説明

ライトガイド層を備えた照明構造

【課題】光線の明度や彩度の低下を防ぎ、光線の色相の再現性を向上させることのできるライトガイド層を備えた照明構造を提供する。
【解決手段】メタルドーム層2に対向する操作層10と、メタルドーム層2と操作層10の間に介在される光透過性のライトガイド層20と、ライトガイド層20に有彩色の光線を照射するLED30とを備え、操作層10にキートップ11を形成し、ライトガイド層20によりLED30からの光線を導光して操作層10のキートップ11を照明するものであって、ライトガイド層20に、LED30からの光線を導光して操作層10のキートップ11方向に照射する散乱透過模様21を操作層10のキートップ11に対応させて設ける。各散乱透過模様21を、光線の色相に対応する色相で光線の明度と彩度の少なくともいずれか一方を向上させる有彩色のインクにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話に代表される携帯機器、オーディオ機器、ゲーム機器等に使用されるライトガイド層を備えた照明構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は、図示しないが、電話やメールの送受信機能、カメラの撮影機能、ゲーム機能等の多機能が付与され、筐体表面の操作層に、裏面側から照明される光透過性のキートップが複数配列されており、この複数のキートップには、操作に必要な数字、文字、図柄等が並べて印刷されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近時の携帯電話には、キートップを無彩色ではなく、有彩色の光線で照明して演出したいという要望がある。具体的には、キートップを単調な白色の光線で照明するのではなく、鮮やかな赤色や青色の光線で照明し、カラー化を図りたいという要望がある。また、キートップの一部を赤色の光線で照明し、キートップの残部を青色の光線で照明したいという要望もある。
【特許文献1】特開2004−200093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時の携帯電話には、以上のような要望があり、この要望を実現するため、操作層のキートップにカラーフィルタを使用する等、様々な方法が提案されているが、いずれの方法を採用するにしろ、光線の明度や彩度が低下するので、光線の色相の再現性が悪く、演出感に欠けるという問題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、光線の明度や彩度の低下を防ぎ、光線の色相の再現性を向上させることのできるライトガイド層を備えた照明構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、接点層に対向する操作層と、これら接点層と操作層との間に介在される光透過性のライトガイド層と、このライトガイド層に光線を照射する発光素子とを備え、操作層に発光領域を形成し、ライトガイド層により発光素子からの光線を導光して操作層の発光領域を照明するものであって、
ライトガイド層に、発光素子からの光線を導光して操作層の発光領域方向に照射する散乱透過模様を操作層の発光領域に対応させて設け、この散乱透過模様を、光線の明度と彩度の少なくともいずれか一方を向上させる有彩色のインクにより形成したことを特徴としている。
【0007】
なお、ライトガイド層の周面に有彩色の光線を照射する発光素子を備え、ライトガイド層の散乱透過模様を、光線の色相に対応する色相のインクにより形成することができる。
また、操作層の発光領域に、所定の色相の光線のみを透過するフィルタを設けることができる。
また、ライトガイド層に複数の散乱透過模様を設け、この複数の散乱透過模様に発光素子を基準にグラデーション処理を施し、発光素子に近い散乱透過模様と遠い散乱透過模様とを略均一に発光させることができる。
【0008】
さらに、操作層の発光領域、ライトガイド層の散乱透過模様、及び発光素子をそれぞれ複数とし、複数の発光素子から色相の異なる光線を照射するようにし、複数の発光領域のうち、一部の発光領域に所定の色相の光線のみを透過するフィルタを設けるとともに、残部の発光領域には、所定の他の色相の光線のみを透過するフィルタを設け、複数の散乱透過模様のうち、一部の散乱透過模様を所定の発光素子の光線と同色相のインクにより形成し、残部の散乱透過模様を所定の他の発光素子の光線と同色相のインクにより形成するようにしても良い。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における接点層には、押圧操作により接点機能を発揮する複数の接点部を配列し、この複数の接点部を可撓性の保護膜により被覆し、この保護膜にライトガイド層を接触させることができる。また、操作層の発光領域をキートップとし、このキートップを文字部と図柄部、文字部と記号部等のように複数の模様部に区画形成することができる。このキートップには、少なくとも透明あるいは半透明のキートップが含まれる。
【0010】
発光素子は、例えば小型で高輝度のLEDやEL(面発光体)からなり、接点層の周囲の前後左右部や隅部のいずれかに位置すれば良い。この発光素子の光線には、少なくとも赤(R)、青(B)、緑(G)の光線が含まれる。さらに、本発明に係るライトガイド層を備えた照明構造は、少なくとも多機能の携帯電話やオーディオプレーヤ等の操作部に適用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光線の明度や彩度の低下を防ぎ、光線の色相の再現性を向上させることができるという効果がある。
また、ライトガイド層の周面に有彩色の光線を照射する発光素子を備え、ライトガイド層の散乱透過模様を、光線の色相に対応する色相のインクにより形成すれば、光線の彩度の低下を招くことが少ない。
【0012】
また、操作層の発光領域に、所定の色相の光線のみを透過するフィルタを設ければ、このフィルタにより光線を色分けすることができるので、照明の良好な演出を得ることができる。
さらに、複数の散乱透過模様に発光素子を基準にグラデーション処理を施せば、発光素子に近い散乱透過模様と遠い散乱透過模様とを略均一に発光させ、照明の不均衡化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるライトガイド層を備えた照明構造は、図1に示すように、フレキシブルプリント配線板1上に搭載される携帯電話用のメタルドーム層2と、このメタルドーム層2に対向する操作層10と、これらメタルドーム層2と操作層10との間に介在される光透過性のライトガイド層20と、このライトガイド層20に有彩色の光線を照射する複数のLED30とを備え、ライトガイド層20により複数のLED30からの光線を導光して操作層10方向に照射し、この操作層10の発光領域である複数のキートップ11を照明するようにしている。
【0014】
メタルドーム層2、操作層10、ライトガイド層20は、図1に示すように、図示しない粘着テープや接着剤を使用して積層構造に形成される。メタルドーム層2の表面上には、接着層を挟持するライトガイド層20が積層され、このライトガイド層20の表面上には、フラットな操作層10が積層される。
【0015】
メタルドーム層2は、図1に示すように、押圧操作により接点機能を発揮する複数のメタルドーム3が表面に配列され、この複数のメタルドーム3が可撓性の保護膜4により被覆されており、この保護膜4上にライトガイド層20が接触する。保護膜4は、例えば光や熱に対して安定のポリエチレンテレフタレート等からなり、メタルドーム層2の表面周縁部に接着される。
【0016】
操作層10は、図1に示すように、例えば所定のフィルムを使用して可撓性を有する断面略板形に成形され、光透過性を有する複数のキートップ11がフラットに配列される。複数のキートップ11は、操作層10の面方向に所定の間隔をおいて配列され、各キートップ11が電話用の大きな数字部とメール用の小さい模様部とに区画形成されるとともに、光透過性の透明あるいは半透明に形成される。
【0017】
模様部は、例えば英文字や機能を表す各種の記号等から形成される。このようなキートップ11は、ユーザに押圧操作されることにより、メタルドーム層2のメタルドーム3をライトガイド層20を介しON−OFFするよう機能する。
【0018】
ライトガイド層20は、例えば無色透明のシリコーンポリマーに補強用のシリコーンレジンや補強シリカの添加された所定の成形材料を使用して屈曲可能な柔軟な略板形に成形される。このライトガイド層20は、同図に示すように、表面に操作層10のキートップ11に対応する複数の散乱透過模様21が印刷され、裏面にはベタツキ感を抑制する酸化ケイ素皮膜22が形成されており、LED30からXY方向に導光した光線(図の矢印参照)を散乱透過模様21により操作層10方向に導いて散乱させるよう機能する。
【0019】
複数の散乱透過模様21は、例えばLED30の光線の色相と同相(例えば、光線が赤色なら赤色、光線が青色なら青色)で光線の明度と彩度を向上させる有彩色のインクにより並べてスクリーン印刷され、LED30を基準にグラデーション処理が施される。すなわち、複数の散乱透過模様21は、LED30に近い散乱透過模様21が小さくドット印刷され、LED30から遠い散乱透過模様21が強く発光するよう大きくドット印刷されており、ライトガイド層20を全体として略均一に発光させる。
【0020】
各散乱透過模様21は、複数のドットにより平面矩形、多角形、扇形、円弧形の所定の形に区画形成され、光線の透過・散乱により面発光する。個々のドットは、円形や多角形等、任意の形状に印刷される。また、酸化ケイ素皮膜22は、所定の処理装置により、コンベヤで搬送されるライトガイド層20の裏面に微量のシランカップリング剤が酸化火炎と共にバーナーで瞬時に噴き付けされることにより、ナノレベルサイズの凹凸に薄く積層形成される。
【0021】
複数のLED30は、同図に示すように、メタルドーム層2の一側部あるいは他側部に配設される。この複数のLED30は、ライトガイド層20の周面に近接対向して有彩色で同色相の光線(例えば、赤色又は青色の光線)を照射するよう機能する。
【0022】
上記構成において、携帯電話の送受信機能を利用する場合にLED30が発光すると、有彩色の光線は、ライトガイド層20の周面から内部に入射して導光・伝送され、各散乱透過模様21を通過・散乱して各散乱透過模様21を面発光させ、操作層10のキートップ11を照明する。操作層10のキートップ11が発光した後、発光したキートップ11が押圧操作されると、メタルドーム層2のメタルドーム3がライトガイド層20を介して押圧操作され、携帯電話の所定の機能が実行される。
【0023】
上記構成によれば、無彩色のインクにより散乱透過模様21を単に印刷するのではなく、LED30の光線に対応する有彩色のインクにより散乱透過模様21を印刷するので、簡易な構成で光線の明度や彩度を強調することができる。したがって、光線の色相の再現性を著しく向上させることができ、実に良好な演出感、装飾美、機能美を得ることができる。また、耐候性や変色防止に優れるシリコーンポリマーに対してシリコーンレジンや補強シリカを添加した成形材料によりライトガイド層20を成形するので、強度が不足したり、薄型化に支障を来たすことが全くない。
【0024】
また、ライトガイド層20により光線を導光して散乱させるので、キートップ11の数に応じて多数のLED30を使用する必要が全くなく、コスト削減を図ることができる。また、メタルドーム層2の保護膜4にシリコーンゴム製のライトガイド層20が直接接触するので、良好なタック感が大いに期待でき、薄型化を図ることもできる。
【0025】
さらに、ライトガイド層20のメタルドーム層2の保護膜4に対向する裏面に易接着性物質である酸化ケイ素皮膜22を積極的に形成するので、経時変化に対する耐久性を著しく向上させ、信頼性の低下を抑制防止したり、生産工程の短縮、生産性の向上、生産コストの削減、不良率の低減、環境負荷の低減を図ることが可能になる。
【0026】
次に、図2は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、複数のキートップ11の裏面に、所定の色相の光線のみを透過するカラーフィルタ12・12Aを形成し、複数のLED30・30Aから相互に色相の異なる光線、換言すれば、波長帯域が異なる光線を照射するようにしている。
【0027】
複数のキートップ11のうち、一部のキートップ11Aの裏面には、赤色の光線のみを透過し、青色の光線を吸収・遮断するカラーフィルタ12が形成され、残部のキートップ11Bの裏面には、青色の光線のみを透過し、赤色の光線を吸収・遮断するカラーフィルタ12Aが形成される。また、複数の散乱透過模様21は、一部の散乱透過模様21AがLED30の光線と同色相の赤色のインクによりスクリーン印刷され、残部の散乱透過模様21BがLED30Aの光線の同色相の青色のインクによりスクリーン印刷される。
【0028】
複数のLED30・30Aは、例えば一方のLED30が赤色の光線(λ=670nm)を照射し、他方のLED30Aが青色の光線(λ=460nm)を照射するよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0029】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、カラーフィルタ12・12AによりLED30・30Aの光線を適切に色分けすることができるので、複数の色相により光線が混合することがなく、より良好な演出感を得ることができるのは明らかである。
【0030】
なお、上記実施形態の操作層10とキートップ11とは、一体でも良いし、別体でも良い。また、第1の実施形態におけるキートップ11の裏面に、赤色の光線のみを透過し、青色の光線を吸収するカラーフィルタ12を形成しても良い。また、接着層の代わりにフィルム層を使用してその表裏両面に接着剤をそれぞれ塗布しても良い。
【0031】
また、補強シリカを省略し、シリコーンポリマーに対してシリコーンレジンのみを添加した成形材料によりライトガイド層20を成形しても、シリコーンレジンがある程度の補強効果を奏するので、強度を確保したり、キートップ11のクリック感を向上させたり、薄型化を図ることができる。さらに、ライトガイド層20を、シリコーンゴム以外の材料により形成することもできる。例えば、光透過性を有する透明のアクリル樹脂やウレタン樹脂等を使用して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るライトガイド層を備えた照明構造の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図2】本発明に係るライトガイド層を備えた照明構造の第2の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フレキシブルプリント配線板
2 メタルドーム層(接点層)
3 メタルドーム
10 操作層
11 キートップ(発光領域)
11A キートップ(発光領域)
11B キートップ(発光領域)
12 カラーフィルタ(フィルタ)
12A カラーフィルタ(フィルタ)
20 ライトガイド層
21 散乱透過模様
21A 散乱透過模様
21B 散乱透過模様
30 LED(発光素子)
30A LED(発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点層に対向する操作層と、これら接点層と操作層との間に介在される光透過性のライトガイド層と、このライトガイド層に光線を照射する発光素子とを備え、操作層に発光領域を形成し、ライトガイド層により発光素子からの光線を導光して操作層の発光領域を照明するライトガイド層を備えた照明構造であって、
ライトガイド層に、発光素子からの光線を導光して操作層の発光領域方向に照射する散乱透過模様を操作層の発光領域に対応させて設け、この散乱透過模様を、光線の明度と彩度の少なくともいずれか一方を向上させる有彩色のインクにより形成したことを特徴とするライトガイド層を備えた照明構造。
【請求項2】
操作層の発光領域に、所定の色相の光線のみを透過するフィルタを設けた請求項1記載のライトガイド層を備えた照明構造。
【請求項3】
ライトガイド層の周面に有彩色の光線を照射する発光素子を備え、ライトガイド層の散乱透過模様を、光線の色相に対応する色相のインクにより形成した請求項1又は2記載のライトガイド層を備えた照明構造。
【請求項4】
ライトガイド層に複数の散乱透過模様を設け、この複数の散乱透過模様に発光素子を基準にグラデーション処理を施し、発光素子に近い散乱透過模様と遠い散乱透過模様とを略均一に発光させるようにした請求項1、2、又は3記載のライトガイド層を備えた照明構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−283174(P2009−283174A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131726(P2008−131726)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】