説明

ユニークな防弾構成物

一方向性の防弾繊維を有する布地層を少なくとも二層有する複数の布地層と、このような複数層の各層間にあり、防弾繊維に付着しているが、それを包み込んではおらず、かつ布地層に浸み込んではいない樹脂層とを含む防弾複合物。該防弾繊維の層は相互に90°±5°であり、該防弾繊維は第二の織物中に織り込まれて固定化される。該第二の織物は防弾繊維よりも十分低いテナシティおよび伸び弾性率を持つ繊維で形成されている。該防弾繊維は少なくともデニール当たり約15グラムのテナシティおよび少なくともデニール当たり約40グラムのモジュラスを有している。樹脂層中の樹脂は、少なくとも約7000psiのモジュラスを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、35USC119(e)に従って、出願日2003年5月29日の米国仮特許出願第60/474,519号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、防弾複合物に関する。
【背景技術】
【0003】
可撓性樹脂を、高性能の繊維から織られた織物と一緒に、複合物装甲パネルの製作に使用することは、多くの研究および多数の特許の題材とされてきた。この課題について一般に同意されているところは、複合物の製作に用いられる樹脂系が柔軟であればあるほど、得られるパネルの防弾性能が良好になるということである。また、被弾の際に、複合物中で層間剥離が起こるほど、樹脂の防弾繊維への結着は十分に貧弱であるべきである。この必要条件は、被弾の際に複合物中の樹脂が十分な低強度で断裂し、エネルギーを散逸させるなら無視できる。この装甲設計の基礎知識を考慮に入れると、装甲積層物品の設計は、パネルの防弾性能とパネル使用のための構造的の諸要件との兼ね合いになる。ルンの米国特許第3,000,772号,1961は、優れた防弾性能のための可撓性樹脂体系の要件を説明した最初の特許の一つである。この特許は、ポリエチレンフィルムを一方向性のガラス織物と共に使用することに係る。このガラス織物は、経糸方向のガラス繊維および緯糸方向の二次繊維を持って形成されている。この織物を、その上と下の織物層と90度交錯させ積層した後に、プレスして積層物としている。これは、層のクロス積層として知られている標準手法である。デノミーの米国特許第3,956,447号、1976は、熱硬化性または熱可塑性の樹脂を用いた、米国軍隊用の防弾ヘルメットの製作を説明している。この特許では、ヘルメット用に好ましい樹脂系は、PVB/フェノール樹脂系である。マサチュセッツ州ナティックにある米国陸軍研究工学開発センターの研究者であるロイライアブルは、彼の著書「防弾材料および浸透機構、エルセビア科学出版社、1980年、108頁」で、ヘルメット開発の際に、フェノール樹脂だけでは、良好な防弾結果を得るには剛直すぎること、また、ヘルメットに要求される剛性を維持しながら樹脂に多少の伸びおよび可撓性を導入して防弾性能を改善するために、系へPVB成分を添加することが見出されたと説明している。
【0004】
幾つもの特許が、熱可塑性樹脂およびフィルムについての複合物中での使用を扱っている。ランカスターらの米国特許第4,678,702号、1987は、樹脂としてのサーリンの使用を教示し、そこでは、熱および圧力下で、織布中にフィルム形状のサーリンが流れ込んで、繊維を包み込み、可撓性の防弾複合物を形成する。ドナバンの米国特許第4,574,105号1986が教示しているのは、ナイロンとケブラーとの交互層の使用であり、そこでは、熱および圧力下で、ナイロンが織られたケブラーに付着して複合物を形成するが、織物にはしみ込まない。アンドリューパークの一連の特許(米国特許第5,437,905号、第5,443,882号、第5,443,883号、第5,547,536号、第5,635,288号、第5,935,678号)が扱っているのは、一方向性繊維の層の間でのフィルムの使用であり、そこではフィルムがクロス積層された繊維の保持に用いられるが、本質的に層中には浸み込まない。アライドシグナルの米国特許第4,623,514号が扱っているのは、モジュラスが6000psi.未満である樹脂による、一方向性繊維のクロス積層中の高性能繊維の実質的な包み込みである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本特許出願の首題は、より優れた防弾複合物を製造するための、熱可塑性樹脂とユニークな織物の使用である。その樹脂は、防弾繊維への良好な付着と高い伸び弾性率とを有している。この性質の組み合わせは、従来の織布またはクロス積層の一方向性繊維と共に使用されても、優れた防弾複合物は得られないであろう。本発明のユニークな織物は、本願譲受人が譲り受けている米国特許出願第10/135,573号(出願日:2002年5月1日;WO02/090866)の首題であり、引用によって、この出願の開示がここに組み込まれる。この織物は、比較的細い径の、低モジュラス・高伸長の繊維により、0/90の一方向性配向した防弾繊維を有する、偽一方向性の織物である。この織物は、本願の譲受人であるバーデイ社により、センチネルファブリックの商品名で販売されている。この織布に織り込まれる防弾繊維は、少なくともデニール当たり15gのテナシティ、および少なくともデニール当たり約400gのモジュラスを持つ、いかなる高強度の繊維でもよい。全ての市販防弾繊維が、センチネルファブリックに織り込まれた。本発明で適切に機能し、利用できる樹脂は、高性能繊維に付着し、かつ少なくとも約7,000psiのモジュラスを持つ樹脂である。前記の第10/135,573号(WO 02/090866)に記述されているものを含み、このようなモジュラス値を持つ樹脂を用いた防弾複合物は、以前には製造されたことがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点からは、複数の布地層と、樹脂層とを含む防弾複合物であって、一方向性の防弾繊維を有する布地層を少なくとも二層有し、該防弾繊維の層は相互に90°±5°であり、該防弾繊維は第二の織物中に織り込まれて固定化され、該第二の織物は防弾繊維よりも十分低いテナシティおよび伸び弾性率を持つ繊維で形成されており、該防弾繊維は少なくともデニール当たり約15グラムのテナシティおよび少なくともデニール当たり約40グラムのモジュラスを有しており、および樹脂層は、このような複数層の各層間にあり、防弾繊維に付着しているが、それを包み込んではおらず、かつ織物層に浸み込んではいなく、該樹脂層中の樹脂は、少なくとも約7000psi.のモジュラスを有している防弾複合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
被弾の際に、繊維が自由に動き、複合物が層間剥離するという基本的要件は、本発明では、無視されてはいない。繊維が動き複合物が層間剥離する自由は、布地間の樹脂よりはむしろセンチネルファブリックの低モジュラスの包み込み繊維によって与えられていた。強力にくっ付き合った、非常に剛直な防弾繊維の二層が、剛直であるが非常に薄い複合物を作り出す。こうした剛直で薄い層の積み重ねは、剛直層が柔軟な繊維によって結合されたとしても、剛直で硬い複合物を生成する。センチネルファブリック層で構成された複合物では、この結合した一対の繊維の層の一方が、センチネルファブリックの一方向性の表面層であり、他方の強力にくっ付いた繊維層が、第二のセンチネルファブリックの底層である。本発明では、センチネルファブリックが、同じ表面を上にして層状に重ねられ、織物は全て、経糸が同方向に向けられる。この配置は、隣接した一方向性の防弾繊維が0/90度で配向した複合物を生ずる。樹脂は、隣接する布地層を結着して、積層された0/90層の剛直層を形成する。これらの積層された0/90層は、低モジュラスの包み込み繊維によって、その上下の層に連結される。得られる複合物の完全性および諸性質は、樹脂、樹脂量および包み込み繊維によって決定される。
【0008】
この柔軟な包み込み繊維は、必要とされる動きと複合物層の層間剥離を与え、従来の防弾複合物では見られぬ、より大きな接着力を持つ樹脂および接着剤の使用をも許容する。この柔軟な包み込み繊維は、従来使用されたものより遥かに高い伸び弾性率を持つ樹脂および接着剤の使用をも許容する。層間剥離の抵抗力は、包み込み繊維によって調節できるが、複合物の剛性および硬度は、熱可塑性樹脂のタイプおよび量、並びに、それの繊維への付着力で決まる。少なくとも約7,000psi、好ましくは約25,000から約30,000psiの範囲内のモジュラスを持ち、繊維への強力な結着がある高モジュラス樹脂の使用は、樹脂が織物に浸み込まなく、また防弾繊維を実質的に包み込まないことを要求している。このどちらかが起これば、防弾繊維の動きの自由が損なわれ、繊維のエネルギー散逸能が相当に損なわれる。
【0009】
センチネルファブリックの層間の樹脂の配置は、幾つかの方法で制御できる。一つの方法は、樹脂量の制限であり、織物の表面以外までをも濡らすには足りない樹脂の使用などである。一般に、樹脂使用量は、複合物重量の約20 重量%を超えない。このような小量の樹脂量で、剛直な複合物を作るには、樹脂が極めて良好に防弾繊維に付着することが要求される。複合物の剛性は、そうすると互いに強力にくっついている二層の高モジュラスの繊維によって与えられる。第二の方法は、付着に要求される温度では流れないほどの、高粘度の樹脂の使用である。多くのフィルム形態の樹脂が、この要件を充たす。低密度ポリエチレンは、このようなフィルムの一つである。低密度ポリエチレンは、軟化して、超高分子量ポリエチレンの繊維で織ったセンチネルファブリックに付着するが、付着に要求される温度では、実質的に織物の中までは入らない。この場合の超高分子量ポリエチレンとしては、下記でより詳記され、スペクトラおよびダイネマの商品名で売られているタイプの防弾繊維が挙げられる。熱可塑性ナイロンフィルム並びにアイオノマーおよびポリウレタンのフィルムを含む、他のフィルムが、同様な風に機能する。
【0010】
防弾性能を維持しながら、積層物品の剛性および硬度を規制する能力には、幾つかの利点がある。停止すべき脅威が、9 mm銃弾のような比較的に変形し易い脅威である時には、硬い積層物品の方が軟らかい積層物品より銃弾を変形させ、大きく変形した銃弾は通常停止し易い。同様に、鋼外被のトカロフ銃弾のような、比較的非変形性の銃弾は、より可撓性の積層物品によって容易に停止させられ、そこでは銃弾がより緩やかに停止する。積層物品は、また、異なる硬度や剛性の層で組み立ててもよい。この構造の一例は、セラミック装甲板を裏打ちに用いた二成分積層物品である。硬直した硬い積層物品層が、セラミック板の背後に直接配置されていて、被弾の際にセラミックを支持する。この積層物品の軟らかい方の層は、複合物の裏面を構成し、層間剥離によってエネルギーを吸収し、こうして装甲板の着用者に伝達されるエネルギーを最小限度にする。
【0011】
本発明の複合物中に用いられる織物層は、互いに約90度をなす二つの一方向性繊維の層を持ち、第二の織布によって固定され、また、前記の米国特許出願第10/135,573号(WO 02/090866)中に、十分説明されている。
【0012】
ここで用いられる防弾繊維は、デニール当たり約15gのテナシティおよびデニール当たり少なくとも約400gの伸び弾性率を持つ。用いることのできる防弾繊維の例は、アラミド繊維、伸長鎖ポリエチレン繊維、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維およびガラス繊維である。アラミドおよびコポリマーアラミドの繊維は、デュポン、トワロンプロダクツおよび帝人により、それぞれ商品名ケブラー、トワロンおよびテクノラとして商業的に製造されている。伸長鎖ポリエチレン繊維は、ハネウェル、DSM、三井および東洋紡により、それぞれ商品名スペクトラ、ダイネナおよびテレミロンとして商業的に製造されている。ポリエチレン繊維およびフィルムは、シンセティックインダストリーにより製造されて、商品名テンシロンとして売られている。PBOは、東洋紡により商品名ザイロンとして製造されている。液晶ポリマー類は、ライセンスを受けて商品名ベクトロンとして製造されている。他の防弾繊維を使用してもよい。
【0013】
固定用繊維(包み込み繊維と呼んでもよい)は、広い範囲の繊維から選ばれてよい。そのような繊維は、木綿、羊毛、サイザルアサ、リネン、ジュートおよび絹などの天然繊維を含む。この繊維は、再生セルローズ、レーヨン、ポリノジックレーヨンおよびセルローズエステル類などの人造繊維をも含む。この繊維は、更に、例えばポリアクリロニトリルのようなアクリル繊維;アクリロニトリル塩化ビニル共重合体のようなモダクリル;例えばポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカノアミド(ナイロン11)のようなポリアミド;ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート;ゴム、合成ゴムおよびサランなどの合成繊維を含む。ガラス繊維も用いられる。包み込み繊維のデニールは、防弾繊維の寸法に応じて、約20ないし約1000 デニールの範囲でよい。一般に、包み込み繊維の直径は、防弾繊維の直径の約14%まで、好ましくは約2.5%である。包み込み繊維は、一般には、有する最大伸び弾性率が1777g/texで、3%伸長時に最高強度を有し、これは防弾繊維では約0.31%である。
【0014】
この布地において、防弾繊維のインチ当たりの繊維密度は、全てが同寸法の防弾繊維で構成される平織りの織物に織りこめる、最大目詰まりの約40ないし約85%、好ましくは50±1%である。
【0015】
本発明の好ましい態様では、使用される繊維は高モジュラスのポリエチレン繊維(スペクトラ繊維)、または少なくともデニール当たり15gのテナシティ、および少なくともデニール当たり400gの伸び弾性率を持つ、ポリアラミド繊維(ケブラー織物)であり;樹脂は、好ましくは密度が約0.92ないし約0.94g/m3である低密度ポリエチレンフィルムである。低密度ポリエチレンの高モジュラス伸長鎖ポリエチレン繊維への付着は、きわめて良好であり、単なる機械的付着では説明はできない。このフィルムは、伸長鎖構造中に結合するか拡散していると思われる。スペクトラと低密度ポリエチレンフィルムとで構築されたこの積層物品は、従来技術を凌駕する注目すべき性能改善を見せている。この低密度ポリエチレンフィルムの総厚みは、約0.35ないし約1.75 milでよく、単層または複数層で与えられる。
【実施例】
【0016】
実施例1
本例は、比較例である。
【0017】
1200デニールのスペクトラ(登録商標)900糸で織られた、平織りのセンチネルファブリック、バーデイ社型番4850が、熱可塑性ブロックコポリマーのクラトン1107Dで被覆された。この織物は、打ち込み数カウント16×16と面積密度184g/m2とを持っていた。この樹脂は、装甲積層物品に用いられる最も普通の樹脂であり、6,000 psiよりも低いモジュラスを持つ。クラトンの被覆は18重量%である。この被覆された織物を用い、加熱水圧プレス内で18層を合体して、16"×16"積層物品が仕上げられる。この材料は、華氏240度、150PSIで、30分間プレスされた。このパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9 mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が測定された。V-50は、銃弾がパネル内に止まるか、それともパネルを貫通するかの確率が決まる速度である。このV-50値は、パネルの防弾性能を測る普通の尺度であり、防弾設計精通者に知られているものである。これは、所定タイプの発射体の50%が、パネルに衝突するとき、完全に標的を貫通する速度である。このパネルのV50は1253 ft/secであった。
【0018】
実施例2
本例は、本発明の一態様を例証する。
【0019】
実施例1で用いた布地の18層が、布地の各層間に、3層の0.35milの低密度ポリエチレンフィルムと貼り合わせられた。この低密度ポリエチレンフィルムは、0.92 g/m3の密度および、25,000ないし29,000psi.のモジュラスを持っていた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が、測定された。このパネルのV50は、実施例1のV50よりも有意に高い1440 ft/secと画定された。
【0020】
実施例3
本例は、本発明の更なる一態様を例証する。
【0021】
実施例1で用いた布地の18層が、布地の各層間に、0.35 milのPEフィルムの一層と貼り合わせられた。このPEフィルムは、例2で規定されたのと同じ性質を持っていた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9 mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が、測定された。このパネルのV50は、1516 t/secと決定した。このパネルのV50は、実施例1よりも有意に高かった。
【0022】
実施例4
本例は、本発明の更なる一態様を例証する。
【0023】
650デニールのスペクトラ1000糸で織られたセンチネルファブリックの34層が、布地の各層間に、0.35milのPEフィルムの一層と貼り合わせられた。このPEフィルムは、実施例2で示されたものと同じ性質を持っていた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が測定された。このパネルのV50は、1699 ft/secであった。
【0024】
実施例5
本例は、本発明の追加の一態様を例証する。
【0025】
650デニールのスペクトラ1000糸で織られた、実施例4と同じセンチネルファブリックの34層が、織物の各層間に、0.35milのPEフィルムの三層と貼り合わせられた。このPEフィルムは、実施例2で示されたものと同じ性質を持っていた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が測定された。このパネルのV50は、1440 ft/secであった。
【0026】
実施例6
この例は、比較例である。
1200デニールのスペクトラ900糸で織られたスペクトラ織物、バーデイ型番4431が、実施例1で規定されたのと同じ性質を持つ0.35milのPEフィルムと貼りあわされた。この積層織物を用い、加熱水圧プレスで15層を合併して、16"×16"積層物品が仕上げられた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、重さが平方フィート当たり0.74ポンドであった。この複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が、測定された。このパネルのV50は、1214ft/secと決定した。この構造の織物は、商業的に入手できる、より一般的なスペクトラ織物の一つである。
【0027】
実施例7
本例は、本発明の更にその上の一態様を例証する。
【0028】
1200デニールのスペクトラ900糸で織られた、センチネルファブリックの28層が、織物の各層間に、0.35milのPEフィルムの一層と貼り合わせられた。このスペクトラ繊維とこのPEフィルムとは、比較例6で規定されたのと同じ性質を持っていた。この材料は、華氏240度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。仕上げられた複合物は、重さが平方フィート当たり0.68ポンドであった。この複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9 mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が、測定された。このパネルのV50は、1509 ft/secと決定した。このパネルのV50は1516 ft/secであった。このパネルは比較例6よりも、重量が8%低いにもかかわらず、そのV50は、比較例6のV50よりも有意に高かった。
【0029】
実施例8
本例は、比較例である。
【0030】
バーデイファブリック、型番2182の12層が、市販のバーデイ樹脂系、ブラックサーモで、貼り合わせられた。この織物は、3000デニールのケブラー29糸の平織りである。このブラックサーモ樹脂系は、約1000 psiのモジュラスを有している。この材料は、華氏250度の温度、150PSIで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。プレスされたパネルは、1.20lbs/ft2の繊維表面密度を有していた。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9 mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が、測定された。このパネルのV50は1211 ft/secであった。
【0031】
実施例9
本例は、比較例である。
【0032】
バーデイ織物、型番2183の12層が、専売のバーデイ 樹脂系、ブラックサーモで、貼り合わせられた。この織物は、3000デニールのトワロンタイプ1000糸の平織りである。このブラックサーモ樹脂系は、約1000psiのモジュラスを有している。この材料は、華氏250度の温度、150psiで、30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。プレスされたパネルは、1.20lbs/ft2の繊維表面密度を有していた。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9 mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が測定された。このパネルのV50は1188 ft/secであった。
【0033】
実施例10
本例は、本発明の更なる一態様を例証する。
【0034】
バーデイファブリック、型番2858の12層が、密度0.92 g/m3で1.75milのPEフィルムと貼り合わせられた。この織物は、3000デニールのケブラー29糸の平織りである。このPEフィルムは、25,000ないし29,000psiの範囲内の伸び弾性率を有している。この材料は、華氏240度の温度、150psiで30分間プレスされた。そのパネルが、華氏180度まで冷却されてから、圧が開放された。プレスされたパネルは、0.99lbs/ft2の繊維表面密度を有していた。仕上げられた複合物は、腕木に取り付けられ、裏打ち材料なしで、9mmの正規の金属装甲銃弾で撃たれた。パネルのV-50が測定された。このパネルのV50は、1440ft/secであった。このパネルは、実施例8および9のパネルよりも、表面密度が著しく低いに関わらず、そのV50が有意により高かった。
この開示を要約すれば、本発明は、優秀な防弾性能を持つ新規な弾道向き複合体を提供する。本発明の範囲内で、種々の修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の布地層と、樹脂層とを含む防弾複合物であって、一方向性の防弾繊維を有する布地層を少なくとも二層有し、該防弾繊維の層は相互に90°±5°であり、該防弾繊維は第二の織物中に織り込まれて固定化され、該第二の織物は防弾繊維よりも十分低いテナシティおよび伸び弾性率を持つ繊維で形成されており、該防弾繊維は少なくともデニール当たり約15グラムのテナシティおよび少なくともデニール当たり約40グラムのモジュラスを有しており、および樹脂層は、このような複数層の各層間にあり、防弾繊維に付着しているが、それを包み込んではおらず、かつ布地層に浸み込んではいなく、該樹脂層中の樹脂は、少なくとも約7000psiのモジュラスを有している防弾複合物。
【請求項2】
防弾繊維が、アラミド繊維、伸長鎖ポリエチレン繊維、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維およびガラス繊維からなる群から選ばれる、請求項1の複合物。
【請求項3】
第二の織物の繊維が、約20〜約1000の範囲内のデニールを持つ、請求項1の複合物。
【請求項4】
第二の織物の繊維が、天然繊維および合成繊維からなる群から選ばれる、請求項1の複合物。
【請求項5】
天然繊維が、木綿、羊毛、サイザルアサ、リネン、ジュートおよび絹からなる群から選ばれる、請求項4の複合物。
【請求項6】
合成繊維が、再生セルローズ、レーヨン、ポリノジックレーヨン、アクリル繊維、モダクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム、合成ゴム、およびサランからなる群から選ばれる、請求項4の複合物。
【請求項7】
第二の織物の繊維が、ガラスである、請求項4の複合物。
【請求項8】
第二の織物の繊維が、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル塩化ビニル共重合体、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロアミド、ポリウンデカノアミド、ポリエチレンアジパミド、ポリカプロアミド、ポリウンデカノアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる、請求項4の複合物。
【請求項9】
第二の織物の繊維が高い伸びを持つ、請求項1の複合物。
【請求項10】
第二の繊維が、複合物上への弾丸の衝撃によって、防弾繊維より前に破断する、請求項1の複合物。
【請求項11】
第二の織物の繊維が、防弾繊維の直径の約14%までである直径を持つ、請求項1の複合物。
【請求項12】
第二の織物の繊維が、防弾繊維の直径の約2.5%である直径を持つ、請求項11の複合物。
【請求項13】
第二の織物の繊維が、1777g/texの最高伸び弾性率および3%伸張時に最高強度を持ち、これは防弾繊維では0.31%である、請求項1の複合物。
【請求項14】
第二の織物の繊維が、1777g/texの最高伸び弾性率を持つ、請求項1の複合物。
【請求項15】
第二の織物の繊維が、3%伸張時に最高強度を持ち、これは防弾繊維では0.31%である、請求項1の複合物。
【請求項16】
防弾繊維のインチ当たりの繊維密度が、全てが同寸法の防弾繊維で構成される平織りの織物に織りこめる、最大目詰まりの約40〜約85%である、請求項1の複合物。
【請求項17】
防弾繊維のインチ当たりの繊維密度が、全てが同寸法の防弾繊維で構成される平織りの織物に織りこめる、最大目詰まりの50±1%である、請求項1の複合物。
【請求項18】
樹脂層が、約25,000〜約30,000のモジュラスを持つ樹脂で形成される、請求項1の複合物。
【請求項19】
樹脂層内の樹脂が、複合物の重量の約20重量%以下である、請求項1の複合物。
【請求項20】
樹脂層が、樹脂のフィルムから形成される、請求項1の複合物。
【請求項21】
防弾繊維がポリエチレンで形成され、樹脂層が低密度ポリエチレンフィルムから形成される、請求項1の複合物。
【請求項22】
低密度ポリエチレンフィルムが、約0.35〜1.75milの厚さを持つ、請求項21の複合物。

【公表番号】特表2007−533942(P2007−533942A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529500(P2006−529500)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000779
【国際公開番号】WO2004/106838
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503404280)バーデー、 インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】BARRDAY, INC.
【Fターム(参考)】