説明

モータの冷却通路構造

【課題】モータが収納されるモータハウジングの内壁面に冷媒流入口が設けられた環状の冷媒溝を形成し、複数の冷媒噴出口がモータ側に向けられるように形成されたリング状の閉塞板で該冷媒溝を塞ぐことによって、モータ冷却用の通路を形成し、前記リング状閉塞板を固定するボルトの本数を増やさずにモータハウジングに対するリング状閉塞板のシール性能を確保するモータの冷却通路構造を提供することを目的とする。
【解決手段】環状のオイル溝(環状溝)20は回転軸を中心とする円周上を波形に形成され、内側湾曲部20aは複数のボルト穴26の径方向内側に近接して形成され、外側湾曲部20bは隣接するボルト穴26間に臨むように形成され、さらにリングの状閉塞板22には、ボルト穴26に対応すべく円周上にボルト貫通孔27が形成されるとともに、オイル溝(環状溝)20の外側湾曲部20bに連通するオイル噴出孔(冷媒噴出口)28を円周方向に形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに冷媒を供給するようにしたモータの冷却通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータに冷却オイルを供給する構造として、回転軸が水平方向に配置されたロータの外周を囲む環状のステータが、複数のスロットを介して円周方向に配列された複数のコイルを備え、複数のコイルの軸線方向両端面に2枚のプレートを固定することで、ステータの内部にスロットを冷却オイル通路とする空間を区画した構造が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されるモータの冷却構造では、図4(a)、(b)に示すように前記空間の鉛直方向上部に冷却オイルを供給する供給口101aが第1プレート101の上部に設けられると共に、第2プレート102の円周方向に亘って複数の冷却オイル排出口102aが所定間隔で形成され、前記冷却オイル排出口102aの開口面積は鉛直方向下側のものほど小さく設定されている。
【0004】
そして、第1プレート101の冷却オイル供給口101aは、第1ハウジングに形成した冷却オイル供給通路にシール部材104を介して接続され、第1プレート101の内周部にはボルトを貫通するボルト孔101bが形成されている。
隣接するコイルの巻線間には、軸線方向に延びる空間を構成するスロットが形成されており、これらスロットの両端は第1、第2プレート101,102に達している。第2プレート102に形成された各オイル排出口102aは、各スロットの径方向中間に対向するように位置しており、かつ第1プレート101の冷却オイル供給口101aは、一つのオイル排出口102aに対向するように位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009―089513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるモータの冷却構造において、ステータ側にボルトで取り付けられる第1プレート101のオイル供給口101aとボルト孔101b、及び第2プレート102のオイル排出口102aとボルト孔102bは、それぞれステータの径方向に離間した配置となっている。
【0007】
これにより、前記冷却オイル供給口101a及び冷却オイル排出口102aの内面に作用する冷却オイルの内圧に耐えるボルトの面圧が不足することから、第1、第2プレート101,102のシール性が低下し冷却部(ステータ)以外への冷却オイルの流出が懸念される。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、モータが収納されるモータハウジングの内壁面に冷媒流入口が設けられた環状の冷媒溝を形成し、複数の冷媒噴出口がモータ側に向けられるように形成されたリング状の閉塞板で該冷媒溝を塞ぐことで、モータ冷却用の通路を形成するモータの冷却通路構造であって、リング状閉塞板を固定するボルトの本数を増やさずにシール性能を確保する冷却通路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、モータが収納されるモータハウジングの内壁面に冷媒流入口が設けられた環状の冷媒溝を形成し、複数の冷媒噴出口をモータ側に向けられるように形成されたリング状の閉塞板で該冷媒溝を塞ぐことでモータ冷却用の通路を形成するモータの冷却通路構造であって、
前記環状の冷媒溝は回転軸を中心とする円周上を波形に形成され、該波形の内側湾曲部はモータハウジングの内壁面に回転軸を中心とする円周上に所定間隔で設けられた複数のボルト穴の径方向内側に近接して形成され、外側湾曲部は隣接するボルト穴間に径方向外側を臨むように形成され、
前記リングの状閉塞板には、前記ボルト穴に対応すべく円周上にボルト貫通孔が形成されるとともに、冷媒がステータのコイル側に向かうように前記冷媒溝の前記外側湾曲部に連通するように複数の冷媒噴出孔が円周方向に形成されることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、環状の冷媒溝が、各ボルト穴の径方向内側に近接する内側湾曲部と、隣接するボルト穴間の径方向外側に臨む外側湾曲部とからなる波形に形成されているので、リング状閉塞板を取付ける複数のボルト穴を、波形環状の径方向の中央に近づけた配置にすることができる。これにより、前記冷媒溝に冷媒の内圧が作用してもボルトによる締め付け力がなるべく波形の中央に作用するようになるため、冷媒溝周辺への締め付け力が均一に作用し、ボルトの本数を増やさずにモータハウジングに対するリング状閉塞板のシール面圧を確保することができる。
【0011】
さらに、前記リング状閉塞板には、前記ボルト穴に対応すべく円周上にボルト貫通孔が形成されるとともに、冷媒がステータのコイル側に向かうように前記冷媒溝の前記外側湾曲部に連通するように複数の冷媒噴出孔が円周方向に形成されるので、複数のボルト孔の円周方向の配置と、複数の冷媒噴出孔の円周方向の配置とが、回転軸を中心とする円周方向においてほぼ同一円周上、または近接する円周上に配置されるようになるため、冷媒噴出孔とボルト孔とが径方向に離間した配置となることが防止されて、モータハウジングに対するリング状閉塞板の面圧不足による冷媒の流出が防止される。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記複数のボルト穴の周縁と前記冷媒溝に沿った両周縁部が前記モータハウジングの内壁面から隆起した隆起部に連続して平坦な座面を形成し、前記各ボルト穴に対応すべく円周上に形成されたリング状閉塞板のボルト孔から挿通したボルトを前記ボルト穴に締結して前記座面をリング状閉塞板によって密閉閉塞するとよい。
【0013】
かかる構成によれば、平坦な座面として切削加工される領域が縮減されるため加工時間が短縮され、加工コストを低減することができる。
更に、リング状閉塞板も平坦な円板状に形成されるので、切削加工が単純化され加工コストを抑えることができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記複数の冷媒噴出孔は小径の噴出孔であって、環状ステータの内周に配置された各スロットに対応するようにリング状閉塞板の円周上に所定間隔で設けられるとよい。
【0015】
かかる構成によれば、冷媒は小径の噴出孔から発熱部となる電磁コイルを収容した各スロットに向けて確実に吐出されるので、各電磁コイルの冷却効率を高めることができる。
また、リング状閉塞板に形成される複数の小径噴出孔は、プレス成形可能であるため、加工能率が高められ生産性を向上することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、リング状閉塞板を固定するボルトは、前記モータハウジングの内側面に形成された座面のボルト穴にモータハウジングの開口側からモータ組込み前の内部空間を通して締結されるとよい。
かかる構成によれば、モータ組立時にカバーを外したモータハウジングの開口側を上に立設した状態で、ステータ、電磁コイル、ロータから成るモータを組み込む前に前記開口部から内部空間を通してリング状閉塞板を隔壁内側面の座面に設けた各ボルト穴にボルトを締結して取着することができるので、作業性が向上し組立工数を大幅に削減することができる。
また、リング状閉塞板に冷媒による内圧が作用した場合は、ボルト頭部によりモータハウジングに対するリング状閉塞板の面圧が確保されるので、リング状閉塞板の取付け強度が増加しシール性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、環状の冷媒溝が、各ボルト穴の径方向内側に近接する内側湾曲部と隣接するボルト穴間より径方向外側に臨む外側湾曲部とから形成されているので、リング状閉塞板を取付ける複数のボルト穴を、波形環状の径方向の中央に近づけた配置にすることができる。これにより、前記冷媒溝に冷媒の内圧が作用してもボルトによる締め付け力がなるべく波形の中央に作用するようになるため、冷媒溝周辺への締め付け力が均一に作用し、ボルトの本数を増やさずにモータハウジングに対するリング状閉塞板のシール面圧を確保することができる。
【0018】
すなわち、ボルト孔の円周方向の配置と、リング状閉塞板に形成された複数の冷媒噴出孔の円周方向の配置とが、回転軸を中心とする円周方向においてほぼ同一円周上、または近接する円周上に配置されるため、冷媒噴出孔とボルト孔とが径方向に離間した配置となることが防止されて、モータハウジングに対するリング状閉塞板の面圧不足による冷媒の流出が防止される。
シール性が向上することから環状ステータの内周に配置された各スロットに向けて冷媒を冷媒噴出孔から確実に吐出することができ、ステータの冷却を確保できる。
【0019】
また、取付け座面は、複数のボルト穴の周縁と冷媒溝に沿った両周縁部のみがモータハウジングの内壁面から隆起した隆起部が鋳造成形されている。従って、隆起した最小領域のみが平坦に切削加工されることになり加工領域の縮減によって加工時間が短縮され、加工コストを低減することができる。前記リング状閉塞板も、単純な板状のリングとして形成されるので、プレス加工により成型できるため、加工コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却通路構造を示すモータハウジングの部分断面図である。
【図2】冷却通路の断面構造を示すものであって、(a)はリング状閉塞板のボルト締結部を示し、(b)はリング状閉塞板の冷媒噴出孔を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1のA−A要部断面図である。
【図4】従来の冷却通路構造を示すもので、(a)はオイル供給口を形成したプレートの正面図、(b)はオイル排出口を形成したプレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る冷却通路構造を示すモータハウジングの部分断面図、図2は冷却通路の断面構造を示すものであって、(a)はリング状閉塞板のボルト締結部を示し、(b)はリング状閉塞板の冷媒噴出孔を示す部分拡大断面図、図3は図1のA−A要部断面図である。
【0023】
本実施形態では、ハイブリッド電気自動車の駆動装置として用いられるモータユニットとして例示する。本実施形態では、ハイブリッド電気自動車の駆動装置として用いられるモータユニットに適用したが、この用途に限られるものではない。
図1において、1はハウジング本体、4はハイブリッド電気自動車の駆動装置として用いられるモータユニット2を収容するモータハウジング、5はクラッチハウジングである。6はモータハウジング4とクラッチハウジング5を区画する隔壁である。なお、この隔壁6は、図示しないクラッチを収容するクラッチハウジング5を構成するとともにモータユニット2を収容するモータハウジング4でもある。
【0024】
モータハウジング4の内部に収容されるモータユニット2は、図中左右方向に伸びる中心線上に配置されるロータシャフト7と、ロータシャフト7の外周に嵌合固定されるロータコア8a及びマグネット8bからなるモータロータ8と、該モータロータ8のマグネット8bと径方向に所定の隙間9を隔てて対向配置される複数の電磁コイル10を円周方向に配置したモータステータ12とから構成される。
【0025】
これらモータロータ8とモータステータ12からなるモータユニット2は、モータハウジング4内に収納されている。かかる構成からなるモータユニット2は、クラッチハウジング5とモータハウジング4を閉塞するモータカバー14の図中右側に設けたトランスミッション(図示せず)の間に配置されている。
前述した個々の電磁コイル10は、周囲が板材で仕切られたスロット11内に収容されており、円周上に均等に配置されている。前記ロータシャフトは、モータハウジング4とクラッチハウジング5の内部を左右に区画する隔壁6から軸方向右方に突出するボス16の内部に固定された一方側の軸受18と、モータカバー14から軸方向左方に突出するボスの内部に固定された他方側の軸受(図示せず)とにより回転可能に挿通支持されている。
【0026】
次に、本発明の冷却通路構造に付き、図1〜図3を参照して説明する。
本実施例では、モータを冷却する冷媒としてオイルを適用することとする。なお、本実施形態では、冷媒としてオイルを用いたが、オイルに限られるものではなく、冷却水や気体などを用いても良い。
冷却オイル通路24(冷却通路)は、前記隔壁6のモータユニット2が収容される内側面にあって、図3に示す通り、上部に冷却オイル供給口(冷媒流入口)25を設けた環状のオイル溝(冷媒溝)20と、このオイル溝(冷媒流入口)20を密閉閉塞するリング状閉塞板22とから構成されている。
【0027】
前記隔壁6の内側面には、回転軸(ロータシャフト)を中心とする円周上に複数のボルト穴26が所定間隔で形成されている。
前記オイル溝20は、ボルト穴26の径方向内側に近接して形成される内側湾曲部20aと、隣接するボルト穴26,26間に臨むように湾曲形成される外側湾曲部20bとが緩やかに湾曲した波形環状に形成されている。このように波形形状は、冷却オイルが抵抗無く流れるように形成されている。
【0028】
かかるオイル溝20と複数のボルト穴26は、前記隔壁6の内側面から隆起した隆起部にあって、前記隆起部を平面切削加工することで前記複数のボルト穴26の周縁とオイル溝20に沿った両周縁部が連続する平坦な座面34として形成される。
【0029】
リング状閉塞板22は、所定板厚の鋼板でリング状に形成されており、前記複数のボルト穴26に対向するように後述するボルト30を挿通する複数のボルト貫通孔27が円周上に形成され、さらに、そのボルト貫通孔27、27の周方向の間に位置するとともに、前記波形環状に形成されたオイル溝20の外側湾曲部20bに対応する円周上には複数のオイル噴出孔(冷媒噴出口)28が形成されている。
【0030】
そして、これらオイル噴出孔28は、前記オイル溝20の外側湾曲部20bに連通するとともに、モータユニット2内で最も発熱する電磁コイル10を収容した同一円周上の複数のスロット11に対向するよう形成されている。
上記のように構成されたリング状閉塞板22は、前記座面34にガスケット32を介して密接させた状態で、各ボルト貫通孔27より挿通した複数のボルト30を隔壁6のモータ側内側面に形成されたボルト穴26に締結することで固定され、オイル溝20を密閉閉塞することができる。
【0031】
従って、冷却オイル供給口25(図3参照)から供給された冷却オイルが環状のオイル溝20に満たされて前記リング状閉塞板22に内圧が作用しても、ボルト30による締結位置が環状のオイル溝20に最も近接した位置にあるので、ボルト30の本数を増やさずにモータハウジング4に対するリング状閉塞板22の面圧を確保することができる。
すなわち、各ボルト貫通孔27を挿通した複数のボルト30により、リング状閉塞板22が座面34に固定されると前記各ボルト30は、波形環状の径方向の中央に近づけた配置にすることができる。これにより、オイル溝20に冷却オイルの内圧が作用してもボルト30による締め付け力が波形の中央側に作用するようになるため、オイル溝20周辺部への締め付け力が均一に作用し、ボルト30の本数を増やさずにモータハウジング4に対するリング状閉塞板22のシール面圧を確保することができる。
【0032】
さらに、リング状閉塞板22には、ボルト穴26に対応すべく円周上にボルト貫通孔27が形成されるとともに、冷却オイルがモータステータ12の電磁コイル10側に向かうようにオイル溝20の外側湾曲部20bに連通するように複数のオイル噴出孔28が円周方向に形成されるので、複数のボルト貫通孔27の円周方向の配置と、複数のオイル噴出孔28の円周方向の配置とが、回転軸を中心とする円周方向においてほぼ同一円周上、または近接する円周上に配置されるようになるため、オイル噴出孔28とボルト貫通孔27とが径方向に離間した配置となることが防止されて、モータハウジング4に対するリング状閉塞板22の面圧不足による冷却オイルの流出が防止される。
【0033】
このシール面圧の確保により、環状オイル溝20のシール性が向上するので外部への漏れがなくなり、冷却の対象となる各スロット11やモータステータ12の電磁コイル10の中心に向けてオイル噴出孔28から冷却オイルを確実に吐出することができる。かかるオイル噴出孔28から吐出した冷却オイルは、各スロット11内を流下する過程で電磁コイル10を冷却しつつ排出口(図示せず)から排出される。
【0034】
以上述べた実施形態によれば、かかる座面34は、複数のボルト穴26周縁と環状のオイル溝20に沿った両周縁部とがアルミダイキャストで成形される隔壁6内側面の鋳肌面から隆起した隆起部が最小面積で鋳造成形されるので、平坦な座面として切削加工される領域が縮減されるため加工時間が短縮され、加工コストを低減することができる。
また、リング状閉塞板22も鋼板で平坦な円板状に形成されるので、加工が単純化され加工コストを抑えることができる。
【0035】
リング状閉塞板22に形成される複数の小径オイル噴出孔28は、プレス加工により形成できるので切削加工に比べて工具の折損等のリスクが少くなるため加工能率が高められて量産が可能となり、生産性を向上することができる。
【0036】
また、リング状閉塞板22の組立時において、モータカバー14を外したモータハウジング4の開口側を上に立設した状態で、ステータ12、電磁コイル10、モータロータ8を組み込む前に前記開口側から内部空間を通してリング状閉塞板22を隔壁6内側面の座面34にガスケット32を介して載置する。
【0037】
この状態で、ボルト貫通孔27の上面から挿通したボルト30を対応するボルト穴26に締結することで、リング状閉塞板22を座面34に容易に密接接合することができる。これにより、リング状閉塞板22をボルト30により締結する作業性が向上し組立工数を大幅に削減することができる。
また、リング状閉塞板22に冷却オイルによる内圧が作用した場合は、ボルト30の頭部による面圧が確保されるので、リング状閉塞板22の取付け強度が増加しシール性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
モータハウジングの内壁面に冷媒流入口が設けられた環状の冷媒溝を形成し、該環状の冷媒溝は回転軸を中心とする円周上を波形に形成され、該波形の内側湾曲部近傍にリング状閉塞板を固定するボルト穴を設け、外側湾曲部にモータのステータコイルに向かう噴孔を連通して、ボルトの本数を増やさずにモータハウジングに対するリング状閉塞板の面圧を確保する密閉構造として冷却通路のシール性が確保できるので、特に電気自動車またはハイブリッド電気自動車等の駆動装置として用いられるモータを冷却する冷却通路構造に適する。
【符号の説明】
【0039】
1 ハウジング本体
4 モータハウジング
5 クラッチハウジング
6 隔壁
10 電磁コイル
11 スロット
20 オイル溝(冷媒溝)
20a 内側湾曲部
20b 外側湾曲部
22 リング状閉塞板
25 冷却オイル供給口(冷媒流入口)
26 ボルト穴
27 ボルト貫通孔
28 オイル噴出孔(冷媒噴出口)
34 座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが収納されるモータハウジングの内壁面に該モータを冷却する冷媒の冷媒流入口が設けられた環状の冷媒溝を形成し、複数の冷媒噴出口がモータ側に向けられるように形成されたリング状の閉塞板で該冷媒溝を塞ぐことでモータ冷却用の通路を形成するモータの冷却通路構造であって、
前記環状の冷媒溝は回転軸を中心とする円周上を波形に形成され、波形の内側湾曲部はモータハウジングの内壁面に回転軸を中心とする円周上に所定間隔で設けられた複数のボルト穴の径方向内側に近接して形成され、外側湾曲部は隣接するボルト穴間に臨むように形成され、
前記リング状の閉塞板には、前記ボルト穴に対応すべく円周上にボルト貫通孔が形成されるとともに、冷媒がステータのコイル側に向かうように前記冷媒溝の前記外側湾曲部に連通するように複数の冷媒噴出孔が円周方向に形成されることを特徴とするモータの冷却通路構造。
【請求項2】
前記複数のボルト穴の周縁と前記冷媒溝に沿った両周縁部が前記モータハウジングの内壁面から隆起した隆起部に連続して平坦な座面を形成し、前記各ボルト穴に対応すべく円周上に形成されたリング状閉塞板のボルト孔から挿通したボルトを前記ボルト穴に締結して前記座面をリング状閉塞板によって密閉閉塞することを特徴とする請求項1に記載のモータの冷却通路構造。
【請求項3】
前記複数の冷媒噴出孔は小径の噴出孔であって、環状ステータの内周に配置された各スロットに対応するようにリング状閉塞板の円周上に所定間隔で設けられることを特徴とする請求項1に記載のモータの冷却通路構造。
【請求項4】
リング状閉塞板を固定するボルトは、前記モータハウジングの内側面に形成された座面のボルト穴にモータハウジングの開口側からモータ組込み前の内部空間を通して締結されることを特徴とする請求項1に記載のモータの冷却通路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138986(P2012−138986A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287950(P2010−287950)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】