を指針6まで効果的に導光させるために略円柱形状を有する。
【0024】
この回転軸41は、所要の光量を確保するため、導光機能を持たない回転軸に比べて外径、特に出力ギアG2との取付部位より下部側の外径を太くしている。このように、回転軸41の下部側の外径寸法を大径にしているので、小径寸法のものよりも光源3からの照明光に対する受光効率が高まる。特に、本実施形態の回転軸41は、下部側の外径寸法を上部側と同等寸法に構成している。従って、上部側と下部側との間の一部で大径から小径に縮径される構造のものとは異なり、回転軸41内部を導光されてきた照明光が縮径部分で漏光する、といった現象も回避できるので、導光効率も高まる。
【0025】
また、回転軸41は、ムーブメントケース40の上部外面、つまり上面4Aから外部に突出しており、この突出した先端側である上側が後述の指針軸61の端部(これを「基端」とよぶ)と、プリズム7及び遮光部材8を介して一体に連結される。また、この回転軸41は、先端側がムーブメントケース40の軸孔40Aに軸支されており、また基端側が、ムーブメントケース40に設けた軸受けとなる軸孔40Bに回転自在に軸支される。
【0026】
前述したように、この回転軸41は、基端面が光源3の直上に設置されて正対している。従って、光源3からの照明光がこの基端面に入射すると、その照明光の大部分が回転軸41の内部の外周面との界面部分で反射、例えば全反射或いは正反射等を繰り返しながら導光され、先端である上方へ向けて伝搬されていく。
【0027】
メータ装置1は、本実施形態の場合、文字板5が速度計の全面に亘って嵌め込まれる。また、文字板5には、ムーブメント4を含む各種計器類を設置するための孔や各種表示窓などを開口されている。更に、この文字板5は、透明な図示外の表ガラスで上部が覆われる。尚、表ガラスは、無色透明なものだけでなく、黒色系透明なもの、スモークフィルムが張られた所謂スモークガラスなどの透過性を有するものであればよい。
【0028】
なお、ムーブメント4を備えるメータ装置1は、本実施形態の場合には上述したように速度計を構成している。この速度計では、図示しないセンサによって検出された現在速度に対応したセンサ信号に基づき、後述の指針6を所定角度だけ回動させ、文字板5に形成された特定の数字を指し示すことによって現在速度をアナログ表示する。
【0029】
文字板5は、本実施形態では、車自体或いは車周辺の環境などに関する必要情報が適所に表記される。文字板5には、中央部に指針6の指針軸61が貫通する軸孔50が穿設される。
【0030】
指針6は、前述したように、回転軸41を伝播してきた照明光を入射し指針本体62へ伝播させるために、透光性を有する指針軸61が指針本体62の基部63に垂設されている。この指針軸61は、後述するプリズム7及び遮光部材8を介して回転軸41と一体に連結されている。また、この指針6には、指針軸61の直上である基部63を覆う前述したキャップ9を備える。
【0031】
さらに、この指針軸61の外周面には、図3に示すように、指針本体62の基部63へ向けて指針軸61内部を伝播する照明光が、指針軸61の外周面から外部へ漏光するのを抑制するため光透過抑制部材(以下、抑制部材とよぶ)60が形成されている。この抑制部材60は、適宜の反射膜などからなるものであって、この抑制部材60の形成された箇所は、少なくとも遮光部材8よりも先の、つまり指針軸61の先端寄りの外周面であればよい。
【0032】
プリズム7は、回転軸41の先端側に一体に組付けられている。このプリズム7は、回転軸41内部を伝播する照明光が入射される。そして、このプリズム7に入射する照明光のうち、軸芯方向に沿って直上する照明光以外の照明光を下方側へ屈折する。これにより、文字板5の背面へ直接入射して、又はケース内反射部13で反射後に文字板5の背面へ入射して、文字板5の均一照明を施す。そのため、このプリズム7は、適宜の透明材料を用いて図4に示すような形状に形成されており、外周にいくほど厚さを薄くさせた独特な略円盤状を呈している。
【0033】
具体的には、プリズム7は、下面中央部に回転軸41の先端が圧入される下穴71を有するとともに、上面中央部に遮光部材8の後述する軸受部81が圧入される上穴72を有する。このようなプリズム7を設置することで、単一の光源3からの照明光を、指針6の照明とともに、文字板5の照明としても兼用できるので、メータ装置1の小型化及びコスト削減などが図られる。なお、ここでは、回転軸41とプリズム7とを別体にした構造について説明するが、プリズム7と回転軸41とを一体に成形したものであってもよい。その際、ムーブメントケース40の形状は適宜変更される。また、ここでは、遮光部材8の後述する軸受部81が上穴72に圧入される構造について説明するが、後述する貫通孔80軸を貫通した指針軸61が上穴72に圧入される構造であってもよい。
【0034】
下穴71には、図5に示すように、天井面71Aが下穴71に向けて膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、その天井面71Aから延びる下穴71の上部内周面71Bは下方へ拡開するとともに凹状に湾曲する傾斜面が形成されている。これにより、回転軸41を透過後の照明光のうち天井面71Aへ入射する照明光に対しては、プリズム7の中心軸に沿った垂直(Z)方向へ偏向させることで、指針軸61方向へある程度の光量を確保させる。
【0035】
一方、回転軸41を透過後の照明光のうち上部内周面71Bへ入射する照明光に対しては、外方へ拡散させることで、後述するムーブメント4のケース上面4A或いはケース内反射部13の底部付近へ向かうようにする。
【0036】
上穴72にも、図5に示すように、床面72Aが膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、その床面72Aから延びる下部内周面72Bは上方へ拡開するとともに凸状に湾曲する傾斜面が形成されている。このように、プリズム7は、天井面71A及び床面72Aの双方によって、天井面71Aと床面72Aによって挟まれる部分が凸レンズ形状を呈している。これにより、プリズム7の中心軸に沿った垂直(Z)方向へ照明光を偏向させることで、指針軸61方向へある程度の光量を確保させることができる。また、上部内周面71Bは、上部内周面71Bに入射した照明光を屈折して下部内周面72Bに向かわせ、下部内周面72Bは、ムーブメント4のケース上面4A或いはケース内反射部13に向かわせる。これにより、ムーブメント4のケース上面4A或いはケース内反射部13へ向けた照明光の伝搬を促すことができる。
【0037】
また、特に、このプリズム7は、回転軸41内を伝播してきた光源3からの照明光の一部が、文字板5とは反対方向に向けて屈折させるようにするため、下面73側が外縁部方向に向けて上方に傾斜するとともに凹状に湾曲した形状を呈している。また、プリズム7の上面74は、外縁部方向に向けて僅かに下方へ傾斜した凸状に膨出する形状を呈している。
【0038】
このように、プリズム7の下面73は、斜め上方へ傾斜した斜面を構成する。従って、この下面73は、回転軸41の先端面或いは先端部側外周面からプリズム7に入射後、直上に向かわずに上部外方へ向かう照明光を、ムーブメント4のケース上面4A或いはケース内反射部13の底部付近へ向けて、拡散させる状態で屈折させる。
【0039】
一方、プリズム7の上面74も、斜め下方に傾斜した斜面を構成することで、プリズム7内部を進行する照明光のうち、この上面74内において空気との界面で反射する照明光に対して、その反射後の光路をできるだけ拡散させるようにする。
【0040】
なお、上面74は、下面73とは異なり、プリズム7内部を進行する照明光のうち中心部付近を進行する照明光であって、その後、上面74で反射せずに屈折してプリズム7から出射する照明光に対しては、できるだけ直上へ屈折させて遮光部材8へ向かわせる。このため、プリズム7の上面74は、下面73に比べると若干傾斜を緩くした形状に形成しされている。
【0041】
遮光部材8は、プリズム7で屈折して各種方向に向かう照明光の一部が、表示板5の軸孔50を通過して文字板5の外部に漏光するのを防止するものである。遮光部材8があることにより、表示板5の軸孔50を通過して文字板5の外部に漏光することを抑制できる結果、大きな外径寸法のキャップを指針6の基部63に被せなくともよいようになっている。
【0042】
本実施形態の遮光部材8は、図6に示すように、適宜の不透明材料を用いて略傘形状に形成されている。この遮光部材8は、基本的には、少なくとも照明光となる波長の光を吸収または反射する構成であることが必要であるが、好ましくは、可視光領域の波長の光、つまり、凡そ380nmから760nmの波長帯の全ての光を吸収または散乱する構成であることが好ましい。
【0043】
本実施形態の遮光部材8は、少なくとも文字板5と対面する上面部分が文字板5と同系色のもので形成又は着色されている。遮光部材8は、透明若しくは半透明を有する文字板5の背面側に位置しているが、遮光部材8が文字板5と同系色のもので形成又は着色されていることにより、文字板5が光を透過するものであっても、遮光部材8が文字板5の上面側から透けて見えることを抑制している。
【0044】
遮光部材8は、指針軸61の基端側の一部に取付可能な構成のものであり、本実施形態では下上各面の中央部に突出する軸受部81,82を貫通して形成された貫通孔80に一体に組付けてある。
【0045】
次に本実施形態の作用について説明する。
光源3から出射する照明光は、回転軸41の基端面から入射し、ムーブメントケース40の上面4Aから突出した回転軸41の先端面まで導光された後、プリズム7に入射してその内部を進行する。その後、この照明光のうちプリズム7内の上面74の主に中心部付近から外部へ出射する照明光は、指針軸61にその基端面から入射してその内部を上方へ進行する。このようにして、指針軸61を伝播する照明光が、その後に指針本体62から出射することで、指針6が発光照明される。
【0046】
このように、プリズム7に入射して内部を進行する照明光のうち、プリズム7中心部の付近を進行する照明光に対しては、上面74で反射せずにできるだけ多くをそのまま透過させ、直上の指針軸61へ向かわせる。特に、凸レンズ機能を有する床面72Aでプリズム7の軸芯方向に照明光を集光させることができる。その結果、指針軸61に対して、ある程度多くの入射光量を確保することができ、その分、指針本体62から十分な光量で発光させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、プリズム7の上面74が、斜め下方に緩やかに傾斜した斜面を有している。このため、プリズム7内部を進行する照明光のうち特にプリズム7中心部以外を進行し、プリズム7内の上面74で反射する照明光に対しては、光路を若干収束させる状態であるがほぼ均等な状態となるように偏向させることができる。
【0048】
また、プリズム7の下面73が斜め上方に向けて傾斜した形状を有する。このため、プリズム7内の上面74で反射後に下面73で屈折し外方へ進行する照明光についても、その屈折後に、大部分がムーブメントケース40の上面4A又は計器のケース10の内部に位置するケース内反射部13のいずれかに向けてほぼ均一に拡散した状態で進行する。
【0049】
また、ムーブメントケース40の上面4A又はケース内反射部13に向けて進行する照明光は、それらの面で照明光が吸収されないように構成されているので、反射後、あるいはこれらで再度の反射を経て、やがて文字板5を背面から上方へ透過できる。これにより、単一光源3での照明光であっても、指針6と文字板5との双方の照明が可能となる。特に、文字板5に対しては、背面から満遍なく均一な間接照明が行える。
【0050】
このように、本実施形態のような構成のプリズム7を用いて、1か所の光源3からの照明光を一部外方へ向けて屈折させ、ケース内反射部13の中心部付近だけではなく外縁部近くまで満遍なく均一に照明光を拡散させることができる。
【0051】
このような指針6での発光照明は、指針6が回動停止中であっても、また指針6がどの方位を回動動作中であっても、まったく同じように行われる。即ち、光源3からの照明光が、回転軸41、プリズム7、指針軸61、指針本体62(これらを、ここでは回動部材とよぶ)に至るまで伝播するときの伝播動作は、これら回動部材が回動している間、回動部材の回動角速度や回動位置に拘わらず同じように行われる。一方、文字板5に対する発光照明についても、指針6の回動動作の如何にかかわらず、変わりなく行われる。その結果、指針6及び文字板5は、同じように均一な状態で発光照明されるわけである。
【0052】
また、本実施形態によれば、光源3からの照明光が、例えば回転軸41の外周面から漏光した場合、その漏光した照明光が仮に上(Z)方向に向かおうとしても、プリズム7に入射するか、遮光部材8で殆どが吸収または反射される。そのため、遮光部材8と文字板5の背面との間の隙間を通り抜けて文字板5の狭い軸孔50から文字板5の上方外部へ漏光する照明光は殆ど抑制できる。特にこの実施形態では、軸孔50を必要最小限の内径寸法に形成してあるので、その漏光はさらに回避できる。
【0053】
なお、プリズム7から上(Z)方向に向かって屈折する照明光についても、同様であって、遮光部材8により文字板5の軸孔50からの漏光が回避できる。さらに、指針軸61の外周面には、図3に示す抑制部材60が形成されている。従って、指針軸61の外周面から外部に漏光して上(Z)方向に向かい、文字板5の軸孔50から文字板5の外部へ漏光するといった不都合も回避できる。この結果、本実施形態によれば、文字板5の指針軸61が貫通する軸孔50からの光漏れを可及的に抑えることが可能となるので、キャップ9は、図1に示すように、短径側の長さLが軸孔50の必要最小限の大きさを有する内径寸法Dより僅かに大きく形成されており、従来に比べて大幅に小さく形成できる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【0055】
例えば、本発明の遮光部材8は、指針軸61の基端側の一部に取付け可能な構成のものであって、本実施形態では中央部に穿設された貫通孔80に、指針軸61が嵌挿状態で一体に組付けてあるが、特にこれに限定されない。例えばこの遮光部材8は、文字板5の内面である背面に一体に組付けてもよい。その場合、中央部に指針軸61を軸支させる軸受を取付けた貫通孔80を、文字板5の軸孔50に合致するような状態で、遮光部材8を文字板5の背面に固着させればよい。
【0056】
また、本実施形態では遮光部材8が文字板5と同系色で形成されているが、特にこの構成に限定されない。即ち、図2に示すように、遮光部材8の直上で、かつ、文字板5の背面に、文字板5と同一若しくはこれより大きめの形状を有する同系色の目隠し部材14をケース10に固設しておけば、遮光部材8は任意の色の遮光性材料で形成してもよい。
【0057】
この場合には、遮光部材8は、上面を含めた外面を光源3からの照明光を吸収させる適宜の任意の色に形成できるので、遮光部材8はその色がいずれであっても照明光を吸収可能であればよく、材料の選択自由度が増す。一方、文字板5の背面側の、遮光部材8の直上部分には、遮光部材8と同一形状若しくはこれより大きめの形状を有し、文字板5と同系色の波長の光のみを透過させそれ以外の波長域の可視光を吸収させる、目隠し部材14を設けるようにする。
【0058】
さらに、本実施形態では、必要最小限の大きさのキャップ9を指針6に取付けているが、特にこれは必須のものではない。
【0059】
また、本発明のメータ装置としては、例えば、燃料計部、タコメータ部、スピードメータ部、及び水温計等の各種計器類などのメータ装置への適用が可能である。さらに、本発明のメータ装置は、自動車用計器として説明したが、これ以外に、船舶用計器、航空機用計器など各種乗物用の計器として適用も可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 メータ装置
11 表示部
12 表示板
13 ケース内反射部
14 目隠し部材
2 基板
3 光源
4 ムーブメント
40 ムーブメントケース
4A 上面
40A、40B、50 軸孔
41 回転軸
5 文字板
50 軸孔
6 指針
60 抑制部材
61 指針軸
62 指針本体
63 基部
7 導光部材(プリズム)
71 下穴
71A 天井面
71B 上部内周面
72 上穴
72A 床面
72B 下部内周面
73 下面
74 上面
8 遮光部材
80 貫通孔
81,82 軸受部
9 キャップ
10 ケース
D 文字板の軸孔内径寸法
G 減速ギア列
L キャップの短径側の長さ
M ステップモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光が入射する回転軸と、前記回転軸を回動させるモータと、前記回転軸及び前記モータを内部に収容するムーブメントケースと、を有するムーブメントと、
各種標記を設けた文字板と、
前記文字板の背面に位置する、凹状に湾曲した窪みに前記ムーブメントが配置された計器のケース内反射部と、
前記回転軸の先端に一体に取付可能に設けられ、前記回転軸内を伝播してきた前記光源からの光の一部を、前記ムーブメントのムーブメントケース外面または前記ケース内反射部に向けて屈折する導光部材と、
前記文字板上の標記を指し示す指針本体と、前記指針本体の基部から文字板に向けて垂設された、基端側が前記文字板の軸孔に回転可能状態に挿通されるとともに前記導光部材を介して回転軸の先端側と連結可能な指針軸と、を有する指針と、
を備えることを特徴とするメータ装置。
【請求項2】
前記文字板の背面側において、前記指針軸の基端に取付可能な遮光部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のメータ装置。
【請求項3】
前記導光部材及び前記遮光部材は、前記指針軸と前記回転軸とを連結する手段を構成している、
ことを特徴とする請求項2に記載のメータ装置。
【請求項4】
前記導光部材は、前記指針軸を連結する手段としての、該指針軸の先端が圧入される上穴と、前記回転軸を連結する手段としての、該回転軸の先端が圧入される下穴とを有し、
前記上穴は、床面が膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、該床面から延びる下部内周面は上方へ拡開し、
前記下穴は、天井面が膨出する凸レンズ形状を呈するとともに、該天井面から延びる上部内周面は下方へ拡開する、
ことを特徴とする請求項3に記載のメータ装置。
【請求項5】
前記指針軸の外周面のうちの、前記遮光部材より前記文字板寄りに位置する箇所には、前記指針軸の内部から外部へ向けての光の透過を抑制する光透過抑制部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載のメータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24699(P2013−24699A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159122(P2011−159122)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】