説明

モールドモーター

【課題】ベアリングに電食が発生しにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターを提供すること。
【解決手段】出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーローター型のモールドモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
インナーローター型のモールドモーターでは、ローターは、モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステーターの内径側に配置され、ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とがベアリングで支持されて回転する。ベアリングは、ステーターの外郭の出力側と反出力側の両側に配置されたブラケットに形成されたベアリングハウスに収められる。
【0003】
ここで、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じると、ベアリングに電流が流れて、ベアリングに電食が生じると、モーターの振動や騒音が発生する。この電食防止対策としては、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間を、モールドの外部である側面に貼り付けた導電性テープによって導通したモールドモーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20348号公報(4頁、段落[0019]、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性テープがモールドの外部に貼り付けられているため、モールドモーターの組み立て時、製品への組み込み時、輸送時、メンテナンス時、経時変化等で、導電性テープが剥がれたり、切れたりして、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断される恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、ベアリングに電食が発生しにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステーターと、前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持する導電性のベアリングと、前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、内周に形成された凸部を備え出力側または反出力側のうち少なくともどちらか一方の前記ベアリングハウスの外周に圧入されたリング状端部を有し出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導通板と、からなることを特徴とするモールドモーターである。
【0008】
この構成によれば、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの導通が、弾性を有する導通板によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間の導通が遮断されにくい。したがって、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に電位差が生じにくいため、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ないモールドモーターが得られる。
また、ベアリングハウスをリング状端部へ圧入する際、圧入されるリング状端部のリング内周に形成された凸部がベアリングハウスの圧入方向へ変形し、圧入後に反対方向に戻ろうとする復元力によってベアリングハウス側面とリング内周の凸部とが接触する方向に力が加わり、ベアリングハウスと導通板との導通が確実に得られる。
さらに、凸部が撓むことによって、リング内周からベアリングハウス側面に加わる応力を緩和でき、ベアリングハウスの変形が抑えられる。したがって、ベアリングハウス内のベアリングの変形も抑えられ、ベアリングの転動体と内輪および外輪との間隔が適正に確保され、騒音や振動の少ないモールドモーターが得られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記外郭の反出力側端面と前記外郭の側面には、前記導通板が収容される溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモールドモーターである。
【0010】
この構成によれば、溝部に導通板が収容されることで、外郭端面と側面に導通板が盛り上がることがなくなり、モールドモーターの取り扱い時に導通板が邪魔になるおそれがない。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記凸部が、前記ベアリングハウスが前記リング状端部に挿入される方向へ反っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモールドモーターである。
【0012】
この構成によれば、リング状端部のリング内周に形成された凸部が、ベアリングハウスの挿入方向へ反っているので、圧入時により撓みやすく、ベアリングハウスに加わる応力がより緩和され、ベアリングハウスの変形がより抑えられる。したがって、ベアリングハウス内のベアリングの変形もより抑えられ、ベアリングの転動体と内輪および外輪との間隔がより適正に確保され、騒音や振動のより少ないモールドモーターが得られる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記凸部は3か所以上に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0014】
この構成によれば、リング状端部は、リング内周に形成された3か所以上の凸部と接触しながら反出力側のベアリングハウスに圧入されるので、リング内とベアリングハウスとの中心を一致させつつ圧入でき、リング内周とベアリングハウスの接触を確実にできる。また、1か所に力が加わることが少なく、反出力側のベアリングハウスに加わる応力を均等に分散でき、反出力側のベアリングハウスの変形をより確実に抑えることができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記導通板は、前記リング状端部のリング外周の一部から延びる板状の導通帯を備え、少なくとも前記凸部の一つは、前記導通帯が引き出された方向とは反対方向に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0016】
この構成によれば、リング状端部を反出力側のベアリングハウスに圧入する際に、導通帯の接合端部が、外郭側面と当接し、導通帯が折り曲げ部の曲げ角度θが広がる方向に変形する。このとき、導通帯には、元に戻ろうとする復元力が働き、この復元力により、リング状端部は、導通帯が引き出された方向に引っ張られる。これにより、導通帯が引き出された方向とは反対方向のリング状端部内周面とベアリングハウス側面との間に応力が加わる。ここで、少なくとも凸部の一つは、導通帯が引き出された方向とは反対方向に配置されているので、導通帯が引き出された方向とは反対方向のリング状端部に加わる応力を、凸部によって受けることができ、反出力側のベアリングハウスの変形を抑えることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記凸部の先端面が、前記ベアリングハウス側面に沿った形状に加工されているとともに、角部を面取り形状とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0018】
この構成によれば、凸部の先端面が、前記ベアリングハウス側面に沿った形状に加工されているので、リング状端部をベアリングハウスに圧入する際に、鋭利なエッジでベアリングハウスを傷つけにくい。したがって、振動等によってベアリングハウスが傷をきっかけとして割れにくく、ベアリングの位置ずれが少なくなり、出力回転軸のずれによる騒音や振動の少ないモールドモーターが得られる。
【0019】
請求項7に係る発明は、前記凸部の寸法は、前記凸部の基部のリング周方向の長さL1が、前記凸部の径方向の長さL2より長いことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0020】
この構成によれば、凸部の基部のリング周方向の長さL1が、凸部の径方向の長さL2より長いので、凸部にある程度の変形のしにくさ、すなわち強度が発生する。したがって、反出力側のベアリングハウスに導通板を強固に連結でき、ベアリングハウスと導通板との導通が確実に得られる。また、反出力側のベアリングハウスの中心とリング状端部の中心との位置ずれを生じにくくできる。
【0021】
請求項8に係る発明は、前記リング状端部が圧入される前記ベアリングハウスは、底面と側面とを備える有底円筒状に形成され、前記底面と前記側面とをつなぐ角部の形状は、所定の曲率で形成されたR形状であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のモールドモーターである。
【0022】
この構成によれば、リング状端部をベアリングハウスに圧入する際に、凸部が、ベアリングハウスの底面と側面とをつなぐ所定の曲率で形成されたR形状の角部に沿って徐々に変形するので、急激に大きな力を加えることなく圧入が行え、ベアリングハウスの変形がより抑えられる。したがって、圧入が容易に行え、ベアリングハウス内のベアリングの変形もより抑えられ、ベアリングの転動体と内輪および外輪との間隔がより適正に確保され、騒音や振動のより少ないモールドモーターが得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ベアリングに電食が生じにくく、騒音や振動の少ない、モールドモーターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るモールドモーターの概略斜視図。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図。
【図2】モールドモーターの概略分解斜視図。
【図3】モールドモーターの図1(a)におけるA−A概略断面図。
【図4】(a)は導通板の平面図、(b)は(a)におけるB−B断面図。
【図5】導通板の凸部の拡大図。
【図6】変形例における導通板の凸部の拡大図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係るモールドモーター100の概略斜視図である。(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図である。図2は、モールドモーター100の概略分解斜視図、図3はモールドモーター100の図1(a)におけるA−A概略断面図である。
図1、図2および図3において、モールドモーター100は、ステーターコア10と、モールド樹脂20と、ローター30と、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42と、出力側のブラケット51および反出力側のブラケット52と、導通板60とを備えている。
【0027】
ステーターコア10は、鋼板を積層して構成され、円環状のヨーク部と、ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部11とを備えている。このステーターコア10にプレモールドを施すことによってインシュレーターを形成し、このインシュレーターを介してティース部11に巻線12が巻回されている。巻線12が巻回されたステーターコア10を、内周面を除いてモールド樹脂20でモールド成形して外郭を形成する。この外郭は、円筒状であり、また反出力側面には、金属製のブラケット52が一体に埋設されている。この反出力側のブラケット52は、ベアリング42が収められるベアリングハウス520が外郭から露出した状態となっている。
【0028】
ローター30は、出力回転軸31と複数の永久磁石32とを備えている。永久磁石32は、等間隔で、かつ、隣接同士がN、S交互に逆磁極となるようにして出力回転軸31の周りに配置され、出力回転軸31と一体化されている。永久磁石32は、樹脂材にフェライト磁性体を混入させて成形後、着磁してフェライトボンド磁石として形成することができる。ローター30は、ステーターコア10の内周より内側に、所定の空隙(ギャップ)をもって、対向して収められている。
なお、本発明のローターはこれらに限られず、適宜変更可能である。例えば、フェライト磁石の代わりに希土類磁石を用いても良い。また、ボンド磁石の代わりに焼結磁石を用いても良い。
【0029】
出力回転軸31は、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に通されて、回転可能に軸支されている。出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42は、例えば、ボールベアリングを用いることができ、実施形態では、転動体としてのボール400と内輪401と外輪402とを備えている。
【0030】
図1、図2および図3において、出力側のベアリング41は、出力側の金属製のブラケット51に形成された出力側のベアリングハウス510に収められている。出力側のブラケット51は、外郭の出力側端面に嵌合している。
【0031】
図1において、反出力側のベアリングハウス520には、導通板60の一端が圧入され、他端が出力側のブラケット51に接合されている。以下に詳しく導通板60について説明する。
図2および図4(a)に導通板60の平面図を、図4(b)に導通板60の図4(a)におけるB−B断面図を示した。また、図5には、導通板60の凸部64の拡大図を示した。
図4(a)において、導通板60は、導通性を有する金属板からなり、リング状端部61と、リング状端部61のリング外周610の一部から延びる板状の導通帯62とを備えている。図1、図3および図4(b)に示すように、導通帯62は、途中で折り曲げられ、断面図において略L字型の形状を有している。具体的には、外郭の反出力側端面と外郭の側面に沿うように折り曲げられている。外郭の反出力側端面と外郭の側面には、導通板60が収容される溝部21が設けられている。また、導通帯62のリング状端部61とは反対側の端部には接合端部63が設けられている。導通板60の厚みは、例えば、0.4mm程度とすることができる。なお、導電板60は、金属板に限られず、導電性を有する板状の部材であれば良い。
【0032】
図1および図3において、反出力側のベアリングハウス520には、リング状端部61が圧入されている。
ベアリングハウス520は、例えばプレスによって有底円筒状に形成されている。ベアリングハウス520の内側にはベアリング42が収容され、外側には、リング状端部61が圧入される。ベアリングハウス520の底面と側面とをつなぐ角部521は、所定の曲率で形成されたR形状となっている。
一方、接合端部63は、外郭側面と出力側のブラケット51とに挟み込まれて、出力側のブラケット51に接合されている。
【0033】
図1、図2、図3および図4において、リング状端部61のリング内周611には、凸部64が等間隔に10か所に形成されている。そのうちの1か所の凸部6401は、導通帯62が引き出された方向とは反対方向に配置されている。
【0034】
図5に、導通板60の凸部64の拡大図を示した。図には、反出力側のベアリングハウス520のリング状端部61への挿入方向を白抜き矢印で示した。
図5において、凸部64は、略矩形形状で、反出力側のベアリングハウス520の挿入方向に向かって、反るように形成されている。
凸部64の先端面641は角部642が、面取りされている。また、凸部64の先端面641は、反出力側のベアリングハウス520の側面に沿った円弧状に形成されている。また凸部64の先端部分のエッジは、変形例として図6に示すように曲線状に加工されていてもよい。
さらに、凸部64の寸法は、凸部64の基部640のリング状端部61の周方向の長さL1が、径方向の長さL2より長いのが好ましい。
【0035】
このように構成されたモールドモーター100は、図示しない位置検出センサにより検出されるローター30の回転位置に応じて、電流を巻線12に流し、ステーターコア10に回転磁界を発生させることにより、ローター30を出力回転軸31と共に回転させることができる。
【0036】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との導通が、弾性を有する導通板60によってとられているので、外力に対して切れたりしにくく、経時変化も少なく、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間の導通を遮断されにくくできる。したがって、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52との間に電位差が生じにくくできるため、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に電食を生じにくくでき、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
また、ベアリングハウス520をリング状端部61へ圧入する際、圧入されるリング状端部61のリング内周611に形成された凸部64がベアリングハウス520の圧入方向へ変形し、圧入後に反対方向に戻ろうとする復元力によってベアリングハウス520側面とリング内周611の凸部64とが接触する方向に力が加わり、ベアリングハウス520と導通板60との導通を確実に得ることができる。
さらに、凸部64が撓むことによって、リング内周611からベアリングハウス520側面に加わる応力を緩和でき、ベアリングハウス520の変形を抑えることができる。したがって、ベアリングハウス520内のベアリング42の変形も抑えることができ、反出力側のベアリングハウス520内のベアリング42の変形もより抑えることができ、反出力側のベアリング42と出力側のベアリング41の中心を出力回転軸31方向で一致させることができ、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
【0037】
(2)溝部21に導通板60が収容されることで、外郭端面と側面に導通板60が盛り上がることがなくなり、モーターの取り扱い時に導通板60が邪魔になるおそれがない。
【0038】
(3)リング状端部61のリング内周611に形成された凸部64が、反出力側のベアリングハウス520の挿入方向へ反っているので、圧入時により撓みやすくでき、反出力側のベアリングハウス520に加わる応力をより緩和でき、反出力側のベアリングハウス520の変形をより抑えることができる。したがって、反出力側のベアリングハウス520内のベアリング42の変形もより抑えることができ、反出力側のベアリング42と出力側のベアリング41の中心を出力回転軸31方向で一致させることができ、騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
【0039】
(4)リング状端部61は、リング内周611に形成された3か所以上の凸部64と接触しながら反出力側のベアリングハウス520に圧入されるので、リング内611とベアリングハウス520との中心を一致させつつ圧入でき、リング内周611とベアリングハウス520の接触を確実にできる。また、1か所に力が加わることが少なく、反出力側のベアリングハウス520に加わる応力を均等に分散でき、反出力側のベアリングハウス520の変形をより抑えることができる。
【0040】
(5)リング状端部61を反出力側のベアリングハウス520に圧入する際に、導通帯62の接合端部63が、外郭側面と当接し、導通帯62が折り曲げ部621の曲げ角度θが広がる方向に変形する。このとき、導通帯62には、元に戻ろうとする復元力が働き、この復元力により、リング状端部61は、導通帯62が引き出された方向に引っ張られる。これにより、導通帯62が引き出された方向とは反対方向のリング状端部61内周面とベアリングハウス側面との間に応力が加わる。ここで、少なくとも凸部64の一つの凸部6401は、導通帯62が引き出された方向とは反対方向に配置されているので、導通帯62が引き出された方向とは反対方向のリング状端部61に加わる応力を、凸部64によって受けることができ、反出力側のベアリングハウス520の変形をより抑えることができる。このとき、凸部64の先端面がベアリングハウス側面形状に沿って円弧状に形成されると、応力を分散することができてより好ましい。したがって、反出力側のベアリングハウス520内のベアリング42の変形もより抑えることができる。
【0041】
(6)凸部64の先端面641がベアリングハウス側面に沿って円弧状に形成されると共に、角部642が面取り形状とされるので、リング状端部61を反出力側のベアリングハウス520に圧入する際に、鋭利なエッジで反出力側のベアリングハウス520を傷つけにくくできる。したがって、反出力側のベアリングハウス520を、振動等によって傷をきっかけとして割れにくくでき、ベアリング42の位置ずれを少なくでき、出力回転軸31のずれによる騒音や振動の少ないモールドモーター100を得ることができる。
【0042】
(7)凸部64の基部640のリング周方向の長さL1が、凸部64の径方向の長さL2より長いので、凸部64にある程度の変形のしにくさ、すなわち強度が発生する。したがって、反出力側のベアリングハウス520に導通板60を強固に連結でき、ベアリングハウスと導通板との導通が確実に得られる。また、反出力側のベアリングハウス520の中心とリング状端部61の中心との位置ずれを生じにくくできる。
【0043】
(8)リング状端部61を反出力側のベアリングハウス520に圧入する際に、凸部64が、反出力側のベアリングハウス520の底面と側面とをつなぐ所定の曲率で形成されたR形状の角部521に沿って徐々に変形するので、急激に大きな力を加えることなく圧入を行うことができ、反出力側のベアリングハウス520の変形をより抑えることができる。したがって、圧入が容易に行え、反出力側のベアリングハウス520内のベアリング42の変形もより抑えることができる。
【0044】
なお、実施形態でのモールドモーター100は、例えば、家庭用ルームエアコンで送風ファンを駆動するモーターとして使用することができる。室内機での使用では出力回転軸31にクロスフローファンが取り付けられ、室外機での使用では出力回転軸31にプロペラファンが取り付けられる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0046】
例えば、リング状端部61を圧入するのは、出力側のベアリングハウス510であってもよいし、両端にリング状端部61が形成された導通板を用いて、出力側のベアリングハウス510および反出力側のベアリングハウス520の両方に圧入して導通してもよい。
【0047】
また、出力側のベアリング41と反出力側のベアリング42とは、異なる大きさ、形状であっても導電性を有する限り前述の効果を達成できる。
【符号の説明】
【0048】
10…ステーターコア、11…ティース、12…巻線、20…モールド、21…溝部、30…ローター、31…出力回転軸、32…永久磁石、41…出力側のベアリング、42…反出力側のベアリング、51…出力側のブラケット、52…反出力側のブラケット、60…導通板、61…リング状端部、62…導通帯、63…接合端部、64…凸部、100…モールドモーター、401…内輪、402…外輪、510…出力側のベアリングハウス、520…反出力側のベアリングハウス、521…圧入側の外周、610…リング外周、611…リング内周、640…基部、641…先端面、642…角部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステーターと、
前記ステーターの内径側に回転自在に配置されたローターと、
前記ローターの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持する導電性のベアリングと、
前記ベアリングを収めるベアリングハウスが形成され前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、
内周に形成された凸部を備え出力側または反出力側のうち少なくともどちらか一方の前記ベアリングハウスの外周に圧入されたリング状端部を有し出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通する導通板と、からなる
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモールドモーターにおいて、
前記外郭の反出力側端面と前記外郭の側面には、前記導通板が収容される溝部が設けられている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモールドモーターにおいて、
前記凸部が、前記ベアリングハウスが前記リング状端部に挿入される方向へ反っている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記凸部は3か所以上に形成されている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記導通板は、前記リング状端部のリング外周の一部から延びる板状の導通帯を備え、
少なくとも前記凸部の一つは、前記導通帯が引き出された方向とは反対方向に配置されている
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記凸部の先端面が、前記ベアリングハウス側面に沿った形状に加工されているとともに、角部を面取り形状とする
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記凸部の寸法は、前記凸部の基部のリング周方向の長さL1が、前記凸部の径方向の長さL2より長い
ことを特徴とするモールドモーター。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のモールドモーターにおいて、
前記リング状端部が圧入される前記ベアリングハウスは、底面と側面とを備える有底円筒状に形成され、前記底面と前記側面とをつなぐ角部の形状は、所定の曲率で形成されたR形状である
ことを特徴とするモールドモーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate