説明

モータ装置

【課題】車両アースに流れるコモンモード電流の低減および放射ノイズの低減を図る。
【解決手段】放熱フィン50における回路基板26と接触する第1面の反対面となる第2面がモータ部30を収納する金属製の筐体11、12の内面と面接触するように放熱フィン50が筐体11、12の内面に固定され、回路基板26および放熱フィン50を筐体11、12内に収納し、モータ部30の駆動により発生するコモンモード電流が筐体11、12から放熱フィン50を介してグランド端子26bへと流れ、車両アースに流れるコモンモード電流が低減されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、モータ部を収容するモータハウジングと、このモータハウジングの周壁外周面に固着された樹脂製の外枠部と、この外枠部に固定された蓋板部とにより、インバータ回路部を収容するケースを構成し、このケース内にインバータ回路部を搭載したプリント基板を収容するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−324903号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装置は、モータ部を収容するモータハウジングの外側にインバータ回路部を収容するケースが形成され、インバータ回路部が十分に電磁的に遮蔽されていないため、インバータ回路部からの放射ノイズが放出され、周辺機器に悪影響を与えてしまうという問題がある。
【0005】
また、車両に搭載されるモータ装置は、図7に示すように、電源の負極端子が車両アースに接続され、電源とモータ装置との間はワイヤーハーネスを介して接続されるようになっている。このような装置では、モータMを駆動する際にモータMと車両アースとの間に浮遊容量Cが発生し、この浮遊容量Cにより、車両アースにコモンモード電流が流れる。
【0006】
また、車両に搭載されるモータ装置では、PWM信号を用いてモータ部を制御するPWM制御が広く行われており、このようなモータ装置では、スイッチング素子の発熱を抑制するため、PWM信号の周波数の高周波化が図られている。
【0007】
したがって、車両に搭載されるモータ装置において、周波数の高いPWM信号でPWM制御される場合、車両アースを介して電源の負極端子へ流れるコモンモード電流が増大してしまう。このように、コモンモード電流が増大すると、周辺機器などに悪影響を及ぼすことになるといった問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みたもので、車両アースに流れるコモンモード電流の低減および放射ノイズの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両に搭載されるモータ装置であって、モータ部(30)と、モータ部(30)をPWM制御するための回路を搭載した回路基板(26)と、を備え、回路基板(26)は、電源(80)の負極端子とともに車両アースに接続されるグランド端子(26b)と電源(80)の正極端子に接続される電源端子(26a)とを有し、回路基板(26)の一面には、当該回路基板(26)の一面と面接触するように放熱フィンが(50)設けられ、放熱フィン(50)における回路基板(26)と接触する第1面の反対面となる第2面がモータ部(30)を収納する金属製の筐体(11、12)の内面と面接触するように放熱フィン(50)が筐体(11、12)の内面に固着され、回路基板(26)および放熱フィン(50)が電磁的に遮蔽されるように筐体(11、12)内に収納されており、モータ部(30)の駆動により発生するコモンモード電流が筐体(11、12)から放熱フィン(50)を介してグランド端子(26b)へと流れ、車両アースに流れるコモンモード電流が低減されるようになっていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、放熱フィン(50)における回路基板(26)と接触する第1面の反対面となる第2面がモータ部(30)を収納する金属製の筐体(11、12)の内面と面接触するように放熱フィン(50)が筐体(11、12)の内面に固着され、回路基板(26)および放熱フィン(50)が電磁的に遮蔽されるように筐体(11、12)内に収納されており、モータ部(30)の駆動により発生するコモンモード電流が筐体(11、12)から放熱フィン(50)を介してグランド端子(26b)へと流れ、車両アースに流れるコモンモード電流が低減されるようになっているので、車両アースに流れるコモンモード電流の低減および放射ノイズの低減を図ることができる。
【0011】
なお、放熱フィン(50)は、請求項2に記載の発明のように、筐体(11、12)の内面に導電性接着剤(40)を用いて接着されるように構成してもよく、請求項3に記載の発明のように、筐体(11、12)の内面に複数のネジによるネジ締め固定されるように構成してもよい。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るモータ装置の外観図である。
【図2】図1(a)中のA−A線に沿った断面構成を示す図である。
【図3】図2中のC部拡大図である。
【図4】図1(a)中のB−B線に沿った断面構成を示す図である。
【図5】モータ装置の回路構成を示す図である。
【図6】浮遊容量およびコモンモード電流の経路について説明するための図である。
【図7】課題について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るモータ装置の外観図を図1に示す。(a)は、本モータ装置を一方向から見た図、(b)は、(a)中のS1方向から見た図、(c)は、(a)中のS2方向から見た図である。本モータ装置は、車両に搭載されるラジエータに用いられる送風ファンを回転駆動する直流モータとして構成されている。
【0015】
本モータ装置は、開口部を有する円筒形状の第1ケース11と、第1ケース11の開口部を塞ぐ第2ケース12から成る筐体を有している。第1ケース11および第2ケース12は、金属製部材を用いて構成されている。第1ケース11および第2ケース12を組み付けることにより、筐体内部で発生する放射ノイズが電磁的に遮蔽される構成となっている。
【0016】
第1ケース11には、取り付け用のねじ穴が形成された3つの突起部11aが形成されている。これらの突起部11aに形成されたねじ穴を利用してモータ装置がラジエータシュラウドにねじ固定されるようになっている。
【0017】
第1ケース11の側面には、樹脂製のコネクタハウジング28が配置されている。このコネクタハウジング28を介して、後述する電源80およびECU70との配線が接続されるようになっている。
【0018】
図2に、図1(a)中のA−A線に沿った断面構成を示す。第1ケース11および第2ケース12から成る筐体の内部には、電機子コイル33、マグネット34、回転子32、ブラシ35、整流子36、回転軸37から成るモータ部と、このモータ部をPWM制御するコントローラ20とが設けられている。なお、電機子コイル33は巻き線として構成されており、図2中に示された電機子コイル33の断面構成は実際のものと異なる。コントローラ20には、コネクタハウジング28に収納される複数のターミナル27が接続されている。
【0019】
図3に、図2中のC部拡大図を示す。コントローラ20は、モータ部をPWM制御するための回路を搭載した回路基板26を備えている。モータ部をPWM制御するための各回路は、回路基板26の表面に搭載されており、これらの回路はモールド樹脂により封止されている。
【0020】
また、回路基板26の裏面には、この面と面接触するように金属製の放熱フィン50が設けられている。
【0021】
また、放熱フィン50における回路基板26と接触する第1面の反対面となる第2面は、導電性接着剤40を介してモータ部を収納する第2ケース12の内面と面接触するように固定されている。
【0022】
図4に、図1(a)中のB−B線に沿った断面構成を示す。図に示すように、第1ケース11の内部には、ブラシ35、バネ部材35a、導電性接続部材35b、コントローラ20が設けられている。
【0023】
各ブラシ35は、それぞれ導電性接続部材35を介してコントローラ20の内部端子と接続されている。
【0024】
回転軸36は、第1ケース11と第2ケース12にそれぞれ形成された軸受けにより、回転自在に支持されている。また、整流子36は、回転軸36に固定されており回転軸36とともに回転する。
【0025】
また、各ブラシ35は、それぞれバネ35aにより整流子36側に付勢されており、各ブラシ35は、それぞれ整流子36に接触した状態で、後述する電源80の出力電圧を整流子56に与える。
【0026】
図5に、本モータ装置の回路構成を示す。モータ装置は、コントローラ20およびモータ部30を備えている。なお、モータ部30のインダクタンス31aおよび巻線抵抗31bは、図2に示した電機子コイル33の等価回路として示してある。また、図5中に示された放熱フィン50は、僅かな抵抗値を有する導電体としてみなすことができる。
【0027】
コントローラ20は、コンデンサ、21a、21b、コイル22、制御IC23、ダイオード24、MOSトランジスタ25を備えている。これらの回路部品は、図3に示した回路基板26に搭載されている。
【0028】
また、回路基板26には、電源80の正極端子に接続される電源端子26a、電源80の負極端子とともに車両アースに接続されるグランド端子26b、ECU70から制御信号を入力される制御信号入力端子26cが搭載されている。
【0029】
コンデンサ、21a、21bおよびコイル22から成る電源フィルタ部は、PWM制御用のMOSトランジスタ25がスイッチング駆動されることで発生するスイッチングノイズを除去するために設けられている。
【0030】
制御IC23には、制御信号入力端子26cを介してECU70よりモータ部30をPWM制御するための制御信号が入力されるようになっている。制御IC23は、この制御信号に応じたパルス幅変調したPWM信号を生成し、生成したPWM信号を出力する。
【0031】
MOSトランジスタ25のゲート端子には、制御IC23からのPWM信号が入力されるようになっている。MOSトランジスタ25は、このPWM信号に応じてオンまたはオフする。
【0032】
上記した構成において、MOSトランジスタ25のゲートにPWM信号が入力されると、このMOSトランジスタ25と直列に接続されたモータ部30の電機子コイル33に電流が流れ、電機子コイル33には、当該電流により電機子コイル33から発生する磁界とマグネット34から発生する磁界とに基づく回転トルクが発生し、回転軸37が回転する。また、一定期間以上、MOSトランジスタ25がオフすると、回転トルクはなくなり、回転軸37は回転しなくなる。なお、電機子コイル33に生じる回転トルクの大きさはPWM信号のデューティ比に応じて変化する。
【0033】
上記した構成によれば、放熱フィン50における回路基板26と接触する第1面の反対面となる第2面がモータ部30を収納する金属製の筐体の内面と面接触するように放熱フィン50が第2ケース12の内面に固着され、回路基板26および放熱フィン50が電磁的に遮蔽されるように筐体11、12内に収納されているので、放射ノイズの低減を図ることができる。
【0034】
また、図6に示すように、モータ部30と筐体11、12との間に浮遊容量C1が発生し、この浮遊容量C1により、モータ部30と車両アースとの間に発生する浮遊容量C2の大きさが小さくなる。そして、図6中の矢印に示す経路でコモンモード電流が流れる。すなわち、モータ部30の駆動により発生するコモンモード電流が筐体1、12から放熱フィン50を介してグランド端子26bへと流れ、車両アースに流れるコモンモード電流が低減される。このように、車両アースに流れるコモンモード電流の低減および放射ノイズの低減を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0036】
例えば、上記実施形態では、樹脂製のコネクタハウジング28を備えた構成を示したが、金属製のコネクタを用いるようにして、更に、放射ノイズの放出を抑制するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、導電性接着剤40を用いて放熱フィン50を筐体11、12の内面に接着したが、例えば、複数のネジによるネジ締め固定により放熱フィン50を筐体11、12の内面に固定するようにしてもよい。また、導電性接着剤40による接着と複数のネジによるネジ締め固定の両方で放熱フィン50を筐体11、12の内面に固定するようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、本モータ装置を車両に搭載されるラジエータに用いられる送風ファンを回転駆動するものとして構成した例を示したが、このような用途に限定されるものではなく、車両に搭載される各種モータ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
11 第1ケース
12 第2ケース
20 コントローラ
30 モータ部
40 導電性接着剤
50 放熱フィン
70 ECU
80 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるモータ装置であって、
モータ部(30)と、
前記モータ部(30)をPWM制御するための回路を搭載した回路基板(26)と、を備え、
前記回路基板(26)は、電源(80)の負極端子とともに車両アースに接続されるグランド端子(26b)と前記電源(80)の正極端子に接続される電源端子(26a)とを有し、
前記回路基板(26)の一面には、当該回路基板(26)の一面と面接触するように放熱フィンが(50)設けられ、
前記放熱フィン(50)における前記回路基板(26)と接触する第1面の反対面となる第2面が前記モータ部(30)を収納する金属製の筐体(11、12)の内面と面接触するように前記放熱フィン(50)が前記筐体(11、12)の内面に固着され、前記回路基板(26)および前記放熱フィン(50)が電磁的に遮蔽されるように前記筐体(11、12)内に収納されており、
前記モータ部(30)の駆動により発生するコモンモード電流が前記筐体(11、12)から前記放熱フィン(50)を介して前記グランド端子(26b)へと流れ、前記車両アースに流れるコモンモード電流が低減されるようになっていることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記放熱フィン(50)は、前記筐体(11、12)の内面に導電性接着剤(40)を用いて接着されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記放熱フィン(50)は、前記筐体(11、12)の内面に複数のネジによるネジ締め固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate