ユニバーサルジョイントカバー、及びそのユニバーサルジョイントカバーを用いた乗用型草刈機
【課題】不測の脱落が生じないように確実に固定し得るとともに、工具を用いての着脱操作を簡便に行い易いユニバーサルジョイントカバーを得る。
【解決手段】第1カバー体51の端部が第2カバー体52の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部50を備え、第1カバー体51には、その第1カバー体51を位置固定する固定部を備え、第1カバー体52は、固定部での固定が解除された第1カバー体51と第1カバー体52とが連結されたままの状態で、ユニバーサルジョイント30部分を外部に露呈させるように、第1カバー体51との接続端側を他端側へ移動可能に構成してある。
【解決手段】第1カバー体51の端部が第2カバー体52の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部50を備え、第1カバー体51には、その第1カバー体51を位置固定する固定部を備え、第1カバー体52は、固定部での固定が解除された第1カバー体51と第1カバー体52とが連結されたままの状態で、ユニバーサルジョイント30部分を外部に露呈させるように、第1カバー体51との接続端側を他端側へ移動可能に構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバー、及びそのユニバーサルジョイントカバーを用いた乗用型草刈機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のユニバーサルジョイントカバー、及び乗用型草刈機としては、下記[1]又は[2]に記載のように構成されたものがある。
[1] トラクタにおいて、伝動軸部分を筒状のカバーで覆い、ユニバーサルジョイント周りを蛇腹状、あるいは袋状のカバーで構成したもの(特許文献1参照)。
[2] 走行機体側からモーア側へ動力を伝える伝動軸の上側において、伝動軸の前後のユニバーサルジョイントを覆うチャンネル状のカバーを備え、モーアを吊り下げ支持するリフトリンクに前記チャンネル状のカバーの一端側を枢支して、伝動軸の上側を覆うチャンネル状のカバーを揺動開閉できるように構成したもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−20251号公報(段落〔0019〕、図1、図2、図4)
【特許文献2】特開平6−217623号公報(段落〔0012〕、〔0014〕、図1、図4、図8、図10、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に示すように特許文献1に記載の構造のものでは、袋状のカバーが、走行機体側の固定部に設けられたリング部材に対して外側から嵌合するように構成されているのであるが、このような構造によれば、袋状カバーの一端側が前記リング部材に対して単に外嵌するだけのものであるため、何らかの外力が作用したときに袋状カバーがリング部材から簡単に外れてしまう虞がある。逆に、このリング部材に対する袋状カバーの嵌合が強力で外れ難いものであるなら、着脱操作そのものが行い難くなる虞がある。
また、前記袋状カバーがリング部材から外れただけではユニバーサルジョイントが外部に露呈した状態とはならないので、伝動軸部分を取り外したい場合などには、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるために、別途、袋状カバーを取り外すための作業も必要となり、伝動軸の脱着を含めた作業が複雑になる虞があった。
【0005】
上記[2]に示すように特許文献2に記載の構造のものでは、チャンネル状のカバーを揺動開閉可能に構成したものであるから、伝動軸部分を取り外したい場合に、ユニバーサルジョイントが外部に露呈した状態とすることは容易である。しかしながら、この構造では通常の作業状態で、伝動軸やユニバーサルジョイントの下方側が完全に解放された状態であるため、伝動軸やユニバーサルジョイントに他物が接触したり、泥土の付着や刈草の巻き付きを招く虞があり、伝動軸部分やユニバーサルジョイント部分を内装するユニバーサルジョイントカバーとしての役割を期待することができない。
【0006】
また、近年では乗用型草刈機において、自走機体からモーアへの伝動箇所にユニバーサルジョイントカバーを設ける場合に、そのユニバーサルジョイントカバーを、工具の使用なしでは着脱できないように法的規制が設けられる傾向がある。このような法的規制を満足させるには、工具の使用が必要な強固な取付箇所の個数を増すことにより対応可能であるが、単にそのような着脱構造を採用すると、着脱操作がきわめて面倒になり、製造工程も含めて作業性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の外周を全体的に覆うことのできるユニバーサルジョイントカバーを、不測の脱落が生じないように確実に固定し得るとともに、工具を用いての着脱操作を簡便に行い易いユニバーサルジョイントカバー、及び乗用型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバーであって、
前記一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体と前記他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体とを備え、
これらの第1カバー体と第2カバー体とは、互いの筒軸線方向での端部同士を接続することにより、前記ユニバーサルジョイント部分を含む前後の軸部分を覆うとともに、第1カバー体の端部が第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備え、
前記第1カバー体には、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備え、
前記第2カバー体は、前記固定部での固定が解除された第1カバー体と前記第2カバー体とが連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあることを特徴とする。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体は、他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体と互いの筒軸線方向での端部同士を接続した状態で設けられ、かつ、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備えているので、この第1カバー体の位置固定構造を利用して第2カバー体側も位置固定状態に維持できる。
また、前記第1カバー体と第2カバー体とは、第1カバー体の端部が、他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備えるように構成してあるので、嵌合箇所の内側にある係合連結部に対しては、各カバー体の外周側からの操作では係合連結部を操作することができないようになっている。
【0010】
そして、前記第2カバー体は、固定部での固定が解除された第1カバー体と連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させられるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあるので、この第2カバー体と、前記固定部での固定が解除された第1カバー体とを第2カバー体の他端側へ移動させて、各伝動軸部分に対して軸長さ方向の融通を備えているユニバーサルジョイント部分を前記一方の伝動軸または他方の伝動軸に対して着脱操作することができる。
さらに、伝動軸部分よりも径の大きいユニバーサルジョイント部分が外部へ露呈された第1カバー体の内部には、ユニバーサルジョイント部分よりも径の小さい伝動軸のみが存在し、その伝動軸の外面と第1カバー体の内面との間に比較的大きな空隙が生じることになる。したがって、その比較的大きな空隙を利用して、第1カバー体の軸端側の開放部分から前記係合連結部を操作し、外周側からは操作するこのできなかった係合連結部での係合を解除操作して、第1カバー体と第2カバー体との接続を解除することもできる。
【0011】
その結果、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の外周を全体的に覆うことができるものであるとともに、他物との接触などで簡単に脱落したり、積極的な固定解除操作なしで簡単に外れてしまうことのないように確実に固定できるものでありながら、第1カバー体側を固定及び固定解除する程度の、作業的には簡単な操作で着脱を簡便に行うことができる利点がある。
【0012】
〔解決手段2 〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、一方の伝動軸が伝動上手側に位置する駆動側伝動軸であり、他方の伝動軸が伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸であり、第1カバー体が前記駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の駆動側カバー体であり、第2カバー体が前記被駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の被駆動側カバー体である点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、伝動上手側に位置する駆動側伝動軸の外周が筒状の駆動側カバー体である第1カバー体で覆われ、伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸の外周が筒状の被駆動側カバー体である第2カバー体で覆われるものであるから、ユニバーサルジョイント部分を含めて駆動側及び被駆動側の伝動軸の外周を全体的に覆うことができるものであるとともに、他物との接触などで簡単に脱落したり、積極的な固定解除操作なしで簡単に外れてしまうことのないように確実に固定できるものでありながら、駆動側の第1カバー体側を固定及び固定解除する程度の、作業的には簡単な操作で着脱を簡便に行うことができる利点がある。
【0014】
〔解決手段3〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、係合連結部は、第2カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面に形成された一対の係合孔と、第1カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成された一対の係止ピンと、前記係合孔に対する係止ピンの抜け止め手段とで構成されている点に特徴がある。
【0015】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1又は2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、係合連結部を構成する係合孔と係止ピンとが、各カバー体の横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成されているので、係止ピンとして比較的突出長さの大きいものを用いても、各カバー体を拡径したり、縮径したりして係止ピンと係合孔との係脱操作を行う必要はなく、係止ピンの突出方向に沿う横一方向からの操作で簡単に係脱操作することができる。
したがって、係止ピンに対する抜け止め手段の装着を行うことで、簡単に係合連結部を係合状態にして両カバー体の連結を完了することができ、かつ、係止ピンに対する抜け止め手段の装着解除を行うことで簡単に係合連結部の係合状態を解除することができる。その結果、前記固定部での固定を解除してユニバーサルジョイントを露呈させられることに加え、第1カバー体と第2カバー体との連結及び連結解除も簡単に行えて、伝動軸及び各カバー体の組み付けや分解作業を容易に行うことができる。
【0016】
〔解決手段4〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、第1カバー体の固定部は、この第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えて、その腕杆の延出端側で位置固定されるように構成してある点に特徴がある。
【0017】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1〜3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、第1カバー体の固定部を、第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えた構造としたものであるから、その腕杆部分をユニバーサルジョイントカバーを保持する際の取っ手として利用することができ、狭い場所での作業を的確に行い易いものである。
また、その腕杆部分が第2カバー体の他端側寄りに設けられているので、腕杆部分の延出端側で位置固定される固定部の位置固定部分を伝動軸の支持部分から離した箇所に設定できる。したがって、固定部の固定及び固定解除操作を、狭くて工具類の差し込みにくい伝動軸の支持部分近くではなく、比較的空間的に余裕のある場所で行い易く構成し得たものである。
【0018】
〔解決手段5〕
本発明の乗用型草刈機における第5の解決手段は、請求項5の記載のように、請求項1〜4の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバーを、自走機体からモーアへの伝動部に備えた点に特徴がある。
【0019】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段5にかかる本発明の乗用型草刈機では、前記解決手段1〜4にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、仕様の異なるモーアに付け替えたり、別の作業機を装着する、あるいはモーアを取り外すなど、各種の作業で、作業動力取出し用のPTO軸に接続されるユニバーサルジョイント付きの伝動軸を着脱する必要のある乗用型草刈機において、そのユニバーサルジョイント付きの伝動軸、及びユニバーサルジョイントカバーの着脱操作を簡単に行い易いという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型草刈機の全体構成〕
図1に、本発明に係るユニバーサルジョイントカバーを適用した乗用型草刈機の全体側面が、また、図2にそのモーア4部分の平面がそれぞれ示されている。
この乗用型草刈機は、乗用型の走行機体1の機体フレーム10の前後に配備された前輪11と後輪12との間に、リアディスチャージ型式のモーア4が昇降操作可能に吊り下げ装着され、機体後部に刈草を収容する集草容器6が連結されている。
【0021】
走行機体1の前部には水冷式ディーゼルエンジン2が搭載され、このエンジン2の出力軸20から取出された動力が図示しない伝動機構を経て機体後部の下方に配備した作業動力取出し用のPTO軸21に伝達され、このPTO軸21の動力がモーア4に軸伝達されるように構成してある。
前記機体フレーム10上の中央部には運転座席13が配備され、その足元に位置するステップ15の前方側に操縦ハンドル14を装備してある。
前記モーア4で刈り取られた刈草は、左右の後輪12,12同士の間に形成された空間に配備した刈草排出用のダクト16を介して、前記集草容器6に向けて風力搬送されるように構成されている。
【0022】
〔モーアの構成〕
モーア4は、図1及び図3に示すように、四連リンク構造のリンク機構18を介して機体フレーム10に吊り下げ支持された構造となっている。リンク機構18は、そのリンク機構18の一部に連結された油圧シリンダ(図外)の伸縮作動によって昇降操作され、モーア4を略平行に昇降作動させるよう構成してある。
このモーア4への動力伝達は、走行機体1側からの出力軸であるPTO軸21から機体前方に向けて出力され、このPTO軸21及び中間伝動軸3を介してモーア4にエンジン動力を伝達するように構成してある。
【0023】
モーアデッキ40は、天板高さが全体的に同高さに設定されたフラットデッキに構成されているとともに、このモーアデッキ40の上面中央位置に、前記PTO軸21から取り出された作業用動力が伝達されるベベルギヤケース42を設けてある。
このベベルギヤケース42では、中間伝動軸3を介して伝達された水平方向の回転動力を、内部のベベルギヤ機構(図示せず)を介して縦軸回転に変換し、中央位置の回転軸43Cに伝達するように構成されている。
前記中央位置の回転軸43Cと左右の回転ブレード41L,41Rの回転軸43L,43Rとは、それぞれの軸端に設けた伝動プーリ44,44,44にベルト45を巻き掛けて連動され、各回転軸43L,43C,43Rが同じ方向(平面視で時計回り)に等速で回転駆動されるようになっている。
【0024】
上記の伝動プーリ44,44,44、及び巻き掛けられたベルト45は、これらを上側から覆うように設けたベルトカバー46によって、モーアデッキ40の上面との間に挟み込まれた状態で隠蔽されている。
モーアデッキ40の周囲には障害物乗り越え用の遊転輪(アンチスキャルプローラ)47が配備されており、上方への移動融通をもってリンク機構18に吊り下げ支持されたモーア4に地上の斜面や隆起部などに接近すると、遊転輪47のいずれかが隆起部などに乗り上がることでモーア4が相対的に持ち上げられて、モーアデッキ40が直接に接触して地面を削ることが回避されるようになっている。
【0025】
〔モーアへの動力伝達構造〕
図4及び図5に示すように、前記PTO軸21から前記モーアデッキ40上のベベルギヤケース42の入力軸42aに至る動力伝達構造は、次のように構成されている。
前記PTO軸21からベベルギヤケース42へ動力を伝達する中間伝動軸3は、前記PTO軸21に対して入力側のユニバーサルジョイント30を介して連結される棒状の第1軸部31と、前記ベベルギヤケース42の入力軸42aに対して出力側のユニバーサルジョイント30を介して連結される筒状の第2軸部32との組み合わせで構成してある。
【0026】
前記棒状の第1軸部31は外表面にスプライン部31aを形成したスプラインシャフトによって構成してあり、前記筒状の第2軸部32は筒内面側にスプライン部32aを形成したスプライン筒によって構成してあって、互いのスプライン部31a,32aを嵌合させることによって、相対回転不能に、かつ、伝動軸3の軸線方向長さを伸縮調節可能に構成してある。
前記入力側のユニバーサルジョイント30と前記PTO軸21との連結箇所においても、前記PTO軸21の外表面にスプライン部21aを形成してあり、前記入力側のユニバーサルジョイント30の入力側の軸部33の筒内面側にスプライン部33aを形成してあって、互いのスプライン部21a,33aを嵌合させることによって、相対回転不能に、かつ、着脱操作可能に構成してある。
上記の入力側のユニバーサルジョイント30の入力側の軸部33は、PTO軸21に対してワンタッチ操作で脱着できるように、抜き差し方向での移動を簡単にロック及びロック解除操作可能な周知のクイックカプラによって構成されている。
【0027】
上記のように構成された動力伝達構造においては、この動力伝達構造中で最も伝動方向での上手側に位置する前記PTO軸21が駆動側伝動軸に相当し、前記入力側のユニバーサルジョイント30に連結される中間伝動軸3が被駆動側伝動軸に相当する。
【0028】
〔ユニバーサルジョイントカバーの構造〕
上記の動力伝達構造部分に対して用いられるユニバーサルジョイントカバー5は次のように構成されている。
図4乃至図8に示すように、上記のユニバーサルジョイントカバー5は、最も伝動上手側に位置するPTO軸21の外周側を覆う第1カバー体51と、中間伝動軸3の外周側を覆う第2カバー体52と、モーア4側のベベルギヤケース42の入力軸42aの外周を覆う第3カバー体53との組み合わせで構成され、それぞれのカバー体51,52,53同士が相対姿勢を変更自在に構成されている。
【0029】
上記の各カバー体51,52,53のうち、第1カバー体51は、図6及び図7に示すように、PTO軸21の外周部を囲繞する周壁部54を備えて筒状に形成されている。そして、その周壁部54の筒軸心を挟んで相対向する位置の左右の横側面部分54aに、互いに同一の横一側方に向けて突出する係止ピン55,55を設けてある。
この係止ピン55は、後述する第2カバー体52に形成されている係合孔56に対して挿抜されることにより、両カバー体51,52同士を、連結状態と連結解除状態とに切り換えるための係合連結部50を構成するものである。
前記係止ピン55の先端側には、前記係止ピン55が係合孔56から抜け出すことを阻止するための止めピン57を挿入可能なピン孔55aを形成してある。したがって、係止ピン55を係合孔56に挿入した状態で、係止ピン55の先端側のピン孔55aに対して止めピン57を挿抜操作することにより、抜け止め状態と、抜け止め解除状態とに切り換えることができ、このピン孔55aと止めピン57とによって抜け止め手段を構成してある。
【0030】
また、この第1カバー体51には、図4乃至図7に示すように、その周壁部54の上面側から、前記第2カバー体52との接続箇所を越えて機体前方側、つまり第2カバー体52の他端側に向けて延出された腕杆51aを設けてあり、この腕杆51aの端部側を横向きに湾曲させて、その端部に機体フレーム10に対して第1カバー体51を止めボルト10aで締め付け固定するための固定部となる止め孔51bを形成してある。
第1カバー体51の機体後方側の端部には、前記PTO軸21を支承する機体固定側のボス部の外側上部に接当する当たり部51cを設けてある。
【0031】
前記第2カバー体52は、前記第1カバー体51に接続されてユニバーサルジョイント30の一部を覆う筒状の上手側カバー部52Aと、前記第3カバー体53に接続されて、前記上手側カバー部52Aに対しては相対摺動可能に嵌着されている筒状の下手側カバー部52Bとによって構成されている。
前記上手側カバー部52Aの前記第1カバー体51との接続箇所には、前記ユニバーサルジョイント30の一部を覆うように内径を大きくした大径部分52aが設けられ、この大径部分52aの横側部に前記第1カバー体51側の係止ピン55を挿入可能な一対の係合孔56が形成されている。
前記下手側カバー部52Bにも、前記第3カバー体53との接続箇所に、前記伝動下手側のユニバーサルジョイント30の一部を覆うように内径を大きくした大径部分52bが設けられている。そして、この大径部分52bの横側部には、前記第3カバー体53側の係止ピン55を挿入可能な構造として、長孔による係合孔56と、一端側が開放された切り欠き56aとが形成されている。
【0032】
前記第3カバー体53は、図4乃至図8に示すように、下端側が開放されたチャンネル状の部材によって構成され、その下縁側が前記モーアデッキ40上のベルトカバー46に対してボルト連結され、前記チャンネル状の部材とベルトカバー46部分とで全体が伝動下手側のユニバーサルジョイント30の外周を覆う筒状に形成されている。
この第3カバー体53前記チャンネル状の部材の横側面部分54aに、互いに同一の横一側方に向けて突出する係止ピン55,55を設けてある。
この係止ピン55は、前述した第2カバー体52に形成されている長孔による係合孔56と、一端側が開放された切り欠き56aに対して挿抜されることにより、両カバー体52,53同士を、連結状態と連結解除状態とに切り換えるための係合連結部50を構成するものである。
この第3カバー体53に設けられた一対の係止ピン55のうち、前記第2カバー体52の長孔による係合孔56に挿入される側の係止ピン55には、前記第1カバー体51に形成された係止ピン55と同様に、ピン孔55aと止めピン57とによって構成される抜け止め手段を設けてある。
【0033】
〔ユニバーサルジョイントカバーの着脱操作〕
上記のユニバーサルジョイントカバー5の着脱操作は、図9(a)〜図9(c)に示すようにして行える。
このユニバーサルジョイントカバー5の着脱は、走行機体1に対してモーア4を着脱する際などに行われる。
【0034】
図9(a)は、ユニバーサルジョイントカバー5が装着された通常の使用状態を示している。この状態からユニバーサルジョイントカバー5を取り外すには、PTO軸21の駆動が停止された後、車体フレーム10に連結固定されている第1カバー体51の固定部となる止め孔51bから連結用の止めボルト10aを取り外す。
【0035】
図9(b)に示すように、止めボルト10aが外された腕杆51aをつかんで矢印方向(機体前方側)に引っ張ると、第1カバー体51が第2カバー体52を収縮させながら機体前方側へ移動して、入力側のユニバーサルジョイント30の全体がユニバーサルジョイントカバー5の端部から露呈する状態にする。
この状態では、入力側のユニバーサルジョイントカバー5が第1カバー体51の外側へ出て、第1カバー体51の内部にはユニバーサルジョイント30よりも径の小さい中間伝動軸3の棒状の第1軸部31しか存在していない。したがって、この棒状の第1軸部31の外周と第1カバー体51の内周面との間の比較的広くなった空間を利用して工具を差し込み、係止ピン55の先端側に装着されている抜け止め手段としての止めピン57を、ピン孔55aから抜き出すことができる。逆に組み付けの場合は、ピン孔55aに止めピン57を差し込んで連結することができる。
この止めピン57の抜き差しは、第1カバー体51と第2カバー体52との連結状態を解除したり連結したりする作業が必要な場合にのみ行われる。
【0036】
次に図9(c)に示すように、入力側のユニバーサルジョイント30をPTO軸21から引き抜いて、中間伝動軸3とユニバーサルジョイントカバー5とを、PTO軸21側との連結が断たれた状態とし、モーア4の全体を走行機体1から取り外すことができる。
【0037】
通常、モーア4の取り外しにあたっては、上記のように、PTO軸21から入力側のユニバーサルジョイント30を取り外し、第1カバー体51と第2カバー体52との接続を解除するだけでよく、第3カバー体53と第2カバー体52との接続を解除する操作や、第3カバー体53を取り外す作業までは必要ない。
走行機体1に対してモーア4を取り付ける場合には、上記とは逆の順で第1カバー体51と第2カバー体52との接続、及び、中間伝動軸3とPTO軸21との連結を行う。
【0038】
図示しないが、第3カバー体53と第2カバー体52との連結解除は、まず、第3カバー体53のチャンネル状部材を前記モーアデッキ40上のベルトカバー46から取り外し、チャンネル状部材の横側面部分53aに設けてある係止ピン55,55周りで上方に回動させて出力側のユニバーサルジョイント30部分の周辺を外部に開放し、出力側のユニバーサルジョイント30とベベルギヤケース42への入力軸42aとの連結ボルト34を緩めて、出力側のユニバーサルジョイント30ごと中間伝動軸3及びユニバーサルジョイントカバー5の全体を取り外し、出力側のユニバーサルジョイント30と第2カバー体52の前端側の大径部52bとの位置をずらして、前記チャンネル状部材の横側面部分53aに設けてある係止ピン55の抜け止め手段の止めピン57をピン孔55aから外すことによって行う。
【0039】
〔別実施形態の1〕
第1カバー体51と第2カバー体52と接続する係合連結部の構造としては、最良の実施形態で説明したように、
周壁部54の相対向する位置の左右の横側面部分54aに互いに同一の横一側方に向けた状態で突出させた係止ピン55,55と、その係止ピン55,55に対して係合する第2カバー体52側の係合孔56,56との組み合わせで構成されたものに限らず、次のように構成したものであってもよい。
【0040】
図10(a)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が外嵌し、第1カバー体51側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、第2カバー体52側では、一方の係止ピン55に対して係合する係合孔56と、他方の係止ピン55を端部側から係入可能な凹入溝状の切り欠き56a(図7に示す第2カバー体52の下手側カバー部52Bにおける機体前端側に形成された切り欠き部と同様な形状)とを設けて、係合孔56に挿入した係止ピン55の先端側に、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けている。
【0041】
〔別実施形態の2〕
図10(b)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が内嵌し、第2カバー体52側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、第1カバー体51側では、一方の係止ピン55に対して係合する係合孔56と、他方の係止ピン55を端部側から係入可能な凹入溝状の切り欠き56a(図7に示す第2カバー体52の下手側カバー部52Bにおける機体前端側に形成された切り欠き部と同様な形状)とを設けて、係合孔56に挿入した係止ピン55の先端側に、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けている。
【0042】
〔別実施形態の3〕
図11(a)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が外嵌し、第1カバー体51の周壁部の横側面部分の一方側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、その周壁部の横側面部分の他方側には、前述の図10(a),(b)に示すものと同様な凹入溝状の切り欠き56aが形成されている。
第2カバー体52の周壁部の横側面部分には、一方側に前記第1カバー体51側の係止ピン55を挿入可能な係合孔56と、その他方側で周壁部の横側面部分から径方向の外側へ向けて突出する係止ピン55とが設けられ、前記第2カバー体52の係止ピン55が第1カバー体51の凹入溝状の切り欠き56aに係入するように構成されている。
前記第1カバー体51の周壁部の径方向で内側へ突出する係止ピン55の先端側には、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けてある。
【0043】
〔別実施形態の4〕
図11(b)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が内嵌し、第2カバー体52の周壁部の横側面部分の一方側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、その周壁部の横側面部分の他方側には、前述の図10(a),(b)に示すものと同様な凹入溝状の切り欠き56aが形成されている。
第1カバー体51の周壁部の横側面部分には、一方側に前記第2カバー体52側の係止ピン55を挿入可能な係合孔56と、その他方側で周壁部の横側面部分から径方向の外側へ向けて突出する係止ピン55とが設けられ、前記第1カバー体51の係止ピン55が第2カバー体52の凹入溝状の切り欠き56aに係入するように構成されている。
前記第2カバー体52の周壁部の径方向で内側へ突出する係止ピン55の先端側には、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けてある。
【0044】
〔別実施形態の5〕
ユニバーサルジョイントカバー5を構成する第1カバー体51、及び第2カバー体52でいう「筒状」とは、完全な円筒形を指すだけのものではなく、楕円や矩形、あるいは任意の種々の断面形状であるものをも含むものである。また、この「筒状」とは、周方向、あるいは筒軸線方向での全体が完全に遮蔽された構造を指すだけのものであはなく、部分的に開口や切り欠きがあったり、網状に形成されたものをも含む。
要は、ユニバーサルジョイント30や中間伝動軸3が他物と接触することを回避し得る程度に、ユニバーサルジョイント30や中間伝動軸3の外周側を包囲できる構造であればよい。
【0045】
〔別実施形態の6〕
ユニバーサルジョイントカバー5における第2カバー体52は、上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとが相対摺動する構造であるものに限らず、上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとの間、もしくは上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとのそれぞれに、蛇腹状の筒部分などの伸縮可能な構造を設けても良い。
【0046】
〔別実施形態の7〕
乗用型草刈機におけるモーア4の仕様としては、リヤディスチャージ仕様に構成されたものに限らず、マルチング仕様に構成されたものや、サイドディスチャージ仕様に構成されたものなど、適宜の仕様を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】乗用型草刈機の全体側面図
【図2】モーア部分を示す平面図
【図3】モーア部分を示す側面図
【図4】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す側面視での断面図
【図5】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す平面視での断面図
【図6】ユニバーサルジョイントカバー部分を示す分解斜視図
【図7】第1カバー体部分を示す正面視での断面図
【図8】第3カバー体部分を示す正面視での断面図
【図9】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す操作説明図
【図10】ユニバーサルジョイントカバー部分の別実施形態を示す説明図
【図11】ユニバーサルジョイントカバー部分の別実施形態を示す説明図
【符号の説明】
【0048】
1 走行機体
3 中間伝動軸
4 モーア
5 ユニバーサルジョイントカバー
30 ユニバーサルジョイント
31 第1軸部
32 第2軸部
40 モーアデッキ
51 第1カバー体
52 第2カバー体
53 第3カバー体
55 係止ピン
56 係合孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバー、及びそのユニバーサルジョイントカバーを用いた乗用型草刈機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のユニバーサルジョイントカバー、及び乗用型草刈機としては、下記[1]又は[2]に記載のように構成されたものがある。
[1] トラクタにおいて、伝動軸部分を筒状のカバーで覆い、ユニバーサルジョイント周りを蛇腹状、あるいは袋状のカバーで構成したもの(特許文献1参照)。
[2] 走行機体側からモーア側へ動力を伝える伝動軸の上側において、伝動軸の前後のユニバーサルジョイントを覆うチャンネル状のカバーを備え、モーアを吊り下げ支持するリフトリンクに前記チャンネル状のカバーの一端側を枢支して、伝動軸の上側を覆うチャンネル状のカバーを揺動開閉できるように構成したもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−20251号公報(段落〔0019〕、図1、図2、図4)
【特許文献2】特開平6−217623号公報(段落〔0012〕、〔0014〕、図1、図4、図8、図10、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に示すように特許文献1に記載の構造のものでは、袋状のカバーが、走行機体側の固定部に設けられたリング部材に対して外側から嵌合するように構成されているのであるが、このような構造によれば、袋状カバーの一端側が前記リング部材に対して単に外嵌するだけのものであるため、何らかの外力が作用したときに袋状カバーがリング部材から簡単に外れてしまう虞がある。逆に、このリング部材に対する袋状カバーの嵌合が強力で外れ難いものであるなら、着脱操作そのものが行い難くなる虞がある。
また、前記袋状カバーがリング部材から外れただけではユニバーサルジョイントが外部に露呈した状態とはならないので、伝動軸部分を取り外したい場合などには、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるために、別途、袋状カバーを取り外すための作業も必要となり、伝動軸の脱着を含めた作業が複雑になる虞があった。
【0005】
上記[2]に示すように特許文献2に記載の構造のものでは、チャンネル状のカバーを揺動開閉可能に構成したものであるから、伝動軸部分を取り外したい場合に、ユニバーサルジョイントが外部に露呈した状態とすることは容易である。しかしながら、この構造では通常の作業状態で、伝動軸やユニバーサルジョイントの下方側が完全に解放された状態であるため、伝動軸やユニバーサルジョイントに他物が接触したり、泥土の付着や刈草の巻き付きを招く虞があり、伝動軸部分やユニバーサルジョイント部分を内装するユニバーサルジョイントカバーとしての役割を期待することができない。
【0006】
また、近年では乗用型草刈機において、自走機体からモーアへの伝動箇所にユニバーサルジョイントカバーを設ける場合に、そのユニバーサルジョイントカバーを、工具の使用なしでは着脱できないように法的規制が設けられる傾向がある。このような法的規制を満足させるには、工具の使用が必要な強固な取付箇所の個数を増すことにより対応可能であるが、単にそのような着脱構造を採用すると、着脱操作がきわめて面倒になり、製造工程も含めて作業性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の外周を全体的に覆うことのできるユニバーサルジョイントカバーを、不測の脱落が生じないように確実に固定し得るとともに、工具を用いての着脱操作を簡便に行い易いユニバーサルジョイントカバー、及び乗用型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバーであって、
前記一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体と前記他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体とを備え、
これらの第1カバー体と第2カバー体とは、互いの筒軸線方向での端部同士を接続することにより、前記ユニバーサルジョイント部分を含む前後の軸部分を覆うとともに、第1カバー体の端部が第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備え、
前記第1カバー体には、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備え、
前記第2カバー体は、前記固定部での固定が解除された第1カバー体と前記第2カバー体とが連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあることを特徴とする。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体は、他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体と互いの筒軸線方向での端部同士を接続した状態で設けられ、かつ、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備えているので、この第1カバー体の位置固定構造を利用して第2カバー体側も位置固定状態に維持できる。
また、前記第1カバー体と第2カバー体とは、第1カバー体の端部が、他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備えるように構成してあるので、嵌合箇所の内側にある係合連結部に対しては、各カバー体の外周側からの操作では係合連結部を操作することができないようになっている。
【0010】
そして、前記第2カバー体は、固定部での固定が解除された第1カバー体と連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させられるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあるので、この第2カバー体と、前記固定部での固定が解除された第1カバー体とを第2カバー体の他端側へ移動させて、各伝動軸部分に対して軸長さ方向の融通を備えているユニバーサルジョイント部分を前記一方の伝動軸または他方の伝動軸に対して着脱操作することができる。
さらに、伝動軸部分よりも径の大きいユニバーサルジョイント部分が外部へ露呈された第1カバー体の内部には、ユニバーサルジョイント部分よりも径の小さい伝動軸のみが存在し、その伝動軸の外面と第1カバー体の内面との間に比較的大きな空隙が生じることになる。したがって、その比較的大きな空隙を利用して、第1カバー体の軸端側の開放部分から前記係合連結部を操作し、外周側からは操作するこのできなかった係合連結部での係合を解除操作して、第1カバー体と第2カバー体との接続を解除することもできる。
【0011】
その結果、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の外周を全体的に覆うことができるものであるとともに、他物との接触などで簡単に脱落したり、積極的な固定解除操作なしで簡単に外れてしまうことのないように確実に固定できるものでありながら、第1カバー体側を固定及び固定解除する程度の、作業的には簡単な操作で着脱を簡便に行うことができる利点がある。
【0012】
〔解決手段2 〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、一方の伝動軸が伝動上手側に位置する駆動側伝動軸であり、他方の伝動軸が伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸であり、第1カバー体が前記駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の駆動側カバー体であり、第2カバー体が前記被駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の被駆動側カバー体である点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、伝動上手側に位置する駆動側伝動軸の外周が筒状の駆動側カバー体である第1カバー体で覆われ、伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸の外周が筒状の被駆動側カバー体である第2カバー体で覆われるものであるから、ユニバーサルジョイント部分を含めて駆動側及び被駆動側の伝動軸の外周を全体的に覆うことができるものであるとともに、他物との接触などで簡単に脱落したり、積極的な固定解除操作なしで簡単に外れてしまうことのないように確実に固定できるものでありながら、駆動側の第1カバー体側を固定及び固定解除する程度の、作業的には簡単な操作で着脱を簡便に行うことができる利点がある。
【0014】
〔解決手段3〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、係合連結部は、第2カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面に形成された一対の係合孔と、第1カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成された一対の係止ピンと、前記係合孔に対する係止ピンの抜け止め手段とで構成されている点に特徴がある。
【0015】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1又は2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、係合連結部を構成する係合孔と係止ピンとが、各カバー体の横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成されているので、係止ピンとして比較的突出長さの大きいものを用いても、各カバー体を拡径したり、縮径したりして係止ピンと係合孔との係脱操作を行う必要はなく、係止ピンの突出方向に沿う横一方向からの操作で簡単に係脱操作することができる。
したがって、係止ピンに対する抜け止め手段の装着を行うことで、簡単に係合連結部を係合状態にして両カバー体の連結を完了することができ、かつ、係止ピンに対する抜け止め手段の装着解除を行うことで簡単に係合連結部の係合状態を解除することができる。その結果、前記固定部での固定を解除してユニバーサルジョイントを露呈させられることに加え、第1カバー体と第2カバー体との連結及び連結解除も簡単に行えて、伝動軸及び各カバー体の組み付けや分解作業を容易に行うことができる。
【0016】
〔解決手段4〕
本発明のユニバーサルジョイントカバーにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、第1カバー体の固定部は、この第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えて、その腕杆の延出端側で位置固定されるように構成してある点に特徴がある。
【0017】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のユニバーサルジョイントカバーでは、前記解決手段1〜3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、第1カバー体の固定部を、第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えた構造としたものであるから、その腕杆部分をユニバーサルジョイントカバーを保持する際の取っ手として利用することができ、狭い場所での作業を的確に行い易いものである。
また、その腕杆部分が第2カバー体の他端側寄りに設けられているので、腕杆部分の延出端側で位置固定される固定部の位置固定部分を伝動軸の支持部分から離した箇所に設定できる。したがって、固定部の固定及び固定解除操作を、狭くて工具類の差し込みにくい伝動軸の支持部分近くではなく、比較的空間的に余裕のある場所で行い易く構成し得たものである。
【0018】
〔解決手段5〕
本発明の乗用型草刈機における第5の解決手段は、請求項5の記載のように、請求項1〜4の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバーを、自走機体からモーアへの伝動部に備えた点に特徴がある。
【0019】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段5にかかる本発明の乗用型草刈機では、前記解決手段1〜4にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、仕様の異なるモーアに付け替えたり、別の作業機を装着する、あるいはモーアを取り外すなど、各種の作業で、作業動力取出し用のPTO軸に接続されるユニバーサルジョイント付きの伝動軸を着脱する必要のある乗用型草刈機において、そのユニバーサルジョイント付きの伝動軸、及びユニバーサルジョイントカバーの着脱操作を簡単に行い易いという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型草刈機の全体構成〕
図1に、本発明に係るユニバーサルジョイントカバーを適用した乗用型草刈機の全体側面が、また、図2にそのモーア4部分の平面がそれぞれ示されている。
この乗用型草刈機は、乗用型の走行機体1の機体フレーム10の前後に配備された前輪11と後輪12との間に、リアディスチャージ型式のモーア4が昇降操作可能に吊り下げ装着され、機体後部に刈草を収容する集草容器6が連結されている。
【0021】
走行機体1の前部には水冷式ディーゼルエンジン2が搭載され、このエンジン2の出力軸20から取出された動力が図示しない伝動機構を経て機体後部の下方に配備した作業動力取出し用のPTO軸21に伝達され、このPTO軸21の動力がモーア4に軸伝達されるように構成してある。
前記機体フレーム10上の中央部には運転座席13が配備され、その足元に位置するステップ15の前方側に操縦ハンドル14を装備してある。
前記モーア4で刈り取られた刈草は、左右の後輪12,12同士の間に形成された空間に配備した刈草排出用のダクト16を介して、前記集草容器6に向けて風力搬送されるように構成されている。
【0022】
〔モーアの構成〕
モーア4は、図1及び図3に示すように、四連リンク構造のリンク機構18を介して機体フレーム10に吊り下げ支持された構造となっている。リンク機構18は、そのリンク機構18の一部に連結された油圧シリンダ(図外)の伸縮作動によって昇降操作され、モーア4を略平行に昇降作動させるよう構成してある。
このモーア4への動力伝達は、走行機体1側からの出力軸であるPTO軸21から機体前方に向けて出力され、このPTO軸21及び中間伝動軸3を介してモーア4にエンジン動力を伝達するように構成してある。
【0023】
モーアデッキ40は、天板高さが全体的に同高さに設定されたフラットデッキに構成されているとともに、このモーアデッキ40の上面中央位置に、前記PTO軸21から取り出された作業用動力が伝達されるベベルギヤケース42を設けてある。
このベベルギヤケース42では、中間伝動軸3を介して伝達された水平方向の回転動力を、内部のベベルギヤ機構(図示せず)を介して縦軸回転に変換し、中央位置の回転軸43Cに伝達するように構成されている。
前記中央位置の回転軸43Cと左右の回転ブレード41L,41Rの回転軸43L,43Rとは、それぞれの軸端に設けた伝動プーリ44,44,44にベルト45を巻き掛けて連動され、各回転軸43L,43C,43Rが同じ方向(平面視で時計回り)に等速で回転駆動されるようになっている。
【0024】
上記の伝動プーリ44,44,44、及び巻き掛けられたベルト45は、これらを上側から覆うように設けたベルトカバー46によって、モーアデッキ40の上面との間に挟み込まれた状態で隠蔽されている。
モーアデッキ40の周囲には障害物乗り越え用の遊転輪(アンチスキャルプローラ)47が配備されており、上方への移動融通をもってリンク機構18に吊り下げ支持されたモーア4に地上の斜面や隆起部などに接近すると、遊転輪47のいずれかが隆起部などに乗り上がることでモーア4が相対的に持ち上げられて、モーアデッキ40が直接に接触して地面を削ることが回避されるようになっている。
【0025】
〔モーアへの動力伝達構造〕
図4及び図5に示すように、前記PTO軸21から前記モーアデッキ40上のベベルギヤケース42の入力軸42aに至る動力伝達構造は、次のように構成されている。
前記PTO軸21からベベルギヤケース42へ動力を伝達する中間伝動軸3は、前記PTO軸21に対して入力側のユニバーサルジョイント30を介して連結される棒状の第1軸部31と、前記ベベルギヤケース42の入力軸42aに対して出力側のユニバーサルジョイント30を介して連結される筒状の第2軸部32との組み合わせで構成してある。
【0026】
前記棒状の第1軸部31は外表面にスプライン部31aを形成したスプラインシャフトによって構成してあり、前記筒状の第2軸部32は筒内面側にスプライン部32aを形成したスプライン筒によって構成してあって、互いのスプライン部31a,32aを嵌合させることによって、相対回転不能に、かつ、伝動軸3の軸線方向長さを伸縮調節可能に構成してある。
前記入力側のユニバーサルジョイント30と前記PTO軸21との連結箇所においても、前記PTO軸21の外表面にスプライン部21aを形成してあり、前記入力側のユニバーサルジョイント30の入力側の軸部33の筒内面側にスプライン部33aを形成してあって、互いのスプライン部21a,33aを嵌合させることによって、相対回転不能に、かつ、着脱操作可能に構成してある。
上記の入力側のユニバーサルジョイント30の入力側の軸部33は、PTO軸21に対してワンタッチ操作で脱着できるように、抜き差し方向での移動を簡単にロック及びロック解除操作可能な周知のクイックカプラによって構成されている。
【0027】
上記のように構成された動力伝達構造においては、この動力伝達構造中で最も伝動方向での上手側に位置する前記PTO軸21が駆動側伝動軸に相当し、前記入力側のユニバーサルジョイント30に連結される中間伝動軸3が被駆動側伝動軸に相当する。
【0028】
〔ユニバーサルジョイントカバーの構造〕
上記の動力伝達構造部分に対して用いられるユニバーサルジョイントカバー5は次のように構成されている。
図4乃至図8に示すように、上記のユニバーサルジョイントカバー5は、最も伝動上手側に位置するPTO軸21の外周側を覆う第1カバー体51と、中間伝動軸3の外周側を覆う第2カバー体52と、モーア4側のベベルギヤケース42の入力軸42aの外周を覆う第3カバー体53との組み合わせで構成され、それぞれのカバー体51,52,53同士が相対姿勢を変更自在に構成されている。
【0029】
上記の各カバー体51,52,53のうち、第1カバー体51は、図6及び図7に示すように、PTO軸21の外周部を囲繞する周壁部54を備えて筒状に形成されている。そして、その周壁部54の筒軸心を挟んで相対向する位置の左右の横側面部分54aに、互いに同一の横一側方に向けて突出する係止ピン55,55を設けてある。
この係止ピン55は、後述する第2カバー体52に形成されている係合孔56に対して挿抜されることにより、両カバー体51,52同士を、連結状態と連結解除状態とに切り換えるための係合連結部50を構成するものである。
前記係止ピン55の先端側には、前記係止ピン55が係合孔56から抜け出すことを阻止するための止めピン57を挿入可能なピン孔55aを形成してある。したがって、係止ピン55を係合孔56に挿入した状態で、係止ピン55の先端側のピン孔55aに対して止めピン57を挿抜操作することにより、抜け止め状態と、抜け止め解除状態とに切り換えることができ、このピン孔55aと止めピン57とによって抜け止め手段を構成してある。
【0030】
また、この第1カバー体51には、図4乃至図7に示すように、その周壁部54の上面側から、前記第2カバー体52との接続箇所を越えて機体前方側、つまり第2カバー体52の他端側に向けて延出された腕杆51aを設けてあり、この腕杆51aの端部側を横向きに湾曲させて、その端部に機体フレーム10に対して第1カバー体51を止めボルト10aで締め付け固定するための固定部となる止め孔51bを形成してある。
第1カバー体51の機体後方側の端部には、前記PTO軸21を支承する機体固定側のボス部の外側上部に接当する当たり部51cを設けてある。
【0031】
前記第2カバー体52は、前記第1カバー体51に接続されてユニバーサルジョイント30の一部を覆う筒状の上手側カバー部52Aと、前記第3カバー体53に接続されて、前記上手側カバー部52Aに対しては相対摺動可能に嵌着されている筒状の下手側カバー部52Bとによって構成されている。
前記上手側カバー部52Aの前記第1カバー体51との接続箇所には、前記ユニバーサルジョイント30の一部を覆うように内径を大きくした大径部分52aが設けられ、この大径部分52aの横側部に前記第1カバー体51側の係止ピン55を挿入可能な一対の係合孔56が形成されている。
前記下手側カバー部52Bにも、前記第3カバー体53との接続箇所に、前記伝動下手側のユニバーサルジョイント30の一部を覆うように内径を大きくした大径部分52bが設けられている。そして、この大径部分52bの横側部には、前記第3カバー体53側の係止ピン55を挿入可能な構造として、長孔による係合孔56と、一端側が開放された切り欠き56aとが形成されている。
【0032】
前記第3カバー体53は、図4乃至図8に示すように、下端側が開放されたチャンネル状の部材によって構成され、その下縁側が前記モーアデッキ40上のベルトカバー46に対してボルト連結され、前記チャンネル状の部材とベルトカバー46部分とで全体が伝動下手側のユニバーサルジョイント30の外周を覆う筒状に形成されている。
この第3カバー体53前記チャンネル状の部材の横側面部分54aに、互いに同一の横一側方に向けて突出する係止ピン55,55を設けてある。
この係止ピン55は、前述した第2カバー体52に形成されている長孔による係合孔56と、一端側が開放された切り欠き56aに対して挿抜されることにより、両カバー体52,53同士を、連結状態と連結解除状態とに切り換えるための係合連結部50を構成するものである。
この第3カバー体53に設けられた一対の係止ピン55のうち、前記第2カバー体52の長孔による係合孔56に挿入される側の係止ピン55には、前記第1カバー体51に形成された係止ピン55と同様に、ピン孔55aと止めピン57とによって構成される抜け止め手段を設けてある。
【0033】
〔ユニバーサルジョイントカバーの着脱操作〕
上記のユニバーサルジョイントカバー5の着脱操作は、図9(a)〜図9(c)に示すようにして行える。
このユニバーサルジョイントカバー5の着脱は、走行機体1に対してモーア4を着脱する際などに行われる。
【0034】
図9(a)は、ユニバーサルジョイントカバー5が装着された通常の使用状態を示している。この状態からユニバーサルジョイントカバー5を取り外すには、PTO軸21の駆動が停止された後、車体フレーム10に連結固定されている第1カバー体51の固定部となる止め孔51bから連結用の止めボルト10aを取り外す。
【0035】
図9(b)に示すように、止めボルト10aが外された腕杆51aをつかんで矢印方向(機体前方側)に引っ張ると、第1カバー体51が第2カバー体52を収縮させながら機体前方側へ移動して、入力側のユニバーサルジョイント30の全体がユニバーサルジョイントカバー5の端部から露呈する状態にする。
この状態では、入力側のユニバーサルジョイントカバー5が第1カバー体51の外側へ出て、第1カバー体51の内部にはユニバーサルジョイント30よりも径の小さい中間伝動軸3の棒状の第1軸部31しか存在していない。したがって、この棒状の第1軸部31の外周と第1カバー体51の内周面との間の比較的広くなった空間を利用して工具を差し込み、係止ピン55の先端側に装着されている抜け止め手段としての止めピン57を、ピン孔55aから抜き出すことができる。逆に組み付けの場合は、ピン孔55aに止めピン57を差し込んで連結することができる。
この止めピン57の抜き差しは、第1カバー体51と第2カバー体52との連結状態を解除したり連結したりする作業が必要な場合にのみ行われる。
【0036】
次に図9(c)に示すように、入力側のユニバーサルジョイント30をPTO軸21から引き抜いて、中間伝動軸3とユニバーサルジョイントカバー5とを、PTO軸21側との連結が断たれた状態とし、モーア4の全体を走行機体1から取り外すことができる。
【0037】
通常、モーア4の取り外しにあたっては、上記のように、PTO軸21から入力側のユニバーサルジョイント30を取り外し、第1カバー体51と第2カバー体52との接続を解除するだけでよく、第3カバー体53と第2カバー体52との接続を解除する操作や、第3カバー体53を取り外す作業までは必要ない。
走行機体1に対してモーア4を取り付ける場合には、上記とは逆の順で第1カバー体51と第2カバー体52との接続、及び、中間伝動軸3とPTO軸21との連結を行う。
【0038】
図示しないが、第3カバー体53と第2カバー体52との連結解除は、まず、第3カバー体53のチャンネル状部材を前記モーアデッキ40上のベルトカバー46から取り外し、チャンネル状部材の横側面部分53aに設けてある係止ピン55,55周りで上方に回動させて出力側のユニバーサルジョイント30部分の周辺を外部に開放し、出力側のユニバーサルジョイント30とベベルギヤケース42への入力軸42aとの連結ボルト34を緩めて、出力側のユニバーサルジョイント30ごと中間伝動軸3及びユニバーサルジョイントカバー5の全体を取り外し、出力側のユニバーサルジョイント30と第2カバー体52の前端側の大径部52bとの位置をずらして、前記チャンネル状部材の横側面部分53aに設けてある係止ピン55の抜け止め手段の止めピン57をピン孔55aから外すことによって行う。
【0039】
〔別実施形態の1〕
第1カバー体51と第2カバー体52と接続する係合連結部の構造としては、最良の実施形態で説明したように、
周壁部54の相対向する位置の左右の横側面部分54aに互いに同一の横一側方に向けた状態で突出させた係止ピン55,55と、その係止ピン55,55に対して係合する第2カバー体52側の係合孔56,56との組み合わせで構成されたものに限らず、次のように構成したものであってもよい。
【0040】
図10(a)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が外嵌し、第1カバー体51側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、第2カバー体52側では、一方の係止ピン55に対して係合する係合孔56と、他方の係止ピン55を端部側から係入可能な凹入溝状の切り欠き56a(図7に示す第2カバー体52の下手側カバー部52Bにおける機体前端側に形成された切り欠き部と同様な形状)とを設けて、係合孔56に挿入した係止ピン55の先端側に、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けている。
【0041】
〔別実施形態の2〕
図10(b)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が内嵌し、第2カバー体52側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、第1カバー体51側では、一方の係止ピン55に対して係合する係合孔56と、他方の係止ピン55を端部側から係入可能な凹入溝状の切り欠き56a(図7に示す第2カバー体52の下手側カバー部52Bにおける機体前端側に形成された切り欠き部と同様な形状)とを設けて、係合孔56に挿入した係止ピン55の先端側に、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けている。
【0042】
〔別実施形態の3〕
図11(a)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が外嵌し、第1カバー体51の周壁部の横側面部分の一方側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、その周壁部の横側面部分の他方側には、前述の図10(a),(b)に示すものと同様な凹入溝状の切り欠き56aが形成されている。
第2カバー体52の周壁部の横側面部分には、一方側に前記第1カバー体51側の係止ピン55を挿入可能な係合孔56と、その他方側で周壁部の横側面部分から径方向の外側へ向けて突出する係止ピン55とが設けられ、前記第2カバー体52の係止ピン55が第1カバー体51の凹入溝状の切り欠き56aに係入するように構成されている。
前記第1カバー体51の周壁部の径方向で内側へ突出する係止ピン55の先端側には、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けてある。
【0043】
〔別実施形態の4〕
図11(b)は、第2カバー体52に対して第1カバー体51が内嵌し、第2カバー体52の周壁部の横側面部分の一方側に径方向で内側へ突出する係止ピン55を設け、その周壁部の横側面部分の他方側には、前述の図10(a),(b)に示すものと同様な凹入溝状の切り欠き56aが形成されている。
第1カバー体51の周壁部の横側面部分には、一方側に前記第2カバー体52側の係止ピン55を挿入可能な係合孔56と、その他方側で周壁部の横側面部分から径方向の外側へ向けて突出する係止ピン55とが設けられ、前記第1カバー体51の係止ピン55が第2カバー体52の凹入溝状の切り欠き56aに係入するように構成されている。
前記第2カバー体52の周壁部の径方向で内側へ突出する係止ピン55の先端側には、前述の最良の実施形態で説明したものと同様な抜け止め手段を設けてある。
【0044】
〔別実施形態の5〕
ユニバーサルジョイントカバー5を構成する第1カバー体51、及び第2カバー体52でいう「筒状」とは、完全な円筒形を指すだけのものではなく、楕円や矩形、あるいは任意の種々の断面形状であるものをも含むものである。また、この「筒状」とは、周方向、あるいは筒軸線方向での全体が完全に遮蔽された構造を指すだけのものであはなく、部分的に開口や切り欠きがあったり、網状に形成されたものをも含む。
要は、ユニバーサルジョイント30や中間伝動軸3が他物と接触することを回避し得る程度に、ユニバーサルジョイント30や中間伝動軸3の外周側を包囲できる構造であればよい。
【0045】
〔別実施形態の6〕
ユニバーサルジョイントカバー5における第2カバー体52は、上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとが相対摺動する構造であるものに限らず、上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとの間、もしくは上手側カバー部52Aと下手側カバー部52Bとのそれぞれに、蛇腹状の筒部分などの伸縮可能な構造を設けても良い。
【0046】
〔別実施形態の7〕
乗用型草刈機におけるモーア4の仕様としては、リヤディスチャージ仕様に構成されたものに限らず、マルチング仕様に構成されたものや、サイドディスチャージ仕様に構成されたものなど、適宜の仕様を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】乗用型草刈機の全体側面図
【図2】モーア部分を示す平面図
【図3】モーア部分を示す側面図
【図4】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す側面視での断面図
【図5】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す平面視での断面図
【図6】ユニバーサルジョイントカバー部分を示す分解斜視図
【図7】第1カバー体部分を示す正面視での断面図
【図8】第3カバー体部分を示す正面視での断面図
【図9】伝動構造とユニバーサルジョイントカバー部分を示す操作説明図
【図10】ユニバーサルジョイントカバー部分の別実施形態を示す説明図
【図11】ユニバーサルジョイントカバー部分の別実施形態を示す説明図
【符号の説明】
【0048】
1 走行機体
3 中間伝動軸
4 モーア
5 ユニバーサルジョイントカバー
30 ユニバーサルジョイント
31 第1軸部
32 第2軸部
40 モーアデッキ
51 第1カバー体
52 第2カバー体
53 第3カバー体
55 係止ピン
56 係合孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバーであって、
前記一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体と前記他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体とを備え、
これらの第1カバー体と第2カバー体とは、互いの筒軸線方向での端部同士を接続することにより、前記ユニバーサルジョイント部分を含む前後の軸部分を覆うとともに、第1カバー体の端部が第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備え、
前記第1カバー体には、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備え、
前記第2カバー体は、前記固定部での固定が解除された第1カバー体と前記第2カバー体とが連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあることを特徴とするユニバーサルジョイントカバー。
【請求項2】
一方の伝動軸が伝動上手側に位置する駆動側伝動軸であり、他方の伝動軸が伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸であり、第1カバー体が前記駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の駆動側カバー体であり、第2カバー体が前記被駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の被駆動側カバー体である請求項1記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項3】
係合連結部は、第2カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面に形成された一対の係合孔と、第1カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成された一対の係止ピンと、前記係合孔に対する係止ピンの抜け止め手段とで構成されている請求項1又は2記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項4】
第1カバー体の固定部は、この第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えて、その腕杆の延出端側で位置固定されるように構成してある請求項1〜3の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバーを、自走機体からモーアへの伝動部に備えた乗用型草刈機。
【請求項1】
一方の伝動軸と、他方の伝動軸とを、ユニバーサルジョイントを介して相対姿勢変更自在に連結して構成された軸伝動部を覆うユニバーサルジョイントカバーであって、
前記一方の伝動軸の外周を覆う筒状の第1カバー体と前記他方の伝動軸の外周を覆う筒状の第2カバー体とを備え、
これらの第1カバー体と第2カバー体とは、互いの筒軸線方向での端部同士を接続することにより、前記ユニバーサルジョイント部分を含む前後の軸部分を覆うとともに、第1カバー体の端部が第2カバー体の対向端部に嵌合して、その嵌合箇所の内側に、互いの筒軸線方向での相対移動を抑止、及び抑止解除可能な係合連結部を備え、
前記第1カバー体には、その第1カバー体を前記一方の伝動軸が備えられた箇所に対して位置固定する固定部を備え、
前記第2カバー体は、前記固定部での固定が解除された第1カバー体と前記第2カバー体とが連結されたままの状態で、前記ユニバーサルジョイント部分を外部に露呈させるように、前記第1カバー体との接続端側を他端側へ移動可能に構成してあることを特徴とするユニバーサルジョイントカバー。
【請求項2】
一方の伝動軸が伝動上手側に位置する駆動側伝動軸であり、他方の伝動軸が伝動下手側に位置する被駆動側伝動軸であり、第1カバー体が前記駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の駆動側カバー体であり、第2カバー体が前記被駆動側伝動軸の外周を覆う筒状の被駆動側カバー体である請求項1記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項3】
係合連結部は、第2カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面に形成された一対の係合孔と、第1カバー体の筒軸心を挟んで相対向する横側面位置で互いに同一の横側方に向けて形成された一対の係止ピンと、前記係合孔に対する係止ピンの抜け止め手段とで構成されている請求項1又は2記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項4】
第1カバー体の固定部は、この第1カバー体と第2カバー体との連結箇所よりも第2カバー体の他端側寄りに延出された腕杆を備えて、その腕杆の延出端側で位置固定されるように構成してある請求項1〜3の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバー。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のユニバーサルジョイントカバーを、自走機体からモーアへの伝動部に備えた乗用型草刈機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−65835(P2010−65835A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235698(P2008−235698)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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