説明

ライトガイド

【課題】 均一性が良く、伝送損失が少なく出射効率に優れたライトガイドを提供するとともに、ライトガイドの側面から漏れる紫外線を防止し、これにより、ライトガイドの内部に設けられた密閉部材の紫外線による劣化を防止する。
【解決手段】 光ファイバ素線群からなるライトガイド本体(2)の出射端に、光ファイバ素線束を構成する素線同志が融着一体化された均質気密構造の非可撓性ライトガイド(3)を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ繊維束を含むライトガイドに関し、さらに詳しくは、紫外線照射装置用の光伝送体として有用なライトガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤としての紫外線硬化性樹脂材料(以下、“樹脂材料”と略記する)の利用が盛んになってきている。ただ、該樹脂材料は、紫外線照射時に気泡を発生し易いので、この気泡の発生を無くすための工夫が必要になる。その一例として、該樹脂材料を真空容器中に載置した状態で、先端部が該真空容器に挿入されたライトガイドにより紫外線を照射する紫外線照射装置が知られている。
図4にはこの装置の側面図が示されている。(1)はライトガイドで、光ファイバ素線束からなる可撓性ライトガイド本体(2)と非可撓性ガラスロッド(3d)とから構成されている。ここで、可撓性ライトガイド本体(2)および非可撓性ガラスロッド(3d)は共に円筒状である。(4)はライトガイド(1)の照射部(先端部)内部に内蔵された、ふっ素ゴム、EPDM、シリコーンゴム等の弾性ゴム部材からなるO-リング、パッキン等の密閉部材である。この密閉部材により、ライトガイド(1)の挿入部(8a)で真空容器(8)と外部との気密性が確保されている。(7)は紫外線光源、そして、(9)は樹脂材料が塗布された被接着体である。
ところで、ライトガイド(1)には紫外線光源(7)から種々の入射角度で紫外線が入射するため、一部の紫外線は出射端に到達する前にライトガイド(1)の外側表面から散乱して漏れやすくなる。そして、この漏れ(露光)現象は、拡散光を得るガラスロッド(3d)部で、より顕著になり、肝心の出射効率と均一光化の低下につながる。この理由は、該ロッドが単品であり、したがって、単層構造であるため、ロッド外表面との境界部でのみ反射・屈折あるいは散乱が生じるからである。
さらに、このようなライトガイドを紫外線照射装置の光伝送体として採用した場合には、略二つの問題が付随的に生じる。その一つは、上記した、ふっ素ゴム、EPDM、シリコーンゴム等の弾性を有するゴム部材が、紫外線に晒されて劣化することである。この結果、真空容器(8)と外部との気密が確保できなくなり、流入する空気により硬化樹脂表面に気泡を生じ、接着に不具合が生じる。他の一つは、不均一な出射光の下では、樹脂材料の硬化時間にずれが生じ、生産性が低下することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の第一の課題は、上記した入射光の漏れ現象を克服することにより、優れた出射効率の下に均一光を照射するライトガイドを提供することにある。
さらに、本発明の第二の課題は、上記の紫外線照射装置に採用されるライトガイドでの漏れ現象を克服することにより、ゴム状弾性密閉部材の紫外線劣化の問題を解消し、しかも、樹脂材料の均質硬化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、光ファイバ素線群からなる可撓性ライトガイド本体の出射端に、光ファイバ素線束が融着一体化されてなる、均質気密構造の非可撓性のライトガイドを装着するという構成を採ることにより、上記の課題を一挙に解決するに至った。
【発明の効果】
【0005】
上述のように、上記の光ファイバ素線束が融着一体化されてなる、均質気密構造の非可撓性ライトガイドにあっては、従来のガラスロッド(図4の(3d))の場合のように散乱光が生じない。すなわち、ガラスファイバ素線束を構成する素線自体、コア−クラッドの2層構造であり、隣合う1本1本のガラスファイバ素線間で反射・屈折を生じ、ガラスロッド単品の場合より、散乱は起こりにくい光学特性を呈する。 この結果、
(a)該ライトガイドの外側表面からの紫外線を含めた光の漏れ現象が大幅に軽減される(伝送損失が実質的になくなる)ので、出射光量が大幅に増加する。
(b)入射光は非可撓性ライトガイド先端からほぼそのままの状態で出射するので、均一光が得られ、出射効率が向上する。
(c)該ライトガイド自体、接着剤を一切使用せず、熱融着により光ファイバ素線束を一体化したので、ガラスファイバ素線間に隙間を生ぜず、真空容器と外部との気密性が確保される。したがって、樹脂材料表面での気泡発生がなく、しかも良質の硬化・接着状態が実現する。
(d)上記の露光量の大幅減少は、ゴム状弾性密閉部材の紫外線劣化の懸念を解消する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明のライトガイドを紫外線照射装置に採用した例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るライトガイドの縦断面図である。
図2は、本発明に係るライトガイドの別の態様を示す縦断面図である。
図3は、本発明に係るライトガイドの出射光量及びその均一性を示すグラフである。
図4は、従来のライトガイドを組み込んだ紫外線照射装置の側面図である。
図1において、符号(1)、(2)、(4)、(7)、(8)、(8a)、および(9)は、冒頭に述べた図4の場合と同一である。一方、(2a)および(2b)はそれぞれ、可撓性ライトガイド本体(2)の入射端面および出射端面、(3)は、該本体よりも直径の大きい非可撓性ライトガイド、(3a)および(3b)はそれぞれ、非可撓性ライトガイド(3)の入射端面および出射端面、(5)は可撓性ライトガイド本体(2)の端面に嵌合されて該端面を保護する止め金、(6)は可撓性ライトガイド本体(2)と非可撓性ライトガイド(3)とを収納・固定する金属管である。
【0007】
本発明において、非可撓性ライトガイド(3)の断面は、真空装置側との気密を確保するため、ガラスファイバの各素線断面が多角形状に熱変形しながら、それらが互いに熱融着して一体化された均質気密構造とすることが肝要である。この多角形状の断面としては、ガラスファイバ束に最密充填構造をもたらす六方稠密構造が最も好ましい。このときの熱融着の条件は、加熱温度400℃〜700℃、加熱時間30分〜240分とすれば十分である。
その材質としては、耐紫外線性能に優れた石英ガラスが好ましい。融着一体化後の外径、すなわち非可撓性ライトガイド(3)の外径は1mm〜30mmが好ましく、また、その長さは出射光の均一化性能、および挿入損失等を考慮すると、5mm〜100mmが好ましい。
ところで、図1においては、非可撓性ライトガイド(3)の外径(ないし断面積)を可撓性ライトガイド本体(2)の外径(ないし断面積)より、大きくしたことには、二つの理由がある。その一つは、可撓性ライトガイド(2)の出射端面(2b)からの全ての出射光を非可撓性ライトガイド(3)の入射端面(3a)に確実に入光させるため、すなわち非可撓性ライトガイド(3)の出射端面(3b)からの出射光の集光効果を上げるためである。もう一つの理由は、非可撓性ライトガイド(3)の外側表面からの露光を防止するためである。
以上のことから、後述する図2の態様のように、非可撓性ライトガイド(3)の外側表面に反射金属層(3c)を敢えて設ける必要がなく、ライトガイドとしての構造が簡略化される。さらに、集光効果が大きくなる分だけ非可撓性ライトガイド(3)の長さを短縮化でき、よりコンパクトなライトガイドになる。
次に、図2に示す本発明の別の態様について説明する。
本態様は、図1の態様とは異なって、非可撓性ライトガイド(3)の外径(ないし断面積)を可撓性ライトガイド本体(2)の外径(ないし断面積)と、ほぼ同径とし、これに伴って、非可撓性ライトガイド(3)の外側表面からの露光を完全に防止するために、該ガイド(3)の外側表面に反射金属層(3c)が設けたものである。このとき、密閉部材(4)は従来の場合(図4)と異なって反射金属層(3c)と金属管(6)の間、あるいは必要に応じて可撓性ライトガイド本体(2)と金属管(6)の間に設けられる。
非可撓性ライトガイド(3)の外側表面に金属反射層(3c)を被覆する手段としては、金属の薄板ないしテープ、あるいは金属蒸着フィルムを張り付ける、メッキ層あるいは直接金属蒸着層を設ける等各種の手段がある。これらの手段のなかで、金属反射層(3c)の性能やコスト等を勘案すると、非可撓性ライトガイド(3)の外側表面に直接、金属蒸着層を設けるのが望ましい。蒸着させる金属としては、銅、アルミニウム、銀、あるいは金等各種の金属材料が採択可能である。一般には、金属反射層(3c)の厚さは2μm〜20μmが好ましい範囲である。
さらに、本発明のその余の構成について説明する。
図1および図2の態様において使用する可撓性ライトガイド本体(2)自体は、複数本の光ファイバ素線から構成される。例えば、常用されている素線径が0.03〜0.30mmの場合、これら素線を3000本〜8000本程度束ねて構成される。光ファイバ素線の材質としては、非可撓性ライトガイド(3)同様、石英ガラスファイバ素線が好ましく採用される。この場合の外径は1mm〜30mmが好ましく、また、長さについて格別の制約はないが、一般には5mm〜3000mm程度であればよい。また、この可撓性ライトガイド本体(2)は、出射端部がテーパ加工された、いわゆるテーパ付ライトガイドであってもよい。また、ライトガイド(1)全体は、図示したように、外部への紫外線洩れ現象を可及的に低減させる意味から、図1にも示すように、アルミニウムやステンレス等の金属管(6)に収納・固定されるのが好ましい。
以上、本発明を例示的に説明したが、本発明の趣旨から逸脱しない限り、それらを変形した各種の態様が採用されることは言うまでもないことである。
以下は、図1に示したライトガイドの製造例である。
【実施例】
【0008】
(A)可撓性ライトガイド本体(2)の作成
素線径が0.2mmの石英ガラスファイバ素線175本を有機接着材((株)エス・エス・アイ社製、エポキシ系接着剤「アレムコボンド526N」)で円筒状に結束して、外径3mm、長さ2000mmで、両端面が共に、該素線軸と直交する平坦面で構成される可撓性ライトガイド本体(2)を作成した。その際、該両端面には黄銅製の止め金(5)を嵌合した。
(B)非可撓性ライトガイド(3)の作成
素線径が0.1mmの石英ガラスファイバ素線1200本を熱融着治具により、部分的に直線的に熱融着一体化された均質気密構造とする。熱融着の条件は、加熱温度640℃、加熱時間60分とした。次に、熱融着により一体化されたフアイバ束を長さ20mmに切断して、外径が5mmの非可撓性ライトガイド(3)を得た。
(C)密閉部材(4)の取り付け
ふっ素ゴムからなる外径5mm、内径3.5mmのリング状密閉部材(4)を3本用いて、上記で作成した非可撓性ライトガイド(3)の側面に等間隔に装着した。
(D)非可撓性ライトガイド(3)と可撓性ライトガイド本体(2)との接合
(A)項で作成した可撓性ライトガイド(2)の出射端面(2b)に、(B)項で作成した非可撓性ライトガイド(3)の入射端面(3a)を圧接した状態で、これらを肉厚が1mmで内径が5.5mmのステンレス金属管(6)の内部に収納・固定して、図1に示す形状のライトガイド(1)を完成した。
このライトガイド(1)の入射端面(2a)に、紫外線光源(7)から波長365nmの紫外線を入力させ、非可撓性ライトガイド(3)の出射端面(3b)からの出射光量を紫外線測定器にて測定した所、図3の実線で示ような出射プロフィールが得られた。これに対して、同図の点線で示す出射プロフィールは、従来のガラスロッドの場合(図4の)である。本発明によれば、従来に比して、20%程に出射光量が向上すると共に出射光も均一光化していることが確認された。
さらに、上記のライトガイド(1)の先端部50mmを、50cm×40cm×30cm、厚さ2mmのステンレスからなる密閉容器(8)のライトガイド挿入部(8a)から該密閉容器内に挿入した。その際、ライトガイド挿入部(8a)はリング状のふっ素ゴムで形成した。また、密閉容器(8)内には、紫外線硬化性樹脂を塗布した照射対象物を作業台に載置した後、密閉容器(8)内を真空ポンプにて真空状態とした。
この状態で、ライトガイド(1)の入射端面(2a)に、紫外線光源(7)から波長365nmの紫外線を入力させ、非可撓性ライトガイド(3)の表面外部から漏れる紫外線量を紫外線測定器にて測定した結果、紫外線漏れは確認されなかった。また、紫外線硬化作業中に、紫外線硬化性樹脂表面には、何ら泡の発生も見られず、真空容器(7)と外部との気密性も確保されていた。併せて、照射ムラも無く、良質の硬化・接着作業が遂行された。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明のライトガイドは、優れた照射効率及び均一性を発揮するとともに、ライトガイドの外側表面からの露光防止機能も備えているので、紫外線以外の光に対しても有効で、例えば、歯科用ライトガイド、赤外線治療用ライトガイド等医療分野にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るライトガイドの縦断面図である。
【図2】本発明に係るライトガイドの別の態様を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るライトガイドの出射光量及びその均一性を示すグラフである。
【図4】従来のライトガイドを組み込んだ紫外線照射装置の側面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 ライトガイド
2 可撓性ライトガイド本体
2a ライトガイド本体の入射端面
2b ライトガイド本体の出射端面
3 非可撓性ライトガイド
3a 非可撓性ライトガイドの入射端面
3b 非可撓性ライトガイドの出射端面
3c 金属反射層
3d ガラスロッド
4 密閉部材
5 止め金
6 金属管
7 紫外線光源
8 真空容器
8a ライトガイド挿入部
9 紫外線硬化性樹脂材料が塗布された被接着体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性ライトガイド本体の出射端に、光ファイバ素線束を構成する素線同志が融着一体化された均質気密構造の非可撓性ライトガイドが装着されてなることを特徴とするたライトガイド。
【請求項2】
該均質気密構造が最密充填構造である請求項1に記載のライトガイド。
【請求項3】
該非可撓性ライトガイドの外径が、該ライトガイド本体の外径と同じかまたは該ライトガイド本体の外径より大きい請求項1または2に記載のライトガイド。
【請求項4】
該非可撓性ライトガイドの外側表面が金属反射層で被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項5】
該金属反射層の厚さが2μm〜20μmである請求項4に記載のライトガイド。
【請求項6】
該金属反射層が金属蒸着層である請求項4または5に記載のライトガイド。
【請求項7】
該非可撓性ライトガイドの材質が石英ガラスファイバ素線束である請求項1〜6のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項8】
該非可撓性ライトガイドの外径が1mm〜30mmである請求項1〜7のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項9】
該非可撓性ライトガイドの長さが5mm〜100mmである請求項1〜8のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項10】
該可撓性ライトガイド本体の外径が1mm〜30mmである請求項1〜9のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項11】
該ライトガイドが金属管に収納・固定されている請求項1〜10のいずれかに記載のライトガイド。
【請求項12】
該金属反射層と金属管の間にゴム状弾性密閉部材が設けられ、該金属反射層により、該密閉部材の紫外線劣化防止能を呈する請求項1〜11のいずれかに記載のライトガイド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17964(P2006−17964A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194989(P2004−194989)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】