説明

モジュール組付装置および組付方法

【課題】モジュール組立体の組付け時における車体側とモジュール側との配管や配線のコネクタ接続に好適なモジュール組付装置を提供する。
【解決手段】モジュール組立体M側の複数のコネクタの接続端4A、3A、3Bを保持する第1組付治具20と、第1組付治具20に保持された接続端4A、3A、3Bに対して接続される接続端4B、13A、13Bを保持する第2組付治具30と、第1組付治具20と第2組付治具30との相対位置を調整するロケート手段23、33と、第1、2組付治具20、30を相対的に接近させる締付け手段8と、第1、2組付治具20、30を配列する方向に軸心を配置した差込み穴53を備える仮止めブラケット51、および、第2組付治具30に配置され、仮止めブラケット51の差込み穴53と係合する差込みピン52で構成した仮止め手段50と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のラジエータを含むフロントエンドモジュール等のモジュール組立体を車体へ組付けるモジュール組付装置および組付方法に関し、特に、両者間の対向する配管や配線のコネクタの接続に好適なモジュール組付装置および組付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からラジエータを含むフロントエンドモジュール等のモジュール組立体を車体へ組付けるモジュール組付方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、ラジエータコアサポートを車両前方からサイドメンバに組み付ける際に、ラジエータ等の冷熱部品がラジエータコアロアに干渉することを防止するために、ラジエータコアサポートを車両前方からサイドメンバの前端縁部に組み付ける際に、ラジエータコアサポートに仮止めされた冷熱部品を所定の高さに仮保持し、ラジエータコアサポートを組付後に、前記仮保持を解除して冷熱部品を下方の所定位置までスライドさせるようにしている。
【0004】
特許文献2では、フロントエンドモジュールを車体前部に配設されたサイドメンバの前端部に取付けるフロントエンドモジュールの車両搭載構造において、前記フロントエンドモジュールの裏面側に、フロントエンドモジュールの荷重を支持しうる角形ロケートピンを設ける一方、前記サイドメンバの前端部にこの角形ロケートピンに係合する係合穴を形成し、前記角形ロケートピンを係合穴に挿入して係合することによって、前記フロントエンドモジュールをサイドメンバに取付け、フロントエンドモジュールの荷重を支持することができるようにしている。
【特許文献1】特開2004−291764公報
【特許文献2】特開2003−146244公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体側とモジュール側との配管や配線のコネクタの接続は、これらコネクタが集中的にレイアウトされていないこともあり、作業者による個別の接続作業が行われ、コネクタの位置によっては腰曲げ作業や頭上に腕を伸ばして行なう上方作業を伴うこともあり、特に配管コネクタの接続作業には大きい挿入力を必要とし、作業性が悪く多くの工数を必要としていた。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、モジュール組立体の車体への組付け時における車体側とモジュール側との配管や配線のコネクタ接続に好適なモジュール組付装置および組付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モジュール組立体に複数の配管および/または配線をコネクタを介して接続するモジュール組付装置であり、前記モジュール組立体に取付けられてモジュール組立体側の複数のコネクタの接続端を夫々保持する第1組付治具と、前記第1組付治具に保持された複数のコネクタの接続端に対して接続される接続端を夫々保持する第2組付治具と、前記モジュール組立体側の複数のコネクタの接続端とこの接続端に接続される接続端とを正対させるよう対向させた前記第1組付治具と第2組付治具との相対位置を調整するロケート手段と、前記ロケート手段による位置決め状態において第1、2組付治具を相対的に接近させる締付け手段と、前記第1組付治具への対面部材に固定され、第1、2組付治具を配列する方向に軸心を配置した差込み穴若しくは差込みピンを備える仮止めブラケットと、前記第2組付治具に配置され、前記仮止めブラケットの差込み穴若しくは差込みピンと係合する差込みピン若しくは差込み穴とで構成した仮止め手段と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明では、第1組付治具に保持された複数のコネクタの接続端に対して接続される接続端を夫々保持する第2組付治具を、第1、2組付治具を配列する方向に軸心を配置した差込み穴若しくは差込みピンを備える仮止めブラケットおよび前記第2組付治具に配置され、前記仮止めブラケットの差込み穴若しくは差込みピンと係合する差込みピン若しくは差込み穴を備える仮止め手段を介して第1組付治具への対面部材に固定するため、差込み穴に差込みピンを差込むのみで第2組付治具および第2組付治具に保持しているコネクタの接続端の位置が高精度に定まり、第1組付治具に保持したコネクタの接続端と無理なく円滑に嵌合させることができる。しかも、第2組付治具は第1組付治具への接近によるコネクタ同士の接続に応じて仮止め手段の差込み穴と差込みピンとの係合が解除されるため、コネクタ接続後にロケートピンや締付け手段により一体となった状態で第1、2組付治具を車両から抜出して離脱させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のモジュール組付装置および組付方法の一実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態のモジュール組付装置を適用する自動車のフロントエンドモジュールの概略斜視図、図2はフロントエンドモジュール側と車体側の配管コネクタを説明する斜視図、図3はラジエータ配管コネクタの構造を説明する分離状態の断面図、図4は空調用コンデンサおよびオイルクーラへの配管コネクタの分離状態の断面図である。図5は配管コネクタと組付装置における組付治具との装着状態を説明する概略斜視図、図6は図5の装着状態の詳細斜視図、図7は組付装置の車体側(後側)組付治具の構造を説明する斜視図、図8は組付装置の車体側組付治具の仮止め手段の斜視図、図9は仮止め手段の断面図、図10および図11はフロントエンドモジュールの組付工程を説明するレイアウト図である。また、図12および図13は配管コネクタの接続状態を説明する側面図、図14および図15は仮止め手段の作動を説明する断面図、図16は仮止め手段の改良例の断面図である。
【0010】
先ず、図1および図2に基づき、フロントエンドモジュールMおよびフロントエンドモジュールMが組付けられる車体構造について説明する。前記フロントエンドモジュールMは、前方(図中の矢印FR参照)側において、図示しないラジエータグリル・バンパ・ヘッドランプ等が取付けられる第1クロスメンバとして機能するラジコアサポートRCを備え、ラジコアサポートRCには、図示されていない空調装置のコンデンサ、パワーステアリング装置のオイルクーラが固定され、コンデンサの後方にはエンジン冷却水を冷却するラジエータRが固定されている。
【0011】
前記コンデンサおよびオイルクーラへの冷媒配管1Aおよびオイル配管2AはラジエータRの(右)側方から後方へ開口させたコネクタの(前方)接続端3A〜3Cを夫々備える。また、ラジエータRの右側タンクR1の上方には冷却水を導入するコネクタの(前方)接続端4Aが後方に開口させて配置され、左側タンクR2の下方にはラジエータを通過して冷却された冷却水を送り出すコネクタの(前方)接続端5Aが後方に開口させて配置されている。さらに、ラジエータR内部にはオイルクーラの放熱チューブが内蔵され、その給排用のコネクタの(前方)接続端6AがラジエータRの左側タンクR2から後方に開口させて配置されている。これらの配管コネクタの接続端の配置は車両形式やエンジンルーム内の機器レイアウトに応じて様々な位置に設定される。
【0012】
前記フロントエンドモジュールMに対向する車体構造は、車両の左右に前後方向に配置されてその前端がフロントエンドモジュールMの左右端に連結されるサイドメンバSMおよびフードリッジレインフォースFLと、左右サイドメンバSM間のエンジンルームに配置されたエンジンモジュールEとを備える。
【0013】
また、エンジンモジュールEからエンジン冷却水配管7の前端に配置された冷却水を送り出すコネクタの(後方)接続端4Bと、空調装置およびパワーステアリング装置に連なる冷媒配管1Bおよびオイル配管2Bの前記コンデンサおよびオイルクーラの(前方)接続端3A〜3Cに接続されるコネクタの(後方)接続端13A〜13Cとを前方へ夫々開口させて備える。また、図示しないが、ラジエータRの左側タンクR2から後方へ開口させて配置した冷却水の出口用のコネクタの(前方)接続端5、オイルクーラの給排用のコネクタの(前方)接続端6に接続される各コネクタの(後方)接続端がエンジンブロックEの左側に配置されている。
【0014】
前記した各配管コネクタの前方接続端4A、3A〜3Cと後方接続端4B、13A〜13Cとは、フロントエンドモジュールMの車体への組付作業の進行に応じて夫々対応する接続端同士が接続されて各配管システムを構成する。前記冷却水配管7のコネクタの前後接続端4A、4Bの詳細および空調装置の冷媒配管1A、1B、オイルクーラのオイル配管2A、2Bの各コネクタの前後接続端3A〜3C、13A〜13Cの詳細並びに各コネクタの前後接続端4A、4B、3A〜3C、13A〜13Cの前後組付治具20、30への係合状態について、図3および図4に基づき説明する。
【0015】
前記冷却水配管7のコネクタの前後接続端4A、4Bは、図3に示すように、ラジエータRの(右側)タンクR1に固定されたコネクタの(前方)接続端4Aと、冷却ホース7の前端に挿入固定されており、前端が(前方)接続端4Aに嵌合する(後方)接続端4Bとからなる。図3は前後接続端4A、4Bが分離された状態を示す(部分)断面図である。
【0016】
前記コネクタの(後方)接続端4Bは、(前方)接続端4Aの大径部17に嵌合する大径部10と、大径部10に対して段付11をもって小径となりラジエータホース7が嵌合される小径部12とから構成されている。前記小径部12の外周にはフランジ13が配置され、フランジ13と前記段付部11とで形成される環状溝に後側組付治具30の第1係合溝31を係合させることで後側組付治具30に保持される。(後方)接続端4Bの大径部10の先端近傍には、円周上の対向した位置に大径部10の内外周を貫通させて図示しない抜け止めリングに対する係合溝14を備え、内周には端部より前記係合溝14を含めて、拡径させた段付穴15に形成している。
【0017】
前記コネクタの(前方)接続端4Aは、ラジエータRへの取付け部分がフランジ16となった筒状部材に形成され、その外周が(後方)接続端4B内に挿入される大径部17と前側組付治具20の第1係合溝21に係合する小径部18とを備える。前記大径部17は、段付をもって小径となった先端近傍にはシールリング40を装着するためのリング溝を備え、ラジエータ側において先端より段付をもって拡径され、(後方)接続端4Bの係合溝14と共に抜け止めリングが挿入される環状溝19を備え、大径部のラジエータ側端部はストッパとして機能するフランジ17Aを備える。前側組付治具4Aは、大径部17のフランジ17AとラジエータRへの取付部分のフランジ16との間の小径部18に第1係合溝21を係合して、(前方)接続端4Aに保持され、(前方)接続端4Aと前側組付治具20との軸方向の相対的な動きを規制している。
【0018】
前記抜け止めリングは、前後の接続端4A、4Bが接続された後に、(後方)接続端4Bの係合溝14に嵌り込ませると、(前方)接続端4Aのリング溝19にも同時に係合して、前後接続端4A、4Bの抜け止めを行なう。なお、図示しないが、前側組付治具20に、抜け止めリングの連結部分を(前方)接続端4Aの下方に位置させて、抜け止めリングを開放状態で支持する一対の突起を設け、前後の接続端4A、4Bが接続された後に、前側組付治具20が上方に引抜かれた際に、抜け止めリングの連結部分が接続された接続端4A、4Bの下方に当接させ、更に前側組付治具20が上方に引抜かれることにより、抜け止めリングのリング端部を両突起との係合から離脱させて、(後方)接続端4Bの係合溝14に嵌り込ませて、(前方)接続端4Aのリング溝19にも係合させて、前後接続端4A、4Bの抜け止めを行なうようにしてもよい。
【0019】
前記空調装置の冷媒配管1A、1Bおよびオイルクーラのオイル配管2A、2Bの各コネクタの前後接続端3A〜3C、13A〜13Cは、図4に示すように、コンデンサおよびオイルクーラに接続された金属製の(前方)接続端3A〜3Cと、高圧ホース1B、2Bの前端に挿入固定され、前端が(前方)接続端3A〜3C内に挿入される(後方)接続端13A〜13Cとからなる。図4は前後接続端3A〜3C、13A〜13Cが分離された状態を示す断面図である。
【0020】
前記コネクタの(前方)接続端3A〜3Cは、(後方)接続端13A〜13Cの先端を受入れるよう金属製の配管1A、2Aの先端を所定長さに渡って内外径を拡径して形成され、その配管部分1A、2Aと拡径部分41との両外周に前側組付治具20の第2係合溝22を係合させることで前側組付治具20に保持される。前側組付治具20の第2係合溝22は、段付部分22Aを介して前記配管部分1A、2Aに係合する幅寸法の溝22Bと拡径部分41に係合する幅寸法の溝22Cとを板厚方向に連ねて備える。前側組付治具20は、係合溝22の前記段付部分22Aを前方接続端3A〜3Cの配管部分1A、2Aと拡径部分41との間に係合させることにより、(後方)接続端13A〜13Cとの接続時に(前方)接続端3A〜3Cを背面から支持する。
【0021】
前記コネクタの(後方)接続端13A〜13Cは、その外周が(前方)接続端3A〜3C内に挿入される挿入部42と、後側組付治具30の第2係合溝32に係合する保持部43と、高圧ホース1B、2Bに挿入されるホース連結部44とを備える。前記挿入部42は、前記(前方)接続端3A〜3Cの拡径部41に嵌り合う形状に形成され、外周に一対のシールリング45を装着するための一対のリング溝を備え、その後端部はストッパとして機能し且つコネクタ接続後の抜け止めとしても機能するフランジ46およびフランジ46外周から先端側にテーパ状に内径が小さくなるロックチューブ47を備える。
【0022】
ロックチューブ47と挿入部42との間は環状空間に形成されており、この環状空間には環状のロックリング48が挿入され、前後接続端3A〜3C、13A〜13Cが接続されることで、(前方)接続端3A〜3Cの先端がこの環状空間に挿入された際には、ロックリング48が(前方)接続端3A〜3Cの外周に係合し、ロックリング48の外周がロックチューブ47のテーパ状の内面に接触することで、(前方)接続端3A〜3Cの抜け止め、即ち、前後接続端3A〜3C、13A〜13Cの外れ止めがなされる。前記保持部43は、外周に環状に突出するフランジ49が形成され、前記後側組付治具30は、保持部43のフランジ49と前記フランジ46との間に第2係合溝32を係合させて、(後方)接続端13A〜13Cを保持する。この第2係合溝32は、前記フランジ46および48間に係合することにより、(後方)接続端13A〜13Cと後側組付治具30との軸方向の相対的な動きを規制している。
【0023】
図5および図6は、モジュール組付装置を構成する前記前側組付治具20および後側組付治具30の全体を示す斜視図であり、図5は周辺のフロントエンドモジュールMを含めて示し、図6は前後組付治具20、30および各コネクタを抜出して示している。図示例では、ラジエータRの右側タンクR1の冷却水導入用のコネクタの(前方)接続端4Aおよび右側タンクR1側方のコンデンサに連なるコネクタの(前方)接続端3A、3Bを保持する前方側モジュール組付治具20(以下では、前側組付治具と称する)と、エンジンEの右側方において冷却水の排出用のコネクタの(後方)接続端4B、空調装置に連なるコネクタの(後方)接続端13A、13Bを保持する後方側モジュール組付治具30(以下では、後側組付治具と称する)と、が図示されている。
【0024】
図5、6において、前側組付治具20は、冷却水の導入用のコネクタの(前方)接続端4Aに係合する下方が開いて幅が比較的大きい係合溝21(第1係合溝と称する)および空調装置の冷媒配管1Aの各コネクタの(前方)接続端3A、3Bに係合する下方が開いて幅が比較的小さい係合溝22(第2係合溝と称する)を備えた板状部材20Aにより構成されている。この板状部材20Aには、車両前方に突出してフロントエンドモジュールMの上部に接触して係合するブラケット20Bが設けられ、フロントエンドモジュールMへの装着時に板状部材20Aが下方へずれて移動するのを阻止するようにしている。
【0025】
前記板状部材20Aには、前記第2係合溝22に隣接した部位および第1係合溝21に隣接した部位に夫々位置させて後側(車体側)に突出させた複数のロケートピン23を備える。また、前側組付治具20には、ロケートピン23間に位置させて締付用工具、例えば、ボルト軸部を貫通させる締付穴24を備える。
【0026】
また、前記板状部材20Aには、支点ピン25Aにより板状部材に沿って揺動可能であり、上端が板状部材20Aから突出された操作端25Bとなり、下端25Cが夫々前記係合溝21、22の側方に位置する一対のアーム25が設けられている。一方のアーム25の下端25Cは前記第1係合溝21に対して第2係合溝22側の側方に位置し、他方のアーム25の下端25Cは前記第2係合溝22に対して第1係合溝21側の側方に位置している。そして、両アーム25の操作端25Bを互いに近づけるように揺動させると、夫々の下端25Cは第1係合溝21および第2係合溝22の領域に回動して、第1係合溝21および第2係合溝22に嵌合させた冷却水導入用コネクタの(前方)接続端4Aおよび冷媒配管1Aの各コネクタの(前方)接続端4A、3A、3Bを各係合溝内で移動しないように把持する係合位置となる。
【0027】
前記係合位置での把持を確実にするために、夫々のアーム25の下端25Cには、各(前方)接続端4A、3A、3Bの外形に沿う凹部25Dを設けている。各アーム25は、夫々のアーム25下端25Cが各係合溝21、22の領域に回動する係合位置へ付勢するバネ25Eが配置され、各係合溝21、22に各コネクタの(前方)接続端4A、13A、13Bを導入するよう板状部材20Aを下方へ押込む際や各コネクタの(前方)接続端4A、13A、13Bから板状部材20Aを上方へ引抜く際には、これらのバネ25Eに抗してアーム25を退避位置に回動させる。
【0028】
前記後側組付治具30は、図7にも示すように、冷却水のコネクタの(後方)接続端4Bに係合する下方が開いて幅が比較的大きい係合溝31(第1係合溝と称する)および空調装置の冷媒配管1Bの各コネクタの(後方)接続端13A、13Bに係合する下方が開いて幅が比較的小さい係合溝32(第2係合溝と称する)を備えた板状部材30Aにより構成されている。
【0029】
前記板状部材30Aには、前記第2係合溝32に隣接した部位および第1係合溝31に隣接した部位に夫々位置させてロケート穴33を備える。また、後側組付治具30には、ロケート穴33間に位置させて締付用工具、例えば、ボルト軸部がねじ込まれるねじ穴34とを備える。
【0030】
また、前記板状部材30Aには、支点ピン35Aにより板状部材30Aに沿って揺動可能であり、上端が板状部材30Aから突出された操作端35Bとなり、下端35Cが夫々前記係合溝31、32の側方に位置する一対のアーム35が設けられている。一方のアーム35の下端35Cは前記第1係合溝31に対して第2係合溝32側とは離れた側の側方に位置し、他方のアーム35の下端35Cは前記第2係合溝32に対して第1係合溝31側とは離れた側の側方に位置している。そして、両アーム35の操作端35Bを互いに離れるように揺動させると、夫々の下端35Cは第1係合溝31および第2係合溝32の領域に回動して、第1係合溝31および第2係合溝32に嵌合させた冷却水導入用コネクタの(後方)接続端4Bおよび冷媒配管1Bの各コネクタの(後方)接続端13A、13Bを各係合溝31、32内で移動しないように把持する係合位置となる。
【0031】
前記係合位置での把持を確実にするために、夫々のアーム35の下端35そには、各(後方)接続端4B、13A、13Bの外形に沿う凹部35Dを設けている。各アーム35は、夫々のアーム35下端35Cが各係合溝31、32の領域に回動する係合位置へ付勢するバネ35Eが配置され、各係合溝31、32に各コネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bを導入するよう板状部材30Aを下方へ押込む際や各コネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bから板状部材30Aを上方へ引抜く際には、これらのバネ35Eに抗してアーム35を退避位置に回動させる。
【0032】
この後側組付治具30は、エンジン本体E(若しくは、車体のサイドメンバ)に仮止め手段50を介して保持され、その状態において、第1係合溝31により冷却水のコネクタの(後方)接続端4Bを係合保持し、第2係合溝32内に空調装置の冷媒配管1Bの各コネクタの(後方)接続端13A、13Bを係合保持するよう構成している。また、後側組付治具30は、各コネクタの(後方)接続端13A、13Bへの係合状態から、上方へ引抜くことにより、エンジン本体Eへの仮止め状態から離脱され且つこれらのコネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bとの係合を離脱させて外すことができる。
【0033】
前記後側組付治具30の仮止め手段50は、図6および図8に示すように、エンジンユニットE(若しくは、車体のサイドメンバSM)に固定され、車両前方に向かって開口する複数の差込み穴53を備えた仮止めブラケット51と、後側組付治具30の背面(エンジンユニット側)から突出させて前記仮止めブラケット51の差込み穴53に嵌合する複数の差込みピン52と、で構成している。
【0034】
前記複数の差込ピン52は、図9に示すように、差込みピン52の円周上に等間隔に配置され、背面に配置したバネ54の付勢力により差込みピン52の外周面から突出する複数の係合片55と、差込みピン52の中心に軸方向にスライド可能に挿入され、各係合片55を突出状態に保持するスライダ56とを備える。前記複数の係合片55は、差込みピン52の半径方向に設けられた穴内に半径方向に移動可能に挿入され、先端の略半球形に形成した部分が差込みピン52の外周面から突出するよう構成されており、内周側の背面に着座するバネ54により突出付勢される。
【0035】
前記バネ54の内周側には、前記スライダ56に接触し、差込みピン52の外周側に押出されたロック位置と内周側に後退したアンロック位置との間でスライダ56により位置調整されるチェックボール57を備える。チェックボール57がロック位置に位置する場合には、係合片55は突出位置でロックされ、チェックボール57がアンロック位置に位置する場合には、係合片55は背面のバネ54に抗して突出位置から差込みピン52の内周側に押し込めることができる。
【0036】
前記スライダ56は、差込みピン52の軸方向に設けた中空穴内をスライド可能に配置され、中空穴の穴底側(車両後方側)において中空穴の内面に摺動可能な大径部56Aと、大径部56Aより車両前方に位置して中空穴の内面に対して所定の環状隙間を備えるようにした小径部56Bと、大径部56Aと小径部56Bとを接続するテーパ部56Cとを備える。
【0037】
前記小径部56Bは差込みピン52が固定される後側組付治具30の板状部材30Aに設けた貫通穴内に摺動可能に貫通し、その前端は板状部材30Aの表面より突出されている。中空穴の穴底と前記スライダ56の大径部56Aの端部との間にはバネ58が挿入され、バネ58によりスライダ56が車両前方に付勢され、前記チェックボール57は大径部56Aに対面してロック位置に移動されると共に、小径部56Bの前端を板状部材30Aの表面から突出させた状態に保持するようにしている。また、スライダ56が小径部56Bの前端から前記バネ58に抗して矢印の方向に押込まれると、前記チェックボール57はスライダ56の小径部56Bに対面してアンロック位置に移動される。
【0038】
前記仮止めブラケット51の差込み穴53は、図9に示すように、差込みピン52を収容するよう構成され、差込みピン52から突出される各係合片55を収容するための環状溝53Aを備えている。従って、差込みピン52の各係合片55をスライダ56を押込むことにより一時的に係合片55を内周側に後退可能な状態とすることにより、差込みピン52を差込み穴53に挿入したり、差込み穴53から差込みピン52を抜出すことができる。また、差込み穴53に差込みピン52を挿入した状態でスライダ56の押込みを解除すると、スライダ56はその大径部56Aをチェックボール57に対面させてチェックボール57をロック位置に位置させ、係合片55を突出させた状態とし、差込穴53から差込みピン52の抜き差しを阻止する状態とする。なお、この仮止め手段50における差込みピン52内のスライダ56を付勢しているバネ58のバネ定数や係合片55を半径方向外側へ付勢しているバネ54のバネ常数を変化させることにより、係合片55の半径方向外側への張出し力、即ち、保持力を調整することができる。
【0039】
以上の構成のモジュール組付装置は、例えば、図10に示す組付工程において、下記に説明するように使用される。図10は車両組立ラインにおけるフロントエンドモジュールMの組付工程を説明するレイアウト図であり、図中の中央に左から右側へ組立すべき車両が流れる組立メインライン60が構成されている。
【0040】
そして、図中の左上流側にエンジンのサブ組立ライン61が構成され、生産されたエンジンアセンブリEが組立メインライン60に搬送され、車両に組付けられる(60A)。即ち、前記エンジンEのサブ組立ライン61において、組付装置の一方である後側組付治具30には、夫々アーム35の操作端35Bの退避位置への操作とともに、冷却水の配管7が組付けられた時点で配管コネクタの(後方)接続端4Bが第1係合溝31に係合させてセットされ、空調装置の冷媒配管1Bが組付けられた時点で配管コネクタの(後方)接続端13A、13Bが第2係合溝32に係合させてセットされ、アーム35の操作端35Bを係合位置へ復帰させて夫々接続端4B、13A、13Bを係合保持させる(61A)。エンジンユニットEに仮止め手段50の仮止めブラケット51が取付けられた時点では、後側組付治具30の差込みピン52を仮止めブラケット51の差込み穴53に挿入して後側組付治具30が各配管コネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bを係合保持した状態で正規位置にセットされる(61B)。
【0041】
前記仮止め手段50における差込み穴53への差込みピン52の挿入時においては、図14に示すように、スライダ56の小径部56Bの突出した端部を押込むことで、小径部56Bにチェックボール57を対面させてアンロック状態として係合片55が内周側にバネ54に抗して後退可能な状態として、差込みピン52を差込み穴53に挿入される。係合片55は差込み穴53により内周側に押込まれ、環状溝53Aに係合片55が達すると、係合片55がバネ54により突出されて環状溝53Aに係合する。この時の差込み力はチェックボール57がアンロック位置にあるために、係合片55を押出すバネ54の付勢力が低められており、比較的少ない力で差込むことができる。
【0042】
この状態からスライダ56の押込みを解除すると、図15に示すように、スライダ56がバネ58により元の位置に復帰し(小径部56Bの端部は再び突出した状態に復帰)、その大径部56Aをチェックボール57に対面させてチェックボール57はロック位置に固定される。チェックボール57のロック位置への移動により大きくされたバネ力により係合片55は突出位置に保持され、環状溝53Aとの係合力を高められる。後側組付治具30に車両の前後方向の作用力、例えば、配管コネクタの接続時における(車両前後方向の)反力が作用しても、仮止め手段50が外れるようなことが防止される。
【0043】
また、図中の左下流側にフロントエンドモジュールMのサブ組立ライン62が構成され、生産されたフロントエンドモジュールMが組立メインライン60に搬送され、車両に組付けられる(60C)。フロントエンドモジュールMのサブ組立ライン62においては、組立完成したフロントエンドモジュールMに対して組立治具の他方である前側組付治具20のブラケット20Bを上面に係合させてセットされる。そして、夫々のアーム25の操作端25Bが退避位置に操作され、第1係合溝21に冷却配管コネクタの(前方)接続端4Aが係合され、第2係合溝22に冷媒配管コネクタの(前方)接続端3A、3Bが夫々係合され、再び、アーム25の操作端25Bが操作されて係合位置に復帰させて夫々接続端4A、3A、3Bを係合保持させる(62A)。
【0044】
なお、前記仮止め手段50の仮止めブラケット51が車体のサイドメンバ等に固定される場合には、図11に示すように、後側組付治具30は各配管コネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bを第1、2係合溝31、32に係合保持した状態で、エンジンユニットEに仮セットされ(61C)、エンジンアセンブリEが車両に搭載された段階後に、車両に仮止めブラケット51が固定され、固定された仮止めブラケット51に対して差込み穴53に差込みピン52を挿入して、各配管コネクタの(後方)接続端4B、13A、13Bを係合保持した後側組付治具30が正規位置にセットされる(60B)。
【0045】
そして、車両組立ライン60上で前側組付治具20と後側組付治具30とが、図5および図6に示すように車両の前後方向において対面される。その後、後述するように、両組付治具20、30が互いに接近(モジュールMと車体も接近)されて車体側の(後方)接続端4B、13A、13BとモジュールM側の(前方)接続端4A、3A、3Bとが接続される。接続後には、前後組付治具20,30の夫々アーム25、35の操作端25B、35Bを退避位置に回動させて第1係合溝21、31および第2係合溝22、32を開放させ、前後組付治具20、30が車両上方に抜出される(60D)。
【0046】
抜出した前側組付治具20は矢印で示すようにフロントエンドモジュールMのサブ組立ライン62に搬送され、後側組付治具30は矢印で示すようにエンジンサブ組立ライン61に搬送され、夫々配管コネクタの接続端を係合させて繰返し使用される。
【0047】
次に、図12および図13により、上記構成のモジュール組付装置によるコネクタの前後接続端の組付方法について、以下に説明する。図12〜図13では、前側組付治具20および後側組付治具30の構成を簡略化して示しており、エンジンユニットEおよびフロントエンドモジュールMもその図示を省略している。
【0048】
図5、6に示す状態では、後側組付治具30の第1、2係合溝31、32に係合保持している冷却水配管7の(後方)接続端4Bおよび空調装置の冷媒配管1Bの各コネクタの(後方)接続端13A、13Bは、前側組付治具20のラジエータRの右タンクR1から突出している(前方)接続端4Aおよび空調装置の冷媒配管1Aの各(前方)接続端3A、3Bと概ね正面から向き合っている。
【0049】
そして、フロントエンドモジュールMの車体Bに対して接近させると、前側組付治具20のロケートピン23と後側組付治具30のロケート穴33との係合が開始され、前側組付治具20のロケートピン23が後側組付治具30のロケート穴33とを互いに係合させ、前後組付治具20、30の相対位置関係を決定して位置決めする。
【0050】
この段階で、図12に示すように、前側組付治具20の締付穴24に貫通させて締付工具であるボルト8の軸部を通し、ボルト8のねじ部を後側組付治具30のねじ穴34にねじ込み、後側組付治具30を前側組付治具20に対して前後方向にボルト8により接近させる。
【0051】
次に、前記締付工具であるボルト8の頭部をレンチ等により回転させると、後側組付治具30が各(後方)接続端4B、13A、13Bを保持した状態で前側組付治具20に接近され、各(後方)接続端4B、13A、13Bと各(前方)接続端4A、3A、3Bとの嵌合が開始される。
【0052】
この前側組付治具20と後側組付治具30との接近により、仮止め手段50の差込みピン52の背面の後側組付治具30から突出しているスライダ56の小径部56Bの端部が前側組付治具20により押込まれ、スライダ56が差込みピン52の中空穴の穴底側へバネ58に抗して移動され、チェックボール57に対して小径部56Bを対面させて、チェックボール57はアンロック位置に移動される。従って、差込みピン52から突出している係合片55の半径方向外方へのバネ54による付勢力が低減される。
【0053】
従って、引続き、締付け工具8による締付けを継続すると、仮止めブラケット51の差込み穴53から差込みピン52が抜け出し、さらに締付け工具8による締付けを継続すると後側組付治具30が前側組付治具20へ接近され且つ差込みピン52が差込み穴53から完全に離脱してエンジンユニットE(若しくは車体)の仮止めブラケット51からの拘束が解除される。後側組付治具30は、ロケートピン23および締付け工具8により前側組付治具20と一体化されてゆき、全ての前後接続端4A、4B、3A、3B、13A、13Bの嵌合が完了する。
【0054】
この場合、コネクタの嵌合完了を確実にするために、前後組付治具20、30間にいずれ側の組付治具に固定して両組付治具20、30の接近し過ぎを防止するストッパを設けることが望ましく、ボルト8による締付抵抗がストッパの接触により急激に上昇することから嵌合完了が明確になると共に締付け過ぎを防止して、コネクタは過剰に挿入されることがなく、コネクタの破損も防ぐことができる。
【0055】
全ての前後接続端4A、4B、3A、3B、13A、13Bの嵌合が完了した後は、締付け工具8による締付け状態を若干緩めて前後組付治具20、30の間隔をあけて、前後組付治具20、30の各係合溝21、31、22、32と各コネクタとの間に軸方向の隙間をあけ、前後組付治具20、30の各アーム25、35を退避位置に操作して第1係合溝21、31および第2係合溝22、32を開放して、連結された前後接続端4A、4B、3A、3B、13A、13Bの下方への離脱を許容させる。
【0056】
次いで、図13に示すように、締付け工具8およびロケートピン23により一体となっている前後組付治具20、30をラジエータRの上方に引抜くことにより、前後組付治具20、30の各係合溝21、31、22、32から各コネクタを解放してコネクタの組付作業を完了させる。その後に、フロントエンドモジュールMの車体Bへの組付作業が開始される。
【0057】
図16は、仮止め手段50の改良例を示すものであり、差込みピン52に一体となるストッパフランジ59を配置したものである。このストッパフランジ59は、仮止めブラケット51の差込み穴53の縁に当接させることで、仮止めブラケット51に対してストッパフランジ59による広い面積で差込みピン52および後側組付治具30を支持することができる。このようにすると、後側組付治具30の車両の左右方向Y軸回りおよび上下方向Z軸回りの傾きや倒れを抑制することができ、保持する各後方接続端4B、13A、13Bの位置精度を向上でき、また、コネクタ同士の嵌合時の反力によって生じる後側組付治具30の傾きや倒れも抑制できて、円滑な嵌合動作を行なわせることができる。
【0058】
なお、上記実施形態において、ロケートピン23の設置位置として、前側組付治具20に設置したものについて説明したが、図示しないが、例えば、後側組付治具30に設置してもよく、また、両組付治具に夫々設けるようにしてもよい。いずれにしても、対応するロケート穴は対向する組付治具に設置する。
【0059】
また、上記実施形態において、仮止め手段50として、仮止めブラケット51の差込み穴53と後側組付治具30の差込みピン52とを係合させるものについて説明したが、図示しないが、差込み穴と差込みピンの断面形状は、円筒形であっても、四角柱等の多角形柱の形状であってもよい。更に、仮止めブラケット51に差込み穴53を設け且つ後側組付治具30に差込みピン52を設けたものについて説明したが、仮止めブラケット51に差込みピン52を設け且つ後側組付治具30に差込み穴53を設けたものであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、コネクタ接続対象として、フロントエンドモジュールMと車体側との間に配置した各コネクタを対象としたものについて説明したが、図示しないが、モジュールとして、例えば、計器盤やインストルメントボックス等を一体化させたコックピットモジュールと車体との間に配置したコネクタの接続を対象とするものであってもよい。
【0061】
更に、上記実施形態において、接続対象として、配管コネクタを対象としたものについて説明したが、図示しないが、例えば、配線コネクタを接続するものであってもよく、また、配線コネクタと配管コネクタとの両者が混在するものであってもよい。
【0062】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0063】
(ア)モジュール組立体Mに複数の配管および/または配線をコネクタを介して接続するモジュール組付装置であり、前記モジュール組立体Mに取付けられてモジュール組立体M側の複数のコネクタの接続端4A、3A、3Bを夫々保持する第1組付治具20と、前記第1組付治具20に保持された複数のコネクタの接続端4A、3A、3Bに対して接続される接続端4B、13A、13Bを夫々保持する第2組付治具30と、前記モジュール組立体M側の複数のコネクタの接続端4A、3A、3Bとこの接続端に接続される接続端4B、13A、13Bとを正対させるよう対向させた前記第1組付治具20と第2組付治具30との相対位置を調整するロケート手段23、33と、前記ロケート手段による位置決め状態において第1、2組付治具20、30を相対的に接近させる締付け手段8と、前記第1組付治具20への対面部材に固定され、第1、2組付治具20、30を配列する方向に軸心を配置した差込み穴53若しくは差込みピン52を備える仮止めブラケット51と、前記第2組付治具30に配置され、前記仮止めブラケット51の差込み穴53若しくは差込みピン52と係合する差込みピン52若しくは差込み穴53とで構成した仮止め手段50と、を備えるようにした。
【0064】
このため、差込み穴53に差込みピン52を差込むのみで第2組付治具30および第2組付治具30に保持しているコネクタの接続端4B、13A、13Bの位置が高精度に定まり、第1組付治具20に保持したコネクタの接続端4A、3A、3Bと無理なく円滑に嵌合させることができる。しかも、第2組付治具30は第1組付治具20への接近によるコネクタ同士の接続に応じて仮止め手段50の差込み穴53と差込みピン52との係合が解除されるため、コネクタ接続後にロケート手段23、33や締付け手段8により一体となった状態で第1、2組付治具20、30を車両から抜出して離脱させることができる。
【0065】
(イ)仮止め手段50の第2組付治具30に配置する差込みピン52若しくは差込み穴53は、第2組付治具30に保持する複数の接続端4B、13A、13Bの間に位置させて配置しているため、コネクタ同士の接続時に生ずる反力による第2組付治具30の傾きを抑制することができる。
【0066】
(ウ)仮止め手段50の差込み穴53若しくは差込みピン52は、複数組を配列することにより、差込み穴53同士で形成する保持線若しくは保持面で第2組付治具30を保持してコネクタ同士の接続反力を受けることができ、第2組付治具30のコネクタ接続時の傾きを更に低減できる。
【0067】
(エ)仮止め手段50の差込み穴53とそれに係合する差込みピン52とは、差込み穴53の周縁を差込みピン52が固定されている部材30の面若しくは差込みピン52外周に固定して配置したフランジ59面に当接させて係合させると、当接面によっても第2組付治具30を保持してコネクタ同士の接続反力を受けることができ、第2組付治具30のコネクタ接続時の傾きをより一層低減できる。
【0068】
(オ)仮止め手段50の差込みピン52とそれに係合する差込み穴53とは、その係合部分のいずれか一方から他方へ半径方向に突出して両者の抜き差しを阻止する係合手段55と、前記第2組付治具30より前記第1組付治具20側に向けて突出された先端部が押込まれる場合には前記係合手段55の作動を解除する解除手段56とを備えることにより、手動で解除手段56を押込むことで係合手段55を解除することで第2組付治具30を仮止め手段50に差込み穴53と差込みピン52とを嵌合させて保持させることができ、第1、2組付治具20、30の接近によるコネクタ同士の接続までは第2組付治具30の仮保持状態が確実に維持され、しかも、第1、2組付治具20、30の接近によるコネクタ同士の接続に応じて第2組付治具30が仮保持状態から自動的に離脱させることができる。
【0069】
(カ)モジュール組立体としてラジエータRを含む車両の前端に装備されるフロントエンドモジュールとすると、前記第2組付治具30は、エンジンモジュールEのサブ組立工程61においてエンジンモジュールE側の複数のコネクタの接続端4B、13A、13Bを夫々保持させ、エンジンモジュールEのサブ組立工程61若しくはエンジンモジュールEの車両への搭載工程60Aにおいて仮止め手段50を介してエンジンモジュールE若しくは車両に配置され、前記第1組付治具20は、フロントエンドモジュールMのサブ組立工程62においてモジュール組立体M側の複数のコネクタの接続端4A、3A、3Bを夫々保持させてフロントエンドモジュールMに配置され、フロントエンドモジュールMの車両への搭載工程60Cにおいて、前記第2組付治具30と対面されることとなり、各サブ組立工程61、62で第1、2組付治具20、30を各モジュールE、Mにセットでき、車両組立メインライン60での作業がコネクタ同士の接続作業のみとでき、接続作業に必要な車両組立メインライン60のスペースを少なくできる。また、コネクタ接続作業後に各組付治具20、30はサブ組立工程61、62に搬送して繰返し使用することができ、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態のモジュール組付装置を適用する自動車のフロントエンドモジュールの概略斜視図。
【図2】同じくフロントエンドモジュール側と車体側の配管コネクタを説明する斜視図。
【図3】ラジエータ配管コネクタの構造を説明する分離状態の断面図。
【図4】空調用コンデンサおよびオイルクーラへの配管コネクタの分離状態の断面図。
【図5】配管コネクタと組付装置の組付治具との装着状態を説明する概略斜視図。
【図6】図5の装着状態の詳細斜視図。
【図7】車体側(後側)組付治具の構造を説明する斜視図。
【図8】車体側組付治具の仮止め手段の斜視図。
【図9】仮止め手段の断面図。
【図10】フロントエンドモジュールの組付工程を説明するレイアウト図。
【図11】フロントエンドモジュールの組付工程を説明する別のレイアウト図。
【図12】配管コネクタの接続状態を説明する側面図。
【図13】図12に続く配管コネクタの接続状態を説明する側面図。
【図14】仮止め手段の作動を説明する断面図。
【図15】図14に続く仮止め手段の作動を説明する断面図。
【図16】仮止め手段の改良例の断面図。
【符号の説明】
【0071】
E エンジンモジュール、エンジン本体、エンジン
M モジュール組立体としてのフロントエンドモジュール
R ラジエータ
3A〜3C、4A、4B、5A、6A、13A〜13C コネクタの接続端
7 冷却水ホース
20、30 組付治具
21、31 第1係合溝
22、32 第2係合溝
23 ロケートピン
24 締付け穴
25、35 アーム
33 ロケート穴
34 ねじ穴
35 仮止め手段
50 仮止め手段
51 仮止めブラケット
52 差込みピン
53 差込み穴
54、58 バネ
55 係合片
56 スライダ
57 チェックボール
59 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール組立体に複数の配管および/または配線をコネクタを介して接続するモジュール組付装置であり、
前記モジュール組立体に取付けられてモジュール組立体側の複数のコネクタの接続端を夫々保持する第1組付治具と、
前記第1組付治具に保持された複数のコネクタの接続端に対して接続される接続端を夫々保持する第2組付治具と、
前記モジュール組立体側の複数のコネクタの接続端とこの接続端に接続される接続端とを正対させるよう対向させた前記第1組付治具と第2組付治具との相対位置を調整するロケート手段と、
前記ロケート手段による位置決め状態において第1、2組付治具を相対的に接近させる締付け手段と、
前記第1組付治具への対面部材に固定され、第1、2組付治具を配列する方向に軸心を配置した差込み穴若しくは差込みピンを備える仮止めブラケットと、前記第2組付治具に配置され、前記仮止めブラケットの差込み穴若しくは差込みピンと係合する差込みピン若しくは差込み穴とで構成した仮止め手段と、を備えることを特徴とするモジュール組付装置。
【請求項2】
前記仮止め手段の第2組付治具に配置する差込みピン若しくは差込み穴は、第2組付治具に保持する複数の接続端の間に位置させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール組付装置。
【請求項3】
前記仮止め手段の差込み穴若しくは差込みピンは、複数組が配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモジュール組付装置。
【請求項4】
前記仮止め手段の差込み穴とそれに係合する差込みピンとは、差込み穴の周縁を差込みピンが固定されている部材の面若しくは差込みピン外周に固定して配置したフランジ面に当接させて係合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のモジュール組付装置。
【請求項5】
前記仮止め手段の差込みピンとそれに係合する差込み穴とは、その係合部分のいずれか一方から他方へ半径方向に突出して両者の抜き差しを阻止する係合手段と、前記第2組付治具より前記第1組付治具側に向けて突出された先端部が押込まれる場合には前記係合手段の作動を解除する解除手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のモジュール組付装置。
【請求項6】
モジュール組立体に複数の配管および/または配線をコネクタを介して接続するモジュール組付方法であり、
前記モジュール組立体に取付けられてモジュール組立体側の複数のコネクタの接続端を夫々保持する第1組付治具と、前記第1組付治具への対面部材に配置された仮止めブラケットに対して差込み穴と差込みピンとの係合による仮止め手段により仮止めされて前記第1組付治具に保持された複数のコネクタの接続端に対して接続される接続端を夫々保持する第2組付治具とを対向させ、
前記対向させた第1組付治具と第2組付治具との相対位置をロケート手段により位置決めし、
前記位置決め状態において締付け手段により第1組付治具と第2組付治具とを互いに接近させ、
前記締付け手段による第1、2組付治具の相対的な接近に応じて、前記仮止め手段による第2組付治具の対面部材に対する仮止めを解除するとともに夫々保持している複数のコネクタの接続端同士を接続することを特徴とするモジュール組付方法。
【請求項7】
前記仮止め手段は、差込みピンとそれに係合する差込み穴との係合部分のいずれか一方から他方へ半径方向に突出して両者の抜き差しを阻止する係合手段と、前記第2組付治具より前記第1組付治具側に向けて突出された先端部が押込まれる場合には前記係合手段の作動を解除する解除手段とを備え、
前記第1、2組付治具の所定以上の接近により第1組付治具若しくは第1組付治具に設けられた部材が前記解除手段の先端を第2組付手段に向かって押込むことにより、解除手段が作動して前記係合手段を解除するものであることを特徴とする請求項6に記載のモジュール組付方法。
【請求項8】
前記モジュール組立体はラジエータを含む車両の前端に装備されるフロントエンドモジュールであり、
前記第2組付治具は、エンジンモジュールのサブ組立工程においてエンジンモジュール側の複数のコネクタの接続端を夫々保持させ、エンジンモジュールのサブ組立工程若しくはエンジンモジュールの車両への搭載工程において仮止め手段を介してエンジンモジュール若しくは車両に配置され、
前記第1組付治具は、フロントエンドモジュールのサブ組立工程においてモジュール組立体側の複数のコネクタの接続端を夫々保持させてフロントエンドモジュールに配置され、フロントエンドモジュールの車両への搭載工程において、前記第2組付治具と対面されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のモジュール組付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−99069(P2007−99069A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291089(P2005−291089)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】