説明

モルタルまたはコンクリート吹付け方法およびその装置

【課題】 別圧送工法において、どの様な骨材を用いても、骨材およびセメントミルクの搬送性を低下させること無く、成形性の高い吹付材料を形成することができるモルタルまたはコンクリート吹付け方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】 骨材供給路iを介して骨材7および水8aを供給する骨材圧送機9と、前記骨材および水とは別にセメントミルク供給路mを介してセメントミルク13(11,8b)を供給するセメントミルク供給手段14と、前記骨材および水と前記セメントミルクとを混合する混合手段17と、混合して得られたモルタル材料4またはコンクリート材料を吹き付けるための吹付ノズル20とを備えたモルタルまたはコンクリート吹付け装置Dであって、前記骨材供給路iの終端部に、前記骨材7に添加された水8aの一部を除去する水除去手段30(31〜34)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モルタルまたはコンクリート吹付け方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高所法面に予め形成された型枠に対してモルタル材料またはコンクリート材料を吹付けて格子状の法枠を形成する際、旧来の、水と、セメントと、細骨材としての砂、場合によって粗骨材としての砂利・砕石等を事前に混練させたモルタルまたはコンクリート吹付け方法と比較して、高所の吹付施工を効率よく行うために、下記特許文献1に示すように、モルタル材料またはコンクリート材料を構成するセメントミルクと骨材を別々に圧送した後に混合してモルタル材料またはコンクリート材料を吹付けて法枠を形成する、いわゆる別圧送工法と呼ばれるモルタルまたはコンクリート吹付け方法がある。そして、それは、例えば細骨材としての砂を圧縮エアによって400m程度の長さの連結ホース中を移動させ、吹付けノズルの手前10m程度の所でセメントミルクと混ぜることによりモルタル材料を得るようにし、命綱によって支えられた作業者が吹付けノズルを持ちながら前記型枠に対してモルタル材料を吹付けることにより格子状の法枠を形成するというものである。しかし、そのような別圧送工法では、例えば以下の問題を生じることがあった。
【0003】
セメントミルクと砂が完全には混ざらず、モルタルの強度低下や、リバウンドの発生が問題となることがあった。すなわち、セメントミルクと砂が均一に混ざり合わないので、モルタル材料吹付け時において、セメントミルクに覆われない砂が法面で跳ね返り(リバウンド)、跳ね返った砂は法面に溜まることから吹付け作業を一時中断し、前記吹付けノズルからエアを法面に吹付けて、溜まった砂を法面から除去する作業を行う必要がある。また、リバウンドによる砂の損失を考慮して予め多めに砂を用意する必要があり、コストアップに繋がる。
【0004】
前記砂は、近年良質のものが少なくなり、シルト分が含まれる場合も少なくない。そして、前記砂として、粗砂、細砂以外にシルトが含まれたものを使用すると、前記砂を圧送するホース内に、前記シルトが固まった状態でこびりつき、前記ホースが目詰まりを起こし易い。
【0005】
そこでこのような問題を解決するため、別圧送工法に用いられる装置として、例えば下記特許文献2に示すように、骨材供給路を形成するホースを介して砂のみならず水をも供給する骨材圧送機と、前記砂および水とは別にセメントミルク供給路を介してセメントミルクを供給するセメントミルク供給手段と、前記砂および水と前記セメントミルクとを混合する混合手段と、混合して得られたモルタル材料を吹き付けるための吹付ノズルとを備えたモルタル吹付け装置がある。
【0006】
骨材側に水を添加する、特許文献2で示されるモルタル吹き付け装置によれば、例えば以下の利点がある。骨材供給路を形成するホース内において、砂の周囲に水が存在するため、当該ホース内は親水性状態となっている。そのため、混合手段において、セメントミルクとの馴染みが向上し、砂がセメントミルクに均一に混ざり合うことになる。よって、モルタル強度が向上し、また、モルタル材料吹付け時において、砂のリバウンドが発生するのを回避できる。
【0007】
また、粗砂、細砂以外にシルトが含まれている場合でも、砂の重量に対する含水率を所望の範囲に設定しているため、シルトが前記ホースの壁面で締め固まる含水率を上回っており、ホース内に、シルトが固まった状態でこびりついてホースが目詰まりを起こすという事態を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3592604号公報
【特許文献2】特許第4229260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、骨材側に水を添加する別圧送工法において、その骨材側に添加する水の量は非常に厳密さを要求され、骨材側に添加する水の量が少な過ぎた場合は骨材搬送ホースが目詰まりを起こし、その復旧に多大な時間をロスするとともに経済的損失も大となってしまう(詰まりによる骨材搬送ホースの破損、セメントミルク搬送ホースにおいて中身が硬化して使い物にならなくなるなど)。逆に、骨材側に添加する水の量が多過ぎた場合は最終的に形成されるモルタル材料が水っぽくなってダレてしまうし、セメントミルクに用いることができる水を減少させることにもなってしまう。すなわち、セメントミルクの粘度が高くなって搬送性が低下してしまう。
【0010】
そのため、骨材側に添加する水の量の設定には慎重を期す必要があるが、実際に使用する骨材はその物性や吸水率・保水率などが現場毎に異なるものであり、更には気象条件(気温・湿度・天候など)によっては同一骨材でも待機中(吹付装置へ投入する前)に僅か数時間で含水率が変化してしまうのであって、完全な設定を行うには頻繁な骨材状態確認や多大な経験・知見が必要である。特に、吸水率の低い骨材の場合は、一般的な骨材を用いたモルタルの水セメント比(55〜60%)よりも水セメント比を低くしなければ所望するコンシステンシーが得られないため、骨材側に添加する水分量だけでなく全体の水分量をも調整する労力が生じていた。
【0011】
また、骨材に添加する水が少な過ぎた場合に発生する上述のトラブルは非常に甚大であって、吹付装置そのもの(ホースなど)にダメージが発生する可能性もあるため、これを確実に回避する方法が模索されている。
【0012】
この発明は、別圧送工法における上記の問題点を解決するために生み出されたもので、その目的は、別圧送工法において、どの様な骨材を用いても、骨材およびセメントミルクの搬送性を低下させること無く、成形性の高い吹付材料を形成することができるモルタルまたはコンクリート吹付け方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明は、骨材圧送機から骨材供給路を介して供給される骨材と、セメントミルク供給手段からセメントミルク供給路を介して供給されるセメントミルクとを混合してモルタル材料またはコンクリート材料とし、そのモルタル材料またはコンクリート材料の吹付けを行うモルタルまたはコンクリート吹付け方法において、前記モルタル材料またはコンクリート材料を構成する水の一部を前記骨材圧送機から供給される前記骨材に添加し、さらに前記骨材供給路の終端部で前記骨材に添加された水の一部を除去することを特徴としている(請求項1)。
【0014】
また、この発明は別の観点から、骨材供給路を介して骨材および水を供給する骨材圧送機と、前記骨材および水とは別にセメントミルク供給路を介してセメントミルクを供給するセメントミルク供給手段と、前記骨材および水と前記セメントミルクとを混合する混合手段と、混合して得られたモルタル材料またはコンクリート材料を吹き付けるための吹付ノズルとを備えたモルタルまたはコンクリート吹付け装置であって、前記骨材供給路の終端部に、前記骨材に添加された水の一部を除去する水除去手段を設けたことを特徴とするモルタルまたはコンクリート吹付け装置を提供する(請求項2)。
【0015】
そして、前記水除去手段は、除去される水の量を調整する調整部を備えているのが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、別圧送工法において、どの様な骨材を用いても、骨材およびセメントミルクの搬送性を低下させること無く、成形性の高い吹付材料を形成することができるモルタルまたはコンクリート吹付け方法およびその装置を提供することができる。すなわち、水分量調整の困難な吸水率の極めて低い骨材(石英を主とした砂、高炉スラグなど)や保水率の低い骨材(大きい粒径が殆どでシルト分を含まない砂など)であっても、骨材の搬送途中で骨材搬送ホースを閉塞させることなく、所望するモルタルまたはコンクリートの吹付けを行うことができる。また、通常の骨材を使用する際においても、十分安全率を取った多めの水分を骨材側に加えることができ、今まで以上に安全且つ確実に骨材を搬送することができる。更には、吹付けられるモルタルまたはコンクリートの水セメント比を従来の方法よりも低下させることが可能となり、より強度の高いモルタルまたはコンクリートを形成することができる。
【0017】
要するに、従来の別圧送工法では例えばモルタルを形成する水(以下、Aという)を、骨材添加用水(以下、Xという)と、セメントミルク形成用水(以下、Yという)に分け(A=X+Y)、骨材もセメントミルクもぎりぎり搬送できる程度にXとYの量を調整することでAの量を低く抑えようとしていた。それに対し、この発明では、Xの量をα(>0)だけ多め(X+α)の量にしてもセメントミルク混合直前で余剰水(以下、βという)を抜くことができるため、骨材の搬送で綱渡りをしなくても良くなったのである(余裕を持って骨材を搬送できるようになった)。つまり、この発明では、例えばモルタルを形成する水を、従来の〔X+Y〕から、〔(X+α)−β+Y〕としたのである。ここで、X+Y=Aであり、(X+α)−β+Y=A’(A’:この発明で用いる、モルタルを形成する水)とすると、α≦β、A’≦Aである。なお、水セメント比を下げる(Aを低く抑える)ことで、出来上がるモルタル等の強度は向上することは勿論である。また、別圧送工法は、水とセメントと骨材を事前に混練させたモルタル材料またはコンクリート材料を吹付ける一般吹付工法よりも高圧であるため、別圧送工法の吹付けには腕力が必要であるが、この発明では、水分除去のために骨材供給路内の圧力が一部使用されるため、吹付ノズルでのエアー圧力が下がり、作業員が施工を行い易くなるという特有の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態を示す全体構成説明図である。
【図2】上記実施形態における要部縦断面図である。
【図3】上記実施形態とは異なる位置に水除去用の孔を設けたこの発明の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、骨材圧送機から供給される骨材および水と、セメントミルク供給手段から供給されるセメントミルクとを混合して得られたモルタル材料(通常は重量配合比がセメント1:砂4:水0.5である。)の吹き付けによる法枠の形成状況ならびに植生基材の吹き付けによる法面の緑化保護状況を示している。図2は、前記骨材および水と前記セメントミルクとを混合する混合手段における構成を示している。
【0020】
具体的には、法面Nに金網などのネット1を張設すると共に、このネット1上に鉄筋2を格子状に配置して法枠吹付部を形成し、この法枠吹付部の空間部に養生シート3を配置する一方、格子状の鉄筋2を覆うようにモルタル材料4を吹き付けて、格子状の法枠5を形成し、その後、養生シート3を剥がし、かつ、植物種子や肥料を含んだ植生基材6を法枠5内に吹き付けて、法面Nの緑化保護を図るようにしている。
【0021】
なお、この実施形態では、吹付材料として、セメントと、吸水率の低い細骨材の一例である石英系の砂と、水とを混入させたモルタル材料について説明するが、この発明は、前記細骨材として通常の砂や高炉スラグなどを用いる場合や、セメントと、前記細骨材と、粗骨材としての例えば砂利、礫および砕石等と、水とを混入させたコンクリート材料にも適用できることは言うまでもない。ここで、骨材の吸水率とは、骨材内部に有する空隙の程度を示すもので、細骨材で言えば、例えば砂一粒一粒が粒子内部に抱え込める水の指標になる。
【0022】
モルタル材料4の吹き付け装置(以下、モルタル吹付け装置という)Dは、前記細骨材7および水8aを供給する骨材圧送機9と、この骨材圧送機9に接続されたエアコンプレッサー10と、セメント11と水8bとを混合してなるセメントミルク13を供給するセメントミルク供給手段としての圧送用ポンプ(例えばピストン式ポンプ、スクイズ式ポンプ)14と、骨材供給路i(図2参照)を形成するホース15を介して圧送される前記細骨材7および水8a、セメントミルク供給路mを形成するホース16を介して圧送される前記セメントミルク13(11,8b)を混合し、モルタル材料4として吐出する混合手段としての可搬式の混合装置17と、混合して得られたモルタル材料4を吹き付けるためのモルタル材料吹付ノズル20とより主としてなる。そして、この発明では、モルタル材料4を構成する水8a,8bのうち、その一部8aを骨材圧送機9から供給される前記細骨材7に添加するよう構成されている。
【0023】
さらに、前記モルタル吹付け装置Dは、前記可搬式混合装置17の最下流側に位置するモルタル吐出口18に接続されたモルタル材料圧送用のホース19を有し、このホース19の先端に前記モルタル材料吹付ノズル20が設けられている。モルタル材料圧送用のホース19は、可搬式混合装置17を中心にしてモルタル材料4の吹き付け範囲を3〜20m程度の吹き付け半径にするように、モルタル材料吹付ノズル20を含む長さを3〜20m程度に設定しており、このノズル20の近傍に前記可搬式混合装置17が設置される。また、前記細骨材7および水8aを圧送する骨材供給路iを形成する前記ホース15は、最大で400m程度の長さの連結ホースよりなり、この連結ホース15は、20m程度の多数の短いホースが連結されてなる。また、前記細骨材7および水8aは、エアコンプレッサー10から供給される圧縮エアによって骨材圧送機9の吐出口9aから所定の吐出量で吐出される。
【0024】
そして、セメントミルク供給手段としての圧送用ポンプ14によって圧送されるセメントミルク13(11,8b)の供給量は、前記ポンプ14が備える吐出量ゲージによって設定変更されるもので、事前にまたはリアルタイムで測定した、ホース15内を圧送される前記細骨材7および水8aの圧送量に応じてポンプ14によるセメントミルク13(11,8b)の吐出量を調整することで、前記細骨材7および水8aとセメントミルク13(11,8b)との配合比を任意に制御できるようになっている。
【0025】
以下、特徴的構成について説明する。
【0026】
前記可搬式混合装置17は、上流側から順に、骨材供給路iを形成する前記ホース15が上流端に接続されている導入用筒体21と、前記モルタル材料圧送用ホース19と前記導入用筒体21間に両者19,21とは同芯状に接続された状態で設けられた混合用筒体22を有している。そして、前記導入用筒体21は、骨材供給路iを圧送により流れる前記細骨材7および水8aを下流側(モルタル吐出口18側)に導入する導入流路jを形成している。また、前記混合用筒体22は、前記細骨材7および水8aとセメントミルク13(11,8b)を混合するため前記導入流路jに連通するよう形成された連通流路nと、前記セメントミルク供給路mとを合流させて混合流路kを形成するよう機能する。図2におけるQは、連通流路nとセメントミルク供給路mの合流位置を示している。また、導入用筒体21は、前記ホース15の内径eと同径の内径を有するとともに、混合用筒体22を同芯状に接続するための雌ねじ部23および前記ホース15を同芯状に接続するための雄ねじ部24をそれぞれ下流端および上流端に有する。一方、前記混合用筒体22は、その内径Eが、前記細骨材7および水8aを圧送する前記ホース15の内径eよりもやゝ大径(例えば同径〜3倍でよい。)であって、下流側(モルタル材料吐出口18側)を順次絞り気味にして、前記吐出口18の外周面部に、モルタル材料圧送用ホース19を同芯状に接続するよう形成された雄ねじ部25を有する。また、前記混合用筒体22の前記導入用筒体21の接続部近傍の筒壁22aに(筒壁22aにおける導入用筒体21の雌ねじ部23よりも下流側の位置に)、セメントミルク13(11,8b)の注入用筒部26が形成されている。なお、図示はしないが、前記混合用筒体22の接続部近傍の筒壁22aに、セメントミルクの注入コックを接続するための雌ねじ部を形成して、このコックにセメントミルク13(11,8b)を圧送するための前記ホース16を接続するように構成してもよい。また、セメントミルクの注入口は2箇所以上とすると、より混合効率が向上する。
【0027】
また、40は突起体で、後述する水除去用の孔31より下流側で、かつ連通流路nとセメントミルク供給路mの合流位置Qよりも上流側に設けられている。この実施形態では前記連通流路nに設けられている。突起体40は、圧送により骨材供給路iから導入用筒体21を介して混合用筒体22内に流れてくる前記細骨材7を、前記導入用筒体21の管壁に設けた1インチほどの径を有する水除去用の孔31の下流側で分散させる機能を有する。前記突起体40は、例えば、ほぼ半球状をしており、連通流路nを構成する混合用筒体22の内壁に沿ってその周方向に適宜の間隔をあけて複数(例えば、5個)配置されている。すなわち、前記ホース15内を通って可搬式混合装置17内に至る前記細骨材7は、導入流路jから前記連通流路n中の突起体40を経てさらに下流側へと向かうのであるが、導入用筒体21に設けた前記水除去用の孔31で水が抜かれるまでは普通に搬送され、前記水除去用の孔31で水が抜かれた後において、導入流路jの底に沿って固まって流れている前記細骨材7がある場合には、前記細骨材7は連通流路n内の前記突起体40を通過したときに前記突起体40に衝突して斜め上方に向かって跳ね上がることとなり、これによって、固まって流れていた前記細骨材7が分散することとなり、連通流路n内で分散された前記細骨材7も含めてセメントミルクで前記細骨材7の一粒一粒をコーティングしてモルタル材料4が形成される。また、周方向に配置される前記突起体40を、連通流路nの流れ方向(連通流路nの軸方向)に適宜に間隔をあけて複数列(例えば、2列)設けてもよく、この場合、隣り合う列の突起体40どうしが互いに周方向にずれた位置にあるように構成することが好ましい。なお、突起体40の形状は半球状に限定されるものではないが、搬送される前記細骨材7からの抵抗を受けにくい形状で有ることが連通流路n内の詰まりを防止することができ望ましい。
【0028】
さらに、前記導入用筒体21は、導入流路jを圧送により流れる前記細骨材7および水8aのうちその水8aの一部を吹付ノズル20からのモルタル材料4吹付け状況に応じて除去するため導入流路jから分岐して水分出口(排出口)dに至る分岐流路pを形成する水除去手段30を有する。この水除去手段30は、導入用筒体21の管壁に設けた1インチほどの径を有する前記水除去用の孔31と、この孔31を介して導入流路jから分岐した分岐流路pを形成する細めの管(1インチほどの径)である分岐筒体(分岐パイプ)32と、この分岐筒体32の途中に設けられ、除去される水の量を調整できる例えばバルブを備えた調整部33と、分岐筒体32の下流端に連結された5mほどの長さを有するとともに、水分出口dを有する可撓性のホース34とを備えている。35は、除去される水を受けるバケツ等の水受部材である。そして、前記分岐筒体32は、前記水除去用の孔31から前記細骨材7および水8aの搬送方向(図2において矢印Rで示す方向)とは逆向きで斜めに延びている。導入用筒体21の軸線と分岐筒体32の軸線とのなす角度θは、前記細骨材7も分岐流路pに流れ込むのを阻止しうる角度、すなわち、前記細骨材7および水8aが圧送されている導入流路jから水8aの一部のみを霧状に吐出させうる範囲内の大きさに設定されており、その角度θは、例えば10°≦θ≦90°である。そして、骨材の流れを見極めないと、骨材の一部が水と一緒に排出されてしまうのでこの事態を避けるため、水除去用の孔31は、ホース15内を搬送される細骨材7(骨材の一例)の流れとは逆方向に設けることが好適である。具体的には、導入用筒体21および導入用筒体21から上流側の骨材供給路i(ホース15)を3〜10m程度は略直線状となるように配置し、導入用筒体21横断面視で、例えば図3に示すように、鉛直方向略上側となるように水除去用の孔31を設けたり、また、導入用筒体21直前のホース15がカーブしている場合はカーブの内側方向になるように水除去用の孔31を設けたりすることが好適である。この様な状態とすれば、ホース15内での骨材の流れる位置を制御することができ、骨材のR方向の流れとは逆方向に分岐流路pが向くよう導入用筒体21に水除去用の孔31を有する分岐筒体32を設けることで、ホース15(骨材供給路i)内および導入流路jを圧縮エアとともに略霧状で圧送される余剰水のみを効果的に除去することが可能となる(骨材が余剰水と共に排出され難くなる)。そして、前記調整部33は、吹付けたモルタルがダレないように吹付ノズル20からのモルタル材料4吹付け状況に応じて作業者により、除去される水の量を調整することができる。
【0029】
次に、上記の構成からなる吹付け装置Dを用いて実施されるモルタルの打設方法について説明する。前記モルタルの打設方法は、前記骨材圧送機9およびエアコンプレッサー10と、圧送用ポンプ14とを駆動させ、モルタル材料吹付ノズル20を適宜の位置に移動させることにより実施できる。上記構成によれば、導入用筒体21に至るまでは骨材側に十分な水8aがあるため前記細骨材7の搬送性が良く、モルタル材料4吹付け中に水を抜く必要があるときは、作業者が調整部33のバルブ等を操作して、除去される水の流量を調整することにより余剰な水分が取り除かれ、その後に前記細骨材7はすぐにセメントミルク13でコーティングされてモルタル材料4となり、その勢いのまま先端の吹付ノズル20より施工対象地Nへと吹付けられる。セメントミルクの前記合流部(合流位置)Qから吹付ノズル20までのホース19の長さは3〜20mで、10m以下とすることが吹付圧や施工性との兼ね合いから好適である。なお、この実施形態の場合は5mで実施した。また、水除去手段30において、前記細めの管である分岐筒体(分岐パイプ)32には5mほどのホース34を連結しているので、施工の邪魔にならない場所へ水分出口dを設けることができる。そして、前記水分出口dから吐出される水を受けるバケツ等の水受部材35を設けておくのが好ましい。
【0030】
このように、モルタル材料4の水セメント比(W/C)を下げることで、セメントミルク13と前記細骨材7との絡みが良くなり、コンシステンシーの高いモルタルが形成されるとともにモルタルの強度も向上する。そして、モルタル材料の水セメント比(W/C)の当初配合が55%であっても、最終的に吹付けたモルタル材料4では水セメント比(W/C)43%となった。
【0031】
なお、この実施形態では、吸水率の低い骨材を使ったため骨材に添加された水の一部を除去するようにしたが、この発明の装置は、骨材に添加された水の一部を除去する必要のない通常の砂を骨材に使った場合にも使用できることは勿論である。この場合、具体的には、作業中に水除去手段30を構成する調整部33のバルブ等を止水状態にしておけばよい。
【符号の説明】
【0032】
4 モルタル材料
7 骨材
8a 水
9 骨材圧送機
13 セメントミルク
14 セメントミルク供給手段
17 可搬式混合装置
20 吹付ノズル
30 水除去手段
i 骨材供給路
m セメントミルク供給路
D モルタル吹付け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材圧送機から骨材供給路を介して供給される骨材と、セメントミルク供給手段からセメントミルク供給路を介して供給されるセメントミルクとを混合してモルタル材料またはコンクリート材料とし、そのモルタル材料またはコンクリート材料の吹付けを行うモルタルまたはコンクリート吹付け方法において、前記モルタル材料またはコンクリート材料を構成する水の一部を前記骨材圧送機から供給される前記骨材に添加し、さらに前記骨材供給路の終端部で前記骨材に添加された水の一部を除去することを特徴とするモルタルまたはコンクリート吹付け方法。
【請求項2】
骨材供給路を介して骨材および水を供給する骨材圧送機と、前記骨材および水とは別にセメントミルク供給路を介してセメントミルクを供給するセメントミルク供給手段と、前記骨材および水と前記セメントミルクとを混合する混合手段と、混合して得られたモルタル材料またはコンクリート材料を吹き付けるための吹付ノズルとを備えたモルタルまたはコンクリート吹付け装置であって、前記骨材供給路の終端部に、前記骨材に添加された水の一部を除去する水除去手段を設けたことを特徴とするモルタルまたはコンクリート吹付け装置。
【請求項3】
前記水除去手段は、除去される水の量を調整する調整部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のモルタルまたはコンクリート吹付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127149(P2012−127149A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281395(P2010−281395)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】