ヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置
【課題】 合成反応の安定化及びメンテナンス作業の減少を図り、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置を提供する
【解決手段】 11CH3I合成系4の前段の11CH4吸着カラム8で11CH4を一時的に吸着させ11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去することにより、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成を抑制し11CH3I合成カラム11での目詰まりを減らす。
【解決手段】 11CH3I合成系4の前段の11CH4吸着カラム8で11CH4を一時的に吸着させ11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去することにより、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成を抑制し11CH3I合成カラム11での目詰まりを減らす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性薬剤の標識前駆体であるヨウ化メチル(11CH3I)の製造装置として、反応器内に有機溶媒のテトラヒドロフラン(THF)と共に収容されたLiAlH4に、11CO2、HIを導入して液相で反応させ、11CH3Iを合成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−200552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような液相で合成反応を行うヨウ化メチル製造装置は、反応器内に液体が残存してしまい1回の合成反応毎に反応器の洗浄又は交換をする必要があり、この洗浄又は交換の際に作業員が被曝する虞がある。さらに、反応器が小さく複雑であるため取り扱いが不便であり、また、LiAlH4及びHIは劇薬のため危険であるといった問題がある。そこで、このような問題を防止するため、図4に示すように、11CO2と水素ガスH2とを11CH3I変換カラム6に導入して11CH3Iを生成し、この11CH3Iとヨウ素ガスとを反応器11に導入し反応させ、11CH3Iを気相で合成するものが知られている。
【0004】
しかしながら、このような気相で合成反応を行うヨウ化メチル製造装置では、当該装置内の不純物が反応器内で目詰りして、11CH3Iの合成反応が不安定になる虞があるといった問題や、反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業により11CH3Iの連続合成ができないといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、合成反応の安定化及びメンテナンス作業の減少を図り、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、11CH4に同伴する未反応の水素ガスが反応器に導入され、水素ガスがヨウ素ガスと反応してしまい、この反応に起因する不純物の生成が反応器内での目詰まりの原因となることを見出した。
【0007】
そこで、本発明によるヨウ化メチル製造装置は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するヨウ化メチル製造装置であって、11CH3I合成系の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、11CH3I合成系の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、11CH3Iを回収する経路と11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明によるヨウ化メチル製造方法は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、11CH4とヨウ素ガスとを反応器に導入して11CH3Iを合成する11CH3I合成工程とを備えたヨウ化メチル製造方法であって、11CH3I合成工程の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着工程と、11CH3I合成工程の後段に11CH3Iを回収するか11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成するかを選択する選択工程と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明によるメチルトリフレート製造装置は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するメチルトリフレート製造装置であって、11CH3I合成系の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、11CH3I合成系の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、11CH3Iを回収する経路と11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように構成されたヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置によれば、11CH3Iを合成する前段で11CH4が一時的に吸着されて11CH4に同伴する未反応の水素ガスが除去されるため、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制され反応器での目詰まりが減らされる。更に、最終生成物である11CH3Iと11CH3OTfとの切り換えが容易となる。
【0011】
ここで、11CH4吸着系がパージ流体を供給するパージ経路を備える構成であると、11CH4吸着系内がパージされ、未反応の水素ガスが好適に系外に排出される。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によるヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法によれば、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制されて反応器での目詰まりが減らされるため、合成反応が安定化すると共に反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が大幅に減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法を提供することが可能となる。
【0013】
このように本発明によるメチルトリフレート製造装置によれば、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制されて反応器での目詰まりが減らされるため、合成反応が安定化すると共に反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が大幅に減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3OTfの連続合成が可能なメチルトリフレート製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中の六方弁を第1状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構 成図である。
【図3】図1中の六方弁を第2状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構 成図である。
【図4】従来の気相法によるヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるヨウ化メチル製造装置の好適な実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図、図2は、図1中の六方弁を第1状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図、図3は、図1中の六方弁を第2状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のヨウ化メチル製造装置1は、例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性薬剤の標識前駆体である11CH3Iを製造するヨウ化メチル製造装置である。
【0017】
このヨウ化メチル製造装置1は概略、系外のサイクロトロン(不図示)から供給される11CO2を水素ガスにより還元して11CH4に変換する11CH4生成系2と、この11CH4を一時吸着させる11CH4吸着系3と、この11CH4とヨウ素ガスとを反応させて11CH3Iを合成する11CH3I合成系4と、を備えている。
【0018】
11CH4生成系2は、系内に11CO2を含む原料ガスを供給する原料ガス供給配管L1、系内に水素ガスを含むキャリアガスを供給する水素ガス供給配管L2、これらの配管L1,L2を集合して一配管を選択して切り換える三方弁V1、原料ガス中の11CO2を一時吸着させる11CO2吸着カラム(吸着室)5、この11CO2吸着カラム5に一時吸着されていた11CO2を11CH4に変換させる11CH4変換カラム6、この11CH4変換カラム6で変換された11CH4を精製する11CH4精製カラム7、これらの三方弁V1、11CO2吸着カラム5、11CH4変換カラム6及び11CH4精製カラム7をこの順に接続して後段の11CH4吸着系3へ接続される配管L3を具備している。
【0019】
11CO2吸着カラム5は、内部に、11CO2を一時吸着させる例えばCabosphere(登録商標)等の吸着剤が充填され、外部に、この11CO2吸着カラム5を加熱・冷却する加熱・冷却装置及び11CO2吸着カラム5の放射能を測定するRIモニター16を備えている。11CO2を一時吸着させる吸着剤は、常温で11CO2を吸着し、加熱されて11CO2を脱離するものである。
【0020】
11CH4変換カラム6は、内部に、11CO2を水素ガスにより11CH4に変換させる例えばShimalite Ni(登録商標)等の還元触媒が充填され、外部に、この11CH4変換カラム6を加熱する加熱装置を備えている。
【0021】
11CH4精製カラム7は、内部に、未変換の11CO2等を吸着させる例えばAscarite II(登録商標)、ソーダライム(Soda Lime)等の吸着剤が充填されている。
【0022】
この11CH4生成系2の後段の11CH4吸着系3は、複数の接続口a〜fを有し2タイプの接続状態を選択可能であり11CH4精製カラム7に接続された六方弁V2、この六方弁V2に接続され11CH4を一時吸着させる11CH4吸着カラム8、縁切り弁V6を備え系内にHeガスを供給するHe供給配管(パージ経路)L6、縁切り弁V7を備え系内の排気ガスを系外に排出する排気配管L10、この排気配管L10に配管L9を介して接続される三方弁V3に接続され、系内の11CH4を後段の11CH3I合成系4に導出する配管L11を具備している。
【0023】
六方弁V2は、6つの接続口a〜fを備え、接続口aは、配管L3を介して11CH4精製カラム7の出口と、接続口bは、配管L4を介して11CH4吸着カラム8の入口と、接続口cは、He供給配管L6と、接続口dは、配管L7を介して排気配管L10と、接続口eは、配管L5を介して11CH4吸着カラム8の出口と、接続口fは、配管L8を介して三方弁V3と各々接続されている。
【0024】
また、この六方弁V2は、第1状態又は第2状態の何れか一方の状態に選択可能であり、第1状態では、図2に示すように、接続口aと接続口fとが、接続口eと接続口dとが、接続口cと接続口bとが各々連通され、第2状態では、図3に示すように、接続口aと接続口bとが、接続口cと接続口dとが、接続口eと接続口fとが各々連通される。
【0025】
11CH4吸着カラム8は、内部に、11CH4を一時吸着させる例えばCabosphere(登録商標)等の吸着剤が充填され、外部には、この11CH4吸着カラム8を加熱・冷却する加熱・冷却装置及び11CH4吸着カラム8の放射能を測定するRIモニター17が設けられている。
【0026】
この11CH4吸着系3の後段の11CH3I合成系4は、配管L11に接続された三方弁V4、11CH4にヨウ素ガスを混合させるヨウ素カラム10、このヨウ素カラム10で混合された11CH4とヨウ素ガスとを合成反応させる11CH3I合成カラム(反応器)11、11CH3Iを精製する11CH3I精製カラム12、11CH3Iを一時吸着させる11CH3I吸着カラム13、これらの三方弁V4、ヨウ素カラム10、11CH3I合成カラム11、11CH3I精製カラム12をこの順に接続する配管L12、この配管L12に接続された三方弁V5、三方弁V5,V4を接続する循環配管L13、この循環配管L13に設置された循環ポンプ19、三方弁V5に接続されると共に合成された11CH3Iを移送する製品配管L14を具備している。
【0027】
ヨウ素カラム10は、内部に、固体のヨウ素が充填され、外部に、このヨウ素カラム10を加熱する加熱装置を備えている。
【0028】
11CH3I合成カラム11は、例えばガラス材等により構成され、外部に、この11CH3I合成カラムを加熱する加熱装置を備えている。
【0029】
11CH3I精製カラム12は、内部に、未反応の11CO2及び不純物を吸着させる例えばAscarite II(登録商標)等の吸着剤が充填されている。
【0030】
11CH3I吸着カラム13は、内部に、11CH3Iを一時吸着させるPorapak N等の吸着剤が充填され、外部に、この11CH3I吸着カラム13を加熱・冷却する加熱・冷却装置、11CH3I吸着カラム13からの放射能を測定するRIモニター18を備えている。11CH3Iを一時吸着させる吸着剤は、常温で11CH3Iを吸着し、加熱されて11CH3Iを脱離するものである。
【0031】
また、ヨウ化メチル製造装置1は、11CH3I合成系の後段に、合成された11CH3Iを用いて11CH3OTf(標識前駆体)を合成する11CH3OTf合成カラム15を備える11CH3OTf合成系14を具備している。
【0032】
11CH3OTf合成カラム15は、内部に、AgOTfが充填され、外部に、この11CH3OTf合成カラム15を加熱する加熱装置を備え、その入口が配管L17を介して製品配管L14に設置された三方弁V10に接続されると共に、その出口が配管L18を介して製品配管L14に設置された三方弁V11と接続されている。これらの三方弁V10,V11は、11CH3Iを回収する製品配管L14と、11CH3Iを11CH3OTf合成系14に供給して11CH3OTfを回収する配管L17,L18とを選択的に切り換える切換手段とされている。
【0033】
次に、このように構成されたヨウ化メチル製造装置1を用いて、11CH3Iを合成するヨウ化メチル製造方法について図面を参照しながら説明する。このヨウ化メチル製造方法は概略、原料ガス中の11CO2を濃縮させる11CO2吸着工程と、この11CO2を用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、11CH4を一時吸着させて未反応の水素ガス等を分離除去する11CH4吸着工程と、この11CH4とヨウ素とを合成反応させて11CH3Iを合成する11CH3I合成工程と、をこの順で具備している。
【0034】
11CO2吸着工程では、系外のサイクロトロン(不図示)から供給された原料ガスは、図2に示すように、原料ガス供給配管L1,三方弁V1を通り室温の11CO2吸着カラム5に導入され、この11CO2吸着カラム5に原料ガス中の11CO2が一時吸着される。この吸着処理により11CO2が分離された原料ガスは、配管L3、第1状態の六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、系外に排出される。
【0035】
RIモニター16により、11CO2吸着カラム5での11CO2吸着量が所定値に達したこと確認した後に、原料ガスの供給を止める。
【0036】
次いで、三方弁V1を切り換えて水素ガス供給配管L2と配管L3と連通させ、図3に示すように、六方弁V2を切り換えて第2状態として配管L3、六方弁V2、配管L4、11CH4吸着カラム8、配管L5、六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9,L10を連通させる。
【0037】
11CH4生成工程では、主成分を窒素ガスとして水素ガスを約10%含んだキャリアガスが水素ガス供給配管L2、三方弁V1、配管L3を通り11CO2吸着カラム5に導入されると共に、この11CO2吸着カラム5は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CO2が11CO2吸着カラム5から脱離する。
【0038】
この脱離した11CO2は、キャリアガスと共に加熱装置により加熱された11CH4変換カラム6に導入され、還元触媒に接触しキャリアガス中の水素ガスにより11CH4に変換される。
【0039】
このようにして生成された11CH4は、11CH4精製カラム7に導入され、11CH4に同伴する未反応の11CO2等が11CH4精製カラム7に充填された吸着剤に吸着される。この吸着処理により、11CH4から未反応の11CO2等が分離される。
【0040】
11CH4吸着工程では、11CH4が配管L3、六方弁V2、配管L4を通り室温状態の11CH4吸着カラム8に導入され、この11CH4吸着カラム8に一時吸着される。11CH4に同伴して11CH4吸着カラム8に導入された未反応の水素ガス等は、そのまま通過して、配管L5、六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、系外に排出される。
【0041】
この際のRIモニター16、17での放射能測定により、11CO2吸着カラム5での11CO2吸着量が減少し、11CH4吸着カラム8での11CH4吸着量が所定値に達したこと確認した後に、キャリアガスの供給を止める。
【0042】
また、11CH4吸着工程は、11CH4吸着系3の系内をパージするパージ工程を備えている。まず、三方弁V3を閉、縁切り弁V6を開とし、図2に示すように、六方弁V2を切り換えて第1状態とする。
【0043】
この状態でHe供給配管L6から供給されたHeガスは、縁切り弁V6、六方弁V2、配管L4、11CH4吸着カラム8、配管L5、六方弁V2、配管L7、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、これらの配管、弁及び11CH4吸着カラム8に残存する水素ガス等を系外に排出する。そして所定量のHeガスを供給した後に、三方弁V3を切り換えて配管L9と配管L11を連通させ、縁切り弁V7を閉とする。このようにして、配管L7,L9,L11を連通させる。
【0044】
次いで、11CH4吸着カラム8は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CH4が11CH4吸着カラム8から脱離する。
【0045】
11CH3I合成工程では、脱離した11CH4がHeガスにより移送され、配管L5、六方弁V2、配管L7,L9、三方弁V3、配管L11、三方弁V4を通り11CH3I合成系4に導入される。導入された11CH4は、配管L12、ヨウ素カラム10、11CH3I合成カラム11、11CH3I精製カラム12、11CH3I吸着カラム13、三方弁V5、循環配管L13、循環ポンプ19を通り、三方弁V4に戻りこれらの配管、弁、カラムを循環する。
【0046】
このように11CH4が11CH3I合成系4内を循環している状態で、ヨウ素カラム10は加熱装置により加熱される。この加熱処理により、ヨウ素が気化し、このヨウ素ガスと11CH4とが混合される。
【0047】
この混合された11CH4とヨウ素ガスは、11CH3I合成カラム11へ導入されると共に、加熱装置により加熱される。この加熱処理により、11CH4とヨウ素ガスとが合成反応し11CH3Iを合成する。
【0048】
このように合成された11CH3Iは、11CH3I精製カラム12へ導入され、11CH3Iに同伴する未反応の11CO2等が11CH3I精製カラム12に充填された吸着剤に吸着される。この吸着処理により、11CH3Iから11CO2等が分離される。
【0049】
11CO2が分離された11CH3Iは、室温の11CH3I吸着カラム13に導入され、この11CH3I吸着カラム13に11CH3Iが一時吸着される。11CH3Iに同伴して11CH3I精製カラム12に導入された未反応の11CH4は、そのまま通過して、循環を継続し、再びヨウ素カラム10に導入され、上述したように、ヨウ素ガスとの混合、合成反応等が繰り返される。
【0050】
そして、RIモニター18により、11CH3I吸着カラム13での11CH3I吸着量が所定値に達したこと確認した後に、循環ポンプ19を停止して循環を止め、三方弁V4,V5を切り換えて配管L11,L12,L14を連通させる。
【0051】
次いで、11CH3I吸着カラム13は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CH3Iが11CH3I吸着カラム13から脱離する。この離脱した11CH3Iは、He供給配管L6から導入されたHeガスにより移送され、配管L12,L14、三方弁V10,V11を通り製品として回収される。これにより、11CH3Iが得られる。
【0052】
また、このようにして得られた11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する場合には、三方弁V10を切り替えて配管L17を選択し、11CH3Iを11CH3OTf合成カラム15に導入する。11CH3Iは、加熱装置により加熱されたAgOTfに接触して、11CH3OTfに成る。この11CH3OTfは、配管L18、三方弁V11、配管L14を通り製品として回収される。これにより、11CH3OTfが得られる。
【0053】
このように、本実施形態においては、11CH4吸着カラム8で11CH4を一時的に吸着して11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去することにより、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制され11CH3I合成カラム11での目詰まりが減らされている。その結果、合成反応が安定化すると共に11CH3I合成カラム11の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、11CH4吸着系3は、Heガスを供給するHe供給配管L6を備えているため、11CH4吸着系3内がパージされ、未反応の水素ガスが好適に系外に排出される。
【0055】
また、本実施形態においては、11CH4生成系2は、原料に含まれる11CO2を一時的に吸着させて11CO2を濃縮する11CO2吸着カラム5を備えているため、ヨウ化メチル製造装置1内を流動するガス量が減らされ11CH3I合成系4でのガス循環が好適に行われ、反応効率が上げられると共に、循環ポンプ19の動力が減らされる。その結果、合成反応の安定化及び運転コストの低下が図られる。
【0056】
また、本実施形態においては、11CH3I合成系4の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系14を備えているため、容易に11CH3OTfを得ることが出来る。
【0057】
また、本実施形態においては、11CH3OTf合成系14の前段に三方弁V10を備えているため、最終生成物である11CH3Iと11CH3OTfの切り換えが容易とされている。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態にあっては、11CH4吸着カラム8に充填されたCabosphere等の吸着剤に11CH4を一時吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスが除去する構成としているが、その他の吸着剤等に11CH4を一時吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去させる構成としても良く、要は、11CH4に同伴して11CH3I合成カラム11に導入される未反応の水素ガスを除去できれば良い。
【0059】
また、11CH3OTf合成系14を具備し、最終生成物を11CH3OTfとするメチルトリフレート製造装置としても良い。
【0060】
また、上記実施形態にあっては、11CH4、11CH3I等の内部流体の移送経路として配管を採用し、各カラム等を連通させる構成としているが、例えば、各カラム等をブロック体に配置して、このブロック体内部に形成された孔等を移送経路とし、各カラム等を連通させる構成としても良い。
【0061】
また、上記実施形態にあっては、六方弁V2を切り換えて、各配管を選定する構成としているが、その他の多方弁を採用して、各配管を選定する構成としても良い。
【0062】
また、上記実施形態のヨウ化メチル製造装置1にあっては、11CH4吸着系3に排気配管L10を備える構成としているが、11CH3I合成系4に排気配管を備え水素ガスを系外に排出する構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
1…ヨウ化メチル製造装置、2…11CH4生成系、3…11CH4吸着系、4…11CH3I合成系、5…11CO2吸着カラム(11CO2吸着室)、11…11CH3I合成カラム(反応器)、14…11CH3OTf合成系、L6…He供給配管(パージ経路)、L14…製品配管(11CH3Iを回収する経路)、L17,L18…配管(11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路)、V10,V11…三方弁(切換手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性薬剤の標識前駆体であるヨウ化メチル(11CH3I)の製造装置として、反応器内に有機溶媒のテトラヒドロフラン(THF)と共に収容されたLiAlH4に、11CO2、HIを導入して液相で反応させ、11CH3Iを合成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−200552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような液相で合成反応を行うヨウ化メチル製造装置は、反応器内に液体が残存してしまい1回の合成反応毎に反応器の洗浄又は交換をする必要があり、この洗浄又は交換の際に作業員が被曝する虞がある。さらに、反応器が小さく複雑であるため取り扱いが不便であり、また、LiAlH4及びHIは劇薬のため危険であるといった問題がある。そこで、このような問題を防止するため、図4に示すように、11CO2と水素ガスH2とを11CH3I変換カラム6に導入して11CH3Iを生成し、この11CH3Iとヨウ素ガスとを反応器11に導入し反応させ、11CH3Iを気相で合成するものが知られている。
【0004】
しかしながら、このような気相で合成反応を行うヨウ化メチル製造装置では、当該装置内の不純物が反応器内で目詰りして、11CH3Iの合成反応が不安定になる虞があるといった問題や、反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業により11CH3Iの連続合成ができないといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、合成反応の安定化及びメンテナンス作業の減少を図り、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、11CH4に同伴する未反応の水素ガスが反応器に導入され、水素ガスがヨウ素ガスと反応してしまい、この反応に起因する不純物の生成が反応器内での目詰まりの原因となることを見出した。
【0007】
そこで、本発明によるヨウ化メチル製造装置は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するヨウ化メチル製造装置であって、11CH3I合成系の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、11CH3I合成系の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、11CH3Iを回収する経路と11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明によるヨウ化メチル製造方法は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、11CH4とヨウ素ガスとを反応器に導入して11CH3Iを合成する11CH3I合成工程とを備えたヨウ化メチル製造方法であって、11CH3I合成工程の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着工程と、11CH3I合成工程の後段に11CH3Iを回収するか11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成するかを選択する選択工程と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明によるメチルトリフレート製造装置は、所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するメチルトリフレート製造装置であって、11CH3I合成系の前段に11CH4を一時的に吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、11CH3I合成系の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、11CH3Iを回収する経路と11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように構成されたヨウ化メチル製造装置、ヨウ化メチル製造方法及びメチルトリフレート製造装置によれば、11CH3Iを合成する前段で11CH4が一時的に吸着されて11CH4に同伴する未反応の水素ガスが除去されるため、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制され反応器での目詰まりが減らされる。更に、最終生成物である11CH3Iと11CH3OTfとの切り換えが容易となる。
【0011】
ここで、11CH4吸着系がパージ流体を供給するパージ経路を備える構成であると、11CH4吸着系内がパージされ、未反応の水素ガスが好適に系外に排出される。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によるヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法によれば、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制されて反応器での目詰まりが減らされるため、合成反応が安定化すると共に反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が大幅に減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法を提供することが可能となる。
【0013】
このように本発明によるメチルトリフレート製造装置によれば、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制されて反応器での目詰まりが減らされるため、合成反応が安定化すると共に反応器の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が大幅に減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3OTfの連続合成が可能なメチルトリフレート製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中の六方弁を第1状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構 成図である。
【図3】図1中の六方弁を第2状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構 成図である。
【図4】従来の気相法によるヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるヨウ化メチル製造装置の好適な実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図、図2は、図1中の六方弁を第1状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図、図3は、図1中の六方弁を第2状態とした場合のヨウ化メチル製造装置を示す概略構成図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のヨウ化メチル製造装置1は、例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性薬剤の標識前駆体である11CH3Iを製造するヨウ化メチル製造装置である。
【0017】
このヨウ化メチル製造装置1は概略、系外のサイクロトロン(不図示)から供給される11CO2を水素ガスにより還元して11CH4に変換する11CH4生成系2と、この11CH4を一時吸着させる11CH4吸着系3と、この11CH4とヨウ素ガスとを反応させて11CH3Iを合成する11CH3I合成系4と、を備えている。
【0018】
11CH4生成系2は、系内に11CO2を含む原料ガスを供給する原料ガス供給配管L1、系内に水素ガスを含むキャリアガスを供給する水素ガス供給配管L2、これらの配管L1,L2を集合して一配管を選択して切り換える三方弁V1、原料ガス中の11CO2を一時吸着させる11CO2吸着カラム(吸着室)5、この11CO2吸着カラム5に一時吸着されていた11CO2を11CH4に変換させる11CH4変換カラム6、この11CH4変換カラム6で変換された11CH4を精製する11CH4精製カラム7、これらの三方弁V1、11CO2吸着カラム5、11CH4変換カラム6及び11CH4精製カラム7をこの順に接続して後段の11CH4吸着系3へ接続される配管L3を具備している。
【0019】
11CO2吸着カラム5は、内部に、11CO2を一時吸着させる例えばCabosphere(登録商標)等の吸着剤が充填され、外部に、この11CO2吸着カラム5を加熱・冷却する加熱・冷却装置及び11CO2吸着カラム5の放射能を測定するRIモニター16を備えている。11CO2を一時吸着させる吸着剤は、常温で11CO2を吸着し、加熱されて11CO2を脱離するものである。
【0020】
11CH4変換カラム6は、内部に、11CO2を水素ガスにより11CH4に変換させる例えばShimalite Ni(登録商標)等の還元触媒が充填され、外部に、この11CH4変換カラム6を加熱する加熱装置を備えている。
【0021】
11CH4精製カラム7は、内部に、未変換の11CO2等を吸着させる例えばAscarite II(登録商標)、ソーダライム(Soda Lime)等の吸着剤が充填されている。
【0022】
この11CH4生成系2の後段の11CH4吸着系3は、複数の接続口a〜fを有し2タイプの接続状態を選択可能であり11CH4精製カラム7に接続された六方弁V2、この六方弁V2に接続され11CH4を一時吸着させる11CH4吸着カラム8、縁切り弁V6を備え系内にHeガスを供給するHe供給配管(パージ経路)L6、縁切り弁V7を備え系内の排気ガスを系外に排出する排気配管L10、この排気配管L10に配管L9を介して接続される三方弁V3に接続され、系内の11CH4を後段の11CH3I合成系4に導出する配管L11を具備している。
【0023】
六方弁V2は、6つの接続口a〜fを備え、接続口aは、配管L3を介して11CH4精製カラム7の出口と、接続口bは、配管L4を介して11CH4吸着カラム8の入口と、接続口cは、He供給配管L6と、接続口dは、配管L7を介して排気配管L10と、接続口eは、配管L5を介して11CH4吸着カラム8の出口と、接続口fは、配管L8を介して三方弁V3と各々接続されている。
【0024】
また、この六方弁V2は、第1状態又は第2状態の何れか一方の状態に選択可能であり、第1状態では、図2に示すように、接続口aと接続口fとが、接続口eと接続口dとが、接続口cと接続口bとが各々連通され、第2状態では、図3に示すように、接続口aと接続口bとが、接続口cと接続口dとが、接続口eと接続口fとが各々連通される。
【0025】
11CH4吸着カラム8は、内部に、11CH4を一時吸着させる例えばCabosphere(登録商標)等の吸着剤が充填され、外部には、この11CH4吸着カラム8を加熱・冷却する加熱・冷却装置及び11CH4吸着カラム8の放射能を測定するRIモニター17が設けられている。
【0026】
この11CH4吸着系3の後段の11CH3I合成系4は、配管L11に接続された三方弁V4、11CH4にヨウ素ガスを混合させるヨウ素カラム10、このヨウ素カラム10で混合された11CH4とヨウ素ガスとを合成反応させる11CH3I合成カラム(反応器)11、11CH3Iを精製する11CH3I精製カラム12、11CH3Iを一時吸着させる11CH3I吸着カラム13、これらの三方弁V4、ヨウ素カラム10、11CH3I合成カラム11、11CH3I精製カラム12をこの順に接続する配管L12、この配管L12に接続された三方弁V5、三方弁V5,V4を接続する循環配管L13、この循環配管L13に設置された循環ポンプ19、三方弁V5に接続されると共に合成された11CH3Iを移送する製品配管L14を具備している。
【0027】
ヨウ素カラム10は、内部に、固体のヨウ素が充填され、外部に、このヨウ素カラム10を加熱する加熱装置を備えている。
【0028】
11CH3I合成カラム11は、例えばガラス材等により構成され、外部に、この11CH3I合成カラムを加熱する加熱装置を備えている。
【0029】
11CH3I精製カラム12は、内部に、未反応の11CO2及び不純物を吸着させる例えばAscarite II(登録商標)等の吸着剤が充填されている。
【0030】
11CH3I吸着カラム13は、内部に、11CH3Iを一時吸着させるPorapak N等の吸着剤が充填され、外部に、この11CH3I吸着カラム13を加熱・冷却する加熱・冷却装置、11CH3I吸着カラム13からの放射能を測定するRIモニター18を備えている。11CH3Iを一時吸着させる吸着剤は、常温で11CH3Iを吸着し、加熱されて11CH3Iを脱離するものである。
【0031】
また、ヨウ化メチル製造装置1は、11CH3I合成系の後段に、合成された11CH3Iを用いて11CH3OTf(標識前駆体)を合成する11CH3OTf合成カラム15を備える11CH3OTf合成系14を具備している。
【0032】
11CH3OTf合成カラム15は、内部に、AgOTfが充填され、外部に、この11CH3OTf合成カラム15を加熱する加熱装置を備え、その入口が配管L17を介して製品配管L14に設置された三方弁V10に接続されると共に、その出口が配管L18を介して製品配管L14に設置された三方弁V11と接続されている。これらの三方弁V10,V11は、11CH3Iを回収する製品配管L14と、11CH3Iを11CH3OTf合成系14に供給して11CH3OTfを回収する配管L17,L18とを選択的に切り換える切換手段とされている。
【0033】
次に、このように構成されたヨウ化メチル製造装置1を用いて、11CH3Iを合成するヨウ化メチル製造方法について図面を参照しながら説明する。このヨウ化メチル製造方法は概略、原料ガス中の11CO2を濃縮させる11CO2吸着工程と、この11CO2を用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、11CH4を一時吸着させて未反応の水素ガス等を分離除去する11CH4吸着工程と、この11CH4とヨウ素とを合成反応させて11CH3Iを合成する11CH3I合成工程と、をこの順で具備している。
【0034】
11CO2吸着工程では、系外のサイクロトロン(不図示)から供給された原料ガスは、図2に示すように、原料ガス供給配管L1,三方弁V1を通り室温の11CO2吸着カラム5に導入され、この11CO2吸着カラム5に原料ガス中の11CO2が一時吸着される。この吸着処理により11CO2が分離された原料ガスは、配管L3、第1状態の六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、系外に排出される。
【0035】
RIモニター16により、11CO2吸着カラム5での11CO2吸着量が所定値に達したこと確認した後に、原料ガスの供給を止める。
【0036】
次いで、三方弁V1を切り換えて水素ガス供給配管L2と配管L3と連通させ、図3に示すように、六方弁V2を切り換えて第2状態として配管L3、六方弁V2、配管L4、11CH4吸着カラム8、配管L5、六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9,L10を連通させる。
【0037】
11CH4生成工程では、主成分を窒素ガスとして水素ガスを約10%含んだキャリアガスが水素ガス供給配管L2、三方弁V1、配管L3を通り11CO2吸着カラム5に導入されると共に、この11CO2吸着カラム5は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CO2が11CO2吸着カラム5から脱離する。
【0038】
この脱離した11CO2は、キャリアガスと共に加熱装置により加熱された11CH4変換カラム6に導入され、還元触媒に接触しキャリアガス中の水素ガスにより11CH4に変換される。
【0039】
このようにして生成された11CH4は、11CH4精製カラム7に導入され、11CH4に同伴する未反応の11CO2等が11CH4精製カラム7に充填された吸着剤に吸着される。この吸着処理により、11CH4から未反応の11CO2等が分離される。
【0040】
11CH4吸着工程では、11CH4が配管L3、六方弁V2、配管L4を通り室温状態の11CH4吸着カラム8に導入され、この11CH4吸着カラム8に一時吸着される。11CH4に同伴して11CH4吸着カラム8に導入された未反応の水素ガス等は、そのまま通過して、配管L5、六方弁V2、配管L8、三方弁V3、配管L9、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、系外に排出される。
【0041】
この際のRIモニター16、17での放射能測定により、11CO2吸着カラム5での11CO2吸着量が減少し、11CH4吸着カラム8での11CH4吸着量が所定値に達したこと確認した後に、キャリアガスの供給を止める。
【0042】
また、11CH4吸着工程は、11CH4吸着系3の系内をパージするパージ工程を備えている。まず、三方弁V3を閉、縁切り弁V6を開とし、図2に示すように、六方弁V2を切り換えて第1状態とする。
【0043】
この状態でHe供給配管L6から供給されたHeガスは、縁切り弁V6、六方弁V2、配管L4、11CH4吸着カラム8、配管L5、六方弁V2、配管L7、排気配管L10、縁切り弁V7を通り、これらの配管、弁及び11CH4吸着カラム8に残存する水素ガス等を系外に排出する。そして所定量のHeガスを供給した後に、三方弁V3を切り換えて配管L9と配管L11を連通させ、縁切り弁V7を閉とする。このようにして、配管L7,L9,L11を連通させる。
【0044】
次いで、11CH4吸着カラム8は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CH4が11CH4吸着カラム8から脱離する。
【0045】
11CH3I合成工程では、脱離した11CH4がHeガスにより移送され、配管L5、六方弁V2、配管L7,L9、三方弁V3、配管L11、三方弁V4を通り11CH3I合成系4に導入される。導入された11CH4は、配管L12、ヨウ素カラム10、11CH3I合成カラム11、11CH3I精製カラム12、11CH3I吸着カラム13、三方弁V5、循環配管L13、循環ポンプ19を通り、三方弁V4に戻りこれらの配管、弁、カラムを循環する。
【0046】
このように11CH4が11CH3I合成系4内を循環している状態で、ヨウ素カラム10は加熱装置により加熱される。この加熱処理により、ヨウ素が気化し、このヨウ素ガスと11CH4とが混合される。
【0047】
この混合された11CH4とヨウ素ガスは、11CH3I合成カラム11へ導入されると共に、加熱装置により加熱される。この加熱処理により、11CH4とヨウ素ガスとが合成反応し11CH3Iを合成する。
【0048】
このように合成された11CH3Iは、11CH3I精製カラム12へ導入され、11CH3Iに同伴する未反応の11CO2等が11CH3I精製カラム12に充填された吸着剤に吸着される。この吸着処理により、11CH3Iから11CO2等が分離される。
【0049】
11CO2が分離された11CH3Iは、室温の11CH3I吸着カラム13に導入され、この11CH3I吸着カラム13に11CH3Iが一時吸着される。11CH3Iに同伴して11CH3I精製カラム12に導入された未反応の11CH4は、そのまま通過して、循環を継続し、再びヨウ素カラム10に導入され、上述したように、ヨウ素ガスとの混合、合成反応等が繰り返される。
【0050】
そして、RIモニター18により、11CH3I吸着カラム13での11CH3I吸着量が所定値に達したこと確認した後に、循環ポンプ19を停止して循環を止め、三方弁V4,V5を切り換えて配管L11,L12,L14を連通させる。
【0051】
次いで、11CH3I吸着カラム13は加熱装置により加熱される。この加熱処理により11CH3Iが11CH3I吸着カラム13から脱離する。この離脱した11CH3Iは、He供給配管L6から導入されたHeガスにより移送され、配管L12,L14、三方弁V10,V11を通り製品として回収される。これにより、11CH3Iが得られる。
【0052】
また、このようにして得られた11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する場合には、三方弁V10を切り替えて配管L17を選択し、11CH3Iを11CH3OTf合成カラム15に導入する。11CH3Iは、加熱装置により加熱されたAgOTfに接触して、11CH3OTfに成る。この11CH3OTfは、配管L18、三方弁V11、配管L14を通り製品として回収される。これにより、11CH3OTfが得られる。
【0053】
このように、本実施形態においては、11CH4吸着カラム8で11CH4を一時的に吸着して11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去することにより、水素ガスとヨウ素ガスとの反応に起因する不純物の生成が抑制され11CH3I合成カラム11での目詰まりが減らされている。その結果、合成反応が安定化すると共に11CH3I合成カラム11の洗浄及び交換等のメンテナンス作業が減少し、信頼性が十分に向上されると共に11CH3Iの連続合成が可能なヨウ化メチル製造装置及びヨウ化メチル製造方法を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、11CH4吸着系3は、Heガスを供給するHe供給配管L6を備えているため、11CH4吸着系3内がパージされ、未反応の水素ガスが好適に系外に排出される。
【0055】
また、本実施形態においては、11CH4生成系2は、原料に含まれる11CO2を一時的に吸着させて11CO2を濃縮する11CO2吸着カラム5を備えているため、ヨウ化メチル製造装置1内を流動するガス量が減らされ11CH3I合成系4でのガス循環が好適に行われ、反応効率が上げられると共に、循環ポンプ19の動力が減らされる。その結果、合成反応の安定化及び運転コストの低下が図られる。
【0056】
また、本実施形態においては、11CH3I合成系4の後段に11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系14を備えているため、容易に11CH3OTfを得ることが出来る。
【0057】
また、本実施形態においては、11CH3OTf合成系14の前段に三方弁V10を備えているため、最終生成物である11CH3Iと11CH3OTfの切り換えが容易とされている。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態にあっては、11CH4吸着カラム8に充填されたCabosphere等の吸着剤に11CH4を一時吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスが除去する構成としているが、その他の吸着剤等に11CH4を一時吸着させて11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去させる構成としても良く、要は、11CH4に同伴して11CH3I合成カラム11に導入される未反応の水素ガスを除去できれば良い。
【0059】
また、11CH3OTf合成系14を具備し、最終生成物を11CH3OTfとするメチルトリフレート製造装置としても良い。
【0060】
また、上記実施形態にあっては、11CH4、11CH3I等の内部流体の移送経路として配管を採用し、各カラム等を連通させる構成としているが、例えば、各カラム等をブロック体に配置して、このブロック体内部に形成された孔等を移送経路とし、各カラム等を連通させる構成としても良い。
【0061】
また、上記実施形態にあっては、六方弁V2を切り換えて、各配管を選定する構成としているが、その他の多方弁を採用して、各配管を選定する構成としても良い。
【0062】
また、上記実施形態のヨウ化メチル製造装置1にあっては、11CH4吸着系3に排気配管L10を備える構成としているが、11CH3I合成系4に排気配管を備え水素ガスを系外に排出する構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
1…ヨウ化メチル製造装置、2…11CH4生成系、3…11CH4吸着系、4…11CH3I合成系、5…11CO2吸着カラム(11CO2吸着室)、11…11CH3I合成カラム(反応器)、14…11CH3OTf合成系、L6…He供給配管(パージ経路)、L14…製品配管(11CH3Iを回収する経路)、L17,L18…配管(11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路)、V10,V11…三方弁(切換手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、前記11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するヨウ化メチル製造装置であって、
前記11CH3I合成系の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、
前記11CH3I合成系の後段に、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、
前記11CH3Iを回収する経路と、前記11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、
を備えていることを特徴とするヨウ化メチル製造装置。
【請求項2】
前記11CH4吸着系は、パージ流体を供給するパージ経路を備えていることを特徴とする請求項1記載のヨウ化メチル製造装置。
【請求項3】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、前記11CH4とヨウ素ガスとを反応器に導入して11CH3Iを合成する11CH3I合成工程とを備えたヨウ化メチル製造方法であって、
前記11CH3I合成工程の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着工程と、
前記11CH3I合成工程の後段に、前記11CH3Iを回収するか、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成するか、を選択する選択工程と、
を備えていることを特徴とするヨウ化メチル製造方法。
【請求項4】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、前記11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するメチルトリフレート製造装置であって、
前記11CH3I合成系の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、
前記11CH3I合成系の後段に、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、
前記11CH3Iを回収する経路と、前記11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、
を備えていることを特徴とするメチルトリフレート製造装置。
【請求項1】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、前記11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するヨウ化メチル製造装置であって、
前記11CH3I合成系の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、
前記11CH3I合成系の後段に、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、
前記11CH3Iを回収する経路と、前記11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、
を備えていることを特徴とするヨウ化メチル製造装置。
【請求項2】
前記11CH4吸着系は、パージ流体を供給するパージ経路を備えていることを特徴とする請求項1記載のヨウ化メチル製造装置。
【請求項3】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成工程と、前記11CH4とヨウ素ガスとを反応器に導入して11CH3Iを合成する11CH3I合成工程とを備えたヨウ化メチル製造方法であって、
前記11CH3I合成工程の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着工程と、
前記11CH3I合成工程の後段に、前記11CH3Iを回収するか、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成するか、を選択する選択工程と、
を備えていることを特徴とするヨウ化メチル製造方法。
【請求項4】
所定の原料ガスと水素ガスとを用いて11CH4を生成する11CH4生成系と、前記11CH4とヨウ素ガスとを導入して11CH3Iを合成する反応器を備えた11CH3I合成系と、を具備するメチルトリフレート製造装置であって、
前記11CH3I合成系の前段に、前記11CH4を一時的に吸着させて前記11CH4に同伴する未反応の水素ガスを除去する11CH4吸着系と、
前記11CH3I合成系の後段に、前記11CH3Iを用いて11CH3OTfを合成する11CH3OTf合成系と、
前記11CH3Iを回収する経路と、前記11CH3Iを11CH3OTf合成系に供給して11CH3OTfを回収する経路とを選択的に切り換える切換手段と、
を備えていることを特徴とするメチルトリフレート製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−280730(P2010−280730A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211483(P2010−211483)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【分割の表示】特願2004−157928(P2004−157928)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【分割の表示】特願2004−157928(P2004−157928)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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