モータ、及びモータ製造方法
【課題】平角導線を用いた分布巻きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入でき、かつティース先端部に鍔部が形成されたステータコアに対しても適用できる低コストのモータ、及びモータ製造方法を提供すること。
【解決手段】コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部SA、SBに対して、ロータ側に折り曲げられている折曲げ部JA、JBを有すること、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ティース13aの内周面13bよりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とする。
【解決手段】コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部SA、SBに対して、ロータ側に折り曲げられている折曲げ部JA、JBを有すること、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ティース13aの内周面13bよりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面が約1mm×約10mmの平角導線を用いた分布巻きコイルを、ステータコアのスロット内に挿入して組み付けることは、丸細線と違って平角導線が強い剛性を持ち、変形しにくいため、困難であった。その問題を解決するために、色々な提案がなされている。
特許文献1においては、ティースの周りに形成されたスロット内に、導線を巻回したコイルを、径方向の内側から外側に向かって挿入するときに、挿入しやすくするため、導線の幅やコイル傾斜角度を工夫することが提案されている。
一方、特許文献2においては、スロット内に挿入される導線を重ね巻きしてコイルを構成し、それを挿入治具に装着し、挿入治具をステータコア内に配置し、挿入治具からステータコアのスロットに、コイルを挿入する方法が開示されている。
また、特許文献3には、分布巻きコイルにおいて、挿入する先端部を軸心側に折り曲げることが開示されている。
【0003】
一方、ロータと対向するティースの先端部の外側を回り込んでコイルに直接磁束が流れると、コイルにおいて渦電流が発生して、銅渦電流損が大きくなる。その問題を解決するために、特許文献4の技術では、ロータと対向するティースの先端部に、凸条の鍔部を形成することが行われている。これにより、磁束は、鍔部を通ってティースに流れるため、コイルに磁束が直接流れることなく、渦電流の発生を低減して、銅渦電流損を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-051489号公報
【特許文献2】特開2008-167567号公報
【特許文献3】国際公開WO 92/01327
【特許文献4】特開2004-208475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のステータコアへコイルを挿入する方法には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1のように、各ティースに対して、各別にコイルを挿入する方法では、ティース数に応じた回数の挿入を行わなければならず、挿入に時間がかかる問題があった。また、挿入装置が複雑化し、大型化する問題があった。
また、特許文献2のように、挿入治具を用いた場合には、挿入はうまくいったとしても、挿入治具内で弾性変形されていたコイルをスロット内に挿入した後で、コイルがスプリングバックにより変形し、導線の一部がスロットから外に飛び出す問題があった。
【0006】
特許文献1、2の技術では、いずれも、ティース・スロットに対して、径方向の内側から外側に向かって、コイルを挿入するものであるから、上記問題が発生するのであり、コイルを軸心方向からスロット内に挿入できれば、上記問題を解決できるということに、本出願人は思い至った。
しかし、集中巻きのコイルならば、挿入する先端部を軸心側に折り曲げれば、残りの部分をスロット内に挿入することは容易であるが、分布巻きコイルでは、折り曲げる部分の形状が複雑であり、折り曲げること自体が困難であるという問題があった。
集中巻きコイルで、挿入する先端部を折り曲げる技術として、特許文献3の技術が開示されているが、特許文献3の技術では、折り曲げ箇所の異なる複数の導体を、個別に製造して、組み合わせていくため、製造に時間がかかり、コストが高い問題があった。
【0007】
さらに、特許文献4の技術を利用しようとした場合に、ティースの先端に形成された鍔部に折り曲げた折り曲げ部が干渉して、コイル籠をステータコアに挿入できない場合があった。また、うまく挿入できた場合でも、鍔部の先端がコイルの表面に当接して、コイル表面に形成されている絶縁被膜に傷をつける恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、平角導線を用いた分布巻きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入でき、かつティース先端部に鍔部が形成されたステータコアに対しても適用できる低コストのモータ、及びモータ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様におけるモータ、及びモータ製造方法は、次のような構成を有している。
(1)平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータであって、コイルの一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコアの内周面よりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線を重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とする。例えば、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものである。
(2)(1)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とする。
【0010】
(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有することを特徴とする。
(5)(4)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、前記折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明に係るモータ、及びモータ製造方法の作用及び効果について説明する。
(1)平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータであって、コイルの一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコアの内周面よりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の平角導線を重ね巻きしたものであること、折り曲げられている折曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。ここで、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過するため、コイルの表面の絶縁被膜に傷を発生することなく、挿入できる。また、挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0012】
(2)(1)に記載するモータにおいて、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とし、(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有することを特徴とするので、単純な折り曲げ作業のみで、コイルの一端のコイルエンド部を折り曲げることができる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載するモータにおいて、前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とするので、コイルエンド部では、隣のスロットに配置された導線との干渉を回避するために、軸心方向に変形させる必要がなく、余分な変形を必要としないため、製造工程を簡略化してコストダウンを図ることができる。
【0014】
(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた折り曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有し、前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、前記折り曲げ工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とするので、折り曲げ部を形成すると共に、2箇所のスロット内に挿入される導線部を容易に成形することができる。また、折り曲げ部にコイル幅の狭い凹部を形成できるため、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過でき、コイルの表面の絶縁被膜に傷を発生することなく、コイル籠をステータコアに挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基準ユニットの斜視図である。
【図2】基準ユニットの正面図である。
【図3】基準ユニットの平面図である。
【図4】基準ユニットの右側面図である。
【図5】基準ユニットの製造工程のうち、巻取り工程を示す図である。
【図6】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第1図である。
【図7】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第2図である。
【図8】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第3図である。
【図9】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第1図である。
【図10】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第2図である。
【図11】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第3図である。
【図12】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図13】コイル籠の全体を示す図である。
【図14】コイル籠の全体を示す平面図である。
【図15】コイル籠の正面図である。
【図16】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図17】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図18】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第3図である。
【図19】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第4図である。
【図20】ロータをステータに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図21】ロータをステータに挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図22】凹部QB(QA)の形状を示す図である。
【図23】図22のB部拡大図である。
【図24】(a)は、プレス上型110、プレス下型111、平角導線20の水平部FA、FBの位置関係を示す図であり、(b)は、(a)のB矢視図である
【図25】凹部QA、QBを形成するためのプレス装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態のモータ、及びモータ製造方法について図面を参照して説明する。
図1に、5本の平角導線を同時に成形した基準ユニット11の斜視図を示す。図2に、図1の基準ユニット11の正面図を示し、図3に図1を上から見た平面図を示し、図4に図1の右側面図を示す。
基準ユニット11は、スロット内に配置されるスロット内導線部SA、スロット内導線部SBを備える。
図1に示すように、スロット内導線部SAは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SA1、第2スロット内導線部SA2、第3スロット内導線部SA3、第4スロット内導線部SA4、及び第5スロット内導線部SA5の集合体を示している。また、図4に示すように、スロット内導線部SBは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SB1、第2スロット内導線部SB2、第3スロット内導線部SB3、第4スロット内導線部SB4、及び第5スロット内導線部SB5の集合体を示している。
【0017】
図1の上側に位置するコイルエンド部の中央には、上側同心円部Gが形成されている。図4に示すように、上側同心円部Gは、第2同心円部G2、第3同心円部G3、第4同心円部G4、及び第5同心円部G5の4本の平角導線の集合体である。第1同心円部が含まれていないのは、後で説明する傾斜部EA5が端子Mとして、外部に突出しているためである。
スロット内導線部SAの上端には、折り曲げ部IAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IAで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SAとの間には、傾斜部EAが形成されている。折り曲げ部IAは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IA1、IA2、IA3、IA4、IA5の集合体を示している。傾斜部EAは、図1、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EA1、EA2、EA3、EA4、EA5の集合体を示している。
傾斜部EAにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SAと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0018】
スロット内導線部SBの上端には、折り曲げ部IBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IBで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SBとの間には、傾斜部EBが形成されている。折り曲げ部IBは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IB1、IB2、IB3、IB4、IB5の集合体を示している。傾斜部EBは、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EB1、EB2、EB3、EB4、EB5の集合体を示している。
傾斜部EBにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SBと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0019】
図4に示すように、傾斜部EAの最内周部に位置するEA1の端子Mは、折り曲げられて外部に突出している。また、傾斜部EBの最外周に位置するEB5の端子Nは、折り曲げられて外部に突出している。
スロット内導線部SAの下端には、折り曲げ部JAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JAで、図4に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。折り曲げ部JAは、図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JA1、JA2、JA3、JA4、JA5の集合体を示している。
また、スロット内導線部SBの下端には、折り曲げ部JBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JBで、図4に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JB1、JB2、JB3、JB4、JB5の集合体を示している。
【0020】
内周側先端部には、下側同心円部Hが形成されている。図2に示すように、折り曲げ部JAと下側同心円部Hとの間には、水平部FAが形成されている。折り曲げ部JBと下側同心円部Hとの間には、水平部FBが形成されている。
下側同心円部Hは、図4に示すように、5本の平角導線の下側同心円部H1、H2、H3、H4、H5の集合体を示している。
水平部FAは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FA1、FA2、FA3、FA4、FA5の集合体を示している。ここで、水平部FAにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
また、水平部FBは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FB1、FB2、FB3、FB4、FB5の集合体を示している。ここで、水平部FBにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
【0021】
また、図2、図3、図4に示すように、折り曲げ部JAと水平部FAに渡って、幅方向に両面が狭められた凹部QAが形成されている。凹部QAは、5本の平角導線の凹部QA1、QA2、QA3、QA4、QA5の集合体を示している。また、水平部FBには、幅方向に両面が狭められた凹部QBが形成されている。凹部QBは、5本の平角導線の凹部QB1、QB2、QB3、QB4、QB5の集合体を示している。
凹部QA及び凹部QBは、後で詳細に説明するが、ティースの先端に形成された鍔部の位置に対応している。
図22に凹部QBの形状を示す。水平部FBの一部に幅方向に両面が狭められた凹部QBが形成されている。図22のB部拡大図を図23に示す。凹部QBは、両端に縮幅部QBa、QBbを備えており、水平部FBから徐々に幅が狭められている。
【0022】
次に、基準ユニット11の製造方法を説明する。基準ユニット11の製造方法は、巻取り工程、折り曲げ工程、及び拡張工程を有している。
図5に、基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す。
断面が平べったい三角形状の金型19が、中心軸19aを中心に回転可能に設けられている。
金型19に平角導線20の先端20aを固定し、金型19を、中心軸19aを中心に矢印Pで示す方向に回転させ、平角導線20を5周金型19に巻きつける。このとき、平角導線20は、フラットワイズ方向に巻き重ねられる。すなわち、断面が約1.8mm×約3.3mmの平角導線の約3.3mmの長辺を重ね合わせて巻き重ねている。
【0023】
次に、折り曲げ工程について説明する。
図6に、基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の第1工程を示し、図7に第2工程を示し、図8に第3工程を示す。
巻取り工程で、5周分巻き取った平角導線20を金型19から外して、図5に示す位置にセットする。この状態で、三角形状の平角導線20の最も短い短辺20bが治具22に接している。2番目に短い中辺20cの全長に渡って平行に治具21が配置されている。一番長い長辺20dの中央付近に治具23が配置されている。
次に、図6に示すように、治具21が中辺20cに接する位置まで、平行に移動する。同時に、治具23が、長辺20dの折り曲げ部20eに当接する。同時に治具22が、短辺20bを時計方向に回転させ、平角導線20を折り曲げ部20eで折り曲げる。
そして、図8に示すように、中辺20cと短辺20bが直角(90度)を成すまで、平角導線20を折り曲げる。
【0024】
次に、前記折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程について説明する。
図25に凹部QA、QBを形成するためのプレス装置を断面図で示す。ベース板117の上に、凹部QA、QBを成形するためのプレス下型111が固設されている。また、2本のガイド棒116により、載置ベース118が上下方向に摺動可能に保持されている。載置ベース118の上には、位置決め台112が固設されており、位置決め台112の上に、折り曲げられた状態の平角導線20が載置され、所定の位置に位置決めされる。位置決め台112には、開口部が設けられている。開口部には、プレス下型111が配置されている。
平角導線20の上部には、上型ベース114が、3本のガイド棒113により、上下方向に摺動可能に保持されている。上型ベース114の下面には、プレス上型110が固設されている。
【0025】
図24(a)に、プレス上型110、プレス下型111、平角導線20の水平部FA、FBの位置関係を示す。(b)は、(a)のB矢視図である。プレス上型110の中央には、平角導線20の幅を最も狭くさせる凹部成形部110aが形成されている。凹部成形部110aにより、凹部QA、QBが形成される。図25において、図示しないカム等により、上型ベース114に下向きのプレス力が付与される。これにより、プレス上型110が平角導線20の上面を押圧する。平角導線20は、幅を狭くプレスされつつ、載置ベース118も下降する。それにより、平角導線20は、上表面がプレス上型110により、押圧され、下表面がプレス下型111により押圧される。このとき、水平部FA、FBは、図24(b)の左右方向においては、サイドガイド111a、111b、111cによりガイドされているので、左右方向に膨らむことはない。本実施例では、平角導線20の幅を18%程度狭くしている。具代的には、平角導線20の幅は、3.3mmであり、凹部のQA、QBの幅は、2.7mmとしている。凹部QA、QBは、幅が狭くされているため、抵抗値が大きくなるが、本実施例では、抵抗値は、1%増加するだけであり、モータへの支障はない。
【0026】
次に、拡張工程を説明する。
図9に、基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程の第1図を示す。図10に、拡張工程の第2図を示す。図11に、図9の側面図を示す。
図9及び図11に示すように、上側同心円部G(5本の平角導線)を、一対のチャック爪33(33A、33B)が把持する。下側同心円部H(5本の平角導線)は、一対のガイド爪40(40A、40B)に固定される。スロット内導線部SA(5本の平角導線)は、一対のチャック爪32(32A、32B)に把持される。スロット内導線部SB(5本の平角導線)は、一対のチャック爪31(31A、31B)に把持される。
ここで、一対のチャック爪32(32A、32B)、及び一対のチャック爪31(31A、31B)は、中心軸34を中心に各別に回転可能に保持されている。ベース板36は、2本のガイド棒38の先端に固定されている。2本のガイド棒38は、固定された固定部39に摺動可能に保持されている。固定部39の両側には、一対のエアシリンダ37の本体が固設されている。また、ベース板36には、一対のエアシリンダ37のロッド先端が連結されており、エアシリンダ37の駆動により、ガイド棒38及びベース板36は、固定部39に対して摺動する。ベース板36には、一対のリンク機構35A、35Bが付設され、リンク機構35Aは、チャック爪32のベース板に接続され、リンク機構35Bは、チャック爪31のベース板に接続している。
【0027】
この構成により、図9に示すように、平角導線20を各々把持した状態で、エアシリンダ37を駆動する。これにより、ベース板36が摺動して、図10の位置に来ると、一対のチャック爪32(32A、32B)は、スロット内導線部SAを把持したまま、図10において、時計回りに回転し、スロット内導線部SAを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
同時に、一対のチャック爪31(31A、31B)は、スロット内導線部SBを把持したまま、図10において、反時計回りに回転し、スロット内導線部SBを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、反時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
次に、端子M及び端子Nを折り曲げて塑性変形させる。これにより、基準ユニット11が完成する。
なお、本実施例では、折り曲げ工程、凹部成形工程、拡張工程の順序で実施しているが、折り曲げ工程、拡張工程、凹部成形工程の順序で実施しても良い。この場合には、凹部QAと凹部QBとは、各別にプレス成形する場合もある。
【0028】
次に、製造された基準ユニットを複数重ね合わせる。
図12に、6個の基準ユニット11であるU相第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2を重ね合わせた状態を斜視図で示す。第1基準ユニットと第2基準ユニットのスロット内導線部が1つのティースの両側に挿入されるため、6個の基準ユニット11が1つの単位となる。尚、U相基準ユニットを構成する部位には「U」で始まる符合を付すものとし、V相およびW相基準ユニットを構成する部位についても同様に示す。
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBにおいては、5本の平角導線(EB1〜EB5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
【0029】
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EBに対して、軸心方向で下側(ステータコア13の方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EBは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBの軸心方向の下側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で下側に位置して重ね合わされている。
【0030】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAにおいては、5本の平角導線(EA1〜EA5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EAに対して、軸心方向で上側(ステータコア13と反対方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EAは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAの軸心方向の上側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAは、時計回りで、順次直前の傾斜部EAの軸心方向で上側に位置して重ね合わされている。
【0031】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBにおいては、5本の平角導線(FB1〜FB5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FBは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図12に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
【0032】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAにおいては、5本の平角導線(FA1〜FA5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FAは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図12に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、時計回りで、順次直前の水平部FAの径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
【0033】
上側同心円部U1G、U2G、V1G、V2G、W1G、W2Gは、径方向に順次整列している。
下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2Hは、径方向に順次整列している。
一方、図12に示すように、ティースTの先端部の両側には、円周方向に突出して、鍔部Taが形成されている。ここで、コイル幅の狭い凹部QA、QBは、ティースTの鍔部Taに対向している。それ故、鍔部Taに対向して凹部QA、QBが通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。
【0034】
基準ユニット11を24個重ね合わせると、半円形状となる。これらを2組製造して、合体させることにより、48個の基準ユニット11を重ね合わせた円形状のコイル籠12が完成する。
基準ユニット11が、48個重ね合わされたコイル籠12の構成を、図13に斜視図で示す。コイル籠12の平面図(図13上から見た図)を図14に示す。コイル籠12の正面図を図15に示す。本実施の形態のモータのステータのステータコアは、48個のスロット、48個のティースを有している。
各基準ユニット11は、2個のスロット内導線部SA、SBを有しており、スロット内導線部SAとスロット内導線部SBとは、図4に示すように、径方向(図4の上下方向)で5本の平角導線の厚み分ずれて位置している。
【0035】
図14に示すように、U相の第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2が順次重ね合わされている。続いて、U相の2つの基準ユニット、V相の2つの基準ユニット、W相の2つの基準ユニットが順次重ね合わされて、最後は、U相の第15基準ユニットU15、U相の第16基準ユニット、V相の第15基準ユニットV15、V相の第16基準ユニットV16、W相の第15基準ユニットW15、W相の第16基準ユニットW16で終わる。U、V、Wの3相で各16個の基準ユニット11を有するため、合計48個の基準ユニット11を有している。
1つのスロット内には、1組5本の平角導線が、2組(計10本)挿入されている。
【0036】
次に、コイル籠12をステータコア13に挿入する方法について説明する。図16に、コイル籠12の下側部をステータコア13に半分ほど挿入した状態を示す。図16では、コイル籠12の全体を記載すると、わかりにくくなるため、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2(図12に示すものと同じ。)のみを記載している。ここでは、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の挿入作用について説明するが、コイル籠12全体もここでの説明と同じ挿入作用である。また、インシュレータの記載を省略しているが、コイル籠12を挿入する前に、ステータコア13の各スロット部Sにインシュレータを装着しておくと良い。
図16に示すように、下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2H、水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FB、及び水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、ステータコア13のティース13a先端の内周面13bよりも、ステータ13の中心線側に位置している。
【0037】
したがって、スロット内導線部U1SB、U2SB、V1SB、V2SB、W1SB、W2SB、及びスロット内導線部U1SA、U2SA、V1SA、V2SA、W1SA、W2SAを、図16の上側からステータ13の中心軸の軸心方向に下向きに、第1スロットS1から第12スロットS12に挿入するときに、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAがステータコア13と干渉することがないため、コイル籠12をステータコア13のスロットSに挿入することができる。
ここで、コイル幅の狭い凹部QA、QBが、ティースの鍔部Taに対向して通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。
ここで、例えば、第1スロットS1の外周側(奥側)に、U相の第1基準ユニットU1の5本のスロット内導線部U1SB(SB1〜SB5)が挿入される。もう一方のスロット内導線U1SA(SA1〜SA5)は、第7スロットS7の内周側(手前側)に挿入される。
【0038】
第1スロットS1の内周側には、図示しないU相の第16基準ユニットU16の5本のスロット内導線部U16SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第1スロットには、スロット内導線部U1SAとスロット内導線部U16SBの計10本の平角導線が挿入される。
同様に、第7スロットS7の外周側には、図示しないU相の第3基準ユニットU3の5本のスロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第7スロットには、スロット内導線部U1SA(SA1〜SA5)と、スロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)の計10本の平角導線が挿入される。
【0039】
図17に、コイル籠12がステータコア13に対して、所定の位置まで挿入された状態を示す。図18に、図17を、ステータコア13を上方向から軸心に沿って見た平面図を示す。図19に、図18の正面図を示す。
図18においては、端子Nは、端子Mの下側に位置しており、見えない。図18で、端子U1Nが見えているのは、U16Mを省略して記載しているからである。
図19に示すように、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAの位置が、ステータコア13の端面から距離を設けてあるのは、ロータとの電磁気的な影響を回避するためである。
図17には、コイル籠12の一部のみを示しているが、図17の状態まで、コイル籠12が挿入されることにより、ステータコア13へのコイル籠12の組立が完了する。その後、スロットS内にスロット内導線部SA、SBが挿入されている状態における空間部に、伝熱性能に優れた樹脂をモールドする。また、端子M、NをU相、V相、W相毎に順次バスバーで接続する。これにより、ステータ10が完成する。
【0040】
次に、完成したステータ10にモータのロータ42を組み付ける方法を説明する。
図20に、ステータ10の中央断面図を示す。ステータコア13にコイル籠12が組み込まれている。この状態で、ステータ10の図20の上側では、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側には、コイル籠12は、存在しない。一方、ステータ10の図20の下側では、コイル籠12の折り曲げ部である下側同心円部H、水平部、及び水平部が、ステータコア13のティースの内周面より内側に位置している。
一方、モータのロータ42は、中心軸41の外周にロータ部43が形成されている。
ロータ42は、ステータ10の下側から挿入することはできないが、ステータの上側から軸心に沿って挿入することが可能である。ロータ42をステータ10に挿入した状態を図21に示す。
図21に示すように、ロータ42の中心軸41は、コイル籠12の下側同心円部Hの内周面で形成される中心孔から外に突出している。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施例のモータによれば、平角導線を用いた分布巻きコイルであるコイル籠12とステータコア13とを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータであって、コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部SA、SBに対して、ロータ側に折り曲げられている折曲げ部JA、JBを有すること、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ティース13aの内周面13bよりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイル籠12を挿入しようとするときに、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBは、ティース13aの内周面13bの内側を通過するため、コイル籠12を軸心方向からスロットS内に容易に挿入することができる。ここで、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。また、挿入するときに、コイル籠12を弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイル籠12の一部がスロットS内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0042】
また、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、一端のコイルエンド部が、同心円状の半円(下側同心円部H)を形成していること、他端のコイルエンド部が、同心円状の半円(上側同心円部G)を形成していること、を特徴し、かつ、平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ42側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた折り曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有すること特徴とするので、単純な折り曲げ作業のみで、コイル籠12の一端のコイルエンド部を折り曲げることができる。また、折り曲げ部にコイル幅の狭い凹部を形成できるため、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過でき、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、コイル籠をステータコアに挿入できる。
【0043】
また、一端のコイルエンド部の水平部FA、FBでは、隣り合うスロットSに配置される各5本の平角導線が、ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部の傾斜部EA、EBでは、隣り合うスロットSに配置される各5本の平角導線が、ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とするので、コイルエンド部では、隣のスロットSに配置された導線との干渉を回避するために、軸心方向に変形させる必要がなく、余分な変形を必要としないため、製造工程を簡略化してコストダウンを図ることができる。
【0044】
また、平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部SA、SBに対して、ロータ42側に折り曲げる折り曲げ工程と、分布巻きコイルを、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有し、折り曲げ工程の前に、平角導線20を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、重ね巻きされた平角導線を2つのスロット内導線部SA、SBを形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とするので、折り曲げ部を形成すると共に、2箇所のスロットS内に挿入されるスロット内導線部SA、SBを容易に成形することができる。
【0045】
なお、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、上記実施例に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、スロットSが48個あるモータについて説明したが、スロットSの数は変更しても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 ステータ
11 基準ユニット
12 コイル籠
13 ステータコア
41 中心軸
42 ロータ
43 ロータ部
Un U相の第n基準ユニット
Vn V相の第n基準ユニット
Wn W相の第n基準ユニット
G 上側同心円部
H 下側同心円部
SA、SB スロット内導線部
EA、EB 傾斜部
FA、FB 水平部
JA、JB 折り曲げ部
QA、QB 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面が約1mm×約10mmの平角導線を用いた分布巻きコイルを、ステータコアのスロット内に挿入して組み付けることは、丸細線と違って平角導線が強い剛性を持ち、変形しにくいため、困難であった。その問題を解決するために、色々な提案がなされている。
特許文献1においては、ティースの周りに形成されたスロット内に、導線を巻回したコイルを、径方向の内側から外側に向かって挿入するときに、挿入しやすくするため、導線の幅やコイル傾斜角度を工夫することが提案されている。
一方、特許文献2においては、スロット内に挿入される導線を重ね巻きしてコイルを構成し、それを挿入治具に装着し、挿入治具をステータコア内に配置し、挿入治具からステータコアのスロットに、コイルを挿入する方法が開示されている。
また、特許文献3には、分布巻きコイルにおいて、挿入する先端部を軸心側に折り曲げることが開示されている。
【0003】
一方、ロータと対向するティースの先端部の外側を回り込んでコイルに直接磁束が流れると、コイルにおいて渦電流が発生して、銅渦電流損が大きくなる。その問題を解決するために、特許文献4の技術では、ロータと対向するティースの先端部に、凸条の鍔部を形成することが行われている。これにより、磁束は、鍔部を通ってティースに流れるため、コイルに磁束が直接流れることなく、渦電流の発生を低減して、銅渦電流損を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-051489号公報
【特許文献2】特開2008-167567号公報
【特許文献3】国際公開WO 92/01327
【特許文献4】特開2004-208475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のステータコアへコイルを挿入する方法には、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1のように、各ティースに対して、各別にコイルを挿入する方法では、ティース数に応じた回数の挿入を行わなければならず、挿入に時間がかかる問題があった。また、挿入装置が複雑化し、大型化する問題があった。
また、特許文献2のように、挿入治具を用いた場合には、挿入はうまくいったとしても、挿入治具内で弾性変形されていたコイルをスロット内に挿入した後で、コイルがスプリングバックにより変形し、導線の一部がスロットから外に飛び出す問題があった。
【0006】
特許文献1、2の技術では、いずれも、ティース・スロットに対して、径方向の内側から外側に向かって、コイルを挿入するものであるから、上記問題が発生するのであり、コイルを軸心方向からスロット内に挿入できれば、上記問題を解決できるということに、本出願人は思い至った。
しかし、集中巻きのコイルならば、挿入する先端部を軸心側に折り曲げれば、残りの部分をスロット内に挿入することは容易であるが、分布巻きコイルでは、折り曲げる部分の形状が複雑であり、折り曲げること自体が困難であるという問題があった。
集中巻きコイルで、挿入する先端部を折り曲げる技術として、特許文献3の技術が開示されているが、特許文献3の技術では、折り曲げ箇所の異なる複数の導体を、個別に製造して、組み合わせていくため、製造に時間がかかり、コストが高い問題があった。
【0007】
さらに、特許文献4の技術を利用しようとした場合に、ティースの先端に形成された鍔部に折り曲げた折り曲げ部が干渉して、コイル籠をステータコアに挿入できない場合があった。また、うまく挿入できた場合でも、鍔部の先端がコイルの表面に当接して、コイル表面に形成されている絶縁被膜に傷をつける恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、平角導線を用いた分布巻きコイルを軸心方向から容易にスロット内に挿入でき、かつティース先端部に鍔部が形成されたステータコアに対しても適用できる低コストのモータ、及びモータ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様におけるモータ、及びモータ製造方法は、次のような構成を有している。
(1)平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータであって、コイルの一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコアの内周面よりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線を重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とする。例えば、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものである。
(2)(1)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とする。
【0010】
(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有することを特徴とする。
(5)(4)に記載するモータにおいて、好ましくは、前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、前記折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明に係るモータ、及びモータ製造方法の作用及び効果について説明する。
(1)平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータであって、コイルの一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げられていること、一端のコイルエンド部が、ステータコアの内周面よりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の平角導線を重ね巻きしたものであること、折り曲げられている折曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部側を先頭として、ステータのスロットに対して、軸心側からコイルを挿入しようとするときに、一端のコイルエンドは、ステータコアの内周面の内側を通過するため、コイルを軸心方向からスロット内に容易に挿入することができる。ここで、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過するため、コイルの表面の絶縁被膜に傷を発生することなく、挿入できる。また、挿入するときに、コイルを弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイルの一部がスロット内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0012】
(2)(1)に記載するモータにおいて、前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、を特徴とし、(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有することを特徴とするので、単純な折り曲げ作業のみで、コイルの一端のコイルエンド部を折り曲げることができる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載するモータにおいて、前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とするので、コイルエンド部では、隣のスロットに配置された導線との干渉を回避するために、軸心方向に変形させる必要がなく、余分な変形を必要としないため、製造工程を簡略化してコストダウンを図ることができる。
【0014】
(4)平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた折り曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有し、前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、前記折り曲げ工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とするので、折り曲げ部を形成すると共に、2箇所のスロット内に挿入される導線部を容易に成形することができる。また、折り曲げ部にコイル幅の狭い凹部を形成できるため、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過でき、コイルの表面の絶縁被膜に傷を発生することなく、コイル籠をステータコアに挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基準ユニットの斜視図である。
【図2】基準ユニットの正面図である。
【図3】基準ユニットの平面図である。
【図4】基準ユニットの右側面図である。
【図5】基準ユニットの製造工程のうち、巻取り工程を示す図である。
【図6】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第1図である。
【図7】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第2図である。
【図8】基準ユニットの製造工程のうち、折り曲げ工程を示す第3図である。
【図9】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第1図である。
【図10】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第2図である。
【図11】基準ユニットの製造工程のうち、拡張工程を示す第3図である。
【図12】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図13】コイル籠の全体を示す図である。
【図14】コイル籠の全体を示す平面図である。
【図15】コイル籠の正面図である。
【図16】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図17】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図18】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第3図である。
【図19】基準ユニットをステータコアに挿入する挿入工程を示す第4図である。
【図20】ロータをステータに挿入する挿入工程を示す第1図である。
【図21】ロータをステータに挿入する挿入工程を示す第2図である。
【図22】凹部QB(QA)の形状を示す図である。
【図23】図22のB部拡大図である。
【図24】(a)は、プレス上型110、プレス下型111、平角導線20の水平部FA、FBの位置関係を示す図であり、(b)は、(a)のB矢視図である
【図25】凹部QA、QBを形成するためのプレス装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態のモータ、及びモータ製造方法について図面を参照して説明する。
図1に、5本の平角導線を同時に成形した基準ユニット11の斜視図を示す。図2に、図1の基準ユニット11の正面図を示し、図3に図1を上から見た平面図を示し、図4に図1の右側面図を示す。
基準ユニット11は、スロット内に配置されるスロット内導線部SA、スロット内導線部SBを備える。
図1に示すように、スロット内導線部SAは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SA1、第2スロット内導線部SA2、第3スロット内導線部SA3、第4スロット内導線部SA4、及び第5スロット内導線部SA5の集合体を示している。また、図4に示すように、スロット内導線部SBは、5本の平角導線が長辺面(フラットワイズ面)を接触させて重ね合わされたもので、第1スロット内導線部SB1、第2スロット内導線部SB2、第3スロット内導線部SB3、第4スロット内導線部SB4、及び第5スロット内導線部SB5の集合体を示している。
【0017】
図1の上側に位置するコイルエンド部の中央には、上側同心円部Gが形成されている。図4に示すように、上側同心円部Gは、第2同心円部G2、第3同心円部G3、第4同心円部G4、及び第5同心円部G5の4本の平角導線の集合体である。第1同心円部が含まれていないのは、後で説明する傾斜部EA5が端子Mとして、外部に突出しているためである。
スロット内導線部SAの上端には、折り曲げ部IAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IAで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SAとの間には、傾斜部EAが形成されている。折り曲げ部IAは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IA1、IA2、IA3、IA4、IA5の集合体を示している。傾斜部EAは、図1、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EA1、EA2、EA3、EA4、EA5の集合体を示している。
傾斜部EAにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SAと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0018】
スロット内導線部SBの上端には、折り曲げ部IBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部IBで、図2に示すように、上側同心円部Gの方向に折り曲げられている。上側同心円部Gとスロット内導線部SBとの間には、傾斜部EBが形成されている。折り曲げ部IBは、図3に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部IB1、IB2、IB3、IB4、IB5の集合体を示している。傾斜部EBは、図4に示すように、5本の平角導線の傾斜部EB1、EB2、EB3、EB4、EB5の集合体を示している。
傾斜部EBにおいては、5本の平角導線が、図4に示すように、スロット内導線SBと同様に、径方向(図4の左右方向)に重ね合わされている。
【0019】
図4に示すように、傾斜部EAの最内周部に位置するEA1の端子Mは、折り曲げられて外部に突出している。また、傾斜部EBの最外周に位置するEB5の端子Nは、折り曲げられて外部に突出している。
スロット内導線部SAの下端には、折り曲げ部JAが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JAで、図4に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。折り曲げ部JAは、図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JA1、JA2、JA3、JA4、JA5の集合体を示している。
また、スロット内導線部SBの下端には、折り曲げ部JBが形成されている。平角導線は、折り曲げ部JBで、図4に示すように、90度内周側(図の左方向)に折り曲げられている。図4に示すように、5本の平角導線の折り曲げ部JB1、JB2、JB3、JB4、JB5の集合体を示している。
【0020】
内周側先端部には、下側同心円部Hが形成されている。図2に示すように、折り曲げ部JAと下側同心円部Hとの間には、水平部FAが形成されている。折り曲げ部JBと下側同心円部Hとの間には、水平部FBが形成されている。
下側同心円部Hは、図4に示すように、5本の平角導線の下側同心円部H1、H2、H3、H4、H5の集合体を示している。
水平部FAは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FA1、FA2、FA3、FA4、FA5の集合体を示している。ここで、水平部FAにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
また、水平部FBは、図2に示すように、5本の平角導線の水平部FB1、FB2、FB3、FB4、FB5の集合体を示している。ここで、水平部FBにおいては、5本の平角導線の水平部は、図2に示すように、軸心方向(図2の上下方向)に重ね合わされている。
【0021】
また、図2、図3、図4に示すように、折り曲げ部JAと水平部FAに渡って、幅方向に両面が狭められた凹部QAが形成されている。凹部QAは、5本の平角導線の凹部QA1、QA2、QA3、QA4、QA5の集合体を示している。また、水平部FBには、幅方向に両面が狭められた凹部QBが形成されている。凹部QBは、5本の平角導線の凹部QB1、QB2、QB3、QB4、QB5の集合体を示している。
凹部QA及び凹部QBは、後で詳細に説明するが、ティースの先端に形成された鍔部の位置に対応している。
図22に凹部QBの形状を示す。水平部FBの一部に幅方向に両面が狭められた凹部QBが形成されている。図22のB部拡大図を図23に示す。凹部QBは、両端に縮幅部QBa、QBbを備えており、水平部FBから徐々に幅が狭められている。
【0022】
次に、基準ユニット11の製造方法を説明する。基準ユニット11の製造方法は、巻取り工程、折り曲げ工程、及び拡張工程を有している。
図5に、基準ユニット11の製造工程のうち、巻取り工程を示す。
断面が平べったい三角形状の金型19が、中心軸19aを中心に回転可能に設けられている。
金型19に平角導線20の先端20aを固定し、金型19を、中心軸19aを中心に矢印Pで示す方向に回転させ、平角導線20を5周金型19に巻きつける。このとき、平角導線20は、フラットワイズ方向に巻き重ねられる。すなわち、断面が約1.8mm×約3.3mmの平角導線の約3.3mmの長辺を重ね合わせて巻き重ねている。
【0023】
次に、折り曲げ工程について説明する。
図6に、基準ユニット11の製造工程のうち、折り曲げ工程の第1工程を示し、図7に第2工程を示し、図8に第3工程を示す。
巻取り工程で、5周分巻き取った平角導線20を金型19から外して、図5に示す位置にセットする。この状態で、三角形状の平角導線20の最も短い短辺20bが治具22に接している。2番目に短い中辺20cの全長に渡って平行に治具21が配置されている。一番長い長辺20dの中央付近に治具23が配置されている。
次に、図6に示すように、治具21が中辺20cに接する位置まで、平行に移動する。同時に、治具23が、長辺20dの折り曲げ部20eに当接する。同時に治具22が、短辺20bを時計方向に回転させ、平角導線20を折り曲げ部20eで折り曲げる。
そして、図8に示すように、中辺20cと短辺20bが直角(90度)を成すまで、平角導線20を折り曲げる。
【0024】
次に、前記折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程について説明する。
図25に凹部QA、QBを形成するためのプレス装置を断面図で示す。ベース板117の上に、凹部QA、QBを成形するためのプレス下型111が固設されている。また、2本のガイド棒116により、載置ベース118が上下方向に摺動可能に保持されている。載置ベース118の上には、位置決め台112が固設されており、位置決め台112の上に、折り曲げられた状態の平角導線20が載置され、所定の位置に位置決めされる。位置決め台112には、開口部が設けられている。開口部には、プレス下型111が配置されている。
平角導線20の上部には、上型ベース114が、3本のガイド棒113により、上下方向に摺動可能に保持されている。上型ベース114の下面には、プレス上型110が固設されている。
【0025】
図24(a)に、プレス上型110、プレス下型111、平角導線20の水平部FA、FBの位置関係を示す。(b)は、(a)のB矢視図である。プレス上型110の中央には、平角導線20の幅を最も狭くさせる凹部成形部110aが形成されている。凹部成形部110aにより、凹部QA、QBが形成される。図25において、図示しないカム等により、上型ベース114に下向きのプレス力が付与される。これにより、プレス上型110が平角導線20の上面を押圧する。平角導線20は、幅を狭くプレスされつつ、載置ベース118も下降する。それにより、平角導線20は、上表面がプレス上型110により、押圧され、下表面がプレス下型111により押圧される。このとき、水平部FA、FBは、図24(b)の左右方向においては、サイドガイド111a、111b、111cによりガイドされているので、左右方向に膨らむことはない。本実施例では、平角導線20の幅を18%程度狭くしている。具代的には、平角導線20の幅は、3.3mmであり、凹部のQA、QBの幅は、2.7mmとしている。凹部QA、QBは、幅が狭くされているため、抵抗値が大きくなるが、本実施例では、抵抗値は、1%増加するだけであり、モータへの支障はない。
【0026】
次に、拡張工程を説明する。
図9に、基準ユニット11の製造工程のうち、拡張工程の第1図を示す。図10に、拡張工程の第2図を示す。図11に、図9の側面図を示す。
図9及び図11に示すように、上側同心円部G(5本の平角導線)を、一対のチャック爪33(33A、33B)が把持する。下側同心円部H(5本の平角導線)は、一対のガイド爪40(40A、40B)に固定される。スロット内導線部SA(5本の平角導線)は、一対のチャック爪32(32A、32B)に把持される。スロット内導線部SB(5本の平角導線)は、一対のチャック爪31(31A、31B)に把持される。
ここで、一対のチャック爪32(32A、32B)、及び一対のチャック爪31(31A、31B)は、中心軸34を中心に各別に回転可能に保持されている。ベース板36は、2本のガイド棒38の先端に固定されている。2本のガイド棒38は、固定された固定部39に摺動可能に保持されている。固定部39の両側には、一対のエアシリンダ37の本体が固設されている。また、ベース板36には、一対のエアシリンダ37のロッド先端が連結されており、エアシリンダ37の駆動により、ガイド棒38及びベース板36は、固定部39に対して摺動する。ベース板36には、一対のリンク機構35A、35Bが付設され、リンク機構35Aは、チャック爪32のベース板に接続され、リンク機構35Bは、チャック爪31のベース板に接続している。
【0027】
この構成により、図9に示すように、平角導線20を各々把持した状態で、エアシリンダ37を駆動する。これにより、ベース板36が摺動して、図10の位置に来ると、一対のチャック爪32(32A、32B)は、スロット内導線部SAを把持したまま、図10において、時計回りに回転し、スロット内導線部SAを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
同時に、一対のチャック爪31(31A、31B)は、スロット内導線部SBを把持したまま、図10において、反時計回りに回転し、スロット内導線部SBを、上側同心円部G及び下側同心円部Hに対して、反時計回りの所定の位置まで塑性変形させる。
次に、端子M及び端子Nを折り曲げて塑性変形させる。これにより、基準ユニット11が完成する。
なお、本実施例では、折り曲げ工程、凹部成形工程、拡張工程の順序で実施しているが、折り曲げ工程、拡張工程、凹部成形工程の順序で実施しても良い。この場合には、凹部QAと凹部QBとは、各別にプレス成形する場合もある。
【0028】
次に、製造された基準ユニットを複数重ね合わせる。
図12に、6個の基準ユニット11であるU相第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2を重ね合わせた状態を斜視図で示す。第1基準ユニットと第2基準ユニットのスロット内導線部が1つのティースの両側に挿入されるため、6個の基準ユニット11が1つの単位となる。尚、U相基準ユニットを構成する部位には「U」で始まる符合を付すものとし、V相およびW相基準ユニットを構成する部位についても同様に示す。
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBにおいては、5本の平角導線(EB1〜EB5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
【0029】
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EBに対して、軸心方向で下側(ステータコア13の方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EBは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EBの軸心方向の下側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EB、U2EB、V1EB、V2EB、W1EB、W2EBは、時計回りで、順次直前の傾斜部EBの軸心方向で下側に位置して重ね合わされている。
【0030】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAにおいては、5本の平角導線(EA1〜EA5)が、ステータコア13(ロータ)の径方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAは、U相の第1基準ユニットの傾斜部U1EAに対して、軸心方向で上側(ステータコア13と反対方向)に重ね合わされている。同様に、V相第1基準ユニットV1の傾斜部V1EAは、U相の第2基準ユニットU2の傾斜部U2EAの軸心方向の上側に重ね合わされている。
すなわち、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、傾斜部U1EA、U2EA、V1EA、V2EA、W1EA、W2EAは、時計回りで、順次直前の傾斜部EAの軸心方向で上側に位置して重ね合わされている。
【0031】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBにおいては、5本の平角導線(FB1〜FB5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FBは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FBに対して、径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図12に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FBは、時計回りで、順次直前の水平部FBの径方向で時計回りに外周の位置で重ね合わされている。
【0032】
基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAにおいては、5本の平角導線(FA1〜FA5)が、ステータコア13(ロータ)の軸心方向に重ね合わされている。
U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAは、U相の第1基準ユニットU1の水平部U1FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。V相の基準ユニットV1の水平部V1FAは、U相の第2基準ユニットU2の水平部U2FAに対して、径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
すなわち、図12に示すように、隣り合うスロット内に配置される基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2においては、水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、時計回りで、順次直前の水平部FAの径方向で時計回りに内周の位置で重ね合わされている。
【0033】
上側同心円部U1G、U2G、V1G、V2G、W1G、W2Gは、径方向に順次整列している。
下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2Hは、径方向に順次整列している。
一方、図12に示すように、ティースTの先端部の両側には、円周方向に突出して、鍔部Taが形成されている。ここで、コイル幅の狭い凹部QA、QBは、ティースTの鍔部Taに対向している。それ故、鍔部Taに対向して凹部QA、QBが通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。
【0034】
基準ユニット11を24個重ね合わせると、半円形状となる。これらを2組製造して、合体させることにより、48個の基準ユニット11を重ね合わせた円形状のコイル籠12が完成する。
基準ユニット11が、48個重ね合わされたコイル籠12の構成を、図13に斜視図で示す。コイル籠12の平面図(図13上から見た図)を図14に示す。コイル籠12の正面図を図15に示す。本実施の形態のモータのステータのステータコアは、48個のスロット、48個のティースを有している。
各基準ユニット11は、2個のスロット内導線部SA、SBを有しており、スロット内導線部SAとスロット内導線部SBとは、図4に示すように、径方向(図4の上下方向)で5本の平角導線の厚み分ずれて位置している。
【0035】
図14に示すように、U相の第1基準ユニットU1、U相の第2基準ユニットU2、V相の第1基準ユニットV1、V相の第2基準ユニットV2、W相の第1基準ユニットW1、W相の第2基準ユニットW2が順次重ね合わされている。続いて、U相の2つの基準ユニット、V相の2つの基準ユニット、W相の2つの基準ユニットが順次重ね合わされて、最後は、U相の第15基準ユニットU15、U相の第16基準ユニット、V相の第15基準ユニットV15、V相の第16基準ユニットV16、W相の第15基準ユニットW15、W相の第16基準ユニットW16で終わる。U、V、Wの3相で各16個の基準ユニット11を有するため、合計48個の基準ユニット11を有している。
1つのスロット内には、1組5本の平角導線が、2組(計10本)挿入されている。
【0036】
次に、コイル籠12をステータコア13に挿入する方法について説明する。図16に、コイル籠12の下側部をステータコア13に半分ほど挿入した状態を示す。図16では、コイル籠12の全体を記載すると、わかりにくくなるため、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2(図12に示すものと同じ。)のみを記載している。ここでは、コイル籠12の一部である6組の基準ユニットU1、U2、V1、V2、W1、W2の挿入作用について説明するが、コイル籠12全体もここでの説明と同じ挿入作用である。また、インシュレータの記載を省略しているが、コイル籠12を挿入する前に、ステータコア13の各スロット部Sにインシュレータを装着しておくと良い。
図16に示すように、下側同心円部U1H、U2H、V1H、V2H、W1H、W2H、水平部U1FB、U2FB、V1FB、V2FB、W1FB、W2FB、及び水平部U1FA、U2FA、V1FA、V2FA、W1FA、W2FAは、ステータコア13のティース13a先端の内周面13bよりも、ステータ13の中心線側に位置している。
【0037】
したがって、スロット内導線部U1SB、U2SB、V1SB、V2SB、W1SB、W2SB、及びスロット内導線部U1SA、U2SA、V1SA、V2SA、W1SA、W2SAを、図16の上側からステータ13の中心軸の軸心方向に下向きに、第1スロットS1から第12スロットS12に挿入するときに、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAがステータコア13と干渉することがないため、コイル籠12をステータコア13のスロットSに挿入することができる。
ここで、コイル幅の狭い凹部QA、QBが、ティースの鍔部Taに対向して通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。
ここで、例えば、第1スロットS1の外周側(奥側)に、U相の第1基準ユニットU1の5本のスロット内導線部U1SB(SB1〜SB5)が挿入される。もう一方のスロット内導線U1SA(SA1〜SA5)は、第7スロットS7の内周側(手前側)に挿入される。
【0038】
第1スロットS1の内周側には、図示しないU相の第16基準ユニットU16の5本のスロット内導線部U16SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第1スロットには、スロット内導線部U1SAとスロット内導線部U16SBの計10本の平角導線が挿入される。
同様に、第7スロットS7の外周側には、図示しないU相の第3基準ユニットU3の5本のスロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)が挿入される。これにより、第7スロットには、スロット内導線部U1SA(SA1〜SA5)と、スロット内導線部U3SB(SB1〜SB5)の計10本の平角導線が挿入される。
【0039】
図17に、コイル籠12がステータコア13に対して、所定の位置まで挿入された状態を示す。図18に、図17を、ステータコア13を上方向から軸心に沿って見た平面図を示す。図19に、図18の正面図を示す。
図18においては、端子Nは、端子Mの下側に位置しており、見えない。図18で、端子U1Nが見えているのは、U16Mを省略して記載しているからである。
図19に示すように、下側同心円部H、水平部FB、及び水平部FAの位置が、ステータコア13の端面から距離を設けてあるのは、ロータとの電磁気的な影響を回避するためである。
図17には、コイル籠12の一部のみを示しているが、図17の状態まで、コイル籠12が挿入されることにより、ステータコア13へのコイル籠12の組立が完了する。その後、スロットS内にスロット内導線部SA、SBが挿入されている状態における空間部に、伝熱性能に優れた樹脂をモールドする。また、端子M、NをU相、V相、W相毎に順次バスバーで接続する。これにより、ステータ10が完成する。
【0040】
次に、完成したステータ10にモータのロータ42を組み付ける方法を説明する。
図20に、ステータ10の中央断面図を示す。ステータコア13にコイル籠12が組み込まれている。この状態で、ステータ10の図20の上側では、ステータコア13のティース13aの内周面13bより内側には、コイル籠12は、存在しない。一方、ステータ10の図20の下側では、コイル籠12の折り曲げ部である下側同心円部H、水平部、及び水平部が、ステータコア13のティースの内周面より内側に位置している。
一方、モータのロータ42は、中心軸41の外周にロータ部43が形成されている。
ロータ42は、ステータ10の下側から挿入することはできないが、ステータの上側から軸心に沿って挿入することが可能である。ロータ42をステータ10に挿入した状態を図21に示す。
図21に示すように、ロータ42の中心軸41は、コイル籠12の下側同心円部Hの内周面で形成される中心孔から外に突出している。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施例のモータによれば、平角導線を用いた分布巻きコイルであるコイル籠12とステータコア13とを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータであって、コイル籠12の一端のコイルエンド部が、ステータコアのスロット内導線部SA、SBに対して、ロータ側に折り曲げられている折曲げ部JA、JBを有すること、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBが、ティース13aの内周面13bよりロータの軸心側に位置すること、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、を特徴とするので、一端のコイルエンド部側を先頭として、ステータコア13のスロットSに対して、軸心側からコイル籠12を挿入しようとするときに、一端のコイルエンド部である下側同心円部H、水平部FA、及び水平部FBは、ティース13aの内周面13bの内側を通過するため、コイル籠12を軸心方向からスロットS内に容易に挿入することができる。ここで、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過するため、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、挿入できる。また、挿入するときに、コイル籠12を弾性変形させることがないので、スプリングバックにより、コイル籠12の一部がスロットS内から飛び出すことがない。また、複数の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものを、重ね巻きした状態で複数本同時に折り曲げるため、製造工程を単純化でき、コストを低減することができる。
【0042】
また、一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、5本の平角導線をフラットワイズ方向に重ね巻きしたものであること、一端のコイルエンド部が、同心円状の半円(下側同心円部H)を形成していること、他端のコイルエンド部が、同心円状の半円(上側同心円部G)を形成していること、を特徴し、かつ、平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、ロータ42側に折り曲げる折り曲げ工程と、折り曲げられた折り曲げ部に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、分布巻きコイルを、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有すること特徴とするので、単純な折り曲げ作業のみで、コイル籠12の一端のコイルエンド部を折り曲げることができる。また、折り曲げ部にコイル幅の狭い凹部を形成できるため、コイル幅の狭い凹部が、ティースの鍔部に対向して通過でき、コイルの表面の絶縁層に傷を発生することなく、コイル籠をステータコアに挿入できる。
【0043】
また、一端のコイルエンド部の水平部FA、FBでは、隣り合うスロットSに配置される各5本の平角導線が、ロータの径方向に重ね合わされていること、他端のコイルエンド部の傾斜部EA、EBでは、隣り合うスロットSに配置される各5本の平角導線が、ロータの軸心方向に重ね合わされていること、を特徴とするので、コイルエンド部では、隣のスロットSに配置された導線との干渉を回避するために、軸心方向に変形させる必要がなく、余分な変形を必要としないため、製造工程を簡略化してコストダウンを図ることができる。
【0044】
また、平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータ10と、中心軸41を備えるロータ42とを有するモータのモータ製造方法であって、分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部SA、SBに対して、ロータ42側に折り曲げる折り曲げ工程と、分布巻きコイルを、ステータコア13のスロットSに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、を有し、折り曲げ工程の前に、平角導線20を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、重ね巻きされた平角導線を2つのスロット内導線部SA、SBを形成するように拡げる拡張工程を有すること、を特徴とするので、折り曲げ部を形成すると共に、2箇所のスロットS内に挿入されるスロット内導線部SA、SBを容易に成形することができる。
【0045】
なお、本発明のモータ、及びモータ製造方法は、上記実施例に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、スロットSが48個あるモータについて説明したが、スロットSの数は変更しても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 ステータ
11 基準ユニット
12 コイル籠
13 ステータコア
41 中心軸
42 ロータ
43 ロータ部
Un U相の第n基準ユニット
Vn V相の第n基準ユニット
Wn W相の第n基準ユニット
G 上側同心円部
H 下側同心円部
SA、SB スロット内導線部
EA、EB 傾斜部
FA、FB 水平部
JA、JB 折り曲げ部
QA、QB 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータにおいて、
前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線部に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、
前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、
前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線を重ね巻きしたものであること、
前記折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、
を特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載するモータにおいて、
前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
を特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するモータにおいて、
前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、
他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、
を特徴とするモータ。
【請求項4】
平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、
前記分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、前記ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、
前記折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、
前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、
を有すること特徴とするモータ製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載するモータ製造方法において、
前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、
前記折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、
を特徴とするモータ製造方法。
【請求項1】
平角導線を用いた分布巻きコイルとステータコアとを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータにおいて、
前記コイルの一端のコイルエンド部が、前記ステータコアのスロット内導線部に対して、前記ロータ側に折り曲げられていること、
前記一端のコイルエンド部が、前記ステータコアの内周面より前記ロータの軸心側に位置すること、
前記一端のコイルエンド部、及び他端のコイルエンド部が、複数の前記平角導線を重ね巻きしたものであること、
前記折り曲げられている部位に、コイル幅を狭くする凹部が形成されていること、
を特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載するモータにおいて、
前記一端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
前記他端のコイルエンド部が、同心円状の半円を形成していること、
を特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するモータにおいて、
前記一端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの径方向に重ね合わされていること、
他端のコイルエンド部では、隣り合うスロットに配置される複数の前記平角導線が、前記ロータの軸心方向に重ね合わされていること、
を特徴とするモータ。
【請求項4】
平角導線を用いた分布巻きコイルを備えるステータと、中心軸を備えるロータとを有するモータのモータ製造方法において、
前記分布巻きコイルの一端のコイルエンド部を、スロット内導線部に対して、前記ロータ側に折り曲げる折り曲げ工程と、
前記折り曲げられた部位に、コイル幅を狭くする凹部を形成する凹部形成工程と、
前記分布巻きコイルを、前記ステータのスロットに対して、軸心方向から挿入する挿入工程と、
を有すること特徴とするモータ製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載するモータ製造方法において、
前記折り曲げ工程の前に、前記平角導線を、フラットワイズ部を接触させながら重ね巻きする重ね巻き工程を有すること、
前記折り曲げ工程の直後または前記凹部形成工程の直後に、前記重ね巻きされた前記平角導線を2つのスロット内導線部を形成するように拡げる拡張工程を有すること、
を特徴とするモータ製造方法。
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図1】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図1】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−235573(P2012−235573A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101239(P2011−101239)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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