説明

ライナープレート連結構造及びライナープレート連結構造体

【課題】 基礎杭の規模や工法、作業環境等によって使用が制限されていた一般的なライナープレートを、使用可能にするライナープレートの連結構造を提供する。
【解決手段】 内締めタイプのライナープレートが連結具を介して連結され、連結具は、一対のフランジ連結部と、一対のフランジ連結部を結ぶ支持部とからなり、フランジ連結部には、ボルト締結用のフランジ連結孔が設けられている。また、連結具は、一対の連結片を連結固定してなり、連結片は、フランジ連結部と、フランジ連結部の縁部又は腹部から立ち上がる支持片とからなり、フランジ連結部は、外周側縁部と内周側縁部が平行に位置し、支持片は、ボルト締結用の支持片連結孔が設けられ、どちらか一方の支持片において、フランジ連結部の内周側縁部側の面にナットが溶接固定され、支持片連結孔とナット孔が連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭、集水井等の立坑の土留め壁に用いられるライナープレート連結構造及びライナープレート連結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から行われている基礎杭の工法としては、図21に示された工法(深礎工法)がある。この工法は、(1)杭穴56を掘削する工程と、(2)杭穴56内に作業者54が入り込み、ライナープレート2を下方へ連結して円筒壁体60を構築する工程と、(3)円筒壁体60の下方へ杭穴56を掘削する工程と、(4)円筒壁体60の下端にライナープレート2を連結する工程とからなる。そして、工程(4)以降は、工程(3)と工程(4)を繰り返して所定深さまで円筒壁体60を形成する。
【0003】
その他の工法としては、図22に示された工法(圧入工法)もある。この工法は、(1)地上でライナープレート2を連結して円筒壁体60を構築する工程と、(2)円筒壁体60を土中へ圧入する工程と、(3)土中の円筒壁体60内を掘削する工程と、(4)円筒壁体60内に内足場を設け、杭穴56内に作業者54が入り込み、ライナープレート2を連結して次段の円筒壁体60を構築する工程と、(5)円筒壁体60を土中へ圧入する工程と、(6)土中の円筒壁体60内を掘削する工程とからなる。そして、工程(3)以降は、工程(4)〜工程(6)を繰り返して所定深さまで円筒壁体60を形成する。
【0004】
また、リバース工法と呼ばれる工法もある。この工法は、ドリルビットを回転させて地盤を掘削する工法で、地盤の崩落を防止するために、杭穴内に穴内水を注入し、穴内水の水頭圧で穴壁を保護し、掘削作業と土砂と穴内水を地上に排出し、土砂を分離して水を穴内へ循環させる点が特徴である。また、この工法は、杭穴の入り口付近に土留め部材を設け、土留め部材より深部は、掘削泥水及び地下水の水頭圧により穴壁を保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−81854号公報
【特許文献2】特開2004−332202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に使用されているライナープレート2(図2(b)参照)は、ライナープレート2の内周側からボルト、ナットで連結する構造が特徴である。そのため、図21及び図22に示されたように、作業員54が杭穴56内に入り込んでライナープレート2の連結作業を行っていた。
【0007】
しかし、小型基礎杭の場合、杭穴56内での連結作業が困難という問題を有していた。この問題に対し、外周側から連結可能なライナープレート2を使用するという方法があるが、外周側から連結可能な新たな構造のライナープレート2を製造しなければならず、ライナープレート2の品種が増えることや、設備投資により、コスト高になってしまうという問題がある。
【0008】
また、圧入工法では、掘削する際は、内足場を撤去し、ライナープレート2を連結する際は、内足場を設けて行うので、労力と時間がかかり、工期が長期化することや、人件費などのコストがかかるという問題がある。
【0009】
また、前記したリバース工法は、水頭圧で穴壁を保護するため、砂を多く含む土質のように、崩れやすい地山には用いることができないという問題があった。この問題に対し、杭穴を深部まで土留め部材で被覆するという方法があるが、リバース工法は杭穴をドリルビットで掘削するため、杭穴内で土留め部材の連結作業が行えない。従って、土留め部材として一般的なライナープレートを使用することができないという問題がある。
【0010】
以上のことから、基礎杭の規模、基礎杭の工法や作業環境に関係なく、一般的なライナープレートが使用でき、リバース工法にも一般的なライナープレートが使用できる、ライナープレートの連結方法や連結構造の開発が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るライナープレートの連結構造は、上記課題を解決するものであり、上下一対の一般的なライナープレートが連結具を介して連結されてなり、連結具は、一対のフランジ連結部と、一対のフランジ連結部を結ぶ支持部とからなり、フランジ連結部には、ボルト締結用のフランジ連結孔が設けられ、フランジ連結部はライナープレートの周方向フランジとボルト締結されている。
【0012】
ここで、一般的なライナープレートは、波付けが施された波形鋼板と、波形鋼板の周縁に設けられたフランジとからなり、フランジは、一対の周方向フランジと一対の軸方向フランジを有し、周方向フランジは、波形鋼板の周方向縁部から略扇形部材が内周側に向かって突出し、連結用の周方向連結孔が設けられ、軸方向フランジには連結用の軸方向連結孔が設けられている。
【0013】
フランジ連結部は、外周側縁部と内周側縁部が平行に位置し、支持部は、一対のフランジ連結部の内周側縁部同士を結ぶ形状でも良い。また、支持部は、一方のフランジ連結部の外周側縁部と、もう一方のフランジ連結部の内周側縁部を結ぶ形状でも良い。また、支持部は、一対のフランジ連結部の対向しあう面同士を結ぶ形状でも良い。
【0014】
また、連結具は、一対の連結片を連結固定してなり、連結片は、フランジ連結部と、フランジ連結部の縁部又は腹部から立ち上がる支持片とからなり、フランジ連結部は、外周側縁部と内周側縁部が平行に位置し、支持片は、ボルト締結用の支持片連結孔が設けられ、どちらか一方の支持片において、フランジ連結部の内周側縁部側の面にナットが溶接固定され、支持片連結孔とナット孔が連通し、支持部が一対の支持片を連結してなる形状でも良い。この様な形態の連結具においては、支持片がフランジ連結部の外周側縁部から立ち上がる形状でも良い。
【0015】
また、本発明に係る他のライナープレートの連結構造も、上記課題を解決するものであり、上下一対の一般的なライナープレートが連結具を介して連結されてなり、ライナープレートの一方の周方向フランジに周方向フランジ連結孔が設けられ、もう一方の周方向フランジには周方向フランジ連結孔と係合する係合部が突設されていることを特徴とする。ここで、周方向フランジの内周側面には、ナットが溶接固定され、周方向フランジ連結孔とナット孔が連通しても良い。
【0016】
また、本発明に係る他のライナープレートの連結構造も、上記課題を解決するものであり、上下一対の一般的なライナープレートが相互に連結されてなり、ライナープレートの一方の周方向フランジに連結凸部が設けられ、もう一方の周方向フランジに連結孔部が設けられ、上下に隣り合うライナープレートの周方向フランジは連結凸部と連結孔部で係合連結されていることを特徴とする。
【0017】
ここで、連結凸部は、周方向フランジから直立する軸部と、軸部の先端に設けられた係止部とからなり、係止部の長径が軸部よりも大きく、連結孔部は、係止部が挿通可能な挿通孔と、挿通孔に連結されたスライド孔とからなり、スライド孔は、周方向フランジの縁部と平行に設けられ、スライド孔内において軸部が移動可能である。ライナープレートのその他の構造は上記ライナープレートと同じである。また、軸方向連結孔は波形鋼板の外周側溝部に設けられていても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るライナープレートの連結構造は、連結具によって、一般的なライナープレートが外周側から連結可能となるため、杭穴内に作業員が入り込んで連結作業する必要が無くなり、作業効率が飛躍的に向上する。更に、一般的なライナープレートが使用できなかった従来の基礎杭工法や作業環境でも利用可能となり、工法のコスト低減に寄与し、ライナープレートの使用範囲を拡大できる。
【0019】
また、本発明に係るライナープレートの連結構造は、連結具に係合部を備えている場合、ライナープレートと連結具が容易に連結でき、連結作業の作業効率が向上する。更に、連結作業時に作業者が任意に作業位置を選択できるため、外周側からライナープレートの連結が可能となる。
【0020】
また、本発明に係るライナープレートの連結構造は、ライナープレートの周方向フランジに係止部とスライド孔を設けている場合、係止部をスライド孔にスライドするだけでライナープレートを連結させることができるため、連結作業の作業効率が向上する。更に、連結作業時に作業者が任意に作業位置を選択できるため、外周側からライナープレートの連結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例1を示す説明図である。
【図2】図1に示された連結具を使用して形成した円筒壁体の一部を示す説明図である。
【図3】図2中の矢印で示す部分の拡大断面図である。
【図4】図3に示された連結構造を形成する際の連結工程を示す説明図である。
【図5】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例2及び例3を示す断面図である。
【図6】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例4及び例5を示す説明図である。
【図7】図6中の矢印で示す部分の断面状態を連結の前後に分けて示す説明図である。
【図8】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用した連結具の例6及び例7を示す断面図である。
【図9】図6に示された連結具を用いて形成した円筒壁体の一部を示す説明図である。
【図10】図9中の矢印で示す部分の拡大断面図である。
【図11】図10に示された連結構造を形成する際の連結工程を示す説明図である。
【図12】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例8を示す説明図である。
【図13】図12に示された連結具を用いて形成した円筒壁体の一部を示す説明図である。
【図14】図12中の矢印で示す部分の断面状態を連結の前後に分けて示す説明図である。
【図15】図13中の矢印で示す部分の拡大断面図である。
【図16】図15に示された連結構造を形成する際の連結工程を示す説明図である。
【図17】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の1を連結の前後に分けて示す説明図である。
【図18】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の2を一方の側から示す説明図である。
【図19】本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の2を他方の側から示す説明図である。
【図20】本発明に係るライナープレートの連結構造を用いて立坑を形成する際の形成工程を示す説明図である。
【図21】従来の深礎工法により立坑を形成する際の形成工程を示す説明図である。
【図22】従来の圧入工法により立坑を形成する際の形成工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るライナープレートの連結構造について、図を参照しながら説明する。なお、後述する各図は本発明を説明するためだけのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
まず、説明に先だって、本発明で使用されるライナープレートについて説明する。本発明で使用されるライナープレートは、図2(b)に示すような、従来から一般的に使用されている内締めタイプのものであり、波付けが施された波形鋼板4と、波形鋼板4の縁部に設けられたフランジ6とからなり、フランジ6は、一対の周方向フランジ8と一対の軸方向フランジ22とからなり、周方向フランジ8は、波形鋼板4の縁部から略扇形部材が内周側に向かって突出している。
【0024】
周方向フランジ8には、ボルト50、ナット52で締結するための周方向連結孔10が設けられ、軸方向フランジ22には、ボルト50、ナット52で締結するための軸方向連結孔24が設けられている。ここで、周方向フランジ8、軸方向フランジ22とは、ライナープレート2,2同士を接続し、上下方向に筒壁体の立坑を構築した場合に、波形鋼板4の上下縁部に設けられたフランジを周方向フランジ8とし、波形鋼板4の左右縁部に設けられたフランジを軸方向フランジ22とする。
【0025】
また、説明では、便宜上、内締め、外締めという単語を使用しているが、内締めとは、ライナープレート2を内周側から連結することを指し、外締めとは、ライナープレート2を外周側から連結することを指す。また、ライナープレート2は、この例では、円弧状部材を指し、円筒壁体60はライナープレート2を連結した円筒状の構造物とする。
【0026】
次に、本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1について説明する。図1は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例1を示す説明図、図2は図1に示された連結具を使用して形成した円筒壁体の一部を示す説明図、図3は図2中の矢印で示す部分の拡大断面図である。
【0027】
本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1の連結構造は、図2(a)に示すように、連結具32を用いて、上下一対のライナープレート2,2を連結するものである。そして、連結具32とライナープレート2の連結を外周側から可能にすることで、ライナープレート2の連結を外締め連結にしようとするものである。
【0028】
この連結構造を用いる場合、ライナープレート2の軸方向連結孔24を軸方向フランジ22の外周側溝部に形成するのが良い。これにより、ライナープレート2の周方向の連結が外締め可能となる。本発明では水抜き孔25を拡張するように軸方向連結孔24を形成しているが、軸方向連結孔24の形成位置、形状や大きさ等については適宜設定すれば良い。また、ライナープレート2の内周側の既存の連結孔は、塞いでも良いし、そのまま残しても良く、適宜設定すれば良い。
【0029】
この連結構造は、ライナープレート2の周方向フランジ8の内周側面にナット52を溶接固定しても良い。この時、周方向連結孔10とナット52の孔が連通するように溶接固定するのが良い。これにより、作業者54がナット52を支持せずにボルト50締結が可能となるため、作業者54の作業位置が限定されなくなり、ライナープレート2の外締めが可能となる。ナット52の溶接固定は、ライナープレート2の一方の周方向フランジ8だけ設けても良いし、両方の周方向フランジ8に設けても良く、適宜設定すれば良い。
【0030】
本発明に係る連結具32は、図1に示すように、一対のフランジ連結部34と、一対のフランジ連結部34を結ぶ支持部42とからなる。フランジ連結部34は、ライナープレート2との連結時に、周方向フランジ8と接する部位を指す。フランジ連結部34の形状については、周方向フランジ8と連結可能であれば適宜設定すれば良いが、外周側縁部36と内周側縁部38が平行に位置する略扇形で、周方向フランジ8と同一、類似、相似形状であると更に良い。
【0031】
ここで、内周側縁部38とは、フランジ連結部34の内周側の縁部を指し、外周側縁部36とは、外周側の縁部を指す。また、フランジ連結部34には、ボルト50締結用のフランジ連結孔40が設けられている。フランジ連結孔40の形状、形成位置は、周方向連結孔10の形状や形成位置等に応じて設定すれば良い。
【0032】
この連結具32は、図1に示すように、一対のフランジ連結部34の内周側縁部38同士を支持部42が結び、外周側縁部36側が開放された、断面コ字状の形状となっている。この形状により、連結具32とライナープレート2を外周側縁部36側から連結することになるため、ライナープレート2の連結が外締めとなる。
【0033】
この連結具32とライナープレート2の連結作業は、図4に示されたように行うのが良い。すなわち、図4(a)に示すように、ライナープレート2の下側の周方向フランジ8と、連結具32の上側のフランジ連結部34をボルト50、ナット52で締結し、図4(b)に示すように、連結具32の下側のフランジ連結部34と、円筒壁体60上方の周方向フランジ8を合わせ、ボルト50を締めると、図4(c)に示すように、ライナープレート2と連結具32が連結される。
【0034】
この連結具32を使用する場合は、周方向フランジ8の内周側面にナット52が溶接固定されたライナープレート2を使用するのが良く、ナット52が溶接固定された側の周方向フランジ8を円筒壁体60の上側に位置させるのが良い。また、図4に示す工程において、円筒壁体60と連結具32を先に連結する場合は、連結具32とライナープレート2を内周側から連結することになるため、周方向フランジ8内周面にナット52を溶接固定したライナープレート2を使用するのが良い。
【0035】
連結具32のその他の形状としては、図5(a),(b)に示されたものが挙げられる。図5(a)に示されたもの(例2)は、一対のフランジ連結部34のうち、一方のフランジ連結部34の外周側縁部36と、もう一方のフランジ連結部34の内周側縁部38を支持部42が結ぶ断面形状となっている。また、図5(b)に示されたもの(例3)は、一対のフランジ連結部34の対向しあう面同士を支持部42が結ぶ断面形状となっている。図5(b)の連結具32は、支持部42がフランジ連結部34の内周側縁部38側に設けられているが、支持部42をフランジ連結部34の中心部に設けても良いし、外周側縁部36側に設けても良く、支持部42の設置位置は適宜設定すれば良い。内周側フランジ連結部は、立坑を補強するための補強リングや梁材を接続することができる。
【0036】
図6は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例4及び例5を示す説明図であり、連結具32の他の形態としては、同図に示すように、一対の連結片44を分離可能に連結してなる構造がある。この連結具32は、ライナープレート2及び円筒壁体60の周方向フランジ8に連結片44を連結させた後、連結片44同士を連結固定することで、ライナープレート2を連結するものである。また、連結片44同士の連結を外周側から行うことで、ライナープレート2の連結を外締めにしようとするものである。
【0037】
図7は図6中の矢印で示す部分の断面状態を連結の前後に分けて示す説明図であり、連結片44は、同図に示すように、フランジ連結部34と、フランジ連結部34の縁部又は腹部から立ち上がる支持片46とからなり、支持片46には、ボルト50締結用の支持片連結孔48が設けられている。そして、どちらか一方の支持片46において、フランジ連結部34の内周側縁部38側の面にナット52が溶接固定されている。また、支持片連結孔48とナット52の孔は、連通して固定されている。これにより、作業者54がナット52を支持する必要が無くなり、且つ、連結片44同士を外周側から連結可能となる。
【0038】
支持片連結孔48の形成位置としては、フランジ連結孔40と軸方向の同じ位置に設けるのが良いが、フランジ連結孔40と支持片連結孔48が近すぎてボルト50締結用器具の使用に支障が生じる場合は、図6及び図12に示されたように、フランジ連結孔40より若干ずらした位置に設置するのが良い。連結具32を周方向フランジ8に施工場所とは異なる別の場所で予め取り付けておいても良い。この場合、連結孔にボルト挿通して締結しても良いし、連結孔を使用せず、溶接で取り付けても良い。
【0039】
連結片44の具体的な形状としては、図6及び図7に示されたものが挙げられる。図9は図6に示された連結具を用いて形成した円筒壁体の一部を示す説明図である。また、図10は図9中の矢印で示す部分の拡大断面図である。この連結片44は、フランジ連結部34の内周側縁部38から支持片46が立ち上がる形状をしており、図1に示された連結具32を支持部42において分離したような形状をしている。
【0040】
連結片44のその他の例(例6)としては、図8(a)に示された断面形状のものでも良い。この連結片44は、図5(a)の連結具32を支持部42において分離したような形状となっている。また、連結片44のその他の例(例7)としては、図8(b)に示されたような断面形状のものでも良い。この連結片44は、図5(b)の連結具32を支持部に42において分離したような形状となっている。
【0041】
図12は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態1で使用する連結具の例8を示す説明図、図13は図12に示された連結具を用いて形成した円筒壁体の一部を示す説明図、図14は図12中の矢印で示す部分の断面状態を連結の前後に分けて示す説明図、図15は図13中の矢印で示す部分の拡大断面図であり、連結具32は図12及び図14に示された形状のものでも良い。また、連結片44は、フランジ連結部34の外周側縁部36から支持片46が立ち上がる形状となっている。
【0042】
連結具32は、上記してきた他の連結具32のように、外周側が開放されていないため、図16に示されたように、内周側から連結する構造になっている。しかし、支持片46の高さが低いため、外周側から作業者54の手が届き、連結作業の支障になりにくいので、外周側から周方向フランジ8と連結片44の連結が可能である。更に、上記の通り、連結片44同士の連結は、外周側から可能であるため、図12及び図14に示された形状のものも使用可能である。
【0043】
以上説明してきた例1〜例8の連結具32とライナープレート2の連結作業は、図11又は図16に示されたように行うのが良い。図11は図10に示された連結構造を形成する際の連結工程を示す説明図で、図16は図15に示された連結構造を形成する際の連結工程を示す説明図である。
【0044】
すなわち、図11(a)又は図16(a)に示すように、ライナープレート2及び円筒壁体60の周方向フランジ8と連結片44をそれぞれボルト50、ナット52で連結し、図11(b)又は図16(b)に示すように、一対の連結片44の支持片連結孔48を一致させ、支持片連結孔48にボルト50を挿通させ、ボルト50を締めると、図11(c)又は図16(c)に示すように、連結片44の連結固定が完了すると共に、ライナープレート2の連結も完了する。
【0045】
図11(a)又は図16(a)に示す工程において、外周側から連結作業が行えない場合は、周方向フランジ8の内周側面にナット52が溶接固定されたライナープレート2を使用しても良い。連結片を分離可能にしておけば、連結具の高さの調整を容易にできる。支持片連結孔を長孔に形成すれば、連結金具の高さが微調整できる。
【0046】
次に、本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の1について説明する。この連結構造は、ライナープレート同士を係合手段によって直接的に連結するもので、連結作業時の作業位置を任意に選択可能とすることで、ライナープレート2の連結を外締め可能にしようとするものである。
【0047】
この連結構造で使用される係合手段としては、図17に示された形状が挙げられる。図17は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の1を連結の前後に分けて示す説明図である。周方向フランジ8の外面には周方向連結孔10と係合する係合部12が突設されている。この係合部12としては、適宜設定すれば良いが、図17に示されたようなストッパー部材14を設けたものが良い。このストッパー部材14は、弾性体で入出自在に設けられ、周方向連結孔10を通過すると突出し、自動的に周方向フランジ8と係合するような構造が良い。
【0048】
これにより、ワンタッチでライナープレート2と連結具32を連結することができるため、作業者54が作業位置を任意に選択でき、ライナープレート2の連結が可能となる。この係合部12は、周方向フランジ8と一体形成しても良いし、係合部12となる部材を周方向フランジ8に溶接固定しても良い。また、図中では係合部12を一方の周方向フランジ8に設けているが、両方の周方向フランジ8に設けても良い。
【0049】
次に、本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の2について説明する。この連結構造も、ライナープレート同士を係止して連結するもので、連結作業時の作業位置を任意に選択可能とすることで、ライナープレート2の連結を外締め可能にしようとするものである。
【0050】
係止手段については、適宜設定すれば良いが、図18及び図19に示されたように、ライナープレート2の一方の周方向フランジ8に連結凸部16を設け、もう一方の周方向フランジ8に連結孔部26を設けるのが良い。連結孔部26は、図18に示されたように、係止部20が挿通可能な挿通孔28と、挿通孔28に連結されたスライド孔30とからなる形状が良い。図18は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の2を一方の側から示す説明図であり、図18(b)は、図18(a)のA部拡大図である。挿通孔28は、周方向フランジ8に新規に設けても良いが、既存の周方向連結孔10を挿通孔28としても良い。スライド孔30は、図示されたように、挿通孔28に連結して設けられている。スライド孔30の形状としては、軸部18が移動可能で、係止部20が貫通不能な幅を有していれば、適宜設定すれば良い。
【0051】
また、図19は本発明に係るライナープレートの連結構造の実施の形態2の2を他方の側から示す説明図であり、図19(b)は図19(a)の部分拡大図である。連結凸部16は、周方向フランジ8部から直立する軸部18と、軸部18の先端に設けられた係止部20とからなる形状が良い。係止部20の形状については連結孔部26の形状にもよるが、図19に示されたように、係止部20の長径が、軸部18の長径よりも大きく形成されているのが良い。この連結凸部16は、ライナープレート2と一体形成しても良いし、ライナープレート2の周方向フランジ8外面に溶接固定して取り付けても良い。また、周方向フランジ8と類似又は相似の板状部材に、連結凸部16を周方向連結孔10と対応させて列設し、周方向フランジ8の内周側面から周方向連結孔10に連結凸部16を挿通させ、周方向フランジ8と板状部材を溶接固定させても良い。
【0052】
また、スライド孔30は、周方向フランジ8の波形縁部と平行に設けられるのが良い。また、連結したライナープレート2のスライドを防止するために、例えば、スライド孔30を先端に向かって狭く形成し、先端に軸部18を係止させる孔を設けても良い。また、連結させたライナープレート2がスライドしないように、周方向フランジ8同士をボルト50、ナット52等で締結して固定しても良い。なお、ライナープレートをリング状に連結する場合、最後のライナープレートはスライドできないが、前述したワンタッチ式の係合を使用しても良いし、他の方法で接続することができる。
【0053】
以上が、本発明に係るライナープレートの連結構造についての説明であるが、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の設定や条件は変更が可能である。
【0054】
次に、本発明に係るライナープレートの連結構造を用いた立坑形成の工法について説明する。図20は本発明に係るライナープレートの連結構造を用いて立坑を形成する際の形成工程を示す説明図である。なお、図示されたライナープレートの連結構造は、連結具32を使用したケースであるが、ライナープレート2を係合手段によって連結するような連結構造においても同様の工程である。
【0055】
この工法は、(1)ライナープレート2を連結して一段目の円筒壁体60を形成する円筒壁体形成工程と、(2)円筒壁体60の下方を掘削して杭穴56を形成する掘削工程と、(3)杭穴56内へ円筒壁体60を落とし込む落とし込み工程と、(4)円筒壁体60の上縁に次段の円筒壁体60を構築する構築工程とを備えている。(4)の工程後は、(2)〜(4)を順次繰り返し、所定深さまで基礎杭を形成する。
【0056】
円筒壁体形成工程(1)は、基礎杭を形成する位置において、ライナープレート2を連結し、一段目の円筒壁体60を形成する工程である。この工程では、ライナープレート2の連結を内周側、外周側のどちらで行っても良い。周方向フランジ8の内周側面にナット52が溶接固定されているライナープレート2を使用する場合は、ナット52が溶接固定されている側の周方向フランジ8を上方に位置させる。
【0057】
掘削工程(2)は、円筒壁体60内にドリルビット58を挿入し、杭穴56を掘削する工程である。ドリルビット58は、一般的なリバース工法で用いられるものを使用すれば良い。また、掘削方法についても、一般的なリバース工法と同じで良い。掘削する深度は、図示されたように、ライナープレート2の高さと同じ程度が良い。これにより、次工程で円筒壁体60を杭穴56へ落とし込んだ時、円筒壁体60の上縁が地上と同じ高さになるため、作業員が連結作業を行いやすくなる。
【0058】
落とし込み工程(3)は、掘削した杭穴56へ、円筒壁体60を落とし込む工程である。円筒壁体60の落とし込み方法としては、クレーン等の昇降機又は昇降装置を使用するのが良いが、その他の機械や装置等を使用しても良く、適宜設定すれば良い。
【0059】
構築工程(4)は、杭穴56へ落とし込んだ円筒壁体60の上縁に次段の円筒壁体60を構築する工程である。この工程には、ライナープレート2と連結具32を連結する工程、円筒壁体60の上縁と連結具3を連結する工程、周方向に隣り合うライナープレート2を連結する工程等も含まれる。
【0060】
ライナープレート2と連結具32、連結具32と円筒壁体60の連結は、上記した通りである。また、図6及び図7、図12及び図14に示されたような、一対の連結片44を連結固定する連結具32の場合も、上記した通りである。図18及び図19に示されたライナープレート2の場合は、円筒壁体60の連結孔部26に、ライナープレート2の連結凸部16を挿通させ、スライド孔30側へライナープレート2をスライドさせれば、円筒壁体60とライナープレート2の連結が完了する。
【0061】
周方向に隣り合うライナープレート2の連結は、軸方向フランジ22の外周溝部に軸方向連結孔24が設けられているので、外周側からボルト50、ナット52で締結して連結すれば良い。
【0062】
上記の工程を順次繰り返し、所定深さまで基礎杭を形成する。この工法によれば、ライナープレート2の連結作業が、基礎杭の入り口周辺だけで可能なため、作業効率が非常に向上し、工期短縮が可能である。また、作業スペースを大規模に確保する必要が無く、狭小な現場でも使用可能である。
【0063】
以上のライナープレートは、略円弧状で、連結した形状を円筒状としたが、ライナープレートは、直線状でも良く、連結した形状を矩形でも良く、また直線状のライナープレートと略円弧状のライナープレートを組合せたJ字状にして、小判形とすることができ、様々な断面形状を形成することができる。
【0064】
以上の実施例は、基礎杭や集水井等の地中に設ける立坑に用いる土留壁として説明したが、地中に埋設される以外に、貯水槽や骨材貯留用の骨材ビンとして、地上に構築される構造物であっても良い。
【符号の説明】
【0065】
2 ライナープレート
4 波形鋼板
6 フランジ
8 周方向フランジ
10 周方向連結孔
12 係合部
14 ストッパー部材
16 連結凸部
18 軸部
20 係止部
22 軸方向フランジ
24 軸方向連結孔
25 水抜き孔
26 連結孔部
28 挿通孔
30 スライド孔
32 連結具
34 フランジ連結部
36 外周側縁部
38 内周側縁部
40 フランジ連結孔
42 支持部
44 連結片
46 支持片
48 支持片連結孔
50 ボルト
52 ナット
54 作業者
56 杭穴
58 ドリルビット
60 円筒壁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナープレート同士を連結するための連結構造であって、一対のライナープレートは連結具を介して連結され、該ライナープレートは、波付けが施された波形鋼板と、該波形鋼板の周縁に設けられたフランジとからなり、該フランジは、一対の周方向フランジと一対の軸方向フランジを有し、該周方向フランジは、該波形鋼板の周方向縁部から内周側に向かって突出し、連結用の周方向連結孔が設けられ、前記軸方向フランジには連結用の軸方向連結孔が設けられ、前記連結具は、一対のフランジ連結部と、該一対のフランジ連結部を結ぶ支持部とからなり、前記フランジ連結部には、ボルト締結用のフランジ連結孔が設けられ、少なくとも一方側の前記周方向フランジと前記フランジ連結部が締結手段により締結されていることを特徴とするライナープレート連結構造。
【請求項2】
前記支持部は、前記一対のフランジ連結部の内周側縁部同士を結ぶことを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項3】
前記支持部は、一方の前記フランジ連結部の外周側縁部と、もう一方の該フランジ連結部の内周側縁部を結ぶことを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項4】
前記支持部は、前記一対のフランジ連結部の対向面同士を結ぶことを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項5】
前記連結具は、一対の連結片を分離可能に連結してなり、該連結片は、前記フランジ連結部と、該フランジ連結部の縁部又は面から立ち上がる支持片とからなり、該支持片は、ボルト締結用の支持片連結孔が設けられ、前記支持部は、一対の該支持片を連結してなることを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項6】
前記支持片が、前記フランジ連結部の外周側縁部から立ち上がることを特徴とする請求項5に記載のライナープレート連結構造。
【請求項7】
どちらか一方の該支持片において、前記フランジ連結部の内周側縁部の面にナットが溶接固定され、前記支持片連結孔と該ナット孔が連通していることを特徴とする請求項5又は6に記載のライナープレート連結構造。
【請求項8】
前記締結手段は、ボルトであることを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項9】
前記締結手段は、片側締結ボルト(ワンサイドボルト)又は/及びブラインドリベットであることを特徴とする請求項1に記載のライナープレート連結構造。
【請求項10】
前記連結具が、施工場所と異なる場所で、ライナープレートに一体的に設けられたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のライナープレート連結構造。
【請求項11】
前記ライナープレート及び前記連結具は、湾曲形成されて円弧状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のライナープレート連結構造。
【請求項12】
前記周方向フランジの内周側面には、ナットが溶接固定され、前記周方向フランジ連結孔とナット孔が連通していることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のライナープレート連結構造。
【請求項13】
ライナープレート同士を連結するための連結構造であって、該ライナープレートは、波付けが施された波形鋼板と、該波形鋼板の周縁に設けられたフランジとからなり、該フランジは、一対の周方向フランジと一対の軸方向フランジを有し、前記軸方向フランジは、連結用の軸方向連結孔が設けられ、一方の該周方向フランジは、フランジ連結孔が設けられ、もう一方の該周方向フランジ外面には前記周方向フランジ連結孔と係合する係合部が突設されていることを特徴とするライナープレート連結構造。
【請求項14】
前記係合部は、前記フランジ連結孔に挿入されたときに、弾性力によって収縮して通過し、通過後に弾性力によって膨張するストッパー部材を備えていることを特徴とする請求項13に記載のライナープレート連結構造。
【請求項15】
前記係合部が連結凸部からなり、該連結凸部は、該周方向フランジ部から直立する軸部と、該軸部の先端に設けられた係止部とからなり、該係止部の長径が該軸部よりも大きく、前記フランジ連結孔が連結孔部からなり、該連結孔部は、該係止部が挿通可能な挿通孔と、該挿通孔に連結されたスライド孔とからなり、該スライド孔は、該周方向フランジの縁部と平行に設けられ、該スライド孔内において前記軸部が移動可能であることを特徴とする請求項13に記載のライナープレート連結構造。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のライナープレート連結構造を使用した構造体であって、前記軸方向連結孔が、前記波形鋼板の外周側溝部に設けられていることを特徴とするライナープレート連結構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−106190(P2011−106190A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263531(P2009−263531)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】