説明

ヨウド液体製剤

【課題】抗癌剤あるいは抗ウイルス剤として優れた人ガン細胞成長抑制効果を有するヨウド液体製剤を提供する。
【解決手段】 ヨウ化カリウム及び/またはヨウ化水素換算で有機ヨウ素0.1重量%〜4重量%のヨウ素分を含む水溶液に対し1000ppm以上のリキリチゲニンを添加する。
ヨウ素分には、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群のうちの1以上から誘導された有機ヨウ素を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤あるいは抗ウイルス剤として優れた人ガン細胞成長抑制効果を有するヨウド液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素あるいはヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等を含有するヨウ素製剤は、周知のように、古くから皮膚表面の一般消毒、創傷、潰瘍の殺菌・消毒等に広く用いられており、特にヨウ素の有機複合化合物であるヨードグリセリン、ポリビニルアルコールヨウ素あるいはポビドンヨードなどを含有するヨウ素製剤は、皮膚表面の一般消毒のほか、咽頭炎、扁桃炎等の口腔創傷の感染予防、口腔内消毒に或いは角膜ヘルペス、洗眼殺菌などの予防・治療剤として市販され、最近では、ヨウ素成分として、ポビドンヨードを含有せしめたヨウ素製剤の開発が多くなされ、ゼラチン及び糖類等にポビドンヨードを含有せしめた外用剤も提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、殺ウイルス効果に着目して、ヨウ素分として0.6〜0.01重量%のヨウ素及び/又はヨウ素のアルカリ金属塩を含有する膣又は口腔粘膜用水性消毒液が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
一方、医師による治療に用いられるヨウ素剤としてはヨウ素カリウム丸(ヨウ素分38mg/錠)、ヨウ化カリウム液(KI液ヨウ素分10mg)、ヨウ素レシチン(50〜100μg/錠)等があり、甲状腺機能亢進症を伴う甲状腺腫瘍(ヨウ化カリウム1日5〜50mg)、気管支炎及び喘息に伴う喀痰喀出困難症・第三期梅毒(ヨウ化カリウム1日0.3〜2.0g)等に使用されている。また、アイソトープ131I放射性ヨード治療剤として甲状腺治療に活用され、更に原子力災害時における安定ヨウ素剤(放射線の内部被爆による甲状腺癌の予防:1日服用量ヨウ化カリウム100mg−ヨウ化カリウム丸2丸、ヨウ素分76mg−WHOは100mg)として推奨されている。
【0004】
他方、1920年頃から1935年頃にかけての研究成果として、タラ肝油、竜脳、クレオソート及びヨウ素から製造されたヨウ素製剤、通称「マキノヨード若しくはネオ・マキス」は、高血圧症、血管硬化症から結核、喘息、胃潰瘍、白血病等の他、癌・エイズ等多岐に渡る薬剤効果があると報告されている。ヨードの癌(乳癌)増殖抑制効果も期待されるとの報告もある(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
しかし、ヨウ素の摂取基準は所要量150μg/日、許容上限摂取量3mg/日(第6次日本人の栄養所要量の食事摂取基準)であり、服用ヨウ素薬剤の一日有効ヨウ素量はその利益と不利益(ヨウ素中毒症)を考慮して微量使用であり、最大で100mg(WHOや多くの諸外国における奨励服用量−安定ヨウ素剤の場合)とされている。ヨウ素は反応性が高く、人体に対して非常に強い毒性を示すことから劇薬に指定されており、従来の消毒薬或いは止血薬(ヨードチンキ等)用のヨウ素製剤においても1%以下の含有量のものとして使用され、また服用或いは注射用としても大量投与・長期運用による副作用の可能性のため慎重投与すべきとし、1日摂取量最大100mg以下で使用されている。
【0006】
しかしながら、抗ウィルス及び癌治療効果を発揮させるには、上記基準量以上の投与摂取を必要としており、特許文献4では副作用がなく、注射液あるいは経口投与の可能な液状ヨウ素製剤として、ヨウ素分として1.0重量%〜1.5重量%相当量のヨウ化ナトリウムを含有する弱アルカリ性溶液から成るヨウ化ナトリウム含有製剤が提案されたが、ヨウ素がナトリウムと結合した状態で存在すると、ヨウ素自体の持つ疾病に対しての治療、予防作用が、ナトリウムが持つ作用に拘束され、必ずしも効率良く体内で吸収されず、治療効果を発揮するとはいえないので、これに代えて特許文献5ではヨウ化水素分として3.0〜5.0重量%相当量の有機ヨウ素を含有する、pHが7〜8の弱アルカリ性であるコロイド溶液である液体製剤が提案されているに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−40563号公報
【特許文献2】特開2001−122790号公報
【特許文献3】特開平6−172192号公報
【特許文献4】特開2004−315470号公報
【特許文献5】特開2008−143808号公報
【非特許文献1】日本癌治療学会誌、1994年3月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ヨード中毒等の副作用が極めて低い癌あるいはエイズの予防及び治療効果を有する、安全で、経口投与が可能で、服用することもできる高濃度のヨウ素を含有する液体製剤を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、0.1重量%以上4重量%の高濃度のヨードの液体製剤であっても所要量のリキリチゲニン(以下L−ジェニンという)と併用すると、ヨード中毒等の副作用が極めて低く、ヨード単独の場合より癌あるいはウイルス感染の予防及び治療に高い相乗効果を有することを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、ヨウ化カリウムまたはヨウ化水素換算で有機ヨウ素0.1重量%〜4重量%のヨウ素分と、0.1重量%以上のリキリチゲニンとを含むことを特徴とする人ガン細胞成長抑制液体製剤にあり、ヨウ素分はヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して形成されるヨウ化カリウム水溶液及び/またはグリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群のうちの1以上から誘導された有機ヨウ素を含むコロイド水溶液が使用される。
【0010】
本発明によれば、ヨウ素がヨウ化カリウム水溶液またはコロイド状の安定した有機ヨウ素として存在し、L−ジェニンの作用により、ヨウ素の持つヨード中毒等の毒性を排除できるので、服用、飲用として安全に使用することができる。また、L−ジェニンは上記ヨード中毒の傾向を排除するだけでなく、それ自身も人ガン細胞の成長を抑制する効果を有するのでヨウ素とともに、体内に良好に吸収され、ホルモン系を活性化し、免疫系や内分泌系の恒常性を維持させることができ、患部の細胞や病原菌には速やかに作用し、放射線療法においては、細胞核を被爆させて死滅させることができるヨウ素の持つ薬効を増強する。
したがって、本発明のL−ジェニンを併用したヨウ素液体製剤は、安全性が高く、癌及びウイルス感染の予防及び治療に大きな効果が期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の液体製剤に使用する高濃度のヨウド液は、一旦ヨウ化カリウムの水溶液を調整し、これにヨードを溶解して0.1から4重量%の高濃度のヨウ化カリウム液とするか、有機ヨウ素をコロイド状に分散させた、弱アルカリ性のコロイド溶液とするのがよい。コロイド溶液の製造方法としては、微量の過酸化水素を含有するアルカリイオン水に適量の水酸化ナトリウムを添加し、溶解した後、有機ヨウ素を添加し、混合・撹拌する。適正なpHに調整すると、長時間安定なコロイド溶液を得ることができる。
【0012】
有機ヨウ素としては、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群の1以上から誘導された有機ヨウ素に限らず、毒性のないものであれば使用可能であるが、ヨウ素の含有率の大きい誘導体が好ましい。
【0013】
L−ジェニンは特に、人肝臓ガン細胞(SMMC7721)、人肺ガン細胞(A549)、人胃ガン細胞(SGC7901)、人低分化胃腺ガン細胞(BGC−823)、人結腸ガン細胞(LOVO)及び人早幼粒細胞白血病細胞(HL−60)に対し以下の成長抑制効果が得られている(WO2009031195)。
【0014】
なお、本発明に係る有機ヨウ素を含有する液体製剤には、その作用を損なわない範囲で、液体製剤に一般的に添加される成分であるブドウ糖や各種アミノ酸、ビタミン剤等の高カロリー化剤、安定剤、無痛化剤、着色剤などを添加しても良い。
【0015】
以下に製造例及び試験例を示し、本発明の高濃度のヨウ化カリウムを含有するL−ジェニン併用液体製剤が動物毒性試験で毒性がないことを説明する。
【0016】
製造例1:ヨウ素をヨウ化カリウム水溶液中に溶解させた0.1重量%、1重量%、4重量%を含有する水溶液を製造し、これに0.1重量%となるリキリチゲニンを添加して液体製剤とする。
【0017】
実験例1:動物毒性試験
次の条件により、ラットにおける毒性試験を行なった。
1)被験物質:液体製剤(投与量 5ml/Kg×体重)、対照物質:精製水
2)使用動物:SPFラット10匹
3)観察期間:14日
4)測定法:一般状態観察と体重値‐Bartlett検定法、危険率10%以下
その結果は、(1)いずれの動物も死亡せず、一般状態にも異常は認められない、(2)一元配置分散分析法による被験および対照物質の比較分析では体重推移に有意差は認められない。
以上の結果から、本発明の液体製剤の毒性は極めて低く、そのLD50値(急性毒性)は2000mg/Kgを超えると判断された。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化カリウム及び/またはヨウ化水素換算で有機ヨウ素0.1重量%〜4重量%のヨウ素分を含む水溶液に対し1000ppm以上のリキリチゲニンを添加してなることを特徴とするヨウド液体製剤。
【請求項2】
ヨウ素分が、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、レシチン、タラ肝油、竜脳、又はクレオソートからなる群のうちの1以上から誘導された有機ヨウ素を含む請求項1記載のヨウド液体製剤。

【公開番号】特開2010−265209(P2010−265209A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117436(P2009−117436)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508250361)株式会社国際メディカル研究所 (1)
【Fターム(参考)】