説明

モニタ装置、モニタ装置を搭載した機械、及びモニタ装置のためのデータ保存方法

【課題】 建設機械のモニタ装置の交換時、交換前のモニタ装置が保持していた設定や履歴のデータを交換後のモニタ装置に引き継ぐ。
【解決手段】建設機械1が備える各種のコントローラ(20、30、40)の中のいずれか1つ又は複数、例えば、外部通信コントローラ(20)が、モニタ装置(10)のためのデータバックアップ装置として流用される。モニタ装置(10)内の記憶装置(16)に格納された設定や履歴のデータが、外部通信コントローラ(20)内の記憶装置(23)にバックアップされる。モニタ装置(10)が交換されると、外部通信コントローラ(20)内のバックアップデータが、交換後のモニタ装置(10)にリストアされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械や車両などの機械に搭載されるモニタ装置に関し、特にそのモニタ装置に格納されたデータの保存及び更新あるいは復元の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械には、例えば特許文献1に記載のように、その建設機械の各種設定データや稼働履歴データを表示及び格納するためのモニタ装置が設置されている。この種のモニタ装置は、表示装置(例えば、LCDパネル)を備え、その表示装置を通じて設定されたり表示されたりする各種の設定や履歴を格納した不揮発性書換可能記憶装置(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory))を備えている。以下、このような記憶装置を「モニタ装置内記憶装置」と称する。
【0003】
建設機械に搭載されるモニタ装置(以下、「モニタ装置」)は、モニタ装置が強い振動に耐えられるよう、モニタ装置は高い剛性を有する必要がある。そのような目的から、モニタ装置は表示装置(例えば、LCDパネルといった液晶モニタ等)とモニタ装置内記憶装置が一つの筐体に収められて一体的に組み合わされている方が剛性が高い。そのため、仮に表示装置が破損や故障した場合、表示装置だけを交換することは難しく、モニタ装置の全体を交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−213198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モニタ装置の全体を交換すると、モニタ装置内記憶装置も一緒に交換されてしまうため、交換前のモニタ装置に記憶されていた設定値及び各種データ等が全て失われてしまうという問題がある。
【0006】
そのため、サービスマンは、モニタ装置を交換後、手動で交換前の各種設定を交換後のモニタ装置に対して行わなければならない。建設機械の場合、多くの設定項目があり、モニタ装置交換後の設定作業は非常に煩雑で時間がかかる。
【0007】
また、モニタ装置の交換の理由が、表示装置が作動しない、あるいは、モニタ装置そのものが起動しないといったものである場合、モニタ装置内記憶装置に記憶されている設定データなどを表示装置に表示できないことになり、もはやモニタ装置の故障前の各種の設定データを確認することができない。したがって、故障前の設定データなどを書類に書きとめておくなどの行為を行わない限り、故障前と同じ設定を復元することができない。
【0008】
また、建設機械の総稼働時間又はメンテナンス履歴や故障履歴等のようなデータを、交換後のモニタ装置に手動で復元する引き継ぐことは、データ量が膨大であったりすることから困難である。このことによって、中古建設機械市場での建設機械の査定額の算定が困難となる。
【0009】
上記の問題は、建設機械のモニタ装置だけに限らず、他の用途のモニタ装置に関しても、その構造が、表示装置と各種の設定データまたは履歴データを格納したモニタ装置内記憶装置とが一体に組み合わされたものであれば、同様に存在するであろう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、モニタ装置の交換時、交換前のモニタ装置が保持していた総稼働時間のデータ、設定データ、メンテナンス履歴データあるいは故障履歴データといった各種データを交換後のモニタ装置に更新あるいは復元できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に従えば、機械に搭載されるモニタ装置であって、機械は、機械を動作させるための設定データ及び/又は機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置を有し、第1の記憶装置とモニタ装置とが相互通信可能であるモニタ装置において、設定データ及び/又は履歴データを保存するための第2の記憶装置と、第2の記憶装置に保存された設定データ及び/又は前記履歴データを表示するための表示装置と、機械に搭載されるモニタ装置が交換されたか否かを判定する判定部と、判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、第1の記憶装置に保存されている設定データ及び/又は履歴データを、第2の記憶装置に更新あるいは復元するリストア制御部とを備えるモニタ装置が提供される。
【0012】
このモニタ装置によれば、機械がモニタ装置のデータバックアップとは違う目的で備えているコントローラが、モニタ装置内の設定/履歴データのバックアップ装置として流用される。そのために、格別のハードウェアを増やすことなしに、モニタ装置のデータバックアップができる。モニタ装置が交換された場合、交換後のモニタ装置に、そのバックアップデータがリストアされる。
【0013】
一実施形態によれば、判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された後、所定時間内に更新あるいは復元の指示を受けたならば、設定データ及び/又は履歴データを第2の記憶装置に更新あるいは復元する。
【0014】
すなわち、モニタ交換が行われた後にサービスマン又はユーザなどからリストアの指示が入力されることで、バックアップデータのリストアが実行される。リストアすべきでない何らかの理由からリストア指示が入力されないという場合には、リストアは実行されない。
【0015】
一実施形態によれば、第2の記憶装置には、モニタ装置を識別するための、モニタIDが保存されており、判定部は、第2の記憶装置に保存されているモニタIDと第1の記憶装置に保存されているモニタIDとに基づいて、モニタ装置が交換されたか否かを判定する。
【0016】
これにより、モニタ交換が行われれば、交換後のモニタ装置は自動的に、モニタ交換が行われたことを認識する。
【0017】
一実施形態によれば、判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された後、所定時間を過ぎても更新あるいは復元の指示を受けないか、または、第1の記憶装置の設定データあるいは履歴データの更新あるいは復元が第2の記憶装置に行われた後である場合に、交換されたモニタ装置のモニタIDの複製を第1の記憶装置に保存する。
【0018】
これにより、モニタ交換後に所定時間が過ぎてもリストア指示が入力されない場合、リストアは実行されないが、最早判定部によってモニタ交換が行われたと判定されないようになるので、以後、交換後のモニタ装置内のデータがコントローラにバックアップされるようになる。リストが行われた場合も同様である。
【0019】
一実施形態によれば、第2の記憶装置には、モニタ装置や機械の動作に関わるプログラムあるいは設定データあるいは履歴データの第2記憶装置への格納位置の形態を示す改訂番号が保存されており、リストア制御部は、第2の記憶装置に保存されている改訂番号と第1の記憶装置に保存されている改訂番号とに基づいて、設定データ及び/又は履歴データを第2の記憶装置に更新あるいは復元することを許可する判断を行う。
【0020】
これにより、交換後のモニタ装置が採用するデータ構造と、リストア対象のバックアップデータのデータ構造との間の互換性がない限り、バクアップデータのリストアは行われない。したがって、リストアによって交換後のモニタ装置内のデータが意味のないものに破壊されてしまう恐れがない。その結果、データ構造を解析することなしに、単純にデータのバックアップやリストアを行なうことが可能になる。
【0021】
本発明の一実施形態よれば、さらに、モニタ装置を搭載した機械であって、機械は、機械を動作させるための設定データ及び/又は機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置を有し、第1の記憶装置とモニタ装置とが相互通信可能であり、モニタ装置は、設定データ及び/又は履歴データを保存するための第2の記憶装置(16)と、第2の記憶装置に保存された設定データ及び/又は履歴データを表示するための表示装置(11)と、機械(1)に搭載されるモニタ装置が交換されたか否かを判定する判定部(204)と、判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定されない場合、第2の記憶装置に格納された設定データ及び/又は履歴データのコピーを、第1の記憶装置にバックアップデータとして保存するバックアップ制御部(205)と、判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、第1の記憶装置に保存されたバックアップデータを、第2の記憶装置に更新あるいは復元するリストア制御部(206)とを有する、モニタ装置を搭載した機械が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、モニタ装置の交換時、交換前のモニタ装置が保持していた総稼働時間のデータ、設定データ、メンテナンス履歴データあるいは故障履歴データといった各種データを交換後のモニタ装置に更新あるいは復元できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るモニタ装置を備えた建設機械の要部の構成図の一例である。
【図2】モニタ装置10の処理装置14の機能ブロック図の一例である。
【図3】保存されるデータ項目の一例である。
【図4】モニタ装置10の交換後、保存データを更新あるいは復元するときの画面表示例である。
【図5】モニタ装置10に格納されたデータの保存処理及び更新あるいは復元処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るモニタ装置について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態はいずれも、建設機械での適用例であるが、それらは説明のための例示にすぎない。本発明が建設機械以外の車両などのモニタ装置にも適用できることは、以下の説明から容易に理解されるはずである。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るモニタ装置を備えた建設機械の要部の構成図の一例である。
【0026】
建設機械1は、モニタ装置10、外部通信コントローラ20、ポンプコントローラ30及びエンジンコントローラ40を備え、これらは車両ネットワーク2(例えば、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク))を介して相互通信可能に接続されている。外部通信コントローラ20は、遠隔の管理サーバ(図示せず)と例えば衛星通信網などを利用して通信可能であって、建設機械1の各種の稼働履歴や稼動状態(現在位置、故障やエラー発生状況、エンジンの回転速度、エンジンの冷却水温度、作業機の油圧値など)を示すデータを管理サーバに送信するための装置である。外部通信コントローラ20は、外部の管理サーバと通信する通信装置21と、管理サーバとの通信に関わる動作を制御するための所定の制御処理を行う処理装置22と、処理装置22が前記制御処理を行うために使用する所定のデータを記憶する外部通信コントローラ内記憶装置23を有する。通信装置21は、GPS(グローバルポジショニングシステム)センサや送受信機、アンテナなどで構成される。また、処理装置31は、CPUなどの演算装置やメモリなどの記憶装置で構成される。外部通信コントローラ内記憶装置23は、例えばEEPROMなどの不揮発性書換可能なメモリで構成される。
【0027】
ポンプコントローラ30は、建設機械1が油圧ショベルの場合、建設機械1の上部旋回体や作業機(バケット、ブーム、アーム)あるいは下部走行体を油圧駆動させるための油圧装置(油圧ポンプや油圧モータなど)を制御するための制御装置である。ポンプコントローラ30は、作業機などを制御するための所定の制御処理を行う処理装置31と、処理装置31が制御処理を行うために使用する所定のデータやプログラムを記憶するポンプコントローラ内記憶装置32を有する。処理装置31は、CPUなどの演算装置やメモリなどの記憶装置で構成される。ポンプコントローラ内記憶装置32は、例えばEEPROMなどの不揮発性書換可能なメモリで構成される。
【0028】
エンジンコントローラ40は、建設機械1のエンジンを制御するための装置である。エンジンコントローラ40は、エンジンの回転数や出力トルクなどのエンジン出力を制御するための所定の制御処理を行う処理装置41と、処理装置41が制御処理を行うために使用する所定のデータやプログラムを記憶するエンジンコントローラ内記憶装置42を有する。処理装置41は、CPUなどの演算装置やメモリなどの記憶装置で構成される。エンジンコントローラ内記憶装置40は、例えばEEPROMなどの不揮発性書換可能なメモリで構成される。つまり、エンジンコントローラ40によって、図示しないコモンレールによる燃料噴射量の制御が行われ、エンジン出力が制御される。
【0029】
モニタ装置10は、モニタ装置10自身の各種モード(例えば標準画面表示モードやサービス画面表示モード)やエンジン及び作業機などの動作を設定するための各種モード(例えば、通常作業モードや省燃費作業モード)の設定を行う機能を有する。また、モニタ装置10は、それらの設定された設定データの保存と表示も行う機能を備え、並びに、総稼働時間履歴や故障履歴、メンテナンス履歴などの各種履歴データ及び建設機械1の稼動状態の保存と表示を行う機能も有する。それらの設定データや履歴データなどの保存は、モニタ装置内記憶装置16に保存される。モニタ装置10は、外部通信コントローラ20、ポンプコントローラ30及びエンジンコントローラ40と通信を行い、各コントローラに対して設定データを送ったり、各コントローラから履歴データや状態に関するデータを受信したりする機能を有する。モニタ装置10は、建設機械1のオペレータによって操作されるキースイッチ51に接続されている。キースイッチ51を操作することにより、建設機械1内に搭載されている各種の電装品の電源のON/OFFや、エンジンの始動/停止の制御を行うことができる。
【0030】
建設機械1では、一例として、外部通信コントローラ20が、モニタ装置10の設定データや稼働時間、故障履歴やメンテナンス履歴の履歴データの保存装置として使用される。つまり、モニタ装置内記憶装置16の予備の記憶装置として、外部通信コントローラ20が各種データの複製(バックアップ)を行う。なお、本実施例では外部通信コントローラ20にそのような複製(バックアップ)の機能を与えているが、他のコントローラや記憶装置に対して複製(バックアップ)の機能を与えてもよい。
【0031】
以下、モニタ装置10と、外部通信コントローラ20について、より詳細に説明する。
【0032】
モニタ装置10は、処理装置14、モニタ装置内記憶装置16、表示装置11、操作装置12、及びキーON検出装置13を備える。
【0033】
処理装置14は、CPU(Central Processing Unit)及びROMやRAMといったメモリ等から構成され、メモリに記憶されている各種の制御プログラムを実行することにより、モニタ装置10が備えている各種機能を動作させることができる。それらの機能としては、公知の機能の他に建設機械1の動作に関係する種々の設定およびその設定データの複製や稼動時間、故障履歴やメンテナンス履歴などの履歴データの複製と更新あるいは復元のための機能が含まれる。
【0034】
モニタ装置内記憶装置16は、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ、電池で電源がバックアップされたSRAM、又はHDD(Hard Disk Drive)等であり、建設機械1の各種の設定データや履歴データなどを記憶する。
【0035】
表示装置11は、例えば、LCDパネルであり、モニタ装置内記憶装置16に記憶されている設定データや履歴データ、エンジンや作業機の動作状態を各種センサでセンシングした結果を示す状態データ、及び後述の図3に例示されるような各種設定項目などを表示する。
【0036】
操作装置12は、例えば、入力ボタン又はキーや、表示装置11上に設けられたタッチパネル等で構成される。操作装置12と表示装置11は、モニタ装置10とのマンマシンインターフェースである。
【0037】
キーON検出装置13は、キースイッチ51と接続されており、キースイッチ51の状態(電源OFF、電源ON、エンジン始動などの状態)を電気的に検出し、検出された電気信号を処理装置14に送信する。
【0038】
外部通信コントローラ20は、処理装置22、外部通信コントローラ内記憶装置23、及び通信装置21を備える。
【0039】
処理装置22は、CPU及びメモリ等から構成され、メモリに記憶されている各種の制御プログラムを実行することにより、外部通信コントローラ20としての通信制御処理と、複製(バックアップ)処理(後述する)を行う。
【0040】
外部通信コントローラ内記憶装置23は、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ、電池で電源がバックアップされたSRAM、又はHDD等であり、外部の管理サーバと通信するデータ、およびモニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に記憶されている設定データや履歴データ、詳細については後述するモニタID301やバージョン番号302が複製(バックアップ)されたデータを記憶する。
【0041】
通信装置21は、外部の管理サーバと無線通信を行い、外部通信コントローラ内記憶装置23に保存されている所定のデータを管理サーバへ送信したり、管理サーバから所定のデータ(建設機械1を動作させる各種制御プログラムや表示装置11に表示させるメッセージデータ等)を受信したりするような処理を行う。
【0042】
図2は、モニタ装置10内の処理装置14の機能を示したブロック図である。
【0043】
処理装置14は、設定制御部201、履歴制御部202、ID判定部204、複製(バックアップ)制御部205、及び更新あるいは復元(リストア)制御部206を有する。なお、本実施例において、リストアとは、各種のデータの更新あるいは復元の処理を意味するものとする。
【0044】
設定制御部201は、建設機械1のオペレータが、操作装置12を用いて入力される、作業機やエンジンやその他のコンポーネントの動作に関する各種の設定データに応じて制御指令を出力したり、それら各種の設定データをモニタ装置内記憶装置16に保存したり、それらの各種の設定データを表示装置11に表示したりといった制御を行うものである。
【0045】
履歴制御部202は、建設機械1の稼働時間、故障履歴やメンテナンス履歴や建設機械1の各部に取り付けられた各種センサから得られる状態に関するデータ(以下、特に断りが無ければ履歴データと総称する)を収集し、その履歴データをモニタ装置内記憶装置16に保存したり、その履歴データを表示装置11に表示したりといった制御を行うものである。
【0046】
ID判定部204は、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に記憶されているモニタID(モニタ装置10を一意に識別するためのデータであってモニタ装置10個別に付与される記号あるいは番号)と、外部通信コントローラ20内の外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)されているモニタIDとを比較し、モニタ装置10が交換されたか否かを判定する。その判定の具体的な方法ついては後述する。また、ID判定部204は、モニタ装置内記憶装置16に記憶されているバージョン番号(改訂番号)のデータと、外部通信コントローラ20内の外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)されているバージョン番号のデータとを比較し、モニタ装置10が交換された場合に、交換後のモニタ装置10に複製(バックアップ)されている設定データや履歴データを交換後のモニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に更新あるいは復元(リストア)することが可能か否かを判定するものである。ここで、バージョン番号とは、モニタ装置内記憶装置16へのデータの格納位置(データ格納構造)の形態に応じて与えられる複数の数字あるいは記号や文字で構成されるデータである。バージョン番号は、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に記憶されている。モニタ装置10のハードウェアとしては同一であっても、そのモニタ装置10が取り付けられる建設機械1の種類や車格に応じて、モニタ装置内記憶装置16へのデータの格納位置の形態が異なっている。建設機械1は、油圧ショベルやブルドーザといた種類があり、また、油圧ショベルであっても機体重量が様々なものがある。当然ながら、建設機械1の種類や車格が異なれば、取得する履歴データ(状態データを含む)は異なり、それに伴いモニタ装置内記憶装置16へのデータの格納位置の形態が異なる。故障等が起きているモニタ装置10と外観上は同じモニタ装置10を持ってきて交換してしまうといった人的ミスが起きたまま、モニタ装置10を動作させると正常に履歴データの保存などが行えなくなる。したがって、交換前後のバージョン番号のデータをID判定部204で比較することで、正規のモニタ装置10が交換されたか否かを判定するのである。
【0047】
バックアップ制御部205は、モニタ装置内記憶装置16に保存されている設定データや状態データを含む履歴データを、外部通信コントローラ20に複製(バックアップ)するための制御を行うものである。
【0048】
リストア制御部206は、モニタ装置10が交換された場合に、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)されている設定データや状態データを含む履歴データを、交換後のモニタ装置10に更新あるいは復元(リストア)するための制御を行うものである。
【0049】
図3は、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に保存され、そして外部通信コントローラ内記憶装置23へ複製(バックアップ)される設定データあるいは履歴データの項目および種類の一例を示す。
【0050】
モニタID301は、モニタ装置10のハードウェアを一意に識別するための識別データである。このモニタID301は、ID判定部204にてモニタ装置10が交換されたか否かを判定する際に使用される。なお、モニタID301は、複数の数字や文字あるいは記号で構成されているデータであり、これをオペレータやサービスマンが変更することはできず、更新あるいは復元(リストア)によって書き換えられることもない性質のものである。つまり、個々のモニタ装置10に付与されている識別データである。
【0051】
バージョン番号302は、先に述べたように、モニタ装置内記憶装置16へのデータの格納位置(データ格納構造)の形態に応じて与えられる複数の数字あるいは記号や文字で構成されるデータであるとともに、モニタ装置10の処理装置14で使用される制御プログラム(特に、以下に例示するような複製(バックアップ)の対象である設定データや履歴データなどの各種データをモニタ装置内記憶装置16に書き込むための制御プログラム)の改定回数(バージョン)を特定する複数の数字(あるいは又は記号や文字)でもある。なお、処理装置14で使用される制御プログラムの改定回数(バージョン)をバージョン番号としてもよいが、他の処理装置22や処理装置31、処理装置41で使用される制御プログラムに対する改定回数)を示すバージョン番号であってもよい。バージョン番号302は、ID判定部204にて、交換後のモニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に記憶されているバージョン番号302と交換前のモニタ装置10のバージョン番号302とが一致しているか否かを判定する際に使用される。なお、バージョン番号302は、これをオペレータやサービスマンが変更することはできず、更新や復元(リストア)によって書き換えられることもない性質のものである。なお、本実施例において用いられるバージョンの意義は、ある一つの制御プログラムの改定回数を意味するものでもよいし、制御プログラムそのものの種類を意味するものでもよい。また、先に述べたようにバージョンの意義は、モニタ装置内記憶装置16へのデータの格納位置(データ格納構造)の形態の種類を示すものでもよい。
【0052】
先に述べたように、モニタ装置10が搭載される建設機械1の機種や車格、あるいはその他の仕様が異なると、モニタ装置10のハードウェアが同一でも、処理装置14で実行される制御プログラムの改定回数(バージョン)が異なる場合がある。
【0053】
モニタ装置10が故障等によって交換された場合、交換後のモニタ装置10のバージョン番号302と、交換前のモニタ装置0のバージョン番号302とが互換性を有していると判断される場合は、複製(バックアップ)データを交換後のモニタ装置10に単純に更新あるいは復元(リストア)することが可能だが、互換性を有していないと判断される場合は、そのような単純な更新あるいは復元(リストア)を不可能とする。交換前後のモニタ装置10間でバージョン番号302を比較することで、交換前後のバージョン番号302が互換性を有すれば、機種などに応じた制御プログラムが正常に動作することができ、適切なデータの格納位置(データ格納構造)の形態で、単純な更新あるいは復元(リストア)を行うことができる。また、交換前後のバージョン番号302が互換性を有すれば、複製(バックアップ)を行うときにも、機種などに応じた制御プログラムが正常に動作することができ、適切なデータの格納位置(データ格納構造)の形態で、複製(バックアップ)を行うことができる。
【0054】
サービスメータ303は、建設機械1の総稼働時間を示す履歴データの一つである。なお、このサービスメータ303は、データの数値そのものをオペレータやサービスマンが変更することはできないが、モニタ装置10の交換後に更新あるいは復元(リストア)によって書き換えることができるものである。
【0055】
作業モード関連設定304は、建設機械1の作業機の動作や機能に関連する各種の設定データである。なお、作業モード関連設定304は、オペレータやサービスマンがモニタ装置10を操作して変更することができ、更新あるいは復元(リストア)によって書き換えことができるものである。
【0056】
モニタ表示設定305は、モニタ装置10の画面表示に関連する各種の設定データである。モニタ表示設定305は、オペレータやサービスマンがモニタ装置10の操作装置12を操作して変更することも、更新あるいは復元(リストア)によって書き換えることができるものである。
【0057】
故障履歴306は、建設機械1で過去に発生した故障履歴に関する各種の履歴データである。なお、故障履歴306は、オペレータが変更することはできないが、更新あるいは復元(リストア)によって書き換えられることはできる。
【0058】
メンテナンス履歴307は、建設機械1に対して今までに行われたメンテナンスの履歴に関する各種の履歴データである。なお、メンテナンス履歴307は、これをユーザが変更することはできないが、リストアによって書き換えられることはできる。
【0059】
図4は、例えばサービスマンによってモニタ装置10が交換された場合、交換後のモニタ装置10のモニタ内記憶装置16に、外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)されている各種のデータを更新あるいは復元(リストア)するときの表示装置11に表示される画面の表示例を示す。
【0060】
建設機械1のキースイッチ51がONの状態に操作されている間、通常、モニタ装置10には標準画面401が表示される。標準画面401には、建設機械1のオペレータやサービスマンにリアルタイムで知らせるべき建設機械1の状態データを表示する。状態データとは、エンジンの冷却水温度及び燃料の残量、作業機などを動作させるための作動油の温度などである。さらに、モニタ装置10を交換した場合には、交換後のモニタ装置10の表示装置11の画面に、一定期間(後述するような、更新あるいは復元(リストア)を行なうことができる期間)、複製(バックアップ)データの更新あるいは復元(リストア)を行うことをオペレータやサービスマンに促すマーク420(又は、更新あるいは復元(リストア)が可能な残り時間)を表示するようにしてもよい。なお、更新あるいは復元(リストア)が可能な時間内か否かの判定方法については、図5のフローチャートを用いて後述する。
【0061】
標準画面401が表示されている状態で、サービスマンが予め設定されている所定の操作をモニタ装置10の操作装置12を用いて行うと、表示装置11の画面が遷移しサービスメニュー画面402が表示される。更新あるいは復元(リストア)が可能な時間内に、サービスメニュー画面402が表示された後、サービスマンが予め設定されている所定の操作をモニタ装置10の操作装置12を用いて行い、モニタ装置10に更新あるいは復元(リストア)を指示すると、表示装置11の画面が遷移しデータ復元画面403が表示される。図4に例示されたデータ復元画面403は、モニタ装置10自身の設定(図3に示すモニタ表示設定305)を復元(リストア)するための画面を示しているが、他の項目の設定データや履歴データについても、所定の操作を行うことで、それらの設定データや履歴データを復元(リストア)するための画面が表示される。
【0062】
データ復元画面403には、交換後のモニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に記憶されているバージョン番号302(カレントデータVer.)と、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23に記憶されている交換前のモニタ装置10のバージョン番号302(バックアップデータVer.)とが文字あるいは記号や数字で表示される。このデータ復元画面403が表示されている状態で、サービスマンが予め設定されている所定の操作をモニタ装置10の操作装置12を用いて行うと、上述した2つのバージョン番号、すなわちカレントデータVer.とバックアップデータVer.との対比がモニタ装置10の処理装置14で行われ、交換前後のモニタ装置10間でバージョン番号302の互換性があるかどうかの判断が行われる(例えば、両バージョン番号が一致すれば、互換性があると判定され、両バージョン番号が一致しなければ、互換性がないと判定される)。その結果、互換性があると判断された場合は、画面が遷移してリストア可能画面404が表示され、互換性がないと判断される場合は、サービスメニュー画面402から遷移した画面は、リストア不可能画面410が表示される。リストア不可能画面410は、更新あるいは復元の処理が不可能であることを示すメッセージが表示される。なお、メッセージはモニタ装置10が車種や車格に適合していない旨を示すメッセージでもよく、サービスマンが交換すべきモニタ装置10の選択を誤ったことを認識できるようなメッセージや音声であればよい。
【0063】
リストア可能画面404が表示された後、建設機械1のキースイッチ51がOFFの状態に操作されると、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23から読み出された複製(バックアップ)データが、更新あるいは復元(リストア)される。図4に示すリストア可能画面404は、図3に示すモニタ表示設定305に関する設定データを更新あるいは復元(リストア)する場合を示しているが、他の履歴データを更新あるいは復元(リストア)する場合も同様である。一旦、バージョン番号302の互換性の判断が行われれば、モニタ表示305以外の項目の複製(バックアップ)データは、互換性の判断の処理を省略して、逐次に更新あるいは復元(リストア)することができる。なお、キースイッチ51がOFFの状態での更新あるいは復元(リストア)のために必要な電源のモニタ装置10や外通信コントローラ20への供給は、建設機械1内の蓄電器(バッテリー)から行われる。
【0064】
他方、リストア不可能画面410が表示された場合、サービスマンは更新あるいは復元(リストア)の作業を中止する。
【0065】
図5に、モニタ装置10によって行われる複製(バックアップ)処理及び更新あるいは復元(リストア)処理のフローを示す。
【0066】
まず、複製(バックアップ)処理について説明する。
【0067】
オペレータあるいはサービスマンが建設機械1のキースイッチ51をONの状態に操作する(S500)と、キー検出装置13がONの状態を検知して、モニタ装置10が起動する。
【0068】
次に、モニタ装置10のID判定部204が、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)されている設定データや履歴データ(303,304、305,306)とモニタID301、バージョン情報302、を読み込む(S501)。モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16から自身のモニタID301を読み込み、両モニタID(交換前後のモニタID)が一致するか否かを判断する(S502)。この判断処理により、モニタ装置10の交換が実際に行われたか否かが判断される。
【0069】
両モニタIDが一致した場合(S502:Yes)、すなわちモニタ装置10の交換が行われていない場合には、複製(バックアップ)処理はステップS503に進む。なお、モニタID301が不一致の場合(S502:No)、すなわち、交換前後のモニタ装置10は別物であることから、後述の更新あるいは復元(リストア)処理に進む。
【0070】
ステップS503に進むと、モニタ装置10のバックアップ制御部205は、キースイッチ51がONの状態である間、処理装置14は、キーON検出装置13からのON状態を示す信号を受けて、処理装置14は、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に保存されている設定データや履歴データといった各種データに変更があったか否かを確認する(S504)。オペレータやサービスマンがモニタ装置10を使って、新たな設定をしたり、モニタ装置10が新たな履歴データを収集したりすると、モニタ装置内記憶装置16に保存されている設定データや履歴データが更新されたり変更されたりすることになる。このような各種データの変更等があった場合(S504:Yes)、バックアップ制御部205は、モニタ装置内記憶装置16に保存されている各種データのうち変更等があったデータ部分(又は保存されているデータ全体)の複製(バックアップ)データを、CANを介して外部通信コントローラ20に送信する。さらにバックアップ制御部205は、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)データとして書き込む処理を実行さする(S505)。キースイッチ51がOFFの状態に操作されると(S503:Yes)、バックアップ制御部205は処理を終了する。
【0071】
以上に述べたような処理が行われることにより、モニタ装置10に保存されている設定データや履歴データ(状態データを含む)は、変更や更新等がある度に、外部通信コントローラ20に複製(バックアップ)される。
【0072】
次に、モニタ装置10が交換された場合に行われる、更新あるいは復元(リストア)処理について説明する。
【0073】
上述したステップS502において、モニタID301が不一致の場合(S502:No)、それはモニタ装置10の交換が行われたことを意味する。その際、交換後のモニタ装置10のリストア制御部206は、図4を参照して説明したような更新あるいは復元(リストア)を実行するための操作による指示が行われたかどうかを確認する(S510)。更新あるいは復元(リストア)のための操作が行われていない(未指示)である場合(S510:No)、モニタID301の不一致が検出された時から起算して、更新あるいは復元(リストア)を実行する行うために予め設定された所定時間が経過したかどうかを確認する(S511)。その所定時間内に更新あるいは復元(リストア)の指示があった場合(S510:Yes)、更新あるいは復元(リストア)を実行するために、ステップS520に進む。一方、所定時間内に更新あるいは復元(リストア)の指示がなかった場合(S510:No、S511:Yes)、自動的に更新あるいは復元(リストア)を行うために、ステップS512の処理に進む。
【0074】
まず、所定時間内に更新あるいは復元(リストア)の指示があった場合について説明する。
【0075】
交換されたモニタ装置10のリストア制御部206は、自身のモニタ装置内記憶装置16に記憶されているバージョン番号302と、外部通信コントローラ20に複製(バックアップ)されているバージョン番号302とを読み出して、両バージョン番号に互換性があるか否かを判断する(S520)。例えば、両バージョン番号が一致すれば、互換性ありと判断し、そうでなければ、互換性なしと判断する。ここで、互換性がないと判断した場合(S520:No)、更新あるいは復元(リストア)は不可能であり、図4に示したようなリストア不可能画面410をモニタ装置10の表示装置11に表示し(S530)、更新あるいは復元(リストア処理)を終了する。つまり、サービスマンが、建設機械1に取り付けるべきモニタ装置10とは異なるモニタ装置10を取り付けた可能性があるのである。
【0076】
一方、両バージョン番号302に互換性があると判断した場合(S520:Yes)、リストア制御部206は、キースイッチ51がOFFの状態に操作された後(S521:Yes)、外部通信コントローラ20の外部通信コントローラ内記憶装置23から複製(バックアップ)データ(交換前のモニタ装置10から複製されたデータ)を読み込みし、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に更新あるいは復元(リストア)する処理を行う(S522)。ここで、設定データや履歴データの複製(バックアップ)データは更新あるいは復元(リストア)されるが、上述したモニタID301とバージョン番号302の複製(バックアップ)データは更新あるいは復元(リストア)されない。つまり、交換後のモニタ装置10内のモニタ装置内記憶装置16に記憶されている、モニタID301とバージョン番号302は書き換えられず、モニタ装置10が製造工場から出荷された時のまま不変である。交換後のモニタ装置内記憶装置16に保存されていた設定データや履歴データの古いデータは、更新あるいは復元(リストア)されたデータによって上書きされて消去されてもよいし、あるいは、更新あるいは復元(リストア)されたデータが追加書きされて古いデータが残されてもよい。図3に示すような各データ項目の更新あるいは復元(リストア)が終わる度に、リストア制御部206は、図4に例示したようなリストア可能画面404をモニタ装置10の表示装置11に表示させる。
【0077】
所望とする全てのデータ項目の更新あるいは復元(リストア)が終了すると、リストア制御部206は、モニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に保存されているモニタID301とバージョン番号302の複製(バックアップ)を行うために、外部通信コントローラ20にCANを介してモニタID301とバージョン番号302のデータを送信し、外部通信コントローラ内記憶装置23に保存する(S523)。その後、更新あるいは復元(リストア)の処理を終了する。
【0078】
以上に述べたような処理が行われることにより、交換前のモニタ装置10の各種のデータを、交換後のモニタ装置10に更新あるいは復元(リストア)することができる。
【0079】
次に、モニタ装置10が交換された後、上述の所定時間内に更新あるいは復元(リストア)の指示がなかった場合の処理について説明する。
【0080】
リストア制御部206は、所定時間内に更新あるいは復元(リストア)の指示を受けなかった場合(S510:No、S511:Yes)、処理をステップS512に進めて、交換後のモニタ装置10のモニタ装置内記憶装置16に保存されているモニタID301とバージョン番号302の複製(バックアップ)を、CANを介して外部通信コントローラ20に送信し、外部通信コントローラ内記憶装置23に保存する(S512)。そして、リストア制御部206は、外部通信コントローラ20内に保存されている、交換されたモニタ装置10、つまり故障等がおきて取り外されたモニタ装置10に関連する、設定データや履歴データの複製(バックアップ)データの更新あるいは復元(リストア)処理を行わずに、処理を終了する。ステップS513では、交換された新たなモニタ装置10に既に設定されている設定データが、外部通信コントローラ内記憶装置23に複製(バックアップ)される(S513)。
【0081】
その後、バックアップ制御部205による処理は、既に説明したステップS503に進む。したがって、以後、交換後のモニタ装置10に保存格納された設定データや履歴データが、外部通信コントローラ20に複製(バックアップ)されることになる。
【0082】
以上に述べたような処理が行われることにより、モニタ装置10が交換された後、所定時間内にサービスマンが更新あるいは復元(リストア)の操作を行わなかったとしても、交換後のモニタ装置10内の各種データは確実に外部の記憶装置(本実施例では、外部通信コントローラ内記憶装置23)に複製(バックアップ)されることになる。
【0083】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0084】
例えば、上記実施形態では、モニタ装置10のモニタID301を用いて、モニタ装置10が交換されたか否かを、交換後のモニタ装置10が自動的に認識する。しかし、別の方法でモニタ装置10が交換されたか否かを認識することも可能である。例えば、交換後のモニタ装置10に対してサービスマンが予め設定された所定の操作を行うことで、モニタ装置10の交換の事実をモニタ装置10の表示装置11に知らせるようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、モニタ装置10に記憶されているバージョン番号302を用いて、交換後のモニタ装置10に記憶されているバージョン番号302の互換性の有無を判断するようにした。しかし、別の方法で互換性を判断することも可能である。例えば、バージョン番号302に代えて、建設機械1の機種あるいは車格を示す機種コードなどを用いるようにしても本発明は達成可能である。
【0086】
また、キースイッチ51は、鍵とシリンダ錠を用いた建設機械の始動形態で上記実施形態を説明したが、他の始動形態であっても本発明は達成可能である。他の始動形態の例としては、イモビライザーシステムを用いたID(Identificatoinの略称)キーや、IDカード、あるいは指紋認証といった生体認証を用いてもよい。これらの始動形態を用いることで、正規のサービスマンによってモニタ装置10の交換作業が行われることができ、かつ、正規のオペレータにのみ建設機械1の始動を許可することが可能となり、建設機械の盗難抑止や不正者によるモニタ装置10の交換や盗難の抑止を図ることができる。
【符号の説明】
【0087】
1…建設機械 10…モニタ装置 14…処理装置 20…バックアップ装置
201…表示部 202…操作部 203…記憶部 204…ID判定部
205…バックアップ制御部 206…リストア制御部 207…通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(1)に搭載されるモニタ装置(10)であって、
前記機械は、前記機械を動作させるための設定データ及び/又は前記機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置を有し、
前記第1の記憶装置と前記モニタ装置とが相互通信可能である、
前記モニタ装置において、
前記設定データ及び/又は前記履歴データを保存するための第2の記憶装置(16)と、
前記第2の記憶装置に保存された前記設定データ及び/又は前記履歴データを表示するための表示装置(11)と、
前記機械(1)に搭載されるモニタ装置が交換されたか否かを判定する判定部(204)と、
前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、前記第1の記憶装置に保存されている前記設定データ及び/又は前記履歴データを、前記第2の記憶装置に更新あるいは復元するリストア制御部(206)と
を備えるモニタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のモニタ装置において、
前記リストア制御部は、
前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された後、所定時間内に更新あるいは復元の指示を受けたならば、前記設定データ及び/又は前記履歴データを前記第2の記憶装置に更新あるいは復元する、
モニタ装置。
【請求項3】
前記設定データは、機械の動作に関連する設定データあるいは前記表示装置の動作に関連する設定データであって、
前記履歴データは、機械の総稼動時間あるいは故障履歴やメンテナンス履歴であって、
前記設定データ及び前記履歴データは、前記第2の記憶装置に記憶されるとともに、前記第1の記憶装置に複製されている請求項1または2に記載のモニタ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載のモニタ装置において、
前記第2の記憶装置には、前記モニタ装置を識別するための、モニタIDが保存されており、
前記判定部は、前記第2の記憶装置に保存されている前記モニタIDと前記第1の記憶装置に保存されているモニタIDとに基づいて、モニタ装置が交換されたか否かを判定する、
モニタ装置。
【請求項5】
請求項4記載のモニタ装置において、
前記リストア制御部は、前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、前記第2の記憶装置内の前記モニタIDの複製を、前記第1の記憶装置に保存する、
モニタ装置。
【請求項6】
請求項5記載のモニタ装置において、
前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された後、所定時間を過ぎても前記更新あるいは復元の指示を受けないか、または、前記第1の記憶装置の設定データあるいは履歴データの更新あるいは復元が前記第2の記憶装置に行われた後である場合に、交換された前記モニタ装置のモニタIDの複製を、前記第1の記憶装置に保存する、
モニタ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載のモニタ装置において、
前記第2の記憶装置には、前記モニタ装置や前記機械の動作に関わるプログラムあるいは前記設定データあるいは履歴データの前記第2記憶装置への格納位置の形態を示す改訂番号が保存されており、
前記リストア制御部は、前記第2の記憶装置に保存されている前記改訂番号と前記第1の記憶装置に保存されている前記改訂番号とに基づいて、前記設定データ及び/又は前記履歴データを前記第2の記憶装置に更新あるいは復元することを許可する判断を行う、
モニタ装置。
【請求項8】
モニタ装置(10)を搭載した機械(1)であって、
前記機械は、前記機械を動作させるための設定データ及び/又は前記機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置を有し、
前記第1の記憶装置と前記モニタ装置とが相互通信可能であり、
前記モニタ装置は、
前記設定データ及び/又は前記履歴データを保存するための第2の記憶装置(16)と、
前記第2の記憶装置に保存された前記設定データ及び/又は前記履歴データを表示するための表示装置(11)と、
前記機械(1)に搭載されるモニタ装置が交換されたか否かを判定する判定部(204)と、
前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定されない場合、前記第2の記憶装置に格納された前記設定データ及び/又は前記履歴データのコピーを、前記第1の記憶装置にバックアップデータとして保存するバックアップ制御部(205)と、
前記判定部によりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、前記第1の記憶装置に保存された前記バックアップデータを、前記第2の記憶装置に更新あるいは復元するリストア制御部(206)と
を有する、
モニタ装置を搭載した機械。
【請求項9】
機械(1)に搭載されるモニタ装置(10)であって、前記機械を動作させるための設定データ及び/又は前記機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置(16)と、前記第1の記憶装置に保存された前記設定データ及び/又は前記履歴データを表示するための表示装置(11)と、を備えた前記モニタ装置のための、前記第1の記憶装置に保存された前記設定データ及び/又は前記履歴データをバックアップするための方法において、
前記機械が、前記機械を動作させるための設定データ及び/又は前記機械の動作の履歴を示す履歴データを記憶した第1の記憶装置(23)を有し、
前記第1の記憶装置と前記モニタ装置とが相互通信可能である、
場合に、
前記機械(1)に搭載されるモニタ装置が交換されたか否かを判定する判定ステップ(S502)と、
前記判定ステップによりモニタ装置の交換が行われたと判定されない場合、前記第2の記憶装置に格納された前記設定データ及び/又は履歴データのコピーを、前記第1の記憶装置にバックアップデータとして保存するバックアップステップ(S503〜S505)と、
前記判定ステップによりモニタ装置の交換が行われたと判定された場合、前記第1の記憶装置に格納された前記バックアップデータを、前記第2の記憶装置に更新あるいは復元するリストアステップ(S510〜S522)と
を有する、モニタ装置のためのデータバックアップ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−128702(P2012−128702A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280068(P2010−280068)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】