説明

モノステアリン酸グリセリンを含有するエナラプリルマレイン酸塩錠剤

【課題】エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む安定な固形製剤を提供する。
【解決手段】エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む固形製剤であって、安定化剤としてモノステアリン酸グリセリンを含む固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノステアリン酸グリセリンを含有する安定なエナラプリルマレイン酸塩錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エナラプリルマレイン酸塩はアンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する化合物であり、高血圧症治療薬として「レニベース(登録商標)」の製品名で1986年に発売され、1991年には慢性心不全の効能が追加されている。なお、エナラプリルマレイン酸塩は錠剤の形態の医薬として開発されている。
【0003】
エナラプリルマレイン酸塩は製剤中、特に錠剤中で不安定であり(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,25,893-902(2001)、Drug development and Industrial pharmacy,12,2467-2480(1986)、医療薬学,32,306-313(2006))、特に、滑沢剤として汎用されるステアリン酸マグネシウムが存在すると著しく不安定となることが知られている(米国特許第5,562,921号)。この問題を解決するために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩により変色及び環化を阻止し、サッカライドにより加水分解を阻止して安定化を図る方法が提案されている(特許第2619904号)。しかしながら、この方法の安定化効果は十分ではないことから、製剤中のエナラプリルマレイン酸塩を安定化させる試みが種々なされてきた。
【0004】
例えば、エナラプリルマレイン酸塩にアルカリ性ナトリウム化合物及び水を添加し、エナラプリルナトリウムに変換してしまうことなく乾燥させ固形物へと加工する方法(特表平10-511103号公報)、酸化マグネシウムで環化及び変色を阻止し、且つ糖類で加水分解を阻止する方法(特表2002-516881号公報)、多糖類及び硬化油を安定化剤として用いる方法(特開2000-264843号公報)、濃グリセリンを安定化剤として用いる方法(特開2001-131068号公報)、合成ヒドロタルサイトを安定化剤として用いる方法(特開2004-250398号公報)、及びケイ酸塩を安定化剤として用いる方法(特開2004-346066号公報)などがこれまでに提案されている。また、特開平11-349479号公報には、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、タルク、又はそれらの混合物を滑沢剤としてエナラプリルマレイン酸塩に混合して打錠して得られる安定なエナラプリルマレイン酸塩錠剤が開示されている。
【0005】
一方、モノステアリン酸グリセリンは製剤用添加物として汎用されており、一般的には乳化剤、溶解補助剤、又は滑沢剤として用いられている(例えば、第十五改正日本薬局方解説書、C-4464-4467、特表2005-516946号公報、特表2005-535671号公報、特表2006-510665号公報、特表2007-534777号公報などを参照)。しかしながら、エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む錠剤などの固形製剤にモノステアリン酸グリセリンを配合した例は知られておらず、また、モノステアリン酸グリセリンがエナラプリルマレイン酸塩に対して安定化効果を発揮することについては従来報告がなく、特に錠剤中でエナラプリルマレイン酸塩を安定化する効果については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,562,921号
【特許文献2】特許第2619904号
【特許文献3】特表平10-511103号公報
【特許文献4】特表2002-516881号公報
【特許文献5】特開2000-264843号公報
【特許文献6】特開2001-131068号公報
【特許文献7】特開2004-250398号公報
【特許文献8】特開2004-346066号公報
【特許文献9】特開平11-349479号公報
【特許文献10】特表2005-516946号公報
【特許文献11】特表2005-535671号公報
【特許文献12】特表2006-510665号公報
【特許文献13】特表2007-534777号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,25,pp.893-902,2001
【非特許文献2】Drug development and Industrial pharmacy,12,pp.2467-2480, 1986
【非特許文献3】医療薬学,32,pp.306-313,2006
【非特許文献4】第十五改正日本薬局方解説書, C-4464-4467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む安定な錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、錠剤などの製剤中におけるエナラプリルマレイン酸塩の安定性を改善する物質について種々検討を行ったところ、モノステアリン酸グリセリンが製剤中のエナラプリルマレイン酸塩に対して高い安定化効果を有することを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明により、エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む固形製剤であって、安定化剤としてモノステアリン酸グリセリンを含む固形製剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、錠剤の形態である上記固形製剤;エナラプリルマレイン酸塩を含む顆粒とモノステアリン酸グリセリンとの混合物を打錠することにより得ることができる錠剤の形態の上記固形製剤;エナラプリルマレイン酸塩を含む顆粒(ただし該顆粒はモノステアリン酸グリセリンを含まない顆粒である)とモノステアリン酸グリセリンとの混合物を打錠することにより得ることができる錠剤の形態の上記固形製剤;滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを含有しない上記の固形製剤;及び、アルカリ金属炭酸塩を含有しない上記の固形製剤が提供される。
【0011】
別の観点からは、固形製剤中のエナラプリルマレイン酸塩の安定化剤であって、モノステアリン酸グリセリンからなる安定化剤が本発明により提供される。
さらに別の観点からは、エナラプリルマレイン酸塩を含む安定な錠剤の形態の固形製剤を製造する方法であって、下記の工程:(a)エナラプリルマレイン酸塩を含む顆粒を調製する工程、及び(b)上記顆粒とモノステアリン酸グリセリンとの混合物を打錠する工程を含む方法が提供される。この発明の好ましい態様では、該顆粒はモノステアリン酸グリセリンを含まない顆粒として調製され、及び/又は滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを使用せずに打錠を行うことができる。また、上記錠剤はアルカリ金属炭酸塩を含有しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される固形製剤、好ましくは錠剤の形態の固形製剤では有効成分であるエナラプリルマレイン酸塩が安定化されており、保存及び流通時に有効成分含量が低下することがなく、所望の薬理効果を確実に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の固形製剤はエナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む固形製剤であって、安定化剤としてモノステアリン酸グリセリンを含むことを特徴としている。
有効成分であるエナラプリルマレイン酸塩はすでに臨床で使用されており、当業者が容易に入手可能である。本発明の固形製剤の種類は特に限定されず、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、又はカプセル剤などを挙げることができるが、これらのうち錠剤の形態が好ましい。
【0014】
本発明の固形製剤が錠剤の場合には、エナラプリルマレイン酸塩を含む顆粒を調製する工程、及び上記顆粒とモノステアリン酸グリセリンとの混合物を打錠する工程を含む方法により錠剤を製造することが好ましい。顆粒の調製に際しては、必要に応じて整粒操作を行うことができる。該顆粒を調製するに際してはモノステアリン酸グリセリンを使用しないことが好ましく、モノステアリン酸グリセリンを使用せずに得られた顆粒とモノステアリン酸グリセリンとを含む混合物を調製して打錠工程を行うことが好ましい。もっとも、該顆粒を調製するに際してモノステアリン酸グリセリンを使用することも可能であり、エナラプリルマレイン酸塩及びモノステアリン酸グリセリンを含む顆粒とモノステアリン酸グリセリンとを混合して得られる混合物を打錠工程に供することもできる。
【0015】
これらの態様においては、モノステアリン酸グリセリンは滑沢剤としての効果を発揮することができるので、滑沢剤として汎用されるステアリン酸マグネシウムを使用せずに打錠を行うことができる。滑沢剤は流動化剤と呼ばれる場合もあり、本明細書において両者の用語は同義である。ステアリン酸マグネシウムはエナラプリルマレイン酸塩を不安定化することが知られているので、ステアリン酸マグネシウムを使用せずに打錠を行う態様は本発明において好ましい態様である。なお、上記顆粒及び上記混合物はアルカリ金属炭酸塩を含有しないことが好ましい。
【0016】
顆粒の製造方法は特に限定されず、例えば、湿式造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法等が挙げられる。錠剤の製造のためには直打法を採用してもよい。これらの手段は当業者に適宜選択可能である。
【0017】
本発明の固形製剤としてカプセル剤を調製するときは、エナラプリルマレイン酸塩及びモノステアリン酸グリセリンを含む顆粒を調製して適宜のカプセルに充填すればよい。また、本発明の固形製剤として顆粒剤又は細粒剤を調製するときには、モノステアリン酸グリセリンを使用せずに得られた顆粒とモノステアリン酸グリセリンとの混合物を顆粒剤又は細粒剤へと調製するか、あるいはエナラプリルマレイン酸塩及びモノステアリン酸グリセリンを含む顆粒を調製し、必要に応じて整粒した顆粒をそのまま使用することができる。
【0018】
本発明の固形製剤において、モノステアリン酸グリセリンはエナラプリルマレイン酸塩に対して安定化剤として作用する。本発明の固形製剤においてモノステアリン酸グリセリンは、例えば、粉末状、フレーク状、又はビーズ状等の固形物として使用することができ、好ましくは、粉末状の形態のモノステアリン酸グリセリンを用いることができる。また、モノステアリン酸グリセリンは自己乳化型を含まないことが好ましく、非乳化型のものが好ましい。
【0019】
モノステアリン酸グリセリンにおけるモノグリセリド含量は例えば20%以上であり、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75%以上であり、最も好ましくは95%以上である。モノグリセリド含量が多いほどエナラプリルマレイン酸塩に対してより高い安定化効果が得られるので好ましい。日本薬局方では、モノステアリン酸グリセリンはステアリン酸エステルとパルミチン酸エステルの混合物であると定義されているが、本発明の固形製剤に使用されるモノステアリン酸グリセリンはステアリン酸エステル及びパルミチン酸エステルを主に含むことが好ましい。本発明の固形製剤におけるモノステアリン酸グリセリンの配合量は特に限定されないが、固形製剤の全質量に対して0.1〜15質量%とすることができ、好ましくは0.5〜8質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
【0020】
本発明の固形製剤の製造には、通常用いられる製剤用添加物を1種又は2種以上用いることができる。製剤用添加物の種類は特に限定されず、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、安定化剤、色素、香料・嬌味剤等、又は錠剤に一般に使用される製剤用添加剤を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0021】
賦形剤としては、例えば、乳糖類(乳糖一水和物、無水乳糖、結晶乳糖、直打用乳糖、造粒乳糖等)、糖・糖アルコール類(グルコース、フルクトース、粉糖、白糖、白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒、デキストリン、マルトース、トレハロース、プルラン、ペクチン、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等)、デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム)、セルロース類(結晶セルロース、結晶セルロース粒、エチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル等)、カルメロース類(カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、カゼイン、カゼインナトリウム、含水二酸化ケイ素、カンゾウ末、カンテン、クロスポビドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、セタノール、セラック、ゼラチン、ノイレチンカルシウム、ポビドン、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、マクロゴール、メタクリル酸コポリマー、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられ、好ましくは乳糖及びマンニトールを用いることができる。
【0022】
結合剤としては、例えば、セルロース類(エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース粒等)、デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、アミロペクチン、α化デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、糖・糖アルコール類(グルコース、フルクトース、粉糖、白糖、白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒、デキストリン、マルトース、トレハロース、プルラン、ペクチン、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等)、カルメロース類(カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム等)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、オウバク末、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、含水二酸化ケイ素、カンテン、グァーガム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、コポリビドン、ゼラチン、サラシミツロウ、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酒石酸ナトリウムカリウム、ステアリルアルコール、セタノール、セラック、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、マクロゴール、メタクリル酸コポリマー、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物、ワックス等が挙げられ、好ましくは、部分α化デンプン、白糖及びヒドロキシプロピルセルロースを用いることができる。
【0023】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース類(カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等)、デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、糖・糖アルコール類(グルコース、フルクトース、粉糖、白糖、白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒、デキストリン、マルトース、トレハロース、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等)、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース粒、セラフェート等)、アジピン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、含水二酸化ケイ素、カンゾウ末、カンテン、グァーガム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ゼラチン、ポビドン、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、マクロゴール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物等が挙げられ、好ましくはカルメロース、ヒドロキシプロピルスターチ及びカルメロースカルシウムを用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
実施例1
エナラプリルマレイン酸塩1重量部、乳糖61重量部、マンニトール26重量部、及び部分α化デンプン5重量部を配合し、これに精製水を適量加えて練合した。練合物を乾燥、整粒して顆粒を得た。この顆粒にカルメロース5重量部及びモノステアリン酸グリセリン2重量部を加えて混合し、打錠して100 mgの錠剤を得た。
【0025】
比較例1
モノステアリン酸グリセリンに替えて滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを用いて錠剤を製造した。エナラプリルマレイン酸塩1重量部、乳糖65重量部、トウモロコシデンプン27重量部、部分α化デンプン5重量部、及び炭酸水素ナトリウム1重量部を配合し、これに精製水を適量加えて練合した。練合物を乾燥、整粒して顆粒を得た。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1重量部を加えて混合し、打錠して100 mgの錠剤を得た。
【0026】
上記実施例1で得られた錠剤と比較例1で得られた錠剤を40℃、相対湿度75%で1ヶ月間保存し、初期値に対するエナラプリルマレイン酸塩の残存率を測定した。その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0027】
上記実施例1で調製した本発明の錠剤において、エナラプリルマレイン酸塩の含有率は1%であり、一方、市販のエナラプリルマレイン酸塩錠剤における有効成分の含有率は殆んどが5%又は3%である。一般に、有効成分の含有率が低いほどその安定性が低下する傾向があるが、本発明の錠剤においては、エナラプリルマレイン酸塩の含有率が1%と比較的希薄であっても、十分な安定性が保たれている。
【0028】
実施例2〜6
エナラプリルマレイン酸塩5重量部、乳糖41重量部及びマンニトール42重量部を配合し、これに下記表2に示す結合剤5重量部を、結合剤の種類により、結合剤を加えた後精製水適量を添加するか又は結合剤を予め水溶液にしたものをそれぞれ加えた後、練合した。練合物を乾燥、整粒して顆粒を得た。この顆粒に、下記表2に示す崩壊剤をそれぞれ5重量部及びモノステアリン酸グリセリン2重量部を加えて混合し、打錠して、それぞれ100mgの錠剤を得た。
【0029】
比較例2〜6
上記実施例2〜6におけるモノステアリン酸グリセリン2重量部に替えて滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム1重量部を用い、それ以外の成分及びその重量部は実施例2〜6と同様にして、それぞれ100mgの錠剤を得た。
【0030】
上記実施例2〜6及び比較例2〜6で得られたそれぞれの錠剤を60℃、相対湿度75%で2週間保存し、初期値に対するエナラプリルマレイン酸塩の残存率を測定した。その結果を下記表2に示す。
【表2】

【0031】
上記表2に示されるように、安定化剤としてモノステアリン酸グリセリンを使用した本発明の錠剤は、これに替えて滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを使用した比較例の錠剤と比較し、結合剤及び崩壊剤の種類によらず安定であった。
【0032】
実施例6:連続打錠性の試験
実施例1で得られた顆粒につき、ロータリー式打錠機を用いて約5時間の連続打錠を行ったところ、最後まで錠剤のパンチ離れに問題はなく、また錠剤の表面状態も滑らかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナラプリルマレイン酸塩を有効成分として含む固形製剤であって、安定化剤としてモノステアリン酸グリセリンを含む固形製剤。
【請求項2】
錠剤の形態である請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
固形製剤中のエナラプリルマレイン酸塩の安定化剤であって、モノステアリン酸グリセリンからなる安定化剤。

【公開番号】特開2010−59152(P2010−59152A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181194(P2009−181194)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】