説明

モジュール式ディスプレイシステム

【課題】
【解決手段】本発明は、情報の表示や広告、TV画像の中継、芸術作品の展示などの用途にさまざまな環境下で使用し得るモジュール式ディスプレイシステム10を提供する。システム10は、端部が開放されたセル18のアレイを備える少なくとも1つの帯状アセンブリ12と、LED等の光源32のアレイを備える少なくとも1つの照明アセンブリ14と、を備える。各光源32はセル18に合わせて配列され、プロセッサ34により制御される。典型的には、セル18のアレイは保護用の前部パネル20及び後部パネル22の間に挟持される。ネットワーク化されたプロセッサ34を外部の制御プロセッサで制御し、帯状アセンブリ12を所望の平面形状に配列することにより、大型ディスプレイを簡易かつ低コストに構築することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の表示や広告、TV画像の中継、芸術作品の展示などの用途にさまざまな環境下で使用し得るモジュール式ディスプレイシステムに関する。モジュール式という特性により、多様な応用分野に合わせてディスプレイの形状や大きさを柔軟に変えることができる。
【背景技術】
【0002】
各ピクセルがLEDまたは光ファイバの端面などの光源で作成された、ピクセルのアレイで構成される視覚ディスプレイが知られている。しかしながら、このようなディスプレイには多くの不利な点がある。適度にコヒーレントで見やすい画像を見るためのスクリーンの視聴角度およびスクリーンからの距離は、比較的限定されている。好ましい範囲内で見るときでさえも、光学特性および見やすさはそれほど優れていない。これは、黒を背景とした色点として画像が表示される傾向があるためである。屋外での使用のためにディスプレイを防水構造にするには、多額の費用を払って追加の改造が必要となる。また、このようなシステムは耐荷重能力が限られており、構造部材として使用することはできない。
【0003】
また、厚いガラスシートで覆われたCRT、プラズマまたはLCD画面のアレイを使用して、大型のディスプレイを製造できることが知られている。しかしながら、そのサイズと形状には依然として制限があり、再生される全体画像は、個々のTV画面の厚い縁によって分断される。
【発明の開示】
【0004】
本発明の第1の実施態様は、端部が開放されたセルのアレイを備える少なくとも1つの帯状アセンブリと、光源のアレイを備える少なくとも1つの照明アセンブリと、前記光源を制御する少なくとも1つのプロセッサとを備え、各光源は使用時に帯状アセンブリのセルに合わせて配列可能であることを特徴とするモジュール式ディスプレイシステムである。
【0005】
これにより、適宜の数の帯状アセンブリ及び照明アセンブリから、異なる形状あるいは大きさのディスプレイを簡便に組み立てることができる。
【0006】
帯状アセンブリは前部パネル及び後部パネルをさらに備え、当該前部パネル及び後部パネルは少なくとも部分的に光を透過させ、当該前部パネル及び後部パネルの間に前記セルのアレイが配置される。
【0007】
前部パネル及び後部パネルは防水性及び防風性を提供し、セルのアレイとともにアセンブリ全体の剛性と強度を向上させる。
【0008】
好ましくは、前部パネルは光拡散層を含む。この光拡散層は、セルの層に近接するほうの前部パネルの表面上に形成されていてもよい。好ましくは光拡散層は、前部パネル側に向けて凹んだ形状をしており、かつ各セルの一方の開放端に交差する面を形成してもよい。
【0009】
好ましい実施形態においては、光拡散層は、樹脂中に浮遊した状態で固定された合成オニキスで形成される。
【0010】
好ましくは、セルのアレイの後部にマスクが設けられ、当該マスクには複数の開口部が形成されており、開口部のそれぞれがセルに合わせて配列される。
【0011】
マスクは後部パネルの表面上にインクによるシルクスクリーン印刷で形成されていてもよい。あるいは、マスクは後部パネルに近接して配置される穴あきのシートを備えていてもよい。
【0012】
好ましい実施形態においては、帯状アセンブリは使用時に照明アセンブリから間隔をあけて配設される。
【0013】
この場合、照明アセンブリの光源を冷却する冷却手段をさらに備えてもよい。冷却手段は、帯状アセンブリと照明アセンブリとの間の間隙を流通する空気の流れを生成する手段を備えていてもよい。あるいは、冷却手段は、照明アセンブリの後部に隣接する水冷却手段を備えていてもよい。あるいは、冷却手段は、照明パネルの前部と照明パネルの後部に近接するヒートシンクとの間にサーマルブリッジを備えていてもよい。
【0014】
好ましくは、セルのアレイは複数のセル列を含み、各列のセルは隣りの列のセルに対してオフセットを有して配置される。
【0015】
好ましくは、各セルは六角形の形状であり、蜂の巣状に配列される。
【0016】
好ましい実施形態においては、帯状アセンブリは、1つのセル列の中心を横切る直線状のエッジを有する。
【0017】
一方、帯状アセンブリは、セルの境界に沿う非直線状のエッジを有することもまた可能である。
【0018】
照明パネルの光源は複数の列に配列され、各列の光源は隣りの列の光源に対してオフセットを有して配置されることも好ましい。
【0019】
照明アセンブリは直線状のエッジを有し、エッジに沿って配置されたであろう光源がアセンブリのエッジのわずかに内側にずらして配置されていてもよい。
【0020】
本発明のディスプレイシステムが複数のプロセッサを含む場合には、プロセッサがネットワークにより互いに接続され、当該ネットワークは中央制御プロセッサに通信可能とされていてもよい。ネットワークは階層的構造を有していてもよいし、リング構造を有していてもよい。
【0021】
本発明の更なる実施態様は、中央コントローラと、複数のディスプレイモジュールとを備えるモジュール式ディスプレイシステムであって、各ディスプレイモジュールはディスプレイ領域とディスプレイを制御するプロセッサとを含み、各プロセッサは、前記中央コントローラと通信するネットワークにより結合されていることを特徴とするモジュール式ディスプレイシステムである。
【0022】
また、本発明のモジュール式ディスプレイシステムにおいては、帯状アセンブリは複数の照明アセンブリに関連づけられていてもよい。これは、典型的には大きなディスプレイ領域が望まれる場合に好ましい。
【0023】
あるいは、照明アセンブリは複数の帯状アセンブリに関連づけられていてもよい。これは、扱いにくい形状のディスプレイ領域が必要とされる場合に好ましい場合がある。
【0024】
以下、添付の図面を例示の目的のために参照して、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態のモジュール式ディスプレイシステムの一部を示す斜視図である。このシステム10は、1つ以上の帯状アセンブリ(fascia assembly)12と1つ以上の照明アセンブリ14とを備える。これらは基本的には独立に機能しうるよう構成されるユニットであって、それぞれ別個に製造されて組み付けられる。後述するように、各帯状アセンブリ12はセルのアレイを備える。各セルは端部が開放され、内部を光が透過しうるチューブの形状とされている。各照明アセンブリ14は、分散配置された光源のアレイを保持するプリント基板(PCB)と、関連する駆動回路とを含んで構成される。各光源は、光がセルの内部を通過するよう向ける。駆動回路は1つに統合されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0026】
帯状アセンブリ12及び照明アセンブリ14は扱いに都合のよいよう所望の大きさのユニットとして製造され、これらのユニットの多数の組み合わせでディスプレイが構築される。典型的には、大型の帯状パネルに複数の小型照明パネルを組み付けて製造するのが容易であるかもしれない。例えば縦横が2.4m×2.7mのディスプレイ領域を必要とする非常に大型のシステムでは、1つの帯状アセンブリを2.4m×0.9mの大きさとして、3つの帯状アセンブリにより全ディスプレイ領域を実現することができる。これに対して、照明アセンブリを例えば0.6m×0.9mと小型にすることができる。そうすると、各帯状アセンブリに4つの照明アセンブリを要することとなる。一方、小型または不規則形状のディスプレイ領域については、例えばディスプレイ領域に曲線状の端部を設けるというように特定の形状に小型の帯状アセンブリ12をカットするほうが便利であることもあろう。この場合、1つの照明アセンブリが複数の帯状アセンブリに供され得る。
【0027】
帯状アセンブリ12はそれ自身でセル18のアレイ16を構成する。セル18は、各端部が開放されており、保護用の前部パネル20及び後部パネル22の間に挟持されている。
【0028】
好ましい実施形態としては、アレイ16は例えばアルミニウム製の蜂の巣状のメッシュを備え、このメッシュは複数の六角形のセル18を形成する。しかしながら、アレイ16は他の形状のセル18を形成してもよい。セル18の形状は、例えば、二等辺三角形や正三角形、格子状パターンまたはオフセットのあるレンガ状パターンの正方形や長方形、円形、あるいはその他の形状でもよい。
【0029】
製造段階においては、各セル18が等しい形状となりアレイ16がゆがめられないようにメッシュは作業者により押し付けられて引き延ばされてもよい。
【0030】
前部パネル20及び後部パネル22は、使用時の熱変形を避けるために、同じ素材で作られることが望ましい。なお用途によっては前部パネル20及び後部パネル22が異なる素材で作られることが望ましい場合もある。パネル20、22は、少なくとも光を透過する性質を有する必要があり、望ましくは透明であることが好ましい。それとともに、パネル20、22は、帯状アセンブリ12に構造的な剛性を与えるように硬さと強さとを有する必要がある。したがって、パネル20、22は、典型的には5mm程度の厚さのポリカーボネイトまたは強化ガラスなどの材料で形成されることが望ましい。アレイ16は10mmないし25mm程度の厚さであり、その結果、帯状アセンブリ12全体は20mmないし35mm程度の厚さを有する。
【0031】
前部パネル20及び後部パネル22は、望ましくは接着部24によりアレイ16に固着されている。この接着部24は、スプレーあるいはローラにより塗布された湿式の接着剤や薄いフィルム状の粘着シートを用いることができる。アレイ16に隣接する前部パネル20の表面には、光拡散層が形成されることが望ましい。光拡散層は、照明アセンブリ14から発せられ帯状アセンブリ12を透過する光を拡散する。好ましい実施形態としては、光拡散層は、樹脂中に浮遊した状態で固定された合成オニキスで形成される。樹脂としては、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂などを用いることができる。光拡散層は、接着層とは別々に塗布されてもよい。あるいは光拡散層と接着層の両者をまず混ぜ合わせてから前部パネル20に塗布してもよい。
【0032】
製造段階においては、アレイ16が前部パネル20に押着され、その際に光拡散層及び接着部24に微小なメニスカス25が形成される。すなわち、前部パネル20側に向けて通常は凹んだ形状となり、かつ各セル18の末端を交差するように広がっている表面が接着部24に形成される。これにより、セル18を通過する光をさらに拡散させるレンズが形成される。なお逆に、光拡散層の表面は平坦であってもよいし、凸面あるいは他の複雑な平面形状であってもよい。
【0033】
後述するように、照明アセンブリ14は、複数の分散配置された光源を備えており、各光源は、完成時のディスプレイシステムでは帯状アセンブリ12のセル18に合わせて配列される。あるセルから隣のセルへの光の漏れを防ぐあるいは光の漏れ量を低減するためには、マスク26を後部シート22とアレイ16との間に設けることが望ましい。
【0034】
このマスク26は、アレイ16に隣接する後部パネル22の表面へのインクによるシルクスクリーン印刷で形成することができる。マスク26は、インク層において各セル18に合わせて配列された開口部28を有してもよい。インクは望ましくは黒色がよいが、他の暗い色でもよい。黒色を用いれば、あるセルに対応する光源がオフとされているときにそのセルが黒色に見え、良好なコントラストを実現できる。他の暗い色を用いてもよいコントラストを実現することができるものの、光源がオフにされているときにディスプレイが異なる色に見えてしまう。
【0035】
上述に代えて、マスク26として、穴あきの素材からなる別個のシートを後部パネル22に近接して配置することもできる。この穴あきのシートは、パネル22とアレイ16との間に配設されてもよいし、後部パネル22の外側に隣接して配設されてもよい。このシートは、各セル18に合わせて配列された開口部28を有する。
【0036】
開口部28は望ましくは円形がよいが、他のさまざまな形状としてもよい。各開口部28の直径は、光源からセル18に入射して光拡散層に照射される光量を最大化するように、つまり光源からの光が隣のセルに入射するのを抑えるように設定してもよい。本実施形態では、マスク26は、開口部28を通過した光束がセル18の前端面を満たすように、つまり図2における矢印Aで挟まれた間の領域となるように調整されることが望ましい。
【0037】
また、これに代えて、隣のセル18への光の漏れを敢えて許容するように開口部28の大きさを調整してもよい。これは次の理由による。仮にある光源が故障して対応するセルが黒色(あるいは少なくとも暗色)となれば、このような「デッドセル」がディスプレイ全体の中で目障りになる可能性がある。隣接セル間で光の漏れを許容することにより、これが緩和される。いくらかの光がデッドセル漏れ出て、それほど暗く見えはしないからである。隣接セルからの光は典型的にはデッドセルが有していたであろう色のよい近似を提供する。これにより、デッドセルが視認されにくくなるとともに、ある程度色が混ざり合ってセルのエッジがやわらかく見えるようになる。そうであっても、開口部28の直径、つまり光の漏れ量は、光源をオフにしてセルを実際に暗くしようとする際に大きくなりすぎないようにすべきである。
【0038】
各セル18の壁面は、輝きを持ち、高い反射性を有するものであってもよいし、あるいは、黒色とされ非反射性を有するものであってもよい。反射性のある壁面を用いると、ほぼ180度といった広い視野角のディスプレイを実現することができ、ディスプレイの横に立っている看者からもディスプレイの正面に立っている看者からも表示画像が明瞭に観察される。非反射性の壁面を用いると、各セル18間に高いコントラストが与えられる。これにより、ディスプレイの明るさを低減させることができる。視野角は小さくなるものの、より精細で明瞭な画像を表示することができる。
【0039】
各照明アセンブリ14は、分散配置された光源32のアレイを保持する回路基板30と、光源32を制御する処理手段34とを備える。光源32は、望ましくはLEDであり、これに代えて、有機発光ダイオード(OLED)や白熱電球あるいは他の分散配置された光源を用いることができる。
【0040】
各光源32は、フルカラーLEDが搭載された表面構造であってもよい。フルカラーLEDは、通常は1つの赤色光の光源、1つの緑色光の光源、及び2つの青色光の光源が組み合わされたユニットであり、組み合わせての発光により白色光を生成することができる。あるいは、各光源32は、個別の赤緑青のLEDが密集したクラスター状とされていてもよい。これらに代えて、モノクロのディスプレイを実現する場合には、単一色あるいは白色のLEDを用いることも可能である。
【0041】
図3に示されるように、公知の光源アレイでは光源Lは一般的に正方形の格子状のパターンに配列される。この正方形の格子状配列を採用する限り、光源を各セルにそろえて配列させるためには、図3に示されるようにセルCも同様の正方形の格子状配列のみが許容されることとなる。図示されているセルは正方形であるが、六角形や長方形、円形なども採用し得る。
【0042】
しかしながら、本発明においては図4及び図5に示されるように、光源32はオフセットを有するパターンに配列される。すなわち、光源32は複数の列をなしており、隣の列の光源32に対して各列の光源32はオフセットを有する。これにより、セル18に関しても対応してオフセットを有する配列とすることが許容され、図4及び図5に示されるように、セル18を例えば蜂の巣状やレンガ状の配列とすることができる。このようにして、各セル18に対して等距離に隣接するセルの数がより大きくなる。つまり、図3では4つだけであるのに比較して図4及び図5では6つと大きくなっている。これによりディスプレイ上への画像のマッピングをよりよくすることができ、看者にとっての画像の有効解像度を向上させることができる。
【0043】
大型のディスプレイ領域を実現するには、全ディスプレイ領域で画像がコヒーレントであり、かつ、ディスプレイを構成する多数のユニットのエッジで画像が不連続とならないことがもちろん望ましい。本発明に係る帯状アセンブリ12及び照明アセンブリ14の構造により実質的に接合部をシームレスにすることができ、画像の連続性を向上させることができる。
【0044】
セル18の六角形の配列16において、図6に示されるように、各帯状アセンブリ12に直線状エッジEを形成するのが最も容易である。この直線状エッジEは、セル18の1つの列の中心を横切るとともに、各セル18で対向する頂点を通過する。その結果、2つのパネルが互いに隣接する際には、一方のアセンブリで二等分にされたセルのそれぞれが、隣接のアセンブリで二等分にされたセルのそれぞれに結合されて、1つの六角形のセルが再度形成される。
【0045】
照明アセンブリも同様に直線状エッジで形成するのが最も簡便である。この場合、回路基板30のエッジ上にちょうど位置するはずであった光源32(上述のように二等分される前のセルの中心に合わせて一列に配列されるはずであった光源)は、エッジのやや内側にずらして配置せざるを得ない。その結果、その光源は、対応する位置にある二等分セルとともに機能を生じることとなり、二等分セルが結合された結果として形成されるセル18の中心から少し外れたところに位置する。なおこのとき、隣の回路基板30においては、結合される他方の二等分セルに対応する光源32は不要である。これにより、生成される画像の品質に特段の悪影響が生じることがない。各アセンブリのエッジ上に位置するマスク26の開口部28もオフセットをもたせてもよい。そうすれば、開口部28の中心に光源32を位置させることができる。
【0046】
また、セルを正確に二等分としない直線状エッジを採用することも可能である。この場合セルは大きさの異なる部位に分割される。これに伴って、光源32の位置をずらすとともに、エッジ上のマスク開口部28を2つの帯状アセンブリ12の隣接箇所に形成される結合セルに合わせて適切に位置合わせする必要がある場合がある。
【0047】
図7に変形例を示す。ここでは、帯状アセンブリ12のエッジEはセル18の境界に沿っている。このため、エッジEは、城塞のような形状とされ、セルの全体が残されている。隣のパネルとは互いに係合して結合される。
【0048】
照明アセンブリ14もまた対応する城塞状のエッジを有するように形成することができる。この場合、境界付近の光源32を、対応するセルの中心に合わせて配列したままにしておくことができる。
【0049】
帯状アセンブリ12と照明アセンブリ14とを組み付けてディスプレイシステムを構築する際には、図2に示されるように、後部シート22と回路基板30との間に典型的には5mm程度の空隙36が設けられる。この間隙は、組付作業を容易にするとともに、照明アセンブリ14の冷却を可能とする。LED等の光源32は大量の熱を出すが、寿命を最大限活用するためにはおよそ50℃から75℃の温度範囲に保たれることが好ましい。冷却用の空気は、矢印Cで示されるように、好ましくは薄層状の空気流を生成するファンにより空隙36に強制的に流される。その結果、まさに冷却が必要であるLEDの表面側に冷却効果が提供される。一方、他の選択肢として、水冷却手段を用いることもできる。水冷却手段は回路基板30の後側の面に隣接して配設される。さらに他の選択肢として、サーマルブリッジを用いることもできる。サーマルブリッジは、照明アセンブリと、回路基板30の後側の面に近接して設けられたヒートシンクとの間に配設される。
【0050】
使用に際しては、複数の帯状アセンブリ及び照明アセンブリが1つのディスプレイへと組み立てられてもよい。ディスプレイは、単体で用いられるスタンドアローンのユニットとされてもよいし、既に使われている構造物に取り付けられる別個のアセンブリとされてもよい。あるいは、ディスプレイシステムが物理的に構造物に一体化されて、例えば内壁や外壁の一部分を形成してもよい。
【0051】
このシステムは、ガラスパネルの外層構造として壁面に組み込むのに特に適している。図9に示されるように、1つ以上の帯状アセンブリ12が1つ以上の従来のガラスパネルと置き換えられて元々のガラス支持構造に取り付けられてもよい。ガラス支持構造は、後部支持仕切40と前部カバーストリップ42とを含んでもよい。または、帯状アセンブリ12は、構造物に組み込まれるに際して、ガラスパネルが接着剤で構造的に仕切りに接着されている箇所に組み込まれてもよいし、あるいは、斜めのパネルエッジに留める固定具を用いてガラスパネルが取り付けられている箇所に組み込まれてもよい。必要とされる照明アセンブリ14の数は、帯状アセンブリ12の背面側の構造に合わせて調整される。この実施例においては、帯状アセンブリ12は通常のガラスパネルと同じ大きさに製造される一方、照明アセンブリ14は後部支持仕切40の間に収まるように大きさが調整される。
【0052】
大型のディスプレイにビデオ画像を表示するためには大量の処理能力が必要とされる。本発明においては、光源32を制御して所望の画像を作り出すために各照明アセンブリ14に少なくとも1つのプロセッサ34が設けられる。プロセッサ34は通常はオペレーティングシステムをもつPCの構成とされ、回路基板30の背面側に搭載される。構成を極力シンプルにするには、プロセッサ34が、光源32を制御する駆動回路への通信インターフェイスであってもよい。この場合、画像処理などの複雑な機能は遠隔の制御用PCで実行すればよい。
【0053】
本発明に係る組立済のディスプレイシステムにおいては、複数のプロセッサ34は互いにネットワーク化され、そのネットワークは外部の制御用PC38に接続される。各プロセッサは自身のネットワークアドレスを有する。外部の制御用PC38は、そのネットワークにハードウェア的に接続され、あるいは、イーサネット接続等により接続されてもよい。その結果、すべてのプロセッサ34が組み合わされて必要な処理能力を発揮するとともに、この処理能力はディスプレイシステムの全体に分散して配置されている。これにより、拡張性のあるシステムが実現される。つまり、ディスプレイが大きくなるにつれて照明パネルをより多くしてPCを増やすことにより、必要な処理能力を実現することができる。本システムは、非常に高価となり得る外部の強力な単一の制御システムを用いる必要がない。
【0054】
本発明によれば、ディスプレイの平面形状を容易に変更することができる。例えば、帯状アセンブリ12が3×3に配列されたディスプレイは、9×1の配列に再構成することができる。このとき照明アセンブリの配列も必要に応じて変更される。中央の制御用PC38が、ネットワークの個々のPC34のネットワークアドレスを一度認識していれば、再構成されたディスプレイ領域で所望の画像が得られるように適切な制御を実行することができる。
【0055】
以上のように、本発明によれば、製造及び組付作業という観点において簡素でコスト上も有効であり、かつ高い画像品質を実現しながらも大きさや形状あるいは使用される場所という点で非常に柔軟性のあるモジュール式ディスプレイシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るモジュール式ディスプレイアセンブリの一部を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線についての断面の一部を示す部分断面図である。
【図3】従来の回路基板上の光源の配列を正方形の格子状セル配列とともに示す図である。
【図4】本発明に係る照明パネルを対応する六角形セルの配列とともに示す平面図である。
【図5】本発明に係る照明パネルを対応する長方形セルのオフセット付き配列とともに示す平面図である。
【図6】帯状アセンブリのエッジの詳細を模式的に示す図である。
【図7】帯状アセンブリのエッジの他の例の詳細を模式的に示す図である。
【図8】本発明のモジュール式ディスプレイシステムの制御システムの一実施形態を模式的に示す図である。
【図9】従来のガラス構造物に組み込まれた本発明に係るディスプレイシステムの一部の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 モジュール式ディスプレイシステム、 12 帯状アセンブリ、 14 照明アセンブリ、 18 セル、 20 前部パネル、 22 後部パネル、 32 光源、 34 プロセッサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が開放されたセルのアレイを備える少なくとも1つの帯状アセンブリと、光源のアレイを備える少なくとも1つの照明アセンブリと、前記光源を制御するプロセッサとを備え、各光源は使用時に帯状アセンブリのセルに合わせて配列可能であることを特徴とするモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項2】
前記帯状アセンブリは前部パネル及び後部パネルをさらに備え、当該前部パネル及び後部パネルは少なくとも部分的に光を透過させ、当該前部パネル及び後部パネルの間に前記セルのアレイが配置されることを特徴とする請求項1に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項3】
前記前部パネルは光拡散層を含むことを特徴とする請求項2に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項4】
前記光拡散層は、前記前部パネルの、前記セルのアレイに近接するほうの表面上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項5】
前記光拡散層は、前記前部パネル側に向けて凹んだ形状をしており、かつ各セルの一方の開放端に交差する面を形成することを特徴とする請求項4に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項6】
前記光拡散層は、樹脂中に浮遊した状態で固定された合成オニキスを含むことを特徴とする請求項3ないし5に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項7】
セルのアレイの後部にマスクが設けられ、当該マスクには複数の開口部が形成されており、開口部のそれぞれがセルに応じて設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項8】
前記マスクは前記後部パネルの表面上にインクによるシルクスクリーン印刷で形成されていることを特徴とする請求項7に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項9】
前記マスクは前記後部パネルに近接して配置される穴あきのシートを備えることを特徴とする請求項7に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項10】
前記帯状アセンブリは使用時に前記照明アセンブリから間隔をあけて配設されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項11】
前記光源を冷却する冷却手段をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項12】
前記冷却手段は、前記帯状アセンブリと前記照明アセンブリとの間の間隙を流通する空気の流れを生成する手段を備えることを特徴とする請求項11に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項13】
前記冷却手段は、照明パネルの後部に隣接する水冷却手段を備えることを特徴とする請求項11に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項14】
前記冷却手段は、照明パネルの前部と、照明パネルの後部に近接するヒートシンクとの間にサーマルブリッジをさらに備えることを特徴とする請求項11に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項15】
前記セルのアレイは複数のセル列を含み、各列のセルは隣りの列のセルに対してオフセットを有して配置されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項16】
各セルは六角形であり蜂の巣状に配列されていることを特徴とする請求項15に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項17】
帯状アセンブリは、1つのセル列の中心を横切る直線状のエッジを有することを特徴とする請求項15または16に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項18】
帯状アセンブリは、セルの境界に沿う非直線状のエッジを有することを特徴とする請求項15または16に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項19】
前記光源は複数の列に配列され、各列の光源は隣りの列の光源に対してオフセットを有して配置されていることを特徴とする請求項15ないし18のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項20】
照明パネルは直線状のエッジを有し、エッジに沿って配置されたであろう光源が当該エッジのわずかに内側にずらして配置されることを特徴とする請求項19に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項21】
システムが複数のプロセッサを含む場合に、プロセッサがネットワークにより互いに接続され、当該ネットワークは中央制御プロセッサに通信可能とされていることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項22】
前記ネットワークは階層的構造を有することを特徴とする請求項21に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項23】
前記ネットワークはリング構造を有することを特徴とする請求項21に記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項24】
帯状アセンブリは使用時に複数の照明アセンブリに関連づけられることを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項25】
照明アセンブリは使用時に複数の帯状アセンブリに関連づけられることを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載のモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項26】
中央コントローラと、複数のディスプレイモジュールとを備えるモジュール式ディスプレイシステムであって、各ディスプレイモジュールはディスプレイ領域とディスプレイを制御するプロセッサとを含み、各プロセッサは、前記中央コントローラと通信するネットワークにより結合されていることを特徴とするモジュール式ディスプレイシステム。
【請求項27】
図1、図2及び図4ないし図9を参照して明細書に実質的に説明されたモジュール式ディスプレイシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−517238(P2007−517238A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538964(P2006−538964)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004832
【国際公開番号】WO2005/050598
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(505166317)スマーツラブ リミティッド (3)
【Fターム(参考)】